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親の育児感情に影響を及ぼす乳幼児の年齢別要因の検討

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(1)

親の育児感情に影響を及ぼす乳幼児の年齢別要因の検討

一PSI概念モデルをもとにした児の年齢穿下較一

諏澤 宏恵1),加藤 則子2),山田 和子3)

〔論文要旨〕

 親の育児感情に影響する児の気質発達的特徴と,親の健康や育児環境との関連について探るために Parenting Stress Index(PSI)を参考に作成した質問紙調査を乳幼児を抱える親319名に実施し,児の 年齢別に検討した。親の育児感情を従属変数とした場合の重回帰分析の結果,1.5~2.4歳二二では,新 たな環境や人への適応のよさが親のよい育児感情に有意に影響していた。2.5~5歳晶群では,親の育 児能力,他の仕事の負担などによるゆとりのなさに加えて,児の機嫌が親の体調の悪さに影響しており,

3歳前後の自我の発達がめざましい児への対処不能感が示された。これらの結果から,児の年齢では3 歳前後の自我の拡大期が,親の健康面へ影響し親子関係を悪化させる可能性があり,乳児期にとどまら

ない親への健康支援と児の問題行動への支援を包括的に行う必要性が示唆された。

Key words=PSI,児の気質,育児感情

1.はじめに

 近年,児童虐待や養育放棄といった育児をと りまく問題が顕在化する中,地域保健領域に あっても,さまざまな予防的取り組みがなされ ている。特に乳幼児健康診査の場において,育 児にまつわる親の感情についてのアンケートや 問診票を作成し,きめ細かいスクリーニングを 実施するなど,虐待の早期発見に努めている5)。

 また,子ども側からみた虐待リスクとされる 気質的特徴などについて概観すると,国内の児 童養護施設の入所児童(3~7歳:被虐待児 24%)を調査した研究結果3)においても,被虐 待児は新奇場面や人に回避的であり慣れに時間

を要する「適応」の悪さが指摘されている。

 Thomas&Chessらの30年以上にわたる縦断

研究結果から子どもの気質と養育環境との「適 合のよさ」は養育者の「期待や要請」が子ども の気質や能力などの特徴と相容れたときにみら れるとされている。

 したがって「育児」の周辺の問題を究明する には「母親の心理」,「乳幼児の問題」,「相互の 関係性」についての検討が必要となる。

 これらについて多角的に捉えようとするの がAbidin RR(1983)1)の開発したParenting

Stress Index(以下, PSI)注)である。

 そこで,本研究では,PSIの育児ストレスモ デル(図1)を参考に,結果としてのストレス ではなく,児の気質発達的特徴や発育発達が,

育児にまつわる親の感情についてどのように影 響しているかという帰属要因について,児の年 齢別に検討することにより,育児感情と向き合

Study of Factors Affecting Parenting Emotion according to Children’s Age 一 Comparison among Children’s Ages Based on the Conceptual Model of PSI 一 Hiroe SuzAwA, Noriko KATo, Kazuko YAMADA

1)国立保健医療科学院研究課程(保健師)

3)和歌山県立医科大学保健看護学部(保健師/研究職)

別刷請求先:諏澤宏恵 国立保健医療科学院研究課程 〒351-0197埼玉県和光市南2-3-6      Tel:048-458-6111 Fax:048-458-6112

   (1802)

受付06 1.23 採用07 1.23 2)国立保健医療科学院生涯保健部(小児科医師/研究職)

(2)

第66巻 第3号,2007 403

構成要因   《親》

憂うつ

/塵コ配偶者関係 社会的支援 人格・病気

転成歯形

能力

構成要因

《子ども》

育児ストレス

順応性 受容性

役割制限

講5一[1[ヨ      國

育児放棄 親の健康度 活動性

*仮説的に構成した下位尺度

・・…一・一戟@*に伴う仮説的関係

親への促し

図1 PSI理論概念構成

耀

う支援の実践に還元可能な理論的根拠を得るこ とを目的とする。

 なお,プレテストの結果,回答率が30%以下 と低く,PSIの質問項目は各年齢共通であるた め,乳児などの月齢にそぐわないなどの回答者 からの意見があったことから,各年齢発達に見 合う質問項目に改変し,新たに尺度の開発を試 みた。本調査は尺度開発に一義的な目的をおい ておらず,上述した現状から二次的にアイテム の変更を余儀なくされたことを付け加える。

皿,方法と対象 1.対象と期間

 PSI理論構成注)に沿って改変したオリジナル の無記名自記式質問紙調査を実施した。調査期 間は平成16年11月~12月とした。回収率は57%

で,回答に記入漏れなどの不備のあった3名を 除く合計316名であった。

 回答者の属性は関東地方W市育児支援セン ター利用者144名(45.6%),M市育児支援セン ター利用者98名(31.0%),と私立保育園利用 者74名(23.4%)である。

 続柄は,母親312名(98.7%),父親4名(1.3%)

であり,年齢は,10歳代1名(1.3%),20歳代 62名(19.6%),30一代230名(72.8%)40歳

代23名(7.3%)。就労形態は,専業主婦215名

(68.0%),フルタイム就労67名(21.2%),パー トタイム就労19名(0.1%),自営業12名(3.8%)。

家族形態は核家族290名(91。8%)。児の属性は 男児150名(47,5%),女児160名(50.6%),1 歳未満60名(19.0%),2歳未満84名(26.6%),

3歳未満98名(31.0%),4歳未満53名(16.8%),

5歳未満21名(6.7%),第1子224名(70.9%),

第2子80名(25.3%),第3子12名(3.8%)で あった。

 今回は児の年齢別にみた発育的特徴との関係 についての検討を研究目的としているため,居 住区域(W市・M市)および帰属集団(育児支 援センター・保育園)はデータを合併した。

2.倫理的配慮

 調査の趣旨を口頭で直接説明し同意を得た養 育者に,調査票と返信用の封筒を手渡し,郵送 により回収した。また調査票の表紙に調査者の 氏名・連絡先・研究の趣旨および匿名性を確保 する旨などを表記し,調査後リーフレット配 布を施設に設置し,広報的に結果のフィード バックを行った。

注)育児ストレスを子どもの特性や親の心理社会的側面から多面的に把握するものであり,親子相互作用に関わ  るストレス因子など親子関係が投影される。日本版PSIは信頼性および妥当性が実証されている。 PSIを構

成する下位尺度は,A.子どもの特徴に関わるストレス6尺度47項目および, B,親自身に関わるストレス7 尺度54項目の計78項目からなる。

(3)

3.調査項目と下位尺度作成の手続き

 調査項目は基本的属性(子どもの年齢,出生 順位,既往歴,親の年齢,就労,世帯構成など)

に加え,以下の尺度構成からなる。

 PSI理論構成の枠組みを参考にしたオリジナ ルの仮説的下位尺度を構成した。下位尺度作成 の手続きはPSI1)の原本に準拠し,構成概念を 踏襲した(図1)。

 全質問項目数は乳児(58項目),幼児1(59 項目),幼児1(61項目)である。回答は,各 項目5段階のリッカートスケールによる自己評 価法である。

 A.子ども側の特徴に関わるストレス要因に

「発育」にかかわる項目を,B.親自身に関わる ストレス要因に「家族との関係」,「ゆとり」,「知 識」に関わる項目をそれぞれ仮説的に追加した。

また,A,子ども側の特徴は対象年齢別に,乳 児(1。5歳未満),幼児1(1.5~2.4歳),幼児

1(2.5~5歳)に分類し,「発育」や「活動性」,「順 応性」に関する問いを,それぞれの年齢に見合っ た内容や表現に変えた。B.親自身に関わる項 目については各年齢群とも共通とした。使用し た質問紙の種類は,Piaget9)による認知発達段 階を参考として区分し分類した。それぞれ《乳 児(1.5歳未満)》82名(25.9%),《幼児1(1.5

~2.4歳)》112名(35.4%),《幼児II(2.5歳~

5歳)》122名(38.6%)であった。

4.尺度の項目分析

 尺度の内的整合性を示す信頼性係数(α係数)

は乳児(0.91),幼児1(0.86),幼児Ir(0.90)

であった。因子分析後(プロマックス回転)の 下位項目のα係数は表1に示した。

5.構成概念妥当性の検討

 本調査オリジナル版質問紙(乳児用・幼児1 用・幼児1[用)の質問項目の因子構造を知るた めに,A.子ども側の特徴に関わるストレス項 目と,B親自身に関わるストレス項目につい て,それぞれ因子分析を行った。固定値1およ びその減少率を基準に因子数を規定し,主因子 法によるプロマックス回転を行い,各因子の上 位3位までの因子負荷量の絶対値が0.3以上を 示した項目を採択した。採択,命名した因子は

表1のとおりである。

 また,下位尺度と総合計得点との相関係数は,

乳児の「発育」を除くすべてにおいて有意(p

<.05)であった。

6 統計解析

解析にはSPSS11.OJ for windowsを用いた。

皿.結果(図2および図3)

 PSI概念モデル(図1)をもとに,親の育児 感情と各要因の関連をみた(図2および図3)。

 親自身についての設問から,育児感情を表現 した「育児は楽しい」,「育児に自信がある」,「イ ライラしたり,憂うつや不安になることは少な い」,「体調がすぐれない」の4項目を従属変数 とし,因子分析により抽出された児の特徴に関 わる因子と親自身に関わる因子を独立変数と

し,重回帰分析を行った。「イライラしたり憂 うつや不安になることは少ない」は各年齢群と もに,そう・どちらかといえばそうの回答(乳 25%,幼130%,幼1[32%)より,違う・どち らかといえば違うの回答が多く(乳42%,幼1 35%,幼ll 40%),ネガティブ感情表現の従属 変数とした。

 ステップワイズ法により,《乳児(1歳未満)》,

《幼児1(1.5~2.4歳)》,《幼児1[(2.5~5歳)》

について各要因の分析をした。

1) 《乳児》では,「親の能力」が「育児は楽  しい」(F(2,79)=18.48***)(β=.42**)

 と「体調がすぐれない」(F(1,80);20.41*)

 (β=.45***),「イライラ」(F(3,78)=

 31.58***)(β=.34***)の両価的方向に  寄与した。親の要因では「親役割の規制」が「イ  ライラ」(F(3,78),β=.21*)にのみ寄与  し,自信につながるまでに至っていないこと  が分かった。

2)《幼児1》は「親の能力」は「イライラ」(F  (3,118)=39.57***)(β=.30**)と「育児  に自信がある」(F(3,108)=15.67***)(β  =.372***)の相反する感情に寄与し,調査  集団における親自身の育児能力評価の分散は  大きいことが分かった。児の要因では「適応」

 (F(3,78)=15.67***)(β=.23**)が「育  児は楽しい」に寄与した。

(4)

2007 405 第3号 第66巻

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(5)

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(6)

第66巻 第3号,2007 407

構成要因

 《親》 O.312 * *

構成要因

《子ども》

畳 情

(PSI;愛着形成)

O.310 * *

 蘭係*

ぐPSI,配偶者関係)

、順慮性

    O.326 * *

O.261 * .358 * *

社会的支援 Q{t!Elg* * [1[N

能力 α338*

「役割制隈

         0.358**

ひ む ホネホ

育児放棄[亟璽コ

        0.340**

       O.329**

\ム.,.

@機嫌@(PS1;気分)、

*4L

4’拶動欝勤雛r (PSI話動牲)・

tteを欝ぱせ為止口・、

(ps蜜頚輸鐙礎も}、

   *Pぐ。5、**Pぐ。1***P<、。。1  圏9**

   <→レ***・<・OOI・ *9関係蜘35以上の関連  .[麺コ

#注o一]仮説的に構成した因子E諜窪錨難因子

       図2-1 《乳児》の因子問の相関パス

徽懇》

西人 格

病 気

O.368 * * *

瓢重

鎮霞網布野・233・

愛 情

(PSI:愛着形成)

構成要因

《子ども》

順応性 社会的支援

  .226 * *

O.289 * *

,356* * si

O.298 * * 画論

能・カ、…

 嫌くPSI.;気分)

0294* 後嗣制限      

親の健康度 O,320 * *  噸働(PSI;活動 〉.

圖[璽  、251。*織攣滋。・324***

      ,読応 0193*

   *p〈.05 **p〈.Ol ***p〈.OOI

       発育*

    <←一→レ***pく.001,相関係数0.35以上の関連

#注o一]仮説的に構成した因子冒籠宴欝糠因子

        図2-2 《幼児1》の因子問の相関パス

3) 《幼児1》では,児の要因と親自身の要因  が育児感情に輻韓的に関わり,「イライラし  たり憂うつや不安になるこは少ない」(F

 (10,111)=12.45***)には,「親役割の規制」

 が中程度に寄与した(β=.517***)ことか  ら,親の拘束感が強く,フラストレーション  が募りやすい時期と考えられる。また,「体  調がすぐれない」(F(3,118)=14.52***)

 について親の要因「能力」(β=.248**),「ゆ  とり」(β=.312***)に加えて児の要因「機  嫌」(β=.195*)が寄与していた。

4)《幼児1》《幼児ll》では「親役割の規

 制」(F(3,108)=15.67***),(F(3,118)=

 29.98***)が「育児の自信」に影響していた。

 (B = .212’), (B == .184*)

5)今回の仮説的設問項目である,「身長や体  重の伸び」などに関する児の「発育」要因は  全年齢を通じて構成要因として析出されたが  「親のイライラ」や「育児の自信・楽しさ」

 を説明する要因としては寄与しなかった。

6) 全体を概観すると,《幼児1[》は従属変数  を説明する有意な変数が多く,複雑な構図が  示された。こ.れを従属変数別にみると,「体  調がすぐれない」では他年齢(1変数)に比べ,

 《幼児■》では3変数と多くに寄与していた。

(7)

構成要因 構成要因

愛 情 iPS工;愛着形成)

《子ども》

 《親》

@0.326* ∠

家族関係*

i1:1罪野匝支援 團西

1*

α233*`258・〆糠紛メ避1.

0.236* ’

0.505*** Ll郷騰鶏肋 ∠

卜08*

σき94*** 7  ・を’      0267**         \【 総雌議轡1

錫    《 レ

\力.

ナ封

翻繊’ 千価379**

315;眺・,」攣コ瞬康度

騰麟ば繍帳欝

ュ麟親へ⑳解し)

賦」 Ω ゆと紅*

α10動輪,α261*粘

圖・

@   *P<.05

0.189*

@ 0.350*** 懸轟触 「緩パ

<→:瓢畏蹴編=愚、35以上の関連  騰灘,

寺α237**

#注o一]仮説的に構成した因子E轟轟雲懲繰因子

      図2-3 《幼児ll》の因子間の相関パス

構成要因  《親》

∴愛惰

(PSI;愛着形成〉

家族関係*

(PSI,配偶者関係)

O.285 **

社会的支援

麟壽 怐D

       ・壌轟…

 0.418***

      機嫌        .301

      247*

      くps蹴蜘  麓.蝕,

      ホホ

       。207*

壷 [奮[璽コ三論

     。,<.。5**,<。1***,<.。。1    [発育*]

     → ***p<.OOI,標準化係数(β)0.4以上の関連

    擁育児は楽しい    麹灘 轍蓬 体調がすぐれない

従属変数       ・ 灘纈   占イライラしたり憂うつや

    麟育児に自信がある・、、不安になることは少な、、

       〈図中の数値は標準化係数(β)〉

    図3-1 《乳児》の親の感情を従属変数とした重回帰パス

祭器

黒 煙 群 島

Iv.考

1.児の年齢からみた親子関係のリスクとサポート

 Thomas&Chessによると,人は幼児期か ら継続的に,社会的・課題熟達の必要性に直面 しており,ポジティブな適応はある程度のスト レスを生じるが,精神的に健康な人はある程度 これに耐えられ,何ら防衛的方法に頼る必要は なく,自己の能カー自己評価の感覚を増加す る。この場合のストレスは望ましい挑戦であり,

新しい体験を付加することになる2)と述べてい

る。育児において,望ましい挑戦へと喚起する ものは,子どもの反応であり「機嫌」,「適応」

や「親を喜ばせる反応」であることが今回の調 査結果からも明らかになった。また子どもの年 齢段階によって親の感情の葛藤の質が異なるこ とが示された。育児相談や支援の過程において は,一律に応じるのではなくそれぞれの特徴壷 考慮した対応が望まれる。

 今回の調査から,《乳児》から《幼児1:1.5

~2.4歳》期では,児の成長とともに親の育児 の自信が形成され,またその質は確固たるもの

(8)

第66巻 第3号,2007 409

構成要因  《親》

害ロ踵{1

O,372 * * *

能力

構成要因

《子ども》

家族関係*iPSI;配偶者関係) 障会的支援 1

愛 情 iPSI;愛着形成)

國亜

**

@       .28*一り.34**     0.212*

@ 1細甑  認**

@ [亟] 育児糠「親の健戴1

義鑛

潤@1**,1簾分)r       多動・衝動性       (PSI;活動性)         α229*  親を喜ばせる反慈         α22 * 《P鍍親への促し)       轟i

    ・P〈.・5**,〈.・1***P〈℃・・1     [壷コ     →***p<.001,標準化係数(β)O.35以上の関連

    醗育児は楽しい    、、鞠 興、灘 体調がすぐれない 従属変数    欝欝翻育児に自信がある欝購適系萎認識郷

      く図中の数値は標準化係数(β)〉

    図3-2 《幼児1》の親の感情を従属変数とした重回帰パス

構成要因  《親》

■鳳 家族関係*(PSI,配偶者関係)

愛 情

(PS工,愛着形成)

社会的支援

Lms

.277i,ptsii *

繋t一、

./ O.51L.

  *

O.502***

.29***

構成要因

《子ども㊨梵ォ》

團團

機 嫌

.ζ職気骨〉

能.1カー[0・21

      歪嬢繍毅

知言*

     O.321***/ N“一h一一一k.o.ls3*

 ・186・栃*

.ゆと癖     [育児放棄][亟亟]

  衝 ’

(PSI,活動性)

  書 騒

《PSL親への例し〉

     *P〈.。5**P〈.。1***,く.。。1     [=垂王コ     →***p〈.OO1,標準化係数(β)0.35以上の関連

    麗育児は楽しい    IE饗抽.    体調がすぐれない 従属変数    叢叢翻育児に自信があるilleeew麟萎認識郷

      〈図中の数値は標準化係数(β)〉

    図3-3 《幼児II》の親の感1青を従属変数とした重回帰パス

ではなく,アンビバレントで揺れやすい質のも のであることがわかった。特に《乳児》期では,

「親の能力」が親の感情の上価的方向へ寄与を 示し「親役割の規制」が「イライラ」にのみ影 響し,自信につながるまでに至っていなかっ た。こうした結果より,育児支援の実際におい ては,育児教室などで一律に知識を伝えるのみ でなく,何ができないのか具体的な育児能力を アセスメントし,当事者(親)とともに考える ことで育児に主体性が生まれ,「やらされてい

る感覚」や感情の揺らぎが軽減されるのではな いだろうか。

 また《乳児》期は実際に親子の密着度の高い 時期であり,今後さまざまな託児サービスなど の社会制度の拡充により,親自身の時間的余裕 が作られることを期待する。

 さらに《幼児1:1.5~2,4歳》期では,児の 機嫌や親を喜ばせる反応などの要因が親の育児 感情に強く影響していた。

 杉山ら6)の被虐待児の調査(2004)において

(9)

も,軽度発達障害の存在が被虐待児の53%に認 められている。発達障害は,誤った反応を相手

(養育者)に伝えてしまうため,親の育児感情 を歪ませると考えられる。

 栗山,庄司によると,低出生体重児などの周 産期ハイリスクを抱える児は,反応の弱さがあ り,刺激に反応するが反応が弱く,順応性がな く世話がしづらいと親が感じている7>。

 このように1.5~2.4歳期では児の反応やコ ミュニケーションスキルが,親の感情に影響す ることを考慮して,親の訴えのみならず,子ど もの気質や機嫌,発達などを丁寧にみていくこ とで,親一子の関係性を捉えポジティブな感情を 伴った育児支援につなげることができると考える。

 さらに《幼児II:2.5~5歳》においては,

養育者の体の不調に「能力」,「ゆとり」に加え.

て児の要因「機嫌」が寄与し,3歳前後の自我 の発達がめざましい児への対処不能感を表して いた。児の自我の拡大に伴い,親の心身の疲労 感も増すと考えられ,ともすれば相互の関係が 悪循環を来しかねないリスクを抱えた時期と考

えられる。

 PSI理論においては,児の「適応」のストレ ス得点の高い親は,親役割を形成しづらくさせ ると結論している1)。特に児の自我が活発にな り制止がきかなくなる年齢《幼児ll:2.5~5 歳》では「親役割の規制」が「育児の自信」,「イ ライラ」の両方に中程度にかかわっていたこと から(0.5***),親の自信を確信する場合にも 拘束が強いられている感覚が比較的強くあり,

フラストレーションが募りやすい状況にある と考えられる。米国NICHD Early Child Care Research Networkの調査では,子どもの問題 行動と,母親のうつ症状,ソーシャルサポート の量parenting stress,母親の人格の総体,低い 結婚の質などの心理社会的リスクとの関連が,

24か月よりも36か月の時期に影響が強かった9)。

 以上のことから,特に《幼児ll:2.5~5歳》

では,親自身が現状を克服しようと孤軍奮闘し ている状態を受け止め,そのうえで自己の能力 や自信をどのように捉えているかを把握するこ とが,親子関係のアセスメントに必要であり,

怒り一罪の思考循環を早期に断ち切るために有 効と考える。

 しかし,幼稚園や保育園などの集団に帰属し ない期間の幼児と親については,フラストレー ションがあってもそれを解消できる場は少な

く,2,3歳児親子は保健医療従事者との接触 も乳児期に比べ格段に減り,積極的に把握され にくいと考えられる。今後は子育て支援にかか わる施設などとも連携し,親のニーズを把握す る機会の拡充に努めることも重要であろう。

 このように,児の気質や行動特徴からくる育 児感情に留意し,親の心身の健康問題にアプロー チすることが育児支援に必要であり,虐待の一次 予防や親子関係の修復に必要であると考える。

2.能力の発達と気質的発達

 本研究にオリジナル項目として,仮説的に構 成した「発育」については,親の育児感情を表 現する従属変数に全く寄与しなかった。これは 気質傾向ではなく,能力(何ができるか)を問

う項目である。

 断言はできないまでも,子どもの「能力」よ りも「気質」傾向の方が,乳幼児の親の育児感 情に与える影響が大きいのではないだろうか。

 個人の気質や認知の様式について,Thomas

&Chessらは,知的現象に含まれる「どのよ うな(what)よりはむしろ(how)という側 面に関連したもの2)」と定義している。「~で

きる」などの能力とは異なった概念とし,「ど のようにするか」ということを測るものである。

 小児保健領域においては,健診など,児の「能 力」の到達度から発育発達を見極めるのみでな く,気質的な特徴をみていくことで,行動上の 問題や親の育児上の悩みに応えられるだろう。

3.尺度の妥当性および限界と課題

 今回PSIをもとに開発した尺度は,因子名 の命名や解釈など検討の余地を残しつつも,育 児感情を説明する要因が,各年齢群に共通・特 異的なものと異なった様相として確認されたこ

とは意義があると考える。

 また,親の育児感情の要因として「夫や家族」,

「孤立」,「期待」,「多動・衝動性」が寄与しなかっ たが,育児支援センターや保育園に帰属し,親 と社会のつながりがあり,幽発達的問題を抱える 児も少ないことなどの対象集団の特性を反映し

(10)

第66巻 第3号,2007

た結果と考える。

 今後は父親や帰属集団など対象を変えて調査 を継続していく必要があると考える。

        引用・参考文献

1) Abidin, Richard R., Parenting Stress lndex,

  Third Edition, Professional Manual, PAR, lnc.

2)Thomas, A.&S. Chess,林 雅次監訳子供   の気質と心理的特徴,星和書店,1981.

3)戸松玲子,小林 登他,児童養護施設で生活す   る子どもの気質研究小児保健研究2005;64(1):

  18-25.

4)主任研究者;小林 登,平成13年度厚生科学研   究(子ども家庭総合研究)児童虐待及び対策に   関する研究,総括研究報告書,児童虐待全国調査   1.虐待発生と対応の実態,2.地域調査,2002.

5)諏澤宏恵,山田和子,地域保健における保健機   関の児童虐待予防の取り組みと課題一平成13年   度「児童虐待及び対策の実態把握に関する研究」

  調査データより一,小児保健研究,2005;64(5):

  699-708.

6)庄司順一,子どもの気質と発達について,小児科,

  Vol.40, No.8, 1999:995-1000.

7)栗山容子,庄司順一他,低出生体重児の気質と   母親の意識・感情の発達的変化と相互関連性,

  小児保健研究,2001,511-518.

8)杉山登志郎,特集子ども虐待へのケアと支援,

  そだちの科学,日本評論社,2004:2-9.

9) NICHD, Care and Youth Development The   Interaction of Child Care and Family Risk in   Relation to Child Development at 24 and 36   Months, Child Care and Child Development,

  The Guilford Press, 2005.

10)Piaget.J,滝沢武久訳,思考の心理学・発達心   理学の6研究みすず書房,1999.

11)J.ボウルビィ.作田 勉監訳ボウルビィ母子   関係入門,.星和書店,1981.

12)武井裕子,保護者の捉えた幼児の気質的特徴,

  川崎医療福祉学会誌,2001,179-183.

13)David N.J, et al,編著,鈴木敦子他訳児童虐   待防止ハンドブック,1995,医学書院.

14)横田俊一郎,育児不安への対応と母親気質,周   産期医学,Vol.30, No.1,2000:121-125.

15)石井かやの,子どもから母親への愛着,小児科

411

  臨床,VoL 57,増刊,2004:1281-1286.

16)輿石 薫,新生児から生後4か月までの子ども   の気質の安定と母親の育児不安小児保健研究,

  2002 i 61 (3) : 482-488.

17)栗山容子,乳幼児の気質構造の分析,小児保健   研究,2000;59(3):417-423。

18)奈良間美保,他,日本版Parentiong Stress In-

  dexの信頼性・妥当性の検討,小児保健研究,

  1999 i 58 (5) : 610-616.

19)田中克枝,広瀬たい子,脳性麻痺児の母子相   互作用の検討,小児保健研究,2003;62(4):

  481-488.

20)加藤忠明,赤ちゃんのコミュニケーション,周   産期医学,Vol 26, No,26,1996151-54.

CSummary)

We conducted questionnaire research for parents in accordance with Parenting Stress lndex (PSI) , for the purpose of finding relationship among chil-

dren’s temperament development characteristics that influence on parents’ emotion relating to child care, parents’ health condition and environmental factors. The number of targeted parents was 319,

and the questionnaires were separately prepared for several child age groups.

 As a result of multiple linear regression analysis selecting dependent variables relating to parenting emotion, we found that, for the group of age 1.5 to 2.4, children’s “adaptation” to new environments and persons is significant to good parents’ feeling of child care. For the group of 2.5 to 5, lack of par-

ents’ ability of child care and of their free time due to work load, etc. as well as children’s bad temper significantly affect on parent’s bad physical condi-

tion. Especially, parents tend to feel inability of child care for 3 year-old children who develop their ego rapidly. This indicates that the parent-child relationship is apt to deteriorate during the period of children’s ego development, and that comprehen-

sive assistance for parents and,children is necessary in addition to the provisional infant child-care.

(Key words)

PSI, Children’s Temperament, Parents’ Emotion

参照

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