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良性胆道疾患術後愁訴について

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(1)

(東女医大誌 第48巻 第8号頁651〜656  昭和53年8月)

〔臨床報告〕

良性胆道疾患術後愁訴について

松村

マツムラ

遠藤

エンドオ

川田

カワ タ

東京女子医科大学第二病院外科

功人・花岡 農夫・山崎

イサト  ハナオカ  タカオ  ヤマザキ

久人・芳賀 駿介・中田

ピサト  ハ ガ  シユンスケ ナカタ

裕一・尾崎  進・梶原

ピロカズ  オ  ザキ  ススム カジワラ

靖夫・服部 俊弘・

ヤスオ  ハツトリ  トシヒロ

一郭・蒲谷 尭・

        タカシカズヤ   カハ  ヤ

哲郎・坪井 重雄

テツ割目  ツボイ   シゲオ

(受付 昭和53年5月10日)

        1. はじめに

 近年,胆嚢胆道疾患に対する術前・術後の患者 管理・化学療法の発達により,胆道系手術死亡例 の減少し,肝硬変,糖尿病,気管支喘息,高血圧 などの合併症例や,高齢者症例の手術適応の拡大 は著しい.その結果われわれ外科医を悩ますもの に術後の愁訴がある.そこで今回私共の教室にお ける胆道系術後患者の愁訴を分析して,この問題 について検討を加え,知見を述べたいと思う.

       皿・症  例

 昭和44年1月から昭和52年10月までの当教室の 胆道疾患223例を検討してみる,性,年齢,男女 比は1:4で女に多く,その内訳は胆石症147例

(66%),総胆管結石症42例(18%),肝内結石症 6例(3%),結石が2部以上に亘るもの17例(8

%),悪性腫瘍4例(2%)である.胆石症ではコ レステロール系石が90%以上を占め,逆に総胆管 結石で,肝内結石は圧倒的にビリルビン三石が多

かった.

 最近2〜3年は胆石症患者が総胆管結石症患

者,肝内結石症患者よりも増えつつある(表1).

当科の65歳以上の高齢者の胆道疾患症例は19例 で,これは全体の9%を占めており,男女比は7

:12で女が多く,その内訳は胆石症8例(42%).

総胆管結石症8例(42%),悪性腫瘍3例(16%)

となり,悪性腫瘍の占める割合が高い(表2).

 70歳以上では胆石症3例,総胆管結石症3例,

悪性腫瘍1例の計7例を数える(表3).〔良性胆 道系疾患術前の自覚症状〕

 ここで良性胆道疾患のみにしぼって自覚症状を 調査してみると,疹痛が最も多く84%を占め,中

でも放散痛を伴なうものは21%あり,全身倦怠感 は31%と割合高い値を示した.消化器症状として は悪心,嘔吐がおのおの20%前後を占めている が,下痢症状は11%と低かった(表4).

 〔良性胆道系疾患術前の他覚的症状〕

 他覚的症状としては,圧痛が最も多く39%,

ブルンベルグ徴候を呈したもの20%,筋性防御14

%,発熱のあるもの18%であったが,顕性黄疸,

腫瘤触知可能なものはおのおの8%,5%と低か  15ato MATSUMURA, Takao HANAOKA, Yasuo YAMAZAKI, Tosbihim HATTORI, Hisato

ENDO, Syμnsuke HAGA, Kazuya NAKATA, Takasbi KABAYA, Himka蹴KAWATA, Susumu

OZAKII, Tetsuro KIAJIWARA and Sbigeo TSUBO互Department of Surgery Second Hospital of Tokyo Wo−

mens Medical College:Post Biliary Surgery Syndrome

一651一

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68

表1 当教室における胆道疾患症例

胆 石 総胆管

巨ホ

胆 内?石

2部位以 繧ノわた骭巨ホ

悪 旧 マ 瘍 その他

昭和44年以前 52 31 11 1 3 1 3

昭和45年 15 10 1 3 1

昭和46年 11 4 5 2

昭和47年 .15 10 3 1 1 1 1

昭和48年 14 13 1

昭和49年 19 10 6 2 2 1

昭和50年 26 18 3 1 3 1

昭和51年 33 27 5 1

昭和52年10月迄 38 24 7 1 3 2 1

表2 65才以上高目者胆道系疾患症例 表5 術前の他覚的臨床症状     ♂計19例く、

    ♀ 胆    石

総胆管結石

肝内結石悪性腫瘍

7例 12例 8例 8例 0例 3例

表3 70才以上高令者胆道系疾患症例

腫 瘤 触 5%

顕 性 黄 8%

筋 性 防 14%

39%

ブルンベルグ徴候 20%

18%

    ♂ 計7例く    ♀ 胆    石 総胆管結石

悪性腫瘍

4例 3例 3例 3例 1例

表6 術前検査成績(総数185例)

表4 術前の自覚的臨床症状

食欲不振

15%

癒    痛 84%

μ区    吐 19%

下    痢 11%

全身倦怠感 31%

悪     心 20%

腹部膨満感 13%

放  散  痛 21%

つた(表5).

 〔良性胆道系疾患術前の検査結果〕

 良性胆道系疾患1週間唱の異常値を示す検査に は,黄疸指数,アルカリフォスファターゼ.,血清

MG 7以上 42例(23%)

AI−P lO以上 44例(24%)

GOT 40以上 34例(18%)

GPT 35以上 40例(22%)

S−Amylase 200以上 9例(5%)

WBC 8000以上 41例(22%)

トランスアミラーゼ,白1血球数などがあり,それ ぞれ23%,24%,22%,22%であった.血清アミ

ラーゼの上昇例は少なく,わずかに5%で高値を 示す症例もなかった(表6).

 〔手術々式〕

 23例の当科の手術症例の術式の内訳をみると,

 1) 胆嚢摘出術156例(76%)

 2) 胆嚢摘出術十胆道切開術37例(17%)

 3)胆嚢摘出術.+胆道切開術+乳頭形成術25例

(正1%)

(3)

表7 手術術式

胆のう摘出術 156例(76%)

胆道切開術

37例(17%)

乳頭形成術

25例(11%)

胆管消化管吻合術 2例(1%)

膵頭部十二指腸切除術 1例(α5%)

 4)胆管消化管吻合術2例(1%)

 5) 膵頭十部二指腸切除術1例(0.5%)とな っている(表7).

 】皿.良性胆道疾患の術後症候群と愁訴の調査  〔方法〕三宅1)は胆石症手術後の愁訴例を症状 のうえから①困難症,②再発症,③後遺症に分け ているが,われわれの症例の中には器質的にも機 能的にも全く異常がないと思われ,この分類の中 に入れがたいものがある.その点,術後原因があ って起こる術後症例群と愁訴とを合併症,随伴 症,続発症,後遺症,心因性のものとに分類した 宮崎2)の分類が解りやすく当を得ていると思われ たので,今回は当教室例をこの分類に従い整理し てみた.整理するにあたり,原因の確かな解明は 外科手術によらねぽならないものもあるが,一般 血液生化学的検査,肝,膵,腎機能検査,検尿,

胸腹部X−P,術後胃腸管透視,胆道造影,必要あ らば十二指腸液検査,EPCG, PTCなどを行う事 により,その検査をできるだけ正確に診断する事 につとめた.また昭和51年〜昭和52年までの術後 2〜4ヵ月後71例の術後愁訴のアンケート調査を 行なった.アンケートの設問法としては,体の全 体の様子を知るために,就業状態,術前術後の体 重の変動,術後の自覚的変化の各項目におのおの 小項目を設け,愁訴については術後の主なもので ある疲労感,背部痛,心窩部痛,右季助部痛,悪 心,下痢などの症状に○を付ける方式をとった.

アンケートの回答率は86%(16例)であった.

 〔結果〕,(合併症),合併症では重篤な心肺疾患 のものはなかったが,乳頭形成行を行なった高度 黄疸例の総胆管結石症患者を術後26日目で失なっ た.ま「たTチューブ外胆汁混一設置患者の半数以 上に同部位の皮膚の炎症所見があった.

表8 術後検査成績(総数185例)

MG 7以上 19例(10%)

AI−P10以上 44例(24%)

GOT 40以上 46例(25%)

GPT 35以上 42例(22%)

S・Amylase 200以上 17例(9%)

WBC 8000以上 49例(26%)

 (随伴症)随伴症として術後1週間目185例の 検査結果では,出漁指数7以上のもの19例(10

%),アルカリフォスファターゼ10以上44例(24

%),血清トランスアミラーゼ異常例46例 (25

%),血清アミラーゼ異常例17例(9%)であった

(表8).

 (続発症)続発症では218例中9例に再手術が行 なわれ,その内5例(56%)は2年以内に発病し た遺残結石と考えられる症例であった.上腹部搬 痕ヘルニアが2例に認められた.はつまりした診 断は下せないが,癒着障害によると考えられる落 痛を訴えたものが23例(11%)あった.

 (後遺症)後遺症として黄疸,発熱,疹痛を伴 うような明らかな逆行性胆管炎症例はなかった が,乳頭形成術を行なった25例のうち,3例(12

%)に腹部の不快感などの不定愁訴を認めた.

 (心因性のもの)術前状態も悪くなく,手術時 所見でもあまり異常を認めないが,術後それ程ひ

どくない疲労感,腹部重圧感,頭重感,頭痛など のいわゆる心因性のものと考えられるものが半数 以上の症例にあり,特に更年期の女性に多かっ た.胆道疾患術後愁訴のアンケート結果では,

 (就業状態)まず就業状態についてみると,術 前と同様に作業できるもの55%,時々休むもの40

表9 手術前後の就業状況(61例)

A. 手術前と全く同様の仕事生活をしている

55%

B, 手術前の仕事をしているが,

栫X休む 40%

C. 手術前の仕事に復帰でき

ネい 0%

D. 殆んど家で休んでいる 5%

E.無回答 2%

一653一

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70

表10 体重の変動(61例)

A.手術前と変わらない 53%

B.手術後,ふえた 16%

C.手術後,減った 26%

D.無回答 5%

表11 自覚的変化

A.手術して良くなった 86%

B.手術してやや良くなった 11%

C.手術したが変わらない 3%

D.手術して悪くなった 0%

  疲 労    部 痛   心窩部痛  右季肋部痛  創 部 痛

 食欲不振

 悪    心  腹部重圧感  便    秘  頭痛感頭重感  不    眠  不 安 感

 胸が苦しくなる

 心悸元進  属 腰   痛

 図1 胆道系手術後の愁訴(61例)

1975年〜1976年アンケート回答率(86%)

%と,95%以上が就業可能であった(表9).

 (体重の術前,術後の変化).体重の術前,術後 の変動をみてみると,変化がないか増加したもの が69%,逆に減ったものが26%あった(表10).

 (手術後の自覚的変化)手術後の自覚の変化に 対して,手術して良くなったもの,および手術し

てやや良くなったものが86%を占め,悪くなった ものは1例もなかった(表11).

 (術後の愁訴)術後の愁訴では疲労感(35%),

心窩部痛(21%),右季外部痛(22%),肩凝り(20

%)が多く,次に消化器症状の下痢(15%),便秘

(10%)が多かった(表12).

        IV・考  按

 〔胆道手術後愁訴および症候群の概念〕

 胆道系手術後愁訴は胆道手術が原因となって起 る「訴え」であって,原因となるものには術後合 併症,随伴症,続特症,後遺症があるが,器質的

にも機能的にも原因のわからない心因性のものは 入れるべきでないと考える.心因性のものを除外 したこれらは,いずれも症候群を形成していて 一括して胆道手術後症候群(Post biliary surgery syndr・me)と総括されているが,これらの胆道手 術後の障害の原因は広汎多岐にわたる機構により 起るため,必ずしも一つの病名で統一できないの が実状のようである.それゆえ各専門家の間で,

多少のニュアンスの差異を認めながら用いられて いる.例えば

 A)本邦では  1)症候群として

 胆嚢捌出後症候群3),胆嚢摘出後症候群4),胆 嚢切除後症候群5),胆道手術後症候群6),除胆嚢

症候群7).

 2)後遺症として

 胆摘後遺症8),除胆嚢後遺症9),胆道手術後後

遺症1。).

 3) 困難症として

 胆嚢摘出後困難症11>,胆道手術困難症12).

 4)愁訴として

 胆石手術後愁訴 3),胆嚢別除後愁訴14),胆道手 術後愁訴15).

 B)欧米では

 1) Post cholecystectomy Syndrom.

 2) Post cholecystektomy Symptoms。

 3) Symtoms After cholecystektomy.

 4) Post biliary surgery syndrome.

 などと種々の名称が付されているが,その意味 するところは大同小異であると考えられる.

 (当教室と他施設の良性胆道疾患の術後症候群 および愁訴の比較)

 (合併症)術後症候群を形成する合併症では,

梅山工5)らは胆管ドレナージ術を行なった肝内結石 疾患者の1例を術後8日目に肝腎症候群で失った と報告している.われわれも乳頭切開術を行なっ た高度黄疸例の総胆管結石症患者1例を術後26目 目に血液透析療法のかいもなく同様に失っている が,心・肺合併症,出血,腹膜炎例は経験してい ない.ただ術後Tチューブ外胆汁痩設置患者の随

(5)

数以上に同部位の皮膚の炎症所見を認めた.恐ら くこれは胆汁や膵液が毛細管現象によりTチュー ブの外側を伝わって,同部に化学的刺激を与える ことにより起るものと考えられる.

 (随伴症)随伴症として宮崎2)らは術前に308 例中157例(51%)に肝障害,13例(42%)に膵 障害があり,術後の検査では膵障害例では手術の 効果がなかったとするものが多く,肝障害例では 手術によりかえって悪化したものがやや多かった と述べている.われわれの症例では黄疸指数以上 例が術前42例(23%)あったが,術後1週間目の 検査では19例(10%)と減少している.アルカリ フォスファターゼの異常値例は術前後変らなかっ た.それに反して麻酔やその他の薬剤の影響もあ ると思うが,血清トランスアミラーゼ異常例,血 清アミラーゼ異常例が,術前各々40例(22%),9 例(5%)であったものが,46例(25%),17例

(9%)と増加した.しかし一過性で臨床的に肝炎 や膵炎を思わせるものはなかった(表6,表8).

 (続発症)続発症としての再手術例は,中山2。)

らの施設では1147例中81例(7.8%)あり,その うち結石遺残又は再発が56例(63%),胆管狭窄14 例(16%),乳頭部狭窄9例(10%),外胆汁痩2 例(2%)であったという.また1967年12月から 1970年11月までの3年間の羽生14)らの再手術例は 213例中6例(2.8%)と最も低い再手術例であっ た.同施設での根治術後の再手術所見では,胆道 内遺残結石へ再発が16例(62.5%)で最も多く,

乳頭部狭窄3例(18.8%),特発性総胆管嚢腫,胆 汁外痩,吻合部狭窄兼肝内結石が各1例であった

という.同様にわれわれの教室においても212例 中9例(4%)に再手術が行われ,その大半は2 年以内に発病した遺残結石と思われる症例であ

り,再手術をせざるを得なかった胆道狭窄や乳頭 部狭窄,断端神経腫,癒着などはなかった.

 (後遺症)後遺症としての胆管炎症例は中山20)

らの施設では6例であり,良性胆道疾患症例1147 例の1%を占め葦た再手術症例89例の(7%)に あたるが,われわれの教室では経験がない.しか し乳頭形成術後に腹部不快感を訴えたものが25例

中3例(12%)あったが,黄疸,発熱,疹痛を伴 うような明らかな逆行性胆管炎症例はなかった.

 (心因性のもの)はっきりした原因がつかめ ず,症状もそれ程強くない心因性の愁訴は,比較 的更年期の女性に多いとされているが,われわれ の術後の症例でも半数以上腹部重圧感,頭重感,、

頭痛などの心因性の訴えがあり,術前より術後に 増え,かつ女に多かった.

 (術前の自覚症状と術後の愁訴について)

 宮崎2)らの施設では手術前からあり,手術後多 少なりとも軽減するが依然として持続する愁訴の 主なものに,腹痛と便秘があり,術後新しく発生 した愁訴には疲労,下痢,体重減少があったと言 い,また手術後多少なりとも減少したものに腹 痛,便秘があり,新しく発生した愁訴には疲労,

下痢がある.そしてそれぞれ術後愁訴の30%,3

%を占めていたという.われわれの症例でも同様 な傾向にあり,手術前からあって多少とも軽減し たものに疹痛と食欲不振があり,それぞれ84%に あったものが20%代に,15%が5%に減少してい る.それに反して逆に手術後増加した愁訴に,全 身倦怠感31%が35%に,下痢11%が15%に増えて いる(表4,表12).

表12 術後の手術に対する考え方(61例)

A,手術をして,症状が消え

@たので良かった 76%

B.手術をして,安心できた 21%

C.手術は,しない方が良か つた

0%

D.特に考えていない 3%

 (良性胆道疾患術後症候群と愁訴の予防,対 策,治療) (合併症の予防と対策と治療)

 われわれは,心肺肝腎などの合併症の予防のた めに,術前に貧血,脱水のあるものに対しては積 極的に輸血,輸液を施こすことにより全身状態の 二三を計り,高齢者の術後肺合併症予防のために 術前の禁煙,術後早期のベット上での体位変換,

また喀疾の排泄をみる患者ではネブライザーを使 用させている.Tチューブ外胆汁痩設置患者の同 部位の皮膚の炎症に対しては,トラジロール,親 一655一

(6)

72

水ワセリン,ホウ酸亜鉛華軟膏,ハイド戸コーチ ゾン軟膏を混じて作ったトラジロール軟膏を塗布 する事により良好な成績を得ている.

 (随伴性病変の予防と対策)

 われわれの症例セこは術前より明らかな肝炎,肝 硬変,膵炎などの所見を呈したものがなかった が,術前より血液,生化学的検査,血中・尿中ア ミラーゼ測定を行い,更に術中疑わしければ積極 的に肝・膵の生検を行い,随伴性病を充分に把握

し,術後もしこれらの随伴性病変が表面化したら これらに対する治療を継続する用意をしている.

 (続発症の予防)

 続発症として多い遺残結石,胆管狭窄,乳頭部 狭窄などを防ぐために,術前の胆道撮影,断層 X−P,十二指腸液検査はルーチンに行い,症例に

よって適応があれぽ,無黄疸例,軽度黄疸例に対 してはEPCG,中等度以上の黄疸例にはPTCを 行い,術前の胆石の所在,種類,胆脈,胆管の 奇形,癒着の状態などを十分把握し,また術中に おいては肝臓,胆嚢,胆管,十二指腸,十二指腸 乳頭,膵臓の視診・触診を行い,全例に胆道内圧 測定および術中胆道造影を行う事により予防して いる.黄疸維持例セこはPTCDにより減黄を計

り,その後手術を行なっている.

 (後遺症の治療)

 あきらかな術後の胆道感染は経験していない が,乳頭形成術後に3例の腹部不快感を訴える例 を経験している.われわれはこのように対して は,食事摂取後30分〜1時間四坐位,または左側 臥位をとらせたり,三二剤を投与したりしている が経過は良好である.

 (心因性愁訴に対する治療)

 疲労感,腹部重感,頭重感,頭痛などの原因の わからない女性に多い愁訴に対して,食事療法と して脂肪食,刺激食の回避,禁酒,禁煙,適度な 運動などの日常生活指導を行い,なお軽快しない

ものに対しては精神安定剤を投与している.器質 的にも機能的にも全く異常の認められないと思わ れる腹部重圧感,頭重感,頭痛などのあわゆる心 因性の愁訴は女性特有の内分泌因子や神経因子な

どが細かく入りくんで関与しているのではないか と考えられる,今後この方面での原因追究が待た れるところである.

        V・結  語

 以上,当教室における良性胆道疾患術後愁訴に ついて検討を加えてきたが,最後に各報告者によ

り評価方法はまちまちであるが,手術に対する考 え方では手術を受けた患老の60%〜90%が手術に 対して満足しているようである.われわれの症例 でも,手術して症状が消えてよかったと思う者76

%,手術をして安心できた者21%と,ほぼ97%は 満足すべきものであった(図1).われわれは,ア ンケートにて返答が寄せられた症例は比較的経過 の良い者が多いことを念頭におき,結果を控え目 に受けとめ,更に改善に努めたい.

 本論文要旨は,第39回日本臨床外科医学会総会におい て報告した.

         文  献

 1)三宅 博:胆石症,日本外科全書24巻一1.

  金原出版南江堂東京(昭32)1226頁  2)宮崎逸夫=外科33367〜372(1971)

 3)吉岡正智:日消外会誌8511〜515(1975)

 4)久次武晴:臨床医21082〜1085(1976)

 5)日野貞雄:治療521973〜1976(1970)

 6)亀田治男=臨床成人病2693〜696(!972)

 7)増田正典:日消病会誌641200〜1201(1967)

 8)阿部秀一=外科32942〜950(1970)

 9)亀田治男=日消病会誌641196〜!198(!967)

 10)杉浦光雄:臨床成人病21463〜1467(1972)

 11)佐藤寿雄=臨床と研究483081〜3086(1971)

 12)葛西洋一:営外会誌70447〜449(1969)

 13)亀田治男=外科治療2117〜26(1969)

 14)羽生富士夫:外科治療26458〜464(1972)

 15)梅山 馨:外科治療27241〜248(1972)

 16) Haτr董50n, T。R・= Principles  of internaI   Medicine.5th ed.,1092, Mc Graw−Hill Co.,

  New York(1966)

 17)She 10ck, S.3 Discase of the liver and biliary   system.3rd ed., p.655, F.A. Davis Co.,

  Philadelphia (1963)

18)Bo¢kus,夏{.L。3 Gastroenterology. Vol.3,

  p.865,W.B. Saunders Philadelphia Co.,

  & 1・ondon(1965)

19)Santos, M・et a瓦3 Post b丑iary syndrome.

  Surgery 60953 (1966)

20)中山和道:臨床外科311541〜1548(1976)

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