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車いすの動力を利用した段差解消機の開発(第 6 報)

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Academic year: 2022

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車いすの動力を利用した段差解消機の開発(第 6 報)

−複数ローラーによる駆動−

金沢大学 ○小林 裕介,関 啓明,神谷 好承,疋津 正利 石川県工業試験場 前川 満良

( )

Lift of a Wheelchair Driven by Its Wheels 6th Report - Drive by many rollers -

Kanazawa University Yusuke KOBAYASHI, Hiroaki SEKI, Yoshitsugu KAMIYA and Masatoshi HIKIZU, Industrial Research Institute of Ishikawa Mitsuyoshi MAEKAWA

The lift to climb up / down doorsteps at entrances is an effective solution for wheelchair users. A light, compact, and non-powered lift has been developed. This lift is driven by wheels of a wheelchair. We propose the new mechanism which enables the wheelchair to go forward into the lift when both ascending and descending. This mechanism consist of four sets of five rollers which are placed in an arc and they are connected by gears and chains. We also use tapered rollers in order to prevent wheels of a wheelchair from moving sideways even if right and left wheels have different velocities.

.はじめに 1

車いす使用者が玄関等の段差を乗り越えるための段差解消機 が開発されているが 油圧機器や電動モータを使用した大型で, 高額な物が多い そこで本研究では電源を使用せずに軽量・コ. ンパクトな無動力段差解消機を開発している[ ].この段差解1 消機は車いすでタイヤがローラー上にくるように乗り入れ タ, イヤを回転させてローラーを摩擦駆動して昇降を行うものであ る(図1).ローラーの回転はウォームギアを介してピニオン ギアに伝えられ 土台に取り付けられたラックとピニオンの回, 転により台を昇降させる 最上昇/最下降時にはラックの可動. 範囲を制限することで自動的にローラーがロックされ 台から, 出ることができる つまり 一連の動作に特別なスイッチ操作. , はいらない 昇降共に車いすの前進で行えるように 小径の前. , 輪通過と後輪によるローラー駆動を切り替える機構を組み込ん でいたが複雑であった[ ].また,昇降中に車いすの左右のタ1 イヤ回転速度に差が生じると 一方へ寄っていき タイヤとロ, , ーラーのつばとが擦れて抵抗や音が生じるという問題があった.

本報告では複数のテーパーローラーを配することでこれらの問 題を解決した.

.複数ローラーによる昇降共に前進で行う機構 2

昇降共に前進で行え かつ前輪もローラー部をスムーズに通, 過できるようにするために図 に示すような複数のローラー2 を配した機構を考案した. つのローラーを円弧状に配した5 ローラー列を四組配してある これらは歯車とチェーンで連結. してあり 回転はウォームギアを介してピニオンギアへ伝達さ, れる 前進でどちらから乗り込んでも 径の小さい前輪はロー. ,

ラー間に落ちることなくスムーズに通過でき ローラーは円弧, 状に配してあるため後輪と十分接触できるので駆動力の伝達を 行える 切り替え機構などに比べて機構がシンプルなので誤動.

, 作もない.昇降時には後輪の回転に伴って前輪も回転するが これを利用して洗浄することも考えられる.

.テーパーローラーによる横方向へのずれの抑制 3

昇降時に左右のタイヤ回転速度に少しでも差があると ロー, ラーへ伝達しようとする回転速度に差が生じるため車いすは横 方向へずれていく 仮に右タイヤの方が速かった場合 車いす. , は徐々に左へ寄っていく 使用者の微妙な車いす操作でこの回. 転速度差は発生してしまう 車いすが寄っていくと 後輪とロ. , ーラーのつばが接触し抵抗や騒音が生じる 伝達される回転速. 度はローラーとタイヤの直径比によって決まるため 左右でロ, ーラー直径が変わるようにローラーにテーパーを付け回転速度 をつり合わせることで車いすの横ずれを抑制することを考えた.

図 にその概略を示す 最初 車いすは中央にあり 左右で3 . , , s 倍の回転速度差があるとする 滑りがないとすると左右のタイ. ヤがローラーへ伝達しようとするローラー回転速度は(Dω

)及び( )である.左右のローラーは連結されてい /d Dsω/d

るためこの速度差により横ずれが発生する.この状態で ずu れたとき,左右のローラーの回転速度がつり合うとすると

となる.これより移動量 は次のように与えられる.u u s

d D u

d D

tan 2 tan

2 = + ( )1

1 1 tan

2 +

= s

s

u d ・ ( )2

図2 昇降共に前進で行う機構 上昇時

下降時 ラック・ピニオン

土台 天板

つば付き スプロケット・ ローラー

チェーン アーム

車いすの タイヤ ウォームギア

図1 車いすの動力を利用した段差解消機 図3 テーパーローラーによる 横ずれの抑制

回転差が生じる

→左へ寄ろうとする

uずれた所で回転速度が釣り合う

→それ以上ずれようとしない 左後輪

u (遅い)

d-2uta

  −ω   −ωd' D  

d

ω ω 右後輪

d+2uta D (速い)

    −sω   −ωd' D  

γ テーパーローラー

ω<sω

d

sω sω u

2005 年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集

−757−

I82

(2)

.タイヤと複数ローラーの滑り 乗り越え解析

4

駆動に必要なトルクが大きいと タイヤがローラー部で滑っ, たり乗り越えたりしてトルクを十分に伝達できない そこでロ. ーラーと後輪のトルクの関係を解析した.図 に各パラメー4 ターを示す タイヤがローラーを乗り越える時には タイヤは. , ローラー としか接触していない.従ってローラー についI I てのみ考えればよい タイヤがローラーを乗り越えない条件は.

である タイヤがローラー上で滑る時については 各ローラー. , の摩擦力を考えなければならないが困難である そこで各ロー. ラーに働く摩擦力をローラーⅢに働く摩擦力μβWgと等価 と考えた.これより,タイヤがローラー上で滑らない条件は

となる.以上の関係に実際に設計値を入れたものを図 に示5 す.駆動に必要なトルク3.1Nmに対し,乗り越えは53Nm, 滑りは61Nmで発生する.即ち滑りも乗り越えも発生せずに

α α

駆動可能である また. , が小さいと滑る前に乗り越えが,

. が大きいと乗り越えの前に滑りが発生するという傾向がある

.動作検証 5

実際に複数のローラーを組み込んだ段差解消機を設計 試作, した.図 に ローラーを取り付けた段差解消機を示す.実6 5 際に車いすで乗り入れから昇降 乗り出しまでの一連の動作を, 行った 上昇時も下降時も共に前進で行えた また 前輪もロ. . , ーラー部分を脱輪することなくスムーズに通過できた 後輪か. らローラーへの動力伝達も 昇降中に飛び出したり滑ったりす, ることなく行えた.

テーパーローラーの効果を図 のような実験装置により検7 証した ローラー上に電動車いすを乗せタイヤを回転し 少し. , ずつ左右で回転速度差をつけていく ローラー部から横へ脱輪. する速度差を調べた.実験は図 のようなテーパーローラー8 とストレートローラーの 種類について行った.また,テー2

WgR

T< sin ( )3

WgR

T<µ ( )4

パーローラーの軸を水平に取り付けた場合 一方へ寄りすぎる, と車いすが傾いてさらに横ずれが大きくなるのを防ぐことを考 え ローラー軸が水平の場合と 乗り入れ面が水平になるよう, , に回転軸を傾けた場合についても測定した 実験の結果を表. 1 に示す ローラーがストレートの場合には少しでも回転速度に. 差があると横ずれが生じ,そのままローラーから横へ脱輪した.

テーパーローラーの場合,少し寄った後にその位置で安定した.

実験で使用したテーパーではおよそ35%程度の速度比まで対 応できた.図7のテーパーローラー形状の場合,理論的には の回転速度差まで対応できるが,概ね近い測定値とな s=1.36

, った.また,テーパーローラーにおいて回転軸を傾けた場合 わずかではあるが対応可能な速度差が大きくなった テーパー. を大きくすれば効果は大きくなるがその分装置が厚くなる テ. ーパーローラーを乗り入れ面が水平になるように取り付けた段 差解消機を試作する予定である.

6.まとめ

複数のローラー列を四組配することで昇降共に前進方向で行 える機構を考案した ローラーを円弧状に配置してあるので前. 輪はローラー間に落下することなくスムーズに通過でき 後輪,

, はローラーへ駆動力を十分に伝達できる.この機構を試作し 段差解消機に取り付けて動作を確認した また テーパーロー. , ラーを用いることでタイヤの回転速度差から生じる横方向への

. ずれを抑えることを提案し,実験によりこの効果を確認した 参考文献

1 5

[ ]小林他,車いすの動力を利用した段差解消機の開発(第 報 ,精密工学会春季大会講演論文集,) pp1225(2004)

ローラー ローラー軸 左 右 速度比 s 種類 取付方法 [rps] [rps] [−]

0.408 0.306 1.33

水平

0.420 0.310 1.36

テーパー 傾斜

0.375 0.367 1.02

水平

0.355 0.343 1.04

ストレート 傾斜

表1 ローラーから脱輪しない限界のタイヤ速度の測定結果

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.0

0.2 0.4 0.6 0.8

駆動可能領域 乗り越え

μ=0.37

sinα 滑り

駆動トルク

無次元化トルク T/WgR

タイヤとローラーの接触角度   [rad]

=90kg W

=0.66 β

=0.37 μ

=0.33rad α

=285mm R

図5 駆動トルクと乗り越え,滑り

ユニバーサルジョイント テーパーローラー

図7 テーパーローラーの効果の検証 タイヤトルク T

半径 RD/2

ローラーⅠ

Ⅲ Ⅱ

Ⅴ Ⅳ

後輪にかかる荷重 βWg

等価摩擦力 μβWg α α

:摩擦係数 μ

:後輪にかかる β

荷重の割合

:接触角度 α

( <α<0 π/2)

図4 タイヤとローラーの関係 進行方向

図6 複数ローラーを組み込んだ段差解消機

図8 テーパーローラー

2005 年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集

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I82

参照

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