• 検索結果がありません。

新奇語の解釈に及ぼす教授事例と教授回数の効果

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新奇語の解釈に及ぼす教授事例と教授回数の効果"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

新奇語の解釈に及ぼす教授事例と教授回数の効果

著者 杉村 健, 澤村 梢

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 43

号 1

ページ 153‑162

発行年 1994‑11‑25

その他のタイトル Effects of Pair Type of Instruction Instances and Number of Instruction Trials on the

Interpretation of Novel Words

URL http://hdl.handle.net/10105/1662

(2)

奈良教育大学紀要 第43巻 第1号(人文蝣n.会) "?一成6年 Bull. NaraUniv. Educ. Vol.43, No.1 (Cult. & Soc.), 1994

新奇語の解釈に及ぼす教授事例と教授回数の効果

杉 村   健・津 村   梢

(奈良教育大学心理学教室) (平成6年4月1日受理)

自然概念は、より下位の水準の概念がより上位の水準の概念に含まれるといった階層構造をな していると仮定されている(Roschら, 1976; Rosch, 1978)。例えば、秋田犬は下位水準、イ ヌは基礎水準、動物や生き物は上位水準の概念に相当し、秋田犬はイヌに含まれ、イヌは動物に 含まれるといった包摂関係がある。従来の研究では、基礎水準の概念が最も初期に獲得されるこ

とが示されており(Horton& Markman, 1980 ; Mervis & Crisafi, 1982 ; Roschら, 1976 ; Rosch, 1978 ;杉村・野本, 1990)、これは基礎水準の優位性と呼ばれている。

その要因の1つとして、幼児に対する親や保母の発語は、その大部分が基礎水準名であること があげられている(Anglin, 1977 ; Blewitt, 1983 ; Shipleyら, 1983).幼児は最初に基礎水準 の概念を獲得し、加齢に伴って上位水準や下位水準の概念を獲得するようになるが、 Callanan (1985)は、概念の水準によって母親の教え方が異なることを観察した。 2‑4歳児に4枚の絵 を用いて概念名を教えるように求める場面で、基礎概念名を教えるときには、 1枚の絵を指差し て"これはコアラです"という指示命名方略を用い、上位概念名を教えるときには、複数の絵を 指差して"コアラは動物(または動物の仲間)です"という包摂方略を用いた。このことから、

基礎概念名を教えるときには個々の事例が強調され、上位概念を教えるときには事例の包摂関係 が強調されることが示唆される。

このような教授方略の有効性を実験的に検討するために、 Callanan (1989)は、 1枚の絵(イ ヌ)か2枚の絵(イヌとネコ)に、 "これはタ‑バルです"という指示命名方略か、 "これはワグ です。ワグはタ‑バルの仲間です"という包摂方略の下で、事例に新奇語(タ‑バル)を命名し、

それがどの概念水準の語として解釈されるかをテストした。テストでは12枚の絵を同時提示し、

その中からタ‑バルと思うものをすべて選択させた。選択された絵のパターンに基づいて、幼児 が新奇語を下位水準名、基礎水準名、上位水準名のいずれとして解釈しているかが判定された。

その結果、 1事例の場合は新奇語を基礎水準名として、 2事例の場合は上位水準名として解釈す る者が多く、先の研究からの予想と一致した。しかし、指示命名方略と包摂方略の間には有意差 がなく、予想とは一致しなかった。そこで次の実験では、タ‑バルの代わりに幼児が知らない単 請(食器)、ワグの代わりに幼児が知っている単語(スプーン)を用いたところ、指示命名方略 よりも包摂方略の場合に、新奇語を上位水準名として解釈する者が多くなった。以上の結果から、

幼児に上位水準名を教えるのには、 2事例を用いること、包摂方略の下で教授することが効果的 であることが示唆される。

Sugimura (1992)は、類似した方法を用いて、幼児と大学生の新奇語の解釈に及ぼす絵の名 前の命名(有、無)と教授方略(指示命名、包摂)の効果を検討した。この研究は、被験者とし て大学生を用いた点が従来の研究と異なっている。主な結果は次のとおりであった。 ①新奇語を

* 現在 富山県氷見市加納小学校

153

(3)

154 杉 村   健・津 村   梢

上位水準名として解釈する者は大学生の方が多く、基礎水準名として解釈する者は幼児の方が多 かった。 ②絵の名前を命名することによって、幼児、大学生ともに、新奇語を基礎水準名として 解釈する者が増加した。 ③大学生の場合は、包摂方略によって新奇語を上位水準名として解釈す る者が増加し、基礎水準名として解釈する者が減少した。しかし、幼児ではそのような変化はな かった。以上の結果から、新奇語の解釈は、事例の命名、教授方略、および被験者の既有知識(午 齢)に依存することが示唆された。

この種の研究においては、ある事例(イヌl)に対して新奇譜を命名し、そのあとで、いくつ かのテスト事例の中から新奇語に当てはまると思うものを選択させ、その事例に基づいて、被験 者の新奇語に対する解釈ないし認識が推測される。テスト事例として、教授事例のイヌ1のほか に、イヌ2 (イヌ1と形や向きが異なる)、ネコ、スズメなどが提示される。被験者がイヌ1だけ を選択した場合は、新奇語をイヌ1、即ち下位水準名として解釈しており、新奇語はイヌ1そのも のを示すと認識している。イヌ1とイヌ2を選択した場合は、新奇語をイヌという基礎水準名と

して解釈しており、新奇語に複数のイヌが含まれるという低次の階層を認識している。 2種のイ ヌとネコを選択した場合は、新奇語をイヌとネコに共通する中位水準名(動物)として解釈して おり、新奇語に複数の動物が含まれるという中位の階層を認識している。さらにスズメまで選択 した場合は、新奇語をイヌ、ネコ、スズメに共通する上位水準名(生き物)として解釈しており、

新奇語に複数の生き物が含まれるという高次の階層を認識している。

本研究の目的は、 2事例を用いた包摂方略教授の下で、幼児と大学生による新奇語の解釈と認 識が、教授事例対の組合せと教授回数によってどのように異なるかを明らかにすることである。

先に述べたcallanan (1989)の研究は、 1事例よりも2事例で教授した場合に、新奇語が上 位水準名として解釈されることを示した。そこで用いられた2事例は、ともに中位水準(四つ足 動物)に属するイヌとネコの対であったが、 2事例の組合せによって新奇語の解釈が異なるので はないかと考えられる。そこで本研究では、 3つの教授事例の組合せを設定し、新奇語の解釈に 及ぼす効果を検討するO (彰同じ基礎水準(イヌ)に属する2事例からなる基礎対条件(イヌ1と イヌ2)、 ②同じ中位水準(動物)に属する事例からなる中位対条件(イヌ1とネコ) ③同じ上位 水準(生き物)に属する2事例からなる上位対条件(イヌ1とトンボ)。これらのうち、第2の 条件がCallananの研究と同じ組合せである。

Sugimura (1992)の研究では、 1つの事例を用いて包摂方略で教授したときに、新奇語を上 位水準名として解釈する幼児は殆どいなかった。しかし本研究のように、 2つの事例を用いて包 摂方略で教授すれば、幼児でも階層構造を理解しやすいのではないかと考えられる。もしそうで あれば、基礎水準対に与えた新奇語は基礎水準名として解釈され、中位水準対に与えた新奇語は 中位水準名として解釈され、さらに、上位水準対に与えた新奇語は上位水準名として解釈される ことが期待される。大学生の場合には、 1つの事例を用いて教授したときでも、新奇語を上位水 準名として解釈する者がいたので(Sugimura, 1992)、 2つの事例を用いて教授したときには、

新奇語を上位水準名として解釈する者がより多くなると予想される。

従来の研究では、新奇語は1回しか教授されていなかったが、日常生活で幼児に新しいことを 教えるのには、親や教師は何回も繰り返し教えるのが普通である。そこで本研究では、教授回数 が新奇語の解釈にどのような影響をもつかを調べるために、新奇語を1回だけ教授(1回教授) したあとで、 1回目のテストを行い、さらに3回繰り返して教授(4回教授)したあとで、 2回 目のテストを行った。幼児の場合、教授の反復によって階層構造の理解が促されるならば、 4回

(4)

幼児と大学生による新奇語の解釈 155

教授によって、新奇語をより上位の水準名として解釈する者が増加するであろう。大学生の場合 は、既に階層構造に関する知識があると考えられるので、教授回数の効果はないと予想される。

最後に、カテゴリーに基づく推論の研究では、自然物と人工物で異なるという結果が得られて いる(Gelman, 1988 ; Gelman & O'Reilly, 1988 ; Markman, 1989)。しかし最近の研究では、

同じ自然物でも、生き物のような動的カテゴリーと食べ物のような静的カテゴリーでは、階層関 係の理解(杉村・多喜, 1991)やカテゴリーに基づく推論(Sugimura, 1993)が異なるという 結果が報告されている。そこで本研究でも、生き物課題と食べ物課題を作成して、新奇語の解釈

にどのような違いがあるかを検討する。

方   法

実験計画と被験者

2×3×2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の年齢(幼児、大学生)、第2 の要因は教授事例対(基礎対、中位対、上位対)であり、ともに被験者間要因であった。第3の 要因は教授回数(1回、 4回)、第4の要因は課題の種類(生き物、食べ物)であり、ともに被 験者内要因であった。被験者は幼稚園年長児60名(男児28名、女児32名)と大学生60名(男子22 名、女子38名)であり、それぞれ男女の数と平均年齢がほほ等しくなるようにして3群に割り当 てた。幼児の平均年齢は各群とも5:07 (5:02‑6:05)であり、大学生の平均年齢は各群とも20:05

(20:01‑20:09)であった。

材料

表1に示すように、国立国語研究所(1981)の表を参考にして、出現頻度が高い生き物に属す る7事例と、食べ物に属する7事例を用いた。これらの事例は、 1つずつ5.0cm X6.0cmの白 紙に線画で描かれている。教授事例は6.0cm X14.0cmの台紙に2枚ずつ横に並べて貼りつけ、

テスト事例は6.0cm X7.0cmの台紙に1枚ずつ貼りつけた。イヌとリンゴについては、形や向 きを変えたものをそれぞれ4枚ずつ作り、それぞれイヌ1、イヌ2、イヌ3、イヌ4およびリンゴ1、

リンゴ2、リンゴ3、リンゴ4とした。

教授事例の基礎対条件は、イヌまたはリンゴという基礎水準の概念に属する2事例からなり、

中位対条件は、四つ足動物または果物という中位水準の概念に属する2事例からなり、上位対条 件は、生き物または食べ物という上位水準の概念に属する2事例からなっている。テスト事例は 教授事例対の一方の事例(イヌ1とリンゴ1)と、教授事例にはない基礎水準、中位水準および上 位水準の概念に属する事例からなっている。

手続き

被験者と実験者が机をはさんで向かい合って廃り、名前や年齢などを尋ねたあとで実験を行っ た。各被験者は3つの条件のいずれかで、生き物課題と食べ物課題について教授とテストを受け た。半数の者には生き物課題を、残りの者には食べ物課題を先に実施した。

幼児の場合には、最初に、描かれている絵の名前が言えるかどうかをチェックした。殆どの者 が正しい名前を言えたが、間違えた者には正しい名前を教えた。続いて、小さい人形を見せなが ら"ここにお人形さんがいるね。このお人形さんは、お姉さんや○○ちゃんと違った言葉をしゃ べるからよく聞いていてね"と教示し、その後で条件別に教授を行った。

(丑基礎対条件:イヌ1とイヌ CJンゴ1とリンゴ2)を提示して、 "このお人形さんの国では、

(5)

ir‑6 杉 村   健・津 村   梢

表1 教授事例とテスト事例

生き物課題    食べ物課題 教授事例

基礎対条件 イヌ1 イヌ2 中位対条件 イヌ1 ネコ 上位対条件 イヌ1 トンボ テスト事例

下位水準 基礎水準 中位水準 上位水準

リンゴ】 リンゴ2 リンゴ1 ミカン

リンゴ1 オ二ギリ

イヌ1      リンゴ1

イヌ3  イヌ4  リンゴ3 リンゴ4 ウマ  シカ    バナナ  ブドウ スズメ キンギョ ダイコン ケーキ

これとこれは、 2つともトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授した。

②中位対条件:イヌ1とネコ(リンゴ1とミカ!)を提示して、 "このお人形さんの国では、こ れとこれは、 2つともトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授した。

③上位対条件:イヌ1とトンボ(リンゴ1とオニギリ)を提示して、 "このお人形さんの国では、

これとこれは、 2つともトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授したO

教授事例を取り去ったあとで、 7枚のテスト事例を所定の配列によって同時に提示し、 "この 中で○○ちゃんがトルビー(ブルナ‑)だと思うものを、お姉ちゃんにみんなちょうだい。みん なだよ"と言って、事例を選択させた。そのあとで、選択された事例について、 "○○ちゃん、

どうしてこれらをトルビー(ブルナ‑)と思ったのかな"と言って、選択した理由を尋ねた。

テスト事例を取り去ったあとで、再び人形と教授事例を提示し、 "もう1回やってみようが' と言って、教授を続けて3回繰り返した。そのあとで、"○○ちゃん、トルビー(ブルナ‑)と言っ てみで'と言って、新奇語が言えることを確認した。そのあとで再びテスト事例を提示し、先と 同様にテストを行って選択理由を求めた。

結   果

テスト事例の選択の仕方に基づいて、教授された新奇語(トルビー、ブルナ‑)が、どの水準 名として解釈されているかを推測することができる。以下の基準により、下位反応者、基礎反応 者、中位反応者、上位反応者として分類する(表1参照)。

(彰下位反応者:下位事例だけを選択した者で、新奇語を下位水準名(イヌ1、リンゴ1)として 解釈していると仮定される。

②基礎反応者:下位事例と基礎事例の3事例を選択した者で、新奇語を基礎水準名(イヌ、リ ンゴ)として解釈していると仮定される。

③中位反応者:下位事例、基礎事例、中位事例の5事例を選択した者で、新春語を中位水準名 (動物、果物)として解釈していると仮定される。先の研究(Callanan, 1989 ; Sugimura, 1992) の上位反応者に相当する。

④上位反応者: 7事例全部を選択した者で、新奇語を上位水準名(生き物、食べ物)と解釈し ていると仮定される。

各反応者の割合について、生き物課題と食べ物課題の間に顕著な違いがなかったので、表2に

(6)

幼児と大学生による新春語の解釈 157

は、 2つの課題を込みにした値を示してある。課題は被験者内要因であったので、以下に述べる 統計的検定は課題別に行った。最初に、教授条件の効果をみるために、 2 (条件)×k (反応者)

のγ2検定を行い、有意差があった場合には、条件差が大きい反応者について2 (条件)×2 (特 定の反応者とそれ以外)のx2検定を行った。次に、教授回数の効果をみるために、同一条件の

1回教授と4回教授の反応者を、特定の反応者とそれ以外に分けて、 McNemarの変化の検定か、

二項分布による検定を行った。最後に、幼児と大学生を比較するために、条件を込みにした割合 について、 2 (幼児、大学生)×k (反応者)のx2検定を行った。

幼児の1回教授では、 2つの課題で基礎対条件と上位対条件の間に有意差があり、基礎反応者 は基礎対条件の方が多く(両課題P<.10)、上位反応者は上位対条件の方が多かった(両課題 ともp<』1)。食べ物課題で中位対条件と上位対条件の間に有意差があり、中位反応者は中位 対条件の方が多く(p<.10)、上位反応者は上位対条件の方が多かった(p<.10)c 各条件内で は、基礎対条件では基礎反応者が、上位対条件では上位反応者が最も多かった。幼児の4回教授 では、条件間に有意差はなかったが、基礎対条件では基礎反応者が、上位対条件では上位反応者 が多く、中位対条件では下位反応者が最も少なかった。 4回教授によって、基礎対条件では上位 反応者が増加し(生き物課題p‑.03)、中位対条件では下位反応者が減少した(生き物課題p

‑.03)。 1回教授と4回教授を込みにしたとき、基礎反応者は基礎対条件(37% が最も多くて 上位対条件(16%)が最も少なく、上位反応者は基礎対条件(19% が最も少なくて上位対条件

(43%)が最も多かった。

表2 テストにおける下位反応者、基礎反応者、中位反応者、上位反応者の割合(形) 1回教授      4回教授

条件  下位 基礎 中位 上位 その他 下位 基礎 中位 上位 その他

0 0 5

1 2 4

00 LO CO

2   2 0   8   8 4   2   1 CC  ‑ A  IT

‑ 1   2   2

す す ⊥・リ

ーt

*, +x ,‑

^

礎位位

基中上 3 5 3

1

CO 0 0

2   3   4

co in oo

2   3   1 8   5   3 sォ j﹂

!i O   5   8

1     1

5

2

0

2∩フ

2

3

2 r r.3525211

し)‑蝣̀主 '.tiftり

中位対 上位対

0

0

8 0

3

0 2

3

2 7

G

r .

v

i

l̲ ,"

寸 

‑I

‑r n' A. rr

>

2   1   2

0 0 5

1

8 5 0

1 3 2

nX)0000

5 4 3 3 8 8 7 1

<

?1

平均  21 49  24      23  48  24

(註) 2つの課題の平均値を、少数点以下1位で四捨五入したので、横の合計が100%

を超える値が多くなっている。

大学生の場合は、 1回教授では条件間に有意差がなく、どの条件でもほぼ半数の者が基礎反応 者であり、最も多かった。 4回教授では、食べ物課題で上位対条件と他の2条件の間に有意差が あり、上位反応者が上位対条件で多かった(p<.10)。 1回教授と同様に、どの条件でも基礎反 応者が最も多かった。教授回数による反応者の有意な変化はなかった0 1回教授と4回教授を込 みにした場合でも、教授対の条件に対応した反応者の顕著な変化はなかった。

幼児と大学生の反応者の分布には、両課題とも1回教授でも4回教授でも有意差があった。 1

(7)

158 杉 村   健・津 村   梢

回教授では、基礎反応者は大学生の方が多く(生き物課題p<.01、食べ物課題p<.10)、上位 反応者は幼児の方が多かった(両課題ともP<.Ol)c 回教授でも、基礎反応者は大学生の方 が多く(生き物課題p<.Ol、食べ物課題p<‑10)、上位反応者は幼児の方が多かった(両課題 ともP<.01)c 食べ物課題の4回教授では、下位反応者は大学生の方が多かった(p<.01)。 1 回教授と4回教授を込みにした値を幼児と大学生について比較すると、下位反応者と中位反応者 ではあまり違いがなかったが、基礎反応者と上位反応者では、基礎対条件から上位対条件にかけ て幼児と大学生の違いが大きくなった。

sugimura (1992)の研究で、幼児に1つの教授事例を提示して"これはトルビー(ブルナ‑) の仲間です"と教授した場合、中位反応者は13%に過ぎなかった。これに対して、 2つの教授事 例を提示した本研究の基礎対条件では、 1回教授の中位反応者は28%で、先の研究の約2倍以上 であり、さらに10%が上位反応者であった(但し、先の研究では上位反応者を査定するテスト事 例が提示されなかった)0 2つの研究は材料や手続きが異なっているが、この結果は、 1事例よ りも2事例を用いて包摂方略の下で教授を行なえば、幼児でも階層構造の理解が容易になり、新 奇語をより上位の水準名として解釈できることを示唆する。これはCallanan (1995, 1998)の 結果と一致する。

本研究では、幼児が教授事例対の水準に敏感であれば、新奇語をそれぞれの教授事例対に対応 した水準名として解釈することができるので、教授対に対応したテスト事例を選択すると予想し た。即ち、基礎対条件では基礎反応者が、中位対条件では中位反応者が、上位対条件では上位反 応者が多くなると予想した。表1からわかるように、 1回教授、 4回教授ともに、基礎対条件で

は基礎反応者が最も多く、上位対条件では上位反応者が最も多かったが、中位対条件では中位反 応者が必ずしも多くなかった。このように、少なくとも基礎対条件と上位対条件の結果は予想と 一致するものであり、教授の際に包摂関係を強調した場合には階層構造の理解を促し、基礎対条 件では新奇語がイヌやリンゴとして、上位対条件では新奇語が生き物や食べ物として解釈された

ことが示唆される。

大学生の場合は、 1つの教授事例を提示したSugimura (1992)の研究よりも、 2つの教授事 例を提示した本研究において、中位反応者や上位反応者が増加すると予想した。しかし、先の研 究では中位反応者が50%であったのに対して、本研究では基礎反応者が49%で最も多く、上位反 応者はほんの僅かであった。この結果は予想と一致しなかった。生き物課題であれば、イヌ1と イヌ2 (基礎対)、イヌlとネコ(中位対)、イヌ1とトンボ(上位対)のいずれの対で教授を行なっ ても、テストではイヌ1に加えてイヌ3とイヌ4を選択した者が最も多かったoつまり、どの教授 条件でもトルビーが"イヌ"として解釈されたといえる。これに対して幼児では、イヌ1とイヌ2 で教授した場合には、テストでイヌ1、イヌ3、イヌ4を選択し、イヌ1とトンボで教授した場合に は、スズメやキンギョまで選択した者が最も多かった。

幼児の結果は、教授事例対に与えた包摂方略によって、事例対の水準にふさわしい階層的知識 が活性化され、それによってテスト事例が選択されたと解釈することができる。別の可能性とし て、テスト事例を全部選択すれば上位反応者になるので、上位対条件の結果は単に"全部選ぶ"

という方略を採用したことによるとも考えられる。しかしながら、すべての条件において"トル

(8)

幼児と大学生による新奇語の解釈 159

ビーと思うものをみんなちょうだい"と教示しているので、もし"全部選ぶ"方略を採用してい るのであれば、基礎対条件や中位対条件でも上位反応者がもっと増加するはずである。また、基 礎反応者は基礎対条件が最も多く、中位対条件、上位対条件と減少するのに対して、上位反応者 は上位対条件が最も多く、中位対条件、基礎対条件と減少している。この結果も"全部選ぶ"方 略に合致しない。この方略の可能性を全く否定するわけではないが、上位対条件だけで特に上位 反応者が多かったことは、上位対に与えた包摂方略による教授が階層構造の理解を促し、新奇語 の解釈に影響したといえる。なお、先の研究(Callanan, 1989; Sugimura, 1992)のように、

テスト事例に無関連語を含めれば、 "全部選ぶ"方略の影響を最小限にすることができるであろう。

それでは、階層的知識がより豊富であると考えられる大学生で上位反応者が殆どなく、基礎反 応者が多かったのは何故だろうか。この点について考察する前に、幼児よりも階層的知識が豊富 であると考えられる小学6年生を用いた追加実験を紹介する。その実験は課題を冊子にして1回 だけ教授を行なったものであるが、条件を込みにした割合は下位反応者22%、基礎反応者43%、

中位反応者31%、上位反応者4%であった。この結果は表2の大学生の平均とよく似ており、 6 年生も大学生と同様に、上位反応者は殆どなくて基礎反応者が多かった。

このような結果について明確な説明はできないが、教授対に対する"仲間''の認識が幼児と大 学生や6年生では異なると仮定することができる。表1からわかるように、どの教授条件でも対

の一方の事例はイヌ(リンゴ)であり、テスト事例にも形や向きは違うがイヌ(リンゴ)が2つ ずつ含まれている。これに対して教授事例対のもう一方の事例は、基礎対条件と他の2つの条件

では明らかに異なっている。基礎対条件のイヌ(リンゴ)はテスト事例に含まれているが、中位 対条件のネコ(ミカン)と上位対条件のトンボ(オニギリ)は、テスト事例の中にはなく別の事 例と置き換えられている。そこで、 "これとこれは同じ仲間である"と教授されたとき、同じ仲 間がその事例対だけに限定されていると認識したならば、テストでは、どの教授条件の被験者も 先ず3つのイヌ(リンゴ)を選択するであろう。そのために基礎反応者が多くなったといえる。

一方、テストの上位水準事例は上位対条件の事例対とは全く異なっており、 "限定された仲間"

とはかけはなれたものである。そのために上位反応者が少なくなったといえる。これに対して、

幼児では仲間の認識があまり限定されておらず、また、 Sugimura (1992)の研究における"そ の他の反応者"の分析からみて、テスト事例の選択に際して過剰般化しやすい傾向がある。その

ような傾向も、幼児で上位反応者が多くなった原因であるかもしれない。

本研究のもう1つの目的は、日常生活にみられる教授の繰り返しの効果を実験的に検討するこ とであり、そのために、 1回だけ教授したあとと4回教授したあとでテストを行なった。幼児の 場合、教授の反復によって階層構造の理解が促されるならば、 4回教授によって、新奇語をより 上位の水準名として解釈する者が増加すると予想した。表2の平均では、 1回教授から4回教授 にかけて下位反応者が減少し、上位反応者が増加する傾向があった。教授条件別にみると、基礎 対条件では上位反応者が有意に増加し、中位対条件では下位反応者が有意に減少して中位反応者 と上位反応者が有意に増加した。このように、特に中位対条件において教授回数の効果が顕著で あったので、この条件の生き物課題を例に用いて考察する。

1回教授では、幼児は"仲間''の認識がまだ不十分であり、次の2つの可能性が考えられる。

1つは、トルビーはイヌ1とネコのそれぞれの名前であると解釈した場合である。この場合、テ スト事例の中にネコがないので、イヌ1だけを選択するであろう。この被験者は下位反応者とし て同定される。もう1つは、トルビーがイヌの仲間とネコの仲間であると解釈した場合である。

(9)

160 杉 村   健・滞 村   梢

この場合もテスト事例の中にネコがないので、イヌ1、イヌ3、イヌ4を選択するであろう。この 被験者は基礎反応者として同定される。教授を繰り返すことによって、トルビーがイヌの仲間と ネコの仲間に共通する"動物"として解釈されるようになると、テストでは3つのイヌに加えて ウマとシカを選択するであろう。この被験者は中位反応者として同定される。さらに"仲間''の 範囲が拡大されて、トルビーが動物を含む"生き物''として解釈されるようになると、 3つのイ ヌとウマ、シカ、それにスズメとキンギョを選択するであろう。この被験者は上位反応者として 同定される。

このような教授回数による幼児の認知過程の変化は、親や教師の反復教授によって、幼児が概 念の外延的知識を獲得する過程に相当する。この点に関してCallanan (1989)は、幼児が新奇 語を教えられたとき、それが基礎水準名として解釈される段階から、中位水準名、そして上位水 準名として解釈できるように変化していくことが大切であると述べている。一般的にいって、そ の変化を促す要因として年齢をあげることができるが、本研究の結果は、教授回数が幼児の階層 構造の理解を促し、階層的知識を豊かにする重要な要因であることを示している。

階層的知識が豊富である大学生の場合は、 1回の教授でも新奇語がより上位の水準名として解 釈されるので、教授回数の効果はないと予想した。表2からわかるように,教授回数の効果が殆 どなかったという点では予想と一致している。しかしそれは、 1回教授ですでにより上位の反応 者が多かったことによるのではなく、 1回教授でも4回教授でも基礎反応者が多かったことによ るものである。この結果は、イヌ(リンゴ)といった基礎水準に限定された仲間の認識が、教授 を繰り返しても変化しないことを示すが、その原因については明らかでない。いずれにしても実 験の結果からは、階層構造が確立されている大学生の場合は、教授の反復によって新奇語の解釈 に変化が生じないが、階層的知識が不十分な幼児の場合には、教授の反復によって階層構造の認 識が促され、それによって新奇語がより上位の水準名として解釈されようになったといえる。

本研究では、生き物課題と食べ物課題の結果には顕著な違いがなかった。杉村・多喜(1991) の研究では、幼児と2年生では2つの課題の間にあまり違いがなかったが、 4年生と6年生は食 べ物課題で階層関係がよく理解できることが示された。この結果は、幼児と2年生は階層関係を 理解する能力が未発達のために、 2つのカテゴリーの機能的な違いによる影響があまりなかった と解釈された。しかし本研究では、大学生でも新奇語の解釈にはカテゴリー領域の影響がなかっ た。一方、 Sugimura (1993)の研究では、機能情報を与えたときには生き物課題で、部分情報 を与えたときに食べ物課題で、幼児のカテゴリーに基づく推論が促進された。しかし本研究では、

幼児の新奇語の解釈にはカテゴリー領域の影響がなかった。

要   約

本研究の目的は、概念的階層の知識が異なると考えられる幼児と大学生について、新奇語の解 釈に及ぼす教授事例対のタイプと教授回数の効果を検討することであった。被験者は、事例の階 層関係を強調する包摂方略の下で、基礎事例対、中位事例対、上位事例対に対して、新奇語を1 回及び4回教授された。そのあとで、新奇語が基礎水準、中位水準、上位水準のいずれの水準の カテゴリーとして解釈されたかをテストした。 (a)幼児の場合は、基礎事例対では新奇語を基礎 水準として、上位事例対では上位水準として解釈する者が最も多かった。これは、各対の与えた 包摂教授によって子どもの階層的知識が活性化されることを示唆する。教授回数が増加すると下

(10)

幼児と大学生による新奇語の解釈 lril

位反応者が減少し、上位反応者が増加した。これは、教授回数が階層的知識の獲得における重要 な要因であることを示す。 (b)大学生の場合は、どの事例対でも新奇語を基礎水準として解釈 した者が黄も多く、教授回数が増加しても変化がなかったO この子期しなかった結果は、 "限定 された仲間"の認識によるのかもしれない。

引用文献

Anglin, J.M. 1977 Woγd, object, and conceptual development. New York : Norton.

Blewitt, P. 1983 Dogs versus collie : Vocabulary in speech to young children. Developmental Psychology, 19, 602‑609.

Callanan, M.A. 1985 How parents label objects for young children: The role of input in the acquisition of category hierarchies. Child Development, 56, 508‑523.

Callanan, M.A. 1989 Development of object categones and inclusion relations : Preschoolers hypotheses about word meanings, Developmental Psychology, 25, 207‑21 6.

Gelman, S,A, 1988 The development of induction within natural kind and artifact categories. Cognitive Psycho‑

logv, 20, 65‑95.

Gelman, S.A., & O'Reilly, A.W, 1988 Children's inductive inferences within superordinate categories : The role of language and category structure. Child Development, 59, 876‑887.

Horton, M.S,, & Markman, E.M. 1980 Developmental differences in the acquisition of basic and superordinate categories. Child Development, 51, 708‑719.

国立国語研究所1981幼児・児蓑の連想語桑表 東京:東京書籍

Markman, E.M. 1989 Categorization and t乍αming in children : Problems of induction.. Cambridge, MA . MIT press.

Mervis, C.S., & Crisafi. M.A. 1982 Order of acquisition of subordinate‑, basic‑, and superordinate‑level catego‑

ries. Child DeiJelopment, 53, 258‑266.

Rosch, E. 1987 Principles of categorization. In E. Rosch & B.B. Lloyd (Eds.), Cognition and categorization. Hill sdale, N.J. : LEA, Pp.27‑48.

Rosch, E., Mervis, C. Gray, W.D., Johnson, D.M., & Boyes‑Braem, P. 1976 Basic objects in natural categories.

Cognitive Psychology, 8, 382‑439.

Shipley, E.F., Kuhn, I.F., & Madden, E.C. 1983 Mothers'use of superordinate category terms‑ JmAγnal of Child

Language, 10, 571‑588.

Sugimura, T. 1992 Effects of teaching strategies and existing knowledge on acquisition of basic and superordト nate concepts. Psychologic/., 35, 155‑163.

Sugimura, T. 1993 Effects of category domains and information types on category‑based inferences in children and adults. Psychologia, 36, 225‑234.

杉村 健・野本陽子1990 異なる階層水準におけるカテゴリー獲得の分析 奈良教育大学紀要, 39(1),

109‑121.

杉村 健・多喜裕美1990 概念的階層関係の理解における発達的変化 奈良教育大学紀要, 39(1), 123‑135.

(付記)本研究を行なうにあたり、奈良市立飛鳥幼稚園の先生と園児、奈良県磯城郡川西町立結崎小学校 の先生と児童、および奈良教育大学の学生の協力を得ましたo記して感謝の意を表しますO

(11)

1(51"

Effects of Pair Type of Instruction Instances and Number of

Instruction Trials on the Interpretation of Novel Words

Takeshi Sugimura and Kozue Sa L胤1

(Department of Psychology, Nara Unh,ersity of Education, Nara 630, Japan) (Received April 1, 1994)

The purpose of this experiment was to examine the effects of type of instruction ins‑

tances and number of instruction trials on the interpretation of novel words in kindergarten children and college students, who were assumed to differ in exsinting knowledge of concep‑

tual hierarchies.

The subjects were taught the novel word one and four times to one of three types of pairs under the inclusion startegy which stressed hierarchical relations of instances and then tested whether the subjects interpreted the novel word as the subordinate, the basic, the in‑

termediate. or the superordinate levels of categories.

For the living‑thing set the basic pair was the drawings of dogi and dog^, the interme‑

diate pair was those of dogi and a cat, and the superordinate pair was those of dogi and a dragonfly. The novel word to be given to these pairs was torubi. The test instances were dog!

(subordinate), dog3 and dogj (basic), a horse and a deer (intermediate), and a sparrow and goldfish (superordinate). For the food set the instruction instances were three pairs of applel and apple2, applei and an orange, and applei and a rice ball. The novel word was

buruna. The test instances were applei, apple;ミ applei, a banana, a radish, and a cake. Each

pair was presented with a puppet and the subjects were taught "These two are a kind of torn‑

bi {buruna) in the puppet country." Then seven test instances were presented and the sub‑

ject were asked to select the instances which they thought fit to torubi {buruna). After the subjects were taught the novel word three more times, they were tested again. Based on the selection in the test, the subjects were classified into four categories.

(a) For children the number of basic subjects was most often on the basic pair and the number of superordinate subjects was most often on the superordinate pair, which seggested that children's hierarchical knowledge was activated by the inclusion instruction given to

each pair. With increasing the instruction trials the number of subordinate subjects de‑

cleased while the number of superordinate subjects increased, which showed that the number of instruction trials was an important factor in the acquisition of categorical hierarchies.

(b) For adults the number of basic subjects was most often on the three pairs and the number of superordinate subjects was least often on the three pairs. No significant changes were found with increasing the instruction trials. These unexpected findings may be due to

adults recognition on "the restricted same group of things.

参照

関連したドキュメント

Eriksen&Schultz(1979)の主張に従うと,視覚デ

考察 スポーツ選手に対し DHA (日量1. 本研究では,その他の視覚機能としてスポーツビジョ

6 ) kg であった。 被験者には、書面と口頭の両方で、研究の目的、

( 2005, 2008 ) が高音声部優勢効果を示した MMN とは性質が異なる。音楽的な知識を必要としない規則 性からの逸脱や物理的逸脱を反映する陰性電位が

「私は誰になっていくの?

 光放射による色材料の退色は,光化学反応として捕えることができる。光化学反応

まず、結果(1)の「音読」群よりも「読み聞かせ」群のほうが文章理解の成績の良かったことに

SC  (および, SC とかかわった教員)の行動の観察 は,職員室内の SC の机が見える位置から,筆者が直 接観察法により行った。