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社会的勢力の 自己認知が児童の適応感 に及ぼす影響 HowDoesCognitionofChildren'sSocialPowerAffectTheirSchool Adaptation

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社会的勢力の 自己認知が児童の適応感 に及ぼす影響

HowDoe sCogni t i onofChi l dr e n' sSoc i a lPowe rAf f ec tThe i rSc hool Ada pt a t i on

鎌 田 雅 史* ・ 淵上 克義 **

本研究 は,小学校高学年の児童699名 (男子353名,女子334名,欠損12名) を対象 に時 系列的な調査 を行い,社 会的勢力の 自己認知 と約2カ月間の イ ンターバ ルを経 た勢力の変動 が,児童の適応感の諸側面であるスクールエ ンゲー ジメ ン ト,生活満足度,学級集団効力感 認知,お よび友人に対す る影響戦術使用 とどの ように関連す るかについて検討 した ものであ る。分析の結果,児童の社会的勢力の 自己認知は,児童の情緒 ・認知 ・行動の諸側 面に関連 す ることが示 された。特 に,児童の適応 にとって,合理性勢力認知や関係勢力認知の重要性 が示唆 された。

Keyword.,Socialpower,Children,Schoolengagement,Lifesatisfaction,Groupefficacy

学校教育における児童 ・生徒の社会的勢力認知 に 関 しては,数多 くの研究が行われて きてお り,社会 的勢力の認知構造や (田崎,1990),友人や教師に 対す る社 会的勢力認知が児童 ・生徒 の学校適応や友 人 関係 に及 ぼす影響 な どについ て検討 されて きた (McCroskeya Richmond,1992)。特 に,教師が どの ような社会的勢力 を児童 ・生徒 に対 し有する事 が,児童 ・生徒の学校適応や社会化 に とって重要 な のか といった点について多 くの関心が寄せ られ,研 究知見が積み重ね られて きた。例 えば,McCroskey

&Richmond (1992)は,教師の指導行動が有効 に機能す るためには,専 門性や準拠性 に関す る教 師 の社会的勢力 を生徒が認知 している状態であること が重要であることを示 し また逆 に強制的な勢力認 知 は,認知的学習の低下や逸脱行動の増加 と開通す る可能性 につ いて述べ てい る。 また,Turmana Schrodt(2006)は,教師‑の準拠性や専門性などの 社会的勢力認知 を促す要凶 として,教師の確証行動 (ConfirmationBehavior)に注 目し, 1)丁寧 に質 問に応諾 し生徒へ の関心 を示す, 2)授業 を工夫 し 生徒 を満足 させ る, 3)否定的な態度を取 らない よ

うに心掛 ける といった 日常の関わ りの重要性 を指摘 す る と同時 に,教師 に対す る社会的勢力認知が児童 ・ 生徒 の認知 的学習 を促 進 させ る効果 を指摘 してい

O この ように,社会的勢力の研究の多 くは生徒 に よる,教師に対す る社会的勢力認知 に注 目し,生徒 指導や学級運営の在 り方 に対 して多 くの有用 な知見 を見出 して きた。 しか し,児童 ・生徒 に よる社会的 勢力 の教 師認知や友 人認知が検討 され て きた一方 で,社会的勢力研究 において非常 に重要 な側面であ るといえる (Kipnis,1976),児童 ・生徒の社 会的 勢力の 自己認知に関 しては, ほ とん ど検討 されて こ

なかった。

近年の社会心理学領域 において,社会的勢力の 自 己認知 は,勢力保持者の情緒 ・認知 ・行動に様 々な 影響 を及 ぼ し,勢力保持者の適応感や, 自己統制, 対人関係 の在 り方等 に密接 に関連 し,その重要性が 指摘 されてい る。そ こで,本研究では社会的勢力の 自己認知 に関す る先行研 究 を展望す るとともに.学 校教育にその知 見を適応す ることの意義 と目的につ いて理論的考察 を した後,小学校高学児童 を対象 と した調査 を行 い.学校教育 における社会的勢力研究

*兵庫教育大学連合大学院連合学校教育学研究科博士課程 (岡山大学配属) 673‑1493 兵庫県加東市下久米942‑1(700

‑8530 岡山市北区津島中3‑1‑1)

**岡山大学大学院教育学研究科 700‑8530 岡山市北 区津 島中3‑1‑1

HowDoesCognitionofChHdren'sSocialPowerAffectTheirSchoolAdaptation MasafumiKAMADA*,andKatsuyoshiFUCHIGAMI**

*TheJointGraduateSchoolEducation(Doctor'sCourse),HyogoUniversityofTeacherEducation942‑1 Shimokume,Eato‑shi,Hyougo,673‑1498(placedatOkayam aUniv.)

**GraduateSchoolofEducation,OkayamaUniversity,3‑1‑1Tushima‑naka,Okayam acity,700‑8530

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鎌 田 雅史 ・ 淵上 克義

の将来的な可能性 について考察 を行 うこととす る

社会的勢 力の 自己認知 に関する研究

Guinotea Vescio (2010)は,社会的勢力の 自 己認知が,勢力保持者の情緒,認知,行動 に及ぼす 効果 に関する重要な研 究テーマ として, 1)変性効 莱. 2)ステ レオ タイプ的情報処理, 3)自己統制 を挙 げてい る。 これ らの先行研究が示唆す るのは, 社会的勢力の 自己認知 は非常 に身近で重要 な概念で あ り,勢力保持者の情動喚起 (Langnera Keltner, 2006). 社 会 的 認 知 (Kelner,Grunefeld&

Anderson,2003),情報処理 (Fiske,2001),脱抑 制行動 (AndersonaBerdahl,2002),対人相互作 用のあ り方 (Kipnis,1976)など様 々な側面 に密接 に関連 している ということである。本稿 ではこれ ら のテーマに関連する研究成果の概要 を示す とともに,

もしこれ らの研究知見が学校教育 に適応可能である ならばどのような示唆 を得るかについて考察を行 う

1)変性効果 に関する研究

人が地位や権力な ど報酬力や強制力 に基づ く社会 的勢力 を有 した時, どの ように変わってゆ くかにつ いてKipnis (1972)は,勢力保持者が,対象者 に働 きかけ,その結果思 うに追従が得 られ.それを内的 要 因に帰属 した場合. 自己の有能性 を知覚する と共 に他者 を軽視す るようになってい く危険性 について 変性効果 (Metamorphiceffect)と名付 けた。勢力 を持 ち,対象者 をコン トロールす ることが可能であ ると知覚 した勢力保持者は,強制的 な方法で頻繁 に 影響力 を行使す るようにな り,対象者が もた らした 成果が望 ましい場合, 自己の監督能力 にその成果 を 帰属 し,対象者の能力や意欲 を過小評価す るに至 る とい うものである。ただ し,変性効果は,勢力 を保 持すれば必ず生起す るわけではな く (今井,1993),

い くつ か の 条 件 が 複 雑 に 絡 み あ っ て 生 起 す る (Guinote&Vescio,2010)。 また,Kipnisらによる 一連の研究 は (Kipnis,1976;Kipnis,2001),変性効 果 を引 き起 こす プロセスの中で,勢力保持者 による 原因帰属 を重要視 しているが,近年,認知的不況和 理 論 か らの アプ ローチ も行 われ てお り (Klocke, 2009)生起 メカニズムに関 して も今後検討 を要す る

変性効果の生起 に関連す る要因については、勢力 保持者のバーナ リテ ィーな どの個人特性,対象者 と 影響者 との役割関係,対 人相互作用が行われる組織 や集団の構造,文化的な規範や特質な どが挙げ られ る (Guinote & Vescio,2010;Klocke,2009;

Oberbeck,& Park,2001)。産業組織 における上司 の変性効果 をメタ分析 的手法によって検討 した展望

研究においては (GeorgeSena Harris,1998),上 司の勢力認知 と自己評価 の効果量 の値 はr=.45,那 下 に対す る否定的評価 に関す る効果量 の値 はr=.29 であ り,勢力の変性効果が身近 にお こ り得 る現象 で あることが指摘 されている。 また,男女の カ ップル や夫婦,母子 関係 に関 して も強制力 に関す る勢力 自 己認知 とパー トナー評価や関係満足度 との間に,負 の関連が報告 されてお り,勢力の変性効果 はフォー マルな地位構造が存在す る組織集団のみに生起す る わけではない (Kipnis,1990)o

学校教育 において,児童 ・生徒 の社会的勢力の 自 己認知 と勢力の変性効果 を直接的に検討 した研究は ほとんど行われていない。 しか し,変性効果は,児童 ・ 生徒 の友人関係やい じめ, もしくは部活動 な どの階 層的構造 における行 き過 ぎた後輩指導や,支配一服 従関係 な どに強 く関連す る可能性 を含んでいる。友 人や後輩な どに対 し,強制的な手投で影響 を及ぼ し, それによって対人 目標が達成 された場合 に,影響者 は自己を過大視 し,対象者 をコン トロールの対象 と 認識 し,軽視 し, よ り支配的な態度 を形成 してい く 可能性がある。 また, 自己の過大評価や,対象者の 軽視 に至 らない まで も,児童の勢力の 自己認知 は時 に強制的 な影響手段 の使用 に関連 した り (Raven, 1992),特定の友人 に対す る支配的な対 人行動 ス タ イル (Kipnis,1990)の形成 に関連 した り,児童 ・ 生徒 の友人関係の形成や認知 に関 して関連す る可能 性が示唆 される。以上 より,①学校教育 における児童・

生徒 の対 人関係の なか に変性効果 は存在す るのか, (彰変性効果が存在す るのであれば,それが生起する

プロセスは どの ような ものか,③変性効果を抑制す る環境づ くりや教育的働 きかけにはどの ようなもの があるのか, な どについて将来的に研究 を積 み上げ てい く必要があると言える。

2)

情報処理 に関する研究

近年,社会的勢力の 自己認知が,私たちの様々な 情報処理 プロセスに影響 を及ぼす ことが明 らかにさ れて きた (Fiske,2001;KeLtneret.aI.,2003)。勢 力が社 会的注意 に及 ぼす影響 について,Henley&

LaFrance (1984)は,"服 従仮 説 (Subordination hypnosis)''を提唱 してお り,低勢力者はより他者に 対 して警戒 し,他者のノ ンバーバ ルな行動や,特質 に気 を配 るとい う仮説 を提唱 している。初期の研究 においては,低勢力者 は, より脅威 となる社会的イ ベ ン トを通過す るために,他者 に注意 を払お うとす る一方で,高勢力保持者 は他者 によって よ り注意 を 払 われることを示 している。 またFiske& Depret

(1996)による非対称成果依存理論 (Asymmetrical

(3)

OutcomeDependencyTheory)においては,人 は勢力 を持つ と,ステ レオタイプ的な判断をす る傾 向が強 くなることが指摘 されている。Fiskeは,社 会的勢力について,職務の遂行や利益.昇進や昇給 に関する評価 など,個人 ・集団の得 られる成果に関 し,他者に依存する程度が相対的に小 さい場合,そ の人や集団は,他者 に対 して社会的勢力 を保有 して いると定義 している。 この理論 は,人は統制感 を得 ること (control)に関す る基本的な欲求 をもって いることが前提 とされ,高勢力者や,高勢力集団の 成員は快適な地位 にいるとみなされる。結果 として,

自分が統制 している他者の特質などに関 し,注意深 く関心 を払 うことはせず, ヒュー リステ ィックな判 断を行いやす くなるO また,場合 によっては,高勢 力者や,高勢力集団の成員は自分の統制感 を維持す るように動機づけ られ,ステ レオタイプ的な情報 (自 分が優位であることを正当化す るステ レオタイプ的 情報など)に関心 を示す。低勢力者や,低勢力集団 の成員は,統制を獲得す るように動機づ け られ,ス テレオタイプ的でな く診断的な情報処理が促進 され るように高勢力者 に働 きかけるが,彼 ら自身が どう することもで きない,耐えられない と判断 した場合, そ の よ うな方 略 を行 わ な くな る。 この 点 に関 L Georgesen&Harris(2000)は,2着関係 において, 社会的勢力の 自己認知は,相手に対す る対人期待の

自己成就 を調節することを指摘 した。 2人一組で問 題解決課題 を行 った際に,社会的勢力の 自己認知が 高い被験者は,相互作用以前 に相手が有能であると い う期待 を抱いている場合,相手 を好意的に評価す ることを示 している。

以上の ように,社会的勢力の自己認知は自動的で ステ レオタイプ的な情報処理 を促す ことが指摘 され ているが, この点は学校における児童 ・生徒 に関 し て も重要 な示唆 を与える。勢力保持 者によるステレ オタイプ的な判断や行動は,対象者‑の無配慮 につ ながる。影響者は,ステ レオタイプ的な判断によっ て,本人の自覚 な く,対象者 を振 り回 した り,傷つ けた りす るようなことがあった り,あま り深 く考え ることな く非行 などを含む逸脱行動 を行 った りす る 可能性がある。 このように勢力構造 における,友人 関係の在 り方,逸脱行動 などの生起 な どには社会的 勢力の自己認知が強 く関連する。 また.近年,集団 間における社会的勢力の差が,他集団に対する偏見 や差別の助長に関連す るといった指摘 も多 くなされ てお り (Brauer,&Bourhis,2006),社会的勢力の 自己認知が社会認知や勢力保持者の情報処理にどの ように関連するのかについて より検討 してい く必要 があると言 える。

3)自己統制に関する研究

Kelherら (2003)は,社会的勢力の 自己認知に 関 して,Higgins (1993)の提唱する∴ 償 近‑抑制 理論 (ApproachII血 bitionTheoryofPower)" に 基づいて検討 を行 っている。彼 らによると,社会的 勢力の自己認知は,勢力保持者のpromotionな自己 統制を導 き.勢力の欠如 はpreventionな自己統制を 導 くことを提唱 している。Promotionな自己統制は, 利益獲得への注意,ポジテ ィブな情動喚起. 自動的

な情報処理,積極的な行動, コス トの軽視などと関 連 し,Preventionな自己統制は逆に, コス トへの注 意,診断的な情報処理, ネガテ ィブな情動喚起,義 務の遂行 と抑制 された行動などによって特徴づけら れる。

社会的勢力の保持や獲得は,ポジテ ィブな情動 を 喚起 させ,成功や獲得 に意識づけ,困難な課題 に対 して も挑戦す る意欲 を生み出す糧 とな り,他者に働 きかけた り,資源 を動員す るなど, 目標達成のため の方略 を主体的に積極的に行 うことを促進す る一方 で, 自らの行動 に伴 うコス トや他者‑の配慮,失敗 した場合の危機管理などに対 して注意が向 きづ らく なる傾向があると指摘 している。 また,勢力の枯渇 は,ネガテ ィブな情動 を喚起 し,行動 にともなうコ ス トに注意 を向け, コス トや失敗 した際に受ける不 利益 を回避する形で自己統制す るために,釆め られ る最低 限の課題 を行 う半面,新 しい物事 に挑戦 した り,求め られる以上 に活動す ることなどに関す る活 動性 は抑制 され,危機 を回避す るように動機づけ ら れ,社会的文脈 に対 して診断的で憤重 な情報処理が 促進 される。 これ ら,Kelnerら (2003)の理論は, 多 くの研究で実証 され,社会的勢力が人の情緒や社 会認知, 自己統制 に及ぼす影響が確認 されている

(Galinsky& Gruenfeld&Magee,2003;Overbeck

& Park,2006;Overbeck,Tiedens&Brion, 2006)0

社会的勢力認知が勢力保持者の 自己統制に及ぼす 影響 には肯定的な側面 と,留意すべ き側面の双方を 含 んでいる。Galinskyら (2003)は,高勢力者 は、

自らの設定 した 目標達成のためには,社会的に望 ま しい行動 も望 ましくない行動 もどちらの使用 も促 さ れることを示 している

以上か ら,学校 における児童や生徒 において, 自 信をもって積極的,主体的に楽 しく学校活動に励 む ための,特 にイ ンフォーマルな社会的勢力の 自己認 知が重要性が示唆 されるが, この点に関 しては十分 に検討 されて きていない。 また,社会的勢力認知 と, 自動的情報処理 に伴 う不注意や,周囲の人や環境 に 対す る無配慮,生徒 自身の 目標達成のための逸脱行

(4)

鎌 田 雅 史 ・ 淵上 克義

動 な どとの関連 につ いて も検討 してい く必要が あ る。社会的勢力認知が,児童 ・生徒 の情動や 自己統 制 に及ぼす影響 に関 しては,勢力認知の肯定的効果 を南め,否定的効果 を抑制するような要因 (メタ認 知的方略 など)について,検討 をしてい く必要があ

る と思われる。

先行研究の問題点 と今後の課題

本稿 で述べ て きた ように社 会的勢力の 自己認知 は,学校教育 においても非常 に重要な示唆 を与える 可能性 を秘めている。 しか し,社会的勢力の 自己認 知 に関す る先行研究の多 くは,主に強制力や報酬力, 地位や役割 に関する勢力認知 に特化 して理論化 して

きた傾 向がある。異なる勢力資源か ら派生す る勢力 認知や,その増加や減少に関す る認知は,勢力保持 者 に異なる影響 を及ぼす可能性 を秘めている。例 え ば,Kipnis (2001) は,主 に強制勢力 に基づ く勢 力認知が引 き起 こす変性効果について警鐘 を鳴 らす 一方で,臨床家 を対象 にした調査研究において,専 門勢力の 自己認知は. 自己の有能感や職務満足度に 正の相関があることを見出するなど,社会的勢力の

自己認知の肯定的側面 について も言及 している また,Guinote& Vescio (2010)は,勢力 とい う概念 を考 える際 に,パー ソナル な勢力 (power to) とソー シャルな勢力 (powerover) を区別す

るべ きであると指摘 している。パーソナルな勢力は 他者や環境 によって干渉 されずに,行動 を行 うため の潜在性 をあ らわ し自己効力感や コンビテ ンシー と 密接 に関連する一・万で, ソーシャルな勢力 は他者 を コン トロールす る潜在性 を表 している。VanDijke a Poppe (2006)は,人はパーソナルな勢力を求 めるように動機づけ られることを示 してお り,特 に パーソナルな社会的勢力の自己認知 は勢力保持者の 適応 や精神衛生 に密接 に関連 している可能性 があ る

この ように,児童 ・生徒 の勢力認知 に関 して も, 専 門勢力や準拠勢力のような勢力認知は児童の学校 適応 に肯定的な影響 を及ぼす可能性があ り,勢力資 源 ごとの注意すべ き側面 と望 ましい側面について検 討 してい くことが望 まれる。以上の点 を踏 まえ,本 研究では,小学校高学年児童を対象 に,児童の様 々 な勢力資源が児童の適応感の諸側面であるスクール エ ンゲージメ ン ト,生活満足度,学級集団効力感認 知 とどの ように関連す るかについて検討す る

調査研究の 目的

これ まで,学校の児童 ・生徒 を対象にして,多 く の社会的勢力 に関する研究がなされて きたが,その ほとん どは児童 ・生徒が教師や友人の勢力 をどの よ うに知覚 しているのか (田崎,1990), また社会的 勢力の他者認知が児童 ・生徒の学校適応 にどの よう に関連するのかに関するものであった(McCroskey a Richmond,1992)。近年,社会的勢力の自己認 知が勢力保持者の情緒,認知,行動 に及ぼす効果の 重要性が指摘 されてお り,児童 ・生徒の人間関係や 社会認知に密接 に関連する可能性が指摘 されている にも関わ らず, また社会的勢力の 自己認知に関 して は,今 日に至 るまでほとん ど検討 されてこなかった。

そこで,本研究では,小学校高学年児童 を対象 に 時系列的な調査 を行い,社会的勢力の 自己認知が, 児童生徒の友人に対す る影響戦術の選択使用 と様々 な適応指数 (情緒的エ ンゲージメン ト.認知的エ ン ゲージメン ト,生活満足度,生活変化欲求,学級集 団効力感) とどの ように関連す るのかについて,探 索的に検討 を行 うことを目的 とする。

方法 調査計画

予備調査 を含め三回の質問紙調査を実施 した。 7 月下旬か ら8月上旬 にかけ岡山県下の小学4年生児 童4学級 149名 (男子79名,女子 70名) に対 し予 備調査 を行い,9月上旬か ら下旬 にかけ岡山県の三 つの小学校 に通 う小学5 ・6年生児童 19学級 699 名 (男子353名 ,女子334名,欠損12名) に,社会 的勢力認知 (wavel),及 び集 団効力感 (wavel) を測定す る第一調査 を行った。 また,二 カ月のイン ターバル後

,1

1月下旬 ‑12月中旬 に第二調査 を実 施 した。二 回の調査 で協 力が得 られた児童 は16学 級543名 (男子274名,女子 269名)であった。第 二調査ではインターバル間に友人に対 して使用 した 影響戦術,社会的勢力認知 (wave2),集団効力感 (wave2),スクールエ ンゲージメン ト,生活満足度 について尋ねた。児童 を調査対象 としたのは,児童 は小学校 において多 くの時間を学級で過 ごし友人 と 相互交流 し,学級集団 と社会的勢力認知,影響戦術 使用 との関連 を検討するのに適す と判断 したか らで ある。 また質問紙調査の実施にあた り高学年児童 を 対象 とす るのが妥当であると考えた。

調査項 目

影響戦術測定項 目 予備調査 において淵上 ・鎌田

(5)

Tablel 影響 戦術 の 因子 分析

N5 1 1

協働的影響戦術 (o≡.82)

友達に自分の意見をきちん と分かって受け入れてもらえるように,理由をきちんと説明する。

友達が嫌な思いをしないように気をつかいなが ら自分の意見を話すO

友達に意見が きちんと伝わるように, 自分が何をしてほしいかについて丁寧に説明する 友達 と意見を話 しあうことで, もっとよい意見はないかと考えあう

話 しあうことで,友達に自分の意見を気づいてもらう。

友達が どうやったら自分の意見を受け入れて くれるかを,その友達 と話 しあいなが ら一緒に考えるo うけいれて くれるよう

強制的影響戦術 (a

.81 ‑.ll .73 ‑.16 .70 ‑.10 .58 .07 .57 .14 .55 .14

友達のためにいろいろなことをしてあげているのだから,友達が自分の意見を聞かないのはおか しいと話す。

友達が断れないような強い言いかたで自分の意見を話すO

自分が友達のために何か してあげるか ら,後で友達 も私の意見を聞いてほ しい とい う。

で きるだけ友達の機嫌のいい時に自分の意見を話すようにする

他の友達 と一緒になって友達にみんなで意見を伝 える。

もし友達が自分の意見 を聞いて くれるなら,私 も友達のお願いを聞いてあげると言 う。

友達が自分の意見を受け入れることで,友達にとって どんないいことがあるかを説明する。

因子間相関 Ⅰ

Ⅱ Tabte2 児童 に よ る自己認知

:.;":14;::;Hf::I:I:..L':tJI

児童の勢力の自己認知 (N=508) 合理性勢力 (α≡.83)

私は.本やニュースなどによって正 しい情報 を探すのが得意であるo 私は, どちらか というと勉強の得意なほうだ。

私は,同い年の友達の中ではしっか りしている性格だ と思 う。

私は,自分の考えをきちんと相手が分かるように話す ことがで きるo

私は,自分の話す ことに責任をもって間違ったことは言わないように心がけている 私は,友達 と遊ぶ時など, リーダー役をすることがおおい。

1253611000001311)f75597100010111lII9107401‑7776654

関係勢力 (a=.84)

私は,友達を喜ばすのが得意だ。

私は友達 を楽 しませてあげることがで きる

私は.友達を笑わすのが得意だO

私にはとて も仲のよい友達がた くさんいる。

私は,友達か らとても好かれている

1384700000III7300888865

6567300001

強制勢力 (a=.55)

私は. ことがある。

友達 とケンカをした時は,ひどいことを言って しまった り, して しまうこともある

私が怒った ら友達はきっと恐が ると思う

因子相関行列

■+

(2006)を も とに,児 童 版 影響 戦術 測 定項 目を作 成 した。本 調査 で は, 第 一調 査 と第二調 査 の 間の約 二 カ月の 間 に,項 目に表 され る影響 戦術 に関 し使 用頻 度 を五作 法 (1全 くしない‑ 5よ くす る)で尋 ね た。

回収 した デー タにつ い て因子分析 (主 因子 法, プ ロ マ ックス 回転 ) を行 った結 果, 固有値 の倍 や変化量 か ら二 因子構 造 で の解 釈 が妥 当で あ る と判 断 した。

第‑ 因子 は,説 明 や相 談 な ど非 強制 的 な方 法 で対 象 者 の立 場 を尊 重 す る戦 術 が含 まれ, 協 働 的 影 響 戦

術 と名づ け た。 第二 因子 は,規 範や 賞罰 に基 づ く対 象 者 の行動 を コ ン トロー ル しよ う とい う意 図が み ら れ る 行 動 が 含 ま れ, 強 制 的 影 響 戦 術 と名 づ け た (Table1)

社 会 的勢 力認 知測 定項 目 勢力測 定尺 度 は対象 者 の立場 か ら影響 者 の社 会 的勢 力 を測 定す る ものが 主 流 で あ る (田崎,1990)。 しか し本研 究 で は,影 響 者 の主観 的 な勢 力 認知 を測定 す るため,新 た に社 会 的勢 力 認知測 定項 目をRaven(2001),田崎 (1990)

(6)

鎌田 雅史 ・ 淵上 克義

を もとに作 成 した。調査 にあたっては,項 目内容 に つ いて児童 自身が どの程度あては まる と感 じるか に 関し,1全 くそ うではない‑ 5とて もそ うであ る, か ら回答 を求めた。予備調査 デー タについて因子分 析 (主 因子法, プロマ ックス回転) を行 った ところ 固有値 の値 と変化量か ら三因子構造が妥当であ る と 判 断 したG 因子負荷 量 .40を基準 に, どの 因子 に も 負荷 しなか った項 目,複数の因子 に負荷 した項 目を 取 り除 き測定項 目とした。抽 出 された因子 には,そ れぞれの項 目内容 を基 に "合理性勢力 (α=.75)''"関 係勢力 (α=.86)'‥̀強制勢力 (α=.56)"と命名 した。

合理性勢力 は,友人 に影響 を与 えるための知識や能 力 についての 自己認知 に関す る項 目を含 む。関係勢 力は,友 人 との良好 で気兼ねない友人関係認知 に関 す る項 目を含 む。強制勢力 は,支配や強制力 に関す る認知 であ る (Table2)0

学級集 団効 力感測定項 目 淵上 ・今井 ・西 山 ・鎌 田 (2006)の項 目につ いて, "1全 くそ うでは ない

‑5

非常 にそ うであ る''の

5

件法で答 える ように求

めた。収集 したデー タに関 して因子分析 (主因子法) を行 った結果, 固有値1以上 を基準 とした場合2因 子構造が妥 当であ る と考 え られたが,第‑因子 と第 二 因子 の相 関が

r =. 7

1と非情 に高か った点,第‑ 因 子の複 数の項 目が第二 因子 に中程度の負荷 を示 した こと. また固有値の変化量 か ら一因子構造が妥 当で あ る と判 断 した。本調査 の2回の測定 において も, 集団効力感の‑因子構造が確かめ られ, さらに全 て の質 問項 目が一つ の 因子 に.40以上 強 く負荷 してい た。 集 団 効 力 感 が ‑ 因 子 構 造 で あ る こ と は, Goddard (2001)な ど先行知見 とも一致 してお り安 当であると考 え られ る

エ ンゲー ジメン ト測定項 目 学校 に対す るエ ンゲ ー ジメ ン トに関 しては,Fredricks,Blumenfetd, Friedela Paris (2005)よ り,学校へ の同一視で あ る情緒 的エ ンゲー ジメ ン ト3項 目 (α=.72),学 校活動‑ の心理的投 資である認知的エ ンゲー ジメ ン

ト5項 目 (α=.78)を用 い簡易版測定項 目とした。

Fredricksら (2005)による と,情緒的エ ンゲ‑

TabJe3 集 団効力感 (01=.91,02=.91)

些=619LN2=539 共通性 私たちのクラスほ一人一人がクラスのみんなのために責任をもって行動することができる 74 .55 私たちのクラスはみんなお互いの良さを認めあいながら.仲良 く助け合うことができる .73 ,54 私たちのクラスはみんなでたてたクラスの目標を達成するために一人一人が頑張ることができる ,73 .54 私たちのクラ

私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ 私たちのクラ

スはみんなで決めた学級の目標を守ることができる。

スはお互いを信頼 し,隠し事をせずに何でも話 し合うことができる。

スでは問題が起こった時みんなで話し合って解決することができるo スは授業を真面目にうけ,友達 どうLで数えあいながら勉強できる。

スは係活動をみんなが責任をもってすることができるo

スは話 し合い活動では誰でも進んで意見を発表することがで きる。

スはボランティア活動などにも積極的に取 り組むことができる。

スはみんなで真面目に掃除に取 り組むことができる

スは遠足などの行事に,みんなでとても仲良くとりくむことができる。

スは先生がいない時であっても自分たちで朝の会や自習ができる

スは運動会などで他のクラスに負けないように一人一人がやる気をだしあって頑張れる。

73 .53 69 .47 68 ,46 64 .41 63 .39 62 .39 62 ,38 60 .36 58 .33 57 .33 54 .29 因子寄与 5.98 寄与率 42.69%

Table4 簡易版 エ ンゲージメン ト測定 簡易版エンゲージメン ト測定項目 (N=522)

認知的エンゲージメント (o=.72)

5)私は,学校で習ったことをもっと理解するために参考書をよく読む。

7)私は,テス トが無い時でも家で勉強している

6)私は,学校で分からないところがあると本やテレビなどをみたり人に闘いたりして調べる

4)私は,忘れ物をしないように次の日の時間割をチェックしている0 8)私は,学校でのできごとを学校以外の人によく話す。

情緒的エンゲージメン ト (a=.78) 1)私は,学校にいるのが好きだ。

3)私は,私のクラスでいるのが楽 しい。

̲2)私Li 学榎のi轡 こわくわくさせ られるO̲ ‑ ̲ ̲ ̲ 因子間相関 Ⅰ

(7)

ジメ ン トは学校 に対す るポジテ ィブな情動反応 を含 み,学校‑の同一視 として定義 している。 また,認 知的エ ンゲージメン トに関 しては,主 に学習 を含む 学校 の活動 に対 す る心理 的投 資 と して定義 してい る。 これ らの認知は,教師や仲間‑ の肯定的認知や 学習 に対す る意欲 と正の関連が指摘 されている。本 研 究 においては,エ ンゲージメン トの各項 目につい て,「1全 くそ うで は ない‑ 5とて もそ うであ る」

の5件法 リッカー ト尺度によって回答 を求めた。

生活満足度測定項 目 児童の生活満足度に関 して は,Huebner,Suldoa Valois (2005)の生活満 足度尺度の7項 目を邦訳 して用いた。Huebnerらに よる と, 生 活 満 足 度 は児童 の肯 定 的 な心 のWelト being指標 となる重要な概念である。本研究では,「1 全 くそ うではない‑ 5とて もそ うである」 の5件法

リッカー ト尺度 によって回答 を求めた。因子分析 の 結果,固有値の値や変化量か ら2因子構造が妥当で あると判断 した。因子負荷の強い項 目内容 を参考 に 第一因子 は生活満足度,第二因子は変化欲求 とした。

Huebnerら (2005)の生活満足度尺度の うち7項 目 を用い簡易版測定項 目とした。(α≡.84)

記述統計

測定 した変数の記述統計量 について示す。協働戦

術 と強制戦術 の間にはやや強い正の相 関が認め られ た (r=.55)。 また,関係勢力 と合理性勢力 は,全て の変数 と有意 な正 の相 関が認 め られた。以上か ら, 社 会的勢力の 自己認知が児童 ・生徒の様 々な適応指 数に密接 に関連 している可能性が示 された。

重回帰分析の結果

社会的勢力 の 自己認知が,友人 に対す る影響戦術 の選択, ス クールエ ンゲージメ ン ト,生活満足 度, 学級集 団効力感 に及ぼす影響 について検討す るため に,階層的重 回帰分析 を行 った。Steplにおいては, 第一 回 目の調査 においた社会的勢力 を説明変数 に投 入 し,お よそ2カ月先の基準変数 をどの程度予測す るのか について検討 した。また,Step2においては, 初回測定時か ら2回 目測走時における勢力の変化量 をモデルに投入 し,社会的勢力の維持お よび増加 に 関す る自己認知が,基準変数 を どの程度説明するか について検討 した。

影響戦術使用 について 協働 的な影響戟術の使用 に関 して は関係 勢 力 お よび合理性勢 力 の初期 の値 (関係勢力β=.22;合理性勢力β=.32)お よび変動 (関 係勢力変化量β=.18;合理性勢力変化量β=.25)が, 強制的影響戦術の使用 には関係勢力お よび強制勢力 の初 期 の値 (関係 勢 力β=.ll;強制 勢 力β=.22) TabJe5 生活満足度

生活満足 (a=.84)

私は幸せな生活をおくっている。

私の生活はうまくいっている

私の生活はどちらかというと恵まれていると思う 私の生活はとても満たされている。

私は私にふさわしい生活をおくっている。

2625487766 5742300010

変化欲求 (a=.70) できるな

今と違う生活ができたらいいなと思う

しまいたい。 .03 .82

.00 .67

‑ .56

因子 間相 関 Ⅰ

T

able6 記 述

I Ⅱ Ⅲ V Ⅵ Ⅷ Ⅸ Ⅹ Xl ⅩI M SD N

‑ ,55如 .42 .53 .25

. 0

1 .41m .43'n.15如 .108 .14榊 .01 2.99(.84)534

.19 .27 .12榊 .

1

7榊 .23州 .18榊 .26… .08 .07 .03 2.39(.

8

1)529

.40 榊 .43 … .20… .35柵 .29紳●.12 .25榊 .22叫.07 3.52(1.01)535

.20 ・01 .31榊 .53叫 ,07 .17… .18榊.02 3.12(.87)532

‑ .43州

.

29叫 .19… .03 .16… .14叫 .05 3.86(.

8 3

)543

.02 ‑.03 .14岬1.05 .04 .03 2.52(1.17)545

.51… .26…‑.40…‑.11暮.04 3.38(.

8 4

)649

‑ .18榊‑.19….41榊‑.04 2.71(.

8 2

)641

.04 .04 I.462.94(.91)661

‑ .46 .12桝 .09 (.

6 9

)507

‑ .10' .14 (.

6 4

)497 .15(.76)513

Ⅰ協働戦術

Ⅱ 強制戦術

Ⅲ 情緒的エンゲージメント

Ⅳ 認知的エンゲージメント

Ⅴ 生活満足度

Ⅵ 生活変化欲求

Ⅶ 関係勢力

Ⅷ 合理性勢力

Ⅸ 強制勢力

Ⅹ 関係勢力変化量 Xl合理性勢力変化量

Ⅶ 強制勢力変化量

(8)

鎌 田 雅 史 ・ 淵上 克義

Table7 記 述統 計

情緒的 認知的

協働戦術 強制戦術 エンゲージメントエンゲージメンI 生活満足度 生活変化欲求 集団効力感

R

2=.236'** R2=.236叫 * 関係勢力

合理性勢力 強制勢力

,32 .09 .06 .22

R2=.135 R2=.278 R2=.082… R2=022 R2= .08 .26 ‑.04 .2 .14** .48 .06 ‑.05 .04 .04 ∴01 ‑.05 .15◆̀

2

AR2= 101'** AR2= 関係勢力

合理性勢力 強制勢力 関係勢力変化量 合理性勢力変化量 強制勢力変化量

4185240120

.10 .28 .13●

.02 .15●●

.23榊 .68

.02 ‑.08' .38●11 .16

.16** .40… .05 ‑.03

‑.08 .2r*

.14' ‑.09 .14'

‑.08 .24 ‑.13'

.24… ‑.08 .11 .16** ‑.07 .19"

.01 .15'' ‑.10

お よび変 動 (関係 勢 力 認 知β=.13;強 制 勢 力 変 化 量β=.15)の標 準 編 回帰 係 数 が 有 意 で あ っ た。 関 係 勢 力 の認知 は,協 働 的 な影響 戟術 の使用 の み な ら ず,協 働 的 な影響 戦術 の使用 と も関連 して い る こ と が 示 され た (この点 に 関 して は鎌 田 ・淵 上 (2010) にお いて も, 同 じデー タに基 づ い て報 告 して い る)0 エ ンゲ ー ジ メ ン トにつ い て 情 緒 的 なエ ンゲ ー ジ メ ン トに関 して は, 関係勢 力 お よび合理 勢 力 の初 期 の値 (関 係 勢 力β=.27;合 理 性 勢 力β=.14)お よ び変 動 (関係 勢 力β=.38;合 理 性 勢 力β=.16)が , 認知 的 なエ ンゲ ー ジメ ン トに関 して は合理 性 勢 力 の 初 期 の 値 (関係 勢 力β=.48) お よ び, 関 係 勢 力 と 合 理 性 勢 力 と変 動 (関係 勢 力β=.16;合 理 性 勢 力

β=.40)に 関 す る認 知 が 関 連 して い た。 生 徒 が 学 校 を好 きに なって学校 活動 に 自主 的 に参 与 して い く た め に は,学 校 にお け る友 人 関係 や 自分 の能 力 に関 す る勢 力 認 知 を持 つ 事 が 重 要 で あ る こ とが 示 され た。特 に, 学 習 活動 に関す る主体 的参与 を表す, 認 知 的 エ ンゲー ジメ ン トに関 して合理 性 勢 力 の維持 ま た は向上 が比 較 的 強 い 関連 を示 して い る点 は,重 要 で あ る と思 われ る

生 活満 足 度 に関 して 生活 満足 度 に関 して は,児 童 の 関係 勢 力 の初期 の借 欄 係 勢 力β=.26)お よび, 関 係 勢 力 と合 理 性 勢 力 の 変 動 (関 係 勢 力β=.24;

合 理 性 勢 力β=.16)が 関 連 して い た。 また, 生 活 変 化 欲 求 に関 して は, 強制勢 力 の初期 の値 (強制勢 力β=.15)お よび変 動 (強 制 勢 力 β=.15)が 関連 して い た。 児 童 の生活 満足 度 につ い て, 友 人 関係 や 自己 の能力 につ い て勢力 認知 を持 つ事 が 重要 で あ る こ とが しめ された。 また, 強制 勢 力 と児 童 の変 化欲 求 との 関連 が示 され た。

集 団効 力感 につ い て 集 団効 力 感 につ い て は,初 期 にお け る関係勢 力 の値 (関係 勢 力β=.24)お よび, 合 理 性 勢 力 の 変 動 (合 理 性 勢 力β=.19)に よ っ て 説 明 され た。 良好 な友 人 関係 に基 づ く勢 力 認 知 と,

自己の能力 に関す る勢 力認 知 を維 持 また は増加 させ て い くこ とが学 級 集 団全体 を肯 定 的 に捉 え る こ とに つ なが る こ とが示 され た。

考 察

本研 究 で は, 児 童 の社 会 的勢 力 の 自己認 知 が, 児 童 の情 緒 ・認知 ・行動 の諸側 面 に密接 に関連 す る こ とが示 唆 され た。 まず児 童 の情 緒 的 な側 面 に関 して は,関係 勢 力 や準拠 勢 力 を有す る と認知 す る児 童 は, 学校 活動 や生活 をポ ジテ ィブ に と らえ る傾 向が しめ

され た。 これ は, 勢 力 を所 持 して い る状態 は心 地 よ い状 態 で あ る と指 摘 す るFiske(2001)千, 社 会 系 勢 力 の保 持 ・獲 得 が ポ ジテ ィブな情 動 喚起 と関連 す る とい うKeJtner(2003)と一致 して い る。 また, 生 活 変 化 欲 求 に関 しては, 強制勢力 の値 や変動 と正 の 関連 が認 め られ た。 この点 に関 して は, 強制 的 な 社 会 的勢 力 の保 持 は快 で あ りそれ を維持 す る よ うに 動 機 づ け られ る とい うKjprlisらの変性 効 果 とは異 な る結 果 で あ り, む しろ強制 的 な勢 力 認 知 を もつ 児 童 の多 くが現 状 を変化 させ たい と感 じてい る こ とを 示 して い る。Guinote&Vescio(2010)は, 変性 効 果 は,社 会 的勢力 保 持 者 が不協 和 を感 じ それ を 合理 化 す るため に対 象者 と自己の関係 を再 定義 す る こ とか ら始 まる と提 唱 してい る。 強制勢 力 の 自己認 知が勢 力 保 持者 の児童 の 関係 認 知 を歪 め,不協 和 を 感 じな くな って しま うまで進行 して しまった特 殊 な ケースが, い じめ な どを含 む様 々な生徒 指導 上の 問 題 と密接 に関連 す る可 能性 もあ るた め, 今後 よ り検 討 して い く必要 が あ る と思 われ る

認 知 的 な側 面 に関 して は, 関係 勢 力 や準拠 勢 力 の 自己認知 や その変 動 が主体 的 な学校参 与 に関連す る こ とが 示 され た。 こ の 点 に 関 して も,Keltnerら (2003)が指摘 す る接 近一 抑 制理 論 と一致 してお り, 勢力 の認 知 が よ り積 極 的 で活発 な学校 参与 と関連 す

(9)

ることが示 された。 また,学級集団認知に関 しては, 初回測定時における関係勢力認知

,合理性勢力の 変動が正の関連 を示 している。つ まり,児童が学級 をまとまりある集団 として認識す るには,初期 にお いて友人関係 における勢力を感 じていることや,学 級の形成過程において自己のコンビテ ンシーな どに 関す る勢力認知を維持 または増加 させていることが 重要であることが示唆 される。 この点 に関 しては, 集団成員が共通する目標 にむかって互いに協働 して い く中で,集団成員は社会的勢力 を獲得 してゆ き.

その結果集団が よ り形成 されてい くとい うTurner ら (2008)の社会的アイデ ンテ ィテ ィ理論か ら派 生す る社会的勢力のThree‑ProcessModelか ら 解釈可能であるか もしれない。つ ま り,関係勢力や 合理性勢力の変動は学級児童が互いに協働 してい く ことと密接 に関連 し,その結果児童は学級集団に関 する社会的アイデ ンティテ ィを形成 し,よ り肯定的 に学級集団を評価する可能性がある。

行動的な側面 に関 しては,社会的勢力の中で も, とくに関係勢力の認知や変動 は,児童の協働的な影 響戦術の使用 も,強制的な影響戦術の使用 もどちら

も促 す こ とが 示 さ れ た。 こ の 点 に 関 して は, Galinsky&Gruenfeld&Magee(2003)と一致 し, 社会的勢力の 自己認知 は勢力保持者の活動性 を高 め,状況 によっては友人に対 し行動選択の余地を与 えず コン トロール しようとす るような強制的な対人 行動 も促進 させることが示 された。 また,合理性勢 力の認知 に関 しては協働的な戦術使用,強制勢力の 認知に関 しては強制的な戦術使用 との関連が認め ら れ勢力資源認知によって用い られる影響手段が異 な るこ とが示 された。 この点 は,Raven (1992)が 提唱する,影響者は,対象者に対 して働 きかける際,

自己の勢力資源や過去の経験 を元に,最 もコス トパ フォーマ ンスが良いと思われる影響戦術 を合理的に 選択す る とい うIPIModelに よって説明可能であ る。IPIModelか らは,児童が 自発的に協働的な影 響戦術 を選択使用 しやすい ような文脈 を作 るには.

児童が協働的な戦術を用いることの有効性 を知覚す ることが重要であることが示唆 される。そのために は,児童の対人スキル高める工夫や,友人 とうま く 協働する体験 を促すこと, 日常的にお互いが 自由に 意見を交換 し,協力 し合えるような学級集団の形成 が重要になると言える。

最後に,学校における社会的勢力研究の今後の課 題 に関 して述べ る。これまでの議論は,勢力の自己 認知が高い勢力保持者が強制力 を行使する傾向に焦 点づけて検討 してきた。 しか し,勢力認知の低い児 童 に於いても同 じように強制的な行動 をとる傾向が

指摘 されている。勢力認知の 自己認知が低い影響者 が.地位や権力 を与 えられた場合 に懲罰的な行動や 強 制 的 な行 動 が 多 く行 われ る とい った現 象 は, PowerParadoxと 呼 ば れ る (200 1 )。Power Paradoxに関 しては,主 に親子関係 や,上司部下 関係 に お い て こ れ まで 検 討 が 重 ね られ て きた (Kipnis,1976)。学校教育に於いても,勢力の 自己 認知の低い児童が,例えば部活動 において下級生に 対 してなど一定の権 限を持った時 どの ような行動が 促 されるのかについて も,検討 してゆ く必要がある だろう

また,本研究 は児童の社会的勢力認知 を検討する 探索的な研究に位置づけ られる。本研究で示唆 され た点 を踏 まえて今後,社会心理学の領域で提唱 され ている各理論が,児童 ・生徒 にどのように応用可能 であるか, またそれが どの ような意義があるのかに ついては繰 り返 し問い直 してい く必要があると思わ れる.また,研究法や測定尺度等 に関 して も.今後

より精微化 してゆ く必要があるだろう。

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参照

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