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第1章:序論

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Academic year: 2021

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経済学のための数学:第1章 細矢祐誉 テーマ:序論 本講義の目標は、限られた時間の中で経済学で数学を使うやり方とその利用例をできる 限り多く見せることである。しかしあまりにも短いので、取捨選択が必要である。マクロ 経済学とミクロ経済学で両方とも使える技術として、さしあたり微分方程式というものが 比較的よいように思えたので、本講義では微分方程式とその応用をメインの軸にして、必 要あらばそれ以外のトピックも拾っていくことにしたい。 ところで受講者諸君は、微分方程式というのがどういうものかを知っておられるだろう か。そもそも「微分」を知らない方もおられるかもしれないが、それはさすがに自習して もらうとして——上に述べたように本講義で使える時間は少ないので、基礎から固めてい る時間はないのである——微分方程式なるものに出会ったのがこの授業が初めて、という 方もそれなりにおられるかもしれない。微分方程式にはいろいろな形があるが、さしあた り次のように記述されるものが比較的よく出てくる: ˙ x = f (t, x). ここでxtの関数だと思ってもらいたい。また上の点は微分を表す記号である(ニュー トンが主に用いたため、伝統になっているようだ)。したがって正確に書こうと思えば、 上の問題は次のようになる: ˙ x(t) = f (t, x(t)). ある連続微分可能な関数xが上の問題の解(solution)であるとは、その関数が実数上の 幅を持った区間I で定義され、任意の点t ∈ I においてtにおける関数xの微分x(t)˙ が f (t, x(t))と一致していることを言う。 さて、こんな話をしていても一向に話が始まらないので、典型的な問題を考えてみよう。 ˙ x = x この微分方程式の解を見つけろ、という問題を考える。一般的な微分方程式の教科書に は、次のような解法が書いてあることが普通である:両辺をxで割ると、 ˙ x/x = 1 という形になる。左辺はlog x(t)を微分した形になっているので、不定積分を取れば、 log x(t) = t + C 1

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という形が現れる。ただしC は積分定数である。両辺をexxに代入して整理すれば、 x(t) = eCet = C′et となるので、上の方程式の解はx(t) = C′etである。ただしC′はなんでもよい。 上の論法は数学的にはかなり乱暴なのだが(どこが乱暴なのか考えてみよ)、しかし結 論としてはおおむね正しい。ただしひとつだけ注意が必要で、C′ という積分定数によっ て定まる項が決まらないのである。そこで微分方程式では多くの場合、「初期値」と呼ば れるものを指定して解くことが行われる。一般形では ˙ x = f (t, x), x(t∗) = x∗ などという風に、x(t∗) = x∗ じゃなければいけませんよという追加条件を与えるのであ る。たとえば ˙ x = x, x(0) = 1 などと置けば、この解はx(0) = C′e0 = 1でなければいけないのだから、C′ = 1でなけ ればならず、よって x(t) = et という形で確定する。 さて、微分方程式とはこのようなものである、ということはおおむね感覚的にはわかっ たと思う。この微分方程式は、マクロ経済学とミクロ経済学を問わず、様々な場所で多く の応用がある。それを見ていくのが今回の主たる目標である。 繰り返すが、最初に述べた通り、本講義は本当に時間がない。よって講義で紹介できな い箇所は自習してもらうことになる。たとえばイプシロン=デルタ論法や線形代数の初歩 などを詳細に講義している時間は本講義にはない。以下に述べるのは自習用の教材であ る:高木貞治『解析概論』の第1章と第2章。杉浦光男『解析入門I』の第1章第1節か ら第3節まで。丸山徹『経済数学』の全部。またさらに必要ならば、位相と微分について は丸山徹『数理経済学の方法』の第2章から第5章までと第8章を、積分については丸山 徹『積分と関数解析』の第1章から第5章まで。線形代数についても本当はいい教材を紹 介したいのだが、現時点で講師側にいい教材の心当たりがない(ストラング『線形代数と その応用』がよいと知人に聞いたが未読である)。微分方程式について予習したければポ ントリャーギン『常微分方程式』の第4章を使うとよい。 2

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