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日本型福祉社会と家族経営 −老人の家庭介護につ いて−

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(1)

日本型福祉社会と家族経営 −老人の家庭介護につ いて−

著者 岩本 祥子, 篠原 冬

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 31

号 1

ページ 107‑123

発行年 1982‑11‑25

その他のタイトル Welfare Society and Home Management in Japan 

−A Study on the Home Care of the Aged People

URL http://hdl.handle.net/10105/2338

(2)

日本型福祉社会と家庭経営

‑老人の家庭介護について‑

岩 本 祥 子・篠 原   冬

(奈良教育大学家政学教室) (金蘭短期大学家庭経営教室) (昭和57年4月30日受理)

はじめに

1980年代以降の日本は、低成長の中、仕界に例を見ないスピ‑ドで、高齢化社会‑突入してい くという特徴をもつ。その中にあって政府は、日本型福祉社会(1)という名のもとに、老人福祉を 家庭に委ねる方向を打ち出している。

たしかにわが国においては、老人問題を家庭サイドから捉えた場合、「老後は家族と共に」と いう同居志向が強く、その同居率も諸外国に比べて、はるかに高い傾向を示している(2)

。老人の

生活する最良の場は、住み慣れた地域であり家であろう。しかしそのことをもって日本型福祉社 会の担い手として、家庭が福祉行政の一方的な受け皿になることを容認してよいものかどうかは 慎重に検討されなければならない。

ここ数年来、老人福祉年金・老人医療の無料化・特定都市交通の優待など、老人福祉もかなり 浸透し定着している面もある。また同居を基に据えた家庭の福祉向上のための研究報告もいくつ かみられる。(3)

しかしながら、わが国のように伝統的な扶養観や同居観をもち、生涯同居を通例とする中にあ っては、上述のような視点はもちろんであるが、とりわけ老人に対する家庭介護の問題は、家庭 に投げかけられた深刻な課題である。特に、同居の動機として、老親の健康上の要因が指摘され る傾向が強い。このことは、必ずや訪れるであろう"老い"と、それに伴なう高齢期の家庭介護 の問題を必然的に内包していると考えられる。ところが、従来、高齢者の家庭介護の問題、とり わけ病弱老人や寝たきり老人を抱える家庭の内部的困難を具体的に示した調査は、比較的少ない。

そこで、本稿では、日本型福祉社会なる政策用語について、老人福祉の視点から解釈を加える と同時に、家庭に投げかけられた、家庭介護という一つの具体的問題をとりあげ、その現状と問 題点を明らかにする。その上で、家庭の立場から福祉行政に対する提言を行いたいと考える。

I.「日本型福祉社会」と老人福祉

日本型福祉社会なる用語を、老人福祉の視点から捉えた場合、福祉先進諸国に比べて日本固有 の特徴は,以下の4点である0

1.高齢化の進行が速いこと

青井和夫氏の説̀4)に基づいて、わが国における老齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割 合)が、西欧諸国なみの14%台に突入する時期を高齢化社会と称するならば、そこへ到達する期 間は今から僅か30年̀5)ということになる。これを福祉先進国と比べてみると、そのスピードに表 107

(3)

表1人口高齢化速度の国際比較 65歳以上人 口比率の到達年次

所 要 年 数 5 % 12 %

1950 1995 4 5 フ ラ ン ス 1790 1960 170 西 ド イ ツ 189 0 1965 75 ス ウエI デ ン 1855 1960 105

ア メ リ カ 1925

資料)国運「The Aging of Populaiton and its Economic and Social Implications」 (1965)等による。

1のような所要年数の違いがみられる。このような加速度的高齢化現象を背景として、現在、公 的年金制度の整備・扶養層の社会的負担及び老人医療の増大に対してどのように対処すべきかと いう多くの問題が提出され、さまざまな議論が展開されている(6)

2.老人層の就労率が高いこと

わが国の65歳以上の老人男子の就労率は、1975年の国勢調査によると53.5%であり、西欧諸国 のそれに比べるときわめて高い。しかしながらその就労形態は、軽作業・雑役のような単労タイ プか、宿直警備員のような就業時間の不規則な変則的サービス業が多い(7)

。これらの就労老人の

%は、生活のために働いているのが環状(8)であり、高い勤労意欲には、まさに働かなければ生活 が苦しいという経済的事情が関わっているのである。

これに対して、家庭基盤充実のための基本的施策のとりまとめの中では(以下施策とよぶ)、

°°°°高齢者の就業機会の開発増進を打ち出してはいるものの、「‑高齢者の能力を活用する団体を育 成・援助する。または‑・を支援する」という間接的表現にとどまっている(傍点筆者)。換言す れば政府のこのような姿勢は、団体育成などと表現しているように、自らの手により積極的に行 政的解決をはかるというのではなく、民間の手にその役割の多くを委ねようとする福祉行政の現 状ないしその姿勢であると言えよう。したがって勤労意欲の高さをもって、老人が経済的に自立 意識を高めていると短絡的に解釈することはできない。

3.貯蓄志向が高いこと

勤労者世帯では、99.8%が何らかの貯蓄をし、60‑64歳をビ‑クに一世帯当たり昭和55年で 561万円の貯蓄を保有している。(9)またその目的は、60歳以上では「病気や不時の災害への備え」

が11.1%、「老後生活のために」が60.0%で、上位を占めている(10)

近来福祉の見直しの第‑段として、高福祉・高負担があげられるが、これに対してわが国では 貯蓄率が諸外国に比べて高い。このことは効率の悪い行政の手を借りるよりも自らの手で自らを みようという"自助型"の社会通念が底流をなしていることのあらわれであるとも言えよう。し かしながら行政の基本姿勢を決めるにあたって、このような貯蓄率の高いことをもって、自助力 の高い日本型福祉社会であると逃げ切ってよいとするには大いに問題があると思われる。現に

「施策」では次のような表現をしており、家庭の自助に任せようとする意図が感じられるのであ

°°°°°°°°°°°°°°°°°°°°°°

る。すなわち、『各家庭の主体的な努力により、積極的に資産を形成することを助長し、充実し

(4)

た家庭生活を営むために、必要な資金を確保できるようにするために、個人貯蓄の整備につとめ

°

る』の如くである(傍点筆者)0 4.同居率が高いこと

昭和50年の国勢調査によれば、 65歳以上の老人のうち、 75.5%の者が子と同居している。また 昭和54年の『家庭基盤充実に関する意識調査』をみても、老親の76.0%が子との同居を希望して おり、高齢になるほどその傾向は高くなっている。子夫婦の側も、両親が健康である場合には 42.0%が、片親になった場合には69.0%が、同居を志向している。このように同居志向が高いこ との背景としては、伝統的に根強く残る家意識からくる当然論や、あるいは経済的諸問題・共働 きの増加に伴なう親子の相互扶助のような実利論など、さまざまの理由が考えられる。その理由 はともかくとして、ここではっきりと認識すべきことは、別居を積極的に肯定する者は依然とし て少ないということである。これを受けて当然福祉政策は、同居を助長する潜在的意図のもとに、

老親を抱える世帯への税制優遇措置・住宅政策等を打ち出している。しかし別居の理由としてあ げられている住宅や老人の経済的条件が充たされたからといって、老人を抱えた家庭が必ず幸福 を享受するとは限らないであろう。

以上4点で明らかなように、日本型福祉社会なる用語は、あまりにも高齢化のスピ‑ドがはや く、諸般にわたって行政の対応力が不足している点を補うために、高齢者の就労志向・貯蓄志向

・同居志向の高さを福祉のふくみ資産とみなし、自助自立が先行する日本型福祉社会と称してい るかに受けとれる。

ちなみに、家庭基盤充実に関する構想の推進にあたっては、 『家庭は社会の基礎的単位であり、

‑・中略一家庭が本来有している福祉的諸機能を見直し、 ‑中略‑これら機能の発揮を助けること によって、これからの生活の質の向上・福祉の充実を図ることが必要である』と述べ、家庭の機 能を5つに分類した中で、 『家庭は、 i.未来のための児童と青少年の健全育成の場となること、

ii.高齢者が健康で充実した生活をおくる場となること・‑‑であり、施策を進め、もって新しい福 祉社会の実現のための基礎を整えることに資する』とうたっている。つまり政府は、家庭をも って福祉の肩代り的役割を演じさせることを暗に期待しているという意図がうかがえるのであ る。

以上のように、政府は日本型福祉社会という名のもとに、老人福祉を家庭に委ねる方向を打ち 出している。しかしながら、家庭がその方針を全面的に許容してよいものであろうか。特に、わ が国の同居率の高さを考えると、そこから派生的に生じる老人の家庭介護の問題は、家庭経営の 立場からみて深刻な課題であると考えられる。

そこで以下、老人の家庭介護に焦点を絞り、実態調査に立脚して検討を加えていく。

Ⅱ.老人の家庭介護

本調査の意図は、 (1)老人介護の状況、 (2)介護人の生活、 (3)介護の方法の3点について、家庭介 護の実態を把握することにある。

1.調査対象及び調査方法

調査対象は、主として兵庫・大阪を中心とする関西在住者で、 70歳以上の老人と同居する家庭 の介護人である。被介護人(老人)を70歳以上と限定した理由は、身体的な健常・病弱にかかわ

らず、この年齢になると、何らかの世話を要すると推定されるためである。また、高齢後期(80

(5)

衷2 配票E]収状況

A . 配 B . 回 C . 有 効 回 収 数 回 収 率 ( B ′A ) 有 効 回 収 率 ( C ′A )

17 0 部 17 0 部 1 6 6 部 1 0 0 * 9 7 .6 *

歳以上‑老衰期)あるいは寝たきり老人については、 2年以内に故人となった場合も含めて調査 を行った。

調査方法は、留置自記法で、質問紙配布時に説明を行い、 1週間〜10日後の回収時に面接し聞 き取りによる補足を行った。なお質問紙には自由記入欄も設け、具体的な意見も聞けるようにL m

配票回収状況は、表2に示す通りである。

調査時期は、昭和56年4月〜6月である。なお本調査は、日本家政学会家庭経営研究部会の閲 西地区のメンバーの協力によって行った。

2.調査対象家庭の概況

本調査の結果を分析するに先立って、調査対象となった家庭の概況を述べておく(表3・表4 参照)0

(1)介護の実態を考察するために、介護を要するこれらの老人をその健康度により2つのグルー プに分ける。その1つは、日常生活を営むのに差し障りがない程度のいわゆる健常な老人を介護 する健常グル‑プ(以下健常グループとよぶ)であり、他の1つは病弱や寝たきりの老人を介護 する病弱グル‑プ(以下病弱グループとよぶ)である。これらの両グループに含まれる老人の性 別は、表3に示すように女性が多く、老人問題はまた女性の問題でもあると言えよう。

(2)同居年数は、健常グループで平均22.7年、病弱グループで26.2年であり、 315年の開きがあ る。これは、介護される老人の平均年齢の違いが反映されたのであろう。同居に至った動機とし ては、両グループとも「同居するのが義務として当然だから」という当然論をあげる者が、全体

の6割以上を占めている。この点がまさに日本的と言えるところである。

(3)家族構成は拡大家族が大部分を占め、その他に二人暮し(老夫婦のみ・娘と親・息子と親) がみられるが全体の5.0%にも満たない。このような点からも、現在の老人が生活している場は、

三位代家族の中が多いと言える。

(4)介護人の平均年齢は、健常グループで47.8歳、病弱グループで51.5歳であり、 3.7歳の開き があるが、これも介護される老人の平均年齢の違いから生じたものであろう。職業は、健常グル ープでは「無職」・「勤め人」・「自営業」がほぼ均分化しているが、病弱グル‑プでは「無職」の 割合がきわめて高い。これは、病弱な老人や寝たきり老人を介護するためには、介護人自身が職 業を持つことは不可能に近いという事情のあらわれと考えられる。老人に対する介護人の続柄に ついてみると、両グループとも「嫁」である場合が最も多く、ついで「娘」となっている。「配偶 者」や「その他」である割合は、きわめて少ない。つまり老人の介護は、とりわけ嫁の手に委ね

られているという現状がうかがえる。

(5)次に、介護される老人の年齢構成をみると、両グループとも共通して75‑84歳が約半数を占 めるが、 85歳以上の占める割合は、病弱グループに多くなっている。やはり加齢に伴なって身体

(6)

費3 枚介護人の性別・健康状態    人(鬼) 性 別

健 康 状 )か 女 .

健 常 グ ル ー プ 28 ( 28 .6 ) 70 ( 7 1.4 ) 98 ( 100.0 ) 病 弱 グ ル ー プ 16 ( 23.5 ) 52 ( 76.5 ) 68 ( 100.0 ) 44 ( 26.5 ) 122 ( 73.5 ) 166 ( 100.0 )

表4 調査対象家庭の概況 健 康 状 態

健 常 グ ル I プ 病 弱 グ ル ー プ

22.7 年 26.2 年

66 .3 6 1.7

経 済 . 家 事 . 育 児 扶 助 12.2 3.2

9 .2 13.9

2 4 23 .5 51.5

5 6 66 .3 〔A .V . 5.2人 〕 42 .6 〔A .V . 4.4人 〕

7 8 10 .2 5 .9

40 66.3 36 .8

50 20 .4 〔A .V .47 .8才 〕 4 1.2 〔A .V /5 1.5才 〕

60 9 .2 10 .3

37.8 6 1.8

28.6 19 .1

31.6 14 .7

27.6 23 .5

71.4 6 6.2

配 偶 者 . そ の 他 1.0 10 .3

70 74 34 .7 16 .2

75 84 4 3.9 〔A .V .78 .6才 〕 47 .0 〔A .V .82.0才 〕

85 2 1.4 36 .8

(多 項 目回答 )

78 .6 79.4

36 .7 26.5

22 .4 7 .3

生 活 費 負 担

ll.2 10.3

32 .7 36.8

が 全 56.1 52.9

※割合の高いものをとりあげ、その他の項目は表から省略した。

(7)

的に病弱化していくことがわかる。老人の収入源は、その8割近くが年金である。その額は、老 齢福祉年金の27万円から、夫の厚生年金の弱と自分の共済年金とをあわせた150万円まで、相当

の開きがある。では、老人の生活費を主として誰が負担しているかというと、他の既存調査(ll)の 結果と同様に、ここでも同居子負担が9割を占めている。別居子負担はきわめて少なく健常グル

ープで3.5%、病弱グループで8.5^にすぎない。わが国の同居がすなわち同居扶養と同義語的で ある点を裏付けている。

以上のような家庭概況を持つ調査対象者達が、具体的な生活の場で、いかなる介護の実態や意 識を展開しているのかを、以下で明らかにしていこう。

3.分析結果と考察

(1)老人介護の状況について

日常の家庭生活の中で、老人に対してどのような介護が実際になされているのかを把担するた めに、 a.食に関する壮語、 b.衣に関する壮語、 C.住に関する壮語、 d.身のまわりに関する世話、

e.その他の世話の5領域を設定し、それぞれ具体的な内容をあげた。図1に示すように、日常生 活全般にわたって、健常グループに比べて病弱グループの世話が多い点は明白である。

健常グループの場合、衣に関するもののうち、 「洗たく」 ・「衣類寝具の買物」 ・ 「寝具の手入れ」

などの世話が比較的多いが,これらはその大半を家族のものと一緒にするために、介護人の負担 感は少ない。住に関する世話では、 「部屋の掃除」と「冷暖房の調節」程度である。身のまわり に関する世話は、他に比べて、きわめて世話の必要度の低い領域である。その中で、 「用便の世 話」が3.0%程度みられるが、それは85歳の男性の場合で夜だけ便器を使用したり、夜半に手洗 いにつれていく等であるo 食に関する仕話では、 「老人向けに何か別に一品つくる」という項目 が45.9^みられるが、それ以外は格別手間はかかっていないO

つまり、健常な老人に対しては、日常生活の中でそれほど多くの世話は必要ではなく、その結 果、介護人もあまり負担を感じていないと言える。

それに対して病弱グループの場合には、仕話の量も質も共に、健常グループとは比較にならな いほど多くて複雑である。中でも衣に関する世話で多いのは、 「用便の世話」に関連して、汚し た寝まきやシーツの交換と洗たく・3,とん干し等である。住に関する世話では、 「部屋の掃除」

はほとんどが介護人の仕事となっている。また「冷暖房の調節」も72.1%と高率である。身のま わりの世話に関しては、 「洗髪・結髪・散髪」、 「ひげそり・爪切り」、 「用便の世話」、 「入浴・身 体清拭」がいずれも60%程度を占めている。この中で最も困難を伴ない、負担感の強いのは、

「用便の壮語」と「入浴・身体清拭」であることが自由記入からうかがえる。また、食に関する 世話においても、 「家族と一緒に食べる」ということの意味が、健常グループの場合とは異なっ ている。すなわち、家族と別に食べるとひがむ老人を、食事のたびに介護してつれてこなければ ならないという手間を表わしている. 94歳の男性(実父)で病弱、ほとんど寝たきりという老人 を介護している娘の自由記入によれば、 「食事のたびに起こして背もたれをさせ、まわりにビニ ールの敷物を拡げ、大きなエプロンをかけさせる.そして柔かく煮た物を運ぶ。こぼしながらゆ っくり食べるのをじっと見守るもどかしさ、寝たままで食べさせる方が手間はかからないけれど、

機能の衰弱を防ぎ、生きる可能性を持続させてあげたいために、あえてこの方法を毎日している。

時には情けなくて泣きたくなることもある。」ということである。また寝たきりの姑を介護する 嫁からは、 「柔かく煮た物を咽喉につめないように、少しずつゆっくりと気長に食べさせてあげ る」という介護状況が述べられている。

(8)

健 常 グルーブ      病 弱 グル‑プ

5 0 5 0 10 1

家 族 と 一 緒

部 屋 ま で 運 ぶ

食 べ さ せ る

老 人 だ け 自 由 に

判 に ‑ m i つ く る

:i:丁 こ :・ :・ :・ :・ :・ :・ !

r… :三 妻 :≒ :≒ :≒ :≒ :≒ :董 :妻 :壬 :妻 :≒ :≒ :

チ :・ :・ :・ :・ :・ :・ :・ :・ :蝣 :・ :・ :・ :・ !

i:… ‥ … ‥ … :喜 :至 :至 :至 :至 :± :± :至 :± :至 ‥ … :iI

‥ ‥ =:‥ 衣 類 . 壕 具 の 買 物

洗 た く

ア イ ロ ン か け

つ く ろ い も の

衣 類 の 出 入 れ

著 者 の 手 伝 い

寝 巻 . シ ー ツ 交 換

:‥ ‥ こ 享 :蔓 :享 ‥ 亭 :亭 :亭 :亭 :蔓 :蔓 :享 :】

:* :* :亭 :亭 :亭 :I:亭 :享 :亭 :享 :享 :享 :幸 :≒ :与 :± =± :i

・ :・ :・ :こ :こ

亭 :こ :亭 :亭 :≒ :幸 :≒ :享 :≒ :± :± :± :三 :± :i:±± :∃

+こ ::千:::こ こ :::こ :こ ::二 ::;ニ :1

こ こ :;:こ :;:こ 1 I:::;:::;:;:;:;:I:;:;:;:;:::;:::;:;:I:;:::::;:::::;:::;l .:.こ ‑:十 ↑ :千 :千 :I:千:十:十 † :て こ † て ‥ :こ .

手 =≒ :!:卓 丁 ‥ Tl

,:ニ :;:こ :;:ニ :こ :;:こ て 寝 具 の 手 入 れ

そ の 他

‥ ‥ :‥ ‥ ‥ ::‥ こ =;I

l… ‥ … :… ‥ … :… :…… :土 ‥ … :i:… ‥ 部 屋 の 掃 絵 … ‥ ;:… ‥ … :… :;:与 :… ‥ ::・ :3

住 ふ と ん の 上 げ 下 げ

冷 暖 房 の 調 節

そ の 他

こ :こ :こ :こ て IV X ‥ ‥ ‥ :

≒ :与 :≒ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

身 の ま わ b

髪 ( 洗 . 結 . 敬 ) ひ げ そ D . つ め き b

洗 顔 . 薄 み が き

用 便 の 世 話

入 浴 . 身 体 清 ぶ 杏 マ ツ サ ‑ ジ . あ ん ま

そ の 他

:こ こ 幸 =亭 :≒ :≒ :喜 :手 :手 :≠ :享 :≒ :妻 :与 ‥ ± :享 :± :± :± ‥ ::± ー ::==::::::I:::::I::===:::=:=:::::=:I:::I:::;::::::l

‥ こ :;:ニ :こ :こ :こ :こ :こ ‥ こ :こ こ ;:二 二 二 :こ こ 二 一 ::::I:::::::::. L:I:I::=::::=:I:::I::=::::::I:::]

=::::::::::::::::I::::::::::::I:=:::::::::::I:::=::::l

.

訪 問 客 の 接 待

話 し 相 手

リ ハ ビ リ の 手 伝 い 薬 服 用 の 手 伝 い

買 物 . 代 筆

I:i:i:i:… ‥ i:至 ‥ ± :至 :± :i:± :± ‥ :≡ :手 :≒ :i:壬 :至 . .± ‥ ‥ :‥ ‥ :::‥ =:‥ ::I

W * :‥ ニ ‥ :‥ ‥ :‥ ‥ .‥ ‥ :::‥ 】

そ の 他

=‥ ‥ ‥ :‥ ‥ ‥ :‥ ‥ ‥ ニ ー f

c :i::‥ … :i:i:i:i:i:i:… . ‥ ‥ ::‥ ‥ :::‥ 蝣 :¥

5 0 5 0 10 0

(.?・項ll回答) 図1 老人介護の状況

以上のように、日常生活の中での老人介護の状況は、健常グループと病弱グループとの問で、

量・質ともにきわめて大きな違いのある点が明らかである。更に、病弱グループの場合には介護 人からの自由記入で示されるように、老人の病弱さの程度や介護人の考え方などによって、介護 の状況に多様性のあることも明らかである。それでは介護人自身の生活は、両グループ間でどの

ような相違が認められるであろうか。次にその点についてみていこう0 (2)介護人の生活について

(9)

表5 被介護人に対する続柄    人(%)

健康帆 続柄

健 常 グ ル ー プ 27 ( 27 .8 ) 70 ( 72.2 ) 97 ( 100.0 ) 病 弱 グ ル ー プ 16 ( 2 6.2 ) 45 ( 73 .8 ) 6 1 ( 100.0 )

介護人の生活上の問題を把握するために、 a・日常生活上の問題、 b・健康上の問題、 C・精神上 の問題の3つの領域を設定し、具体的な内容を示した。

介護人は、その90%近くが嫁あるいは娘という立場の女性である。ただ被介護人(老人)に対 する続柄が嫁か娘かという違いが、介護人の生活と深く関わってくると推定されるため、ここで はその点を考慮して、健常グル‑プと病弱グループとを更に嫁と娘とに分けて比較考察を試みる。

健常グループと病弱グループの嫁あるいは娘の割合は、表5に示す通りである。

介護人の生活上の問題に関しては、やはり前述(1)の老人介護の状況の場合と同様に、健常グル

‑プと病弱グループとの間で相当の違いのあることが図2により明らかである。

a.日常生活上の問題としては、病弱グル‑プの場合、 「生活がふりまわされる」(42.620、 「時 間がかかる」 (29.4%)、 「外出ができない」 (57.4%)等、マイナス面での指摘が多い。

それに対して健常グループでは、 「仕事中気にかかる」という指摘が19.4%みられる程度で、

概して介護する老人から受けるマイナス面は少ない。むしろ、 「家族員に思いやりの気持ちが育 つ」 (28.6%)、 「留守番などを頼める」 (48.0%)、 「経済的に助かる」 (ll.220 というように老人 から受けるプラス面での指摘の割合の方が高くなっている。

b.健康上の問題に関しても、健常グループの場合には、 「何ともない」とする者が70.0%を占 めるのに対して、病弱グループの介護人からは、 「技れやすい」 (57.420、 「睡眠不足になる」

(48.5%)という訴えが多く見受けられる。

更に、 C.精神上の問題では、健常グループは「何とも思わない」とする者が46.9^と約半数近 くを占めるのに対して、病弱グループでは、 「イライラする」 (39.7%)、 「情けなくなる」 (42.6

%)、 「気が重い」 (52.9%)という精神的負担を訴える率が高い。また病弱や寝たきりの老人の 姿をみて、 「不欄に思う」と感じる介護人も多い。

以上のように、病弱老人や寝たきり老人を介護する人達は、日常生活上、健康上、精神上の全 ての側面において、相当の負担を感じていることが明らかである。

次に嫁と娘との違いに着目すると、健常グループと病弱グループとに共通して見出だせる傾向 がある。すなわち、日常生活上、健康上、精神上の全てにおいて、娘よりも嫁の方が、介護する 老人から受けるマイナス面を指摘する割合が高いのである。それは介護人と被介護人の血がつな がっているか否かが、介護人の生活意識の中に反映されていると言えよう。この点は、将来に向

けて、同居相手を自由に選択する方向を柔軟に考えていくことの必要性を示唆している。

以上で明らかにされた介護人の生活と、前述の世話の状況とを関連させながら、聞き取りや自 由記入から得られた介護人の声を報告しておく。健常老人を介護している側からは、 「歯が悪い ので食物を細かく刻まなければならないので手間がかかる」、 「食べ残すことはわかっていても魚 は‑尾づけ、惣菜も多く盛りつけておかないと機嫌が悪いので不経済である」、 「同じことをくり 返し言うので返答に困る」、 「手伝ってくれるのはありがたいが、失敗が多いので、かえって手間

(10)

祉常グルーブ純'

‑?)グノレ フ

1 0 0 % 5 0 5 0 10 0 %

.

常 生 活 」 二

生 活 が ふ 9 ま わ さ れ る

時 間 が か か る

他 の 家 族 の 憧 話 が で き な い

外 出 が で き な い

仕 事 に で ら れ な い

仕 草 中 気 に か か る

他 の 家 族 か ら不 満 が で る

経 済 負 担 が 大 き い

家 族 員 に 思 い ヤ D が 育 つ

留 守 番 な ど 頼 め る

経 済 的 に 助 か る

‑ :‑:l:I:.:‑:I:.:l=.=l:.:.:‑:.:l=.:.:I:l:.‑

■ l

:=:‥… ‥ … ‥ … :i:i;三 岩 」

■ f

e :v :‥ ‥ ‥ ‥ ::

健 康 上

疲 れ や す い ‑

l

=:::::こ =::==:::I::::::::=::::=;=:I;::::I::::::=:;I:I

睡 眠 不 足 に な る ■

‥ ::‥ ‥ ‥ ‥ ‥‥ … :i:i:… ‥ … =‑

腰 痛 が す る

...

体 が ま い 9 そ う で あ る

何 と も な い

■.l 七二 :≒ :* x v│

K m … :i:‥ :i:i:i:… ‥ … :… :i:i:i:… :… :i:i:… ‥ … :i:i::

押 上

イ ラ イ ラ す る l

:⊥ :.‥ 、:Ⅰ こ ‥ Ⅰ :.二 一 二 :I

情 け な く 4 る 1

‥ ‥ ‥ 亭 ‥ … :亭 :≒ :≒ :】

気 が 重 い

腹 が 立 つ

不 ぴ ん に 思 う

充 実 感 . 満 足 感 が あ る

何 と も 思 わ な い

■ :::;:I:::;:i:;:‑:.::::::::::::=::==:::::::::::::=J

l X v X y X v l

.

こ :;:こ :こ :こ ‥ て :::

10 0 % 5 0 多 項 目 回 答 5 0 10 0 %

凡例:□娩l:ヨ嫁

図2 介護人の生活

(11)

がかかる時がある」等の問題が出されている。

一方、病弱老人や寝たきり老人を抱える介護人の困難は、健常老人の場合とは全く異質である。

中でも失禁の後始末や汚した手洗いの掃除等の用便の世話が、その最たるものとしてあげられて いる。このことは、昭和53年の厚生行政基礎調査の中でも指摘されているが、今回の調査例から その具体的な声を記しておこう。 「おしめの交換や着換えの際に、いくら軽くなっていても、老 人をかかえあげるのに中腰の姿勢でするために腰痛がおきる。男性の手がなければ不可能である。

着換えは一日5‑6回必要で、そのたびに洗たく・ふとん干しに追われて、朝は暗いうちから毎 日洗たくをしなければならない。午後11時すぎにやっと老人の用をすませて床につくとベルがな る。行ってみると、又失禁という有様で、睡眠不足に悩まされ身体がまいりそうである。紙おし め代が1ケ月3万円もかかる。昼間はお手伝いを頼んで職場に行き、仕事から帰ってくると老人 の世話をする。入院中は病院に寝泊りをして、病院から通勤したが、とうとう身体が続かなくて 仕事をやめた。」という元女子教員の話は、介護人の肉体的・精神的労苦を端的に表現している。

更に介護のために、職をも放棄せねばならない実情を示している。また、痴呆性老人を介護して いる家庭からは、 「ガスコックを開けたりコンセントを抜くので、家中の熱源をすべて電気に切 り換え、スイッチやコンセントはすべて高いところにつけなおしたし、手洗いや廊下は電気をつ けっぱなしにしておくので大変に費用や電気代がかさんだ」等の経済的負担を訴える声も高い。

このように病弱グループからは、介護の困難性を示す実例が数多く指摘されているのである。

しかしながら一方では、病弱老人を介護し死を看とった嫁が得た充足感・満足感も強く述べら れている点も、見逃すことはできない。例えば、 5年間寝たきりの老人を介護した嫁の自由記入 によれば、 「元来気むづかしい老人であったが、亡くなる3日前に、床に起こしてほしいという ので坐らせてあげると、私(嫁)の方を向いて手をあわせて"ありがとうございました"と拝ん でくれた。その時には不慨であると同時に、私の苦しみはわかっていてくれたという満足感を覚 えた」とある。その表現の中に、介護人と老人との精神的な梓を見ることができるのである。

以上のように、老人介護に対する負担は想像以上に大きく、特に寝たきり老人や痴呆性老人を 介護する場合には,その介護人の経済的・時間的・肉体的・精神的負担は極限に達すると言って

も過言ではないであろう。それでは老人を介護する方法は、どのようであろうか。

(3)介護の方法について (重 介護の手代りについて

老人の介護人は息子の嫁または娘が中心であり、同時に彼女らは家庭経営の担当者でもある。

そこで万一介護に支障をきたした場合、その手代りをする者があるのかないのかをみると、 「あ る」と答えた者が、健常グループで56.1#、病弱グループで41.2%であり、約半数を占める。

それらの手代り可能者と介護人との関係は、両グループとも親類・家族員である場合が多く、

被介護人が健常である場合には近隣へも依頼できるとしている(図3参照)。家庭の中での続柄 は、介護人の娘(老人からみれば孫娘)または姑(被介護人が男性老人の場合)・同居の妹ある いは家政婦であるO親類では、別居子の嫁・他家へ嫁いだ娘をあげる者が多く、やはり女性に委 ねられる傾向が強い。

調査対象者の中で男性の手代りとしてあげられているのは、主として介護人の夫を指している が全体の10%にも満たない状態である。

つまり、老人の介護は、現実の担当者もまた代替者も女性に委ねられているのである。このこ とは、全国社会福祉協議会が、昭和54年に行った「老人介護の実態調査」においても同様の結

(12)

健 常 グ ルー フ      病 弱 グ ルー ブ

1007。     50       0      0        50      100%

I

:i:i:……:i:i:i:i:i:i:i:至1 I

t三:i:…壬:三:i:i:三:…l.i:i:三

I

1

&・:*:・:・:・:こ こ:;:≒:手:≒:与:i:享:≒:壬:≒:壬=亨:i: :::‥‥‥ ‥:こ:こ:こ:;:こ:I l

l‥ ‥‥::‥:‥:::

図3 介護の手代り

健.常 グ ルー プ       病 弱 グルーブ

100%      50        0      0        50       100%

親類 . 兄弟でみ る

お金 を出 して人 を茄 う

お金 を出 して施 設へ 公 的福祉サー ビス

i:I:i:…l I

図4 家族以外による手代りの方法

栄(12)が示されている。女は3度老後を迎える(13)(親・夫・自分の老後)と言われるほど、老人 介護は子育て以上に女性の専業とする社会通念があるが、ここでも実証されている。今日家事労 働の役割分業論が盛んであるが、これらは健全な育ちゆく家族を抱えての核家族世帯に向けられ た一般論であって、病弱老人の介護に関する役割分業の実態報告はほとんどなされていないに等 しい(14)

。いわば、女性の大きな犠牲の上にたった埋れた努力に他ならない。今後女性問題を論

ずる場合、女性の自立とともに老人介護もまた深く追求され解決されなければならない今日的課 題であろう。

次に嫁と娘の持つ手代りの違いに着目すると(図4)、家族以外による方法では、「親類・兄弟 でみる」という項目に関してのみ嫁の方が多くなっている。これは別居子の嫁や他家‑嫁いだ娘 を指しているのであるが、それとてもあまり完全な手代りとはならないという実情が聞き取り等 でうかがえる。可能性としての手代りはいちおうあるにはあるが、離れて住み、生活を異にする 親類・兄弟は、家族ほどには介護の手助けとはなり得ないのである。

では、介護人達はこのような状況の中にあって、介護の一つの対応策としての施設や病院の利 用についてはどのように考えているのであろうか。

⑧家庭か施設か

老人介護を、家庭で行うか社会的施設を利用するかという点に関してみると、図5に示すよう に「最後まで家族でみるのが当然である」という意識が、両グループともにきわめて高い。それ は、社会的施設から連想される固定化した暗いイメージや、わが国の同居観などの種々の背景が 家庭介護に対する根強い意識を形成していると考えられる。ただ、病弱グループにおいては、「社

(13)

健 常 グ ループ       病 弱 グ ループ

0 0 % 5 0 5 0 1 0 i

最 後 ま で 家 族 で み る

社 会 的 施 設 を 利 用

‑ ‑

蝣 :・ :W :‥ ‥:‥ :::‥ こ ‑.‥ 亭 :亭 :亭:亭 ‥ ‥ ..‥ ‥ :‥ こ:::こ 亭:亭 :亭 :与:享 :幸 一

^^^^^^I^^^^^^K

図5 家庭か施設か

健 常 グループ       病 弱 グ ループ

0 0 % 5 0 5 0 10

‑ や む を 得 な い

入 れ た く て も 入 れ ら れ な い

入 れ た く な い

l

‑ ‑

卜 ‥ ‥ ::‥ :=:‥ :‥ :::‥ ‥ こ こ こ ‥ ‥ こ :こ :こ 1

図6 ホーム・病院の利用

会的施設を利用する」という割合が、 15.0%程度示されている。この背景には、すでに介護疲れ のために生じた必然的な要求が存在していると考えられる。

嫁と娘とを比較すると、娘の側に「家族でみるのが当然」とする家庭介護の意識が高く示され ている。それは、実の親を施設に入れるのは忍びないという子としての感情のあらわれであろう。

次に、万一の場合のホームや病院の利用に対する意識についてみると、図6に示すように、や はり「入れたくない」という意見が病弱グループにおいてさえも50.0%を占めている.そしてそ の理由としては、娘は「人情として忍びない」とする者が多く、嫁は「家族の義務である」とし ている。嫁と娘とを比べると、 「入れたくない」とする割合は嫁の方が高く、 「やむを得ない」と するのは娘の方が多い。つまり、家庭か施設かで捉えた場合には、娘の方が家庭を支持する割合 が高いが、万一の場合には、ホームや病院の利用もある程度はやむを得ないと考えている面もあ る。それに対して嫁は、義務感としての家庭介護意識を前面に押し出しているように感じられる。

その背景には、世間体やそれにとらわれた複雑な嫁の心理があると言えよう。

しかしながら、いずれにしても老人介護の方法に関しては、家庭で行うという意識が強い。介 護人達、とりわけ病弱老人や寝たきり老人を抱える介護人達は、その日常生活において、 「生活

がふりまわされる」・「渡れやすい」・「睡眠不足になる」・「イライラする」・「気が重い」などの多 くのマイナス面を強調しながらも、やはり「老人介護は家庭で」と懸命の努力を続けている実情 をあらわしているのである。

(り 介護人自身の老後について

それでは、現在介護にあたっている人達が、自分の老後をどのように考えているのであろうか。

図7に示すように、自分の老後を「家族にみてもらいたい」とする意識が強く、やはり住み慣 れた家や家族との梓は断ち切り難いようである。しかしながら病弱老人を抱えた介護人のグルー

プでは、 「施設・病院に入りたい」と施設ケアを希望する者も半数近く存在する。そしてその傾 向は、嫁よりも娘の方に顕著である。

(14)

健 常 ク ルー プ 病 弱 グ ルー プ

5 0 U 50 1 0

m 族 に み て も ら い た レ、

施 設 . 病 院 に 入 b た し

I 1

m 二二 二;:◆こ;:こ:こ:こ:⊥:丁:!:二二:‥ ‥ニ:::ニ:::二 ‥ ‥蝣vA l +:二丈 w K + tx m

図7 介護人自身の老後

逆に病弱グループの嫁においては、前述の介護人の生活の中で、娘に比べて肉体的・精神的負 担を訴える割合が高かったにもかかわらず、ここでは家族にみてもらいたいと家庭ケアに固執す る傾向を示している。現実的に家族の負担を認言哉しながらも、自分の老後はやはり家族にという、

一見自己矛盾するように思えるこの意識の背景が一体何であるのかについては、本調査の中から は不明である。この点については、今後の検討課題としたい。

4.要約

以上、老人の家庭介護に関する分析結果を要約すれば、次のようである。

(1)介護の対象となる老人が、健常である場合には、介護人は精神的にも肉体的にもそれほど 負担は感じておらず、むしろ留守番などを通じての相互扶助が期待できる。

(2)病弱老人を介護する場合は、精神的・肉体的・時間的な労苦を伴う負担が多い。とりわけ 痴呆性老人や寝たきり老人を抱える場合には、その用便・失禁の世話により、介護人自身の健康 を損ねたり、日常生活までがふりまわされる現状である。更に、介護のために、職業を放棄せざ るを得ない場合もある。

(3)介護に対する意識や介護人の日常生活に関しては、経済面や労働力等の物的側面よりも、

人情論や義務感にとらわれた精神的側面の負担を訴える傾向がめだつ。そしてその傾向は、娘よ りも嫁の方に顕著である。

(4)介護の手代りの状況から判断すれば、介護は女性の専業であるかのような社会通念が根強 く残っている。したがって老人介護は、今後の家庭経営を考える上からもまた女性の問題として も重要な課題であると考えられる。

(5)別居子の嫁や他家に嫁いだ娘からの介護に対する手助けは、あまり期待できず、同居扶養 意識が依然として強い傾向を示す。

(6)施設ケアに関しては、現在の老人に対してもあるいは介護人自身の老後においても、あま り利用を好まず、家庭で家族にみてもらいたいという願望が依然として根強い。

Ⅲ.結 論

以上の実態分析をふまえて、家庭経営領域から、老人介護に伴う家庭の負担を軽減する方策と して、行政に対し、いくつかの提言を行いたい。

家庭介護、とりわけ病弱老人や寝たきり老人を抱えている家庭では、介護人は、終日、家事と 介護に明け暮れ、そのため息抜きの時間がないことや外出ができないなどの点を指摘していた。

仮に短時間でも休息の時間があれば、肉体的渡労や精神的負担は、相当軽減されると考えられる。

また介護される老人の側も、家庭の中にとどまっているばかりでは精神的にも苦痛であろうし、

(15)

表6 在宅福祉サービス

知 って い る 利用 してい る 普 及 して ほ しい 健 常 病 弱 健 常 病 弱 健 常 病 弱 ホ ー ムヘ ル プ 制度 ◎ 72.4 % 8 2.4 % % % 38 .8 % 48.5 % 50.0 55.9 1.0 33.7 42.6 機 能 回 復 訓 練 27.6 35.3 28.6 33.8 日常生活用具の給付 ◎ 23.5 38.2 27 .6 35 .3 デ イ ケ ア I 事 業 25.5 29.4 24 .5 44 .1 寝た き り老人保護事業 22.4 39.7 39 .8 54 .4 老 人 健 康 相 談 34.7 39.7 4.1 1.5 31.6 4 4.1 老 人 専 門 病 院 2 4 .5 3 0.9 4.4 45.9 54.4

また不平不満も欝積しやすい。そこで、家庭介護を一時的に肩代りする施設や手助けしてくれる 人的なサービスが、整備強化されることが望ましい。

現在、行政で制度化され施行されている在宅福祉サービスはいくつかあり、それは表6のよう である。これら各種サービスに対する認知度は意外に高率を示しているが、その利用度は皆無に 等しい状態である。その第‑の要因は、家庭介護にとって望ましいサービス制度が、その利用対 象をいずれも低所得者層に限っているためである(表中(低)と印した)。夢二には、行政府への手 続き方法の複雑なことがあげられる。

しかしながら、先に述べた本稿の老人介護の状況や負担から推察して、表6にあげた各種サー ビスのうち、最も需要度が高く、家族の負担を軽減すると思われるデイケア‑・ショートステイ サービスとホームヘルプ制度の推進強化を提言したい。

その理由を以下で説明しておこう。

(1)デイケア‑及びショ‑トステイ制度とは、一日または短期託老所で「ベッドを持たない第三 のすまい」(15)と言われる。そこは老人にとって、(D行っても再びわが家へ帰ることができる、 ② 寝たきりから解放されて異なった環境に接することができる、 ③入浴サービスは、家庭と異なり 特殊浴槽による水治療法が行われる、介護人にとっては、 ④外出や家事ができ、身体を休めるこ

とができる等の特徴をもっているO しかし祝在は設置数も少なく、最大の難点は、交通サービス (老人を送迎するための特殊車と運転者)を得ることが困難なことである。(16)

(2)ホームヘルプ制度とは、寝たきり老人のいる家庭へ出張して、老人専門の日常介護を行うも ので、専ら介護人の手代りを務めることを目的としている。寛行のままでは、ホームへルパ‑は 人員も少なく、当を得た人材確保に困難性がある。その理由としては、 ①特定養成機関がなく、

従って資格がない、 ②報酬が低く(現行では地方自治体の外郭団体福祉協議会に所属し、パート タイマー的待遇である)身分上の確約がない、この二点(17)があげられる。

したがって行政の措置としては、 (1)及び(2)における困難性を克服して、ある程度の受益者負担

(16)

になろうとも、在宅福祉の中で両制度の速やかなる推進に努めるべきである。

本調査の中でも示されていたように、老人介護に関しては家庭で行うべきであるとする意識が 一般に根強いO しかしながら各家庭の状況や事情により、家庭での介護が不可能な場合もある。

その時には、施設利用や病院利用も当然考えられねばならない一つの対応策である。

ただ現在、社会的施設の利用は、概して低い。その背景には、わが国の同居に対する意識はも ちろんであるが、施設そのもののあり方についての再考が必要なことも否定できない。それは、

設置場所と設置規模の問題である。

現在の老人ホームは、デラックスな有料老人ホームは別として、一般に慈善事業的な暗いイメ ージが残されているO しかも都心から遠く離れた閑静な地に設置されることが多いo その背景に は、土地確保のための経済的要因や、あるいは空気の清浄な郊外にという老人への配慮がなされ ていることなどがあげられる。しかしながら、それはまさに多勢の老人のみからなる特異集団と なることに他ならない。老人も一人の人間であり社会人である。老若男女混然とした地域社会の 中におかれてこそ、その存在意義があり、また家族との接触交流も可能である。

したがって地域の中で、できれば保育所の近くに託老所として建設されることを提言したい。

その理由は、現代三世代家族のメリットの一つとして、孫と老人のふれあいがあげられるが、こ れと同様の効果をもつと考えられるからである。つまり老人は育ちゆく子どもをみて生きる喜び

を味わい、子どもは人の老いざまを見つつ暮らし、互いに心と身体のふれあいを持つからである。

設置規模に関して言えば、現在の施設は、公立・私立ともに収容人員の多数化のみを目標に建 設されがちであるO そのために老人は、専門的介護サ‑ビスというよりは、収容サービスを多く 受ける傾向にある。それはシステム的に分業化・合理化されているが、その中では老人はまさに 一つの物体として扱われており、棄老に等しい状態である(18)

このような現状から考えて、施設規模は、地域社会の理解のもとに、きめ細かな人間性のある 配慮をした小規模施設であることを提言したい。

む す び

人は家庭で生れ育ち、終蔦を迎えるのが最も自然な姿であり、老人も言うまでもなくそれを望 んでいる。

それに対して政府は、福祉政策の一環として、在宅福祉という目標に焦点をあてた具体策をか かげた。すなわち昭和61年にはホームヘルパー35,000人(昭和57年で17,600人)を計画し、課税 対象家庭にも利用できるように一部受益者負担とすること、寝たきり老人のためのデイケアー・

ショートステイシステムの制度推進にふみきることを発表している(19)また本年(1982年)7月 26日よりウィーンにおいて高齢者問題国際会議が開催され、欧米においても在宅福祉に関心を寄 せるという。

福祉先進国といわれるスウェーデンは、日本とは社会習慣も違い、家族を離れた独居老人の多 い国ではあるが、そのスウェーデンにおいても、老人ホ‑ムは手段を尽くした最後に行きつくと ころと考えられており、家で暮らすことが老人の基本的生活である(20)としている。

もちろん人それぞれの環境やニーズの多様化につれて、各自の選ぶ道はさまざまであろうO筆 者らも、家庭介護を唯一無二の老人対策と強調するものではない.むしろ現状のままの家庭介護 が続けば、家庭経営全体からみて、相当の負担と歪みをもたらすことは必至である。つまり老人

(17)

に対する家庭介護の問題は、老人と介護人に関わる問題のみにとどまらず、家族全体に関わる問 題であり、又広く社会の問題でもあるということを認識する必要がある.そして環状の家庭介護 の実態からみて、家庭が自助の名のもとに福祉行政の一方的な受け皿となることは許容しかねる 点を強調したい。

このような意味において、われわれは、行政の措置に対し、早急に制度の改革を行い、在宅福 祉の実施にふみきることを要望する次第である。

(本稿は、昭和56年8月日本家政学会家庭経営学部会夏期セミナーにおいて口頭発表した内容に 若干の補足修正を加えたものである)

(1) 1979年1月故大平首相が国会に於て「充実した家庭は日本型福祉社会の基礎である」と施策方針演説を行い、

1979年8月に発表された新経済社会7ケ年計画の中で、新しい日本型福祉社会の実現が、基本方向の一つと して打ち出されたことによる。

(2) 『図説老人白書』 1980年版 碩文社p. 58

(3)安野礼「高齢化社会への対応一家庭経営の立場から‑」賓明女子学院短大研究紀要 No. 16, 1981年など (4)青井和夫『老人をめぐる家族問題』東大出版会1979年p. 102

(5) 『高齢者問題の環状』総理府1979年12月付属統計表第1表より推計(但し昭和53年までは総理府統計局、昭和 54年以降は厚生省人口問題研究所推計による)

(6)高齢化社会シンポジウム(日本生命保険文化センター主催) 1981年5月、及び高齢化社会の課題と対策(関 西経済研究センター) 1981年5月

(7)袖井孝子『老年期の労働』ハンドブック老年学、岩崎学術出版1977年p. 397‑p. 400 袖井孝子『老年期の職業』老年学入門、有斐閣1978年4月 p. 58

(8) 「年齢階級別老後の職業生活の見通し」労働大臣官房統計情報部 (9) 「貯蓄に関する世論調査」貯蓄中央増強委員会1981年p. 35 00 同上p.9

帥 前掲(3)あるいは「老親扶養に関する調査」内閣総理大臣官房老人対策室1974年など

佃 寝たきり老人の介護者の86.9^は女性で、妻である場合が25.8%、嫁である場合が38.6%であった.

咽 高原須美子 高齢化社会シンポジウム(日本生命保険文化センター主催) 1981年5月にて

44)例えば『老年学入門』有斐閣p.73の表4の説明に於ても、介護の実態は女性であることを表したにすぎな い。

色白 吉田寿三郎『デイケアのすすめ』ミネルヴァ書房1980年 的 岩田克夫氏(大阪府松原市新生苑理事)の談話による。

47)大阪府の老人福祉施策の概要(昭和56年度)、井上千津子『ヘルパー奮戦の記』ミネルヴァ書房1981年 咽 この点は、昭和56年8月に筆者らが訪問して実地見学をした実情に基づくものである。

佃 昭和56年12月11日朝日新聞、中央社会福祉審の答申をうけて、昭和57年3月8日日本経済新聞紙上にて 帥 小野百合子「老後の自立」桜蔭会会報1982年3月

(18)

Welfare Society and Home Management in Japan

‑A Study on the Home Care of the Aged People‑

Sachiko Iwamoto

Department of Home Economics, Nara University of Education, Nara, Japan and

Fuyu Shinohara

Department of Home Economics, Kinran Junior College, O.Jaka, Japan (Received April 30, 1982)

Japan is galloping to the so called aging society, and the problem concerning the aged people will become more serious than in any other countries. The administration, however, has demonstrated that the basic principle of the policy is to rely on the home care. It is true that more senior citizens live together in Japan with the family of their own child than in other countries. Nonetheless, this propensity does not simply lead us to conclude that the aged should be looked after solely by their families. The aim of our study, therefore, is twofold: namely, to clarify the problems originated from the home care of the aged, and to make a new set of policy proposals. These issues in the present paper are discussed and evaluated in terms of Home Management.

Our丘ndings are summarised as follows:

(l) The home care of the aged person is performed mainly by the woman. More specifically,

the daughter‑in一王aw or the daughter of the aged person is the real "take‑carer".

(2) When the aged is healthy, the take‑carer has little mental and physical burden. Rather,

the take‑carer is sometimes benefitted from the take‑caree's contribution to the domestic house keeping, say, the baby‑sitting and elese.

(3) When the aged is infirm, the take‑carer has an excessive mental and physical burden.

Such a burden is so heavy that the take‑carer sometimes needs to be nursed.

(4) The daughter‑in‑law tends to feel the job being very heavy, while the daughter takes it only a little heavy. Put it another way, the daughter‑in‑law feels mental burden more than the daughter of the aged.

(5) Both the take‑carer and the take‑caree are not willing to rely on the facility care.

Based on our丘ndings, we propose the followings:

I: In the case of the home care

(l) The home care will not work efficiently without good support by day care and shortest service.

(2) It is also important to expand the home‑help system.

II: In the case of the facility care

(l) The location of such a facility is to be in the city area and closer to nursery schools.

(2) Each institution sholud not accept too many aged, and the size is suggested to be small.

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