• 検索結果がありません。

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果

著者 杉村 健, 足立 寛之

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 44

号 1

ページ 209‑218

発行年 1995‑11‑24

その他のタイトル Effects of Pair Type of Concurrent Instances and Number of Instruction Trials on the

Interpretation of Novel Words

URL http://hdl.handle.net/10105/1635

(2)

奈良教育大学紀要 第44巻 第1号(人文・ォ二会)平成7年 Bull. NaraUniv. Educ., Vol. 44, No. 1 (Cult. &Soc), 1995

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果

杉 村   健 ・ 足 立 寛 之' (奈良教育大学心理学教室)

(平成7年4月3日受理)

"犬"や"りんご'のような基礎水準の名前(Roschら, 1976; Rosch,1978)を幼児に教え るとき、親や保育者は、事物やその絵を指差して̀̀これは犬です"とか"これはリソゴです"と 教授することが多い。この教え方は指示一命名方略と呼ばれている。一方、 "動物"や"果物'' のような上位水準の名前を教えるときには、 "犬は動物(動物の仲間)です"とか"リソゴは果 物(果物の仲間)です''と教授することが多い。この教え方は包摂方略と呼ばれている。

Callanan (1985)は実験的場面で母親の教え方を観察し、基礎水準名を教えるときには指示一 命名方略が用いられ、上位水準名を教えるときには包摂方略が用いられることを実証した。

このような教j受方略の有効性を実験的に検討するために、 Callanan (1989)は教授‑テスト 法を考案し、その後、この手法を用いた研究がいくつか行われている(Callananら, 1994;

Sugimura,1992;杉村・津村, 1994)。この種の研究においては、ある事例(イヌ.)に対して新 奇語を命名し、そのあとで、いくつかのテスト事例(イヌ1、イヌ2、ネコ、スズメなど)を提示

し、その中から新奇語に当てはまると思うものを選択させる。選択された事例に基づいて、被験 者の新奇語に対する解釈が推測される。被験者がイヌ1だけを選択した場合は、新奇語をイヌ1と いう下位水準名として解釈したと判定する。イヌ1とイヌ2を選択した場合は、新奇語を犬という 基礎水準名として解釈したと判定する。さらに、 2種のイヌとネコを選択した場合は、新奇語を イヌとネコに共通する四つ足動物という上位水準名として解釈したと判定する。

Callanan (1989)は幼児を用いて、教授事例が1つの場合は新奇語を基礎水準名として、 2 つの場合は上位水準名として解釈する者が多く(実験1) 、教授事例が2つの場合に、指示一命 名方略よりも包摂方略で新奇語を上位水準名として解釈する者が多いことを示した(実験2) 0 また、 Sugimura (1992)は幼児と大学生を用い、 1つの教授事例(絵)に対する命名の有無と 教授方略(指示一命名、包摂)の効果を検討した。その結果、 ①新奇語を上位水準名として解釈 する者は大学生の方が多く、基礎水準名として解釈する者は幼児の方が多かった、 ②絵の名前を 命名することによって、幼児、大学生ともに、新奇語を基礎水準名として解釈する者が増加した、

③大学生では、包摂方略によって新奇語を上位水準名として解釈する者が増加し、基礎水準名と して解釈する者が減少したが、幼児ではそのような変化はなかった。以上の結果から、新奇語の 解釈は、事例の命名、教授方略および被験者の既着知識に依存することが示唆された。

先に述べたCallanan (1989)の研究は、 1事例よりも2事例で教授した場合に、新奇語が上 位水準名として解釈されることを示したが、そこで用いられた2事例はイヌとネコ(ともに四つ 足動物)であった。杉村・滞村(1994)は、 2事例の組合せによって新奇語の解釈が異なるので はないかと考え、次の教授事例の組合せを設定したO (彰同じ基礎水準(犬)に属する2事例から なる基礎対条件(イヌlとイヌ2) 、 ②同じ中位水準(四つ足動物)に属する2事例からなる中位

'現在香芝市立関屋小学校

209

(3)

210 杉 村   健・足 立 寛 之

対条件(イヌlとネコ) 、 ③同じf二位水準(生き物)に属する2事例からなる上位対条件(イヌl とトンボ) 。これらのうち、第2の条件がCallananの研究と同じ組合せである。また、従来の 研究では新奇語は1回しか教授されなかったが、日常/主活で幼児に新しいことを教えるのには、

親や保育者は何回も繰り返し教えるのが普通である。そこで、新奇語を1回だけ教授したあとと、

さらに3回繰り返して教授したあとでテストを行った。その結果、 ①幼児の場合は、基礎対条件 では新奇語を基礎水準名として解釈し、上位対条件では上位水準名として解釈する者が最も多く、

教授回数の増加によって、卜位水準名として解釈する者が減少し、 .1:位水準名として解釈する者 が増加した、 ②大学生の場合は、どの条件でも新奇語を基礎水準名として解釈する者が巌も多かっ たが、教授回数による変化はなかった。

杉村・津村(1994)の研究では、 2つの教授事例に包摂方略で1つの新奇語を命名して両者の 仲間関係を強調したが、本研究では、包摂方略で対のI一一一万の事例(教授事例)に新奇語を命名し たとき、命名しなかったもう一方の事例(併存事例)の特徴が、新奇語の解釈にどのような影響 を及ぼすかを検討する。そのために次の4条件を設定した(表1参照) 0 (丑教授事例のみで併存 事例を持たない統制条件(イヌ.) 、 ②教授事例と同じ基礎水準に属する併存事例を持つ基礎条 件(イヌ1とイヌ2) 、 ③教授事例と同じt'fe水準に属する併存事例を持つ中位条件(イヌ1とネコ) 、

④教授事例と同じL位水準に属する併存事例を持つ上位条件(イヌlとトンボ) 。また、教授[y│

数の効果を検討するために、新奇語を1回だけ教授したあとでテストを行い、さらに3回繰り返 して教授(4回教授)したあとで2回目のテストを行った。

本研究では、 1つの教授事例からなる統制条件を設けたので、統制条件と併存事例を持つ3つ の条件の結果を比較することによって、併存事例が新奇語の解釈にどのような役割を果たしてい るかを明らかにすることができる。先の研究結果は、命名による階層関係の知識の活性化(幼児 の場合)と、限定された仲間の認識(大学生の場合)によって説明されたが、本研究では、等価 性と差異性の認識という観点(秦, 1978; Jeffrey,1970; Stevenson,1972)から、新奇語の解釈 に対するアプロ‑チを試みる。

基礎条件において、 "イヌlはトルビ‑ (新奇語)の仲間である"と教授されたとき、トルビ‑

という命名によって"イヌ】とイヌ2はともにトルビ‑‑太の仲間である"という等価件が認識さ れるならば、テストでは、イヌ1だけでなく大であるイヌ。とイヌ。も、トルビーの仲間として選択

され、新奇語が基礎水準として解釈されたと判定される。これに対して、 ̀̀ィヌ1はトルビーの 仲間であるが、イヌ2はトルビ‑の仲間ではない"という差異性が認識されるならば、テストで は、イヌ1だけがトルビ‑の仲間として選択され、新奇語がド位水準として解釈されたと判定さ れる。同様に中位条件において、 ̀̀ィヌ1とネコがともにトルビ一二動物の仲間である"という 等価性が認識されるならば、テストでは、犬だけでなく動物であるウマとシカも、トルビ‑の仲 間として選択され、新奇語が中位水準として解釈されたと判定される。これに対して、 "イヌ.

はトルビーの仲間であるが、ネコはトルビーの仲間ではない"という差異性が認識されるならば、

テストでは、イヌ1だけがトルビーの仲間として選択され、新奇語が卜位水準として解釈された と判定される。上位条件においても、イヌ1とトソポが生き物であるという等価性が認識される ならば、テストでは、生き物であるスズメとキンギョまで選択され、新奇語がL位水準として解 釈されたと判定される。 2事例の差異性が認識されるならば、先の条件と同様に、テストではイ

ヌ1だけが選択され、新奇語が下位水準として解釈されたと判定される。

要約すると、本研究は次のような仮定に立っている。新奇語の教授によって2事例の等価性が

(4)

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果 211

認識されるならば、新奇語が各教授条件に対応する水準として解釈され、 2事例の差異性が認識 されるならば、新奇語はどの条件でも下位水準として解釈される。

方  法

実験計画と被験者

2×4 ×2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の年齢(幼児、入学生) 、第2 の要因は教授事例条件(統制、基礎、中位、上二位)であり、ともに被験者間要因であった。第3 の要因は教授回数(1回、 4│u│) 、第4の要因は課題の種類(/I:̲き物、食べ物)であり、ともに 被験者内要関であった。

被験者は幼稚園年長児80名(男児39名、女児41名)と大学牛80名(男子32名、女子48名)であ り、それぞれの男女の数と平均年齢がほぼ等しくなるようにして4条件に割り当てた。幼児の平 均年齢は5:08か5:09 (範関はともに5:02‑6:02)であった。

材 料

表1に'Jミすように、国立国語研究所(1981)の表を参考にして、出現頻度が高い牛き物に属す る7事例と、食べ物に属する7事例を用意した。これらの事例は、 1つずつ5.0cmX6.0cmの白 紙に線画で描かれている。教授事例と併存事例は6.0cmX14.0cmの台紙に横に並べて貼りつけ、

テスト事例は6.0cmX7.0cmの台紙に1枚ずつ貼りつけた。イヌについては、形と模様で異なる ものを4枚作り、イヌ1、イヌ2、イヌ。、イヌ。とした。リンゴについては、形と薬の有無で異なる ものを4枚作り、 1)ソゴ1,リンゴ2、リソゴ,、リンゴ。とした。

基礎条件は、イヌまたはリソゴという基礎水準に属する2事例からなり、中位条件は、動物ま たは果物という中位水準に属する241:例からなり、 L位条件は、生き物または食べ物という上位 水準に属する2事例からなっている。テストIL好例は、教授事例である卜位水準事例、教授事例に はない薬礎水準事例、中位水準事例およびL位水準事例からなっている。

手続き

被験者と実験者が机をはさんで向かい合って雁り、名前や年齢などを尋ねたあとで実験を行っ 表1 教授事例とテスト事例

'「 V的.lLだffi IXぺ杓X担

教授事例 統制条件

蝣V‑一躍 蝣fc n

中位条件 I二位条件

ヌ   ヌ   ヌ   ヌ イ   イ   イ  

̲c

ヌ   コ   ソ

ィ︑ネ ト

II ‑‑ 二日

リソゴ、 リンゴ2 リソゴ1 ミカソ リソゴ1 オニギリ

テスト事例

ド位水準       イヌ1      リソゴ1

基礎水準       イヌ3   イヌ4      リソゴ, リソゴ。

中位水準        ウマ   シカ      バナナ  ブドウ

l二位水準        スズメ  キンギョ      ダイコン ケーキ

(5)

212 杉 村   健・足 立 寛 之

た。各被験者は4つの条件のいずれかで、生き物課題と食べ物課題について教授とテストを受け た。半数の者には生き物課題を、残りの者には食べ物課題を先に実施した。

幼児の場合には、最初に、描かれている絵の名前が言えるかどうかをチェックした。殆どの者 がlEしい名前を言えたが、間違えた場合には正しい名前を教えた。続いて、小さい人形を見せな がら"ここにお人形さんがいるね。このお人形さんは、人形の国からきたので、 ○○ちゃんの知

らない言葉を使います。よく聞いていてね"と教示し、その後で条件別に教授を行った。

①統制条件:イヌ1 (リソゴl)を提示し、 "このお人形さんのL:qでは、これはトルビー(ブル ナー)の仲間です"と教授した。

②基礎条件:イヌ1とイヌ2(リソゴ1とリソゴ2)を提示し、イヌ1 (リソゴ1)を指差して"この お人形さんの国では、これはトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授した。

③中位条件:イヌ1とネコ(リソゴ1とミカソ)を提示し、イヌ1(リソゴ1)を指差して̀̀このお 人形さんの国では、これはトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授した。

④上位条件:イヌ1とトソボ(リソゴ1とオニギリ)を提示し、イヌ1 (リソゴ1)を指差して̀̀こ のお人形さんの国では、これはトルビー(ブルナ‑)の仲間です"と教授した。

教授事例を取り去ったあとで、 7枚のテスト事例を所定の配列によって同時に提示し、 "この 中で○○ちゃんがトルビー(ブルナー)だと思うものをみんな、お兄ちゃんにちょうだい。みん なだよ''と言って、事例を選択させた。そのあとで、選択された事例について、 ̀̀○○ちゃん、

どうしてこれらをトルビー(ブルナ‑)と思ったのかな"と言って、選択した理由を尋ねた。

テスト事例を取り去ったあとで、再び人形と教授事例を提示し、 "もう1回やってみようか'' と言って、教授を続けて3回繰り返した。そのあとで、 "○○ちゃん、トルビー(ブルナ‑)と 言ってみで'と言って、新奇語が言えることを確認した。再びテスト事例を提示し、先と同様に テストを行って選択理由を求めた。

結  果

テスト事例の選択の仕方に基づいて、教授された新奇語(トルビー、プルナ‑)が、どの水準 として解釈されているかを判定した(表1参照) 0

①下位反応老:下位水準(教授)事例だけを選択した者で、新奇語をド位水準(イヌ1、リソ ゴ1)として解釈していると判定した。

②基礎反応老:下位水準事例と基礎水準事例の3事例を選択した者で、新奇語を基礎水準(イ ヌ、リソゴ)として解釈していると判定した。

③中位反応者:下位水準事例、基礎水準事例、中位水準事例の5事例を選択した者で、新奇語 を中位水準(動物、果物)として解釈していると判定した。

④L位反応老: 7事例全部を選択した者で、新奇語をL位水準(生き物、食べ物)と解釈して いると判定した。

各反応者の割合について、生き物課題と食べ物課題の間に顕著な違いがなかったので、表2に は、 2つの課題を込みにした値を示してある。課題は被験者内要因であったので、以Fに述べる 統計的検定は課題別に行った。

最初に、教授条件の効果をみるために、 2 (条件) ×k (反応者)のx2検定を行い、有意差

があった場合には、条件差が大きい反応者について2 (条件) × 2 (特定の反応者とそれ以外)

(6)

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果 213

のx2検定を行った。幼児では1回教授でも4回教授でも条件間に有意差がなかった。大学生で は、 1回教授の場合に下位反応者が基礎条件で最も多く(生き物課題ではすべて♪く.01、食べ物 課題では統制条件♪く.01、上位条件♪く.05) 、基礎反応者は中位条件が基礎条件よりも多かった

(生き物課題♪く.05) 。 4回教授の場合、下位反応者が統制条件よりも基礎条件で多く(食べ物 課題♪く.05) 、基礎反応者は基礎条件よりも統制条件で多かった(食べ物課題♪く.01) 。次に、

教授回数の効果をみるために、同一‑条件の1回教授と4回教授の反応者を、特定の反応者とそれ 以外に分けて、 McNemarの変化の検定か二項分布による検定を行った。しかし、幼児、大学生 ともに教授回数の有意な効果はなかった。

最後に、幼児と大学生を比較するために、 1回教授、 4回教授のそれぞれについて、条件ごと に2 (幼児、大学生) ×k (反応老)のx2検定を行った。 1回教授では、下位反応者は基礎条 件で大学生の方が多く(食べ物課題♪く.05) 、基礎反応者は中位条件で大学生の方が多かった (′トき物課題♪く.05) 。 t位反応者は統制条件(両課題♪く.05) 、中位条件(両課題pく.05)と もに幼児の方が多かった。 4 r自1教授では、下位反応者は上位条件で大学生の方が多く(食べ物課 題♪く.05) 、基礎反応者は統制条件(生き物課題♪く.05)と中位条件(生き物課題♪く.05)で大 学生の方が多かった。上位反応者は統制条件(両課題♪く.05) 、中位条件(両課題♪く.05)とも

に幼児の方が多かった。条件を込みにした平均でも、大学生は下位反応者と基礎反応者が多く、

幼児は上位反応者が多かった。

表2 テストにおけるF位反応者、基礎反応者、中位反応老、上位反応者の割合(%) 1回教授       4回教授

下位 基礎 中位 上位その他   下位 基礎 中位 上位その他 zm&

統制条件 基礎条件 中位条件 上位条件

i n   o o   o o   i n 1

 

1

 

1 o   o   o   o o

CO '‑(  CO i‑H

c o   o   e n   i n 1   1   1 C O   C O   L O C O   C O   C O C O   O   0 0   o O

i‑I CO i‑t t‑4

L

O   C O   O   o O

iI C%3iI

0 0   O   O   o O

r*J ,‑i CO H

i n   o   c o   e n l   1 o o   o o   m   c o

CM t‑I C^  CO

m   o   c o   o

c^  ^r csi cm

平 均

I蝣}蝣・蝣上

統制条件 基礎条件 中位条件 上位条件

cr>  cr>  in co

o   o   o   o C O   C O   c O 2             1     2 c o   c o   c o   c o

LO CO t﹂>  LO

C O   C O   O   L O

C^  <﹂>  CM  (N

O   0 0   O   O

I

C O   O   O   O l o   o o   m   o o 1

 

1

 

1 o   i n   i n   o

m csi ‑q<

C O   O   c O   C O c r

>  

  t

﹂ >

    c o   ‑

* r

平 均    33  50 15      42  40 13

(註) 2つの課題の平均値を、少数点以ド1位で四捨五入したので、境の合計が100%を超える値が多

くなっている。

(7)

ME! 杉 村   健・足 vL 寛 之

読 請

幼児の場合は、 1回教授でも4回教授でも条件間に有意差がなく、また、教授卜]1数の有意な効 果もなかった。特に、統制条件と他の条件の間に有意差がなかったので、併存事例の存Il三が新奇 語の解釈を変えるような働きを持たなかったといえる。併存事例を持つ3つの条件の結果も、教 授事例と併存事例の等価性の認識を仮定した予測、および両事例の差異性の認識を仮定した予測 のいずれとも‑ ・致しなかった。従って、幼児は併存事例によって等価性の認識も差異性の認識も 促されなかったといえる。

次に、杉村・津村(1994)と本研究の結果の主な榊違点について考察する。 1回教授でも4回 教授でも、上位条件の上位反応者は本研究(1回教授、 4回教授とも18%)よりも欠の研究(1 回教授45%、 4回教授40%)の方が多かった。怖'/.反応者が多かったことについて、先の研究で は、上位事例対に与えた仲間関係を強調する包摂方略教授によって、その'好例対の水準にふさわ

しい階層的知識が活性化され、それによってテスト事例が選択されると解釈した。本研究で提唱 した2つの教授事例の等価性という観点からは、 "イヌlとトソボがともにトルビー‑生き物で ある"という等価性が認識され、その認識を媒介として、テストでスズメとトンボまで選択した と解釈できる。先の研究では別の可能性として、テスト事例を全部選択すれば日立反応者になる ので、 L位条件でf二位反応者が多かったのは、単に̀̀全部選ぶ"という方略を採用したことによ

るとも考えられた。本研究でも、テストの際に̀̀トルビーと思うものをみんなちょうだい"と言̀っ て"みんな"を強調しているので、上位反応者は"全部選ぶ'方略を用いてテスト事例を選択し た可能性がある。もしそうだとしても、本研究よりも9L;の研究でf二位反応者が著しく多かったの は、等価性の認識によるものと解釈することができる。

4回教授の基礎条件では、下位反応者は先の研究(10%)よりも本研究(40%)の方が多く、

基礎反応者は本研究(18%)よりも先の研究(38%)の方が多かった。薬礎条件の事例はイヌ.

とイヌ2であるが、先の研究では、両者の仲間関係を強調して1つの新奇語を命名したので、そ れによって"イヌ1とイヌ2はともにトルビー‑夫である"という等価性が認識され、その等価性 の認識に基づいて、テストではイヌ。とイヌ4を選択したと考えられる。本研究の教授ではイヌ1だ けに新奇語を命名したので、 "イヌ1はトルビーの仲間であるが、イヌ2はトルビーの仲間ではな い"という差異性が認識され、テストではイヌ1だけを選択したと考えられる。 4LL.j教授のl伸ll.

条件では、中位反応者は本研究(13%)よりも先の研究(35%)の方が多かった。先の研究では 中位条件の教授において、 "イヌlとネコはともにトルビー‑動物である"という等価性が認識

され、それを媒介として、テストではウマとシカまで選択したと考えられる。

大学生の場合は幼児と異なって、条件問に顕著な有意差があった。まず、 1回教授、 4回教授

ともに、下位反応者は統制条件よりも基礎条件の方が著しく多く、また、中位条件と上位条件よ

りも多かった。基礎条件では、形と模様が異なるイヌ1とイヌ2が提示され、イヌ1だけに̀̀トルビー

の仲間"という教授が行われた。この教授によって、 ̀̀ィヌ1とイヌ2はともにトルビー‑太であ

る"という等価性が認識されるならば、テストでは、イヌ1に加えてイヌ。とイヌ。を選択するはず

である。しかし、このような等価性の認識に基づいて選択した基礎反応者は、 3割前後に過ぎな

かった。一方、約6割の者がテストで下位事例(イヌl)だけを選択し、下位反応者と判定され

た.テストにおける選択は、教授において"イヌ1はトルビーの仲間であるが、イヌ2はトルビー

の仲間ではない"という差異性が認識され、テストにおいても、 ̀̀ィヌ,とイヌ。もトルビーの伸

(8)

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果 215

間ではない"と判断したことによると考えられる。このことは、形と模様が異なる2事例のI‑方 だけに新奇語を命名すると、たとえ"仲間"という包摂方略を用いても、教授内容が命名された 教授事例だけに限定され、 2事例間の差異性の認識を強める働きがあることを示唆する。

4回教授では、基礎反応者は基礎条件よりも統制条件の方が有意に多く(1回教授でも同じ傾 向) 、約半数の者がテストで教授事例のイヌ,に加えて、形と模様が異なるイヌ,とイヌ。を選択し ている。統制条件でこのような選択をするためには、教授事例(イヌ1)とテスト事例(イヌ。と

イヌ。)の等価性の認識が必要であり、教授において"イヌ1‑トルビ‑‑犬"という認識が形成 されたことを示唆する。従って、基礎条件のように2つの下位事例を提示して一方だけに命名し た場合には、 2事例の差興性が強調されて新奇語が下位水準として認識されやすいが、統制条件 のように1つの下位事例だけを提示して命名した場合には、基礎水準として認識されやすいとい

:七1 ri、

次に、先の研究と本研究の主な相違点について考察する。 1回教授でも4lul教授でも、基礎条 件の卜位反応者は先の研究(ll"1教授、 4I"l教授とも22%)よりも本研究(1回教授63%、 21"1 教授60%)の方が著しく多く、基礎反応者は本研究(1回教授33%、 2L‖l教授25%)よりも先の 研究(I N教授53%、 4回教授58%)の方が多かった。基礎条件で捉')こする事例対は、 2つの研 究でまったく同じであったが(ともにイヌ1とイヌ2) 、先の研究では、 2事例の仲間関係を強調

して1つの新奇語を命名し、本研究では1事例だけに新奇語を命名した。 2つの研究結果の相違 は、九の研究では、 2つの卜位事例の等価性に基づいて新奇語が基礎水準として認識されたのに 対し、本研究では、 2つの卜杜事例の差異性に基づいて新奇語が下位水準として認識されたこと によると考えられる。 1回教授でも4回教授でも、中位条件の中位反応者は本研究(1回教授、

4回教授とも13%)よりも先の研究(1回教授33%、 4回教授35%)の方が多かった。先の研究 では、 2事例に1つの新奇語を命名したので、 "イヌとネコはともにトルビ‑‑動物である"と いう等価性が認識され、それによって、テストでは動物であるウマとシカまで選択したと解釈す ることができる。

幼児と大学′上:.の間には次のような相違があった。卜位反応者の平均値は幼児よりも大学牛の方 が多く、特に基礎条件で有意差があった。先に述べたように、ド位反応者は2つの教授事例の差 異性に基づいて、新奇語を卜位水準として認識していると考えられるので、幼児よりも大学生の 方が卜位事例の差異性を認識しやすいといえる。このことは、下位カテゴリ‑の獲得が幼児にとっ て肘難である(Mervisら, 1994)ということと関係があるかもしれない。基礎反応者の平均値 でも幼児よりも大学生の方が多く、特に中位条件と統制条件で有意差があった。基礎反応者は教 授舶列に与えた新奇語を基礎水準として認識し、教授事例とテスト事例の等価性に基づいて選択 していると考えられるので、幼児よりも大学生の方がこの種の等価性を認識しやすいといえる。

‑方、 L位反応者の・均は大学生よりも幼児の方が多く、特に統制条件と中位条件で有意差が

あった。テストにおいて上位水準事例まで選択するのには、教授事例とテスト事例がともに生き

物であるという等価性の認識が必要である。統制条件ではイヌlLか提'Jミされていないので、そ

れとテストの中位水準事例やL位水準事例が等価であると認識されなくてはならない。また、中

位条件ではイヌ1とネコがテストの中位水準事例やl二位水準事例と等価であると認識されなくて

はならない。等価性という観点からは、入学生よりも幼児の方が等価性の範囲が広いという解釈

も‖J能であるが、幼児の仲間判断における過剰般化の傾向(Sugimura,1992)や"全部選ぶ''

方略の使用(杉村・滞村, 1994)も考慮しなくてはならない。大学生の上位反応者はほんの僅か

(9)

216 杉 村   健・足 立 寛 之

であった。この点について、先の研究では"仲間"についての認識が幼児よりも限定されている と考えたが、 1つの事例だけに新奇語を命名した本研究の場合には、幼児よりも大学生の方が差 異性をより克く認識するので、等価性の範囲がより限定されたと解釈することができる。

最後に、幼児も大学生も有意な教授回数の効果はなかったが、標本値では幼児も大学生も、 1 回教授から4回教授にかけて下位反応者が増加し、基礎反応者が減少する傾向があった。これに 対して先の研究では、幼児の場合は1回教授から4回教授にかけて下位反応者が減少し、上位反 応者が増加する傾向があった。これは、 2事例に1つの新奇語を与える教授を繰り返すことによっ て、上位水準における2事例の等価性の認識が強くなったことを示唆する。本研究では、 1つの 事例に新奇語を与える教授を繰り返したので、 2事例の等価性よりも、 1つの事例と新奇語との 連合が強くなり、 "イヌ1はトルビーの仲間であるが、イヌ2やネコはトルビ‑の仲間ではない'' という差異性の認識が強められたと考えられる。

要  約

本研究の目的は、幼児と大学生の新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果を検討する ことであった。本研究では、獲得された等価性と差異性の認識という観点から、次のように仮定 した。新奇語の教示によって2事例の等価性が認識されるならば、新奇語が各教授条件に対応す る水準として解釈され、 2事例の差異性が認識されるならば、新奇語はどの条件でもド位水準と して解釈される。 1事例のみの統制条件、 2事例からなる基礎条件、中位条件、上位条件の各条 件で、 1事例だけに、包摂方略の下で新奇語を1回および4回教授し、その後で、新奇語がド位 水準、基礎水準、中位水準および上位水準の、いずれの水準として解釈されたかをテストした。

(a)幼児では、統制条件と他の3つの条件の日嗣こ有意差がなかった (b)入学生では、卜位 反応者は基礎条件で最も多く、基礎反応者は基礎条件よりも統制条件で多かった。 (C)卜位反 応者は幼児よりも大学生が多く、上位反応者は大学生よりも幼児が多かった  d)幼児も大学 生も、教授試行の増加によって下位反応者が増加し、基礎反応者が減少する傾向があった。以」二 の結果は、獲得された等価性と差異性の認識、及び先の研究結果との比較によって議論された。

引用文献

Callanan.M.A. 1985 How parents label objects for young children: The role of input in the acquisition of category hierarchies. Child Development, 56,508‑523.

Callanan,M.A. 1989 Development of object categories and inclusion relations: Preschoolers hypotheses about word meanings. Developmental Psychology, 25 , 207‑216.

Callanan,M.A. ,Repp,A.M. ,McCarthy,M.G. , & Latzke.M.A. 1994 Children s hypotheses about word meaning: Is there a basic level constraint? Journal of Experimental Child Psychology, 57,108‑138.

秦 政子1978 等価性の獲得 北尾倫彦・杉村 健(編)児童学習心理学 東京:有斐閣 89‑104弱

Jeffery.W.E. 1970 Transfer. In H.W.Reese & L.P.Lipsitt (Eds.) , Ex♪・erimental child Psychology.

New York: Academic Press,Pp.223‑262.

国立国語研究所1981幼児・児童の連想語嚢表 東京:東京書籍

Mervis,C.S..Johnson,K.E. , & Mervis,C.A. 1994 Acquisition of subordinate categories by

3‑year‑olds: The role of attribute salience, linguistic input, and child characteristics.

(10)

新奇語の解釈に及ぼす併存事例と教授回数の効果 217

Cognitive Development , 9 , 211‑234.

Rosch.E‑ 1987 Principles of categorization. In E.Rosch & B.B.Lloyd (Eds.) , Cognition and categorization. Hillsdale.N.J. : LEA, Pp.27‑48.

Rosch.E‥ Mervis.C.B. , Gray.W.D., Johnson,D.M. , & Boyes‑Braem,P. 1976 Basic objects in

natural categories. Cognitive Psychology, 8 , 382‑439.

Stevenson , H. W. 1972 Children's learning. New York : Appleton一一Century‑Crofts ,Pp. 47‑55.

Sugimura.T. 1992 Effects of teaching strategies and existing knowledge on acquisition of basic and superordinate concepts. Psyckologia, 35, 155‑163.

杉村・健・滞村 棉1994 新奇語の解釈に及ぼす教授事例と教授回数の効果 奈良教育大学紀要, 43(1) ,15ト162.

く付記>本研究を行なうにあたり、大和郡山市立平和幼稚園の先生と園児および奈良教育大学の学生の協力

を得ました。記して感謝の意を表します。

(11)

218

Effects of Pair Type of Concurrent Instances and Number of Instruction Trials on the Interpretation of Novel Words

Takeshi Sugimura and Hiroyuki Adachi

(De伽rtment of Psychology, Nara University of Education, Nara 630 , Japan) (Received April 3, 1995)

The purpose of this experiment was to examine the effects of concurrent instances and instruction trials on the interpretation of novel words in kindergarten children and college students from the viewpoint of subjects cognition of acquired equivalence and distinctiveness of instances.

The subjects were taught the novel word one and four times to one instance in each condition under the inclusion strategy and then tested whether the subjects interpreted the novel word as the subordinate, the basic, the intermediate, or the superordinate level of categories.

For the living‑thing set the instruction instances were dogi for the control, dogi and dog2 for the basic, dog, and a cat for the intermediate, and dogi and a dragonfly for the superordinate conditions. The novel word (torubi) was taught to only dogi for all conditions. The test instances were dogi for the subordinate, dog3 and dog4 for the basic, a horse and a deer for the intermediate, and a sparrow and a goldfish for the superordinate categories. For the food set the instruction instances were appld, appld and applez, applei and an orange, and applei and a rice ball for each condition, respectively. The novel word (buruna) was taught to only applei for all conditions.

The test instances were applei, apple3, apple,,, a banana, a radish, and a cake.

The instruction instances were presented with a puppet and the subjects were taught to dogi (appleO, "This is a kind of torubi (buruna) in the puppet country.

Then seven test instances were presented and the subjects were asked to select the instances which they thought fit to torubi (buruna). After the subjects were taught the novel word three more times, they were tested again. Based on the selection patterns in the tests, the subjects were classified into four levels of categories mentioned above.

(a) For children the selection patterns between the control and the other three conditions did not differ significantly.

(b) For adults the number of subordinate subjects was greatest in the basic condition. The number of basic subjects was greater for the control than for the basic conditions.

(c) The number of subordinate subjects was greater for adults than for children, while the number of superordinate subjects was greater for children than for adults.

(d) The number of subordinate subjects tended to increase and the number of basic subjects tended to decrease with increasing instruction trials for children and adults.

The results were discussed in terms of cognition of acquired equivalence and

distinctiveness and in relation to our previous findings.

参照

関連したドキュメント

本学級の児童は,89%の児童が「外国 語活動が好きだ」と回答しており,多く

ただし、このBGHの基準には、たとえば、 「[判例がいう : 筆者補足]事実的

今回の調査に限って言うと、日本手話、手話言語学基礎・専門、手話言語条例、手話 通訳士 養成プ ログ ラム 、合理 的配慮 とし ての 手話通 訳、こ れら

Q7 建設工事の場合は、都内の各工事現場の実績をまとめて 1

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

○池本委員 事業計画について教えていただきたいのですが、12 ページの表 4-3 を見ます と、破砕処理施設は既存施設が 1 時間当たり 60t に対して、新施設は

、「新たに特例輸入者となつた者については」とあるのは「新たに申告納税

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から