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雑誌名 同志社法學

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全文

(1)

被相続人を保険契約者及び被保険者とし共同相続人 の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険 契約に基づく死亡保険金請求権と民法903条

著者 水野 貴浩

雑誌名 同志社法學

巻 57

号 3

ページ 215‑249

発行年 2005‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007610

(2)

  X 1

︑ X 2

︑ X 3

︵ 以 下

︑﹁ X ら

﹂ と い う

︒︶ 及 び Y は

︑ い ず れ も A と B の 間 の 子 で あ る

︒ A は 平 成 二 年 一 月 二 日 に

︑ B は 同 年 一

〇 月 二 九 日 に

︑ そ れ ぞ れ 死 亡 し

︑ Y は

︑ 次 の と お り 死 亡 保 険 金 等 合 計 七 九 三 万 五

〇 五 七 円 を 受 領 し

二 一 五 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 四 五

被 相 続 人 を 保 険 契 約 者 及 び 被 保 険 者 と し 共 同 相 続 人 の 一 人 又 は 一 部 の 者 を 保 険 金 受 取 人 と す る 養 老 保 険 契 約 に 基 づ く 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

︵ 最 高 裁 判 所 平 成 一 六 年 一

〇 月 二 九 日 第 二 小 法 廷 決 定 ︵ 民 集 五 八 巻 七 号 一 九 七 九  

 

    頁

︑ 判 時 一 八 八 四 号 四 一 頁

︶     原   審 大 阪 高 等 裁 判 所 平 成 一 六 年 五 月 一

〇 日 決 定 ︵ 民 集 五 八 巻 七 号 一 九 八 六 頁

︶         原 々 審 神 戸 家 庭 裁 判 所 伊 丹 支 部 平 成 一 五 年 八 月 八 日 審 判

︵ 刊 行 物 未 登 載

水  野  貴  浩

判 例

(3)

二 一 六 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 四 六

︒  

  保 険 者 を C 保 険 相 互 会 社

︑ 保 険 契 約 者 及 び 被 保 険 者 を B

︑ 死 亡 保 険 金 受 取 人 を Y と す る 養 老 保 険

︵ 契 約 締 結 日 平 成 二 年 三 月 一 日

︶ の 死 亡 保 険 金 五

〇 万 二 四 六 五 円  

  保 険 者 を D 保 険 相 互 会 社

︑ 保 険 契 約 者 及 び 被 保 険 者 を B

︑ 死 亡 保 険 金 受 取 人 を Y と す る 養 老 保 険

︵ 契 約 締 結 日 昭 和 三 九 年 一

〇 月 三 一 日

︶ の 死 亡 保 険 金 七 三 万 七 八 二 四 円  

  共 済 者 を E 市 農 業 協 同 組 合

︑ 共 済 契 約 者 を A

︑ 被 共 済 者 を B

︑ 共 済 金 受 取 人 を A と す る 養 老 生 命 共 済

︵ 契 約 締 結 日 昭 和 五 一 年 七 月 五 日

︶ の 死 亡 共 済 金 等 合 計 二 一 九 万 四 七 六 八 円

︵ 入 院 共 済 金 一 三 万 四

〇 円

︑ 死 亡 共 済 金 二

〇 六 万

〇 七 六 八 円

︶︒   A の 法 定 相 続 人 は B

︑ X ら 及 び Y

︑ B の 法 定 相 続 人 は X ら 及 び Y で あ り

︑ A 及 び B の 遺 産 に つ い て は

︑ A の 遺 産 か ど う か と い う 点 で 対 立 の あ っ た 四 筆 の 土 地

︵ 以 下

︑﹁ 本 件 各 土 地

﹂ と い う

︒︶ を 除 き

︑ X ら 及 び Y と の 間 に お い て

︑ 平 成 一

〇 年 一 一 月 三

〇 日 ま で に 遺 産 分 割 協 議 及 び 遺 産 分 割 調 停 が 成 立 し た

︒ こ れ に よ り

︑ X 1 は 合 計 一 一 九 九 万 六 一 一 三 円

︑ X 2 は 合 計 一 二 二 一 万 四 九 九 八 円

︑ X 3 は 合 計 一 四 四 一 万 七 七 九 三 円

︑ Y は 合 計 一 三 八 七 万 八 七 二 七 円 に 相 当 す る 財 産 を そ れ ぞ れ 取 得 し た

︒ X ら 及 び Y は

︑ 本 件 各 土 地 の 分 割 の 際 に こ の 結 果 を 考 慮 し な い こ と で 合 意 し て い る

︒   X ら は

︑ 平 成 七 年 に A の 遺 産 の 分 割 を 求 め る 家 事 調 停 を 原 々 審 裁 判 所 に 申 し 立 て た 後

︑ Y 名 義 と な っ て い た 本 件 各 土 地 及 び そ の 地 上 建 物 等 が A の 遺 産 で あ る こ と の 確 認 を 求 め る 民 事 訴 訟 を 平 成 八 年 に 提 起 し た

︒ こ の 別 件 訴 訟 に お い て 本 件 各 土 地 が A の 遺 産 で あ る こ と を 確 認 す る 判 決 が 確 定 し た の で

︑ 本 件 各 土 地 を A の 遺 産 と し て 分 割 す る こ と と な

(4)

っ た

︒ 原 々 審 で は

︑ A の 遺 産 分 割

︑ B の 遺 産 分 割 及 び Y の 寄 与 分 を 定 め る 処 分 に 関 す る 三 つ の 事 件 が 併 合 さ れ て い た が

︑ 原 々 審 裁 判 所 は

① Y の A の 遺 産 に 対 す る 寄 与 分 を 八 七

〇 万 円 と 定 め る

② 本 件 各 土 地 を Y の 単 独 取 得 と し

︑ Y に 対 し X ら に 代 償 金 各 二 五 六 万 二

〇 四

〇 円 の 支 払 を 命 ず る 旨 の 決 定 を し た

︒ そ の 際

︑ 原 々 審 裁 判 所 は

︑ Y が 受 領 し た 前 記 か ら の 死 亡 保 険 金 等 が Y の 特 別 受 益 に 該 当 す る と 判 断 し た が

︑ B を 保 険 契 約 者 と す る 前 記 及 び の 死 亡 保 険 金 が

﹁ A の 遺 産 相 続 に お い て 特 別 受 益 と な る 根 拠

﹂ を 明 ら か に し な か っ た

︒   X ら は

︑ 本 件 各 土 地 の 価 額 認 定 及 び Y の 寄 与 分 の 認 定 を 不 服 と し て 即 時 抗 告 を 申 し 立 て た

︒ 原 審 裁 判 所 は

① Y の 寄 与 分 を 定 め る 申 立 て を 却 下 す る

② 本 件 各 土 地 を Y の 単 独 取 得 と し

︑ Y に 対 し X ら に 代 償 金 各 二 八 七 万 二 五

〇 円 の 支 払 を 命 ず る 旨 の 決 定 を し た

︒ そ の 際

︑ 原 審 裁 判 所 は

︑ 次 の 理 由 に よ り

︑ Y が 受 領 し た 前 記 か ら の 死 亡 保 険 金 等 は Y の 特 別 受 益 に 該 当 し な い と 判 断 し た

︒  

﹁ 死 亡 保 険 金

︵ 共 済 金

︶ 請 求 権 は

︑ 指 定 さ れ た 保 険 金 受 取 人 が

︑ 被 保 険 者 死 亡 時 に

︑ 自 己 の 固 有 の 権 利 と し て 取 得 す る の で あ っ て

︑ 保 険 契 約 者 か ら 承 継 取 得 す る も の で は な い し

︑ 保 険 契 約 者 の 払 い 込 ん だ 保 険 料 と 等 価 の 関 係 に 立 つ も の で は な く

︑ 被 保 険 者 の 稼 働 能 力 に 代 わ る 給 付 で も な い の で あ っ て

︑ 死 亡 保 険 金 請 求 権 が 実 質 的 に 保 険 契 約 者 又 は 被 保 険 者 の 財 産 に 属 し て い た も の と み る こ と は で き な い

︵ 最 高 裁 判 所 平 成 一 四 年 一 一 月 五 日 判 決

・ 民 集 五 六 巻 八 号 二

〇 六 九 頁 参 照

︶︒

﹂   X ら は

︑ Y が 受 領 し た 前 記 か ら の 死 亡 保 険 金 等 が Y の 特 別 受 益 に 該 当 し な い と 判 断 さ れ た 点 に つ き

① 原 決 定 が 参 照 引 用 す る 最 高 裁 平 成 一 四 年 一 一 月 五 日 判 決

︵ 以 下

︑﹁ 平 成 一 四 年 判 決

﹂ と い う

︒︶ の 事 案 と 本 件 事 案 と は 争 点 が

二 一 七 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 四 七

(5)

二 一 八 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 四 八

異 な っ て お り

︑ 平 成 一 四 年 判 決 の 射 程 が 本 件 事 案 に つ い て 直 ち に 及 ぶ も の で は な い こ と

② 本 件 事 案 と 争 点 を 同 じ く す る 高 松 高 等 裁 判 所 平 成 一 一 年 三 月 五 日 決 定 に 実 質 的 に 反 す る も の で あ る こ と を 理 由 と し て

︑ 抗 告 を 申 し 立 て

︑ 許 可 さ れ た

  抗 告 棄 却 及 び の 死 亡 保 険 金 に つ い て

﹁ 被 相 続 人 が 自 己 を 保 険 契 約 者 及 び 被 保 険 者 と し

︑ 共 同 相 続 人 の 一 人 又 は 一 部 の 者 を 保 険 金 受 取 人 と 指 定 し て 締 結 し た 養 老 保 険 契 約 に 基 づ く 死 亡 保 険 金 請 求 権 は

︑ そ の 保 険 金 受 取 人 が 自 ら の 固 有 の 権 利 と し て 取 得 す る の で あ っ て

︑ 保 険 契 約 者 又 は 被 保 険 者 か ら 承 継 取 得 す る も の で は な く

︑ こ れ ら の 者 の 相 続 財 産 に 属 す る も の で は な い と い う べ き で あ る

︵ 最 高 裁 昭 和 三 六 年

︵ オ

︶ 第 一

〇 二 八 号 同 四

〇 年 二 月 二 日 第 三 小 法 廷 判 決

・ 民 集 一 九 巻 一 号 一 頁 参 照

︶︒ ま た

︑ 死 亡 保 険 金 請 求 権 は

︑ 被 保 険 者 が 死 亡 し た 時 に 初 め て 発 生 す る も の で あ り

︑ 保 険 契 約 者 の 払 い 込 ん だ 保 険 料 と 等 価 関 係 に 立 つ も の で は な く

︑ 被 保 険 者 の 稼 働 能 力 に 代 わ る 給 付 で も な い の で あ る か ら

︑ 実 質 的 に 保 険 契 約 者 又 は 被 保 険 者 の 財 産 に 属 し て い た も の と み る こ と は で き な い

︵ 最 高 裁 平 成 一 一 年

︵ 受

︶ 第 一 一 三 六 号 同 一 四 年 一 一 月 五 日 第 一 小 法 廷 判 決

・ 民 集 五 六 巻 八 号 二

〇 六 九 頁 参 照

︶︒ し た が っ て

︑ 上 記 の 養 老 保 険 契 約 に 基 づ き 保 険 金 受 取 人 と さ れ た 相 続 人 が 取 得 す る 死 亡 保 険 金 請 求 権 又 は こ れ を 行 使 し て 取 得 し た 死 亡 保 険 金 は

︑ 民 法 九

〇 三 条 一 項 に 規 定 す る 遺 贈 又 は 贈 与 に 係 る 財 産 に は 当 た ら な い と 解 す る の が 相 当 で あ る

︒ も っ と も

︑ 上 記 死 亡 保 険 金 請 求 権 の 取 得 の た め の 費 用 で あ る 保 険

(6)

料 は

︑ 被 相 続 人 が 生 前 保 険 者 に 支 払 っ た も の で あ り

︑ 保 険 契 約 者 で あ る 被 相 続 人 の 死 亡 に よ り 保 険 金 受 取 人 で あ る 相 続 人 に 死 亡 保 険 金 請 求 権 が 発 生 す る こ と な ど に か ん が み る と

︑ 保 険 金 受 取 人 で あ る 相 続 人 と そ の 他 の 共 同 相 続 人 と の 間 に 生 ず る 不 公 平 が 民 法 九

〇 三 条 の 趣 旨 に 照 ら し 到 底 是 認 す る こ と が で き な い ほ ど に 著 し い も の で あ る と 評 価 す べ き 特 段 の 事 情 が 存 す る 場 合 に は

︑ 同 条 の 類 推 適 用 に よ り

︑ 当 該 死 亡 保 険 金 請 求 権 は 特 別 受 益 に 準 じ て 持 戻 し の 対 象 と な る と 解 す る の が 相 当 で あ る

︒ 上 記 特 段 の 事 情 の 有 無 に つ い て は

︑ 保 険 金 の 額

︑ こ の 額 の 遺 産 の 総 額 に 対 す る 比 率 の ほ か

︑ 同 居 の 有 無

︑ 被 相 続 人 の 介 護 等 に 対 す る 貢 献 の 度 合 い な ど の 保 険 金 受 取 人 で あ る 相 続 人 及 び 他 の 共 同 相 続 人 と 被 相 続 人 と の 関 係

︑ 各 相 続 人 の 生 活 実 態 等 の 諸 般 の 事 情 を 総 合 考 慮 し て 判 断 す べ き で あ る

︒   こ れ を 本 件 に つ い て み る に

︑ 前 記

⁝ の 死 亡 保 険 金 に つ い て は

︑ そ の 保 険 金 の 額

︑ 本 件 で 遺 産 分 割 の 対 象 と な っ た 本 件 各 土 地 の 評 価 額

︑ 前 記 の 経 緯 か ら う か が わ れ る B の 遺 産 の 総 額

︑ X ら 及 び Y と 被 相 続 人 ら と の 関 係 並 び に 本 件 に 現 れ た 抗 告 人 ら 及 び 相 手 方 の 生 活 実 態 等 に 照 ら す と

︑ 上 記 特 段 の 事 情 が あ る と ま で は い え な い

︒ し た が っ て

︑ 前 記

⁝ の 死 亡 保 険 金 は

︑ 特 別 受 益 に 準 じ て 持 戻 し の 対 象 と す べ き も の と い う こ と は で き な い

﹂︹ 傍 線 は

︑ 原 文 の ま ま

︺︒ の 死 亡 共 済 金 等 に つ い て

﹁ 上 記 死 亡 共 済 金 等 に つ い て の 養 老 生 命 共 済 契 約 は

︑ 共 済 金 受 取 人 を A と す る も の で あ る の で

︑ そ の 死 亡 共 済 金 等 請 求 権 又 は 死 亡 共 済 金 等 に つ い て は

︑ 民 法 九

〇 三 条 の 類 推 適 用 に つ い て 論 ず る 余 地 は な い

︒﹂

二 一 九 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 四 九

(7)

二 二

○ 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五

一   は じ め に

  相 続 を め ぐ る 紛 争 に お い て 保 険 金 請 求 権 の 扱 い が 問 題 と な る こ と が 少 な く な い

︒ そ れ は と く に

︑ 被 相 続 人 が 自 己 を 被 保 険 者 と す る

﹁ 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約

﹂ を 結 ん で い た 場 合 で あ る

︒   他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 と は

︑ 甲 が 自 己 の 名 を も っ て 保 険 者 乙 と 契 約 を 締 結 し

︑ 保 険 料 の 支 払 義 務 を 負 う が

︑ 事 故 発 生 の 際 の 保 険 金 は 第 三 者 丙 が 受 け 取 る 生 命 保 険 契 約 の こ と で あ る

︒ 保 険 契 約 者

︵ 甲

︶ と 保 険 契 約 に よ る 受 益 者 で あ る 保 険 金 受 取 人

︵ 丙

︶ が 異 な る 点 に 特 徴 が あ り

︑ 次 の 三 つ の 類 型 が 考 え ら れ る

︒  

  保 険 契 約 者 と 被 保 険 者 が 同 一 人 で

︑ 保 険 金 受 取 人 だ け が 別 人 で あ る 場 合  

  被 保 険 者 と 保 険 金 受 取 人 が 同 一 人 で

︑ 保 険 契 約 者 だ け が 別 人 で あ る 場 合  

  保 険 契 約 者

︑ 被 保 険 者

︑ 保 険 金 受 取 人 が そ れ ぞ れ 別 人 で あ る 場 合   本 件 の 及 び の 養 老 保 険 契 約 は 類 型 に 該 当 し

︑ 実 際 の 契 約 に お い て も の 類 型 が 最 も 多 い

︒ そ れ ゆ え

︑ 以 下 で は

︑ の 類 型 を 念 頭 に お い て 検 討 を 加 え る こ と に す る

︒   な お

︑ の 養 老 生 命 共 済 に つ い て は

︑ 本 決 定 の 結 論 に 問 題 は な い と 思 わ れ る が

︑ Y が ど の よ う な 経 緯 で 死 亡 共 済 金 等 を 受 領 す る こ と に な っ た の か が 明 ら か に さ れ て お ら ず

︑ ま た

︑ 共 済 契 約 者 兼 共 済 金 受 取 人 で あ る A が 被 共 済 者 で あ る B よ り も 先 に 死 亡 し た 後 の 法 律 関 係 に つ い て は 表 題 に 掲 げ た テ ー マ と は 異 な る 問 題 を 含 む も の で あ る の で

︑ 本 稿 の

(8)

検 討 対 象 か ら は 外 す こ と に す る

二   保 険 金 請 求 権 の 相 続 法 上 の 取 り 扱 い

  被 相 続 人 が 自 己 を 被 保 険 者 と す る 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し

︑ 共 同 相 続 人 の 一 人 又 は 一 部 の 者 を 保 険 金 受 取 人 と し て 指 定 し た 場 合 に は

︑ 以 下 の よ う な 形 で 保 険 金 請 求 権 の 扱 い が 問 題 と な る

︒  

①  保 険 金 請 求 権 は

︑﹁ 被 相 続 人 の 財 産 に 属 し た 一 切 の 権 利 義 務

﹂︵ 民 法 八 九 六 条

︶ に あ た る か

︒ 遺 産 分 割 の 対 象 と な る か

︒ 相 続 人 が 限 定 承 認 し た 場 合 に 相 続 債 権 者 の 引 き 当 て 財 産 と な る か

︒ 当 該 相 続 人 が 相 続 を 放 棄 し た 場 合 に 保 険 金 請 求 権 を 失 う か

︒  

②  保 険 金 請 求 権 は

︑ み な し 相 続 財 産 を 確 定 す る に あ た っ て

︑ 持 戻 し の 対 象 と な る か

︵ 民 法 九

〇 三 条

︶︒  

③  保 険 金 請 求 権 は

︑ 遺 留 分 算 定 に あ た っ て

︑ そ の 基 礎 財 産 と な る か

︵ 民 法 一

〇 二 九 条

︶︒   本 決 定 が そ う で あ る よ う に

︑ こ れ ら の 問 題 を 検 討 す る 前 提 と し て

︑ 保 険 金 受 取 人 に 指 定 さ れ た 者 は 保 険 金 請 求 権 を 保 険 契 約 者 ま た は 被 保 険 者 か ら 承 継 的 に 取 得 す る の か 否 か が ま ず 問 わ れ る の が 一 般 的 で あ る

︒ こ の 点 に つ い て は

︑ 消 極 に 解 す る の が わ が 国 に お け る 通 説

・ 判 例 で あ る

︒ す な わ ち

︑ 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 に お い て

︑ 保 険 金 受 取 人 に 指 定 さ れ た 者 は

︑ 保 険 金 請 求 権 を 保 険 契 約 者 ま た は 被 保 険 者 か ら 承 継 的 に 取 得 す る の で は な く

︑ 自 己 固 有 の 権 利 と し て 原 始 的 に 取 得 す る と 解 さ れ て い る

︒ こ の こ と を も っ て

︑ 一 般 に

﹁ 保 険 金 請 求 権 は 保 険 金 受 取 人 に 固 有 の 権 利 で あ る

﹂ と 言 わ れ る

︒ 以 下

︑ 保 険 金 請 求 権 の か か る 性 質 を

﹁ 固 有 権 性

﹂ と 呼 ぶ こ と に す る

二 一 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 一

(9)

二 二 二 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 二

1.

固 有 権 性 を 肯 定 す る 学 説

・ 判 例

  固 有 権 性 を 肯 定 す る 学 説

・ 判 例 の 立 場 は

︑ 大 正 期 に ほ ぼ 固 ま っ た よ う で あ る が

︑ 本 稿 で は

︑ 諸 文 献 に お い て 最 も よ く 引 用 さ れ る 大 森 忠 夫 博 士 の 見 解

︑ 大 審 院 昭 和 一 一 年 五 月 一 三 日 判 決

︵ 民 集 一 五 巻 八 七 七 頁

︒ 以 下

︑﹁ 昭 和 一 一 年 判 決

﹂ と い う

︒︶ 及 び 最 高 裁 昭 和 四

〇 年 二 月 二 日 判 決

︵ 民 集 一 九 巻 一 号 一 頁

︒ 以 下

︑﹁ 昭 和 四

〇 年 判 決

﹂ と い う

︒︶ を そ れ ぞ れ 紹 介 す る こ と に す る

学 説

  保 険 法 学 に お け る 通 説 的 位 置 を 占 め る 大 森 博 士 は 次 の よ う に 説 く

﹁ ま ず

︑ 保 険 金 受 取 人 が 受 取 人 に 指 定 さ れ る こ と に よ り

︑ 保 険 者 に 対 し て 保 険 金 請 求 権 を 取 得 す る こ と の 保 険 契 約 法

上 の

理 論 的 構 成 い か ん の 問 題 に つ い て 見 る に

︑ ひ ろ く 第 三 者 の た め に す る 契 約 一 般 に 関 し て も 問 題 と さ れ た よ う に

︑ 古 く は

︑ あ る い は 第 三 者

︵ 受 取 人

︶ が 契 約 当 事 者 の 申 込 に 対 す る 承 諾 を な す こ と に よ つ て 権 利 を 取 得 す る の で あ る

︑ と す る 承 諾 説

︶ や 加 入 説

︶︑ 又 は 一 旦 要 約 者 が 諾 約 者 に 対 し て 取 得 し た 権 利 を 第 三 者 に 譲 渡 す る の で あ る

︑ と す る 承 継 説

︶ な ど が あ つ た が

︑ こ れ ら は い ず れ も 第 三 者 の た め に す る 契 約 制 度 の 本 来 の 趣 旨 を 無 に す る 付 会 的 か つ 無 用 の 説 明 で あ り

︑ 今 日 で は

︑ 契 約 当 事 者 間 の 第 三 者 の た め に す る 契 約 に よ つ て 第 三 者 は 直 接 に

諾 約 者 に 対 し て 権 利 を 取 得 す る の で あ る

︑ と 解 す る い わ ゆ る 直 接 取 得 説 も し く は 創 造 説

︶ が 通 説 で あ る こ と は 多 言 を 要 し な い

︒︹ 改 行

︺ 右 の よ う な 意 味 に

(10)

お い て

︑ 受 取 人 の 有 す る 保 険 金 請 求 権 そ の も の

︑ 一 旦 契 約 者 に 属 し た 権 利 を 契 約 者 か ら 譲 受 け て 承 継 的 に 取 得 し た も の で は な く

︑ 他 人 の た め に す る 保 険 契 約 に よ り 受 取 人 が 直 接 的 に 取 得 し た も の で あ り

︑ そ の 意 味 で 受 取 人 固 有 の 権 利 で あ る

︑ と い わ な け れ ば な ら な い

﹂︹ 傍 点 は 原 文 の ま ま

︺︒   こ の よ う に

︑ 大 森 博 士 は

︑ 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 が 民 法 上 の 第 三 者 の た め に す る 契 約 の 一 種 で あ る こ と を 前 提 と し

︑ 第 三 者 の た め に す る 契 約 に 関 す る ド イ ツ 民 法 学 の 考 え 方 を 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 に も あ て は め る こ と に よ っ て

︑ 固 有 権 性 を 導 い て い る

︒ し か し

︑ 大 森 博 士 が 挙 げ る 学 説 は す べ て

︑ ロ ー マ 法 以 来 の

﹁ 何 人 も 他 人 の た め に 契 約 す る こ と を 得 ず

﹂ と い う 法 原 則 を 克 服 し

︑ 第 三 者 の た め に す る 契 約 が 有 効 で あ る こ と を い か に し て 根 拠 付 け る か に 意 を 用 い た 学 説 で あ る

︒ そ し て

︑ 直 接 取 得 説

・ 創 造 説 は

︑ 第 三 者 の た め に す る 契 約 は 契 約 当 事 者 の 意 思 に 基 づ い て 効 力 を 生 ず る と い う こ と を 確 認 す る も の に 過 ぎ な い 学 説 で あ り

︑ そ の 理 論 か ら 固 有 権 性 が 論 理 必 然 的 に 導 き 出 さ れ る わ け で は な い と い う 点 に 注 意 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る

︒   な お

︑ 保 険 法 の 体 系 書

・ 概 説 書 で は

︑ そ の 理 由 付 け を 示 す こ と な く

︑ 固 有 権 性 の 結 論 の み が 述 べ ら れ る こ と が 多 い

判 例

  昭 和 一 一 年 判 決 は

︑ 保 険 契 約 者 兼 被 保 険 者 で あ る 被 相 続 人 が 養 老 保 険 契 約 を 締 結 し

︑ 満 期 前 に 死 亡 し た 場 合 の 保 険 金 受 取 人 と し て 長 男 を 明 示 的 に 指 定 し た 事 案 に お い て

︑﹁ 被 保 険 者 死 亡 ト 同 時 ニ 前 示 保 険 金 請 求 権 ハ 該 保 険 契 約 ノ 効

二 二 三 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 三

(11)

二 二 四 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 四

力 ト シ テ 当 然 右 特 定 相 続 人 ノ 固 有 財 産 ニ 属 ス ヘ ク 其 ノ 相 続 財 産 タ ル 性 質 ヲ 有 ス ヘ キ モ ノ ニ 非 ス ト 解 ス ル ヲ 相 当 ト ス

﹂ と 判 示 し た

︒ こ れ に 続 け て

︑﹁ 右 相 続 人 ニ 於 テ 家 督 相 続 開 始 ノ 後 適 法 ニ 限 定 承 認 ノ 手 続 ヲ 執 リ タ ル 以 上 其 ノ 被 相 続 人 ニ 対 ス ル 債 権 者 ニ 於 テ 該 保 険 金 請 求 権 ヲ 差 押 へ 之 カ 転 付 ヲ 受 ク ル コ ト ヲ 得 サ ル モ ノ ト 謂 ハ サ ル ヲ 得 ス

﹂ と 述 べ

︑ 被 相 続 人 の 長 男 か ら な さ れ た

︑ 保 険 金 請 求 権 に つ い て 転 付 命 令 を 得 て 保 険 者 か ら 保 険 金 の 支 払 い を 受 け た 相 続 債 権 者 に 対 す る 不 当 利 得 返 還 請 求 を 認 め た

︒   昭 和 四

〇 年 判 決 も

︑ 昭 和 一 一 年 判 決 と 同 じ く 養 老 保 険 契 約 に 関 す る 事 案 で あ る が

︑ 保 険 金 受 取 人 を 単 に

﹁ 被 保 険 者 ま た は そ の 死 亡 の 場 合 は そ の 相 続 人

﹂ と 指 定 す る に と ど ま り

︑ 満 期 前 に 死 亡 し た 場 合 の 保 険 金 受 取 人 と し て 特 定 人 の 氏 名 を 挙 げ な か っ た 事 案 で あ っ た

︒ 最 高 裁 は

︑ こ の よ う な 場 合 で も

︑﹁ 保 険 契 約 者 の 意 思 を 合 理 的 に 推 測 し て

︑ 保 険 事 故 発 生 の 時 に お い て 被 指 定 者 を 特 定 し う る 以 上

︑ 右 の 如 き 指 定 も 有 効 で あ り

︑ 特 段 の 事 情 の な い か ぎ り

︑ 右 指 定 は

︑ 被 保 険 者 死 亡 の と き に お け る

︑ す な わ ち 保 険 金 請 求 権 発 生 当 時 の 相 続 人 足 る べ き 者 個 人 を 受 取 人 と し て 特 に 指 定 し た い わ ゆ る 他 人 の た め の 保 険 契 約 と 解 す る の が 相 当 で あ

﹂ る と す る

︒ そ し て

﹁ 右 の 如 く 保 険 金 受 取 人 と し て そ の 請 求 権 発 生 当 時 の 相 続 人 た る べ き 個 人 を 特 に 指 定 し た 場 合 に は

︑ 右 請 求 権 は

︑ 保 険 契 約 の 効 力 発 生 と 同 時 に 右 相 続 人 の 固 有 財 産 と な り

︑ 被 保 険 者

︵ 兼 保 険 契 約 者

︶ の 遺 産 よ り 離 脱 し て い る も の と い わ ね ば な ら な い

﹂ と 述 べ る

︒   昭 和 四

〇 年 判 決 の 具 体 的 な 争 点 は

︑ 養 老 保 険 契 約 に お け る 保 険 金 の 受 取 人 が 右 の よ う に 指 定 さ れ て い た 場 合 に

︑ 死 亡 保 険 金 の 請 求 権 が

︑ 相 続 人 で あ る 被 相 続 人 の 姉 と 弟 に 属 す る の か

︑ 被 相 続 人 か ら 全 財 産 の 包 括 遺 贈 を 受 け た 受 遺 者 に 属 す る の か と い う 点 に あ っ た

︒ 保 険 金 請 求 権 が 相 続 財 産 に 属 す る 財 産 で あ る と い う こ と に な る と

︑ 受 遺 者 が 取 得 で

(12)

き る こ と に な る の で

︑ 引 用 し た よ う な 一 般 論 が 述 べ ら れ た の で あ る が

︑ 星 野 英 一 教 授 は

︑ こ の 判 決 の 評 釈 に お い て

﹁ あ る 財 産 が 相 続 財 産 に 属 す る と か 属 し な い と い う だ け で

︑ す べ て の 問 題 に つ い て 一 挙 に ど ち ら か に 割 り 切 る こ と が で き な い の で あ っ て

︑ 個 別 的 に 各 効 果 ご と に 検 討 す る べ き で あ る

⁝ 従 っ て

︑ 判 旨 の 一 般 論 は

︑ 一 般 論 と し て も あ ま り 意 味 が な い 立 言 な の で あ っ た

﹂ と 述 べ て い る

︒ し か し

︑ 昭 和 四

〇 年 判 決 の 一 般 論 は そ の 後 の 判 決 に お い て 繰 り 返 し 引 用 さ れ

︑ 各 事 案 の 結 論 を 大 き く 左 右 し て い る

︒   な お

︑ 昭 和 一 一 年 判 決 は

︑ 保 険 金 請 求 権 が 相 続 人 の 固 有 財 産 と な る の は

﹁ 被 保 険 者 死 亡 ト 同 時

﹂ で あ る と 説 い て い る が

︑ 昭 和 四

〇 年 判 決 は

︑﹁ 従 来 の 大 審 院 判 決 を 変 更 し て

﹂︑

﹁ 被 保 険 者 死 亡 前 に お い て 保 険 契 約 の 効 力 発 生 と 同 時 に

︑ す で に

︑ い わ ゆ る 条 件 附 請 求 権 す な わ ち 一 種 の 期 待 権 を 取 得 し て い る

﹂ と す る 学 説 に 従 っ た も の と 解 さ れ て い る

2.

固 有 権 性 か ら の 帰 結 と そ の 修 正 の 可 否

  固 有 権 性 の み を 前 提 と す る 限 り

︑ 二 の 冒 頭 に 挙 げ た

③ の 問 題 に つ い て は

︑ 次 の と お り 全 て 否 定 の 結 論 が 導 か れ る こ と に な る

︒      

保 険 金 請 求 権 は

︑﹁ 被 相 続 人 の 財 産 に 属 し た 一 切 の 権 利 義 務

﹂ に あ た ら な い し

︑ 遺 産 分 割 の 対 象 と も な ら  ① な い

︒ 相 続 人 が 限 定 承 認 し た 場 合 に

︑ 相 続 債 権 者 の 引 当 て 財 産 と な ら な い

︒ 受 取 人 に 指 定 さ れ た 相 続 人 が 相 続 を 放 棄 し た 場 合 も

︑ 保 険 金 請 求 権 を 失 わ な い

︒       保 険 金 請 求 権 は

︑ み な し 相 続 財 産 の 算 定 に あ た っ て

︑ 持 戻 し の 対 象 と な ら な い

︵ 保 険 金 請 求 権 の 特 別 受 益 性 を  ②

二 二 五 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 五

(13)

二 二 六 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 六

否 定

︶︒       保 険 金 請 求 権 は

︑ 遺 留 分 算 定 に あ た っ て

︑ そ の 基 礎 財 産 と な ら な い

︒  ③   以 上 の う ち

︑  の

の 結 論 に つ い て 反 対 す る 学 説

・ 判 例 は 見 当 た ら ず

︑ そ の 当 否 が 問 題 と さ れ る こ と も ほ と ん  ① ど な い

︒ こ れ に 対 し

① は

︑ 保 険 契 約 に は 直 接 関 係 し な い 第 三 者 の 利 害 に 関 係 す る 問 題 で あ る こ と か ら

︑ 比 較 的 早 く か ら 議 論 が な さ れ て き た

︒ 大 審 院 時 代 の 判 例 及 び 初 期 の 学 説 は

︑ 保 険 金 請 求 権 が

﹁ 相 続 に よ っ て 得 た 財 産

︵ 民 法 九 二 二 条

︶ に 当 た ら な い と い う 形 式 論 及 び 遺 族 の 生 活 保 障 の た め に 死 亡 保 険 金 を 確 保 す る こ と が 望 ま し い と い う 政 策 論 か ら

︑  の 結 論 を 支 持 し た

︒ し か し

︑ 昭 和 一 一 年 判 決 を 契 機 に

︑ 固 有 権 性 を 肯 定 し な が ら も

︑  の 結 論 を 修 正 す  ①

 ① べ き こ と を 説 く 有 力 な 学 説 が 登 場 す る

︒ そ の 代 表 的 論 者 が 大 森 博 士 と 近 藤 英 吉 博 士 で あ る

︒   大 森 博 士 は

︑﹁ 契 約 者 と 受 取 人 と の 間 の 保 険 契 約 外 の 実 質 関 係

﹂ に 着 目 し

︑﹁ 保 険 契 約 者 は み ず か ら 保 険 料 支 払 と い う 出 捐 を な し

︑ そ の 経 済 的 産 物 で あ る と こ ろ の 保 険 金 請 求 権 は 別 人 で あ る 受 取 人 が 取 得 す る 結 果 と な り

︑ し か も 両 者 の 間 に は 不 可 分 の 関 係 が 存 す る の で あ る か ら

︑ 法 律 形 式 に お い て は と も か く

︑ 経 済 的 な 実 質 関 係 に お い て は

︑ 契 約 者 か ら 受 取 人 に 対 す る あ る 種 の 出 捐 関 係 が 存 す る

﹂ と い わ な け れ ば な ら な い と す る

︒ そ し て

︑ こ の よ う な 出 捐 が 契 約 者 の 任 意 の 無 償 処 分 と し て な さ れ

︑ 契 約 者 の 財 産 減 少 に つ き 利 害 関 係 を 有 す る 債 権 者 等 に 不 当 に 不 利 益 を 与 え る 場 合 に は

︑ そ れ ら の 者 の 利 益 を 保 護 す る 規 定 の 適 用 さ れ る 余 地 が あ る と 説 く

︒   ま た

︑ 近 藤 博 士 は

︑﹁ 保 険 金 受 取 人 の 指 定 は

︑ 法 律 上 の 形 式 に 於 て は

︑ 遺 贈 若 く は 死 因 贈 与 に 該 当 し な い の で あ る が

︑ そ の 事 実 上 の 効 果 に 於 て

︑ 殆 ん ど 遺 贈 若 く は 死 因 贈 与 と 異 る と こ ろ が な

﹂ く

︑﹁ 保 険 契 約 者 が そ の 保 有 す る 解 除

(14)

権 を 行 使 し て

︑ 生 存 中 に 保 険 の 買 戻 価 格 を 自 ら 取 得 し た と す れ ば

︑ そ れ 丈 け の 財 産 を 相 続 財 産 中 に 残 存 せ し め 得 た に も 拘 ら ず

︑ こ の 権 利 を 行 使 せ ず し て

︑ 受 取 人 を し て 保 険 金 請 求 権 を 取 得 せ し む る の は

︑ 消 極 的 に

︑ そ の 相 続 財 産 よ り 買 戻 価 格 を 受 取 人 に 与 え た も の

︱ 従 つ て 遺 贈 に 該 当 す る

︱ と も 考 ふ る こ と を 得 る

﹂ と 説 く

︒   大 森

・ 近 藤 両 博 士 は

︑ 以 上 の 考 え 方 を 前 提 に

︑ 具 体 的 に は

︑ 契 約 者 の 死 亡 当 時 に お け る 解 約

︵ 買 戻

︶ 価 格 に 相 当 す る 限 度 で

︑ 相 続 債 権 者 の 引 き 当 て 財 産 と す る べ き で あ る と 主 張 し

︑ さ ら に

③ の 問 題 に つ い て も

︑ 契 約 者 の 死 亡 当 時 に お け る 解 約 価 格 に 相 当 す る 限 度 で

︑ 持 戻 し の 対 象 と し

︑ 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と す べ き こ と を 主 張 し た

︒ こ れ を 受 け て

︑ 相 続 法 学 説 で は

︑ 保 険 金 請 求 権 は 保 険 料 の 対 価 と し て の 実 質 を 有 し

︑ 経 済 的 に は 保 険 契 約 者 か ら 保 険 金 受 取 人 に 対 し て 無 償 の 出 捐 が あ っ た と 考 え ら れ る こ と

︑ そ し て

︑ 持 戻 し

・ 遺 留 分 の 両 制 度 が

﹁ 共 同 相 続 人 間 の 公 平

﹂ を 確 保 す る た め の 制 度 で あ る こ と を 理 由 に

︑ 保 険 金 請 求 権 を 持 戻 し の 対 象 と し

︑ 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 と す べ き で あ る と 主 張 す る も の が 多 数 を 占 め る に 至 っ た

︒   し か し

︑ 最 高 裁 は

︑ 本 決 定 が 引 用 す る 平 成 一 四 年 判 決 に お い て

︑ 同 じ く 本 決 定 が 引 用 す る 昭 和 四

〇 年 判 決 を 引 用 し

︑﹁ 自 己 を 被 保 険 者 と す る 生 命 保 険 契 約 の 契 約 者 が 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 を 変 更 す る 行 為 は

︑ 民 法 一

〇 三 一 条 に 規 定 す る 遺 贈 又 は 贈 与 に 当 た る も の で は な く

︑ こ れ に 準 ず る も の と い う こ と も で き な い と 解 す る の が 相 当 で あ る

﹂ と 判 示 し た

︒ 平 成 一 四 年 判 決 の 事 案 は

︑ 保 険 契 約 者 兼 被 保 険 者 で あ る 被 相 続 人 が

︑ 保 険 金 受 取 人 を 共 同 相 続 人 以 外 の 者 に 変 更 し た も の で あ り

︑ 当 該 変 更 行 為 が 遺 留 分 減 殺 請 求 の 対 象 と な る か 否 か が 争 点 で あ っ た

︒ そ れ ゆ え

︑ 平 成 一 四 年 判 決 の 調 査 官 解 説 及 び 判 例 評 釈 の 多 く は

︑ 保 険 金 請 求 権 が 持 戻 し の 対 象 と な る か と い う 問 題 に つ い て 平 成 一 四 年 判 決 の 射

二 二 七 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 七

(15)

二 二 八 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 八

程 が 直 ち に 及 ぶ も の で は な い と 指 摘 し て い た

︒ し か し

︑ 平 成 一 四 年 判 決 が 特 別 受 益 性 を 否 定 す る 方 向 を 示 唆 す る よ う に 思 わ れ る と の 指 摘 や

︑ 平 成 一 四 年 判 決 の 論 理 か ら は 民 法 九

〇 三 条 一 項 を 適 用 す る こ と は か な り 難 し い の で は な い だ ろ う か と の 指 摘 も 見 ら れ た

︒ さ ら に

︑ 学 説

・ 裁 判 例 の 中 で も

︑ 平 成 一 四 年 判 決 以 前 か ら

︑ 原 則 と し て 持 戻 し の 対 象 に な る と し つ つ 民 法 九

〇 三 条 三 項 を 活 用 し て 柔 軟 な 取 り 扱 い を す べ し と す る も の や

︑ 持 戻 し を 原 則 的 に 否 定 す べ き と す る も の が 有 力 と な り つ つ あ っ た

3.

他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 の 対 価 関 係 に 着 目 す る 学 説

  山 下 友 信 教 授 と 藤 田 友 敬 教 授 は

︑ 2.

で 紹 介 し た 通 説

・ 判 例 の 考 え 方 に 疑 問 を 呈 す る

︒   山 下 教 授 は

︑ ま ず

︑ 固 有 権 性 に よ る 論 理 的 帰 結 が 必 ず し も 妥 当 だ と は 考 え ら れ ず

︑ 2.

で 確 認 し た 如 く 修 正 が 試 み ら れ て い る の は

︑ 第 三 者 の た め に す る 契 約 の 法 的 構 造 の 理 解 に 反 省 す べ き 点 が あ る か ら で は な い か と 指 摘 す る

︒ す な わ ち

︑ 他 人 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 に お い て

﹁ 補 償 関 係

︶︵ 保 険 契 約 者 と 保 険 者 の 関 係

︶ と 対 価 関 係

︶︵ 保 険 契 約 者 と 保 険 金 受 取 人 の 関 係

︶ を 峻 別 し

︑ 後 者 は 前 者 と 切 り 離 し て

︑ 独 立 の 法 律 関 係 と し て 論 じ な け れ ば な ら な い

﹂ と い う ド イ ツ の 判 例

・ 学 説 の 考 え 方 を 紹 介 し た 上 で

︑ 固 有 権 性 一 辺 倒 の 説 明 は 対 価 関 係 を 全 く 無 視 す る こ と に 問 題 が あ る の だ と 指 摘 す る

︒ そ の 上 で

︑ 保 険 契 約 者 の 利 害 関 係 人

= 相 続 債 権 者 や 他 の 共 同 相 続 人

︺ と 保 険 金 受 取 人 の 間 の 利 害 調 整 は

︑ 保 険 契 約 者 と 保 険 金 受 取 人 の 対 価 関 係 に 即 し て な さ れ る べ き で あ る と 主 張 す る

(16)

  次 い で

︑ 保 険 金 受 取 人 の 指 定 が 無 償 で な さ れ て い る 場 合 に

︑ 保 険 契 約 者 と 保 険 金 受 取 人 の 対 価 関 係 を ど の よ う に 把 握 す べ き か に つ い て 検 討 を 加 え る

︒ 理 由 付 け は 省 略 す る が

﹁ 少 な く と も 生 命 保 険 契 約 に お い て は

︑ 対 価 関 係 に お け る 法 律 的 基 礎 は 必 ず し も 契 約 の 存 在 を 必 要 と す る も の で は な く

︑ 保 険 契 約 者 の 一 方 的 な 権 利 付 与 の 意 思 表 示 で 足 り る

﹂︑ 保 険 契 約 者 に よ る

﹁ 撤 回 な い し は 解 約 が 可 能 で あ る と し て も

︑ 保 険 金 受 取 人 は 指 定 と 同 時 に 保 険 者 に 対 し て 保 険 金 請 求 権 を 取 得 す る と 考 え る こ と が で き る 限 り で

︑ 対 価 関 係 に お い て も

︑ 解 除 条 件 付 で 生 前 の 贈 与 と し て 保 険 契 約 者 か ら 保 険 金 受 取 人 へ 価 値 の 移 転 が あ っ た

﹂ と 考 え る こ と を 前 提 に

︑﹁ 保 険 金 請 求 権 は

︑ 対 価 関 係 に お い て 生 前 贈 与 と し て 取 得 さ れ る の で あ り

︑ 贈 与 の 対 象 は 保 険 金 請 求 権 そ の も の で あ

﹂ る と 結 論 付 け る

︒   藤 田 教 授 も

︑ 保 険 契 約 者 と 保 険 金 受 取 人 の 対 価 関 係 に 着 目 し て 保 険 金 受 取 人 と 相 続 債 権 者

・ 共 同 相 続 人 の 利 害 調 整 を す べ き で あ る と い う 山 下 教 授 の 方 向 性 を 支 持 す る が

︑ 保 険 契 約 の 類 型 に よ っ て 対 価 関 係 の 扱 い を 異 に す べ き で あ る と 主 張 す る

︒ 具 体 的 に は

① 保 険 契 約 者 が 当 初 は 自 己 の た め に す る 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し

︑ そ の 後 に 保 険 金 受 取 人 の 指 定 を 行 っ た 場 合 に は

︑ 保 険 金 請 求 権 の 贈 与

︵ 債 権 譲 渡 型 の 対 価 関 係

︶ が 認 め ら れ る

② 死 亡 保 障 だ け の 定 期 保 険 契 約 な ど

︑ 保 険 金 受 取 人 の 存 在 な し に は そ の 保 険 契 約 の 成 立 が 考 え ら れ な い 場 合

︑ す な わ ち

︑ 保 険 契 約 者 の 保 険 金 取 得 の 仮 定 が 現 実 的 で な い 場 合 に は

︑ 保 険 料 の 贈 与

︵ 債 務 引 受 型 の 対 価 関 係

︶ が 認 め ら れ る

③ 貯 蓄 型 生 死 混 合 保 険 の 場 合 に は

︑ 危 険 保 険 料 部 分 に つ い て の 債 務 引 受 型 の 対 価 関 係 と 貯 蓄 保 険 料 部 分 に つ い て の 債 権 譲 渡 型 の 対 価 関 係 が 組 み 合 わ さ っ て い る と 考 え る こ と が で き る と い う

︒ そ し て

︑ い ず れ の 対 価 関 係 に も 基 本 的 に 死 因 処 分 性 が 認 め ら れ る が

︑ 積 立 部 分 の な い ま た は 少 な い 定 期 保 険 等 に つ い て は 保 険 料 の

﹁ 支 払 い の 度 に 支 出 が 完 了 す る 生 前 の 無 償 処 分 で あ り

二 二 九 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 五 九

(17)

二 三

○ 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 六

死 因 処 分 で は な い

﹂︑ 積 立 部 分 が 大 き く 保 険 契 約 者 の 処 分 権 が 留 保 さ れ る 契 約 で は

︑﹁ 積 立 部 分 に 関 す る 限 り 対 価 関 係 は 一 種 の 死 因 処 分

﹂ で あ る が

︑﹁ 危 険 保 険 料

︵ 掛 け 捨 て

︶ の 部 分 に つ い て は 支 出 の 都 度 に 最 終 的 な 費 消 が な さ れ て お り

︑ 生 前 処 分

﹂ で あ る と 考 え る べ き と す る

三   保 険 金 請 求 権 の 持 戻 し の 可 否 に 関 す る 学 説

・ 裁 判 例 1.

学 説

肯 定 説

  山 下

・ 藤 田 両 教 授 の 見 解 を 採 用 す れ ば

︑ 原 則 的 に 持 戻 し が 肯 定 さ れ る こ と に な る

︒ ま た

︑ 固 有 権 性 を 大 前 提 と す る 多 く の 相 続 法 学 説 も

︑ 上 述 し た よ う に

︑ 持 戻 し は

﹁ 共 同 相 続 人 間 の 公 平

﹂ を 確 保 す る た め の 制 度 で あ る か ら

︑ 持 戻 し を 肯 定 す べ き で あ る と 主 張 す る

︒ た だ し

︑ い か な る 名 目 で 加 算 す る の か を 明 確 に し な い も の が 多 く

︑ ど れ だ け の 額 を 加 算 す る か に つ い て も 争 い が あ る

︒  

  保 険 契 約 者 の 支 払 っ た 保 険 料 総 額 を 加 え る べ き で あ る と す る も の

︵ 保 険 料 説

︶  

  保 険 契 約 者 の 死 亡 時 の 解 約 返 戻 金 の 額 を 加 え る べ き で あ る と す る も の

︵ 解 約 価 格 説

︶  

  保 険 金 受 取 人 の 受 け 取 っ た 保 険 金 全 額 を 加 え る べ き で あ る と す る も の

︵ 保 険 金 額 説

︶  

  保 険 金 受 取 人 が 取 得 し た 金 額 の う ち

︑ 保 険 料 負 担 者 で あ る 被 相 続 人 が そ の 死 亡 時 ま で に 払 い 込 ん だ 保 険 料 の

︑ 総 保 険 料 に 対 す る 割 合 を 保 険 金 額 に 乗 じ て 得 た 金 額 を 加 え る べ き で あ る と す る 学 説

︵ い わ ゆ る

﹁ 保 険 金 額 の 修 正

(18)

﹂︶  

  保 険 契 約 の 類 型 ご と に 考 え る べ き で あ る と す る も の

︵ 藤 田 教 授 の 見 解

︶   最 も 早 く に 提 唱 さ れ た の は 説 で あ っ た が

︵ 大 正 七 年

︶︑ そ の 後

︑ 大 森

・ 近 藤 両 博 士 に よ っ て 主 張 さ れ た 説 が 相 続 法 学

・ 保 険 法 学 双 方 で 多 く の 支 持 を 集 め た

︒ し か し

︑ 大 阪 家 庭 裁 判 所 家 事 部 の 決 議

︵ 昭 和 三 五 年

︶ に お い て

の 各 説 は

﹁ そ れ ぞ れ に 欠 陥 を 有 し て い る

﹂ と さ れ

︑ 相 続 税 法 に よ っ て も 採 用 さ れ て い る

説 が 支 持 さ れ た

︒ こ れ を 契 機 に

︑ 実 務 家 や 持 戻 し を 肯 定 す る 審 判 例 に よ っ て

説 が 広 く 支 持 さ れ た

︒   近 時 で は

︑﹁ 今 日 で は 純 粋 の 生 命 保 険 は 現 実 に は な く

︑ い ず れ も 同 時 に 積 立 預 金 の 性 格 を も 持 っ て い る こ と を 考 え る と

⁝ そ れ ま で に す で に 支 払 わ れ た 保 険 料 額

︑ ま た は 少 な く と も 被 相 続 人 死 亡 当 時 の 保 険 契 約 解 約 価 額

⁝ が 保 険 金 受 取 人 に 遺 贈 さ れ た も の と 考 え て

﹂︑ 持 戻 し や 遺 留 分 の 算 定 に お い て 考 慮 す べ き で あ る と の 主 張 も 見 ら れ る

柔 軟 な 扱 い の 必 要 性 を 強 調 す る 肯 定 説

  高 木 多 喜 男 教 授 は

︑﹁ 結 論 的 に は 保 険 金 額 が 無 償 で 受 取 人 に 与 え ら れ て い る 一 種 の 生 前 贈 与 で あ る 考 え る

﹂ と し て

︑ 上 記

の 保 険 金 額 説 を 基 本 的 に は 支 持 す る

︒ し か し

︑﹁ 常 に 持 戻 し の 対 象 と す る こ と は 必 ず し も 妥 当 で は な

﹂ く

︑ 持 戻 制 度 を

﹁ 借 用

﹂ す る に 際 し て は

︑ 被 相 続 人 の 意 思

︑ 具 体 的 に は 九

〇 三 条 三 項 に い う

﹁ 前 二 項 の 規 定 と 異 な っ た 意 思

﹂ を 問 題 と す べ き で あ り

︑﹁ い ろ い ろ な 状 況 を 考 慮 し て

︑ 処 置 す る の が

︑ む し ろ 共 同 相 続 人 間 の 公 平 を 実 現 し う る も の と 思 わ れ る

﹂ と 述 べ る

二 三 一 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 六 一

(19)

二 三 二 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 六 二

  山 下 教 授 は

︑ 高 木 教 授 の 見 解 や 後 述 す る 千 藤 教 授 の 旧 説 を 受 け て

︑ 近 時 で は

︑﹁ 特 別 受 益 の 持 戻 し と い う 制 度 が 公 平 の 観 点 か ら

︑ 相 続 財 産 で は な い 財 産 を 相 続 財 産 と し て 扱 う と い う 例 外 的 制 度 で あ る と す れ ば

︑ 相 続 財 産 で な い 生 命 保 険 金 請 求 権 を 特 別 受 益 と し て 扱 う か ど う か は 個 別 事 例 に お け る 公 平 性 を 確 保 す る た め に 必 要 か ど う か に よ り 決 定 す べ き で あ り

︑ そ れ は 一 定 の 基 準 で は 決 定 し が た く

︑ ケ ー ス バ イ ケ ー ス で 判 断 さ れ る と い う こ と を 正 面 か ら 認 め る こ と も 考 え ら れ て よ い の で は な か ろ う か

﹂ と 述 べ て い る

︒   ま た

︑ 竹 濱 修 教 授 も

︑ 高 木 教 授 の 見 解 と ほ ぼ 同 様 で あ る が

︑﹁ 生 命 保 険 契 約 の 保 険 料 に つ い て 被 相 続 人 た る 保 険 契 約 者 の み が 負 担 し て い た の で は な く

︑ 保 険 金 受 取 人 ま た は そ の 他 の 者 が 負 担 し て い た 場 合 に は

︑ 相 続 財 産 に 持 ち 戻 さ れ る 保 険 金 額 は

︑ 保 険 契 約 者 と そ の 他 の 者 の 保 険 料 負 担 割 合 に 応 じ

︑ 保 険 金 額 の う ち 前 者 の 負 担 割 合 分 が 相 続 財 産 に 持 ち 戻 さ れ る と 解 す べ き で は な い か と 考 え る

﹂ と 述 べ る

原 則 否 定 説

  千 藤 教 授 の 見 解   千 藤 洋 三 教 授 は

︑ 従 前 は の 柔 軟 な 扱 い の 必 要 性 を 強 調 す る 肯 定 説 を 支 持 し て い た が

︑ 平 成 一 二 年 に 公 表 さ れ た 判 例 評 釈 に お い て

︑ 見 解 を 次 の よ う に 修 正 さ れ た

︒﹁ 現 在 で は

︑ 被 相 続 人 が 数 人 の 相 続 人 の う ち の あ る 特 定 の 相 続 人 を 受 取 人 に 指 定 し て い る こ と の 意 思 重 視 を さ ら に 強 調 し

︵ こ の 意 味 で

︑ た ん に

﹁ 相 続 人

﹂ と し て い た 場 合 と は 区 別 す る

︶︑ 原 則 と し て 特 別 受 益 性 は 否 定 さ れ る べ き で

︑ 共 同 相 続 人 間 の 公 平 さ を 極 め て 損 な う と い う 例 外 的 な 場 合 に あ っ

(20)

て は じ め て

︑ 特 別 受 益 に 準 じ て 処 理 す る と い う 考 え 方 が ベ タ ー で は な い か と 思 っ て い る

﹂︒

  西 判 事 の 見 解   西 理 判 事 は

︑ 遺 産 分 割 は 民 法 九

〇 条 な い し 九

〇 四 条 の 二 に よ っ て 割 り 出 さ れ た 相 続 分 に 基 づ い て な さ れ る が

﹁ こ の 相 続 分 は 絶 対 に 動 か す こ と の で き な い 固 定 的 な も の と 考 え る べ き で は な く

︑ 民 法 九

〇 六 条 所 定 の 諸 事 情 と の 関 係 に お い て 合 理 的 な 限 度 で 修 正 可 能 な も の で あ る

﹂ と の 前 提 に 立 っ た 上 で

︑ 遺 産 分 割 に お け る 保 険 金 請 求 権 の 扱 い に つ い て

︑ 次 の よ う に 述 べ る

︒ す な わ ち

︑ 保 険 金 請 求 権 は

︑﹁ 原 則 と し て は 受 給 権 の あ る 遺 族 の 固 有 の 財 産 と 解 し て よ い

﹂ と し て も

︑ 死 亡 退 職 金 と 同 様 に

︑ 民 法 九

〇 六 条 の

﹁ 一 切 の 事 情

﹂ の 一 要 素 と し て 考 慮 さ れ る べ き で あ り

︑ そ れ に と ど ま る

︒ 遺 贈 に 準 じ た も の と し て 特 別 受 益 の 扱 い を す る 場 合 に 比 較 し て 保 険 金 を 受 け 取 っ た 相 続 人 に 有 利 な 結 果 と な る こ と に つ い て は

︑﹁ 生 命 保 険 金 や 死 亡 退 職 金 を 受 領 す べ き 地 位 に あ る 相 続 人 は

︑ 共 同 相 続 人 の 中 で も 最 も 被 相 続 人 と 密 接 な 関 係 に あ る 者 で あ る こ と が 一 般 で あ る か ら

︑ こ の よ う な 結 論 は 実 質 的 な 衡 平 と い う 見 地 か ら も 是 認 さ れ て 然 る べ き も の で あ る

﹂ と す る

2.

裁 判 例

  裁 判 例 は

︑ 当 初 は 肯 定 例

・ 否 定 例 が ほ ぼ 拮 抗 し て い た が

︑ 近 時 の 家 裁 実 務 な い し 高 裁 段 階 で の 判 断 は 持 戻 し を 否 定 す る の が 主 流 に な り つ つ あ っ た

︒ 持 戻 し を 否 定 す る 裁 判 例 の 中 に は

︑ 保 険 金 請 求 権 が 民 法 九

〇 三 条 の 要 件 を 満 た す も の で は な い こ と を 理 由 と す る も の の ほ か

︑ 保 険 金 請 求 権 は 原 則 と し て 特 別 受 益 に 準 じ て 扱 わ れ る べ き で あ る と し な が

二 三 三 死 亡 保 険 金 請 求 権 と 民 法 九

〇 三 条

同 志 社 法 学  五 七 巻 三 号

︵ 九 六 三

参照

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