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令和元年度(平成31年度)学内研究助成金 研究報告書

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Academic year: 2022

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(1)令和元年度(平成 31 年度)学内研究助成金 研究報告書. 研. 究. 種. ☑奨励研究助成金. □研究成果刊行助成金. □21 世紀研究開発奨励金 (共同研究助成金). □21 世紀教育開発奨励金 (教育推進研究助成金). 目. 研 究 課 題 名. 定常ずり変形下における熱容量測定装置の開発. 研究者所属・氏名. 研究代表者: 理工学部 共同研究者:. 鈴木. 晴. 1.研究目的・内容 本研究は, 「流れがある状態において,分子集合体の安定構造はどのように変化するか」という 非平衡熱力学の基本問題の解決を大きな目標とする.非平衡科学の研究は,理論・実験ともに物 理学の分野で大きく発展してきたが,分子論を軸に置く物理化学的な視点からのアプローチ例は 多くなかった.本研究では,化学熱力学の実験手法を軸に据えた新しい装置の開発に取り組む. 具体的には,定常ずり変形を加えた流動試料の熱容量を決定する.熱容量は熱力学的な基本量で あり,ここからエンタルピー.エントロピー,自由エネルギーという分子集合状態の安定性の指 標が得られる.本研究では, 「定常ずり変形下」という非平衡定常状態に一歩拡張した領域におい て,このような基本的な熱力学量を実験的に決定する.本研究の成功は,非平衡状態の物性制御 という新しい機能性の創出を可能にするだけでなく,生命活動の基礎原理などの新しい科学原理 の解明にも繋がる重要な突破口になると期待される. 2.研究経過及び成果 ずり変形は、物質を二枚の平面板に挟んで,片方の面を面内方向にスライドさせたときに物質 に加わる変形であり,一定速度のずり変形を定常ずり変形と呼ぶ.液晶物質 4-n-4’-Octylbiphenyl (8CB)に定常ずり変形を加えると,相転移温度が変化することが過去の研究で報告されているこ とから,本研究では転移エンタルピーがずり速度にどのように依存するかを明らかにできる熱量 計の開発を行った. 熱量計の基本構造には,示差走査熱量計(DSC) を採用した.この装置では,基準物質と試料を熱 浴中に置いて,全体の温度を一定速度で上げてい く過程で試料と基準物質との間を出入りした熱 流束を測定する.この装置に,定常ずり変形機構 を組み込むことで,ずり変形による発熱を基準物 質と試料の両者で打ち消しあう仕組みにして,相 転移に関わる熱量変化をより感度よく検出でき るように工夫した. 装置作製は部品の設計から行った.図 1 に装置 の概要図を示す.試料および基準物質を設定する ステージ 2 個を中心に,周囲を銅およびアルミニ ウム製の中空円柱ブロックで取り囲み,これをさ らにステンレス製の箱に入れた.銅およびアルミ ニウムブロックは,試料および基準物質周囲の温 度環境が空間的に均一で時間揺らぎしないため の熱溜め(ヒートシンク)の効果をもつ.アルミニ ウムブロックの外側には,加熱用のヒーター線を 巻き,外側の箱をステンレス製にすることで,外 部からの熱流入および対流による温度揺らぎを.

(2) 低減させる機構にした.ずり変形の動力には,回転速度を指定できるステッピングモータを採用 して,モータからの熱流入を防ぐために,回転シャフトにはセラミックス材料(マコール)を採 用した.ずり変形機構には,円錐型プレート(コーンプレート)を採用して,2 台のモータを同じ電 気回路で駆動させることで,回転速度およびタイミングが同期できるように設定した.試料温度 および試料と基準物質の間の温度差は熱電対(クロメル-コンスタンタン)とデジタルマルチメー ターで読み取り,パソコンで記録した.測定プログラムは,LabbIEW を用いて作成した. 図 2 に完成した装置を用いて測定した 8CB の測定結果を示す.基準物質には標準粘度液を用い た.左側の図は,ずり変形がない場合の DSC 曲線であり,306 K にスメクチック-ネマチック相 転移,313 K にネマチック-液体相転移のピークが観測されている.この結果は,市販の DSC 装 置による測定結果と大きく違わない.一方,右側の図は,ずり速度 300 s-1 で定常ずり変形をかけ たときの DSC 曲線になる.2 個の相転移ピークが,ずり変形を加えることで 0.5 K 程度低温側に シフトすることが明らかになった.この結果は,これまでの粘度測定の結果とよく一致している. また,306 K 以下では,スメクチック相の粘度が上昇することによる発熱挙動が観測されている. このことから,スメクチック相を昇温すると,はじめに粘度が低下してネマチック相と同程度に なってからネマチック相への相転移が起こることが明らかになった.. 図 2:作製した装置を用い測定した液晶物質 8CB の DSC 曲線. 左側はずり変形がない状態の DSC 曲線.右側は定常ずり変形(ずり速度 300 s-1)下の結果. 3.本研究と関連した今後の研究計画 本研究では,定常ずり変形下の DSC 装置の作製に成功した.しかし,高速回転になると,ずり 変形機構に軸ブレが生じるなどの問題が残っており,今後,シャフトの連結機構を変更するなど の改善を進めて,より精度の高い測定が行えるようにする.その後,ずり速度と相挙動の関係, および転移の熱力学量の評価を行い,ずり変形が熱力学量に見かけ上どのような変化を及ぼすか 明らかにする.また,液晶種を変えていき,分子種によってその影響がどのように変わるかも明 らかにしていく.また,密閉型の試料容器の作製にも取り組み,試料の蒸発を抑制した状態で, 面活性剤水溶液などの測定も行う.これらの系では,ずり変形によって応力に振動パターンが現 れるなど,顕著な散逸構造の出現が報告されているので,その熱力学的な評価を行うことができ れば,散逸構造の熱力学的な安定性に関する新たな知見が得られると期待されれる.. 4.成果の発表等 発. 表. 機. 関. 名. Royal Society of Chemistry (Phys. Chem. Chem. Phys.). 種類(著書・雑誌・口頭). 発表年月日(予定を含む). 雑誌. 2019.6.26.

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