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内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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内 容 の 要 旨

背景

早期胃癌の組織型は、分化度により分化型癌と未分化型癌に分類される。さらに分化型癌は、乳頭腺 癌と管状腺癌とに亜分類されている。様々な病理学的研究により、乳頭腺癌は管状腺癌と比較すると、

肝転移率、リンパ節転移率、脈管侵襲陽性率が高いと報告され、生物学的悪性度が高い癌であることが 明らかにされている。また増殖の過程で組織型が低分化腺癌に移行することがあるとも報告されてい る。しかしながら、従来の内視鏡検査により、乳頭腺癌を術前に診断にすることは不可能であった。

我々は、narrow-band imaging(NBI)併用胃拡大内視鏡検査で観察された、早期胃癌の円形の腺窩辺 縁上皮(marginal crypt epithelium、MCE)で囲まれた円形の窩間部上皮下に血管が存在する所見を vessels within epithelial circle(VEC)pattern (円形上皮内血管パターン)と呼称し、乳頭腺癌に特徴的 な所見であると報告した。この VEC pattern が乳頭腺癌の術前診断に有用であるか否か、また、VEC pattern を呈する早期胃癌は VEC pattern を呈さない早期胃癌と比べ、臨床病理学的所見が異なるか否

氏 名・(本籍)

学 位 の 種 類 報 告 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員

かね

 光

みつ

 高

たか

 雄

(鳥取県)

博 士 (医 学)

甲第 1539 号

平成 27 年 3 月 24 日

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

The vessels within epithelial circle(VEC)

pattern as visualized by magnifying endos- copy with narrow-band imaging(ME-NBI)is a useful marker for the diagnosis of papillary adenocarcinoma: a case-controlled study

(早期胃癌に対する狭帯域光観察併用拡大内 視鏡(magnifying endoscopy with narrow- band imaging、ME-NBI)により観察される vessels within epithelial circle(VEC)pattern は乳頭腺癌の診断に有用な指標である:症例 対照研究)

(主 査) 福岡大学 教 授 松 井 敏 幸

(副 査) 福岡大学 教 授 向 坂 彰太郎

福岡大学 教 授 山 下 裕 一

福岡大学 准教授 青 柳 邦 彦

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かを求めるため、症例対照研究を行った。

対象と方法

2006 年 1 月から 2011 年 11 月の期間に福岡大学筑紫病院で内視鏡を用いて切除された分化型の早期 胃癌 395 病変を対象とした。術前の生検の病理組織診断にて未分化型癌と診断された病変は除外した。

そのうち、NBI併用拡大内視鏡で VEC pattern を呈した全ての病変を case群 1 例につき、腫瘍径・肉眼 型を対応させた VEC pattern を呈さない control群 2 例を対象から抽出し、症例対照研究を行った。こ れらの 2 群について、(1)VEC pattern陽性の癌と組織学的乳頭状構造の相関、(2)VEC pattern陽性 の癌における未分化型癌の混在する頻度と粘膜下層浸潤を伴う頻度を求め比較した。

【VEC pattern の定義】

NBI併用拡大内視鏡観察において、円形の腺窩辺縁上皮(MCE)で囲まれた円形の窩間部上皮下に血 管が存在する所見を vessels within epithelial circle(VEC)pattern と定義した。病変の一部分にでも VEC pattern が観察された場合、VEC pattern陽性と定義した。一方、VEC pattern を全く認めなかっ た場合、VEC pattern陰性と定義した。

【組織学的な乳頭状構造の定義】

病理組織学的所見をゴールドスタンダードに用いた。具体的には、下記の 2 つの組織学的所見をいず れも認めた場合、乳頭状構造が陽性であると定義した。

① 組織学的に円柱状の腫瘍細胞が、幅の狭い間質を伴い、丈の高い指状の突起を示す所見。

② 間質を取り囲む類円形の癌上皮構造が、遊離して観察される所見。

結果

全対象から VEC pattern陽性の癌は 35 病変(case群)、VEC pattern陰性の癌(control群)は 70 病変 が抽出され解析対象とした。VEC pattern陽性群と VEC pattern 陰性群の臨床病理学的特徴を比較した が、両群に有意な差異は認められなかった。

組織学的な乳頭状構造の頻度は、VEC pattern陽性群において 94.3% (33/35)、VEC pattern陰性群 で 8.6% (6/70)であった。NBI併用拡大内視鏡検査で捉えた VEC pattern の存在は、組織学的乳頭状構 造の存在と非常に強い相関を認めた (P<0.001、カイ二乗検定)。NBI併用拡大内視鏡検査で観察された VEC pattern が、乳頭状構造を診断する感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を求めると、それぞれ、

84.6%(33/39)、96.9% (64/66)、94.2% (33/35)、91.4% (64/70) であった。また、未分化型癌の混 在する頻度は、VEC pattern陽性群において 22.9% (8/35)、VEC pattern陰性群において 2.9% (2/70)

であった。すなわち VEC pattern陽性群は陰性群より統計学的有意差を持って高頻度に未分化型癌を混 在していた (P=0.002、カイ二乗検定)。VEC pattern陽性胃癌に未分化型癌の混在する感度、特異度、

陽性的中率、陰性的中率を求めると、それぞれ、80.0% (8/10)、特異度は 71.6% (68/95)、陽性的中率 は 22.9% (8/35)、陰性的中率は 97.1% (68/70)であった。粘膜下層に浸潤を認めた頻度は、VEC pattern陽性群において 25.7% (9/35)、VEC pattern陰性群において 10% (7/70)であり、統計学的に 有意差を持って、VEC pattern陽性群に粘膜下層浸潤を高頻度に認めた (P=0.045、カイ二乗検定)。

結論

本研究の結果により、NBI併用拡大内視鏡検査で観察される VEC pattern は組織学的な乳頭状構造を

診断するのに非常に有用な指標であることが判明した。さらに、 VEC pattern陽性の早期胃癌の約 1/4

の病変に未分化型癌の混在や粘膜下層に浸潤を認め、VEC pattern が術前に分化型早期胃癌癌が高い悪

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性度を有していることを予測する上で有用なマーカーとなる可能性が考えられた。

審査の結果の要旨

本論文は、narrow band imaging(NBI)併用拡大内視鏡検査で観察される円形上皮内血管パターン

[vessels within epithelial circle(VEC)pattern]が、乳頭腺癌の術前診断に有用であるか否かを検討し たものである。分化型早期胃癌 105 病変を対象とし、症例対照研究を行った。結果として、VEC pattern は、組織学的乳頭状構造の存在と非常に強い相関を認めた。また、VEC pattern陽性胃癌は VEC pattern陰性胃癌と比較して、統計学的有意差をもって、高頻度に未分化型癌の混在、高い粘膜下 層浸潤率を呈していた。

1.斬新さ

これまで NBI併用拡大内視鏡を用いた様々な知見が報告されてきた。しかし、NBI併用拡大内視鏡に よる胃癌の組織型診断にアプローチする報告はなかった。胃癌の組織型の鑑別に対する NBI併用拡大内 視鏡の有用性を示した唯一の報告であり、極めて斬新である。

2.重要性

胃乳頭腺癌は管状腺癌と比較して、生物学的悪性度が高く、その臨床的取り扱いには注意が必要であ ると報告されてきた。しかし、従来の内視鏡検査により、胃乳頭腺癌を術前に診断にすることは不可能 であった。本論文は、NBI併用拡大内視鏡により術前に乳頭腺癌を診断し得る可能性を示した点で重要 であった。

3.研究方法の正確性

NBI併用拡大内視鏡診断には比較的主観が入る余地がある。そこで、内視鏡診断を行った 2 名の内視 鏡医の観察者間一致率を検討した。また、病理組織診断は、NBI併用拡大内視鏡所見を知らない病理医 によって診断した。以上の点から検討の正確性には、配慮がなされていると考える。

4.表現の明瞭性および結論

本論文は英語論文であり、Gastric Cancer誌に受理・掲載されている。研究の目的、対象と方法、結 果、結論、及び考察において国際的認知が得られたものと考える。

5.主な質疑応答

Q1: VEC pattern が一か所でもあれば VEC pattern陽性胃癌と判定している。病変内に VEC pattern を広く認める病変は VEC pattern を狭い範囲で認める病変と比較して未分化型の混在や粘膜下層 浸潤の頻度は高いのか ?

A1: VEC pattern を病変内に広く認める病変に未分化癌の混在、粘膜下層浸潤の頻度が高かった。

Q2: VEC pattern は経時的に、その病変内に占める範囲が広がっていくか?

A2: 本研究から経時的な変化については、言及できない。

Q3: VEC pattern が 1カ所でもあれば VEC陽性胃癌と定義するとあるが、VEC pattern がごく狭い範 囲の病変も、その悪性度について結論づけられるか?

A3: 本研究は retrospective study であり、かつ早期胃癌 105 病変と少数での検討である。真の悪性度

を証明するためには多数例を用いた前向き研究が必要であり、今後の課題と考える。

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Q4: VEC pattern陽性の病変は腫瘍径が比較的小さいものでも粘膜下層浸潤している可能性はあるの か?

A4: 本研究の結果から、腫瘍径の小さい病変も VEC pattern陽性であれば粘膜下層浸潤している可能性 が高いと考察している。

Q5: 病変内の VEC pattern の占める割合で、グレード分類可能か?

A5: 本研究は retrospective に画像を評価しているため、詳細なグレード分類は難しい。グレード分類 するためには、前向きに評価する必要がある。

Q6: 病変の中心部に VEC pattern は多く認められるのか? また、組織学的乳頭状構造の分布はどう か? 

A6: 本研究の病変において、VEC pattern は辺縁よりも中心付近に多く存在していた印象がある。組織 学的にも、中心付近に乳頭状構造は多かった。

Q7: NBI併用拡大観察をする際に、主に病変の辺縁を観察し、中央はあまり観察しない。VEC pattern の有無を判定するためには、病変全域を観察する必要があるのでは?

A7: 基本的に病変全域を観察している。しかし、腫瘍径が大きい病変においては中心部の観察が不十分 なものもあり、VEC pattern を見落としていたケースも認められた。

Q8: 論文の結語として前向き試験の必要性に言及しているが、現在前向き研究はしているのか?

A8: 現時点では行っていない。 

Q9: 本研究の結果を実臨床にどういかしているのか?

A9: VEC pattern陽性胃癌を認めた場合、粘膜下層浸潤に注意し、術前に超音波内視鏡を施行するよう にしている。また、未分化型癌の混在も考慮し、病変周囲からの生検も考慮している。

Q10: 再発例は?

A10: 明らかな再発例は認められなかったが、ESD後に追加手術となった症例もあった。

以上のごとく申請者はすべての質問に適切に回答した。その結果、申請者は学位に相応しいと判定さ れた。

  

参照

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