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天本 宇昭 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 あまもと たかあき

天本 宇昭

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1809

学位授与の日付

令和

2

3

16

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

Intra-Plaque Vessels on Contrast-Enhanced Ultrasound Sonography Predict Carotid Plaque Histology

(頚動脈造影エコーにおけるプラーク内新生血管の所見を用い てプラーク性状を予測する)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

和田 秀一

(副 査) 福岡大学 教授

鍋島 一樹

福岡大学 准教授

白井 和之

内 容 の 要 旨

【目的】

頚動脈造影エコー(contrast enhanced ultrasound; CEUS)におけるプラーク内造影 効果は,病理所見におけるプラーク内新生血管と相関すると報告されている.プラーク 内新生血管はプラーク内出血の原因となり,それにより破裂,修復を繰り返した結果狭 窄度を増していく.このため新生血管の存在自体がプラークの不安定性に関与すると多 数報告されている.しかしながら我々の先行研究でプラークの造影効果は経時的に低下 することを報告しており,プラークの造影効果の評価には時間の要素を考慮する必要が あると考えられる.またこの研究を行う中でプラーク内新生血管の造影パターンにはい くつかの種類があることが経験され,造影パターンは新生血管の性質を反映している可 能性が考えられた.最近の報告では,プラーク内の低酸素状態が新生血管を惹起し,そ の指標の一つである hypoxia-inducible factor 1-α(HIF1-α)とプラークの安定性には 負の相関があるとされており,すなわちプラーク内の低酸素が不安定性と関与すること が示唆されている.今回我々は新生血管のサイズ増大とともに低酸素状態が改善されプ ラークの修復が進み,プラークが安定化していくと仮説を立て,新生血管のサイズと病 理組織学的所見を照合しその関係性を評価した.

【対象と方法】

2012~2016 年福岡大学病院で頚動脈血栓内膜剥離術を施行した患者のうち,CEUS 施行

(2)

に同意が得られ,かつエコー所見・病理組織両者の評価を十分行いえた 97 例を対象とし た.CEUS はペルフルブタン(商品名ソナゾイド,第一三共)を用いて施行した.造影剤注 射後 0 分,1 分,3 分,5 分時点でのプラーク内マイクロバブルのサイズを Vascular score (Vas-S;0:造影効果なし,1:プラーク内の一部または全体にぼんやりとした淡い 造影効果を認める,2:点状ないし線状のはっきりした造影効果があり,造影効果に動き が見られるもの)を用いて3段階で評価した.摘出したプラークは modified AHA 分類を 独自に簡素化した Atherosclerotic category(Ath-cat; 1:unruptured plaque,

2:ruptured plaque, 3;healed plaque)で分類した.Vas-S と Ath-cat の関係について評 価した.

【結果】

注入からの時間が経過するとともに Vas-S 1 は見られなくなる傾向があり.つまり淡 い造影効果は注入後早期に消退することが示された.またいずれの時間においても Vas-S が高いほど Ath-cat が高い傾向にあった.すなわち新生血管のサイズが大きいものは healed plaque の傾向があることが示された.

Spearman signed-rank test において注入 Vas-S at 1min が Ath-cat ともっとも強い関 連を示した(p=0.43, P=0.001) .Receiver operating curve (ROC) analysis では Vas-S 0 at 1min が Ath-cat1: unruptured plaque と最も強く関連しており(area under curve; AUC:0.72, P=0.006) ,感度 81.3%, 特異度 62.7%であった.一方 Vas-S 2 at 1min は Ath-cat3: healed plaque と最も強く関連しており(AUC:0.72, P=0.001),感度 62.5%, 特異度 72.5%であった.

【結論】

CEUS において造影効果が見られないプラークは unruptured plaque,線状の血管とし て同定できる血管が造影されるプラークは healed plaque と関連しておりプラーク性状 の術前診断に有効であると考えられた.また CEUS で新生血管を評価するタイミングは注 入後 1 分が最も病理学的所見と関連が強いことが示唆された.

審査の結果の要旨

本論文は、内頚動脈狭窄症の治療適応・治療法を決定する上で重要となるプラーク

性状診断において近年注目されている,超音波造影剤を用いた造影エコーの有用性に

ついて,病理組織診断と対照して検討したものである.造影エコーはプラーク内新生

血管を可視化でき,新生血管の存在はプラークの不安定性と相関すると多数報告され

(3)

ているが,我々の検討では造影エコーで可視化できる新生血管には大小の2パターン があり,小さな血管は造影剤静注後1分後には造影効果が消退し始める傾向にあるこ とと,小さな血管は破裂プラーク,大きな血管は修復プラークと相関があることが明 らかになった.ROC 曲線で解析を行うと,造影剤静注後1分後で造影効果を評価する ことで最も病理学的所見との相関が得られることが示された.以下に本論文の斬新さ,

重要性,研究方法の正確性,表現の明確さ,主な質疑応答の内容についてそれぞれ記 載する.

1.

斬新さ

これまでの報告ではプラーク内新生血管が認められれば不安定性と関連するとされ ているが,描出される血管の大きさやその臨床的意義,造影剤注入後何分後に造影効 果の評価を行うべきかに言及した報告はいずれもなく,本研究は斬新な内容である.

2.

重要性

プラーク内新生血管の種類によって病理学的意義が違うことが示され,手術適応・

手術法を決定する上で非常に有用な所見となり得る.また,造影エコーの検査プロト コルは未だ確立されたものはなく施設ごとに異なると思われ,本研究により造影剤静 注後

1

分時点で評価するのが最も病理学的所見と相関することが示されたことでプロ トコルの確立に寄与するものと考えられ重要な研究である.

3.

研究方法の正確性

本研究の対象は全て本院の患者であり,超音波診断・病理診断においても専門医が 診断を行なっている.エコー所見を実際の病理組織標本と照らし合わせて検討を行な っているため,診断の正確性は高いと考える.

4.

表現の明確さ

目的・方法・結果はいずれも明確かつ詳細に表現されている.結果については統計 学的検討が十分に行われており,信頼に値すると考える.

5.

主な質疑応答

以上の研究内容の説明に対して,審査員により,研究方法,結果の解釈,臨床的な 意義に関する質疑が行われた.下記のような多数の質問があり,活発な討議が行われ た.

Q:プラークは破裂修復を繰り返すため,一つの時相だけでプラークが構成されること

ははあまりないと考えられるが.そんな中で,どのようなプラークを修復プラークに 分類しているのか.

A:病理学的に fibrous cap

の断裂がありそこに血栓形成がある,いわゆる破裂の所見

があれば破裂プラークに分類した.過去に破裂した形跡がありその部分が修復され,

手術時には破裂の所見がないものは修復プラークに分類した.

(4)

Q:プラークの病理学的所見を術前に予測できれば,治療を行うのに有用であるのか.

A:治療法には CEA

CAS

があり,いずれも優れた治療であることが証明されてい

る.CAS は低侵襲であり有効な治療法であるが,不安定プラークに対し

CAS

を行う と遠位塞栓のリスクが高まると報告されているため,不安定プラークが予想される場 合には原則として

CEA

を選択するようにしている.CAS に適切な症例を選ぶ上で重 要な検査と考える.

Q:論文のlimitation

として,男女比についての言及があるが,その意義は

A:本研究の対象患者は男性が非常に多かった.有病率は男性に多いと統計的にも言わ

れているため問題があるとは思わないが,reviewer より指摘があったため論文には

limitation

として記載した.

Q:男女でプラークの性状が違ってくることがあるのか.

A:それはないと考える.有病率が違うということ.

Q:エコーの評価者によって所見をどう捉えるかが変わってくるのか.

A:微妙に変わってくると考えられるし,所見を正確に判断するようになるには慣れが

必要であった.

Q:病理組織診断をカテゴリーに分類しているが,どの分類が最も不安定プラークと考

えられるのか.

A:Grade2

ruptured plaque.

Q:論文の患者背景の中でneurological symptoms within 120 days

という項目がある が,これがあると不安定な病変ということなのか.

A:そう考えている.

Q:スタチンが投与されていると非破裂プラークが多いと有意差が出ているが,意義は.

A:今回は検討していないが,スタチンにはプラークの安定化作用があるとされている

ので有意差が出たものと考える.

Q:造影効果の定量化が今後の課題ということだが,実際にそういった知見はあるのか A:ソフトウェアの開発が始まっているようだが,エコーの場合脈圧の影響で静止画を

得ることが難しいため,なかなか進んでいないのが現状のよう.

Q:MRI

でのプラーク性状評価の現状と

MRI

とエコーの相関はあるのか.

A:MRI

ではプラークの信号強度を胸鎖乳突筋と比較して簡単に定量化でき,方法が確

立されている検査である.解像度は良いとは言えないため,プラークをより細かく見 るとなるとエコーの優位性があると考える.・

Q:HIF−1αについては,今後の研究に生かしていく予定はあるか.

(5)

A:後任の研究者が,プラークを HIF−1αで実際に染色してエコー所見と対照する研

究を進行中である.

以上,内容の斬新さ,重要性,研究方法の正確性,表現の明確性および質疑応答の結

果を踏まえ,審査員全員での討議の結果,本論文は、博士学位論文に値すると評価さ

れた。

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