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Academic year: 2021

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レーザー誘起蛍光法の

VOC(揮発性有機物質)測定への応用

1. はじめに

 建材で用いられる防腐剤や接着剤,

壁用の塗料から発生する揮発性有機化 合 物(VOC: Volatile Organic Com- pounds)はシックハウス症候群の原 因物質と考えられ,その低減技術の開 発は安全で安心な住環境の維持とい う,われわれの身近な環境問題として 極めて重要である.この VOC はホル ムアルデヒド,トルエン,キシレンな どの化学物質であり,現在 VOC フリー 塗料や VOC 発生量が少ない材料の開 発が進められている.しかしながら,

現段階ではすべての塗料や接着剤を VOC フリー化することは難しく,さ らなる技術開発が望まれている.

 現在,VOC の計測法としては,空 気をサンプリングしてその濃度を測定 することが行われているが,局所的な VOC 発生状況の可視化ができれば,

低 VOC 材料の開発や,より詳細な環 境評価技術への貢献ができるものと考 えられる.そこで,本研究ではレーザー 誘起蛍光(LIF: Laser Induced Fluo- rescence)法と呼ばれる方法を用いて,

VOC の発生状況を可視化することを 試みた.以下ではこれについて簡単に 紹介する.

2. レーザ誘起蛍光法とは

 レーザ誘起蛍光法は,これまでに主 に化学分野や燃焼工学分野で用いられ てきた.ある分子に,レーザ光のよう な強い光を照射すると,そこにある分 子が励起され,蛍光を発生することが ある.この励れいが起こるか起こらない かは,分子の種類とレーザ光の波長に よって異なる.そこで,観測したい分 子が励起する波長を選んで照射する と,その分子だけが励起するので,そ の蛍光を検出すれば,その分子の有無 を知ることができる.蛍光強度は分子 の濃度に関連しているので,分子の濃

度分布が求められることになる.

 このように波長を選択して燃焼場の さまざまな分子の濃度分布を個別に求 めることができる.図 1 は著者らが 行った拡散火炎内の OH や NO(1),多 環芳香族炭化水素(2)(複数のベンゼン 環で構成されているような炭化水素)

の濃度分布測定例である.図中には レーザ誘起蛍光法と似た方法(レーザ 誘起赤熱発光(LII: Laser Induced In- candescence)法)で求めたすすの分 布も示してある.

 今回測定の対象とする VOC にはさ まざまな分子が含まれているが,多環 芳香族炭化水素とよく似た分子が多 い.したがって,このレーザ誘起蛍光 法は,そのまま VOC の可視化計測に 応用できると考えられる.

3. 計測装置および観察結果

 図 2 は装置の概略である.レーザと しては 248nm の紫外光を発生できる KrF エキシマレーザを使用した.実 際に壁面に塗った塗料から発生する VOC にレーザ光を照射し,その蛍光 を観察した結果を図 3 に示す.VOC が塗装面から発生して拡散してゆく様 子がとらえられている.時間を追って みてゆくと,徐々に蛍光が消えてゆく 様子が観察できた.また,アクリル塗 料やエナメル塗料によって蛍光強度や 発生形態に差が見られることもわかっ た.さらに,水性塗料の場合には蛍光 がほとんど発生しないことも確認でき た.

 このように,今回開発した方法によ り,VOC の発生状況を可視化できる ことが確認できた.現在,塗装面性状 や周囲環境の条件によって VOC の発 生状況がどのように変わるかを解析し ている.また,これに分光分析を組み 合わせて,VOC の種類を同定するこ とも試みている.

4. おわりに

 今回用いたエキシマレーザは比較的 大型のレーザであるが,ある程度の出 力を持った小型のレーザでも VOC の 観察が可能であると考えられる.今後 はこのような小型計測システムの開発 を行ってゆきたいと考えている.この ような計測技術を開発することで,環 境技術の進展に少しでも貢献できれば 幸いである.

(原稿受付 2008 年 1 月 21 日)

〔天谷賢児 群馬大学〕

●文 献

( 1 )Hayashida, K., Amagai, K. and Arai, M., LIF Thermometry in Sooty Flames Using NO D2Σ+X2Π(0,1) and OH A2Σ+X2Π(3,

0)Bands, Energy, 30(2005), 497-508.

( 2 )佐藤桂司・林田和宏・天谷賢児・新井雅隆,

火炎中に生成される多環芳香族炭化水素の レーザ計測(第 1 報,時間分解計測による レーザ誘起蛍光と赤熱発光の分離),日本機 械 学 会 論 文 集,70-692,B(2004),

1051-1057.

図1 拡散火炎内の NO や OH の分布 火炎の写真 NO OH すす 芳香族炭化水素

(mm)30

20 10 0

図 3 塗装面から発生する VOC の様子

レーザ光の照射方向 塗 布 面

V O C の 蛍 光

塗 装 壁

VOCガス

ビームトラップ レンズ

分光器 高感度カメラ 高感度カメラ

高感度カメラ フィルタ

カメラコントロール コンピュータ エキシマレーザ

エキシマレーザ ミラー

スリット

図 2 レーザ誘起蛍光法による VOC の可視 化装置

日本機械学会誌 2008.6 Vol.111No.1075

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参照

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