大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究 : 旅費と科研費申請資格を例として
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(2) 北海道教育大学紀要(人丈科学・社会科学編)第 6 4巻. 平 成 25{ I 8月. 第 1号. ご. J o u r n a lo fH o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( H u m a n i t i e sa n dS o c i a lS c i e n c e s )V o . l6 4,N o. l. A u g u s t,2013. 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究 旅費と科研費申請資格を例として. 宇田川拓雄. 北海道教育大学函館校情報科学専攻. CaseStudyont h eD e t e r i o r a t i o no fR e s e a r c hC o n d i t i o n so fP r o f e s s o r s : TravelAllowancesandQ u a l i f i c a t i o nf o rA p p l i c a t i o nf o rGrants. UTAGAW A Takuo a k o d a t eC a m p u s,H o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n D e p a r t m e n to fI n f o r m a t i o nS c i e n c e,H. A b s t r a c t Wew i l ld i s c u s st h eproblemo fd e t e r i o r a t i o no fr e s e a r c hc o n d i t i o n sa tam i d d l e l e v e l l i b e r a la r t sc o l l e g e, HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n .Thea u t h o rc h o s et h r e ecomparableu n i v e r s i t i e sandcomparedd i f f e r e n c e si nb u s i n e s st r a v e la l l o w a n c e sandq u a l i f i c a t i o n sf o ra p p l i c a t i o n sf o re x t e r n a lg r a n t s .Thel e v e lo f t r a v e la l l o w a n c e so ft h i su n i v e r s i t yi st h eworstamongcomparableu n i v e r s i t i e s .Theq u a l i f i c a t i o n sf o rap p l i c a t i o n sf o re x t e r n a lg r a n t sa r er e s t r i c t e dt ot h ee x t e n tt h a to l d e rp r o f e s s o r s,p r o f e s s o r se m e r i t u s,and p a r t t i m er e s e a r c h e r sl o s echancest oa p p l yf o rg r a n t s .S i n c et h ed e r e g u l a t i o nt h a tocurredduet ot h e changeo ft h eU n i v e r s i t yActi n1 9 9 , 1 ]apaneseu n i v e r s i t i e shavebeenf r e et oreformt h e i rsystemso f e d u c a t i o n,r e s e a r c h,andmanagement .Competitionamongu n i v e r s i t i e sh a st h u si n t e n s i f i e d .I neachu n i v e r s i t y,t h epersonnela r eeagert oi n c r e a s et h ev a l u eo ft h e i rownu n i v e r s i t y .I nsomeu n i v e r s i t i e s, however,t h et r a d i t i o n a lformo fmanagementhasn o tchanged.Thep r o f e s s o r sa c c e p tu n f a v o r a b l er e s e a r c hc o n d i t i o n sd e c i d e duponbyt h ea d m i n i s t r a t o r s .Thea d m i n i s t r a t o r sh e s i t a t et ochanget h et r a d i t i o n a lmethodso fa d m i n i s t r a t i o n .Thed e t e r i o r a t i o ni nr e s e a r c hc o n d i t i o n si st h er e s u l to fn e g l i g e n c eand l a c ko fe t h i c samongt h ep r o f e s s o r i a t e,whichi sap a r to fap r e d i s p o s i t i o no f]apaneseu n i v e r s i t yp r o f e s s o r s .I ti sp r o f e s s o r s 'u r g e n tdutyt oremedyt h i sc h a r a c t e r i s t i c .. 1.はじめに 大学教員の主要な職務は教育と研究である。そ. れを行うには設備,機材,予算,時間などの研究 環境が必要である。教育には講義室,演習室,黒 板,プロジェクターなどが必要で,これらが整備. 49.
(3) '4三田川拓雄. されていない大学はないだろう。研究にも環境が. 教育学会誌ではとりあげられたことはない。高等. 必要である。大学の研究環境は大学設置基準に. 教育学会誌では「プロフェッショナル化と大学」. よって最低限の水準が決まっている。しかし 2004. 特集(高等教育学会, 2004)で,専門職(プロフエツ. 年の国立大学の独立法人化以降,基準が緩和され,. ション)としての大学教授職の問題が論じられた. 大学ごとの違いが生じてきている。. が,大学教員の研究環境には触れられていない。. 研究環境を検討し研究者の研究能力を十分に. 教育社会学会の学会誌「教育社会学研究」では格. 発揮できるものに改善することは研究者自身に課. 差に関する特集を組んだ ( 2 0 0 7 ) が,その格差は. せられた重要な任務である。政府や大学管理者が. 初等中等学校,大学における児童,生徒,学生の. 与えてくれる条件をその妥当性,合理性,効率,. 聞の社会的経済的格差であって,大学問の教育研. 効果を検証せずそのまま丸のみにして,変更不可. 究環境の格差には言及されていない。学会誌以外. 能な条件として受けとる態度は,研究者としてふ. では,有本が研究費の大学問の差異を論じている. さわしいとは言えない。. (有本章, 2008) が,その内容はマクロな調査に. 本稿では中堅教養大学である筆者の勤務校(北. 基づく分析であって,研究者が具体的にどのよう. 海道教育大学)の研究環境に関する現状を,規模. な予算規則のもとで、研究を行っているかという話. やミッションが類似する大学を選んで比較する。. 題は扱われていない。. 研究環境を規定する要因は様々あるが,本稿では. J (週刊 毎年発行されている「大学ランキングJ. 「旅費支給基準」と「科学研究費申請資格」の 2. 朝日)は大学教員や大学組織の現状について考察. 項目について調べ,北海道教育大学における研究. しているという意味で本稿の趣旨に近い。『大学. 環境の現状と大学教員の意識の関係について考察. 2 0 1 3 J J で谷口は研究費に大きな比重を ランキング'. したい。. 占めるようになった外部資金について「・・大き な大学と中小規模の大学とでは,ますます大学問. 2 . 先行研究と課題. 格差が拡がりつつある」と述べている(谷口功, 2012, p .2 8 2 ) が,その格差が個々の大学で研究. 研究者が大学や大学教員を学問的研究の対象と. 者にとってどのような影響をもたらしているのか. することはめったにない。社会学は社会的存在と. は考察していない。同書で棲田は研究者の年収に. しての個人,集団,社会組織,社会規範,社会制. ついて大学問格差が大きいことを指摘しさらに. 度などを研究する学問である。普通,研究者は学. 「・・教育環境や研究環境も年収レベル以上に[大. 問研究の対象に対して客観的立場を維持する。し. 学教員の職務遂行に]重要な要素となる J ([ ]. かし社会学には自分自身や自分が所属する組織. 内は筆者による補足)と述べているが,具体的に. や社会を研究する自己反省の社会学 ( r e f l e c t ive. .3 0 0 )。 論じてはいない(棲田大造, 2012, p. s o c i o l o g y ) の伝統がある。ここでは自己反省の. 研究者である大学教員は研究実施のための環境. 社会学の視点で,大学教員が勤務する大学におけ. や条件の整備にも熱心である。しかし彼らは旅費. る研究環境の問題を実証的に考察する。. 支給基準や科研費応募資格といった基本的な問題. 大学教員の職務に関する議論は以前からある. には関心が薄い。その理由は 2つ考えられる。. が , 1991年の大学設置基準の大綱化以後は教育改. 第 1は,専門職である大学教授は金銭的利益を. 革の文脈で論じられることが多くなった。 例えば. 追い求める職業ではないと考えられていることで. 大学教育学会の学会誌の特集「教育と研究を考え. ある。例えば賃金に関して寺脇は「大学教員は賃. る」で飯吉は両者の関係を「古典的葛藤」と呼び,. 金に頓着しない,それは教えることに満足してい. 先行研究の整理と問題提起を行っている(飯吉弘. るからだ、 J (寺脇研, 2012,p .2 7 8 ) と述べている。. 子 , 2007, p.46)。研究環境に関する議論は大学. これは日本の伝統的な教師像であろう。同じこと. 5 0.
(4) 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究. は研究費にも言える。研究費獲得に熱心な研究者. あって,研究環境の劣化は北海道教育大学独特の. は多いが,旅費は個人の宿泊や飲食に使用するも. 特徴というより条件が揃えばどの大学でも出現し. のであるから,その多寡を論ずるのは金銭的利益. うると考えられる。. を追い求めているように見え,従って教員が論ず べき話題ではないと考えられていると思われる。 第 2の理由は,日本では長年,国立大学の教員. 3 . 研究方法. の給与や研究環境は全国一律に決められていたこ. ある大学で研究環境をどのように整備するかは. とである。給与も研究費も旅費基準も科学研究費. その大学の学内問題であり,その詳細については. の応募条件も,国家が決定する与件で,研究者が. 全国学会の報告テーマになることもないし,大学. 自由に変更できないものであった。大学教員は「あ. のミッションや学長の自己紹介のように大学が. てがい扶持」的な「与えられた環境」に慣れてき. ホームページ上で積極的に公開することもない。. たから,規制緩和後も,より良い条件を自ら獲得. 研究環境は大学毎に大きく異なり相互の比較が難. しようという気持ちになれないのではないか。. しい。そこで本稿では情報を入手しやすい旅費規. 旅費支給規程や科研費応募資格の問題が顕在化. 程と,積極的な公開はされていないが問い合わせ. しないのは,それらが基本的には各大学の学内問. によって知ることのできる科学研究費の応募条件. 題であることも一因であろう。旅費を使うのは研. の 2つに絞って検討する。この 2つは研究者が実. 究者だが,旅費の経理は事務職員の仕事である。. 際に研究を計画したり研究を実施する場合に現実. 科研費に応募するかどうかは研究者の問題だが,. 的に大きな問題となる。かつては全国の国立大学. その研究者に大学として応募を認めるかどうかは. が全て同一だ、ったが,近年は大学による差ができ. 学内の事務手続きの問題であって,管理職の裁量. ている。. 部分が大きい。経理や応募資格の問題は,脱世俗. 比較する場合,規模が類似する 3つの教員養成. 的に学問研究に専念する研究者が口を差し挟む事. 系大学,北海道教育大学,東京学芸大学,大阪教. 項とは考えられていない。. 育大学を選んだ。また,研究環境は地域によって. このような研究者の無関心,無頓着は,研究環. 類似性があると考えられるため,北海道内の国立. 境の悪化,経済的困難,研究条件の劣化をもたら. 大学のうち北海道教育大学と同じ文系の中規模大. す。研究は他の研究者との競争である。国内の大. 学である小樽商科大学を選んだ。さらに,旅費に. 学や外国の大学と比べて相対的に劣悪な環境で競. 関しては公務員や国立大学法人の規程の基準と. 争しなければならないとすれば,それは研究者に. なっている国家公務員の旅費規程と,地方公務員. 不利である。多額の外部資金を獲得しでも旅費支. の旅費規程(函館市),それに外国の大学の例と. 出基準が他大学より劣っていたり,優れた研究計. して米国カリフォルニア州立大学の規程を参照す. 画を持っていても外部資金への申請資格が制限さ. る 。. れていては,競争に不利である。. 科研費の申請資格については文部科学省と学術. 大学教員が研究成果をあげたり,外部資金を獲. 振興会の規程で明確なのだが,その解釈や運用が. 得することは大学の価値を高めることになる。北. 大学によって異なる点がある。申請資格は 2 0 1 2年. 海道教育大学では教員が研究成果を上げることを. 1 1月に筆者が各大学の科研担当者,および丈部科. 大学運営の目標としているが,旅費基準と科研費. 学省と学術振興会の担当者に直接問い合わせた回. 応募資格に関しては研究を阻害するような運営を. 答をもとに分析を行った。. している。その責任は大学管理者だけでなく,大 学教員の意識にもあると思われる。根底にあるの は日本の大学教員に共通する現状肯定型の態度で. 5 1.
(5) '4三田川拓雄. 表 1 国家公務員の内国旅行の旅費. 4 . 研究旅費の問題 ( 1 ) 旅費支給基準の多様化. (円) 柑 泊 料 ( 伐につき) 区. 分. 日当(一日につき) 甲地. 効果的に研究を進めたり,社会の実態に即した 研究を行うには他の研究者との交流が不可欠であ る。学問分野や研究テーマが著しく細分化してい るから,同じ大学内や近隣大学に共同研究者がい る可能性は低い。共同研究者が外国に在住する場 合もある。フィールドワーク(現地での調査研究) でも,国内外の共同利用研究施設での研究でも, 旅費は必要である。研究成果の公表と探求深化の ため学会参加が必要だが,学会が自分の勤務校で 開催されることはめったにないから,やはり旅費. 乙地. 指定職の職務にあ る者l a ). 3, 000. 800 1 4,. 1 3, 300. 七級以上の職務に ある者 (b). 2, 6 0 0. 1 3, 1 0 0. 1 1, 800. /,級以下二三級以上 の職務にある者 IC). 2, 200. 1 0, 900. 9, 800. 二級以下の職務に ある者 (dI. 1, 7 0 0. 8, 700. 7, 800. 出典:国家公務員等の旅費に関する法律 注:区分において内閣総理大匝等の項目は省いた。甲地とは東 京都特別区や大阪市など物倒の高い大都市地域で,乙地は それ以外の地域。. は必要である。 大学教員には一定額の旅費が大学から支給され. 独立法人化とともに規程の見直しを行った大学. る。科学研究費に代表される外部資金からも旅費. も少なくない。北海道教育大学の場合,役員(学. を支出することが可能である。どちらの場合でも,. 長,理事,監事)とそれ以外(教員と職員,以下,. 勤務大学の旅費支給基準が適用される。かつては. 職員)に 2段階に区分された(表 2。 ). 国立大学では「国家公務員等の旅費に関する法律」 に基づいて支出が行なわれていた。独立法人化後. 表 2 現在の北海道教育大学の│付国旅行の旅費基準. の国立大学法人では,この基準を維持していると. (円). ころと変更したところがある。変更した大学では. 区 分. H 当 (~H につき). ほぼ例外なく支給額や支給基準の引き下げが行わ. 役員 (a). 3,000. れている。. 職員 ( b ). 2,200. I宿泊料(一夜につき). I. 1 3,300 1 0,900. 支給基準の引き下げは研究者の不利益になる。 もとより過大な旅行経費の支出は避けるべきだ. 旅費規則は行き先,区分によって異なり,さら. が,合理性を欠く基準の引き下げは研究遂行上,. に独立法人化後は大学により様々に異なってい. 不便をもたらしたり,研究者の私的負担を強いる。. る。そこで,北海道教育大学,東京学芸大学,大. 基準を調べると大学問には無視できないほどの大. 阪教育大学,小樽商科大学の 50歳代の教授が甲地. きな格差が存在する。. に旅行する場合と,国家公務員一般職員のうち学 歴と経験年数からみてベテラン教授に相当する職. ( 2 ) 圏内旅行の場合. 位にある者が甲地に旅行する際の基準(表 1の( b ) ). 旅費には支給区分があり,支給区分は職位のラ. を比較した。表 1の区分( b )は大学が国立大学で. ンクによって異なる。表 1は国家公務員の囲内旅. あった時代の教授職の基準である。現在でもこの. 行の支給基準である。区分は一般の行政職の級で. 基準をそのまま使っている大学もある。. 分けられているが,教育職に読み替えると学長な. 旅費は交通費,日当,宿泊料からなる。日当と. どの指定職は最上位( a ),教授と勤務歴の長い助教. 宿泊料の合計を滞在費とし,各大学と公務員の滞. b ),若手助教授と講師は ( c ),助手は ( d )に相当 授は (. 在費と北海道大学の滞在費の差額を算出した。. する。. 表 3から明らかなように,北海道教育大学の教 員は甲地出張の場合,他大学の教授や公務員と比. 5 2.
(6) 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究. 表 3 囲内旅費支給基準の比較:束京への旅行の例. 他大学の教員は支給額で賄えるが,北海道教育大. (円) 日当. 指i 白料. 滞イ士費. 学の教員は私費を追加しなければならない。. 差額. 北海道教育大学. 2, 200. 1 0, 900. 1 3, 1 0 0. 東京学芸大学. 2, 6 0 0. , 1800 1. 1 4, 400. +, 1300. 大阪教育大学. 2, 200. 1 1, 800. 1 4, 000. +900. 小樽蘭科大学. 2, 6 0 0. 1 3, 1 0 0. 1 5, 700. +2, 600. 旅行先を米国サンデイエゴ市(甲地方)に設定. 国家公務員. 2, 600. 1 3, 1 0 0. 1 5, 700. +2, 600. して比較を行った(表 6)。北海道教育大学教員. 注:大学の旅費は教授のランク,公務員は教授相当のランク。. は比較大学や公務員と比べて一日あたり 3, 500円. ( 3 ) 外国旅行の場合. 次に外国旅行について調べてみよう(表 4と表. 5を参照)。. から 4, 500円少ない旅費で調査研究を行わねばな べ,一日あたり 900円から 2, 600円少ない額で調査. らない。外国の慣れない土地で,少ない予算で活. 研究を行わねばならない。宿泊料は宿泊と夕食,. 動するのはつらい。不足する分を私費で補うこと. 朝食,及び宿泊に伴う雑費の合計額である。国家. は珍しくない。. 公務員共済(国立大学教員は共済組合員である). 次に,発展途上国の場合も調べてみよう。数ヶ. (KKRホテル東京)でシン. 月に及ぶ長期滞在型の研究を行う人類学者を別に. グルの部屋に滞在してホテルで夕食と朝食をとっ. すれば,多くの発展途上国研究は短期滞在で行う. た場合の合計額 ( 2 0 1 3年 3月調べ)は 1 4, 500円で. のが一般的である。以下,筆者の途上国における. ある。文部科学省共済のホテル(フォーレスト本. 社会学的研究の経験をもとに論ずる。. の東京都内の宿泊所. 研究者は野外調査をしていてもホテルに戻ると. 郷)の場合,最も安価な部屋の宿泊料金に最低額. デスクワークをしなければならない。ホテルの部. の夕食と朝食料金を加えた額は 1 3, 054円である。. 表 4 国家公務員の外国旅行の旅費 (円) 日当(一日につき). i 天. 宿泊料(一夜につき). 分 指定都市. 甲地方. 乙地方. 指定都市. 丙地方. 甲地方. 乙地方. 丙地方. 指定職の職務にある者(al. 8, 3 0 0. 7, 000. 5, 600. 5, 1 0 0. 2 5, 700. 2 1, 5 0 0. 1 7, 200. 1 5, 5 0 0. b ) 七級以上の職務にある者(. 7, 2 0 0. 6, 200. 5, 000. 4, 500. 2 2, 500. 1 8, 800. 1 5, 1 0 0. 1 3, 5 0 0. 六級以卜三級以 kの職務に ある者(c). 6, 2 0 0. 5, 200. 4, 200. 3, 800. 1 9, 300. 1 6, 1 0 0. 1 2, 900. 1 1, 600. 一級以卜の職務にある者( d ). 5, 3 0 0. 4, 400. 3, 600. 3, 200. 1 6, 1 0 0. 1 3, 400. 10.800. 9, 7 0 0. 出典:国立大学法人北海道教育大学役員等旅費規則,国立大学法人北海道教育大学職員旅費規則。 注:指定都市とは,財務符令で定める都市の地域をいい,巾地方とは,北米地域,欧州地域及び中近束地域として財務省令で定める地域 のうち指定都市の地域以外の地域で財務省令で定める地域をいい,丙地方とは,アジア地域(本邦を除く。),中南米地域,大洋州 地域,アフリカ地域及び南極地域として財務省令で定める地域のうち指定都市の地域以外の地域で財務省令で定める地域をいい,乙 地方とは,指定都市,甲地方及び丙地方の地域以外の地域(本邦を除く。)をいう。. 表 5 北海道教育大学の外国旅行の旅費基準 円. 日当(一円につき). 宿泊料(一夜につき). I 天分 指定都市. 甲地方. 乙地方. 丙地方. 指定都市. 甲地方. 乙地方. 丙地方. a ) 役員 (. 8, 300. 7, 000. 5, 600. 5, 1 0 0. 2 5, 7 0 0. 2 1, 5 0 0. 1 7, 200. 1 5, 5 0 0. 職員 ( b ). 6, 200. 5, 200. 4, 200. 3, 800. 1 9, 300. 1 6, 1 0 0. 1 2, 900. 1 1, 600. 53.
(7) '4三田川拓雄. 表 6 外国旅行の支給基準の比較:米国サンデイエ. H当. ら,日本国内の類似大学問比較だけでなく,外国. 円. ゴ市への旅行の例 宿泊料. 滞在費. 差額 /1H. の大学との違いも見てみよう。米国のカリフォル. 。. ニア州立大学の教職員には州政府の公務員旅行規 定によって旅費が支給される。ダッカに行く場合. 北海道教育大学職員. 5, 2 0 0 1 6, 1 0 0 2 1, 3 0 0. 大阪教育大学. 6, 2 0 0 1 8, 8 0 0 2 0 0 0 5,. +3, 7 0 0. を調べた。米国の旅費項目には日当はなく meals. 東京学芸大学. 6, 1 0 0 1 8, 7 0 0 2 4, 8 0 0. +3, 5 0 0. andincidentalexpenses (M&IE ,食費(朝,昼,. 小樽商科大学. 6, 2 0 0 1 9, 1 0 0 2 5, 3 0 0. +4, 0 0 0. 晩)と雑費)という項目がある。表 7のとおり,. 凶家公務員. 6, 2 0 0 1 8, 8 0 0 2 5, 0 0 0. +3, 7 0 0. 北海道教育大学の基準額の方が少なく,. 1日当た. 150円になる。米国の研 りの合計金額の差額は 12,. 屋にはデスクと照明が必要である。外国にいても,. 究者は研究上の強力な競争相手だから,この差額. 学生の卒論指導,生活指導,共同研究者との打ち. は我々には不利な条件である。. 合わせ,あるいは大学の管理運営などのために通 信の手段を確保する必要がある。プリンター,国. ( 4 ) 地方自治体(函館市役所)との比較. 際電話,ファックス,インターネットなどが欠か. 旅費の額は旅行者にとっては多い方が良いし,. せないからビジネスセンターを備えたホテルが好. 支出する側としては少ない方が好ましいだろう。. ましい。盗難,犯罪,テロを避けるためにはセキュ. 絶対的な適正水準を決めるのは困難だが,北海道. リテイ対策がしっかりしているホテルに泊まらね. 教育大学の旅費支給基準は社会通念上,妥当なの. ばならず,費用がかさむ。途上国はまだ社会イン. だろうか。函館市の市役所職員の旅費基準と北海. フラ整備が十分でなく停電が頻発することがあ. 道教育大学の基準を比較してみよう。. る。自家発電装置を備えたホテルでなければ,丸. 函館市では市長などの役職者以外の一般行政職. 一日,電源が使えないこともある。現地には安価. の旅費は 3段階になっており,旅費は給与体系の. なホテルは数多いが,安全で交通の便が良く,ビ. ランク(級)に応じて決まっている(函館市, 1990)。. ジネスサポートサービスが確実に利用でき,英語. c )にあたる一般職員上級ランクは給与 国家公務員 (. が通じる外国人向けのホテルの場合,宿泊費は公. ランク 5級以上職員(職員全体の約 20%にあたる). 務員 ( b )レベルの額でも不足がちである。. である。函館市では一般職は最下位の 1級(主事. 最貧困のバングラデシュのダッカ(丙地方)へ. 2級,技師 2級)から 9級(主要部局の部長)ま. の旅行で,教授の滞在費は小樽商科大学(公務員. である。給与ランクは基本的に学歴と経験年数で. ( b )と同じ,日当 4, 500円,宿泊料 13, 500円)は 18, 000. 決まる。 50歳代の大学教授は大学院卒業(相当). 円だが,北海道教育大学教員(公務員 ( c )相当で日. の学歴で,研究歴は 30年程度はあるだろうから,. 当 3, 800円,宿泊料 1 1, 600円)は 15, 400円で,一. 画館市役所の職階にあてはめると,一定の権限と. 日あたり 2, 600円少ない。途上国ではこの差は大. 責任を伴う 5級以上のランクと考えるのが適当で. きい。. あろう。 5級以上のランクの最下位は課長補佐,. 研究者はグローパルな競争にさらされているか. 最上位は部長である。. 表 7 バングラデシュのダッカ市に旅行する場合の旅費:米国カリフォルニア州立大学との比較 (円). 宿泊 a. カリフォルニア州立大学 (円換算 1 ドル=95円) 北海道教育大学. 食費・雑費 b. H当(定額) c. $200. $90. $290. 1 9, 000円. 8, 550円. 27, 550円. 1 1, 600円. 3, 800円. 出典:h t t p : / / a o p r a l s, s t a t e, gov/ w e b 9 2 0 / p e r _ d i e m_action,aspつ MenuHide~ l&CountryCode~ 1 1 5 2. 5 4. 計 (a+b+c). 1 5, 400円.
(8) 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究. 北海道教育大学では重要な役割を果たしている. 旅費は大学が研究者に支給する研究費や研究者. ベテラン教員でも,旅費に関しては市役所や町役. が獲得した外部資金から支出されるため,支出基. 場の 4級以下の下級一般職員(課長補佐の下位の. 準額を引き下げても大学の経理にプラスにはなら. 主事 2級・技師 2級). ない。旅費基準の引き下げによる大学の経営上の. 職種,主査・主席・主任 と同じ扱いになっている。. メリットは存在しない。 次に考えられるのは,管理者が最近の研究活動. ( 5 ) 旅費以外の旅行条件について. の実態に疎い可能性である。大学がホームページ. 日当と宿泊料以外でも,旅行に関して重要な項. で公開している情報(研究者総覧)では北海道教. 目がある。それは支給方法(概算払い(前払い). 育大学の学長や理事の中には複数の大学の研究者. か清算払い(後払い)か),航空機の座席に関す. が参加した全国的国際的な研究プロジェクトの. る規定(特定航空路 (8時間以上のフライトの旅. リーダーの経験者が見当たらない。大学管理者が. 行)では,上位の座席の使用を認める規程),支. 他大学の現状を知らない,旅費支給額の相場を知. 度料(外国旅行の準備のため支給される費用)で. らない,あるいは学外で本格的な研究を行う際,. ある。国家公務員の場合,この三つは全て認めら. 他大学と比べて旅費基準が大幅に低い場合,研究. れている。概算払いで特定航空路の規程があり支. 活動に不利であるという現実を知らない恐れがあ. 度料が支給されるのが研究者にとって有利であ. る。「最低限の水準を適用しておけば経営努力を. る。これらの規程の適用は大学によって様々であ. しているように見える」という理由で基準が設定. る 。. されている可能性がある。. 旅費支給基準や旅費にかかわる規程の運用はそ. 第 3の理由として事務職員も研究活動の実態に. れぞれの大学によって異なり,全ての大学の方針. 疎いことが考えられる。大綱化以降,大学は様々. が全て同じである必然性はない。しかし,北海道. な改革を行ってきた。統治機構としての事務組織. 教育大学は上記三つの項目の全てが研究者に不利. も再編が行なわれたが,規程の運用慣行や官僚制. な規定になっている。なぜ研究者にとって相対的. の基本的な性質は以前のままである。法人化以前. に不利な旅費条件が設定されているのだろうか。. は,大学の事務組織は文部科学省からの指令を忠 実に実施していれば良かった。文部科学省には優. ( 6 ) 旅費基準が低い理由. れた人材も多く,総合的に見れば長年にわたり大. 理由として,まず,経費節減が考えられる。北. 学の研究を上手に統治していた。独立法人化以後. 海道教育大学は他大学と比べて特に経費節減に熱. は,個々の大学が独自に経営を行うことになった. 心なのだろうか。. が,これまで上意下達型の運営に慣れていた大学. 北海道教育大学では全学的に経費節減が行なわ. 事務組織には人材が不足している。その結果,研. れているわけではない。役員の旅費水準は比較大. 究の価値や研究活動の実態に疎い職員が,文部科. 学の中では上位にある。大学役員が外国旅行(甲. 学省や財務省の経費節減の方針を受け,自分の権. 地方)する場合,大阪教育大学と小樽商科大学の. 限の範囲内で,自分たちが理解できる範囲内で最. 役員の滞在費(日当 6, 1 0 0円,宿泊料 1 8, 7 0 0円). も効果的な対応をした結果,研究者にとって他大. は2 4, 8 0 0円であるが,北海道教育大学と東京学芸. 学と比べて不利な基準ができあがったのではない. a )と同じ最も高い水準 大学の役員は国家公務員 (. だろうか。. 0 0 0円,宿泊料 2 , 15 0 0円)で 2 8, 5 0 0円で (日当 7,. 第四の理由は,大学教員の研究環境の維持改善. ある。北海道大学の役員旅費基準は公務員ランク. に関して管理者側と交渉する責任を持つ教授会の. ( b ),室蘭工業大学はランク ( c )で北海道教育大学よ. 弱体化である。北海道教育大学の場合は地理的な. り低い。. 条件が弱体化の一因と考えられる。北海道教育大. 5 5.
(9) '4三田川拓雄. 5つの,似通ってはいるが半. 詰 100%をめさ、、す J (文部科学省, 2 0 1 0 ) と明記さ. ば独立した部局(課程)が広大な地域に分散して. れている。外部資金獲得奨励は全国の大学に共通. いる。大学教員が個々のキャンパスに所属し,全. であろう。しかし北海道教育大学では科研費の応. 体として意識を同じくする集団として大学管理者. 募申請資格が厳しく制限されている(北海道教育. に対抗して研究教育条件の改善を求めて交渉する. 0 1 2 ) 矛盾する運営が行なわれている。 大学, 2. ことが困難である。他方,大学管理部門は札幌の. 大学による科研費応募資格の制限は研究者にとっ. 本部を頂点とするピラミッド型の統治システムと. て明らかに不利である。. 学は本校を持たず,. 0. なり,上意下達型のマネジメントが行なわれてい. 近年,科研費の応募資格は拡大されている。科. る。学長のリーダーシップが強化され,各部局の. 研費応募条件は平成 25年度科学研究費助成事業科. 教授会は権限を大幅に奪われ,大学の運営は本部. p. 1 4 ) によれば次の 研費公募要領の応募資格 (. から指令されるものになっている。その結果,教. とおりである。. 員らが自らの研究教育環境の改善をもとめて大学. ① 応募時点において,所属する研究機関か. 管理者と集団的に交渉する場が失われている。教. ら,次のア,イ及びウの要件を満たす研究. 授会の弱体化は,学内の権力闘争などが原因でも. 者であると認められ,. 起きうるので,他大学でも発生しうる理由である。. の応募資格有り」として研究者情報が登録 されている研究者であること. 第五に,研究環境の問題に対する教員の無関心 がある。北海道は広大で大学数が少ない。近隣に. e-Radに「科研費. く要件〉. 比較される大学が少ない環境で,長年,小学校教. ア 研究機関に,当該研究機関の研究活動を. 員養成独占体制に慣れ親しんで来た教員は,研究. おこなうことを職務に含む者として,所属. 環境の改善に関心を持とうとしない。あてがわれ. する者(有給・無給,常勤・非常勤,フル. ている研究条件(旅費基準額)をそのまま受け入. タイム・パートタイムの別を問わない。ま. れ,その枠内で仕事をすることに慣れ切っている。. た,研究活動そのものを主たる職務とする. 大学管理者が文部科学省の経費節減方針に従おう. ことを要しない。)であること. とするのは理解できるが,それを無批判的に受け. イ. 当該研究機関の研究活動に実際に従事し. 入れるのではなし研究活動を阻害する恐れのあ. ていること(研究の補助のみに従事してい. る運営方針に反対するのが研究者たる教員のとる. る場合は除く。). べき行動であろう。自らも研究者でもある学長や 学内理事は,大学教授に地方自治体の下級職員相 当の低い基準を適用することにより,結果的に大 学教授職や大学の価値を低めている。. ウ 大学院生等の学生でないこと(以下,省 略) この規定では,研究期間内に定年や任期切れで 所属大学の籍がなくなる見込みの研究者であって も申請時点で応募資格があれば新規申請は認めら. 5 . 科研費申請資格の問題 ( 1 ) 科研費公募要領の規定 次に研究者の資格について考察する。大学教員. れる。北海道教育大学は該当する研究者の応募申 請は全て拒否している。筆者が調査した限りだが, 北海道教育大学以外の大学ではこの解釈どおり, 応募時点で資格のある教員の応募は可能である。. が研究活動において優れた業績を上げることは大. 次の表 8は名誉教授,蕪給研究員,非常勤研究員. 学にとっても社会にとっても望ましいことであ. などの応募規定の比較である。. る。研究には資金が必要で、あり,大学の自前の予. 比較大学では名誉教授や学外研究員にも申請資. 算は不十分なので外部資金の獲得が奨励されてい. 格を認めている。定年で退職した教員で在職年限. る。 II~ヒ海道教育大学中期計画」には「科研費申. などの制限で名誉教授になれなかった研究者にも. 5 6.
(10) 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究. 表 8 科学研究費の応募資格 ( 2 0 1 2年1 1月) 問い合わせ先. 申請時に資格があるが 将来は未定の者の申請. 名誉教授の申請. i 人 ι. 幽 ゐ. 課. 不可. 不可. 会 旭川医科大学 事. 務. 課. 可. 可. 研究室実験室などを確認して認め る 。. i : ι 、 画 小樽商科大学 l. 室. 可. 可. 可. 帯広斎産大学 研 究 企 画 係. 可. 可. 可. 北見工業大学 研 究 協 力 課. 可. 特任教授として可. 非常勤研究員として申請を認め る 。. 国際戦略本部. 可. 可. 研究室実験室などを確認して認め ている。. 室蘭工業大学 研 究 協 力 課. 可. 可. 研究室実験室などを確認して認め ている。. 東 京 学 芸 大 学 科学研究費係. 可. 可. 無給研究員として認める。. 大阪教育大学 研 究 協 力 係. 可. 可. 可. 北海道教育大学. 北海道大学. 研究員という資格で科研費応募を認めている。北 海道教育大学では申請は全く認めていない。. 非常勤講師の申請 不可. 学術研究助成課企画室) この応募資格の弾力化の方針を受けて,各大学. 6年度に文部科学省が科研費の応募資格を 平成 1. はフルタイムの教員以外の応募も認める規定を整. 拡大した時,どのような研究者には応募資格を与. 1月に学術振興 備した。応募資格について 2012年 1. え,どのような研究者には応募資格を与えないの. 会と丈部科学省に筆者が直接問い合わせたとこ. かという問題が科学技術・学術審議会で議論され. ろ,どちらも次のような趣旨の回答であった。. た。学術分科会研究費部会(第 2期第 1 1回)の議. 応募時点で資格があれば良く,たとえ,翌. 事録によれば,事務局側は当初,資格を最しく制. 年 3月で任期が切れる研究者であっても応募. 限する考えであった。. は可能である。ただし移動や退職の見込み. (事務局)[研究者が科研費に]応募する際は,. がある場合,申請書の中で採択された場合ど. その時点で資格を有している必要があるわけ. のように研究を行うつもりかを記入すれば良. だが,課題が採択され補助金が交付される時. い。本人の再就職の問題になるので,前年の. 点で、は失っているかもしれないという場合,. 1 1月時点では分からないか公表されないのが. それは有資格者ではないと考える方が普通で. 普通であるので,次年度以降の研究者の身分. ある。従って,現在,特任教授である研究者. について,現所属機関にその確認は求めてい. が応募することは可能だが,今後,特任教授. ない。. に就任できるかもしれないという場合には応 募できない。 しかし,議論の結果,応募時点で資格があれば 良いという結論になった。. 科研費が採択されれば大学の名誉にもなるし 間接経費が大学に支払われるから財政的にも好ま しい。他大学では専任教員だけでなく,名誉教授, 外部研究員,非常勤講師など,できるだけ多くの. (委員) ・・・応募時点で資格があれば,例. 研究者に応募させて採択のチャンスを増やしてい. え 1年後に定年退職の予定であろうと,次に. る。北海道教育大学でも科研費応募は推奨されて. また別のポストに就任する場合があり得るの. いるが,その方針と科研費応募資格制限は明らか. で,応募は可能ということでよいか。. に矛盾する。. (事務局)そのとおりである。(研究振興局. 科研費応募資格の問題は全国的に名誉教授や学. 5 7.
(11) '4三田川拓雄. タ}1iJf究員については資格を認めるのが一般的であ. で,全体としての改善は進んでいない。硬直化し. るが,特任教員や任期制教員の場合は大学による. た官僚制の仕組みが維持されており,それを変え. 違いが見られる。制限する方向の大学の解釈は,. る努力は行われていない。. 上記議事録の事務局が用意した原案と同じで,公. 北海道教育大学における研究環境は相対的に良. 的な予算による研究者の研究活動を大学の管理運. いとは言えず,劣化の様相も呈している。研究環. 営の枠内に閉じこめておこうとする考えに基づい. 境の変更が正当な手続きに従って行なわれ,結果. ている。文部科学省や学術振興会は規制緩和の方. 的にそれが研究劣化を招いているとすれば,その. 針をとっているが,独立法人化以後,独自の運営. 責任の一端が大学官僚制システムにあることは明. を任された国立大学法人は,規制を強める方向で. らかである。しかし,それが改善されない原因は. 大学運営を行う傾向が見られる。. 研究者自身にもあるだろう。 研究の事情に疎い管理者や事務職員が研究者に. 6 .考 察. 不利な規程を制定したら,その改善を促すのが研 究者のとるべき態度であろう。しかし研究者は与. 北海道教育大学の旅費基準と科研費資格に関す. えられた環境に甘んじることに慣れ過ぎて向上意. る非合理的な運営方針から思い浮かぶのは「変化. 識を失ってしまっているように見える。研究者の. を嫌う官僚制」のイメージである。製品なり組織. 研究条件が「あてがい扶持」であることや,研究. なりが外の世界から孤立した世界の中で独自の変. 者が自らの教育研究環境を積極的に改善しようと. 化を遂げることをガラパゴス化といい,それが近. しないのは日本の大学に共通することではないだ. 年の日本に当てはまると言われている。本稿の事. ろうか。北海道教育大学は地理的要因も加わり,. 例もガラパゴス化に近いように見えるが,詳しく. この欠点がたまたま顕著に現れた事例と考えられ. 検討すると変化が止まり太古のまま保存されてい. る。大学研究者の現状に満足しそれを変えようと. 9 7 0 )に る「失われた世界J (コナン・ドイル, 1. 0 年以上にも及ぶ大学改革が成果 しない意識が, 2. 似ている。北海道教育大学には 1980年代までの戦. を上げない原因ではないだろうか。北海道教育大. 後から大綱化までずっと続いた安定した大学の運. 学を含めた日本の大学の研究者の資質,研究能力,. 営方針を堅持するというルールが存在するように. 教育能力は世界的に見ても劣っているものではな. 見える。以前は研究旅費は定額が支給され,教員. い。それらを生かすのは優れた大学運営であると. は年 1回,札幌と東京での学会に参加する程度の. ともに,研究者自身の向上意識である。. 旅行しかしなかった。科学研究費申請は現職教員 のみが行うものであり,任期切れ教員や名誉教授. 引用文献. は研究を続けるために科学研究費に応募しような どとは考えなかった。事務職員の仕事は単純で, 昔ながらの決り切ったルーチンの繰り返しだ、っ た。その習慣を変えたくないのだろう。 現在では大学もビジネス企業並に国内外の競争. 有木章編著~変貌する日本の大学教授職~ ,末川大学山. 版会, 2 0 0 8年 。. 飯吉弘子. I教育と研究を考える J, ~大学教育学会誌~. 第2 9巻第二号,. ,. p p .4 6 5 2,2 0 0 70. 科学技術・学術審議会,学術分科会研究費部会(第 2期. にさらされるようになった。大学は文部科学省か. 1回)議事録, 2 0 0 4年 4月2 3日 ) , 2 0 1 3年 3月に閲覧。 第1. らグローパル化への対応が求められているが,具. http://www.mext.go.jp/b_menu/s h i n g i /g i jyutu/. 体的な実施の細部は各大学の独自判断にまかされ ている。大学のそれぞれの部局内の担当者は自己 判断で最善の努力を行っているが,部局内の部分 的,表面的,不十分な合理化がなされているだけ. 5 8. g i jyut u 4 /0 0 2 /g i ji r o k u /0 4 0 7 0 6 0l .htm 教育社会学会~教育社会学研究~, 2 0 0 7年,第 8 0巻 。. 高等教育学会. Iプロフェッショナル化と大学特集 J. ( 高. 0 0 4年 ) , ~尚一等教育研究~ ,第 7集 。 等教育学会, 2 コナン・ドイル,龍 1 1直太郎訳J失われた世界J,創元社,.
(12) 大学教授の研究環境の劣化に関する事例研究. 1 9 7 00 楼 国 大 造 教 員 の 賃 金 ラ ン キ ン グ J,了大学ランキング. p p .2 9 8 3 0 1,朝日新聞出版, 2 0 1 3. 2013~ ,. 谷口功. 0. I外部資金ランキンク' J, ~大学ランキング 2013~. ,. pp.282-285,朝日新聞出版, 2 0 1 3 0. 寺脇耐. I教員の賃金ランキング J ~大学ランキング 2012~. ,. p p . 2 7 6 2 7 9,朝日新聞出版, 2 0 1 2 0. 函館市,職員等の旅費に関する条例, 1 9 9 0, ( 2 0 1 3年 2月 閲覧),. http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/. r e i k i / r e i k ii n t / r e i k i honbun/ar37602341 .html 北海道教育大学,北海道教育大学科学研究費助成事業応. 4年 募資格に関する巾し合わせ事項(学長裁定),平成 2 1 2月1 7日 。 0 1 3年 3月 1日閲覧。 北海道教育大学,研究者総覧, 2 h t t p : / / k e n s o r a n . h o k k y o d a i . a c . j p / h u e h p / K g A p p 文部科学省,平成 2 5年度北海道教育大学中期 H標・中期 計画, 2 0 1 3年 3月 1H 閲覧。 h ttp://www.mext .g o . j p /. componentla_menu/education/detail/_icsFilesl a f i e l d f i l e / 2 0 1 0 / 0 4 / 2 3 / 1 2 9 2 7 5 3 _ 0 2 . p d f. (函館校教授). 5 9.
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