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Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(2): 367‑376

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Author(s) 板谷, 厚; 野上, 大輔; 佐藤, 公文

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(2): 367‑376

Issue Date 2022‑02

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12419

Rights

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北海道教育大学紀要(教育科学編)第72巻 第2号 令和4年2月 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.72,No.2 February,2022

幼児は雪が積もった園庭のどこで活発に遊ぶのか?

板谷  厚・野上 大輔・佐藤 公文

北海道教育大学旭川校芸術・保健体育教育専攻保健体育分野

北海道教育大学附属旭川幼稚園

WhereDoYoungChildrenPlayVigorouslyinSnowyGarden?

ITAYAAtsushi,NOGAMIDaisukeandSATOHirofumi

DepartmentofPhysicalEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation

AsahikawaKindergarten,AffiliatedSchoolofHokkaidoUniversityofEducation

ABSTRACT

Thisstudyexaminedtheeffectsofdiversifyingthesnowsurfaceintheschoolgardenon thephysicalactivityintensityofoutdoorplayinpreschoolchildrenduringtheseverer winter,utilizingsnowasamaterialtocreateaplayspace.Twentychildrenbelongingto onekindergarteninAsahikawacityparticipatedinthisstudy.Atotaloffivetrialswere conducted,twiceinDecemberandthreetimesinJanuary-February.Beforegoingout,each subjectworeabibandwrappedabeltattachedwithanactivitymonitorandaGPSlogger aroundthenavel.Wecollectedthebibsandbeltsimmediatelyaftertheoutdoorplay.The analysisperiodwas40minutesfromthestartoftheoutdoorplay.Afterweconvertedthe longitudeandlatitudecoordinatesoftheGPSdatatorectangularcoordinates,wemapped activityintensitydatatopositiondataandcreatedaplayheatmapwith1m×1mmesh.

Theschoolgardenwasdividedintoroughsnow,snowremoval/consolidated,andsnowy mountains. A December trial with less snow cover was a control, and two January- February trials were experimental. For each mesh in the heat map, we calculated differencesintheactivityintensitybetweenexperimentaltrialsandcontrolandconducted aone-samplet-testtoexaminethedifferenceswerenotequaltozero.Asawhole,the activityintensityinsnowymountainswasmoreprominentinthecontroltrialthanin experimentaltrials.Variousplaypromotionsincreasedtheactivityintensityinroughsnow.

Thediversificationofthesnowsurfaceintheschoolgardencancontributetoensuringthe amountofphysicalactivityandbringingoutthevariousactivitiesofchildrenbymakingthe propertiesofeachsnowsurfacefunction.

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1.はじめに

幼児期の身体活動は子どもたちの心身の健全な 育ちに重要な役割を果たしている。楽しく体を動 かす活動的な遊びは,発達特性に応じて,多様な 動きが経験できるように様々な遊びを取り入れ て,毎日合計60分以上を確保することが推奨され ている[1]。

これまで,運動環境が子どもの遊び,身体活動 量や運動能力の発達に及ぼす影響について検討さ れてきている。例えば,園庭の芝生化は,幼児の 運動遊び,身体活動量,および運動能力に変化を もたらすことが知られている[2]。土のグラウン ドと芝生では遊びの内容が異なることも指摘され ている[3]。

冬の北海道では寒冷な気候と積雪によって運動 環境が著しく制限される。積雪寒冷期間における 北海道の子どもたちは,比較的順調な身体発育に 対して運動発達に停滞が認められるといくつかの 研究は指摘している[4,5]。

これらの研究は,積雪寒冷期間の身体活動量低 下を補うには屋内活動だけでは不十分と示唆して いる。そこで,積雪環境の積極的活用を試みる研 究もわずかながらある[6,7]。これらの研究は積 雪を負荷材として捉え,膝下程度の深雪環境と体 育館で同様のボール運動介入を実施し,雪上運動 による体力運動能力や片脚立位時のバランス制御 能力の向上効果を実証している。

本研究は,積雪を遊び空間を創造する資材とし て活用し,積雪期の屋外遊びを促進する手立てに ついての示唆を得るために,積雪寒冷期間の屋外 自由遊びで幼児が園庭のどこで遊ぶのかを定量的 に明らかにしようとした。

2.方 法

2.1.対象児

北海道教育大学附属旭川幼稚園に所属する幼児 20名を対象児とした。年中児クラスと年長児クラ スの特別支援教育の対象でない幼児から,それぞ

れ10名(男女同数)をランダムに抽出した。研究 実施に先立ち,まず園長に研究について説明し,

書面による同意を得た。その後,対象園の保護者 に研究について説明し,書面による同意を得た。

本研究は,北海道教育大学のヒトを対象とする研 究に関する倫理委員会の承認(承認番号:北教大 研倫第2019093002号;第2020103001号)を得て実 施された。

2.2.機器,手順,およびデータ処理

屋外遊び時の身体活動量を,3軸加速度センサ を 内 蔵 し た 活 動 量 計ActivestylePro(HJA- 750C,オムロンヘルスケア社)を用いて測定した。

この活動量計は,3軸の合成加速度からMetabolic equivalents(METs)を推定し,10秒間隔で記録 することができる。このデータを積算することで,

活動強度別の時間を求められる。さらに,独自の 信号処理によって,移動運動(歩行・走行)とそ れ以外の日常生活活動を判別し,それぞれの活動 に対応した推定式によってMETsを算出する。こ れにより,従来の加速度計では捉えきれなかった 移動運動以外の活動時の活動強度についても精度 よく推定できるとされる。成人における演算アル ゴリズム,および計測値の妥当性は,先行研究で 確認されている。ただ,この活動量計による測定 では,子ども(小学生)の活動量を過大評価する 傾向がある。このため,子ども用の推定式が提案 されている[8]。本研究の対象児は小学生ではな いが,小学生と同様に活動量が過大評価されると 見込まれるため,この推定式にもとづいた補正式 を用いて,10秒ごとに得られたMETs値を,子ど もに対応したMETs値に変換した。

屋外遊び中の対象児の位置を把握するために,

GPS機能搭載の腕時計(SF-810,セイコーエプ ソン社)をGPSロガーとして使用した。なお,本 機器に搭載されているGPSセンサは,準天頂衛星 みちびきに対応している。GPS信号は,測位され た時刻(1秒単位)とともに記録された。

対象児の屋外遊びの様子は,検者,または実験 補助者(遊び観察員)によって記録された。加え

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幼児は雪が積もった園庭のどこで活発に遊ぶのか?

て,遊び観察を補助する目的で,園庭を3台のビ デオカメラ(GZ-EX370,JVCケンウッド社)に て,可能な限り死角ができないように撮影した。

調査は2019年12月から2020年2月にかけて実施 した。12月は,園庭の手入れ(除雪や,除雪した 雪を積み山にする)を必要最小限にとどめた。1 月と2月は,積雪量に応じて園庭の雪面の多様化 を図り,可能な限り雪山,除雪・圧雪,深雪の3 種類を設定した(写真1)

遊び調査は,2019年12月に2回(12月12日,12 月19日),翌2020年1月と2月に3回(1月21日,

2月14日,2月21日)実施した(合計5回)。12 月の調査をコントロール(controltrial:CON)

とし,1,2月の調査を実験(experimentaltrial:

EXP)とした。午前中の自由遊び時間(およそ 10:00から昼食の準備開始まで)に実施される屋 外遊びを調査対象とした。

屋外遊びの前に,対象児はあらかじめ決められ た色と番号のビブスを着用した。昇降口まで出て きた対象児は,データ記録状態にした活動量計と GPSロガーが封入された自作の胴ベルトを,防寒 着の上から臍位に装着した(写真2)。胴ベルト は伸縮性のある帯状で,ベルクロテープによって 両端をつなぎ胴に巻いた。胴に巻く際には,遊び 中にずれず,胴ベルトに封入したセンサー類が動 きにくく,さらに,対象児が息苦しさや窮屈さを 感じないように,胴ベルトの締めつけの程度を調 節した。

屋外遊び終了時,対象児が園舎に入る際,昇降 口にて胴ベルトとビブスを回収した。GPSロガー については,回収後ただちに記録を停止し,ロガー 内部にGPSデータを保存した。なお,胴ベルトの 着脱は,検者または実験補助者が行った。

活動量計の内蔵メモリに保存されたデータは,

調査の都度,専用ソフトウエアを介してPCに転 送した。

GPSデータの転送のために,GPSロガーは専用 のデータ転送用クレードルを使用してPCに接続 された。GPSデータは,専用ソフトウエアを用い てwebアプリケーションにアップロードされ,さ 写真1 3種類の雪面

深雪(上),雪山(中),除雪・圧雪(下)の3種類 の雪面を設定し園庭の雪面の多様化を図った。

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らに,このアプリケーションを介してPCに保存 された。GPSデータの経緯度座標は平面直角座標 に変換し,これを位置データとした[9]。

屋外遊びの開始時刻は,次のように定義した。

屋外遊び開始の約30分前に,GPS測位を開始し た。GPS測位開始時刻後の活動量計データから,

以後3分間以上連続して身体活動が測定されてい る時点を検出し,これを胴ベルト装着完了時刻と した。これに昇降口から園庭へ移動し,遊び始め るまでの時間(2分間)を加え,屋外遊び開始時

刻とした。屋外遊びの継続時間は,気象条件や当 日の活動予定によって変動したものの,少なくと も40分間確保できた。このため,屋外遊び開始時 刻から40分間を屋外遊び時間とし,分析の対象と した。

位置データと活動量計データから,屋外遊び時 間中,対象児が園庭のどこでどの程度の強度の身 体活動を行っていたかを分析するために,遊び ヒートマップを作成した(図1)。園庭を1×1 mのメッシュに区分けし,対象児の位置が入る メッシュを特定した。このメッシュに,位置デー タの時刻に対応する活動量計データを割り付け た。活動強度が同一メッシュに複数回割り付けら れた場合は加算し,重複回数で除した。

遊びヒートマップ上で雪山,除雪・圧雪,およ び深雪の各エリアを区別するために,雪面のエリ ア区分が明確になったEXPの際,検者がGPSロ ガーを装着し,各エリアの輪郭をなぞるように歩 いて3周し,GPSデータを記録した。このGPS データを地図アプリケーション(GoogleEarth Prover.7.3.2,Google社製)に読み込ませ,航空 写真上に軌跡を表示させた。この航空写真で確認 しながら,各エリアを含む矩形の頂点の経緯度座 標を記録した。これらにもとづき,遊びヒートマッ プ上で各エリアを区別した。

2.3.統計処理

比較的欠席者が少なく,強風など無く比較的安 定した天候下のCON(2019年12月21日:CON_2)

と2 回 のEXP(2020年 1 月21日:EXP_1; 同 年 2月14日:EXP_2)を選択し,分析対象とした。

遊びヒートマップの一つひとつのメッシュにお ける平均活動強度をCONとEXPで比較するため に,CONと 2 つ のEXPそ れ ぞ れ の 差(EXP- CON)を計算し,1標本 t 検定を実施した。さら に,調査間の差に有意性が認められたメッシュの 数を,雪面エリアごとにカウントした。

データ処理,データ分析,および統計処理につ いて,特に記載がない場合はすべてScilabver.

6.1.0(ESIgroup,GNUGPLver.2)のスクリプ 写真2 活動量計とGPSロガーの装着

活動量計とGPSロガーは胴ベルト(上)に封入して 対象児の臍位に装着した。

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幼児は雪が積もった園庭のどこで活発に遊ぶのか?

ト言語で記述した自作のソフトウエアによって実 行した。統計的有意水準はα=0.05に設定した。

3.結 果

園庭面積は6503m2であった。各雪面エリアの 面積は,深雪5636m2,除雪・圧雪369m2,雪山 498m2であった。雪山は築山に加えて2つ造成さ れた(計3箇所)。

CON_2の参加人数は16名,天候は晴れ,気温

-2℃,新雪の積雪は5cmで,園庭の大部分は ざらめ雪であった。EXP_1は,それぞれ17名,

晴れ,-5℃,30cm,深雪部分の雪は新雪であっ

た。EXP_2は,それぞれ20名,くもり,3℃,

20cm,深雪部分はざらめ雪であった。

CONでは,両方の調査日で雪山に高強度活動 図1 CONの遊びヒートマップ

明るい色で着色されているメッシュほど活動強度が 高いことを示す。外枠の実践は分析範囲(園の敷地),

内部の実践は建物や通路,破線は雪面エリアを示し,

四角は除雪・圧雪,丸は雪山を示す。CONでは雪山 に高強度活動が集中していることが見て取れる。

図2 EXPの遊びヒートマップ

CONと比較すると,園舎前の深雪エリアが明るく目 を引く。この辺りにはカマクラや色水コーナーが設 置された。

(7)

が 集 中 し て い る 様 子 が 見 て 取 れ た( 図 1)。

EXP_1とEXP_2では,CONと同様に雪山での活 動も認められるが,やや減少し深雪への活動領域 の広がりも目についた(図2上中)。EXP_3は参 加者が10名と少なかったが,雪山での活動はさら に減少し,除雪・圧雪にも活動が認められた(図 2下)。これらCONとEXPの違いは, t 値のヒー トマップで確認することができた(図3)。

EXP_1でCON_2よ り も 活 動 強 度 が 高 か っ た メッシュは,深雪に1つ(差0.88±1.36[METs]

(M±SD),t(14)=2.516,p=0.024),雪山に3つ 認められ(差0.86±1.53[METs],t(14)=2.192,

p=0.046;差0.83±1.43[METs],t(14)=2.231,p

=0.0426;差0.91±1.59[METs],t(14)=2.202,p

=0.045),除雪・圧雪には見いだせなかった。

EXP_2で は 雪 山 にCON_2よ り も 活 動 強 度 の 低 かったメッシュが1つあった(差-0.90±1.65

[METs],t(15)=-2.185,p=0.045)。

4.考 察

本研究の目的は,積雪寒冷期間の屋外遊びの際,

幼児が園庭のどんな場所で活動するのかを定量的 に明らかにすることであった。このために,本研 究では幼児の位置情報に身体活動強度をマッピン グした遊びヒートマップを作成した。結果,積雪 が少ない時期では対象児は雪山に集中した。しか し,積雪の増加にともなって雪面が多様化すると 遊び場所は他のエリアに拡散した。

4.1.遊びヒートマップ

本研究は,GPSデータから得た位置情報に活動 量計によって取得した身体活動強度データをマッ ピングすることで遊びヒートマップを作成した。

これにより,対象児が園庭のどこでどれくらいの 強度の身体活動をしているか可視化することに成 功した。

CONの遊びヒートマップはどちらも雪山に明 るい部分が集中している。これは対象児が雪山で 活発に身体活動をしていることを示している。

2019年12月12日では明るい部分が雪山の連なりに 重なる。これは対象児が雪山を次々に移動してい たことを示唆する。

EXPではCONで認められた雪山への活動集中 が緩和され,園舎前や敷地の縁の部分の深雪にま で明るい部分が広がっている。対象児の活動エリ アが園庭全体に広がったことを示している。2020 年1月21日(EXP_1)では中央の小さな雪山が 暗くなっており,対象児がこの雪山であまり遊ば なかったとわかる。2020年2月14日(EXP_2)

では,築山(東側のもっとも大きな雪山)以外,

雪山の周辺のほうが明るく,雪山は暗く抜けてい 図3 EXPとCONの差を示す遊びヒートマップ

それぞれのメッシュでEXPとCONの t 値を計算し た。CON_2とEXP_1の差(上),CON_2とEXP_2の差

(下)。活動強度は赤いほどEXPで高く,青いほど CONで高い。CONで雪山に集中していた活動が,

EXPでは深雪エリアにも広がっていた様子が見て取 れる。

(8)

幼児は雪が積もった園庭のどこで活発に遊ぶのか?

るように見える。2020年2月21日では,対象児が 少なく全体的に暗いが,雪山に集中している様子 は見えない。他の調査日ではほとんど活動の見え なかった除雪・圧雪で明るくなっているのが特徴 である。

上記したことはCON_2とEXP_1およびEXP_2 の差のヒートマップでより明確になる。両方の ヒートマップで雪山が青くなっており,CONよ りEXPで活動強度が減少したことを指す。園舎 の前や敷地の縁の深雪は黄色や赤に染まり,

EXPで活動強度の増加が認められる。

これらのことから,園庭の積雪増加にともなっ て雪面が多様化すると,幼児の遊び場は拡大する と考えられる。加えて,遊びヒートマップは遊び 場の変化を捉える有用なツールになりうることが 示唆される。

4.2.メッシュごとの比較

1標本 t 検定の結果,EXP_1では,CON_2よ りも活動強度の高いメッシュが深雪に1つ,雪山 に3つ見いだされた。この比較で差に有意性が認 められるには,どちらの調査日においてもその メッシュに多くの対象児が訪れた上,活動強度に 違いがあることを要する。

遊びヒートマップの印象から,EXP_1で深雪 に活動強度の高いメッシュが1つしかなかったこ とは少々意外であった。深雪は他のエリアと比較 して広大なため,そもそも多くの対象児が共通し て留まるメッシュが少ないと推察される。

雪山の結果はさらに驚きであった。深雪に遊び 場が分散したため,雪山での活動強度も下がると 考えたが,そうはならなかった。原因として,

EXP_1では積雪量が増加し,雪山は格段に大き く高くなったことがあげられる。この結果,対象 児の活動がよりダイナミックになり活動強度は高 くなったと考えられる。加えて,雪山の山頂部分 が狭いため,この部分のメッシュは多くの対象児 に共通で記録されやすいこともひとつの要因と なったと推察される。今後,雪山のどの部分で差 が生じたのか検討するために,さらに詳細な分析

が求められる。

EXP_2とCON_2の 比 較 で は, 雪 山 に お い て EXP_2で活動強度の低いメッシュが1つ見つかっ た。遊びヒートマップの印象どおり,CON_2で雪 山に集中していた対象児がEXP_2で深雪に広く 拡散したことは,統計的にも裏付けられた。

4.3.園庭での活動を促す援助としかけ 当然のことながら,屋外遊びの際,園児には防 寒対策を徹底させる。つなぎのスキーウエアに着 替え,スキーグローブ,スノーブーツを身に着け るのが定番である。外に出る前には,雪の中で激 しく動いても雪が侵入しないよう手首,足首にす き間がないか確認する。これらには相当の時間を 要するが,積雪寒冷期間に屋外遊びを思い切り楽 しむためには入念な準備が必須である。

対象園では,本格的な降雪の以前から園児全員 がダンボール紙をビニール袋に入れビニール紐を 取り付けた簡易的なソリを制作して,雪が積もる のを心待ちにしていた。積雪に備えた保育が功を 奏し,子どもたちは自前のソリを携え雪山に殺到 し,我先にとソリ滑りに興じていた。その効果の 程はCONの遊びヒートマップが示すとおりであ る。

CONでは深雪エリアに積雪はほとんどなく,

水たまりとなった砂場の氷を割るもの,うさぎ小 屋(園舎の西側にある小さな建物)でうさぎの観 察や宝石集め(小屋の軒先にできたつららを収集 する遊び)など,積雪とは関連のない活動も見受 けられた。

一方,EXPでは深雪での活動を促す援助やし かけが随所に見られた。除雪・圧雪エリアの通路 を挟んで反対側にはカマクラが造成され,子ども たちを深雪に惹きつけた。カマクラの周囲で女児 がおままごとに興じる姿は象徴的である(写真3)。

園舎の東翼南側に設置された色水コーナー(写 真4)は,深雪での活動を促すしかけとして効果 的に機能した。絵の具を水に溶き,それを蓋に小 さな穴を開けたペットボトルに入れる。蓋を締め てボトルを押すと穴から勢いよく水がとび出る。

(9)

雪を着色したり雪面に絵や文字を描けたりでき る。真っ白な雪を好きな色に染めることができる となると,子どもたちは創造性に火がつき,さま ざまな造形活動に駆り立てられる。最初はお風呂 だったものがプールから家へ,どんどん大規模な 作品に変貌していく。

雪合戦は定番の遊びである。雪玉をつくって,

投げ,追いかけ,逃げ,避ける。加えて,積雪が 多くなると基地を設営して遊びの世界を広げるこ

とが可能になる。まずは雪を集めて城壁を築く。

家や基地など,雪を素材とした造形活動はかなり の重労働でもある。

積雪量が多い深雪では,単純な追いかけっこで も雪の抵抗が負荷となり体力的にきつい活動にな ると考えられる(ただし,本研究では心拍数など の生理学的な運動強度を示すデータを収集してい ない)。雪面の不安定さやころんでも痛くないクッ ション性は,体力的なきつさとの相乗効果で子ど もたちの冒険心をくすぐる。鬼ごっこに誘われて 深雪に連れ出された子どもたちは,木に登ったり,

雪に飛び込んだり,少々思い切った活動にも乗り 出すようである。

4.4.遊びヒートマップの応用

遊びヒートマップは,GPS信号が届く屋外に限 写真3 深雪エリアでの活動を促すしかけ

カマクラ(上)と色水コーナー(下)。カマクラを造 設して子どもたちを深雪エリアに誘う。色水コーナー には,雪に色をつけるための絵の具(色水)が用意 されている。カラフルな雪は子どもたちの創造性を 刺激し,造形活動を引き出す。

写真4 深雪での造形活動

雪合戦基地(上)と色水に触発された造形作品(下)。

雪を使った造形活動はかなりの重労働でもある。

(10)

幼児は雪が積もった園庭のどこで活発に遊ぶのか?

られるが,幼児の遊び場所と活動強度を対応させ て可視化できる。これを応用すれば,園庭に設置 した遊具の稼働状況や遊具の設置場所を客観的・

直感的に評価することが可能になる。また,屋外 遊びの活動強度の季節変化をモニタすることで,

活発な身体活動の時間を確保するための中長期的 な保育計画を証拠にもとづいて作成することがで きる。もちろん,幼児一人ひとりの自由遊びでの 活動状況をモニタすることで,個別の保育計画に 活用することも考えられる。

保育者にもGPSロガーと活動量計を身に着けて もらい,保育者の外遊び援助ヒートマップを作成 し,遊びヒートマップと比較することで,保育改 善に役立てることが考えられる。これを活用し新 人保育者の研修や教育実習生の指導を効率化でき る可能性もある。

4.5.結論と今後の課題

本研究は,積雪寒冷期間の屋外自由遊びにおい て幼児が園庭のどこで活発に遊ぶのかを明らかに することを目的とした。調査の結果は次のことを 示した。積雪が少ない時期,子どもたちは雪山に 集中した。積雪の増加にともなって雪面が多様化 すると雪山に集中していた子どもたちは,他の雪 面エリア,特に深雪に拡散した。深雪に子どもた ちを誘い出す保育者の援助やしかけが有効に機能 していた。

GPSは頭上がひらけていれば1m内外の精度で ある。しかし,建物付近ではその精度は低下する 懸念がある。現在は加速度計を利用した活動量計 を使用しているが,より正確な運動強度の推定に は心拍などの生理学的測定を要する。

将来,GPSデータによる身体活動の評価を可能 とすれば,装置装着を簡略化できる。加えて,保 育現場での活用を考慮すれば,データ処理を簡略 化し分析結果の迅速なフィードバックは不可欠で ある。

謝 辞

本研究にご協力を賜りました北海道教育大学附 属旭川幼稚園の子どもたちと保護者のみなさまに 深く感謝申し上げます。

データ収集に使用しました活動量計を貸与して くだいました野井真吾先生とGPSロガーをお貸し くださった中野貴博先生に記して謝意を表します。

この研究は笹川スポーツ研究助成を受けて実施 したものです。また一部は,令和2年度北海道教 育大学学長戦略経費を受けて実施しました。

最後に,調査をお手伝いくださいました北海道 教育大学附属幼稚園職員のみなさま,運動学ゼミ ナール学生諸氏に御礼申し上げます。

利益相反

本論文について,開示すべき利益相反状態はな い。

文 献

[1] 文部科学省:幼児期運動指針ガイドブック.

  https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousi sin/1319772.htm,2012(2021年9月30日閲覧).

[2] 中島弘毅,大窄貴史,張勇,根本賢一,山﨑信幸:

園庭環境の違いが幼児の身体活動量と運動能力に及 ぼす影響―園庭の芝生化に着目して―.松本大学研 究紀要,10,185-195,2012.

[3] 上澤美鈴,加我宏之,下村泰彦,増田昇:工程の芝 生化が児童のあそびの種類や身体動作に与える影響 に 関 す る 研 究. 情 報 科 学 論 文 集,23,263-268.

2009.

[4] 神林勲,森田憲輝,奥田知靖,中道莉央,石澤伸弘,

小野寺夕香,高橋正年,山形昇平,溝口仁志,楢山 聡,朝倉潤,中島寿宏,志手典之,新開谷央:北海 道の小学生における積雪寒冷期前後の体力・運動能 力.北海道教育大学紀要(教育科学編),64⑴,

137-147,2013.

[5] 神林勲,森田憲輝,奥田知靖,中道莉央,石澤伸弘,

小野寺夕香,高橋正年,山形昇平,溝口仁志,楢山 聡,朝倉潤,中島寿宏,志手典之,新開谷央:北海 道の中学生における積雪寒冷期前後の体力・運動能 力,北海道教育大学紀要(教育科学編),63⑵,31-

(11)

39,2013.

[6] 板谷厚,越智友亮,吉田雄大:雪上でのボール運動 が大学生の体力・運動能力に及ぼす影響.北海道教 育大学紀要(教育科学編),69⑴,331-340,2018.

[7] 板谷厚,越智友亮,吉田雄大:雪上でのボール運動 が若年成人の片脚立位動揺に及ぼす影響.北海道教 育大学紀要(自然科学編),69⑵,17-27,2019.

[8] 青山友子,田中茂穂,田中真紀,奥田昌之,井上茂,

田中千晶:出生時体重および乳幼児期の運動発達と 児童期の身体活動量との関係.発育発達研究,74,

9-18,2017.

[9] 河瀬和重:Gauss-Krüger投影における経緯度座標 及び平面直角座標相互間の座標換算についてのより 簡明な計算方法.国土地理院時報,121,109-124,

2011.

(板谷  厚 旭川校教授)     

(野上 大輔 附属旭川幼稚園副園長)

(佐藤 公文 附属旭川幼稚園園長) 

参照

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