(金沢大学審査学位論文)
長平骨々髄分布の神経組織とその終末 構造に関する形態学的研究
金沢大学医学部整形外科学教室(主任 高瀬武平教授)
金沢大学大学院医学研究科整形外科謡講座
坪 田 謙
(昭和34年11月6日受付)
本論文の要旨は第29回日本整形外科学会総会において発表した.
末梢:神経に関する組織学的研究はCaja1, Bielschow・
skyの神経鍍銀法及びEhrlich, Dogie1等のMe−
thylene blue超生体染色法の創始以来,後継研究者 の幾多の技術的改善を加え,各種組織についてこの半 世紀間に刮目すべき進展を成し遂げた.然るに骨髄に 分布する神経組織についての知見は,骨髄自体が強固 なる骨組織の腔内に封入されて存在する構成的特殊性 と,加えて神経組織め選択的染出をとの部位に迄到達 させることの技術的困難性とが研究上の障碍をなし,
他の組織の下見に比較し甚だしく乏しい1 骨髄の神経組織に関してDhvemey層(1700),K61・
Iik6r『
i1899)14),αtolenghi(i9σ1)23)等め先駆的研 究以来,(}1aser(1927)6)の哺乳動物三管骨三二分布 の神経に関する研究,竹山(1936)諭の鳥類三哺乳類 及び入類長管骨三二内神経紅ついての比較解剖学的研 究,AJ(Unt客&C. A. Richins(1945)・5)の哺乳類 品分榊経線維の分析・平木等(1955>9 の家兎骨 髄め神経分布につい一雨の研究,更に猪狩(1955,1958)・1;・2ゲめ入類骨及び骨髄に分布する神経に関する研究 等が文献上1と散見さ耽るが,その成果はいずれも断片 的であり,且つ推論的考察によるとも見られる知見を 多々混在し,をの全貌を把握するにはなお不充分なも のがあった.当教室においては骨系統の基礎的構造及 びその機能に関す:る研究途上にて,この点の不備に着 目し,1955年以来長管骨:々髄分布の神経組織につい
℃の系統的研究に着手し,既に高瀬等(1957)35・37)に より骨髄における神経線維の分布状況の概略及び変性 実験仁よる分布神経の構成要素の分析的研究に関して 報告された.; 』.
著者は精細な観察の継続により新たなる所見を加 え,更にMethylene blue超生体染色法の導入及びそ
の技術的改良により神経組織の末梢構造に関する研究 をなし,新知見を得たのでここに報告する.
〔1〕 長期骨導髄分布の外来神経 .に関する研究
1.研究材料及び方法
1)研究材料:生後約1カ月の廿日鼠を使用し,
その脛骨を大腿骨遠位端, 腓骨並びに周辺軟部組織と 共に易咄し,直ちに次記処方の各固定液た投入した.,
2)研究方法:ト本法の要点は材料の固定操作中に 神経組織の嗜門門を増強する目的で弱酸類を加え,同 時に脱灰操作を兼ねるものであ軌骨組織を含めた標 本により骨髄分布神経の骨全体に対する関連性をも調 査するため,連続切片を作製し検索した.
a「.蟻酸脱灰鍍銀法(野村法)
i)固定及び脱灰.60〜60%アルコール100ccに蟻 酸5〜10ccを加えた固定兼脱灰液中に材料を3〜6日 間, 毎日液を交換しつつ置くボ脱灰が充分なるてとを 確かめ,96%アルコールにて24時間ジその間数回液を 交換して三山する.
ii)鍍銀.−余剰の液を濾紙にて吸収除去後,5%硝 酸銀水溶液に投入.5日間保存する.
iii)還元.前操作と同様に銀液を濾紙にて充分吸収 した後,還元液(ピロガロール1.59,中性ホルマリン
5.Occ,蒸溜水100cc)中に2日間置く.
以上の材料を入れた各液の容器はいずれも所定時間 中28。C艀卵壷中に保存されるピ
b.硝酸脱灰鍍銀法F・de Castro・法変法)
i)固定及び脱灰.60%アルコールユ00cc,エチー ルゥレタン1.59,硝酸1.5〜3.Oqcの混合よりなる固 定及び脱灰液中に28。Cに保ち12〜24時間置く.この Studies on the Minute Innervation of the Marrow of Long耳ones.:Ken Tsubota, Department of Orthopedic Surgery(Director:Prof. B. Takase), School of Medicin6, Uiversity bf K:anazawa.
間数回液を交換し,所定時間後蒸溜水にて1日間洗 潅.次いで第2固定液(96%アルコール100cc,アン モニや水10滴)中に24時間28。Cに保ち,固定完了後 蒸溜水中に投入,その表面より材料が沈下する迄洗瀞
する.
ii)鍍銀.以上の如く処置された材料を1.5%硝酸 銀水溶液中に37。Cに保ち6日間保存す,
iii)還元.前法と同様に濾紙にて処理し,還元液
(ピロガロール1.09,中性ホルマリン10cc,蒸溜水 100cc)中に1〜2日間28。Cに保つ.
以上の2方法により鍍銀された材料はいずれも最後 に蒸溜水中に約1時間放置して還元液を側副し,アル コールにて脱水,ツェロイジン包埋.1恥の連続切 片として標本を作製した,
完成した標本において神経線維はいずれも暗褐黄色 又は暗黒黄色を呈し,淡黄色に染色される骨髄,骨,
筋,腱等の組織とは明瞭に識別される.
2.組織学的所見
1)神経線維の骨髄腔への進入
a.廿日鼠脛骨の栄養孔は骨の背側にてその中央よ り梢近位端に偏して存在するが,これより始まる管 腔,即ち栄養管は骨質を斜方向に貫通して遠位端に向 い,骨髄腔に開沖している.脛骨背面に達した神経線 維及び栄養動脈は共にこの管を通過して,脛骨4髄に 進入する.栄養血管に随伴して進入する神経線維の大 部分は血管に纒黙する集束を形成し,動脈の外膜をな す結合組織網に含まれて存在するが(第1図),集束 の構成に加わらない少数の岡岬線維はその数条が集合 し,血管との間に一定の間隔をおき,寧ろ栄養管々壁 に接近した経路をとり骨髄腔に進入する.骨皮質内に て栄養管の分岐する異常例においては栄養血管も2引 し,これに直接併走する神経線維束も亦分岐し,夫々 の血管の随伴神経束としてその走向に従うと同時に,
個々の神経線維もこの部位において屡々両分岐血管に 併走する分枝を派出し,これらの神経線維の複雑な交 叉錯綜により,ここに粗な叢剛構造の形成が観察され
る(第2図).
d.骨髄に分布する神経線維の一部は骨端部に著明 に発達せる所謂不完全栄養孔(管)を通過して進入す る.この管腔は弧状に轡曲するこの部分の骨皮質を骨 幹長軸に平行する直線状に貫通し,骨端海綿質に開継 しているが,1〜2条の比較的繊細な神経線維が細小 血管に併走し,或いは血管に.随伴せずにここを通過す
る(第3図)のが観察される.この種の進入経路を示 す神経線維の一部は周辺骨膜に訓導に分布する神経よ り分岐して由来することも連続切片の追跡により認め
られ,その1例を第4図に・て示した.
c.骨幹部皮質中にて骨髄腔と骨外とを連絡する経 路として,更に.Havers氏管が存在するが,この種の 裂隙を通じて骨髄腔に到達する神経線維の所見は本鍍 銀法による標本では確認し得なかった.
2)骨髄における神経線維の分布 a.骨髄血管に.併走する神経線維
i)栄養管を経て骨髄腔に達した栄養動脈は直ちに 上行及び下行の2枝(主幹動脈一平木)に.分れ,近位 端及び遠位端に向うが,この途中更に分岐を繰返し,
夫々骨の長軸方向に略平行して骨端に至る.これらの 血管は更に所々にて内径のより狭小な分枝を垂直方向 或いは斜方向に派出し,この細小血管はいずれも不規 則な走路にて骨髄実質中に分布し,その末梢は動脈性 毛細管となる.
栄養孔より栄養動脈に随伴して骨髄腔に進入した神 経線維は上記の如き血管の経路に従い,密接なる関連 を保持しつつその末梢毛細管に迄併走する.動脈壁に 随伴する神経線維の数は血管内径に比例して減少し,
細小動脈及び一部の動脈性毛細管周辺においては繊細 な1〜3条の線維を見出すのみである(第5・6図).
主幹動脈と見られる直径15〜20μ大の血管周辺にお いて神経線維は一般に血管壁に密接して随伴するが,
末梢に至り血管が細小となるに従い,その壁との間に 一定の間隙をおいて併走するものが比較的多く観察さ れ,又随伴せる血管より一旦全く離れて短距離間を骨 髄細胞間に不定の経路にて走り,再び走向を転じて従 前の血管周辺に.戻り(第6図),或いは近傍を通過す る別個の血管の随伴神経東中に合する等と神経線維の 経路には種々の変異が出現する.又血管に接して随伴 する神経束より所々にて1条又は2〜3条の神経線維 が分岐し,血管輪状筋層に沿い筋線維の走向に従って 血管の半周を囲続し,時には螺旋状に血管に纒絡する 如く経過する(第7図).血管周辺における神経線維 の分布は血管分岐部にて特に複雑であり,この部位に おいてはその中枢側より末梢側にかけて上記の如き血 管輪状筋層に纏絡する神経線維を多数に見出すと同時 に,分岐血管の各々に随伴する神経線維束相互間にも 第8図にその1例を示す如き神経線維の移行が存在 し,これらの交叉錯綜の結果血管分岐部にはいずれも 神経線維の叢状の分布が観察される.その規模は栄養 管内或いはこれより骨髄腔進入後最初の分岐部にて最 も顕著であり,末梢の分岐部に至るに従い関与する神 経線維数も減少し,規模は小となる.
ii)不完全栄養管を経由する神経線維も小数ながら 細小血管に随伴して観察されるが,この種の血管の多
くは骨髄腔に進入後骨端部内骨膜に接近して分布し,
時に骨髄細胞間における分岐を認めるが,しかしいず れも極めて短距離間を追求し得るのみである.血管に 併走する神経線維は栄養孔経由のものと同様に血管壁 に密接して随伴するが,その数は2〜3条であり,前 記の如き複雑な血管壁への纒絡の状況は観察されな
い.
b.骨髄実質細胞間における神経線維の分布 栄養孔(管)を経由して骨髄に達する神経線維の一 部は進入直後に併走する血管との関連を脱し,その走 向とは無関係に骨髄細胞間に分布する.これらの神経 線維は骨髄細胞間にて複雑な迂回屈曲した経路をと
り,所々にて分枝を派出し,:更に血管に随伴する神経 線維束及びその分枝と合する所見も屡々見出される
(第9図).主幹動脈とその分枝血管に.随伴する神経線 維束も至る所にて小集束を形成する線維群或いは単一 の神経線維を骨髄実質中に分枝するが,これら分枝神 経は前記の実質中分布の神経線維の動向と規を一に し,骨髄細胞,脂肪細胞及び静脈洞に沿い,種々の程 度の血行を呈して進行し,更に実質細胞間において反 転を含む種々の方向への分岐を示す.又一部には近傍 を通過する同種の骨髄実質内遊走神経線維と合し,或 いは血管随伴神経東中に再び含まれるに至る等とこの 種の神経線維の走向は甚だ不規則であり,血管壁に随 伴する神経が骨髄腔進入直後に示す鼻曲以外いずれも 骨長軸に略平行するに比較して対照的である.更に 動脈性毛細管に随伴する神経線維中には途中にて毛細 管より離れ,骨髄実質中に進入し1〜2条の分枝を派 出し,周辺の骨髄細胞間に分布するものも時に観察さ れる.骨髄実質中に広汎に分布するこれら神経線維は 概ね樹枝状の分布様式を示し,前記の如くこれら神経 線維の相互間にて,或いは血管随伴の神経と夫々線維 の移行により連結する所見は所々に.て散見されたが,
骨髄全般にわたる外来性神経線維による実質中におけ る網焼の形成は認められらい.
c.静脈洞における神経線維の分布
静脈洞における神経分布には極めて小数の神経線維 が関与するのみにて動脈系におけるそれとは著しい対 照を示す,即ちここに観察される神経は昏惑に沿い緩 い波状を呈して併走する1〜2条の繊細な線維のみで あり(第10図),動脈周辺に見られる如き豊富な神経 線維により纒絡される所見は認められない.面ここに 分布する神経線維はいずれも附近を通過する血管に併 走の神経線維束より分枝し,骨髄細胞間を経て由来す るものであることを連続切片の検索により追求し得た
(第6図).
d.内骨膜に.おける神経線維の分布
骨髄組織の最:表層即ち骨皮質に接する部分に骨髄実 質より明白に区別される結合組織性の内骨膜(Endo・
stium)が存在する.これに分布する外来神経は栄養 管を経て進入し,栄養血管に随伴する神経線維の分枝 が骨髄細胞間を通過して由来する(第11図)のである が,一部には栄養管より進入後血管の経路とは無関係 に直接内骨膜に沿って分布するもの(第珍図)も存在 する,前者においては神経線維が骨髄細胞間にて骨皮 質と航る一定の間隔を保持して短距離間並行し,次い で直角に近い角度にて走向を変じ内骨膜に至るもの
(第13図)及び血管より分離して後内骨膜に垂直又は これに近い角度にて直進し,ζの表層にて分岐して分 布するもの(第i1図)の2種の分布様式が認められ る,ζれに対し後者の神経線維は最初より内骨膜に接 近して分布し,骨髄細胞間の経過を殆んど示さない.
内骨膜に垂直方向の断面の観察では神経線維が単にこ の膜に接して分布するのを見出すのみにて分枝の状況 を判然と認め得ないが,切線方向の断面の観察例にお いては第14図に示す如き分枝像を呈し,樹脂状の分岐 と骨長軸方向への神経線維の分布の様相が明白に観察
される,
3)神経直線の終末構造
骨髄に分布する外来神経の多くは遊離終末の如く漸 次太さを減じ,骨髄細胞間に.おいて追求不能となる が,時に細小血管,毛細管,静脈洞周辺及びこれらに近 接する骨髄細胞間に散見される神経線維では所々に.お いて結節を形成し,その連なりとしての連珠状の形態 を示す所見が観察される.かかる特殊構造を有する神 経線維の大多数が極めて繊細なるものであり,多くは この種の線維より梢ヒ太い外来神経に併走して認めら れ,結節は円形,楕円形或いは紡錘形を呈し,神経線 維の太さの2〜3倍の直径を有している(第15・16図)・
この種の構造においては数個の結節を連珠状に連繋 し,最終の結節より末梢には全く線維を見出すことの ないものと,2−3個の結節の連珠形成後身末端の結 節より更に極めて繊細な1条の線維を派出し,これが 僅かの距離を進行して扁虻不能となるものの2種類が 見出された.又稀に静脈洞周辺に分布する神経線維の 経路に沿い結節形成の他に.第17図に示す如き分葉状 を呈する特殊の構造も観察された.
3.考 按
1)神経線維の骨髄内への進入路について 18世紀初頭のDu▽erneyの研究以来骨髄に分布する
神経に関するK:611iker(1899)ド竹山(1936),Kuntz
&Richins(1945),猪狩(1958)等のいずれもその第
1段階として骨髄組織に至る骨外神経の進入路につい て検索し,神経線維の大部分は栄養血管に.伴い栄養孔
(管)を通過するとなし,一部がHavers氏管を経由 して進入するとなしているが,最近の猪狩の研究を除 く殆んどの実験はいずれも骨髄の外套をなす骨皮質を 機械的に除去し,骨髄のみを被検材料として観察した
ものである.この実験方法によれば骨皮質の管腔内の 神経線維の動向1こついて直視下に確認することは不可 能であり,その結論の実験的根拠となるものは乏しい といわなければならない.一方著者の使用した当教室 慣用の神経鍍銀法に.よれば,石灰質含有組織の脱灰操 作は勿論,骨質及びその裂隙,骨髄組織並びに神経線 維は夫々鮮明に識別され,又神経の周囲組織に対する 位置的関係を全く損なうことなく,特に廿日鼠という 小型の哺乳動物の使用により,脛骨の全体にわたり外 来性神経線維の分布を骨髄,骨皮質及び周辺軟部組織 において完全に追求することが出来,これら実験的事 実に基き考察を加えることが可能である.
a.骨髄腔に進入する神経線維の大多数は既に推察 された如く,栄養血管に伴い,これに併走する集束を なして栄養管を通過し,骨髄に達する事実が確かめら
れる.
b.骨の長軸成長のための旺盛な発育過程にある骨 端部は骨幹部骨髄とは異なる血管分布を示し,これら の通路として骨皮質中に多数の不完全栄養孔(管)の 存在が観察されるが,この経路を経て骨髄腔に進入す る神経線維に関する知見は竹山の多くの動物を対象と した研究にも,又脱灰標本により検討したとする猪狩 の研究においても記載を認められない.いずれも実験 上の不備によると考えられるが,著者の廿日鼠脛骨の 脱灰鍍銀法による連続切片標本に,よれば,骨幹のみな らず骨端部の骨皮質及び骨髄も共に切片中に含まれ,
然してこれらの連続的な観察の可能なることより,骨 皮質を貫通して骨髄腔に進入する神経の動向に関して 余す所なく把握し得たのである.この種の管腔を通過 する神経は多分豊富な骨端部栄養血管の運動機能を支 配すると考えられるが,一方血管の随伴を認めない神 経線維の存在も見られ,又血管と無関係な骨膜分布の 神経叢よりの分枝の進入の観察される等の諸点より考 察すれば,不完全栄養管を通過する神経線維のすべて が血管運動機能のみに関与するとは考えられない.
c.Havers絵馬を経る神経線維の骨盤への進入は この管を通過する血管の豊富な事実より容易に想定さ れ,竹山は鶏,家兎,海瞑,白鼠及び入類の脛骨及び 大腿骨を対象とするCaja1法変法により, Hurre11
(1937)10)は猫新生仔の上腕及び大腿骨並びに成熟海
狽の肋骨をCajal法変法にて,更に猪狩は成魚及び 胎児の脛骨及び大腿骨を脱灰操作を加えたBiels−
chowsky一瀬戸氏鍍銀法により,夫々:Havers氏管 中の神経線維の通過を認あているが,著者の廿日鼠の 脛骨を対象とした脱灰鍍銀法に.おいてはこの所見は確 認し得なかった.竹山の提示した知見には骨皮質を入 獄的に破砕除去したとする実験方法との間に重大な矛 盾を含み,その結論は全く信頼し難iく,又彼等の使用 した実験動物に比し,著者の対象とした最小実験用哺 乳動物である幼若廿日鼠でほHavers氏管は極めて狭 小であり,細小動脈以上の太い動脈が見られず,毛細 管の通過のみの観察される事実より考察すれば,猪狩 のいう如くSt6hrの1(apiUarennervenと称すべき神 経原線維,或いは次章にて述べる如きMethylene blue にて超生体的に染色される神経要素のこの管腔におけ る毛細管に随伴しての通過は想定されるが,本鍍銀法 により追求される外来性神経線維の見出し得ないのも 亦合理的なることと考えられる.
2)骨髄内における神経線維の分布
栄養血管に随伴し骨髄内に広汎に.分布する神経線維 に関して既にDuverney, Ottolenghi, Glaser,竹山,
:Kuntz&Richins,平木・田中,猪狩等の研究業績が 挙げられ,著者のここにおいて得た神経組織の血管壁 に対する関連,血管分岐部における軸装構造の形成,
更に血管壁及び骨髄実質中への分枝状況等の所見もこ れら文献的記載に略一致する.
一方骨髄細胞間における神経線維の分布につき,竹 山は 各神経線維相互に吻合錯綜して終末網を形成す るものにて,その吻合の様式に.より同一平面において も各網眼は種々の大きさ及び種々の形態を有するもの にて立体的には極めて複雑なものなるを充分窺知し得 るものなり と述べ,又猪狩は知覚線維及び植物神経 線維よりなる索状の神経線維束が骨髄実質内に広汎に 網状に分布する所見を観察し,これを髄内基礎神経叢
(intramedullar basal plexus)と名付けているが,著:
者の観察では栄養管より骨髄腔進入直後に血管周辺よ り分離し,又動脈伴走の神経線維束より分岐して骨髄 細胞に沿い迂回屈曲した不規則な経路をとる神経線維 の骨髄実質中における分布様式は概ね樹枝状の分岐の 繰返しであり,時にこれらの相互間及び血管随伴神経 束との間に種々の形式の各々の構成線維の移行による 連結と見られる所見を散見したが,脛骨々髄の連続切 片による検索においても竹山の骨髄全体にわたる神経 線維相互の吻合錯綜による終末網と称する如き多数の 網絡の構成は認められない.絵本実験に使用された神 経鍍銀法は既に高瀬・野村等が報じた如く外来神経の
染出を主とする方法であり,猪狩の用いたBielschow・
sky法変法の如き外来性神経線維と同時に神経原線 維,即ち後章にて詳記する内在性線維をも表現する方 法とは自ら神経組織の染出範囲を異にするものである から,その所見においても亦差異を生ずるものと考え
るのである.
静脈洞における神経線維の分布に関して,猪狩は静 脈系統には全く神経成分を見ないとしているが,著者 は竹山,:Kuntz&Richins,平木等の知見に等しく,
単一の神経線維或いは2〜3条の線維よりなる集束が 附近の血管周辺より来たり,二二に沿い単調な二三を 呈して併走するのを認めた.
内骨膜に分布する神経組織に関しての先人の知見は 甚だ断片的であり,竹山は単にH:avers氏管より進入 せる神経線維の一部がここに存在するのを認めるのみ
●とするが,これは骨皮質との関連のない骨髄のみにつ いての実験であり,その所見の誤謬は不可避的な研究 方法上の不備に基くと考えられるが,著者の観察によ りばHavers氏管を経由して骨髄腔に到達する外来神 経の存在は全く認められないのみならず,栄養管より 直接内骨膜に分布する小数の神経線維と共に,血管随 伴神経より分岐し骨髄細胞間を通過して内骨膜に分布 するものを屡々観察し,内骨膜に至る線維の走向の差 異よりこの両者を識別し得ることを認めた.平木等は 骨髄表面即ち内骨膜に接する部分より1〜2本の神経 線維の骨髄中に進入する像を比較的多く認めるとし て,これをすべてHayers氏管より進入したものとな し,この前提の上に神経線維の経路を追求している,
しかし彼等の挙げる如き経路を辿る線維は著者の連続 切片の検討では明らかに栄養経由の神経線維の特色を 備えると考えられ,この故に内骨膜分布のすべての神 経線維をHavers氏管より進入したとなす彼等の説に は同意出来ない.著者の作製せる標本は骨皮質及び内 骨膜か相互の正常な位置関係を保持したまま切片とな
されているので,この部位における神経の広がりにつ いて更に内骨膜を骨髄側より二二的に観察することが 可能であり,この組織に到達した神経線維が数回の分 岐をなし,骨の長軸方向に樹脂状に分布する所見をも 併せて認め得た,
3)骨髄分布外来神経の終末構造について 以上の各項について検討した如く,骨外より進入し
明らかに血管との密接な関連を示し,又骨髄細胞間に て複雑な経路をとり,骨髄中に広汎に分布する神経線 維が血管壁平滑筋細胞及びその他の骨髄の構成要素と の接合に際して如何なる組織的形態を呈するかの問題 は神経学的にも多大の興味を有する所であり,一一面骨
髄の機能の解明の上においても重要な課題をなす事 項であるが,文献上Ottolenghi, Rossi(1932)29),
:Kuntz&Richins,竹山,平木・田中等の種4の実験 材料と実験方法による神経線維の終末装置に関する夫 々の断片的な知見を認めるに過ぎず,現在迄になお一 致した見解には到達していないとしなければならな い,著者の観察によれば骨髄実質中では,神経線維が 遊離終末状に分岐して漸次細小となり,遂に骨髄細胞 間に追求不能となる.更に血管壁においては,終末小 結節に終るとしたOttolenghiの知見に類似する終末 と考えられる構造を見出し得たが,既に幾多の研究者 Ottolenghj, Kuntz&Richins,高瀬・野村等37),猪 狩12))により示された如く,骨髄中に分布する外来 神経の大多数は自律神経系線維と考えられ,骨髄組織 中における被支配細胞との組織的結合をなす末梢装置 としての終末網絡の分布が推定され,外来神経と共に.
この種の構造の一部を表現するBielschowsky法,或 いは後者の組織に強い親和性を示すMethylene blue 超生体染色を以てすれば,その全貌を明らかにし得よ うと推察される.しかし著者の使用した方法は既に報 じた如く,外来神経の表現が主であり,著者のここに 見出した所見はCajal法を基礎とする手段に,より選択 的に鍍銀され,その全過程を末梢に至る迄追求される 外来性神経線維の終末的形態と判断するのである.
〔皿〕 長管些々髄分布の神経組織の 終末構造に関する研究
前章の実験により長恥骨二二における外来神経の全 般的な分布の様相に.ついて究明し得たが,かかる神経 線維は既にKuntz&Fichins及び高瀬・野村等が変 性実験による分析にて明らかにした如く,その大多数 は自律神経よりなるとされる.前章に記した如く外来 性神経線維の染出には,Cajal法を基礎とする神経鍍 銀法により満足すべき成果を得たが,しかしこの方法 による組織学的研究にも限界を有し,近時末梢神経の 研究の進展により漸次解明されて来た自律神経系の末 梢構造をなす終末網絡の表現には困難を覚えるため,
著者は髄内の神経組織の終末組織に関する更に.精細な る知見の把握を目的とし,Methylene blue超生体染 色法を応用して,次の如く実験観察をなした.
1.実験材料及び方法
1)実験材料2生後約1カ月の幼若家兎(体重約 1kg)を用い,実験前約1週間飼育観察し健常なるこ とを確かめ,更に開腹に際し肝臓及び脾臓に肉眼的観 察にて異常のないことを確認して実験に供した.
2)実験方法=佐口のMethylene blue超生体染
色法を基礎とし,これに:著者の予備実験の結果よりの 改良を加えて,家兎に応用して恒常の成績を得るに充 分な次の方法を考案して実験に使用した.
a. 染色液の調整:実験24〜48時間前にMethylene blue B(E. Merk社製品)を50。Cに温めた0.75%食塩 水にて溶解し1%液を作製.これを染色原液として実 験直前迄日光を遮り貯蔵する.実験直前に0・75%食 塩水に。て稀釈し%及び%%液を調整し,37。C恒温器
中に保存す.
b.超生体染色法:家兎を開腹,経腹膜的に腹部 大動脈を露出し,これに切開を加えて染色液を満した 内径1mmのビニール管を挿入.管に連結した注射筒 を圧して前記%又は殆%液80〜100ccを約20分間に
て注入する.
c.固定:注入終了後直ちに脛骨を易咄し,内骨 膜を損傷しないよう留意して骨皮質を除去し骨髄を取 出し,固定液1(ピクリン酸アンモン飽和食塩水(0.5
%NaC1)20ccJ%塩化白金水溶液6滴,中性ホルマ リリン10滴)に投入し氷室に保存する.
48時間後材料を取出し,水洗1分間.濾紙にて余剰 の水分を吸収し,次いで固定液∬(5%塩化カルシウ ム水溶液20cc,モリブデン酸アンモン19)に入れ室 温中に24時間置く.
d.標本の作製:所定時間固定後材料を蒸溜水中 に.て1分間水洗,濾紙に.て水分を吸収し,ジオキサン
(Diethyle且e Dioxide)を3度交換して脱水,キシロ ールにて透徹し,パラフィン中に包埋,6〜12μの連 続切片として標本を作製する.
以上の如く完成された標本にて神経組織は紫色を呈 し,血管及び骨髄実質は殆んど染色されず,稀に共染 を伴う部分においても,多くは青藍色調を呈し,神経 組織とは充分に区別して観察される.
2.組織学的所見
1)骨髄血管輪状筋層に分布する神経組織の終末構 造
骨髄分布の血管に随伴する外来性の神経はMe・
thylene blue(以後M. B.と省略する)により紫色 を呈し,血管外膜結合組織中に含まれ,4〜8,αの太さ の索状の形態にて血管壁を緩やかな波状に囲請するが
(第18・23図),この神経の分布層より内層,即ち輪状 平滑筋よりなる中膜に密に接して,形態的に前者の構 造とは異なるM.B.嗜好性の神経線維の分布が観察 される.即ちM.B.により鮮明な紫色に染出される 円形又は楕円形の微細な頼粒の存在により,恰も静脈 瘤様の形態を示す細線維が中膜をなす平滑筋細胞に接 して軽度の波状の屈曲を呈し,血管長軸方向に対し斜
走或いは横断する如き経路にて進行し(第19・20図),
数回の分岐を繰返し,又他の同様の細線維と相互に吻 合をなして血管に纏絡する所見が至る所に見出される
(第20・21図).しかしてこの細線維の全体的な分布を 追求することにより,血管筋層をなす平滑筋細胞に沿 い種4の形状の網眼が形成され,従って血管は細線維 の密な網絡により囲続纒結されていることが窺われる のである.かかる構造に対するM.B.の親和性は均 一的ではなく,色素はいずれも穎粒に集中し,各頼粒 の聞は殆んど囲周組織と同様に.透明であるか,或いは 極く僅かに周囲より識別される紫色の淡色調を示し,
外来神経中に屡々観察される如き繊細な神経線維様の 構造がこの間隙中にも存在することを窺わせるに過ぎ ない.この故に一部の標本においては穎粒間の聞隔が 大となり,これらを連繋する構造と平滑筋細胞間隙と の識別が困難となり,紫色に濃染された顧粒のみが筋 細胞表面或いはそれらの間に散在する如くに観察され る部位もある(第21図).又この前面組織の所々特に 細線維の吻合部に.当り,屡々頼粒が1個或いは2個の 直径1〜3μの円形又は楕円形の無色透明な空隙の周 囲に,平面的に観察すればリング状に排列し,これを 立体的に見れば楕円体を纏絡する如くに多数集積して いる構造が見出される(第20図).
この種の智慮と血管に随伴する外来神経とを連結す る細線維の存在も,比較的太い血管にて両者間に無色 の結合組織性外膜を有する部位において屡々認められ る.第22図はその1例を示し,血管長軸に斜方向の断 面の観察により,血管外膜の表層に近く存在する染色 度の低い外来神経の集束に連なる線維がM.B.に濃 染する穎粒の連続としての形態を示し,外膜結合組織 中を波状を呈して貫通し平滑筋層に達し,筋細胞表面 或いは細胞間隙に沿って分布し,網状構造の形成に与
る状況が1個の標本において認められる.
標本の一部にて骨髄腔への進入直後の栄養動脈と考 えられる直径70μ前後の太い血管の周辺に見られる 神経組織は,染色時の僅かの生体条件の差異に基くも のと推定されるが,第23図に示す如く,血管外膜中の 外来性神経は5〜7μの比較的平滑な輪廓をなす索状 の構造を呈するに反し,網絡を構成する筋層表面の細 線維は,前述の如き個女に尖鋭な輪廓を示す誌面の点 線状或いは鎖線状の連繋によりその存在を把握される のではなく,M. B.により臨急質的に染色される輪 廓の梢不鮮明な原形質様の構造を以て,全く連続的 に瀞脈瘤状の特色ある形態を示す.かかる細線維の吻 合部の一部において,特に三角形或いは多極形に膨大 し,この中に直径1〜2μの円形又は楕円形の一層染
色度の低い多分細胞核と考えられる均等構造の部分が 見出される.即ち血管中膜を囲淫する網絡は,単なる 外来神経の終末枝とも見られる細線維の分岐及び吻合 により形成せられるものではなくて,平滑筋細胞に接 して存在し,超生体染色時の未知の一定条件に.応じて 淡い紫色に染色される原形質よりなり,円形又は楕円 形の核を有する細胞体及びその細胞突起と考えられる
:構造が,隣接する同種の構造との相互間に吻合をなし て形成されると見られる所見がここにおいて把握され る.又外来神経に.接近した部位に存在する細胞核周辺 の原形質と見られる構造中に,時に前者より連続的に 追跡される繊細な神経線維の含まれる所見も一部に認 められる.なおこの部において網絡を構成する細胞突 起様の細線維の多くは輪状に排列する血管平滑筋線維 の走向に一致して分布し,又この筋層について立体的 に観察すれば,外膜に面する表層のみならず中膜の各 層において,筋線維の間隙中に網絡に連繋する紫色の 細線維の分布を見出すが,血管の管腔面を被う内皮細 胞層に迄これが延長する所見は認められない(第24
図).
M.B.により染出される原形質性網絡は上述の如き 比較的内径の大なる動脈壁のみならず,血管内径を減 ずるに比例してその密度は粗になるが,骨髄に分布す る殆んどすべての輪状筋層を有する血管壁にわたって 観察される.第25図は15〜20,μ程度の細小血管周辺に 見出されたにM.B・親和性の連なる頼粒の連繋より なる細線維の網眼構造の一部を示す.更に単層の内皮 細胞よりなり周囲に平滑筋細胞の存在を認めない動脈 性毛細管の周辺においても僅かではあるが,M. B.に より紫色を呈する二二よりなる静脈瘤状の細線維の併 走を認めたが,この部においては太い動脈壁の如き活 眼の形成は観察されなかった.
12)骨髄実髄中における神経組織の終末構造 血管外膜中に存在する外来神経より血管周辺の骨髄 実質中に分岐して進入する神経線維は屡々観察される が,豊富な血管壁の神経組織の分布に比較して,実質 中においてはこの種の神経線維の分布について追求し 得る機会は少ない,著者の観察により,骨髄細胞間を 通過し恰もこれに纏絡する如き複雑な迂回屈曲した経 路をとり,血管筋層の終末網絡の構成要素に類似する 顯粒状の形態を示す細線維が屡々見出され(第26図),
又脂肪髄において第27図にその1例を示す如き,脂 肪細胞間にて卵円形の細胞核様の構造を中心として M.B.により染出される細胞体と,その両側に連なり 濃染する二二を内蔵する細胞突起と見られる構造を稀 に認めた.しかしこれら神経終末組織の骨髄全般にわ
たる連繋及び骨髄実質との終局的な組織的関連につい ての所見はなお充分に把握し得ない.
3.考 按
骨髄血管に分布する神経に関するC.K. Drinker et al(1916)5)及び中島(1926)22)の生理的及び薬物学 的実験により証明されたその植物性神経機能はKuntz
&Richins及び当教室における高瀬・野村等37)の神 経変性を応用した線維の構成に関する分析的研究によ り形態学的に根拠付けられ,この種の神経が自律神経 系に属するものなることは明白に理解されるに至って いる.従ってこれら神経の末梢は他の植物性機能を有 する組織において既に多くの研究者により解明された と同様に,自律神経終末二二に終止すると考えられる が,現在に至る迄の骨髄内血管分布の神経組織の終末 構造に関する研究について検討するに,その知見は必 ずしも満足すべきものはなく,研究者により種々の説 が挙げられているが,未だ統一された結論は見出され ない.即ちGlaserはM. B.による超生体染色法を 用いて,豚及び家兎三管田々髄血管に微細な神経の網 眼が二二しているのを見出したとするが,その記載は 著しく断片的であり詳細を欠き,Cajal法変法を用い た竹山は鳥類,哺乳類及び人類の骨髄神経に関する比 較解剖学的研究に際して,外膜中に分布する豊富な神 経の一部が血管中膜に迄進入してここに小点状の終末 を形成すると述べ,終末装置として理解するには甚だ 不備な知見を挙げている.又1955年に発表された平 木等の論文にはSchultze・Gros法を用いた実験によ り,家兎大腿骨々髄の100μ程度の中等大動脈におい て神経線維束より分散せる細線維が吻合を重ね,吻合 部に,は三角状の肥厚を示し,全体として血管の筋線維
の表面に纏絡して微細なる神経原線維網を形成する 所見を認め,これを自律神経終末である所謂神経性 Terminalreticulumであると記載されている.猪狩12 も最近の研究においてBielschowsky瀬戸氏鍍銀法を 人類骨髄に応用して,血管壁神経が主として植物性 神経よりなり,血管壁に植物性終末網(vegetative terminal reticula)の分布することを観察しているの である.このBielschowsky鍍銀法の変法による実験 をなした両者の記載に見られる神経性終末網の概念 は,St6hr 33)に.より1932年に提唱され始めて以来今 日に至る迄自律神経終末装置に関する種々の見解の指 導的位置に存在し,平木等,猪狩の知見は一見骨髄血 管の神経組織の終末構造を解釈するに充分満足すべき ものの如くに判断される.しかし全体としての自律神 経末梢構造に関する研究の推移と諸種の論義の焦点と について考察するに,1932年St6hrによりTerminal・
reticulumと命名され,植物神経支配のあらゆる組織 に分布し終局的には被支配細胞の原形質中にも進入す る微細な蜂巣状の網絡の主体として強調された神経原 線維の神経刺戟の伝達機構としての意義の大半は,間 もなくかえってこの装置を内に含めて存在する構造,
即ちNeuroplasmamasse St6hr s又はLeitplasmo・
dium Boeke sにとって代えられ,幾多の研究の焦点 はこの種の原形質性構造の本質とその機能に関連して 集中され,sympathetic groundplexus Boeke s(19・
38)1),Praeterminalreticulum Reiser s (1934)26),
terminale Plexus Lawrentjew s(1926)16)等の各種 の学説と夫々の名称が提唱されて来た.更にLeeuwe
(1937)17)はかかる原形質性構造に含れる細胞核の形 状と,神経節細胞のNe∬oplasmaと同様にM. B.
により超生体的に染色され,又陽性のオキシダーゼ及 びペルオキジダ一面反応を呈する細胞質の特性より,
前記の研究者達の如く自律:神経終末網路の本体を結合 組織性のSchwann氏細胞.とする説に飽き足らず,
既に1894年Cajal 25)により記載されたneurones sympathiques interstitielesについての再認識を主唱 し,更にMeyling(1953)20)セよこの見解を発展せし め,原形質性終末線路はすべてautonomic interstitial cellsより構成されるとなし,この細胞の自律神経系 末梢1こおける意義を強調している.又神経刺戟の伝導 機構に関して,神経原線維網より直接被支配細胞原形 質中に伝播されるとした最初のSt6hrの説も漸次修 正せられ,interstitial cellsを外来性自律神経線維と 被支配細胞間に介在する一種のsynapsisとする見解
が研究者達(P.L. Li(1940)18), Boeke(1949)3),
Jabonefd(1954)13)により支持され,更にSt6hr学派 の主張するTerminalreticulumの神経原線維は外来 性神経線維より連続するものではなくて,外来神経と は全く独立して原形質性終末添紋中に内在するintrin・
sic且berであるとする意見(Meyling(1953),佐口
(1956)30))も多くに認められるに至っている.
著者は自律神経の末梢構造の研究に際して,上に通 覧した如き原形質性要素の有する重要な意義に着目 し,骨髄血管に関する神経終末の原形質性構造の究明 を目的としてM.B.超生体染色法を選択したのである が,この色素による神経組織の染色の基礎問題に関し て,著者の実験方法の基本となった超生体染色法を以 て研究した佐口は1956年のCytological and neurolo・
gical studiesの遺稿において, autonomic inte卜 stitial cellsに符合する自律神経の原形質性終末網路 を neurovegetative syncytoreticu五um と名付け,原 形質中に含有される穎粒が強いM.B.に対する親和
性を示し,M. B.等塩基性色素によるかかる網膜を形 成する原形質構造の表現の可能性はこの種の頼粒に基 因するとして,自律神経末梢の染出の限界を明らかに
している.
著者の標本にて得られた所見では,穎粒はいずれも MB・により最も鮮明に染出されるに比し,基本的要 素をなす細胞形質或いはこれに含まれる神経原線維の 染色性は充分でなく,細胞核と考えられる構造も透明 なる球状の空隙を囲着する如くに排列する直面の存在 により陰性の所見として窺い知ることが多く,血管筋 層に観察される虚血は一見neuro飾rilに類似の線維 により構成される如き形態を呈するが,azurophilyを 示す多数の細粒の存在と佐ロがperipheral syncytial strandsに特異的と認めた網絡構成要素のvaricose characterにより,明らかにかか構造が原形質性網路 の性質を有すると判断し得る.更に70μ前後の血管 壁に.て得られた所見はM.B.が軽度ながら染色時の 一定の生体条件に.よって終末網路の基本をなす原形質 をも表現する能力を有することを示し,ここにおいて 細胞核と考えられる構造の存在も陽性の所見として認 められ,又一部には原形質中に神経原線維を含む事実 も把握され,終末泣面がinterstitial cells或いは壷 口のsyncytoreticulum cellsと称すべき細胞性性格 を備えた構造なることを肯定し得るのである.
なお血管筋層に分布するsyncytiumの宮盛は平木 等がTerminalreticulumの分布を論文の第1図の模 式図にて中等大動脈に部分的に示した記載とは異な り,太い動脈のみならず中等大及び細小動脈において も認められ,更に毛細血管壁にもその延長が観察さ れ,網眼の密度は血管の内径を減ずるに従い漸次粗に なるが,骨髄内動脈系の全体にわたって分布している ことが著者の所見により確かめられる.
これらの事実の総合として骨髄内分布血管の平滑筋 層は交感神経及び副交感神経の外来性神経線維(節後 線維)の連続による神経原線維網,即ちStδhr学派の 所謂Terminalreticulum lこより終局的に支配されて いるのではなく,外来神経より完全に独立し,これら の神経原線維を内蔵する原形質性構造,即ちMeyling のautonomic interstitial cells或いは佐口のsyncyto−
reticulum cellsの網絡により纏絡され,これが支配 する自律神経の終末構造をなすと著者は判断するので
ある.
次に骨髄実質中に分布する神経線維の種類に関して は,既に当教室の高瀬・野村等の研究により副交感性 と推定される神経線維を主とし,一部に交感神経を含 むことが報告され,又猪狩も人類骨髄において髄内基
礎神経叢を構成する植物神経線維の存在を認める如 く,この組織中に観察される外来性神経線維の多くは 自律神経終末装置としての原形質性網絡に終止すると 考えられる.著者も本実験により骨髄細胞聞或いは脂 肪胞幽間にその一部と考えられる所見を見出したが,
この組織の全体的な連繋及び骨髄分布の血管筋層に.お ける如き被支配細胞との終局的な関連を窺知する所見 は未だ把握し得ない.しかしRiegele(1932)27・銘)が Bielschowsky法を用いて,家兎肝臓のK:upffer氏星 状網胞網,豚の脾髄網及び副腎細網内皮系に神経性終 末網よりの神経原線維を含むScheidenplasmodium の分布を認めた知見より考察すれば,骨髄においても その基礎構造をなす細網細胞及び細網内皮組織を支配 する自律神経の原形質性終末県議の血管壁におけると 同様な実質中の全般的な分布が推察される.
〔皿〕外来神経線維と原形質性終末 網絡との関連についての考察
Caja1法を基礎とする鍍銀法とM. B。超生体染色 法との2つの神経組織について夫々染色範囲を異にす る実験方法を用いて,著者は骨髄において終末と考え られる結節形成或いは連珠状構造迄追求し得た外来性 の神経線維と,その末梢に副いて被支配細胞に接して 分布するautonomic interstitial cells或いはneuro・
vegetative syncytoreticulumと称される原形質性終 末網絡の2つの構造に関する知見を把握したが,この 両者の関連に.ついてMeyling(1938)19)は頸動脈洞に てinterstitial ce11s突起の表面に密に接して併走す る節後線維の存在を見出し,又この洞に進入するすべ ての節後線維の切断による変性に際してinterstitiaI cellsの終末網に全く異常所見を認めない事実より,
節後線維の終末枝が直接被支配細胞と連結すると するSt6hr等の説に反対し,神経刺戟はautonomic intersti重ial cellsのintrinsic systemを介して伝達
されると主張し,又佐口はM.B.超生体染色法に神 経痛銀魚及びBielschowsky法変法を併用しての比較 研究において,11ervous syncytoreticulumに進入する 外来性の神経線維,即ち節後線維は末梢経路中種々の 大きさと形状のvaricose thickeningsを有し,遊離 終末状にsyncytiumの原形質中に終止すると述べ,
更に彼のBielschowsky法変法にて鮮明に染出される 繊細な神経原線維,即ちintri皿sic neuro飾rillaeは syncytoreticulumの細胞質中にて一部は並列し,一 部は微細な蜂巣状の泣面を形成すると記載し,syn−
cytoreticulumは外来性神経線維及び固有の神経原線 維を共に原形質中に含む存在であるとしている.
著者も前記の両種の実験により,骨髄分布の血管筋 層周辺にてかかる見解を肯定し得る幾つかの所見を観 察し得たので,骨髄血管随伴の外来神経線維はSt6hr の称する如く,連続的に神経原線維の微細な網絡,即 ちTerminalreticulumに移行するのではなく,鍍銀 法にて染出される終末小結節を形成し,終局的には鍍 銀法を以て表現されずM.B.による超生体的染色に よりその存在が窺われる原形質性終末直路の表層又は その原形質中に進入し終止するものと考えるのであ
る.
総括及び結語
教室慣用の脱灰鍍銀法及び語口点前3法より著者の 改良せるM.B.超生体染色法を使用し,廿日鼠及び 家兎脛骨を対象として,長管継々髄に分布する神経組 織こっき,特に従来の知見に。て不備をまぬがれなかっ た骨皮質に対する神経線維(外来神経)の関連,並び に血管壁を支配する終局的な神経組織の末梢構造に関 する形態学的研究をなし,次の如き所見を得た.
1.廿日鼠脛骨々髄の鍍銀法による実験よりa)骨 髄に.分布する神経線維の大部分は栄養動脈と共に栄養 管を通過し,一部は骨端部の不完全栄養孔を経由して 骨髄腔に進入する.Havers鴬嬢を通過する外来性神 経線維は観察されない.b)骨髄において神経線維の 大部分は栄養血管に密な関連を保持しつつ随伴する.
その経過中血管分岐部において叢状に分岐し,所々に て周辺骨髄実質中への分枝を出し,血管内径の減少に 比例して併走線維数を減じつつ,動脈性毛細管の一部 に迄達す.c)栄養血管と共に進入した神経の一部及 び血管周辺神経束よりの分枝は骨髄実質細胞間に,て樹 脂状に分岐し,又所々にて他の同種の線維或いは血管 に随伴する神経と相互に構成線維を交換して骨髄中に 広汎に分布する,d)静脈洞における神経分布は動脈 壁に比し甚だ乏しいが,近傍の細小血管随伴の神経よ り分岐して来る小数の神経線維の存在が観察された.
e)内骨膜の分布神経は主に血管併走神経束よりの分 枝であり,これに栄養管通過後直接由来する神経線維 が加わり,この膜に,沿い樹脂状に分岐を繰返して分布 する.f)神経線維の多くは骨髄細胞間にて漸次細小 となり,末梢の追求は不能となるが,一部の動脈壁及 び静脈洞壁に,沿う神経線維に,おいて本神経鍍銀法によ
り染出される外来神経の末梢と考えられる小結節の形 成を見出した.
2.家兎脛骨々髄のM.B.超生体染色法による実験 より,骨髄内動脈の平滑筋層にて通常はM.B.によ る鮮明な血縁の染出より,又或る未知の生体条件にて
はその原形質及び細胞核様の構造の染色により把握さ れるMeylingのautonomic interstitial cells或いは 佐ロのneuro・vegetative syncytoreticulmの所見に 一致する原形質性終末回路の存在を見出し,この終末 装置の骨髄内血管の全経過にわたる分布を追求した.
骨髄実質中において,自律神経終末装置としての原形 質性終末四型の一部と考えられる構造を見出したが,
その全体的な関連についてはなお完全に究明するに至
らない.
以上の両種の実験的知見より,著者は骨髄血管の神 経支配はSt6hr学派の称する如き外来神経の連続より なるTerminalreticulumにより最終的に構成される のではなく,神経鍍銀法により表現される終末結節を 有する外来神経線維はN.B.により超生体的に染色 される別種の神経組織,即ち原形質性終末野路の表層 或いはその形質中にて一応終止し,神経刺戟の伝達は 後者の終末装置としての特殊の機能を介して成立する
ものと判断する.
終に臨み御懇篤な指導と校閲の労を賜った恩師高瀬武平教授に 心から拝謝し,併ぜて本研究に際し多大の便宜を与えられ又有益 な御助言を戴いた野村進助教授に厚く感謝の意を表します.
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Abstract
The present studies were made oll the millute innervation of the marrow of long bolles.
From the observations on serial sections of mouse s tibia, treated with the silver impregna.
tion method, we have led to the following conclusion:a)The majority of nerve五bers distributed to the marrow penetrates the cortex through the nutrient canal with the artery,