大 島 稔
1.序
ア リ ュ ー ト(ア レ ウ ト,自 称Unangan1))民 族 は,火 山 性 の 島 々 に 居 住 し, そ の 島 は,極 め て 起 伏 の 多 い 内 陸 と崖 の 多 い 海 岸 線 か ら成 っ て い る 。 島 の わ ず か な 平 地 に は,漿 果 の 茂 み と草 が 生 え る湿 地 が あ る の み で,山 や 平 地 に 高 木 は 一 本 も な い 。 従 っ て 樹 木 の 利 用 は,海 岸 に 漂 着 す る 流 木 に 頼 ら ざ る を 得 な い 。 気 候 は 比 較 的 温 暖 で,夏 と冬 の 気 温 差 は 太 平 洋 側 の 暖 流 の た め ア ラ ス カ 大 陸 に 比 べ る と小 さ い 。 し か し,そ の 暖 流 の た め に 夏 は 霧 と 雨 に 悩 ま さ れ,冬 は 強 風
で 海 が 荒 れ 易 く 体 感 温 度 もか な り 低 下 す る 。
この よ う な 準 極 地 的 自然 環 境 の も とで,ア リュ ー トは,そ の 環 境 に 極 め て 高 度 の 適 応 を 遂 げ た 民 族 と 言 わ れ る2㌔ 環 境 へ の 文 化 の 高 い 適 応 例 は,ア リ ュ ー ト 伝 統 の 生 業 活 動 の 様 々 な 面 に 窺 え る。 陸 上 で は 数 種 の 狐 を(ア ラ ス カ 半 島 と ウ ニ マ ク 島 で は ,ト ナ カ イ や 熊 の 大 型 哺 乳 類 も)狩 猟 し,漿 果 と 野 草 を 採 集 し食 糧 と し,草 か ら精 巧 な バ ス ケ ッ トを 作 っ た 。 夏 と冬 の 渡 り 鳥 の 肉 と 卵 を 賞 味 し, 羽 毛 や 皮 を 衣 服 に 仕 立 て た 。 河 川 で は,鮭 や 鱒 が 夏 か ら秋 に か け て 時 を 違 え て 遡 上 す る の を 捕 え,乾 燥 し越 冬 用 食 糧 と し た(図 版1)。 ま た 海 岸 か ら は,海 草 や 貝 を 採 集 し,沖 合 で は,オ ヒ ョ ウ や 鱈 な ど を 釣 っ て 乾 燥 し食 糧 の 少 な い 冬 に 備 え た(図 版2)。 これ ら の 生 業 に も 増 して 海 か ら得 ら れ る 資 源 の 利 用,特 に 海 獣 猟 が 最 も 重 要 で あ る。 こ の 海 獣 猟 を 始 め とす る 海 と い う環 境 へ の 適 応 が
原 稿 受 領 日1983年 工2月7日
1)ア リュ ー ト語 の 表記 は 二 言 語 教 育 で 用 い られ て い る正 書 法 を 使 用 す る。t,ch〔t∫ 〕, k,q,d〔6〕,s,z,x,g〔 γ〕,玄 〔X〕,き〔猛〕,hm,m,hn,n,hng,ng,h1,1,
hw,w,hy,y,i,u,a。hm,hn,hng,hl,hw,hyは そ れ ぞ れm,n,ng,1, w,yの 気 息 音 化 した 音 素 を 表 わ す。
2)極 地へ の 適 応 につ い てLaughhn&Aigner1975を 参 照 。
〔53〕
ア リュ ー トの人 口 を 増加 させ(白 人 と接 触 を開 始 した頃,人 口 は約15,000人 と 推 定 され て い る),定 住 生 活 を 可 能 に した と思 わ れ る。
ア リュー トの 食 生 活 に お い て は,海 獣 と魚類(海 表1ア リュー トの食物 水 産 と淡 水 産 を 含 め)に 依 存 す る割 合 が 高 い 。
Laughlin(1980:p.49)の ウ ム ナ ク 島 の デ ー タ ,によ る と(表1参 照)海 獣 が30%,魚 類 が30%で 合計 60%に な る。 魚 類 が 海水 産 の もの を 含 ん で い る事 と
食 生 活 以 外 の 利 用 面 も考 慮 に入 れ る と,海 産 物へ の 依 存 度 は更 に大 き くな る。 海 獣 の 非 食 部 分 の 骨 は,
鈷 や 釣針 ・鈎 に加 工 され,腱 は糸 や 綱 に使 わ れ,皮Laughlin(1980:P49) は衣 服 ・皮 舟 に,油 は灯 明 ・調 味 料 に,内 臓 器 官 は,猟 衣 ・長 靴(図 版3)・
容器 と して 利用 され た。道 具 ・技 術 の 面 で も,皮 舟 と離頭 鈷(6節 で 詳 説 さ れ る) の精 巧 さ と狩 猟 の正 確 さが 不 幸 に も ロ シ ア 占領 時 代 の 毛 皮 獣 捕 獲 に 利 用 され た 事実 が あ る。 ま た 口頭 伝 承 の素 材 と して 海 が 舞 台 とな り海 獣 が 登 場 す る こ とが 多 く,海 と海 獣猟 の禁 忌 が い くっ か残 存 して い る こ とか ら精 神 面 で も海 獣 猟 は
ア リュー ト文 化 に と って重 要 な 要 素 で あ った と思 われ る。
以 上 述べ た よ うに ア リュ ー トの生 活 を知 る上 で,生 業 活 動 の 中 心 で あ る海 獣 猟 を,環 境へ の適 応,道 具 と技 術,知 識 と教 育 ・信 仰 ・社 会 組 織 と の関 連 か ら 把 握 す る こ とが ア リュ ー トの 民 族 誌研 究 に必 要 不 可 欠 で あ る。 この 目的 を 果 た す た め に,海 獣 猟 の 実 際 的 活 動 を調 べ る と共 に,海 獣 の 分 類,自 然 環 境 観 海 獣 に 関 す る信 仰,海 獣 の 形 態 ・生 態 の知 識,道 具 と技 術 の 知 識 伝 達,狩 猟者 の 社 会 組 織 の 面 に も注 意 を 払 う方 法 を とっ た。 ま た,上 記 の 諸 点 を言 語 の 面 と結 びつ け,道 具 ・技 術 や 海 獣 の 名 称 は もち ろ んミ 活 動 を表 わす 語 彙 を採 集 した 。 即 ち,活 動 の 実 際 を探 る民 族 誌 的 ア プ ロー チ と語 彙 構 造 を探 る(動 植 物 か ら親 族 名 称 な どの 社会 組 織 まで 様 々 な 藷彙 分 野 に つ い ての 民 族 分 類 を と らえ る)言 語 学 的 ア プ ロー チ を とっ た。 この 意 味 で,こ こに と った方 法 は言 語 人 類 学 的 ア
プ ロー チ と言 え る。
食品名 利用度
海 獣 30%
魚 類 30%
鳥 と 卵 20%
無脊椎動物 15%
植 物 5%以 下
2.島 民 の 生 活 と イ ン フ ォ ー マ ン トに つ い て
以 下 に 扱 わ れ て い る 狩 猟 活 動 と 語 彙 の 資 料 は,1981年 と1982年3)の 現 地 調 査 に よ っ て 情 報 提 供 者 で あ る3人 の 古 老 か ら 得 た も の を 中 心 と し て い る 。
調 査 地 は,東 は,ウ ニ マ ク 島,西 は,ダ ッ チ ハ ー バ ー の あ る ウ ナ ラ ス カ 島 に 挾 ま れ た ク レ ニ ッ ィ ン 諸 島 の 主 島 ア ク タ ン 島(図 版4)で,村 は,島 の 東 方 ア ク タ ン 湾 に 面 して 東 西 に 長 く 延 び て い る。 戸 数17戸,人 口 約65名 で あ る 。 情 報 を 提 供 して くれ た 古 老 の3人 は,い ず れ も こ の 島 で 生 ま れ 育 っ た 人 々 で,最 長 老 の ビ ル 老 人 は,1904年 生 ま れ,先 代 の 村 長 で あ っ た 。 故 ル ー ク老 人 は,1908 年 生 ま れ で1982年5月 に 没 す る ま で 村 長 を 務 め た 。 ラ リー 老 人 は,1915年 生 ま れ で,調 査 時 も 元 気 に 漁 携 に 従 事 して い た 。
図 版4ア ク タ ン島 概 略 図
Q
千
プ ク タン補 ア ク タン 湾
3)1982年 の 調査 は,文 部 省科学 研 究 費 補 助金(海 外 学 術 調 査)を 得 た 「西 南 ア ラス カ ・ エ ス キ モ ー の 人 類 学 的 調査 」(代 表 者 北 海道 大 学 文 学 部 教 授 岡 田 宏 明)の 分 担 者 と
して 行 な わ れ た もの で あ る。
ル ー ク 老 人 が 母 か ら伝 え 聞 い た 話 と して,母 の 父(即 ち ル ー ク 老 人 の 祖 父) た ち が 同 じ ク レ ニ ツ ィ ン諸 島 中 の 小 島 ア バ タ ナ ク か ら移 住 して 現 在 の ア ク タ ン 村 を 作 っ た と伝 え て い る 。 現 在 こ の 村 の 公 用 掲 示 板 の 下 に,ロ シ ァ 正 教 教 会 の 文 書 で 調 べ た と い う 日 付,1878年9月12日 を 村 立 記 念 日 と す る 旨 を 誌 して あ る 。
村 の 名 称,Akutanは,ア リ ュ ー ト語 でAkutan盛 と 言 い,も と は 太 平 洋 側 寄 り に あ る 火 山 の 名 称 だ っ た が,そ れ が 島 の 名,村 の 名 に な っ た と 言 う。 こ れ は,akuntanaえ が 語 源 で 「海 上 か ら見 て 高 くな っ て い る 陸 地 」 を 意 味 す る の だ と ビ ル 老 人 は 説 明 して い る 。
ア リ ュ ー ト民 族 の 自称 は,総 称 的 にUnangan(複 数 形)だ が,ア ク タ ン 島 民 の 部 族 名 は,Qigiigun(ビ ル 老 人 は,「 草qiig謡 の 多 い 所 の 人 」 と 解 釈 し て い る)と 言 い,古 く は,ク レ ニ ツ ィ ン諸 島 全 体 の 部 族 名 で あ っ た ら し い 。 近 隣 の ウ ニ マ ク 島 民Unimgin,ウ ナ ラ ス カ 島 民Qawalanginと 異 な る 部 族 で 言 葉 も ア ト カ 島 のNiiguginや ア ッ ッ 島 ∫DSasxinan程 で は な い が 異 な っ て い る と 言 う 。
村 の 歴 史 お よ び,伝 統 文 化 の 変 容 に お い て 重 要 な 事 件 は,表2に 示 さ れ て い る よ う に,戦 前 の1924年 か ら1939年 頃 に 起 き て い る 。 こ の 間 に 生 活 様 式 に 大 き な 変 化 が あ っ た 。 特 に 伝 統 的 な 半 地 下 住 居 の 「土 の 家 」(原 語 でchiqim ulagnaa)か ら 板 張 り の 家 に 変 わ っ た 点 で あ る 。 そ の 後,皮 舟 と 錆 に よ る 海 獣 猟 も み ら れ な く な り,夏 か ら秋 に か け て 集 団 で 近 隣 の 島,ア ク ン 島 に 行 っ て 行
な っ た 鮭 漁 も 戦 後 段 々 と行 な わ れ な く な っ た と言 う 。
情 報 提 供 者 の 老 人 達 は,青 年 期 に,伝 統 の 海 獣 猟 ・漁 携 を 体 験 して お り,そ 表2文 化 変 容 の 重 要 年 代(ア ク タ ン島)
年代 生 活 変 化
1924年 頃 灯 油 ラ ンプ(そ れ 以前 は,海 獣 油 と 石 ラ ンプ)か ら電灯 に 変 わ った 。 1925年 頃' 半 地下 式 「土 の 家 」 が7軒,そ の 後 減 り始 め た 。
1927年 頃 河 か ら水 を 汲 み,置 き 水 を 用 い て い た が,水 道 に な った 。 1932年 頃 最 後 の 「土 の 家 」 が 板 張 りの 家 に な った 。
1939年 頃 1912年 頃 か ら本 格 的 営 業 を して い た 捕 鯨 基 地 が 閉 鎖 さ れ た 。
の記 憶 を今 も伝 え 得 る最 後 の人 達 と言 え そ うだ。 以 下 に扱 われ る海 獣 猟 活動 と 語 彙 は,断 わ りの な い限 り これ らの 老人 達 か ら得 た もの で,必 要 な情 報 の不 足
して い る時 は,他 の島 の調 査 資 料4}を 引 用 す る。
3.生 業 活 動 語 彙
生 業 活 動 を 表 わ す 名 称 は,い く つ か あ る が 主 要 活 動 で あ る 狩 猟 と 漁 携 に 関 わ る 語 彙 は,表3の よ う に な る 。 こ れ ら の 名 称 に み ら れ る 接 尾 辞 一naa9一 は 「〜
を 得 る」 の 意 味 で,ikla‑naa9‑「 薪 を さ が す 」 な ど に も 使 わ れ る 。
漁 掛 活 動 のqigda一 は,川 で 行 な う鮭 な ど の ひ っ か け 鈎 漁 で あ り,道 具 で あ る 鈎 も そ の 動 詞 と 同 形 のqigd櫨 で あ る。imga9一 は,沖 合 で 行 な う オ ヒ ョ ウ ・鱈 な ど の 釣 糸 を 用 い て 行 な う 漁 で,道 具 の 釣 糸 をimgaξi父 と 言 う 。 kudmachi一 は,河 口 や 沖 で 鮭 な ど を 捕 る網 漁 で 「魚 網 」 をkudmachiえ と 言 う。
こ の よ う に,漁 携 は,道 具 の 違 い,即 ち 漁 法 の 違 い で 分 類 さ れ る 。
一 方,狩 猟 は,海 獣 猟 と 陸 獣 猟 の 区 別 な くmayaag一 とalga‑naag一 を 使 え
表3漁 携 ・狩 猟 語彙
上 位 概 念 下 位 概 念
動 詞 活 動 動 詞 活 動
qigda一 「鈎 漁 」
西
qa‑naag一 「漁榜 」 imga9一 「沖 釣漁 」
kudmaci一 「網 漁 」
ala‑naa9一 「捕 鯨 」
alga‑naa9一
「狩 猟 」 chngatu‑naa9一 「ラ ツ コ 猟 」
isug‑naa9一 「ア ザ ラ シ猟 」
mayaag一 ら
etc.
4)ウ ナ ラ ス カ 島 の 資 料 は,Veniaminovl840及 び1846(Geoghegan1944)と
Gromoff1975。 ウ ム ナ ク 島 の 資 料 は,Langhlin1980。 ア ト カ 島 の 資 料 は, Bergsland1980及 び1981。
る。 後 者 の 語 中 の 語 幹alga一 は,そ も そ も 海 獣 と 陸 獣 の 区 別 が な く広 く哺 乳 類 を 指 して 使 わ れ る。 区 別 す る と す れ ば,分 析 的 ・記 述 的 に 「海 の 獣 」alagum algaaと 「陸 の 獣ltanamalgaaと 表 現 す る 。 海 生 哺 乳 類 の 中 で も 鯨 は,他 の
海 獣 の ト ド,ア ザ ラ シ,オ ッ トセ イ,ラ ッ コ と 区 別 さ れ,総 称 語al謡 の 下 位 区 分 と し て 座 頭 鯨,號,イ ル カ な ど を 含 ん で い る(5節 参 照)。
生 業 活 動 者 を 表 わ す 名 称 に も 興 味 あ る 点 が 指 摘 で き る 。 漁 携 で は,qigda‑na‑
n「 鈎 漁 師 」(‑na一 は,動 詞 に 接 尾 し て 活 動 者 を 示 す)が あ る が,他 の 漁 法 で ,活動 者 を 示 す 語 は,臨 時 に 言 わ れ る こ と が あ る と し て も一 般 的 で は な い よ う だ 。
狩 猟 者 は,alganaag‑na‑nま た は,mayaag‑na‑nと 言 い,共 に 陸 獣 に も 海 獣 に も 使 う。 海 獣 猟 の 猟 師 は,alganaa含 一na‑nと 言 う が,捕 鯨 者 は,特 にalana.
a9‑na‑nと 言 わ れ る。 ま た,狩 猟 者 の う ち,特 に 専 従 的 に そ の 活 動 に 従 事 し, 優 秀 な 狩 猟 者 は,‑snika‑「 い つ も 従 事 す る」 を 後 置 し てmayaa含na‑snika‑n, alanaagna‑snika‑nと 呼 ば れ る 。 こ れ ら二 語 も極 め て 定 着 性 の 高 い 語 で あ る 。 特 に 捕 鯨 者 を 区 別 す る 名 称 が あ る の は,鯨 の 捕 獲 は,危 険 も 大 き い が(狩 猟 期
も冬 で,回 収 が い っ も可 能 と は 限 らず,他 島 へ の 寄 り鯨 に な る こ と も あ る), 捕 獲 し た 時 に 食 糧 ・材 料 と して 利 用 で き る 部 分 も大 き い と い う 事 実 に 関 係 が あ
る の で は な い か と思 わ れ る 。
4.自 然 環 境 の 語 彙
海 獣 猟 に 関 わ る 自 然 環 境 と な る と,そ の 範 囲 は 広 く,波 や 潮 流,岩 礁 や 海 浜 地 形,気 象 や 天 体 ま で 関 わ る こ と に な る。 こ こ で は,時 間 と 空 間 の 語 彙 と して, 暦 と方 位 ・風 を 中 心 に 見 て み る 。
4.1.ア リ ュ ー トの 民 間 暦
民 間 暦 は,1年 を 季 節 に 分 け,更 に 月 に 分 け て い る 。 週 は,ロ シ ア 語Heπe朋 か ら の 借 用 語,nidi1塗 を 用 い,ア リ ュ ー ト語 伝 来 の 語 は な い 。 年 は,表4に あ る よ う にsl雌 で あ る。 季 節 に 相 当 す る 語 は な い と 思 わ れ る 。 月 は,tugid欲 で,天 体 の 月 と 同 一 の 語 で あ る 。
季 節 の 名 称 を 表4で 見 る と,「 秋 」 と 「春 」 の 名 称 に 共 通 の 接 尾 辞 一kinga
表4年 ・季 節 を 表 わ す 語 彙
季 節 名 関 連 動 詞
年 sluまうる う 年slumqaaa「 高 い 年 」 slu‑「 ヱ年 を 過 ご す 」
夏 saaqudgi最/slu宜 saaqudgi‑「 夏 を 過 ご す 」/slu‑「夏 を 過 ご す 」
秋 saaqudikinga/kiimadgi最
一
冬 qang1X'.A qanag‑「 冬 を 過 ご す 」
春 qanikinga
「〜 の 後 半 」 が あ り,「 秋 」 は,「 夏 の 後 半 ↓ 「春 」 は 「冬 の 後 半 」 で あ る 。 こ こ か ら,ア リ ュ ー トの 民 間 暦 で は,1年 を 「夏 の 季 節 」 と 「冬 の 季 節 」 に 二 分 し て 把 握 し て い る の で は な い か と判 断 さ れ 筍 。 「秋 」 を 表 わ す も う一 っ の 名 称 のkiimadg盒 は,後 に 述 べ る月1の名 称 か ら の 転 用 か と 思 わ れ る 。 更 に,名 詞 の 季 節 名 を 動 詞 と し て 用 い る場 合 が あ り,こ の 場 合,「 夏 」 と 「冬 」 か ら 派 生 し た 名 詞 で あ る 「秋 」 と 「春 」 に は 動 詞 形 が な い 。 表 現 す る と す れ ば 「〜 を 過 ご す 」 と い う 動 詞ag一 を 用 い な け れ ば な ら な い 。 こ の 点 か ら も,ア リ ュ ー ト の 季 節 は,夏 と 冬 の 二 分 法 が 基 本 だ と思 わ れ る 。
次 に,表4で 「年 」 を ど う 考 え て い た か を 見 る と,s1雌 が 「年 」 も 「夏 」 も 意 味 す る。 こ の 事 は,「 年 」 を 「夏 」 で 数 え た の で は な い か と 推 測 さ せ る 。 た だ し,別 の 方 言 で あ る ア ト カ 方 言(Bergsland1980)で は,「 冬 」 の qan'giえ5)も 「年 」 を 意 味 し て 使 わ れ る と い う。 こ の ア トカ 方 言 で は,「 夏 」 と
「冬 」 を 数 え て1年 と し た の で あ ろ う か と 思 う 。 幽ユ年 を12の 月 に 分 け た 暦 は
,、ア ク タ ン 島 か ら の 資 料 と し て 得 ら れ な か っ た (現 在 は,ロ シ ア 語 の 借 用 語 を 用 い て い る)。Veniaminov(1840,1846)か ら, ウ ナ ラ ス カ 島 の 月 の 名 称 を ま と め た の が 表5で あ る 。
Cope(1919:p.139〜143)は,北 ア メ リ カ の 民 間 暦 を 分 類 し,自 然 現 象 の み に 言 及 し た もの を 記 述 的(descriptive)分 類 法,夏 至 ま た は 冬 至 を 暦 に
5)こ のqan'g塗 の ア ポ ス トロ フ ィは,ng〔o〕 との 混 同 を 避 け る た め に 用 い られ た 正 書 法上 の 規 則で あ り,n'gはnとgと い う子 音 の 連 続 で あ る こ とを示 して い る。
表5ア リュ ー トの 民間 暦
月 名 称 意 味 捕 足 説 明
1月 tugidi塘amaq 主要 な月 厳 寒 。
2月 anu1含iliq 海鵜を捕 る月 海 鵜 を網 で 捕 る 。
3月 kaduugi衰qis婁gunaq/
ulamllanqaglq 皮革食べ る先 の月/家
の申で食 べる月 昼が 夜 よ り長 くな る 。夜, 火 を燃 やす の を や め る 。 4月 agaluugi父(藝 夢agunaq/ ,
sadaganqagユq
皮革食べ る後の月/家
の外で食べ る月 夏 鳥 ・海 獣(トトセ イ)が 移 動 して 来 る 。ド,オ ッ 5月 ichich文ux/
chigumtugidaa 花 の.(咲 く)月 草 が生 え 出 す 。 ト ド,雄
の オ ッ トセ イの 狩 猟 。 6月 chagaligimtugidaa 鳥 ・海獣が子 を産む月
7月 sadigna孤tugidaa 海 獣 が 母 乳 で 太 って い
る月 鳥 の ひな が 現 わ れ る。 海
獣 の仔 が 活 動 始 め る 。 8月 ugnamtugidaa 海獣がやせる月 草 が しお れ る。 ひ な 鳥 が
飛 び 立 つ 。 9月 chngulinltugidaa 海 獣 の 毛,鳥 の 羽 が 落
ちて 毛 変 りす る月
10月 kiimadgimtugidaa オ ッ トセ イ狩 りの 月 オ ッ トセ イが 北 か ら移 動 して 来 る。
11月 kiimadgimkangin
tugidaa 狩猟の後の月
12月
暫
aga1ξaluq ア ザ ラ シを囮 を 使 っ て
捕 獲 す る月
組 み 込 み 名 称 と して い る も の を 天 文 的(astronomical)分 類 法,自 然 現 象 の 他 に 序 数 詞 を 用 い る も の を 数 に よ る(numeral)分 類 法 と3っ の 類 型 に 分 け て い る。Cope(1919:p.153)は,Veniaminovの 資 料 に 基 づ ぎ ア リ ュ ー ト暦 を
「数 に よ る類 型 」 と して い る6)。 こ れ は,年 初 め の 「1月 」 の 名 称 が,tugidi一
6)3月 の 名 称 をVeniaminov(1840)のHRAF英 訳(p.257)とCope (1919:p.153)で 「kaduug愉 ま た は,qisagunaq」 と して い る の は,kaduug派 qisagunaqと ま と ま っ た 語 句 と 思 わ れ る 。kaduu含 愉 は,次 の4月 の 名 称 に あ る agaluuξ 挽 と 対 を な して,「 前 の 」 「後 の 」 と そ れ ぞ れ 用 い ら れ る か ら で あ る 。 Gromoff(1975:p.19)を 参 照 。
igamaq「 主 要 な 月 」 で,記 述 的 名 称 で は な く,「 主 要 な 」 を 順 位 を 示 す と 考 え た か ら で あ る 。 しか し,「1月 」 を 数 に よ る 名 称,「3月 」 と 「4月 」,「10月 」 と 「11月 」 を 数 的 名 称 の 関 係 に あ る と し て も,月 の 名 称 に 記 述 さ れ た 自 然 現 象 に 海 獣 と 鳥 に 関 す る 言 及 の 多 い こ と は 注 目 に値 す る 。
6月 か ら12月 ま で は,海 獣(と 一 部 に は,鳥)の 繁 殖 期,出 産,養 育,毛 変 り,狩 猟 期 を 記 述 し て い る 。 狩 猟 者 と して 観 察 し た 結 果 で あ り,こ れ ら の 名 称 の 存 在 が,狩 猟 の 知 識 を 伝 承 す る 役 割 も 担 っ て い た と 思 わ れ る。 現 代 の 生 物 学 者 の 記 述 に よ る と 「ト ドは,5月 上 旬 に 繁 殖 期 が 始 ま り,6月 下 旬 に 出 産 の ピ ー ク を迎 え,7月 中 旬 で 養 育 を 終 え,雌 獣 と 幼 獣 は,雄 獣 の テ リ ト リ ー を 離 れ る 。 冬 に な る と ア リュ ー シ ャ ン列 島 の 海 峡 ・湾 に 避 難 す る か,更 に 南 西 ア ラ ス カ 海 岸 を 南 下 す る 」(Rearden1981:p.55〜p.56)と 言 う 。 こ の 記 述 に 照 ら
し て も 狩 猟 者 の 観 察 は,が な り正 確 な も の で あ っ た 。
更 にGromoff(1975:p.19)の 同 じ ウ ナ ラ ス カ の 暦 に は,鮭 の 名 称 に よ る 月 の 名,「7月 」aanumtugidaa「 紅 鮭 の 月 」 が 見 ら れ る 。Bergsland(1980) の ア トカ 方 言 の 暦 に は,「11月 」kyumtugidaa「 ム ラ サ キ 貝 の 月 」 と い う 海 産 の 貝 類 に 言 及 した 月 の 名 称 が あ る 。
4.2.風 と 方 位 の 名 称
日 本 語 の 方 位 は,基 本 的 に 東 西 南 北 の 四 方 体 系 で あ る。 ま た,風 の 名 称 は, 方 位 の 別 に よ り北 風,南 風 な ど と 区 別 す る 。 しか し,日 本 各 地 の 漁 村 で は こ の 方 位 に 依 ら な い 風 の 名 称 が 使 わ れ て い る 。 シ モ カ ゼ(北 東 風),ヤ マ セ(南 東 風),ピ カ タ(南 西 風),タ マ カ ゼ(北 西 風)な ど で あ る 。
ア リュ ー トの 方 位 は,風 の 名 称 と関 係 が 深 く,方 位 と 風 を 分 け て 考 え る の は 難 し い 。 表6は,左 欄 に ア ク タ ン の 風 の 名 称,右 欄 にBergsland(1981=p.
43)に よ る ア トカ の 方 位 名 称 を 掲 げ た 。 ア ク タ ン の 風 の 名 称 に あ るaxt誠 は,
「通 過 す る 」 の 意 味 で,こ の 語 を 取 り 除 く と 方 位 名 称 と し て 用 い る こ と が で き る 。 ア トカ 方 言 も 同 様 に,N,E,S,Wな ど の 方 位 名 称 にsl嘘r風 」 を 加 え, そ の ま ま で,風 の 名 称 に な る。
ア ク タ ン 島 の 風 ・方 位 名 称 の う ち,NとNEは,qiga一 と い う 語 幹 か ら
表6方 位 ・風 の 名 称 言名
方 位 ア ク タ ン(風 の 名) ア トカ(方 位 名)
N qigaadi衰 chugumhadaa
NE qlgaaganaXtaX・A qigaadi父
E qagaadaanaxtaま qagaahadaa
SE numadaana)とta量 qagayg1X 唖A
S agaagila窯 namhadaa
SW acha含u窯 naangatXU雲
W naadaanaxtaま naahadaa
NW chugumadaanaxta皇 sadagu最
の 派 生 で あ る。 従 っ てqiga‑,qaga‑,nu‑,aga‑,・acha‑,'na‑,chugu一 の7 っ の 語 幹 が 基 本 と な っ て い る。 こ の う ち,acha一 以 外 は,「 こ ・ そ ・ あ 」 の 体 系 の よ う に 空 間 的 位 置 を 示 す 「指 示 詞 」 の 類 で 専 ら,方 位 ・風 向 を 指 す 働 き が あ る 。acha一 は,「 上 ・下 ・内 ・外 」 の よ う な 相 対 的 位 置 を 示 す 「位 置 詞 」 の 類 で あ り,「 外 」 の 意 味 で あ る7)。
ア リ ュ ー トの 方 位 は,ア ク タ ン の 資 料 か ら見 る と,少 な く と も,東 西 南 北 の 四 方 位 よ り も 多 い と言 え る 。 こ の 方 位 区 分 の 多 さ と 風 と密 接 な 関 係 の あ る 点 は, 海 獣 猟 や 沖 合 漁 掛 が 風 に影 響 さ れ 易 く,列 島 は 風 向 が 変 わ りや す く,風 向 き に 幽 よ っ て 気 象 や 海 上 の 波 の 状 態 を 知 る 必 要 が あ っ た こ と と 関 係 が あ る と 思 わ れ る 。 ビ ル 老 人 は,東 と 北 東 風 は,霧 を も って く る と言 っ て い る 。 ビル 老 人 の 父 は, 悔 に 出 る 朝,早 く 起 き て 外 に 出 て,風 向 き で 天 気 を 予 想 し,潮 の 干 満 の 時 間 を
心 得 た 猟 師 で あ っ た と 言 う 。
7>ア トカ 方 言 のNWsada一 も 「外 」 の 意 味で,他 の 名 称 の 語 幹 と異 な り,位 置 詞 類 に 属 して い る。 指 示 詞 も位 置 詞 もア リュ ー ト語の 語 彙 の 中 で 数 も多 く複 雑 な 体 系 を もっ て い る。 指 示 詞 につ いて は,Bergsland(1973)が 詳 し く論 じて い る。
4.3.地 形 と地 名
地 形(山,川,海 浜,海 上)語 彙 と地 名(Bergsland1959参 照)も 海 獣 猟 に とっ て重 要 で あ る。 ビル 老 人 は,ア ク タ ン島 と近 くの ア ク ン島 の 地名 に詳 し い。 ア ク ン島 は,夏 ・秋 の鮭 漁 期 の キ ャ ンプ 地(実 際 に は,か な り恒 常 性 の高 い半 地 下 式 住 居 を建 て た 村 で あ っ た と言 う.)と して,ま た ア ク タ ン島 と ア ク ン 島 の間 の海 峡 は,海 獣(特 に オ ッ トセ イ)の 南下 ル ー トと して 重要 で あ っ た。
更 に東 方,ア ラ ス カ半 島 に接 す る ウニ マ ク島 も海 獣 猟 の 狩 猟地 で あ っ た 。 こ の よ うに狩 猟 の ため 海 上 を 遠 く出 か け る時 に 海岸 線 の 地名 と地 形 は,生 死 に関 わ るの で重 要 で あ る。 ま た,海 岸 の崖 に登 って 行 な う鳥 の 卵 採 集(uxch雌 ツ ノ メ ドリな ど は,成 鳥 の羽 を服 の飾 り と した)の た め に も地 形 を 知 る必 要 が あ っ た。 そ れ で子 供 を舟 に乗 せ て 行 き,あ る場 所 で 下 ろ して 村 ま で 歩 い て帰 ら せ る とい う訓 練 を した そ うだ 。
5.海 獣 の 分 類 と 生 態
ト ド,ア ザ ラ シ の 生 息 数 は,ア リ ュ ー シ ャ ン 列 島 海 域 に 特 に 多 く(以 下 の 数 字 は,Rearden1981に 依 拠 す る),ア ザ ラ シ(Harbor(hair)sea1)は,
1卯2年 の 原 住 民 以 外 の 狩 猟 を 禁 止 し た 年 の 統 計 に よ る と,ア リ ュ ー シ ャ ン 列 島 が,125,000頭 で,コ デ ィ ア ク 島 の3,500頭 を 大 き く 引 き 離 し て い る 。 ま た ト
ド(Stellersealion)は,ユ972年 同 統 計 で ア ラ ス カ 全 体200,000頭 の う ち, 列 島 に 約50,000頭,列 島 内 で は,ア ク タ ン 島 に 最 高 数 の15,700頭 が 生 息 し て い る 。 オ ッ トセ イ(Northernfurseal)は,プ リ ビ ロ フ 諸 島 で 世 界 全 体 の 約 80%が 繁 殖 し,10月,11月 に 列 島 を 通 過 し て 南 下 す る。 ラ ッ コ は,1867年 ア ラ ス カ 購 入 時 に は,600,000か ら800,000頭 の 間 と 推 定 さ れ,1973年 統 計 で は, 100,000か ら125,000頭 の 間 で,列 島 を 中 心 に 生 息 し て い る 。
生 息 数 が 多 く狩 猟 対 象 と も な っ て い る こ れ ら の 海 獣 の 名 称 を 調 べ た も の が 表 7で あ る。 海 獣 は,3節 に 述 べ た よ う に 陸 獣 と 区 別 さ れ る 時 にala念umalgaa と呼 ば れ,鯨al拡 を 除 い た 海 生 哺 乳 類 を 指 す こ と が 多 い。 海 獣 名 称 に は,表 7の 他 に セ イ ウ チ(Walrus)amgaad櫨 が あ る が,列 島 で は,時 々,時 化 や 風
表7海 獣の名称
総 称称 下 位 語
qawa窯 ト ド qawatx鼠 雄 の 中で 最 大 の もの
ugina弐 雄
xulstaaka父(R.)未 婚 雄 qawamayagaa雌
qawaad誠 仔
iSU父 ア ザ ラ シ ungimkangansigaa雄 の 中 で 最 大 の もの
isugimaliga雄 isu言imayagaa雌 isugaad盛 仔
laaquda又 オ ツ ト セ イ' aataax雄
xulstaakaま 未 婚 雄 laaqudamayagaa雌 laaqudaad磁 仔
chngat雌 ラ ッ コ chngatumayagaa雌 chngatu皿ciidaa仔
向 き の 関 係 で 流 氷 に 乗 っ て 現 わ れ る以 外 に 見 か け な い そ う だ 。 ア ク タ ン 島 の 古 老 は,狩 猟 しな か っ た の で は な い か と 言 う が,「 セ イ ウ チ の 牙 」 を 意 味 す る 語 tumg誠 が 存 在 し,伝 統 的 狩 猟 帽 子(chagud誠)の 装 飾 と して 利 用 さ れ て い る こ と か ら,以 前 は,ア ラ ス カ 半 島 部 ま で 狩 猟 に 出 か け た か,交 易 で 手 に 入 れ た
も の か と 思 わ れ る 。
海 獣 の 中 で 最 も多 く狩 猟 さ れ,食 糧 ・材 料 と して 利 用 さ れ た の は,ト ド,ア ザ ラ シ,オ ッ トセ イ で あ る 。 ラ ッ コ は,伝 統 的 な 狩 猟 対 象 獣 で な か ら た よ う だ 。
ロ シ ア の 毛 皮 交 易 に ラ ッ コ猟 が 始 ま っ た と 言 う 。 そ の 事 は,ラ ッ コ の 名 称 が, chnga‑tu一 文(chnga‑「 毛 」‑tu‑』 「多 い 」 一 即 ち 「毛 の 多 い も の 」)と い い,
二 次 的 な 派 生 名 称 で あ る こ と か ら も窺 え る。 ま た,ビ ル 老 人 の 伝 え る 民 話 と し て 「い と こ 同 志 の 二 人 の 男 の 子 が い た 。 あ る 日,海 で 東 西 に 分 か れ て 泳 い で い た が,二 人 共 自分 達 の 島 に 帰 れ な く な り,気 づ い て み る と ラ ッ コ に な っ て い た 」
と い う ラ ッ コ の 先 祖 が 人 間 だ と 言 う 話 が あ り,人 間 が 先 祖 な の だ か ら狩 猟 し な か っ た と 言 う し,ロ シ ア 時 代 に も毛 皮 を と っ て も 肉 は 食 用 に し な か っ た と言 う。
表7の 下 位 語 の 欄 を 見 る と,ト ド,ア ザ ラ シ,オ ッ トセ イ に 雄 成 獣 を 表 わ す 特 別 な 語 が あ る の に 気 づ く 。『ト ドの 最 大 の も の は,qawatx塗 と 言 い,雄 は u暫n醜 で,若 くハ ー レム を持 て な い も の は,xulstaak櫨(ロ シ ァ 語xo皿ocT皿 か ら の 借 用 で,ア リ ュ ー ト伝 来 の 名 称 は不 詳 で あ る)と 呼 ば れ る。 オ ッ トセ イ
も 同 様 に,雄 成 獣 がaataaxと 区 別 さ れ て い る。 ア ザ ラ シ の 雄 成 獣 は,isugim aliga「 ア ザ ラ シ の 雄 」 以 外 に な く,最 大 の も の を 特 にungimkangansigaa (「男 根 ま で 一 ひ ろ の 長 さ 」)と い う 。
雌 は,分 析 的 に二 語 で,ayaga一 を 用 い 「〜 の 雌 」 と 表 現 さ れ る 。 ト ド の 幼 獣 養 育 期 の 雌 は,授 乳 で 脂 の 乗 っ た 胸 肉 が 賞 味 さ れ る の で,特 にumch憾 (umchu‑「 吸 う 」)と 呼 ば れ る 。
幼 獣 は,ト ドをqawaad櫨,ア ザ ラ シ をisugaad謡,オ ッ ト セ イ をlaquu‑
daada支 と言 い,共 に 一(a)ad醜 と い う 指 小 辞 を 接 尾 す る 。 一 方,ラ ッ コ は, そ の 幼 獣 をchngatuud誠 と 言 え ず,chiid醜 「海 ・陸 獣 及 び 鳥 の 子 供 」 を 用 い て 表 現 す る 。 ア ク タ ン 島 で 得 られ な か っ た 資 料 で,更 に 細 分 し た 分 類 が,ア
トカ 方 言(Bergsland1980)に み ら れ,ア ザ ラ シ1歳 未 満 で 母 獣 の 元 を 離 れ た ば か り の も のchaga1派,二 歳 の も のalgimchng櫨inat孟(「 二 回 目 の 毛 変 り し た も の 」)が あ る 。
鯨 の 名 称 は,表8に 掲 げ て あ る が,情 報 提 供 者 の 老 人 た ち に も伝 統 的 狩 猟 の 経 験 が な く,特 に ア ク タ ン 島 に は,20世 紀 初 頭 ノ ル ウ ェ ー 人 が 捕 鯨 基 地 巻 設 け,
古 老 達 も 若 い 頃,近 代 設 備 の 捕 鯨 船 で 働 い て い た の で ア リ ュ ー ト伝 統 の 捕 鯨 に 関 す る 情 報 は 少 な か っ た 。 ま た 鯨 の 名 称 も,性 別,年 齢 別 の 区 別 が あ る か ど う か 確 認 で き な か っ た 。
海 獣 の 身 体 部 位 名 称 は,ほ と ん ど 人 間 の 身 体 部 位 名 称(詳 細 な 研 究 と し て
66 人 文 研 究 第67輯 表8鯨 の名称
総 称 下 位 語
ala父 鯨 um含uli衆 しろながす鯨 嗣
agdagi窯 ま っ こ う鯨
alamax 座頭鯨
唱
mangiida父 なが す鯨
a奮lu父 號
kulama玄 せみ鯨
agama衰chix い わ し鯨
alaadaま イ ル カ
Marsh&Laughlin1956が あ る)と ほ と ん ど 同 じ で(毛 皮igluq謡 は 別 に して も)ア ザ ラ シ の 前 ひ れ 足 は,chakixで,cha‑「 手 」 と 同 じ,後 ひ れ 足 は, kitakixで,kita‑「 足 」 と 同 じで あ る8,。 ア リ ュ ー ト の 解 剖 語 彙 は,精 緻 を 極 め た も の で,海 獣 と 人 間 の 比 較 も 行 な わ れ た と 見 え,対 応 す る 器 官 を 同 じ名 称 で 指 して い る 。 こ の 知 識 は,古 く死 体 を ミイ ラ化 し た 葬 制 の 習 俗 に も 関 係 し て い て,ミ イ ラ の た め の 解 剖 と 海 獣 解 体 の 日 常 的 実 践 が 相 乗 的 に 働 い て 詳 細 な 解 剖 知 識 を 代 々 伝 承 さ せ る 結 果 と な っ た と 思 わ れ る 。
6.皮 舟 と 狩 猟 具
6.1.皮 舟
舟 に 関 す る語 彙 は 表9に 掲 げ る他 に,ay舶as塗 とsun櫨 が あ る。ayねas愉 は,ay舶 一 「海 上 を 進 む 」 か ら 派 生 し た 「海 上 航 行 に 使 う もの 」 の 意 味 で,舟 の 総 称 と して 用 い られ る 。sun櫨 は,ロ シ ァ 語cyπHOか ら の 借 用 語 で 帆 船, 汽 船 の 外 国 船 を 指 して 使 わ れ る 。
ア リ ュ ー ト伝 来 の 舟 は,い ず れ も 皮 張 り で,ト ドか ア ザ ラ シ の 皮(igluqa幻 を3〜4枚 縫 い 合 わ せ て 作 っ た 。 流 木 で 枠 組 み を 作 る の は 男 の 仕 事 で,海 獣 皮
8)cha‑kix,kita‑kixの 一kixは,双 数 形 で2本 の ひ れ 足 を 指 す 。
ア リュ ー トの海 獣猟 と 語彙(大 島)
を縫 うの は,女 の仕 事 で あ る。 特 に 女 性 が 裁縫 す る時 に は,身 体 を洗 い 浄 め,髪 を 洗 っ て 束 ね て 仕 事 を し た。 髪 の毛 が 縫 い 目 に入 らな い よ う にす る た めで あ る。 ま た野 草 な ど陸 で とれ た草 が 縫 い 目 に入 るの も嫌 っ
表9皮 舟の名称
67
iqa父/iqaada玄 一 人 乗 り 用 カヤ ック 型
uluxtaadax二 人 乗 り 用 ulu動a1きuま 三 人 乗 り用
た 。 こ の タ ブ ー を 破 る と 海 獣 は,髪 の 毛 や 草 を 嫌 っ て 狩 猟 者 を 近 づ け な い と さ れ た 。
皮 舟 のiq櫨, .ul櫨t謡 は,カ ヤ ッ ク 型 で 図 版5に あ る よ う に 甲 板 部 分 も 皮 張 りで あ る 。 こ れ らは 海 獣 猟 ・捕 鯨 に 用 い られ た 。 三 人 乗 り のu1櫨ta19憾 は, 狩 猟 よ り も人 の 運 送 手 段 と して 使 わ れ,鮭 漁 な ど で 家 族 で 近 隣 の 島 に 行 く 時 や 宣 教 師 を 乗 せ る 時 に 使 わ れ た と 言 う。 ウ ミヤ ッ ク型 の,舟 底 に だ け 皮 を 張 っ た オ ー プ ン ・ ボ ー トのn鼠al盛 は,ア ク タ ン 島 で は,猟 に 用 い な か っ た と言 う 。 プ リ層ビ ロ フ 諸 島 で は,現 在 も 流 木 集 め,石 炭 運 送 に 用 い て い る の だ そ う だ 。
こ の カ ヤ ッ ク 型 と ウ ミヤ ッ ク 型 の 区 別 は,罹 の 形 状 ・種 類 の 違 い と 対 応 して
図 版5カ ヤ ッ ク(iqaada幻 を 漕 ぐ ア リ ュ ー ト
UniversityofWashington,Seattle.EdwardW.AllenCo11ection.
Morgan1980:"TheAleutians"よ り 転 載
68 人 文 研 究 第67輯 表10擢 の 名 称
擢 の 種 類 関 連 動 詞 用 途
aqadguus量 片 車 権 angaguusi玄 両 車 擢
iqagi一 片 車 擢 で 漕 ぐ anga§lu一 両 車 権 で 漕 ぐ
iqa窯 とuluxta父 に 用 い る
qisngiisi文 舵 nu£aas量 オ ー ル
qisngi一 舵 を 取 る nugaada一 漕 ぐ
ni£ala玄 に 用 い る
吟 る 。 表10に あ る よ う に 「車 擢 」 は カ ヤ ッ ク 型 皮 舟 に 使 わ れ,オ ー ル と舵 が ウ ミ ヤ ッ ク 型 皮 舟 に 使 わ れ る 。 更 に,車 擢 に は,片 車 と 両 車 が あ り,そ の 用 途 の 違 い は 残 念 な が ら不 詳 で あ る が,・関 連 動 詞 に も 片 車 罹 と 両 車 擢 に 区 別 が 見 ら れ
る 。
表11に 掲 げ た も の は,ア ク タ ン 島 で 得 ら れ た 皮 舟 の 部 分 名 称 で あ る 。 舟 首 の 形 状 は,図 版5の よ う に,二 股 状 に 裂 け た 形 が 特 徴 的 で,ア トカ 方 言(Bergs‑
land1980)で は,changixは,舟 首 全 体 の 他 に 裂 け た 二 股 の 上 部 の み を 指 し て も 使 わ れ,そ の 時,下 部 の 名 称 は,iiguya憾 と 言 う 。 こ れ は,ラ ッ ユ が 海 上 に,背 を 下 に し て 浮 か ん で 食 餌 ・授 乳 す る 時 の 姿 勢 で,顔 の 前 に 前 足 を も っ
表11皮 舟 の 部分 名 称
cha皿gix ukanga£
chuni父 unmaxikix agdangin kil含ingin ulu宜
suka皇 ,
chudgusingin axtUUSIX
舟 首 舟 尾 竜 骨 舷 縁 甲板上 の肋材 舟底の肋材 乗 り口
乗 り口の防水胴衣 防水胴衣の ひも
防水胴衣のひ もで背中か ら肩に斜めに縛 るひ も
て く る 姿 を 模 倣 し た と 言 わ れ て い る(Laughlin1981:p.34)。 竜 骨 のchun逡 が 「背 骨 」,肋 材 のagd欲 が 「肋 骨 」 で あ る の も 舟 を ラ ッ コ と 見 た て て い る
こ と と 関 係 が あ る と思 わ れ る 。
皮 舟 の 乗 り 口 に は,防 水 胴 衣 が 装 備 し て あ り,図 版5の よ う に 狩 猟 者 は, オ ッ トセ イ の 腸 膜 で 作 っ た 防 水 猟 衣 の 上 下 服(chigdax双 数 形)を 着 て フ ー ド を被 っ て,更 に そ の 上 に 木 製 狩 猟 帽chagud醸 を 被 っ て 乗 る。 乗 り 口 の 囲 り の 胴 衣(suka幻 を 胸 ま で 引 き 上 げ,周 囲 の 紐chudgusinginを 縛 っ て し ぼ る 。 更 に 胴 衣 の 紐axtuus派 を 肩 か ら胸 元 へ た す き に か け て,胴 衣 が 下 が ら ぬ よ う に す る 。 こ うす れ ば,完 全 な 防 水 が で き,乗 り 口 か ら船 体 内 に 水 が 入 ら な く な る 。 こ の 船 体 内 部 に は,水 入 れ のtaangadguus派 を 常 備 し,ま た 解 体 した 獲 物 ・ 魚 を 入 れ る 。 ま た,甲 板 上 に は,ト ドの 胃 袋 で 作 っ た 浮 袋anikaas疎 を 置 く。
枠 木 の 材 料 で あ る 流 木 の ス ギ(lalu幻 と 皮 の た め に 舟 の 重 量 は 軽 く,獲 物 の 運 搬 も水 の 浮 力 を 利 用 で き る の で,陸 上 に 比 べ て 重 い 物 を 一 度 に 運 べ る と い う 利 点 が あ る 。
a2.狩 猟 具
ア リ ュ ー トの 狩 猟 具 の 特 徴 は,獲 物 に 刺 さ る と 錆 先 が 中 柄 か ら は ず れ る 離 頭 鈷 と,錆 の 投 て き 距 離 を 伸 ば す 投 槍 板(図 版7)で あ る。 全 て の 海 獣 に こ の 鈷
図版7鈷 と投槍板
へ,
ノ 、
Aー
一B
一
口D C
イ
表12錺 の名 称 と 製作
イ.as文u衰 投槍板 A:人 差 し指 ・中 指 ・薬 指 の3本 の 指 幅
ロ.at父uま 人差 し指 を入れ る穴 B:同 上
ハ .igl醜 錆全体 中 指 と 親 指 を 広 げ た 長 さ に 親 指 の 第C=
一 関 節 まで の 長 さ
二 .agada弐 柄 D二 人 差 し指 と親 指 を 広 げ た 長 さ
ホ.tumg誠 中柄 E=顎 か ら人 差 し指 の 間
へ .saxsi父 曲 が っ た鑛 F:人 差 しと親 指 を 広 げ た 長 さに 第2関
節を折 り曲げた人差 し指 と親指の間
ト.ayaquuda量 ま っす ぐな鍛 の 長 さ 。
が 使 わ れ た 。 た だ 錆 先 の鍛 が 獲 物 に よ っ て 異 な っ て い る。 ラ ッ コ に は,鍵aquu‑
d謡 と 呼 ぶ ま っ す ぐ な 鍬,オ ッ トセ イ,ア ザ ラ シ,ト ドに は,曲 が っ た 鎌 (saxs愉 ま た は,saxsiida£)が 使 わ れ る 。 こ のsaxs塗 は,海 獣 が 海 を 潜 っ/
た り 浮 い た り し て 進 ん で い る時 に 有 効 で,射 た れ た 鈷 は,一 度 海 に 潜 っ て 海 上 に 浮 き あ が り,海 獣 の 動 き に 合 わ せ る よ う に して 獲 物 を 仕 留 め る 。 こ の 他 に, 石 製(海 獣 用 鍛 は 骨 製)の 鍬chungulumsaxsiida船i含iiが あ り,戦 争 に 用 い
られ た 。
投 槍 板as父 雌 は,ig1戚(錆)の 柄 頭 を,板 の 中 央 の 溝 に 当 てa臆 憾 に 人 差 し指 を 入 れ て 肩 の 後 方 ま で 腕 を 伸 ば して 投 げ る。 こ う し て 腕 の 振 り を 大 き くで き る の で 最 大 約45mも 投 げ る こ と が で き た と い う 。a醜 雌 は,時 に 失 な う こ と が あ る の で,ア ザ ラ シ の 腰 骨 を 予 備 に 舟 上 に 積 ん で お く。
名 称 に つ い て 言 う と,指 を 入 れ る 穴 は,a城 嘘 と 呼 ば れ,「 指 」 の 意 味 で, 鈷 の 中 柄 のtumg盤 も 「牙 」 の 意 味 で あ る の が,特 徴 的 で あ る。 こ の 他 にas一 舶 父 の 表 の 赤 色(図 版6参 照)は 血 を 表 わ し,裏 の 黒 色 は,海 獣 の 毛 色 を 象 徴
し た も の だ と 言 う 。
こ の 鈷 と 投 槍 板 の 製 作 は,表12のA〜Fに あ る よ う に 製 作 者 の 腕 ・指 を 使 っ て 計 る の で 極 め て 個 人 的 な 所 有 物 で あ り,他 人 は 使 う こ と が で き な い 。 ア リ ュ ー ト は,冬 に 集 ま っ て す る 賭 け 事 が 好 き だ っ た 。 ト ドの 指 関 節 を サ イ コ ロ に して 行 な うmaq欲 と い う ゲ ー ム で は,皮 舟 か ら家 ま で 賭 け る こ と が あ る が,こ の
錆 だ け は,製 作 者 本 人 しか使 え な いの で 賭 け る こ と はな か っ た と言 う。
6.3.狩 猟 活 動
皮 舟 と鈷 の組 み合 わせ で 行 な う海 獣 猟 活 動 を アザ ラ シ猟 を 例 に して 概 観 して み る。 ア ザ ラ シ猟 は,数 双 のulu計aad櫨(二 人 乗 り)で 行 く。 こ れ は,特 に 嵐 に襲 わ れ た時,舟 を結 びっ け る こと で難 を逃 れ る の に便 利 だ と言 う。ulu匁 taad欲 に乗 るの は,父 と子 ま た は,叔 父 とお い の 組 み 合 わ せ で,agitaad誠 (パ ー トナ ー)と 呼 び 合 う。 前 に 乗 る の は,熟 練 者 で,後 部 に 乗 る 者 は, ukaatx塗 と呼 ば れ る。 獲 物 を 見 っ け る と,罹 を 上 げ て 知 らせ る。 す る と他 の 舟が遠 巻 きに して,最 初 に 見 っ けた 舟 の 前 の 座 席 の 者 が一 番 錆 を 射 っ の を 待 っ 。 後 席 の 者 は,舟 が 揺 れ な い よ うに 権 で 舵 を 取 る。 二 番鈷 は,同 じ舟 の後 席 の者 が射 っ 。 そ の錆 も失 敗す ると他 の舟 の者 が 鈷 を射 って も よ い。 錆 が 刺 さ る と, 鑑 が 抜 けて,綱 の つ いた 鎌 が 海 中 へ 引 きず り込 まれ る が,息 をす る度 に鎌 が 体 中 に深 く食 い込 む の で,ア ザ ラ シは 息 苦 し く な っ て 水 面 に 浮 か ぶ 。 そ れ を 棒 (anax)で 頭 部 を打 って 絶 命 させ る 。解 体 は,岩 礁 が 近 くに あれ ば,そ こ ま で 獲物 を 運 ん で 行 な う(図 版8参 照)。 解 体 した肉 ・骨 ・皮 な ど は 皮 舟 の 中 に入 れ て,更 に猟 を 続 け る ため に獲 物 を追 う。
この 舟 の 操 作 ・鈷 うち は,全 て 坐 って 両 足 を 伸 ば した 姿勢 で行 な う。 この た め に,生 まれ たば か りの 子 供 の 足 を膝 の 所 で 皮 ひ もで 縛 り,足 を 伸 ば した ま ま の状 態 に して お くと言 う。 ま た,遊 びの 中 に も鈷 うち が 取 り入 れ られ,図 版9 のayaqumalgaa「 投 矢 の海 獣 」 の標 的 に3本 の矢 羽 の っ い た鯨 骨 製 の投 げ矢 ayaq雌 を投 げ合 う。 この標 的の 中 央 の点 と線(赤 は 血 の 色 の 象徴 で あ る。 図 版9参 照)が 高 い点 数 で あ る。 この標 的 を お互 い の 右 隣 に 吊 る し,競 技 者 が 向 か い 合 って 両足 の膝 を伸 ば した 状 態 で投 げ 合 い,点 数 の 高 さ を競 う。 向 か い 合
く
って い るの で相 手 に あて て はた い へ ん な の で,真 剣 な ゲ ー ムだ と言 う。 ま た 錆 うち の 訓練 は,若 者 が舟 の 後 席 に 坐 って い る 間 の2年 間,毎 日家 の外 で何 時 間 も投 げ る訓 練 を し,初 め て 前 の 座 席 に 坐 り,一 番鈷 を うた せ て も らえ る と言 う。
7.結 語
ア リュ ー ト伝 統 の 海獣 猟 活 動 と語 彙 を3節 か ら6節 まで に見 て きた。3節 で は他 の 生 業 活動 で あ る漁掛 とそ の 語彙 とを比 較 し,漁 携 が漁 具 ・漁法 に基 づ い て 区 別 され て い るの に 対 して,海 獣 猟 は,道 具 ・技 術 的 に区 別 され て い な い(6 節 参 照)と 言 う こ とが わ か った。海 獣 猟 の 中 で も捕 鯨 は,語 彙 的 に も区 別 され て い る と思 われ る。4節 で は,民 間 暦 を 取 り上 げ,一 年 が基 本 的 に夏 と冬 の 季 節 に 分 割 され て い る こ と,月 の名 称 に 狩猟 の 出産 ・養育 か ら狩 猟 期 まで の知 識 が 盛 り込 ま れ て い る こ とが 指 摘 され た。 更 に,方 位 と風 の名 称 の 間 に は,密 接 な関 係 が あ り,方 位 は,海 上 生 活 にお いて,重 要性 を もつ の で,四 方 位以 上(ア ク タ ンで は,七 な い し八方 位 と考 え られ る)の 体 系 とな っ て い る。5節 で は,海 獣 の 名 称 を扱 い,雄 成 獣 に 特 別 な 名 称 が 見 られ る こ と,海 獣 と人 間 の解 剖 用語 が 同 じで あ る こ とに 特徴 が あ る点 を 指 摘 し た。6節 で は,皮 舟 の 分類 と,構 造 を 示 す 部 分 名 称 を み た。 ま た,離 頭 錆 の 製 作 と部 分 名 称 を 掲 げ,錆 と投槍 器 が 極 め て 個 人 的 な 所 有 物 で あ る こ とが 指 摘 され た。 ま た6節 で は,ア ザ ラ シ猟 を 例 に狩 猟 行 動 を 概 観 し,皮 舟 操 作,鈷 う ちの 訓 練 が ゲ ー ム の 中 で も行 な わ れ る
こ とを 見 た。
こ の よ うに ア リュ ー トの海 獣 猟 は,ア リュー トが 海 上 で の 生 業 活 動 を 有 効 に す る ため,道 具 ・技 術 の 面 で も,海 獣 の 形 態 や 隼 態 及 び 環 境 に関 す る知識 の蓄 積 ・伝 達 の面 で も,更 に狩 猟 技 術 の伝 達 や それ に伴 う人 間 側 の 組 織 の 面 で もア リュ ー ト文 化 の 中で 高 度 な発 展 を遂 げ た分 野 と言 え る。 本 論 文 で 海 獣 につ い て の 信 仰 や 社 会 組 織 につ いて の 情 報 は断 片 的 に しか触 れ られ て いな い。 これ らの 点 につ いて は,今 後,語 彙 構 造 の 分 析 を中 心 と し,民 話 や伝 承 を 分析 す る こ と で,更 に広 く深 い知 見 が 得 られ る であ ろ う。
ア リュ ー トの 海 獣 猟 と語彙(大 島)
引 用 文 献
Bergsland,K.1959."AleutDialectsofAtkaandAttu."野 α 船 αc痴oηsof
仇 θAmθrεcα πP配Zosopん̀cαZSos̀ε リ ノ,VbZ.49,翫r古3.Philadelphia.
1973."AleutDeixis."ハ 配)rω θg̀α πJbμmαZqプL̀㎎ 認s̀εcs,VoZ.27.
1980.Àん απAZe肱̀一 恥8Z̀sh1)̀cε め παrッ.NationalBilingualMaterials pevelopmentCenter.
Bergsland,K.&M.・Dirks.1981.廊 たαπ ノ監Ze砿&んooZGrα πLmαr.National BilingualMaterialsDevelopmentCenter.・
Cope,Leon1919."CalendarsoftheIndia阜sNorthofMexico."し 履 ひε㎎ 疲yq1
α 濫Z加r磁PωbZ̀cὰ̀o始̀πAmer蜘 πArcん αe・̀・9ツ α認 盈 んπ・Z・8y,VbZ.ヱ4,
No.4.
Gromoff,Ismai11975.AZε ὼ/br1艶gZπ πθお 。AleutLangua倉eInstruction, 'U nalaskaCitySchool.
Laughlin,W.S.'&JeanS.Aigner1975."AleutAdaptationandEvolu‑
tion."Fitzhugh,W.
.(ed.)WbrZd、4π 仇ropoZo8y:片 θ毎s̀or̀cハ 蛋αr漉mθ
ムdα μ α古̀oπqμ んeαrcα 肌poZαrZbηe.Mounton。
Laughlin,W.S,1980。 、4Zθ砿s:&6rり̀ひors(ゾ 仇 θBθr̀㎎Lα ηd正 か̀dgθ.
Holt,RinehartandWinston.
Marsh,G、H.&W。S.LaughlinI956."HumanAnatomicalKnowledge ロ
amongtheAleutianlslandets."Sbμ̀ん ωes̀εmJbωmαZ(ゾ!1π̀んropoZogン,
Vò.ヱ2,ハb.ヱ 。
Morgan,Lael(ed.)1980."TheAleutians."Aiαsん αGeogrαp配c,VbZ.7,
No.3.TheAlaskaGeographicSociety.・ 、
コ
Rearden,Jim(ed.)1981."AlaskaMammals."、4ε αsん αGεogrαpん̀c,VbZ.8, ハb.2.TheAlaskaGeographicSociety.
、Veniaminov,1.1840.Nb̀εsoπ 仇e翫 αZαsた αPεsεr̀c̀.HRAFfiles,M‑5.
1846.,01zう 〃z勿 σ溜 〃 α〃2躍κπあ α鴻¢y〃z6κ ひ4%̀6θ βoκoaoπ3膨 κα.CaHKT皿eTep6yprb
(Geoghegan,R.H.1944.%eAZθ 鵬Lα π8㏄ αgθ.U.S。Departmentofthe
lnterior.)'
図版3オ ッ トセ イの 喉(長 靴 を 作 る)
駆ジ/竪 議
図 版6ア リ ュ ー トの 猟 具
製 作 者 の ビル 老 人 は,数 少 な い ア リュ ー ト伝 統 民 具 の 製 作 者 で あ る。
上 よ り,海 獣 用 鈷 と投 槍 板,左 右 にmii9誠 太 鼓,下 は,狐 罠 kliisa父
図 版8解 体 中 の ト ド
図 版9ア リ ュ ー トの 遊 び ・投 矢 (ayaqu幻 の 標 的