論文内容要旨
論文題名 Practical problems of measuring depth of submucosal invasion in T1 colorectal carcinomas
(大腸T1癌における粘膜下層浸潤距離測定の臨床学的問題点)
掲載雑誌 International Journal of Colorectal Disease Vol.31 No.1 P.137-46, 2016年
専攻名 内科系 消化器内科学専攻 (昭和大学横浜市北部病院) 神山 勇太
内容要旨 大腸T1癌の治療において,粘膜下層浸潤距離1000μm以深の癌は 追加腸切除の適応基準と大腸癌治療ガイドラインに明記されている.一方、海 外のガイドラインでは、浸潤距離に関しての記載はなく、オーバーサージェリ ーの可能性がある. 粘膜下層浸潤距離はリンパ転移予測因子として重要な因子 ではあるが,実臨床においていくつかの問題点があり,手術を要するか否かの 判断に迷う症例が存在する.今回,我々は粘膜下層浸潤距離測定,及び1000μ mの臨床学的問題点を明らかにした.2001年から2013年に昭和大学横浜市北 部病院消化器センターで外科的切除されたT1癌568病変を対象とした.粘膜下 層浸潤距離と,リンパ節転移を含めた臨床病理学的特徴との相関を検討した。
568病変のうち,508病変は1000μm以深への浸潤を認めた.粘膜筋板が想定 されず、腫瘍表層から測定した病変に関しては全症例で1000μm以深の浸潤を 認めた.浸潤距離は肉眼型にも影響され,隆起型は平坦型や陥凹型に比べ,有 意に浸潤距離が長かった。また、1000μm以深への浸潤を認めているか否かは 統計学的にはリンパ節転移のリスク因子ではなかった.また,浸潤距離以外の 追加腸切除基準として明示されている脈管侵襲,簇出grade2/3,低分化組織像 を認めていない病変では,1000μm以深への浸潤を認めていても,1例もリン パ節転移を認めていなかった.大腸T1癌の粘膜下層浸潤距離はリンパ節転移の リスク因子ではなく,リンパ節転移予測において,粘膜下層浸潤距離測定の意 義は少ない可能性が示唆された.