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若年性高血圧の臨床的研究 その1.原因についての考察

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(1)

若年性高血圧の臨床的研究

その1.原因についての考察

金沢大学医学部内科学第一講座(主任:武内重五郎教授)

      真   田    稔        (昭和年月日受付)

従来一般に若年者の高血圧はあまり重要視されなか ったが,近年若年者でも血圧測定の機会が増加してき た.その結果若年者にも高血圧がかなり存在すること が知られ,若年者の高血圧の成因・臨床面などが注目

されるようになった.

 若年者の高血圧の大部分は二次性高血圧であったと する報告もある1)が,逆に若年者の高血圧でもその原 因疾患を発見しえないものが大部分であるとする報告

もある2).

 今回著者は若年者および壮年期以後の高血圧をその 原因別に分類し,両者の比較検討を行ない,若年者の 高血圧の特徴を知ろうと試みた.

被検対象および方法

 昭和36年4.月より42年3月までの6年間に金沢大学 第1内科に入院した高血圧を呈する364例を被検対象 とし却. うち若年者(35才未満)は146例であり,壮 年期以後(35才以上)は218例である.以下,若年者 の高血圧をその原因のいかんを問わず若年性高血圧と

記す.1 キなわち若年性高血圧という語を1つの疾患単 位としてではなく,若年者で高血圧を呈する1つの症 候群として用いるわけである.

 血圧は Riva−Rocci型血圧計を使用し,上腕動脈 で聴診法により測定した.高血圧の診断基準は1日1 回以上の血圧測定により若年者で140/90mmHg以 上,壮年期以後で150/90mmHg以上の血圧を数日 以上呈したものを高血圧とした.原則として入院後1

〜2週間は降圧薬を投与せずに血圧を測定し,その期 間にえられた最低の血圧を基準血圧3)とし,基準血圧 が前述の高血圧の診断規準を満たすものを固定性高血 圧,この規準に満たないものを非固定性高血圧とし

た.

 高血圧の原因疾患の探索には,まず詳細な病歴,身

体的所見をみて,さらに尿蛋白・尿沈渣を頻回に検 査し,濃…縮試験(Fishberg法)・PSP排泄試験

(Chapman−Halsted変法)4)・腎クリアランス5)・

血清残余窒素(Azotometry法)6)・血清尿素窒素

(Diacetylmonooxim法)7)・血清電解質・尿細菌 定量培養・二二撮影・レノグラム・腎血管撮影・腎生 検・ヒスタミン試験・レジチン試験・尿中カテコール アミン(Euler−Lishajko法)8)・尿申17−KS・17−

OHCS・基礎代謝率・血清蛋白結合ヨウ素・血糖・

眼底検査などを症例に応じて実施し,高血圧の原因疾 患の発見につとめた.

 また高血圧および脳卒中の家族歴についても調査し たが,調査した家族の範囲は患者の両親・両祖父母・

兄弟に限り,かつその方法は問診によった.以下高血 圧・脳卒中の家族歴を有するものを家族歴(+),こ れを有しないものを家族歴(一)と略す.

 成績の差の検定には翅検定を行なって,5%の危 険率で有意な場合に「有意である」と記載した.

1.原因別分類:原因別・年令別分布は表1に示す.

 糸球体腎炎と診断されたもの:若年性高血圧1146例 のうち糸球体腎炎を有したものは62例(42.5%)であ り,うち慢性糸球体腎炎は61例,他の1例は急性糸球 体腎炎であった.慢性糸球体腎炎61例のうち52例は病 歴・臨床所見より腎炎を推測しうる症例であり,うち 41例は腎生検あるいは剖検により確認された.上記61 例のうち残りの9例は病歴に腎炎を疑わせるもρがな く,微量の尿蛋白の他に著しい臨床所見はえられず,

腎生検によりはじめて糸球体腎炎と診断された症例で ある(表2).

 壮年期以後の高血圧218例のうち糸球体腎炎と診断 されたものは33例(15.1%)であり,いずれも慢性糸  Clinical studies of juvenile hypertension Part I:Etiological study of Juvenile hypertension. Minoru Sanada, Department of Internal Medicine(1)(Dire(比or:Prof.

J.Takeuchi), School of Medicine, Kanazawa University,

(2)

球体腎炎である.この33例のうち30例は臨床所見より 腎炎を疑いえた症例であり,うち23例は腎生検により 確認された,33例中,残りの3例は微量の尿蛋白の他 に著しい所見はえられず,腎生検によりはじめて糸球 体腎炎と診断されたものである(表2).

 腎血管性高血圧:若年性高血圧147例のうち2例

(1.4%),壮年期以後の高血圧219例のうち2例(0.9

%)であり,腎血管撮影を実施した症例よりみると,

これを実施した若年者67例中2例(3.0%),これを実 施した壮年期以後44例中2例(4.5%)に腎血管性高 血圧をみとめた,若年者の腎血管性高血圧2例はいず

れも患側腎の摘出により血圧は正常化したが,壮年期 以後の腎血管性高血圧2例は両側の腎機能の低下がみ られ,手術は実施しなかった.

 膠原病:若年者で全身性エリテマトーデスの1例

(0.7%),壮年期以後で皮膚筋炎,全身性エリテマト ーデス,結節性動脈周囲炎それぞれ1例,計3例(1.4

%)が膠原病に伴なう高血圧と診断され,膠原病によ る腎病変が高血圧の原因になっていると考えられた.

 その他の腎疾患:若年者で6例(4.1%)みられ,

そのうちわけは左嚢胞腎に左腎結石・右重複腎孟の合 併が1例,嚢胞腎・2例,腎結核1例,右腎発育不全1

表1.高血圧の原因疾患別分類

若年期(35歳未満) 壮年期以後(35歳以上)

1    囲矧

例睡

糸球体腎炎を有する

烽フ 鮮辮1}61極 42.5 灘麟謝±131}33 15.1

腎血管1生高血圧 2 1.4 2 0.9

腎疾患を有するもの

膠原病による高血圧 全身性エリテマトーデス1 0.7

皮膚筋 炎  1 S雛エリ iデス13結節性動脈周囲炎 1

1.4

その他の腎疾患を有 キるもの

轄二二蘇礫石1

謦熬焉@16右書発育不全  1尿管結石  1

4.1

嚢  胞  腎  1

カ重複腎孟  1

ン孟結腎護 釜8腎  結  石  2遊走腎+尿管結石 1

3.7

内分泌性高血圧

鰐器症i}2

1.4 1.8

心血管陸高血圧 大動聯鎌管開心 1 0.7 大動脈炎症候群    1 0.5

血液疾患を有するもの 0 真性多血症    1 0.5

糖尿病を有するもの

辮無税5覆←)騰士B

3.4

   糸球体び

[ω薩度蝋1掬製

??o贈±捧

24.8

原因不明ないし本態性高

決ウ症 67 45.9 112 51.4

146 218

※繍び灘病変

ラ欝蔽罫描瀞難轍も鷲伽

(3)

例,尿管結石1例である.壮年期以後では嚢胞腎1 例,左重複腎孟1例,腎孟腎炎2例,腎結核1例,

腎結石2例,遊走腎と尿管結石の合併が1例,計8例

(3.7%)に高血圧を合併した.これらのうちで嚢胞腎 4例,一雨腎炎2例,腎結核2例,腎結石1例では高 度の腎機能障害がみとめられ,高血圧め原因はこれら の腎障害によるものと考えられた.残りの腎・尿路系 の疾患すなわち若年者で温言発育:不全1例,尿管結石

1例,壮:年期以後で左重複六千1例,腎結石1例,冒遊 走腎と尿管結石の合併1例ではいずれも腎機能がほぼ 正常であり,これらの腎疾患が高血圧の原因であるか 否かについては断定しえなかった.

 内分泌性高血圧:若年者の内分泌性高血圧は2例

(1.4%)である.うち1例は褐色細胞腫であり,副腎 の腺腫摘出により血圧は正常化した.他の1例は原発 性アルドステロン症と診断された症例であるが,手術 は実施されず本症の確認はされていない.壮年期以後

の内分泌性高血圧は4例(1.8%)であり,褐色細胞 腫1例,Cushing症候群1例,原発性アルドステロ ン症1例はいずれも手術により副腎の腫瘍を確認し た.他の1例は甲状腺機能低下症である.

 心血管性高血圧:若年者で大動脈縮窄症に動脈管開 心を合併した1例(0.7%),壮年期以後で大動脈炎症 候群1例(0.5%)である.大動脈炎疾候群の症例は 腎血管撮影を施行しえず,その高血圧が腎血管性高血 圧による可能性を否定しえないが,両側の腎機能は著

しく低下し左右差はみとめられなかった.

 糖尿病を有するもの:若年者の高血圧患者中5例

(3,4%)であり,うち4例は腎生検により高度の糸球 体び漫性病変がみとめられ,腎生検を実施していない 1例は大量の尿蛋白をみとめる症例であった.一方壮 年期以後の高血圧患者で糖尿病を有するものは54例

(24.8%)であり,若年者に比し著しく多かった. こ の54例のうち29例に腎生検を実施し,高度の糸球体び

表2.腎生検によりはじめて糸球体腎炎と診断された高血圧症例

S.T.

H.1.

Y.T.

T.0.

K.H.

Y.Y.

H.N.

H.W,

K.M.

K.1.

K.B.

Y.0.

25 34 23 22 23 20 21 30 34 36 46 43

入院時血圧

(基準血圧)

168/96

(150/ 80)

140/96

(140/ 96)

154/104

(150/100)

170/100

(130/ 64)

166/106

(144/100)

150/90

(146/ 72)

168/100

(168/100)

200/120

(154/110)

(}酒器)

150/100

(132/ 90)

160/90

(124/ 70)

152/92

(132/ 90)

尿蛋白 9/day

戸0.09

0.09

0.25

0.00

0.05

0.22

0.20

0.01 0.02

0.24

0.10

0.40

尿沈渣

    ぶ W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.1げ.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.L.

W.N.:L.

一口H\ωΦ肩目︒ちQ 量培養 尿細菌定

9,700

9,500

1,500

1,500

800 10,000

濃縮 試験 1.032

1.024

1.020

1.030

1.032

1.037

 1.033 0 50

600 4,600

500 1.038

1.030

1.032

1.026

PSP

15分値  %

28 21 34 58 25 42 22 30 27 22 23 40

RBF

m1/

 min

773 595 834 652 650 1170 700 997 803 625 572 642

GFR

ml/

 mln

112 79 127 110 80 136 88 102 87

86 68 94

糸 球 体 数 メサンギウム変化罧

・1・国皿1w

0 3 4 2 10

5 4 0 4

2 5 12

6 2 2 0 12

4 3 0 4

2 5 6

2 0 2 2 2 2 3 2 0

0 1 2

0 0 0 0 0 0 0 0 0

0 0 0

1

0 0 0 0 0 0 0 0

0 0 1

9 5 8 4 24 11

10 2 8

4 11

21

*W。N.L.:正常範囲内

**糸球体メサンギウム変化の程度,0:光顕上ほとんど変化がない.1:部分的軽度のメサン  ギウム肥厚.皿:血管腔の狭小化あり.皿:係蹄の基部より末梢にかけてメサンギウムの肥  厚.W:硝子化傾向著明.

(4)

漫性病変をみとめるもの13例,糸球体び丁丁病変をみ とめないかあるいは軽度のもの16例であった.腎生検 を実施していない25例のうち9例は蛋白尿・腎機能障 害をみとめるものであり,残りの16例は蛋白尿をみと めず,腎機能もほぼ正常のものであった.び漫性病変 の軽度ないしみとめられない16例,および蛋白尿をみ とめない16例は,その高血圧の原因を糖尿病性腎症に もとめるよりは後述の理由によりむしろ本態性高血圧 症の合併の可能性を考慮すべきものである.

 原因不明ないし本態性高血圧症:以上のように二次 性高血圧を分類したが,種々の精査にもかかわらず原 因を明らかにしえなかった若年性高血圧は67例(45.9

%),壮年期以後の原因不明の高血圧は112例(51.4%)

であり,この両者の頻度の差は有意でなかった.しか し糖尿病を伴なう高血圧でその高血圧が糖尿病に由来 するものではなく,むしろ本態性高血圧症と考えられ

るものを加えると,若年者で67例(45.9%),壮年期 以後で144例(66.1%)であり,両側の差は明らかに 有意であった.

 皿.高血圧・脳卒中の家族歴(表3)

 原因不明の高血圧のうち,若年者67例では高血圧・

脳卒中の家族歴(+)が47例(70.1%)であり,うち 非固定性高血圧38例では家族歴(+)27例(71.1%),

固定性高血圧29例では家族歴(+)20例(69.0%)で ある.一方壮年期以後112例では家族歴(+)が79例

(70.5%)であり,うち非固定性高血圧32例では家族 歴(+)22例(68.7%),固定性高血圧80例では家族 歴(+)57例(71.3%)である.すなわち若年期と壮 年期以後とでは全体としてみても,また非固定性・固 定性に区分しても,高血圧・脳卒中の家族歴の有無に 関して有意の差をみとめなかった.

 高血圧を有する慢性糸球体腎炎のうち,微量の尿蛋

表3.高血圧・脳卒中の家族歴の有無

糸球体腎炎 側生{麟門口

 急性 腎血管性高血圧 膠原病による高血圧 その他の腎性高血圧 内分泌性高血圧 心血管性高血圧 血液疾患を有するもの

症例数

9耐Qソー− 0

5

2

1

6

2

1

0 糖尿病を有するもの

憐埜綴攣黒黒制

{糸球体び漫性病変軽度〜なし+腎生検(一),尿蛋白(一)}

原因不明ないし本態性高血 圧症

二=

5

0

67 146

家族歴(+)

例1%

4FO11

2

1

0

4

1

1

0

2

0

47 86

46.2 55.6 100.0

50.0

0.0

66.7

50.0

100.0

40.0

70.1

58.9

壮 年 期 以 後

症例数 OQUO U

3

2 3

8 4

1

1

22 32

112 218

家 昌昌(+)

例[%

9﹂■10

1

2

1

3

1

1

1

8

21

79 131

43.3 33.3

100.0

33.3

37.5

25.0

100.0

100.0

36.4

65.6

70.5

60.1

(5)

白の他に腎炎を疑わせる臨床所見がなく,腎病変が軽 度なものでは高血圧の原因をただちに腎炎に求めるの は問題があるので,表2重訂のこれらの症例をのぞく と,若年者52例で高血圧・脳卒中の家族歴(+)が24 例(46」2%),壮年期以後の30例で家族歴(+)が13 例(43.3%)であった.若年期,壮年期以後の原因不 明の高血圧では,それぞれ同年代の高血圧を伴ない,

臨床所見を有する糸球体腎炎と比較し,高血圧・脳卒 中の家族歴(+)のものが多く,この差は有意であっ た.表2記載の軽症の腎炎では,若年者9例のうち5 例(55.6%),壮年期以後の3例のう,ち1例(33.3%)

に高血圧・脳卒中の家族歴がみとめられたが,両年代 群ともに畳数が少なく推計処理は試みていない.さら に今後の検:討が必要であろう.

 高血圧を有する糖尿病では,若年者5例のうち高血 圧・脳卒中の家族歴(+)が2例(40,0%)であり,

壮年期以後の54例のうち高度の腎障害を伴なう22例で は家族歴(十)が8例(36.4%),腎障害の軽度ない しみとめられない32例では家族歴(+)が21例(65.6

%)と多く,壮年期以後のこの両群の差は有意であっ た.壮年期以後の高血圧のうち,原因不明のものでは 高度の腎障害を有する糖尿病よりも高血圧・脳卒中の 家族歴(+)のものが多く,両者に有意の差がみられ たが,原因不明のものと腎障害が軽度ないしみとめら れない糖尿病とではこの家族歴の有無について有意の 差をみとめなかった.

 本態性高血圧症は一般に壮年以後の疾患と考えら れ,事実Cruz−Coke 9), Perera lo)は本態性高血圧 症では40(}50才台で血圧が上昇するものが多いことを 観察している。これに対して二次性高血圧は若年老に おいても当然おこりうるものであり,若年者の高血圧 は二次性高血圧がその多くを占めるものと考えられて きた.Platt 1)は若年者(35才未満)の高血圧24例のう ち19例は二次性高血圧であったとし,またK且hnsら 11)は若年者の高血圧71例のうち46例は二次性高血圧で あったと報告している.しかし検診などで発見された 若年者の高血圧では病的所見のみとめられないものが むしろ大部分を占あるともいわれる2).これら諸報告 において若年者高血圧のうちに占める二次性高血圧の 頻度の差は患者の選択方法によるところが大きいもの と考えられる.また検診などで発見される高血圧には 原因不明のものが多いとされているが,検診では十分 な検査が行なわれないまま原因不明とされてしまい易 い.そこで本報告では入院患者を対象に詳細な検査を

行なって極力二次性高血圧の除外に努力した.従って 本報告では,一般の検診などで発見した若年性高血圧 よりも二次性高血圧の占める頻度が高いものと予測さ

れる.

 若年者の高血圧のうち,42.5%が糸球体腎炎を有す るものであり,壮年;期以後の高血圧における15.1%に 比べ明らかに高率であった(P<0.01).一般に腎障害 の程度と高血圧合併頻度とは相関がみられ12)13),糸球 体病変が高度:なほど,また腎機能(GFR・RBF)低下 の高度になるに従い,血圧が充進ずるものが増加する ことが知られている13).本報告で糸球体腎炎を有する と診断された若年者62例中53例,壮年期以後の33例中 30例は腎生検,腎機能検査のいずれかあるいは両者の 所見からみて,高血圧が腎炎由来と考えてまず誤りな いものと思われたが,残りの糸球体腎炎,すなわち若 年者で9例,壮年期以後で3例は腎病変がごく軽度で あり(表2),その高血圧がただちに腎炎由来と断定す ることはできない,Rolandら14), Ohtaら15),浅野16)

らは若年者の一次性高血圧と考えられる症例のうち腎 生検により軽症の腎炎が明らかになるものが多いと報 告し,ごく軽症の糸球体病変でもなんらかの機序によ り高血圧の発生とむすびつく可能性を示唆している一 方,このような症例では本態性高血圧症の合併の可能 性も考慮する必要があろう.本態性高血圧症は素因の 濃厚な疾患とされているので,もしこのような軽症の 糸球体病変を有する高血圧症例の高血圧が本態性高血 圧症の合併とすると,かなり濃厚な家族歴が証明され るはずである.そこでこれらの軽症の腎炎の家族歴を 調査したが,例数が少なく高血圧の家族素因が濃厚と する結果はえられず,本態性高血圧症合併の可能性に ついては,さらに今後の検討が必要であろう.

 腎血管性高血圧は腎血管撮影を実施した若年性高血 圧67例中2例(3.0%),これを実施した壮年期以後の 高血圧44例中2例(4.5%)であった.一般に高血圧 患者における腎血管性高血圧の占める頻度は5%前後 とする報告が多く17)18),著者の症例でもほぼこれに近 い結果がえられた.

膠原病は若年性高血圧で0.7%,壮年期以後の高血 圧で1.7%を占め,とくに若年期に多いものではな

い.

 その他の腎疾患は,若年性高血圧で4.1%,壮年期 以後の高血圧で3.7%を占め,年代にかかわらず種々 多彩な腎疾患がみとめられた.

 内分泌性疾患は若年性血圧で1.4%,壮年期以後の 高血圧で1.8%を占め,年代にかかわらずその頻度は 小さい.甲状腺機能低下症では高血圧を合併しやすい

(6)

とされている19)ので内分泌性高血圧に含めたが,その 高血圧の発生機構については明らかでない.

 糖尿病では高血圧の合併頻度が大とする報告が多い ので,本報告では糖尿病を高血圧の原因として取上げ た.糖尿病の高血圧合併機序については,糖尿病によ る腎細動脈硬化20)21),糸球体病変とくにび漫性病変22)

23),動脈硬化による腎血管性高血圧の合併24),下垂体

・副腎系の関与25)などの諸説がある.武内らの報告23)

26)によると,糖尿病における高血圧の合併は糖尿病に よる糸球体び漫性病変と関連がみられるが,壮年期以 後の高血圧を伴なう糖尿病では糸球体病変がなく,腎 細動脈硝子化のみとめられるものがしばしばあり,こ のような症例は本態性高血圧症の合併の可能性も考慮 さ九るとしている.本報告では糖尿病を有する高血圧 のうち,若年者ではいずれも高:度の腎障害を有した が,壮年期以後では高度の腎障害を有するもの22例,

腎障害が軽度ないしみとめないもの32例とに区別され た.高度の腎障害を有するものでは高血圧の原因がこ の腎障害に由来する可能性が大きいと考えられるが,

腎障害が軽度ないしみとめられないものでは高血圧の 原因をただちに糖尿病性腎症にもとめるのは困難であ り,むしろ本態性高血圧症の合併が考慮される.これ は後述の高血圧の素因調査からもその妥当性が推測さ

れる.

 原因不明の高血圧は若年者で45.9%,壮年期以後で 51.4%を占め,この両群の差は有意でないが,糖尿病 を有する高血圧のうち上述の本態性高血圧症の合併の 可能性を推測される症例を原因不明の高血圧に含める ならば,原因不明の高血圧は若年者で45.9%,壮年期 以後で62。8%となり,若年者に比して壮年期以後に原 因不明の高血圧が多くなる,

 本態性高血圧症の発生に遺伝・環境因子が関与して いることは従来より報告ざれており27),原因不明の若 年性高血圧においても遺伝・生活環境の影響が大きい とされている28)29).本報告では若年性高血圧の家族歴 を調査した.原因不明の高血圧では若年者,壮年期以 後のいずれも,それぞれの年代の糸球体腎炎を有する 高血圧より高血圧・脳卒中の家族歴を有する頻度が大 であり,壮年期以後のいわゆる本態性高血圧症,原因 不明の若年性高血圧ともに腎炎を有する高血圧よりも 濃厚な家族素因を有することが示された.

 若年者のうち糖尿病を有する高血圧では原因不明の 高血圧よりも高血圧・脳卒中の家族歴を有するものが 少ない傾向をうかがわせるが,例数が少なく断定的で ない.一方,壮年期以後の糖尿病を有する高血圧で腎 障害が軽度ないしみとめられないものは,腎障害が高

度のものよりも高血圧・脳卒中の家族歴が濃厚であ り,かつ同年代のいわゆる本態性高血圧症における家 族歴と有意の差を示さなかった.すなわち,糖尿病を 有する高血圧で腎障害が軽度ないしみとめられないも のと腎障害が高度のものとでは高血圧の家族素因の関 与の程度に差がみられ,この両者の高血圧の発生機序 が相違している可能性を示すものといえよう。また糖 尿病を有する高血圧で腎障害が軽度:ないしみとめられ ないものと本態性高血圧症はともに家族素因が濃厚で あり,かつその程度に有意の差がないことは,前者の 高血圧の原因を糖尿病性腎症にもとめるよりもむしろ 本態性高血圧症の合併の可能性を考えるほうがより妥

当なことを示している.

 金沢大学第1内科に入院した若年性高血圧146例,

壮年期以後の高血圧218例を,その原因別に分類し比

較した.

 1.糸球体腎炎と診断されたものは若年者で42.5

%,壮年期以後で15.1%を占めた.

 2.腎血管性高血圧は若年者で1.4%,壮年期以後 で0.9%を占めた.

 3.膠原病に伴なう高血圧は若年者で0.7%,壮年 期以後で1.4%を占めた.

 4.高血圧を合併したその他の腎疾患は嚢胞腎,重 複腎孟,腎結核,腎結石など年代にかかわらず多彩で あり,若年者で4.1%,壮年;期以後で3.7%を占めた.

 5.内分泌性高血圧は若年者で1,4%,壮年期以後 で1.8%を占めた.

 6.心血管性高血圧は若年者で0.7%,壮年期以後 で1.8%を占めた.

 7.糖尿病を有する高血圧は若年者で3.4%,壮年 期以後で24.8%を占め,若年者ではいずれも高度の腎 障害をみとめたが,壮年期以後では腎障害が軽度ない

しみとめられないもめも少なくなかった.

 8.原因不明の高血圧は若年者で45.9%,壮年期以 後で51.4%を占め,両者の差は有意でなかった.ただ し糖尿病を有する高血圧の,うち腎障害が軽度ないしみ とめられないものは本態性高血圧症の合併の可能牲が 大きいと考えられるので,これを原因不明の高血圧に 含めるならば,この頻度は若年者で45.9%,壮年期以 後で66.1%となり,やはり原因不明の高血圧は若年者

よりも壮年期以後に多い結果となった.

 9,原因不明の高血圧のうち,若年者で70.1%,壮 年期以後で70,5%に高血圧・脳卒中の家族歴をみと め,この両群はそれぞれの年代の腎炎を有する高血圧

(7)

よりも高血圧・脳卒中の家族素因が濃厚であった.

 10.糖尿病を有する高血圧において高血圧・脳卒中 の家族歴(+)は若年者で40.0%,壮年期以後のうち 高度の腎障害を有するもので36.4%∫腎障害が軽度な いしみとめられないもので65.6%を占めた.

 稿を終るに臨み,終始ご指導とこ校閲を賜った恩師武内重五郎 教授に心から感謝の意を表します.さらに教室諸先生ならびに腎 血管撮影などにご協力いただきました本学泌尿器科諸先生に謝意 を表します.

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      一 Abstract

   P.art .1一一 1一一一一  一 一

 In order to elμcidate the characteristics of hypertension at juvenile ages as compared with the elderly age grQup, the etiology and family history of 146 hyper・

tensives in the juvenile age group (less than 35 years) and 218 hypertensives in the elderly age group(35 years or more)who were admitted to the First Depar・

tment of Interna1.M6dicine, Kanazawa University Hospita1, were studied.

 1)Hypertension of unknown etiology was most frequently seell in both groups.

H:ypertension with. glo軍nerulonephritis in the juvenile age group and hypertension with diabetes mellitus in the elderly age group were second most frequently observed in each group, that was 42.5%and 24.8%respectively.

 2) In the hypertensives with diabetes mellitus, the family history of hypertension

(8)

or apoplexy was revealed in 40.0% of the juvenile hypertensive patients, in 36.4%

of the elderly hypertensive patients with the renal lesion of marked degree, and in 65・6% of the elderly hypertensives with the renal lesion of slight degree or none.

From this higher incidence of the family history of hypertension or apoplexy in the last group, it was supposed that these cases were hypertensives of unknown etiology with incidental complication of diabetes mellitus.

  3) Hypertension of unknown etiology was observed in 45.9% of the juvenile age group and in 51.4% of the elderly age group. However, if the hypertensives with diabetes mellitus, whose hypertension was thought to be probably not secondary one due to diabetes mellitus but primary one with incidental cornplication of diabetes mellitus, ・were included in the group of hypertension of unknown etiology, 45.9%

of the hypertensives in the juvenile age group and 66.1% of the elderly age group were classified as hypertension of unkown etiology. This result showed that there        ‑were more hypertensives with unknown etiology in the elderly age group than in the juvenile age group.

参照

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