スタグフレーションについて
花 田 功 一
は じめに
1 97 3 年末か ら 75 年 にか けて世界的に発生 したスタグフ レーシ ョン ( 不況下 の物価騰貴)を解明す ることな しには現代資本主義の理解 に到達す ることはで
きないこと, この ことに関 しては誰 しも認めるところであろう 。
スタグフ レーシ ョンは現代資本主義の理解 にとってそ うした決定的な重要性 を持 っているがゆえに,今 まで多 くの人 々によって解明が試み られてきたが, スタグフレーションの解明が持っ決定的な重要性 と比較す るな らばその試みは 意外 と少ないのであ り,いまだ とて も論議が尽 くされた とは言えない状態なの であ る。 しか も,残念な ことに最近で はほとん ど論議がな されな くな って し
まっているのである
。しか し,当時のよ うな世界同時不況に直面 している現在,スタグフレーショ ンの解明は現在の不況の性格を解明 し,今後の由通 しを得 るためにもます ます 緊急な課題 となっていることは間違いないであろ う 。
そ こで,本稿では,スタグフレーション論議が再燃す ることを期待 しつつス タグフレーシ ョンの解明のために一石を投 じることに してみたい。
といって も,本稿ではさ しあた りまだ課題を, 日本における事実経過を参考 に して,スタグフ レーション論 における核心的問題を確定す ること( 第 1節) , 及 び,我 々が以前提示 した恐慌理論 1 )の立場か らその核心的問題 に基本的な 1 )拙稿 「 再生産表式論 と第 Ⅰ部門の不均等発展 の限界 」 『 商学討究』 ,第 41 巻第 2 号,
1 9 9 0 年参照。
〔 1 8 5 〕
1 86 商 学 討 究 第 43 巻 第 3 ・4 号
解答を与え ること ( 第 2 節)に限定せざるをえない.また,諸説の検討 も,紘 数の関係で さしあた り,井村喜代子氏の見解の検討に限定せざるをない ( 第 3 節) .井村氏の見解をまずは じめに取 り上 げるのは,我 々の恐慌理論が氏の恐 慌理論の検討か ら生まれた関係上,氏のスタグフレーション論が我 々の第一の 関心事であるか らであ り,また,氏の見解がマルクス経済学のいわゆる正統派 の見解を代表す るもの と目され るか らである。その他の諸氏の見解の検討やス タグフレーションの国際的関連の問題などスタグフレーションをめ ぐる多様な 論点の検討 については他 日を期す ことに したい。
第 1 節 スタグフレーション論における核心的問題
本節では日本の事例に即 しなが ら,スタグフ レーシ ョンの解明にとって最 も 重要な問題,最 も核心的な問題 は何か ということについて考えてみることに し た い。
まず ,7 3 年末に勃発 した戦後最大の不況の直接的原因について言えば,それ が 7 3 年か ら 7 4 年にかけて とられた 「 総需要抑制政策」 と呼ばれた政府の景気引 締め政策にあるということについてはある程度意見の一致が見 られるところで
あろう。
意見が分 かれ るの は この 「 総 需要抑 第 1‑ 1表 経常収支の推移 制政策」や不況へ の突入 と石油危機 と
が どの よ うに関係 して い ると考 え るべ きか とい う問題 についてである。
原油価格 の高騰 によ り経常収 支が大 幅赤字 を記録す るの は 7 4 年 1 月 に入 っ てか らであるが ( 第 1‑ 1 表) ,物価へ の影響 は もっと早 く , 7 3 年 1 2 月か らはっ
き り出て い る ( 第 1‑2 表) 。そ して, 不況 に突入 したの も 7 3 年 1 2 月か らで あ
( 単位 1 0 0 万 ドル)
年 月 年 月
7 3 .7 1 9 4 7 4 .1 ‑ 1 , 2 6 0
8 ‑ 3 3 0 2 ‑ 1 , 2 1 3
9 2 3 7 3 ‑ 8 1 5
1 0 ‑ 2 5 6 4 ‑ 7 7 8
l l ‑ 7 8 5 ‑ 1 , 0 4 0
( 出所)日本銀行 『 国際収支統計月報』
スタグフ レー シ ョンにつ いて
第 1‑2 表 卸売物価 ( 総平均 ・1 9 7 0 年 ‑1 0 0 ) の上昇率
( 単位%) 1 87
年 月 前月比 前 年 同月比 年 月 前月比 前 年 同月比 年 月 前月比 前 年 同月比
7 2 .1 ‑ 0 . 2 ‑ 1 . 0 7 3 .1 1 . 5 7 . 6 7 4 .1 5 . 5 3 4 . 0 2 0 . 1 ‑ 0 . 7 2 1 . 6 9 . 2 2 3 . 9 3 7 . 0 3 0 . 2 ‑ 0 . 4 3 1 . 9 l l . 0 3 0 . 7 3 5 . 4 4 0 . 2 ‑ 0 . 6 4 0 . 5 l l . 4 4 0 . 7 3 5 . 7 5 0 . 1 ‑ 0 . 6 5 0 . 9 1 2 . 3 5 0 . 6 3 5 . 3 6 0 . 1 ‑ 0 . 3 6 1 . 3 1 3 . 6 6 1 . 3 3 5 . 3 7 0 . 1 ‑ 0 . 3 7 2 . 0 1 5 . 7 7 1 . 1 3 4 . 2 8 0 . 6 0 . 1 8 2 . 1 1 7 . 4 8 1 . 0 3 2 . 8 9 0 . 7 1 . 2 9 1 . 8 1 8 . 7 9 0 . 1 3 0 . 6 1 0 0 . 7 2 . 4 1 0 2 . 0 2 0 . 3 1 0 0 . 5 2 8 . 7 l l 1 . 5 4 . 2 l l 3 . 2 2 2 . 3 l l 0 . 3 2 5 . 1 1 2 1 . 6 5 . 8 1 2 7 . 1 2 9 . 0 1 2 0 . 2 1 7 . 0
( 出所) 日本銀行 『 物価指数年報』よ り作成。
るとされている 。 2) したが って,石油危機 とそれ にともな う物価 の急上昇, それに対抗す るための 「 総需要抑制政策」の一段 の強化 3) が 7 3 ‑7 5 年不況の 原因であるように見える。
しか し,物価 はすでに 7 2 年後半か らかな りのス ピー ドで上昇 してきていたの であ り,石油危機が勃発す る直前の 7 3 年 9 月 の時点 ですで に前年 同月比 1 8 .7
% とい う異常な上昇を記録 していたのであった ( 第 1‑2 表) 。そ して,その 物価上昇に伴 って,それに対抗す るために金融面か らも財政面か らも種 々の引 締め政策が とられて きたのであ った 。4 )それに もかかわ らず物価 は一貫 して 2) 経済企画庁調査局景気統計調査課が規定 している 「 景気の基準 日付」による (『季
刊 日本経済指標』参照) 0
3) 代表的な ものは 7 3 年 1 2 月 2 2 日の公定歩合の 7 % か ら 9% ‑の引き上 げであるが,そ れ も含めて この段階で とられた引締め強化策 については大蔵省 『 財政金融統計月報』 ,
1 9 7 5 年 1 月号, 8 貢を参照。
4) 金融面か らは預金準備率の引き上げ,公定歩合の引き上げ,窓口指導の強化など, 財政面か らは財政執行の抑制,繰延べ措置が とられてきた。 さらには,民間設備投資
・建築投資抑制指導 も行われた。この点 について詳 しくは大蔵省『 財政金融統計月報』
前出, 5‑6 頁を参照。
188 商 学 討 究 第 43 巻 第 3 ・4 号
上昇を続 けて きたのであ るか ら,石油危機が勃発 しよ うとしまいと ,73 年 10 月 以降遅かれ早かれ一段 と強力な引締め政策の発動 は不可避な情勢であ ったので あ る 。 したが って,なるほど,ち ょうどそ うした情勢の もとで石油危機が勃発 し,物価が さらに急上昇 したために,い っそ う強力な引締め政策が発動 され不 況に突入 した結果,不況‑の突入 は石油危機が原因であ るよ うに見え るが,石 油危機が勃発 しよ うとしまいと,物価の さらな る上昇‑ さらに強力な引締め政 策の発動‑不況への突入 とい う過程 は不可避であ ったのである。
こうい うわけで,石油危機 は物価の急上昇,経常収支の突然の大幅な赤字を もた らしたため,不況への突入時期をやや早め,不況をよ り深刻 な ものに した と言 うことはで きて も,不況の原因を もっぱ らそれに求 めるのは皮相な見解で あると言わなければな らないのである。不況の原因 はまず石油危機 とは関係な くすでに 72 年後半か ら始 ま っていた急激な物価上昇 とそれに対抗す るための政 府の景気 引締め政策 に求め られなければな らないのであ る。
それで は , 1972 年後半 か らの急激 な物価上昇の原 因 は何 だ ったので あろ う か。
これには当時の国際通貨情勢の混乱か らす るいわゆる 「 過剰流動性」や輸入 原材料価格の高騰 も大 き く影響 した ことは間違 いないであろ う。 しか し,本質 的な原因はやはり,当時の経済の基礎的状況やそれに対す る企業や政府 の対応 に求 めなければな らないであろ う 。
そ こでまず , 70 年代初頭の生産 と物価 の動向を追跡 してみ ることに しよ う( 第 1‑ 3 表〜第 1‑ 7 表) 0
1 965 年 1 1 月以来 4 年 8 カ月続 いた 「いざな ぎ景気」 も 7 0 年 7 月 に終 了 し, 以後後退局面 に入 ったが, ほぼ 1 年 た った 71 年 6 月 ころには景気 は回復の兆 し を見せ始 めた。 しか し,同年 8 月 1 5 日に始 まる 「ドル ・ショック」で再 び景気 は落 ち込んで しまい , 72 年 に入 ってよ うや く景気 は再 び回復 を始めたのであ る。
しか し,生産の拡大 ははかばか しくなか った。鉱工業生産の伸 びは 72 年 の第 i
四半期,第 Ⅱ四半期 にはそれぞれわずか 1 .9%,2.2% に とどまった。そ して,
第 Ⅲ四半期 にな ってか らよ うや く本格的な生産拡大が始 まったのである。第 Ⅲ
ス タ グ フ レー シ ョンにつ いて
第 1‑3 表 鉱工業生産, 出荷, 在 庫 の 伸 び 率 ( 1 9 70 年
‑1 00 の季節調 整 値 の前 期比)
( 単位%) 生 産 出 荷 在 庫
7 0 Ⅰ 年 3 . 5 4 . 0 3 . 0
Ⅱ 3 . 2 0 . 7 5 . 2
Ⅲ 1 . 3 2 . 5 6 . 1
Ⅰ Ⅴ
7 1 I 年 0 0 . . 4 9 0 0 . . 2 6 6 4 . . 9 9
刀 ‑ 1 . 2 0 . 1 2 . 5
Ⅲ 1 . 7 1 . 4 1 . 1
Ⅰ Ⅴ
7 2 Ⅰ 年 0 1 . . 9 3 0 3 . . 7 2 ‑ 1 1 . . 4 7
刀 2 . 2 1 . 8 ‑ 0 . 4
Ⅲ 2 . 9 2 . 8 ‑ 0 . 3
Ⅰ Ⅴ
7 3 i 年 4 5 . . 8 2 4 5 . . 9 4 ‑ ‑ 3 1 . . 4 1
Ⅱ 3 . 5 3 . 5 ‑ 0 . 9
Ⅲ 1 . 7 1 . 1 1 . 0
( 出所)通産省 『 鉱工業指数年 報』より作成。
189
第 1‑4 表 建設資材の生産, 出荷,在庫 の伸 び率 ( 1 9 70 年 ‑1 00 の季節調整 値 の前期比),及 び建設 材料 の卸 売 物価 ( 1 9 70 年 ‑1 0 0 ) の上昇率
( 単位%)
生 産 出 荷 在 庫 卸 売 物 価 前期比 前 年 同期比
7 0 Ⅰ 年 2 . 3 2 . 6 4 . 8 2 . 4 9 . 2
Ⅱ 4 . 2 2 . 3 7 . 8 ‑ 0 . 7 6 . 8
Ⅲ ‑ i . 1 ‑ 0 . 5 6 . 8 ‑ 0 . 1 4 . 3
7 Ⅳ 1 Ⅰ 年 ‑ 0 0 . . 3 4 ‑ 0 1 . . 4 1 6 4 , . 9 9 ‑ ‑ 1 1 . . 8 5 ‑ ‑ 0 4 . . 2 1
Ⅱ ‑ 1 . 2 ‑ 1 . 4 4 . 8 ‑ 1 . 2 ‑ 4 . 6
Ⅲ 2 . 3 3 . 5 1 . 4 0 . 5 ‑ 4 . 0
7 Ⅳ 2 Ⅰ 年 3 1 . . 2 1 1 3 . . 3 7 ‑ 2 1 . . 5 9 ‑ 1 1 . . 4 9 ‑ ‑ 3 0 . . 2 6
Ⅱ 2 . 2 2 . 7 ‑ 1 . 8 0 . 6 1 . 7
Ⅲ 5 . 0 4 . 6 ‑ 2 . 4 2 . 4 3 . 5
7 Ⅳ 3 Ⅰ 年 5 5 . . 6 4 6 6 . . 4 8 0 0 . . 1 9 1 2 7 . . 4 7 1 2 8 4 . . 0 7
Ⅱ 4 . 9 4 . 8 0 . 8 0 . 5 2 4 . 6
Ⅲ 0 . 2 ‑ 1 . 5 0 . 2 9 . 4 3 3 . 1
Ⅳ 1 . 6 2 . 5 4 . 9 1 2 . 1 3 2 . 7
( 出所)通産省 『 鉱工業指数 年報 』 , 日本銀行
『 物価指数年報』より作成。
190 商 学 討 究 第 43 巻 第 3 ・ 14 号
第 1‑5 表 資本財の生産,出荷,在庫の伸 び率 ( 1 9 7 0 年 ‑1 0 0 の季節訊整 値の前 期比), 及 び,卸 売物価 ( 1 9 70 年 ‑1 0 0 ) の上昇 率
( 単位 %)
生 産 出 荷 在 庫 卸 売 物 価 前期比 前 年 同期比
・ 7 0 Ⅰ 年 6 . 8 9 . 3 4 . 2 0 . 4 1 . 2
Ⅱ 3 . 2 1 . 0 3 . 7 0 . 8 2 . 0
Ⅲ 2 . 2 5 . 2 8 . 5 0 . . 4 2 . 1
Ⅰ Ⅴ
7 1 Ⅰ 年 1 0 . . 4 6 ‑ 1 1 . . 9 7 1 6 0 . . 3 1 ‑ ・ 0 0 . . 0 1 1 1 . . . 6: 1
Ⅱ ‑ 2 . 8 O l . 6 8 . 4 0 . 3 0 . 6
Ⅲ 0 . 1 ‑ 0 . 1 ‑ 0 . 5 ‑ 0 . 1 0 . 1二
1 7 Ⅳ 2 Ⅰ 年 ‑ 1 1 . . 7 1 ‑ 3 1 , . . 3 3 ‑ ‑ 4 1 . . 8 9 ‑ ‑ 0 0 . . 5 2 ‑ ‑ 0 0 . . . 4 5p 二
Ⅱ 1 . i p 6 ‑ ‑ 0 . 9 ‑ 4 . 0 0 . 7 ‑ 0 . 1
Ⅲ 4 . 5 6 ‑ . 2 ‑ 5 . 6 . ・ 0 . 6 0 . . ° 6 .
Ⅳ ̲ I
. 7 3 I 年 6 5 , . . ̲ 3 5 ̲ 4 6 . . 3 1 . ‑ ‑ 4 7 . . . 4 5 0 1 . . . 4 6 ‑ 1 3 . . ̲ 5 三 3
・■ Ⅱ ̲ ̲ 5 . 0 5 . 1 ‑ 1 . 3 4 . 4 7 . 1 .
̲Ⅲ 3 . 8 3 . 3 4 . 5 3 . 3 1 0 . 0
( 出所)第 1‑4 表に同 じ
。ス タ グ フ レー シ ョンにつ いて
第 1‑6 表 生産財の生産,出荷,在庫の伸び率 ( 1 9 7 0 年 ‑1 0 0 の季節蘭整 値の前期比) , 及 び,卸売物価 ( 1 9 70 年 ‑1 0 0 ) の上昇 率
( 単 位%)
生 産 出 荷 在 庫 卸 売 物 価
7 0 i 年 3 . . 5 3 . 6 2 . 7 2 . 1 6 . 6 :
Ⅱ 3 . 3 1 . 7 5 . 5 0 . 7 二 6 . 1 ∴
Ⅲ 1 . 1 1 . . 3 7 . 6 ■ ‑ 0 . 9 3 . . 7
7 Ⅳ 1 Ⅰ 年 0 0 . . 8 4 0 0 . . 5 7 7 6 . . 8 1 ‑ ‑ 1 0 . . 2 8 ‑ 2 0 . . 2 7 i f ‑ 0 . 4 0 . 1 3 . 9 0 . 0 ‑ 2 . 9 /
Ⅲ 2 . 1 1 . 3 4 . 2 ‑ 0 . 2 ‑ 2 . 2
Ⅲ 2 . 4 2 . 9 ‑ 1 . . 4 0 . 9 ‑ I O ̲ p 2
Ⅰ Ⅴ
7 3 Ⅰ 年 5 5 . . 1 7 ‑ 5 5 . ̲ 2 2 ‑ ‑ 2 3 . . 7 8 4 6 . . 6 9 . ̲1 6 3 . . 3 6 1 .
Ⅱ 3 . 3 4 . 0 ‑ 1 . 9 ‑ 3 . 3 1 6 . 6
Ⅲ 0 . 9 0 . 0 ‑ 0 . 6 6 . 9 2 3 / 5
(出所)第 1‑ 4 表に同 じ。
191
1 92 商 学 討 究 第 43 巻 第 3 ・4号
第 1‑ 7表 消費財の生産,出荷,在庫の伸び率 ( 1 9 7 0 年‑1 0 0 の季節調整値の前期比) , 及び,卸売物価 ( 1 9 70 年 ‑1 0 0 ) の上昇 壷
( 単位 %)
生 産 出 荷 在 庫 卸 売 物 価
7 0 Ⅰ 年 1 . 0 1 . 1 2 . 2 0 . 7 3 . 0
Ⅱ 2 . 7 0 . 8 4 . 8 0 . 0 2 . 5
Ⅲ 1 . 9 3 . 4 4 . 1 0 . 8 2 . 5
7 Ⅳ 1 Ⅰ 年 ‑ 1 2 . . 0 1 ‑ 1 2 . . 4 9 6 1 . . 5 1 ‑ 0 1 . . 5 1 3 2 . . 0 2
Ⅱ ‑ 0 . 8 0 . 8 ‑ 1 . 3 0 . 6 2 . 8 ‑
Ⅲ 2 . 2 1 . 2 ‑ 2 . 2 0 . 7 2 . 7
Ⅰ Ⅴ
7 2 Ⅰ 年 2 2 . . 0 1 1 2 . . 8 4 ‑ 1 0 . . 0 1 ‑ 0 0 . . 5 1 1 1 . . 7 7
Ⅱ 2 . 6 2 . 0 1 . 0 0 . 4 1 . 5
Ⅲ 1
.0 0 . 3 3 . 5 0 . 6 1 . 4
7 Ⅳ 3 Ⅰ 年 2 4 . . 8 1 4 4 . . 3 3 ‑ 0 1 . . 3 3 1 3 . . 4 1 2 5 . . 3 6
Ⅱ 1 . 9 1 . 1 ‑ 0 . 1 3 . 0 8 . 4
Ⅲ 2 . 0 1 . 0 2 . 1 2 . 8 1 0 . 8
Ⅳ 2 . 2 2 . 6 2 . 6 4 . 6 1 4 . 2
(出所)第 1‑ 4 表 に同 じ。
ス タ グ フ レー シ ョンにつ いて 19 3 四半期には鉱工業生産全体 としてはまだ2 .9%の伸 びにとどまっていたが,投 資財の うち建設資材 は 5.0%,資本財 は4.5%の伸 びを記録 したのである。そ
して,第Ⅳ四半期か らは生産財 も 5%台の伸びを示すようになった。消費財は 7 2 年 いっぱいは 1%及び 2%台 と低迷 したが,73 年第 Ⅰ四半期には 4%台の伸 びを記録 した。 こうして,7 2 年第 Ⅲ四半期か ら生産の本格的な拡大が始 まった のであるが,それ とともにまた物価 も建設材料を中心、 に して上昇を始めたので ある
。建設材料の卸売物価は前期比では7 2 年第 Ⅰ四半期か ら,前年同期比では72 年 第 Ⅱ四半期か らそれぞれ一貫 して上昇す るのであるが,第 Ⅲ四半期にはまだ前 期比で2.4%,前年同期比で3 .5%の上昇 に とどま っていた。 ところが,第Ⅳ 四半期なると突然前期比で1 2.4%,前年同期比で 1 8.0% とい う従来には全 く 見 られなか った程の大幅な上昇を記録す るのである。そ して,その後 も 7 3 年第
Ⅱ四半期の前期比を除いて大幅な上昇が続いている。 こうして,建設材料の卸 売物価は本格的な生産拡大が始まった7 2 年第 Ⅲ四半期に一期遅れて,第Ⅳ四半 期か ら大幅な上昇を開始 したのである。
次に,資本財の卸売物価 について見てみると,前期比では 7 2 年第 Ⅱ四半期か ら,前年同期比では 7 2 年第 Ⅲ四半期か ら一貫 して上昇 している。前期比では72 年第Ⅳ四半期 までは 0%台の上昇にとどまっていたが,7 3 年第 Ⅰ四半期には1 . 6%とい う過去最高の上昇を記録 し,その後 も上昇を続 けている 。 前年同期比 では 7 2 年第 Ⅲ四半期 には 0.6% と/ J 叫昌な上昇 にとどまっていたが,第I V四半期 には1 .5% とい う従来か ら見れば大 きな上昇を記録 し,続 く 7 3 年第 Ⅰ四半期に は 3.3% とい う過去最高の上昇を記録 している。そ して,その後 もしだいに大 きく上昇 している。 こうして見 ると,資本財の卸売物価 も本格的に生産拡大が 始まった7 2 年第Ⅲ四半期に一期遅れて第Ⅳ四半期か ら上昇を開始するが,本格 的な上昇は7 3 年に入 ってか ら始まったと言 うことができるであろう 。
次に,生産財の卸売物価について見てみると,前期比では7 2 年第 Ⅰ四半期か
ら,前年同期比では7 2 年第 Ⅲ四半期か ら一貫 して上昇 している。前期比 も前年
同期比 も 7 2 年第Ⅲ四半期にはまだ 0%台にとどまっていたが,第Ⅳ四半期にな
19 4 商 学 討 究 第 43 巻 第 3 ・4号
ると前期比で 4.6% と過去最高の上昇を記録 し,前年 同期比で も 6 .3% と 7 0 年 第 Ⅰ四半期 に続 く上昇を記録す る。そ して,両者 とも 7 3 年 に入 るとさ らに大 き
く上昇 してい く 。 このように,生産財においては 7 2 年第Ⅳ四半期か ら本格的な 物価上昇が始 まったのであるが,上 に見たよ うに,本格的な生産拡大が始 まっ たの も 7 2 年第Ⅳ四半期であった。 こうして,生産財においては本格的な生産拡 大が始 まると同時に物価 も本格的に上昇を始めたのである。
最後に,消費財 につ いて見てみると,卸売物価 は景気後退過程に入 って もほ ぼ一貫 して上昇を続 けているが,上昇率 は 7 2 年第 Ⅲ四半期 までは概ね低下傾向 を示 していた。それが増大 し始めるのは 7 2 年第Ⅳ四半期か らであるが,第Ⅳ四 半期の上昇 はまだ 目立 った ものではなか った。 目立 った上昇率を記録するのは 7 3 年第 Ⅰ四半期以降であ り, この 7 3 年第 Ⅰ四半期 は低迷 していた生産がようや く 4% 台に乗 った時である。 こういうわけで,消費財 において も物価 は生産の 本格的な拡大の開始 とともに本格的な上昇を開始 したのである 。 5 )
以上のようなわけで ,7 2 年 に入 って も初めはなかなか生産が伸びなかったの であるが,後半になってようや く生産が本格的に伸び始めるとそれにつれて物 価 も本格的な上昇を開始 していったのである。
このよ うな生産 と物価の動向はどのよ うに理解 され るべ きなのであろうか。
生産の伸びの増大 は当然需要 の伸 びの増大 に対応 しているわけであるが , 6)
生産や需要 の伸びの増大 とともに物価が上昇す るのは生産が需要の伸 びに追 い つかない場合か,需要の伸びに対 して生産者が生産を故意に押え気味に して価 格を吊 り上 げる場合かの どち らかであろ う。そ して, これ らの うちのどち らで あるかば稼働率の動向によって判断す ることがで きるであろう
。そ こで ,7 0 年代前半の稼働率の動向を見てみ ると第 1‑8 表のようになる。
製造業全体で は 7 3 年前半 に 「いざな ぎ景気」時の ピーク ( 1 0 2.7 ) にかな り 5 )と言っても消費財生産の伸び率は第 1‑ 7 表に見られるように ,73 年第Ⅲ四半期に はまたすぐ 1 . 9% という低い水準に落ちてしまい,その後も低迷するのであるが。な お,以上の物価上昇率の過去との比較では 1 95 8 年以降を念頭に置いている.
6 )第 1‑3 表〜第 1‑ 7 表における生産と出荷の伸びの対応関係を参照されたい。
ス タグ フ レー ションにつ いて 195
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196 商 学 討 究 第 43巻 第 3 ・4号
近づ くが ( 第 Ⅰ四半期 1 00 .2 ,第 Ⅱ四半期1 01 .5) ,結局そ こまで には至 らずに その後次第 に低下 してい く
。業種別 に見てみて も, 「いざなぎ景気」時の ピー クを越えている業種 は 「 金属製品工業」 , 「 窯業土石製品工業」 , 「 繊維工業」
の 3 つの業種 にす ぎない( 第 1‑8 表 の下線部,なお,「 非鉄金属工業」 も 「い ざなぎ景気」時の ピークを越えているがや っと73 年第Ⅳ四半期 にな ってか らな ので無視 してよいであろ う) 。
このよ うに,稼働率 は製造業全体で も,大部分の業種で も 「いざなぎ景気」
時の ピークを越えていないのであるか ら ,7 2 年後半か らの異常な物価騰貴の原 因は需給逼迫 にあると考え ることはで きないのであ り,生産者が生産を故意に 押え気味に して価格を吊 り上げよ うとした ことにあると考えなければな らない のである。 この ことは,在庫が減少傾向を示 していることか らも言えると思わ れ る ( 第 1‑ 3 表〜第 1‑ 7 表の在庫の欄を参照 されたい) 0
ところで ,7 2 年後半か らの異常な物価騰貴の原因が このように生産の制限に よる価格吊 り上 げにあるとい うことは何 を意味す るであろ うか。それは,当時, 企業が政府の懸命な有効需要創出政策 に積極的に応えて,生産をで きるだけ拡 大 して利潤を増大 させよ うとす る方 向ではな く,そ うした政府の政策を生産の 制限による価格の吊 り上げに利用 し,それによって利潤を増大 させようとす る 極めて寄生的な方向に進んでいって しまったことを意味す るであろう 。
それで はなぜ,当時企業 はそ うした極 めて寄生的な方 向 に進んでい って し まったのであろうか。それは当然,従来型の景気拡大に対す る確信が当時すで に大幅に失われて しまっていたか らにはかな らないと考えるべ きであろ う。景 気拡大に対す る見通 しが明 るく, したが って,需要が長期的に拡大 してい く見 通 しがあるな らば,生産を制限す る必要 もないであろうし,それによる価格吊 り上 げによって急いで利潤を増大 させ る必要 もないであろうか らである。従来 は不況が底を打っ とともに政府支 出に支え られなが ら生産が急速 に拡大 し,そ れ とともに,稼働率が しだいに上昇 し,稼働率がある程度回復 した ところで設 備投資が急速 に増大 し,景気が本格的な拡大を開始 した 。7 0 年代 に入 るとこう
した従来型の順調な景気拡大に対す る確信が大幅に失われて しまったのではな
ス タ グフ レー シ ョンにつ いて 197
いか と考 え られ るのである。 ところで,従来型の景気拡大で最 も重要 な ことは 景気 の回復 とともに政府支 出の伸 び率が しだいに低下 して い く中で それ に代 わ って設備投資が急速 な盛 り上が りを見せ るとい う点であ る 。 したが って,従 来型の景気拡大 に対す る確信が失われて しま った とい うことは,結局, この設 備投資の盛 り上が りに対す る確信が失われて しまった とい うことを意味す るの である。 とい うことは,結局,当時,設備投 資意欲が全体 として大 き く低迷 し ていた とい うことである。
実 際 , 7 2 年末乃至 7 3 年 初めか ら始 ま っ た設備投資の増大 に して も, 6 6 年 か ら 6 7 年 にか けて と比較 した第 1‑9 表〜第
1‑1 0 表 か らもわか るよ うに,設備 投 資だ けを と って も従来 に比 べ て伸 び率 が低か った し,政府 支 出の増 大 も考 慮 に入 れ れ ば, ます ます その低 さが 目に つ くので あ る。つ ま り,従来 は一般 に 設 備投 資 の増 大 と と もに政府支 出の伸 び率 は低下 して い るので あ り, それで も設備 投 資 は高 い伸 びを続 けたので あ るが, 7 2 年 末 乃至 7 3 年 初 めか らの設 備 投 資 の増大 の場 合 に は,政府 支 出の伸 びが低下 す る ことな く高 い伸 びを続 け た に もかか わ らず,設備 投 資 の伸 び は
第 1‑ 9 表 製造業の設備投資 の伸 び率 ( 前年 同期 比)
( 単位 %)
( 出所)大蔵省 『 法人企業統 計季幸鮎
従来 に比べて大 きく下回 ったのであった。
以上のよ うなわけで ,7 0 年代 に入 るとともに設備投資意欲が全体 として大 き
く低迷 して しま ったのであ り,その ことが,企業 に従来型の景気拡大 に対す る
確信を失わせ,企業を極 めて寄生的な方向に走 らせたのであ る
。その結果,政
府 の創 出す る莫大な有効需要 も価格 吊 り上 げや さ らには原料,土地,株式な ど
の投機 に利用 され ることにな り,生産や設備投資が政府の思 うよ うには伸びな
19 8 商 学 討 究 第 4 3巻 第 3 ・ ‑4号
第 1‑1 0 表 国民総支出中の民間企業設備 と政府支 出 ( 政 府最 終 消費 支 出 +公 的総 固定 資本 形 成) の伸 び率 ( 前年 同期比)
( 単位%) 民間企業 政府 民間企業 .政府
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