総合的な学習における子どもの課題作りについての研究 [ PDF
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(2) けではない。また,問題解決の手順を一つ一つ指導され. ⑦学校の施設や設備を活用する力(実践). ない。つまり総合的な学習においては,子どもは今もっ. ⑧地域の施設や文化財を活用していく力(実践). ている力で問題を解決するしかない。そのため,解決に. ⑨学習時間や場所,資料などを適切に管理する力(実践). あたっては,自分が問題事象について知っていることや. 【終末段階】. 心情的なかかわり,技術的にできることを明らかにして. ①仮説や予想と結果を対応させて論を構成する力 (実践). 行く必要がある。そして,その中で使える要素を取捨選. ②得られた結果を絵図,表,グラフなどに整理し,表現. 択し,問題を解決していくための戦略を組み立てていか なければならない。ここに子どもによるマネジメントの 必要性があると考える。 (2)の子どもによるマネジメントの定義については,. する力(実践) ③見いだした結果や決まり,感想などを話し合い共有化 する力(調整) ④新たな疑問や問題を見いだす力(企画). これまでのマネジメントの使われ方や定義を参考にして. ⑤自己の活動状況を評価する力(評価). 検討した。総合的な学習の問題解決という機能面に着目. ⑥他の学習者の活動状況を評価する力(評価). して,次のようにマネジメントを定義づけた。 【子どもによるマネジメントの定義】 総合的な学習における子どものマネジメント能力. さらにこれらの能力について,マネジメントの対象や 特徴からの検討を行った。その結果次の2つのマネジメ ント能力の系列を見いだした。. とは,問題を解決するために,これまで学習してき. ①対象の問題解決にかかわるマネジメント能力の系列. た教科の知識や技能,自己の心情,ともに学ぶ学習. (総合的な学習の時間のねらい「自ら課題を見付け,自. 者,支援者などの諸条件を整理し,組織化して問題. ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解. 解決をはかる力である。. 決する資質や能力を育てること。 」につながる系列). (3)のマネジメント能力の分析においては,総合的な. ②自己の学び方にかかわるマネジメント能力の系列. 学習の時間の基本的な学習形態を問題解決学習とし,問. (総合的な学習の時間のねらい「学び方やものの考え方. 題解決の学習過程にそって必要な能力の分析を行った。. を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に. ここでは,岡東壽隆氏の「経営的力量の形成」を参考に. 取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができ. して,企画能力,経営実践能力,評価能力,調整能力の. るようにすること。 」につながる系列). 4観点から次の21の能力を明らかにした。. (4)総合的な学習におけるマネジメントサイクルにつ. 【導入段階】. いては,P(計画)−D(実施)−S(評価)サイクル. ①問題事象とであい潜在化されている課題に気づく力. の循環の長さやP→D→Sの順序について考察した。. (企画) ②問題についての仮説や解決の予想をする力(企画). マネジメントサイクルの長さについては,次の3つを 考えた。. ③問題の解決方法を考える力(企画). ①1年間を単位としたサイクル. ④共通や類似の問題を持つ学習者とグループを形成する. ②1単元を単位としたサイクル. 力(企画). ③活動のまとまりや1時間を単位としたサイクル. ⑤グループや学習集団の中で役割を分担する力(企画). それぞれについては,次のような特徴が見られる。. ⑥課題や解決の見通しが適切か評価する力(評価). ①1年間を単位としたサイクルでは,1年間を通して. 【展開段階】. P−D−Sが位置づく。1年の始めには,年間の全体像. ①自分の仮説や解決方法に従って活動する力(実践). を見通すオリエンテーション的な単元がP(計画)とし. ②資料や観察を行い情報を収集する力(実践). てある。また1年の終わりには,自分の年間の成長を評. ③得られた情報や結果を分析し,正しい結果か評価する. 価するような単元がS(評価)としてある。1年間の計. 力(評価) ④必要に応じて仮説や解決方法を見直し,再度情報を集 める力(実践) ⑤教師やGT,地域の人と対応したり一緒に活動したり する力(調整) ⑥集団でのコミュニケーションを活発にし,よりよい決 定を作り出す力(調整). 画では,教師主導のマネジメントが多いと考えられるた め,特に子どもと教師の連携が重要になる。 ②1単元を単位としたサイクルでは,総合的な学習の 学習過程の導入段階−展開段階−終末段階に対応して, P−D−Sが位置づく。単元の始めには,課題や課題解 決を見通す時間がP(計画)としてある。また単元の終 わりには,自分の成長を評価したり,新たな課題を見い.
(3) だす時間がS(評価)としてある。単元レベルではP− D−Sをすべて子どもが行うことが大切である。教師が. で効果的なものにする上で効果があると考える。 ③D→P→S又はD→S→Pでは, 始めに実践がある。. 計画し,子どもが実施し,教師が評価するのであれば,. このパターンも目標設定について自由度がある場合に考. 子どもの意欲や主体性は育たない。子どもがP(計画) ,. えられる。S(評価)ではなくD(実施)が前に来るの. D(実施) ,S(評価)を自分で管理し,問題解決を自. は,初めて体験するなどの理由である程度情報を求めて. 分で進めることに総合的な学習の意味がある。1単元は. 試行が必要だからである。そのため,このパターンは問. 1つの課題追究であり,子どもがマネジメントするには. 題解決能力が未発達で学習経験の少ない,小学校の総合. 適切な長さのサイクルだと考えられる。. 的な学習に見られやすいと考える。中学や高校では,実. ③活動のまとまりや1時間を単位としたサイクルで は,1つの活動の中にP−D−Sが位置づく。例えば導. 践からではなく日常気にしている課題や,テーマに関し たデーターの分析から問題を立てることができる。. 入段階の「課題作りの活動」の中に,問題解決に適した 方法を探るD(実施)や問題解決の活動計画を立てるP. 2章 マネジメント能力育成における教師の意識分析. (計画) ,活動計画がうまくいきそうか見直すS(評価). この章では,子どものマネジメント能力の必要性や育. が位置付く。ここでのS(評価)は活動を進めるか戻す. 成の状況について明らかにするために,教師への調査を. かの重要な役割をもつ。もし,課題作りの計画がうまく. 行った。そのために,教師からみた子どものマネジメン. いかないと判断すれば,もう一度はじめにかえってやり. ト能力の重要性及び,指導の実践度について意識調査し. 直す。逆にうまくいっていると判断すれば学習が次に進. その分析を行った。. むことになる。活動のまとまりレベルのマネジメントで. 調査にあたっては,平成11年度から総合的な学習の. は,子ども自らが判断し活動を進めないことには学習が. 試行を行い,総合的な学習の主旨の理解や教育条件の整. 進行しないため,子どものマネジメント能力がより重要. 備が進んでいる地域の学校を選んだ。これは,子どもが. になる。. 主体的に問題解決を行うためにマネジメントが必要にな. P−D−Sの順序については,次の3つが考えられる。. るのであり,教師主体の学習では子どものマネジメント. ①P(計画)→D(実施)→S(評価). の余地がないからである。実際には,選定地区の各小学. ②S(評価)→P(計画)→D(実施). 校の研究主任と,A小学校(小規模校,経験年数はバラ. ③D(実施)→P(計画)→S(評価)又はD→S→ P. ンスがとれている,農業地域)B小学校(小規模校,経. これらを目標との関係で考察すると, 次の特徴がある。. 験年数はベテランが多い,農業地域)C小学校(大規模. ①P→D→Sは基本的なパターンである。このパター. 校,経験年数は若年者が多い,新興住宅地)を選んだ。. ンでは,P(計画)の前にすでに「目標」が存在すると. 経験年数には差があるがいずれも総合的な学習への理解. 考えられる。達成すべき目的がはっきり決まっているか. は高い。. らこそ,そのための計画が必要となってくる。また,長. 調査の分析にあたっては次の点から行った。. い単位や大きな組織を動かす場合にも,後で簡単に計画. ・子どものマネジメント能力の重要度の認識から. の変更がきかないため,始めにきちんとした計画が必要. ・子どものマネジメント能力の指導の実践度から. になる。そのため,このパターンは目標がはっきり決ま. ・重要度と実践度の差から. っていたり,年間サイクルのような長い単位であったり. ・企画−実践−評価−調整の能力別観点から. する場合にもっとも有効だと考える。. ・2つのマネジメント系列別観点から. ②S→P→Dでは,始めに評価があり,計画し,実践. その結果,次のことが明らかになった。. を行う。 「目標」との関係では,目標がまだ決まってい. ①子どものマネジメント能力は教師からも総合的な学. なかったり目標の大枠だけ決まっていたりして,目標設. 習において必要な能力と見なされていること。傾向とし. 定について自由度がある場合にこのパターンが考えられ. ては総合的な学習の時間のねらいとの関連が強く,子ど. る。学習者としての子どもは,自分が今わかっているこ. もの主体性が高いと考えられる能力が重要視されてい. と,まだわからないことを明確にし,わからないことを. る。. 課題として学習を始める。つまり,S(評価)が前に来. ②子どものマネジメント能力は,教師が重要だと思う. るのは継続性があったり目標の方向性が決まっていたり. よりは,実際には子どもに身に付いていないと見なされ. して,目標が現状の評価から導き出されるからである。. ていること。傾向としては「情報の集め方,調べ方,ま. このパターンは,目標を設定しP(計画)をより具体的. とめ方,報告や発表・討論の仕方などの学び方」にかか.
(4) わる技能的なことが実践度が高く,評価に関することが 低いこと。 ③マネジメント能力の中でも評価にかかわる能力が, 必要にもかかわらず,もっとも身に付いていないと見な されていること。 ④教師は 「自己の学び方にかかわるマネジメント能力」. 切であること。 ④課題作りの評価を行うことで,課題解決への見通し がより明確で,現実的なものになること。 ⑤子どもによるマネジメントを進めるには,教師は子 どもの主体性を尊重する態度が必要なこと。 ⑥課題作りのマネジメントでは,比較による連関性の. より「対象の問題解決にかかわるマネジメント能力」を. 把握や意見の尊重による協働性の向上などの教師の支援. 重視していること。. が有効であること。. 3章 課題作りにおけるマネジメントの分析. 終章 研究のまとめ. この章では次の仮説をたて,授業分析を通して,課題. 終章においては,総合的な学習における子どもの課題. 作りにおける子どもによるマネジメントの働きを明らか. 作りについて明らかになったことを整理するとともに,. にした。. 研究上の課題を明らかにした。特に課題については次の. 【仮説】. 2点が上げられる。. 総合的な学習における課題作りにおいて,子どもに. 1つ目は,総合的な学習における課題の類型化を行う. よるマネジメントがうまく機能したときに,良い課. ことである。課題や解決の見通しは先行経験と問題事象. 題設定ができるであろう。. との比較から生まれると予想した。ところがそれだけで. そのために,まず①よい課題の成立条件や②課題作り. はなく,今の自分と理想の自分との比較から課題が生ま. の場面ごとのマネジメントを仮定して,授業観察の視点. れたり,GTの情報と問題事象の比較から見通しが生ま. を明らかにした。. れたりした。課題作りに働くマネジメント能力は変わら. ①よい課題の成立条件については, 「子どもと問題の. ないが,課題のタイプにおいては,比較し連関性を持た. かかわりからくる意欲」や「結果の見通し」 「方法の見. せるものが変わってくると考えられる。そこで,先行経. 通し」がある時に良い課題と仮定した。. 験と対象の比較からは知的な課題を,今の自分と理想の. ②場面ごとのマネジメントについては,基本的にD (実 践)→S(評価)をマネジメントサイクルとした。また,. 自分の比較からは自己実現的な課題を生み出すなど,課 題の類型化とそのマネジメントの分析が必要である。. 子どもと他の子どもやGTとの協働性が見られたり,先. 2つ目は,課題作りのマネジメントにおいて,評価の. 行経験と問題事象との比較を行い類推や適用などの連関. 位置づけを見直すことである。課題作りの小さな場面ご. 性が見いだされたときにマネジメントがうまく機能した. とにD(実践)とS(評価)を位置づけたが,授業観察. と仮定した。. では子どもが評価を行っているかどうか,外面からは観. 授業事例には,A小学校第5学年「やってみよう米作. 察できなかった。しかし教師が意図的に評価させた場面. り」とF小学校第5学年「健康のひみつをさぐろう」を. では,問題解決の見通しがより具体的で現実的なものに. 取り上げた。この2つの事例を取り上げた理由は,いず. なっていた。このことから考えると,マネジメントサイ. れも課題作りが成功している事例と判断したからであ. クルに評価をきちんと位置づけることは大切である。問. る。また,数年の実践がありカリキュラムとしても確立. 題はどこにどのように位置づけ,子どもに意識させるか. している。. ということである。ポートフォリオなど主体的に自己評. 2つの授業分析からは次のことが明らかになった。. 価を行った例をさらに分析する必要がある。. ①課題に気づく場面のマネジメントにおいては,目標 像と現実の自分の比較から課題に気づくことができるこ. 3.主要引用文献. と。. (1) 岡東壽隆「経営的力量の形成」岸本幸次郎・久高喜. ②学級のめあての設定や決定場面のマネジメントにお いては,集団のコミュニケーションを活発にする能力と 協働性が大切なこと。 ③問題解決の結果の予想や方法の見通しには,先行経. 行編著『教師の力量形成』ぎょうせい,1986年 (2) 文部省『小学校学習指導要領解説総則編』東京書籍, 1999年 (3)中留武昭編著『総合的な学習の時間−カリキュラム. 験やGTの情報などのもとになる事象が必要であるこ. マネジメントの創造−』日本教育総合研究所,. と。さらに,目前の問題解決との連関性を図ることが大. 2001年.
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