九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ラジアルタービン用ベーンレススクロールの内部流 動と境界層解析
原, 和雄
https://doi.org/10.11501/3105035
出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
任
ラジアルタービン用ベーンレス スクロールの内部流動と
境界層解析
原 和 雄
要ピA
ベーンレススクロールノズルは, 小型ターボ過給機のラジアルターピンの外周に 旋回流を供給する目的で広 く用いられる. ターボ過給機には, 高効率のみならず,
負荷変動に対する高応答性が求められており, 回転系の慣性モーメントを低減する ために, タービンロータの直径を小さくし, 羽根高さを 高くすることによって, 高 比速度化が計られてきた. このことは, 過給機のコンパクト化のためには好都合で あるが, スクロール内の流速が高くなり, 大きな半径方向圧力勾配に 基づく強い二 次流れが発生し, 軸方向に非一様な流れが夕}ピンへ流入して効率を減少させる.
これに加えて, 周方向に非一様なノズル流れがタービンロータの非定常損失を増加 させるとともに 翼の振動を励起して, ロ}タの疲労破壊の原因となり, 慣性モー メント低減の妨げとなっている.
スクロールノズルの内部流動は, 加速流れ場であるので, 境界層の発達は抑制さ れ, ターピン入口部で, 均ーな流れ場が得られるとの想定の下に, 流動現象の基本
的理解も不十分なままに 一次元的な流量配分のみを考慮して設計されてきた. 内 部流動の実験的研究は, 計測 が困難なため ノズル部とスクロ}ル流路の特定の部分 に限られており, 従来の報告は, 単純な二次流れ現象の認識の域を出ていない. こ のため, ノズル効率の高い作動範囲を 定め る基準さえも明確でなく, 流れの周方向 の非一様性が生成されるメカニズムも明らかにされていなかった. スクロール流れ 場の数値解析に おいては ノズル出口の流出境界条件として何を用いるべきかが明 確でなく, 流動現象の理解不足のために, 格子形成と数値モデルの選定に対する配 慮に欠け, 内部流れの数値シミュレーションは不完全で、あった.
本研究では, スクロールノズルの形状パラメータの中で重要な, ノズルの面積比 を連続的に変化させることが でき, かつ, スクロールの広い範囲で内部流動を測定 できる試験装置を製作し, 面積比と, スクロール内部およびノズル部の流動との関 係を明らかにした. 次に, スクロールの側壁境界層を測定し, 流入 境界層の挙動が,
ノズ、ルの周方向 の非一様性の原因であることを明らかにした. そして, 局所軸対称 境界層解析法を用いて, 流路中央部の速度分布を求めることによって, ノズルの作 動状態を予見し, 三次元境界層解析法を用いて, ノズル流れの周方向 非一様性を評 価する方法を示したものである.
本論文は七章からなり, 各章の構成は以下のとおりである.
第一章では, スクロール流れ場の予測に 関する特有の困難性について述べ, 本研 究の意義を概説した.
1
第二章では, 従来の研究を参照し, スクロール流れ場に対するこれまでの知見と,
予測計算法の現状について述べた. またスクロ}ル流れ場の背景となる, ねじれ境 界層に関して説明を加え, 既存の主な三次元境界層解析法の概要を記述した.
第三章では, 本研究で用いた可変面積型スクロール試験装置の設計概念と, 測定 法の概要を説明 した. ついでスクロールとノズル流れ場の測定結果を示し, その結 果に基づき以下の知見を得た. 入口ダクトから流入する低エネルギ流体は, 半径方 向圧力勾配の作用を受けて, スクロール入口部で強い二次流れを引き起こす. この ため, 二次流れの運動エネルギと, 渦度の断面平均値は, スクロール 入口部で急速 に発達する. しかし, 低エネルギ流体のノズルからの流出に伴い, これらはスクロー ル後半部で、減衰する. ノズル流出角の小さな流動条件では, 流路中央 で逆流が始ま り損失が急増する. この逆流発生がスクロールノズルの作動限界である.
第四章では, スクロールの側壁境界層の詳細な測定結果に基づいて, 側壁の限界 流線と, 境界層分布を描くことにより以下のことを明らかにした. 流入境界層中の 低エネルギ流体 は, 急速にノズルへ運ばれ, 集中して流出し, 周方向に非一様なノ ズル流れ場をかたちづくる. 流入境界層が流出した後の側壁境界層は, 流路方向に 薄くなり, スクロール後半部では, 平衡境界層の状態になる.
第五章では, ノズル流れ場の軸方向の非一様性を評価するための簡易計算法を示 した. すなわち 各々の子午断面で, 局所軸対称境界層解析と, 境界層の排除効果 を考慮した局所軸対称ポテンシャル流れを組み合わせることによって, 流路中央部 での速度分布が予測できることを示した. この方法を用い, 逆流発生の有無を予測 することで, ノズル設計の妥当性が評価できる.
第六章では, ノズル流れ場の周方向の非一様性を予測する, 三次元境界層 計算法 について述べた. スクロールの境界層は剥離がないため, 境界層積分方程式が適用 できることに着目し, 強いねじれ境界層に適用できるように速度分布則改良した.
また, 境界層積分方程式の解法に際しては, 内部流れ場であることを考慮した差分 スキームを提案した. 本手法により流入境界層内の低エネルギ流体のノズルへの輸 送過程が解析でき, ノズル流れ場の周方向不均ーの予測が可能になる.
第七章は, 本研究のまとめである.
11
目次
第1章 序論
第2章 従来の研究 4
2. 1 スクロール流れ場の内部流動
2. 1. 1 スクロール流れ場に関する実験的研究 2. 1. 2 スクロール流れ場の言十算法
2. 2 横流方向圧力勾配の大きい流れ場の 境界層に関するこれまでの知見 2. 3 三次元境界層計算の例
4 4
7
1 0 1 4 第3章 スクロール主流の流れ場の測定とその特徴 1 6
3. 1 完験装置と実験方法 1 6
3. 2 スクロールの基本形状と全体性能の関係 2 1 3. 2. 1 スクロール流路における自由渦流れの形成 2 1
3. 2. 2 ノズル性能の評価 2 3
3. 2. 3 流路幅比とノズル性能 2 4
3. 2. 4 舌部角度とノズル性能 2 9
3. 3 スクロール流路の子午面流れの発達 3 1 3. 4 スクロール流路の二次流れの発達 5 1 3. 4. 1 局所軸対称基準流れの設定 5 1
3. 4. 2 二次流れの定義 5 6
3. 4. 3 スクロールにおける二次流れの発達 5 7
3. 5 むすび 6 0
第4章 スクロ}ル境界層の測定とその特徴 6 1
4. 1 境界層の測定法と積分パラメータの定義 6 1 4. 2 スクロール側壁境界層の基本的性格 6 3
111
4. 3 側壁境界層の積分パラメータの分布 6 7
4. 4 限界流線 7 2
4. 5 ノズル部の境界層分布 7 3
4. 6 むすび 7 5
第5章 局所軸対称ねじれ境界層解析による二次流れ解析 7 7
5. 1 軸対称境界層方程式 5. 2 経験則と解法
5. 3 計算例 5. 4 むすび
7 9 1i 4 7 7 8
8
第6章 三次元境界層計算 8 5
6. 1 三次元非定常積分型境界層方程式 6. 2 経験則
6. 3 境界層の等価吹き出し 6. 4 スクロール流れ場への適用
6. 4. 1 求解
6. 5 数値計算上の問題点 6. 5. 1 差分法
6. 5. 2 平滑化
6. 5. 3 局所時間刻み
6. 5. 4 限界流線の流れ角の評価について 6. 6 言明結果
6. 6. 1 平行側壁スクロール 6. 6. 2 円形断面スクロール 6. 6. 3 境界層の排除効果 6. 7 むすび
6 9 3 6 6 9 0 4 8 9 2 2 1 3 4 nxu nxu QJ QU QU QU ハU ハU ハり ハU 1i 1i qL QL qL
11ム 114 可lム ーーム 11ム 11ム 句1ム 守ti --ム
第 7 章 結論 126
lV
口万戸Uコ一一口
英字
A; ねじれパラメータ
Acf; 修正ねじれパラメータ
Ai; スクロール入口面積 B; プロッケージファクタ一 九; スクロール流路幅 ぇ; ノズ、ル流路幅 bslbe ; 流路幅比
Cj, スクロール入口平均速度
Cr, Cfj' cz; 円筒座標系における速度ベクトル
C f ; 摩擦係数
Ell ; エネルギ厚さ
F; エントレインメント関数
H; 形状係数
HE; エネルギ厚さの形状係数 Hfjp; 密度厚さの形状係数
h1, h2; X1, X2座標のメトリクス í, j; X l' X2座標の格子番号
K1' K2' K12' K21; Xl' X2座標の曲率パラメータ K; スクロール流路の自由渦係数
Kj; スクロール入口の自由渦係数 Me; 主流のマッハ数
m, スクロ}ルの子午断面で外壁から壁面に沿った距離
PtO ; ブレナム全圧
Pt ; 局所全庄
Q; スクロールの子午面流
q , 主流の速度
rj, スクロ}ル入口平均半径
rs ' スクロールの外壁半径
rh ' 内壁の半径
V
r, B, z; 円筒座標系
S; 測定断面番号
s, n ; 局所的直交流線座標系
U, w; 局所的直交流線座標系における速度ベクトル u; 主流速度の周方向成分
Ul' U2; Xl' X2座標方向速度成分 尾; 壁面からの等価吹き出し速度 ぷ; 普遍速度
X, y, 子午面内の平面座標系, 円筒座標系のZとrに対応
y; 壁面からの距離 〆; 普遍距離
s ; 二次流れ速度ベクトル
v; 局所軸対称のポテンシャル流れの速度ベクトル C; 測定速度ベクトル
KE; 子午面流れの運動エネルギの断面平均値
SE; 二次流れの運動エネルギの断面平均値
vc; 渦度の断面平均値
ギリシャ文字
α; 周方向から測った主流の流れ角, 6章で、はX1座標線と主流の成す角
α ; 周方向から測ったノズル流出角
αs ' 周方向から測ったスクロール外壁の巻角 ß ; 主流と境界層内の局所的流れの成す角 ム; 主流と限界流線の成す角
y ; 子午面と主流の成す角
ô ; 境界層厚さ
る1' 主流方向排除厚さ(局所流線座標系)
Ô2 ; 横流方向排除厚さ(局所流線座標系)
。r ' 半径方向排除厚さ(極座標系)
。e ' 周方向排除厚さ(極座標系)
E , 平滑化係数, 6. 7. 2節では壁と子午面との成す角
。; 舌部端から測ったスクロールの方位角
。t' 舌部角度
Vl
811; 主流方向運動量厚さ
。21 ' 横流方向運動量厚さ
。ρ; 密度厚さ
企; エントレインメント λ; X1 座標とX2座標の交角
v , 動粘性係数
ψ, 軸対称流れの流れ関数
ψn ' 湧き出しから求めた流れ関数
τ; せん断応力
s, η; 写像面座標 と; 無次元渦度 とp , 全圧損失係数
添え字
s , 主流方向成分 n, 横流方向成分
r , 半径方向成分
θ; 周方向成分 X1 ; X 1方向成分 X2 ; X2方向成分
MR; 測定領域にわたることを意味する
その他記号
; 主流の値あるいは非圧縮の値であることを示す
Vll
第1章 序論
ベーンレススクロールノズルは, 小型ターボ過給機のラジアルターピンの外周に 旋回流を供給する目的で, 小形の半径内向 きターピンのノズルとして, 特に車両用 過給機に広く用いられる. スクロールノズルの流れ場は加速流れであるので, 境界 層の発達は抑制され, ターピン入口部で, 均一な流れ場が得られるとの想定の下に,
流動現象の基本的理解も不十分なままに, 一次元的な流量配分のみを考慮して設計 製作され使用されてきた.
スクロールノズルの流れ場はこれまで傾斜熱線, レーザ流速計, ピトー管を用い て測定されてき たが, 内部流動の研究は計測が困難なためノズル部と スクロール主 流部に限られることが多く, これまでの研究報告は二次流れ現象の単純な認識の域 を出ず\流れ場の基本的理解も十分とは言えない. ましてスクロールの三次元境界 層の詳細な挙動はほとんど解明されていなかった. 粘性を考慮したスクロール内部 流れの予測法は不完全であり, 設計基準として何を用いるべきかも明確で、なかった.
類似の流れ場としては曲がり管があるが, 内径側に流出境界となるノズル部が存在 せず流動状況は異なっている. またポンプやコンプレッサのスクロールの流れも類 似と考えられるが流入流出方向が逆で, 滅速流れでの圧力回復性能の改善は重要な
問題であり, これまで多くの研究がなされた.
ノズルの加速流れ場においては境界層の発達は抑制され均ーな流れ分布が得られ ると思われるが, 実際は複雑な流動現象が 発生する. ベーンなしスクロールノズル はベーン付きノズルと異なり, スクロール流入後の流れの加速は角運動量の保存則 に従って行われるので ターピン入口条件を満足するためにはスクロールの流入速 度は高くなる. その結果摩擦損失と半径方向圧力勾配が大きくなり, かつその状態 が全周にわたって続くためにスクロ}ル流路で強い二次流れが発生し, ノズル部の 軸方向(流路高さ方向)の流れの一様性が損なわれて, 流路中央部で質量流束が減 少しノズルの前後壁面近傍で増加する. そしてノズ、ルの平均流出角が小さい場合に は流路中央部で逆流が生じ, 流れ場のせん断などの非可逆性のために損失が急増す る. この事実を踏まえて, 本研究においてはノズル部における逆流の初生を局所的 軸対称性を仮定した境界層解析によって予測しスクロールノズルの合理的作動範囲
1
の把握が可能なことを示した.
スクロールノズルの流れ場には軸方向の非一様性に加えて周方向の非一様性も存 在する. 従来, 周方向の非一様性の発生原因は舌部後流や流路の三次元形状の影響 によると考えられてきた. 本研究においてはスクロールの主流と壁面境界層の詳細 な計測が行なえる試験装置を用いて, スクロール流路の二次流れの発達過程と壁面 境界層の分布を調べた. その結果, スクロールの流れ場はその役割と流動の特徴か ら大きく三つの領域に分けられることが分かった. 第一は入り口ダクト部分であっ て, その役割は作動流体を所要の流入速度まで加速することと, 直進的流れを渦流 れへ変換するこ とである. しかしスクロ}ルに流入する流れは, 一般に自由渦流れ ではない. この領域の流動はダクト壁面上の境界層の発達と, 曲がりダクトの内径 側への低エネルギ流体の集積で特徴づけられる. 第二はスクロール舌部下流のスク ロール入り口の流れであって, この領域は, 流入流れのより自由渦的 な流れ場への 移行, 流入流れ と再循環流れの接触による舌部からの脱落渦の存在, 舌部ウェーク の拡散現象などに加えて, 最も流れ場に影響を与える流入境界層の低エネルギ流体 のノズル部への急速な輸送現象とそれに伴う二次流れが発生し, スクロ}ルの中で 最も複雑な流れ 場である. そしてノズル流れ場の周方向非一様性の主因は, 境界層 の挙動が周方向に同一でなく境界層内の低エネルギ流体が周方向のある領域で集中 的に流出するた めであることが分かつた. 第三の領域は流入境界層の流出後に形成 される流れ場で あって 境界層は加速流れ場のために発達せず横流方向圧力勾配の 作用で従来報告された境界層に比べて強くねじれていることが明らかになった. そ して流れ場は全体的に見れば軸対称的である.
スクロールの流れ場のナピエ ・ ストークス解析(N.S.解析)の現状は, 流れ場の 基本的理解不足のまま行われており, 満足な 報告例はない. N.S.解析に際 しては壁 面近傍の強くねじれた流れ場を表現するために, 計算格子を非常に細かく設けるか,
ねじれ境界層の性格をよく表現できる特別な壁関数の 近似を用いなければならず\
さらに出口境界条件の与え方に未解決の問題があり この解析により与えられたス クロール形状に対して簡便に境界層の挙動を予測することは困難である. 本研究で は流入境界層の挙動がノズルにおける周方向の非一様性の主因であることに着目し,
局所軸対称のポテンシヤル流れの主流と三次元境界層計算法を用いて, 非一様性の 形成過程を説明 できることを示した. その際, 強くねじれた境界層にも適用できる ように従来の三次元境界層解析法を改良して用いた.
ターボチャージヤの作動気体はエンジン から複雑な集合管と曲がり管を経て スク ロールノズルに供給され その聞に境界層が発達するために実機における周方向の
流動不均ーはさ らに顕著になることが予想される. 周方 向に非一様な ノズル流れは ターピンロータの非定常損失を増すばか りでなく, ロータプレードの振動を周期的 に励起し, 特に最近の高比速度ターピンに おいてはプレードの疲労破壊の原因にな る. ノズ、ル流れ場の周方向の一様性を向上 できれば, プレードを軽量化して, ロー タの慣性モーメントを小さ く することができ, 排気ガス特 性と燃料消費と重量の点 ですぐれ たターボ過給エンジンの性能向上に貢献することができる. また類似の流 れ場はベーンイ寸きスクロールノズル, 発電用水車のスクロール, 1000馬力級ガス ター ビンの単缶燃焼器と軸流 タービンの接続管, 液体ロケットエンジンのターボポンプ のガスジェネレータとタービンの接続管, 産業用軸流圧縮機の入口ス クロールなど で見ることがで き, 本研究の成果の一部がこれらの流れ場の よりよい理解と研究に 役立つことが期待される.
3
第2章 従来の研究
2. 1 スクロール流れ場の内部流動
2. 1. 1
スクロール流れ場に関する実験的研究
スクロールの 内部流動に関する最近の研究をその内容と共に振り返って みる. 流 れ場の測定としてはピ トー管によるHussain とBhin de r[ 198 4], ホットフィルムによ
るTabakoffら[1980], 傾斜熱線によるTabakoffら[ 19841, ピトー管 によるFengら [19851, レーザ流速計を用いたMalakら[1986], 実用のスクロールを改造しノズル部 分のみをピトー管で測定したMillerら[1988]の例がある. しかしなが ら その多くは測 定断面が限られ, その上, 測定系に固有の誤差(傾斜熱線を使用 し, 座標変換を誤っ ている. )を含んでいると推察され るもの もある. これ らの論文の多くはスクロー ル流路で発生す る二次流れの存在を明示するにとどまり, 設計に有用な研究の更な
る展開が不十分である. 以下 に個々の論文について要点を述べる.
Huss ainとBhinder[1984]はベーンレ ススクロールの内部流動の実験的な研究を行っ た. その中で彼らはスクロールケーシングの役割を以下のように定義した. それは,
1 )排気ガスの静的エンタル ピを運動エネルギに変換し, 高速の流体を指定された 角度でロータへ送ること, 2)速度ベクトルの大きさ と方向がロータ の周方向に一 様に分布すること, 3)上記の目的を最小の全圧損失で達成すること , である. そ して流体力学的 役割の違いからケーシング を 入口領域 と渦巻ケーシ ング領域 に分 けて考え, 入口 領域の試験装置と渦巻ケーシングの試験装置の二つの 実験装置を製 作した.
入口領域は入 口ダクト から舌部端ま での領域を想定しており, その役割は, 流 入 流れの加速と渦流れの形成である. 渦流れはダクトの曲がりによって作られ, 渦の 強さは曲がりの角度と曲率半径で 変化すると著者らは考 えている. この現象を明ら かにするために, 三孔管を用いて局所速度 と静圧分布を測定した. その結果, 入口
4
領域の舌部の角度は23度が適当で, その角度以下では自由渦流れ場が形成さ れず,
それ以上では一旦確立した 自由渦流れ場が損なわれて行くとしている.
渦巻ケーシン グ試験装置 は, 通常広く用いられる下記の仮定によって設計, 製作 し試験した.
1 )周方向速度は自由渦の関係で定まる.
2 )ノズルの半径方向質量流量を周方向に一定にする.
3 )渦室の面積は流れを一次元と考えて定める.
この試験装置で ケーシングの図心に沿って流れ角を測定して, 周方向 に非一様に分 布し, かつ, 彼らの弁を借りれば “信じ難いことに" スクロールの巻角とはなはだ しく異なる流れ角を得ている. またノズルの流出角は周方向に10度から19度まで分 布しておりスクロールの巻終わり付近に大きな流れ角の不均ーがあることを見いだ したが, これらの原因については言及していない.
Fengら [19851は矩形断 面の平行側壁 スクロールの流れ場を五孔管で測定した . 彼 らは後壁を軸方向に移動させて平均流出角を制御している. 平均流出角を測定し一 次元理論で予想した値と比較しているが, ノズル部が解放大気に隣接しており外気 が混合するため か 両者に大きな食い違いが見られる. またノズル部 において周方 向に平均した流 出角の軸方向 分布を示して二次流れの影響を議論して いる. 全圧損 失の周方向分布 は入口部の直後に極大値を持つがこれは流出角制御により小さな流 出角においてはその流路長が増すためであると述べている. スクロール流路の二次 速度ベクトルには二次流れに特徴的な速度分布も見える.
Tabakoffら[19801は円形断面のスクロ}ルノズルの流れ場をホットフィルムを用 いて測定し, 速度の絶対値の等高線を二三の断面で与えている. それによると主流 で絶対速度は自 由渦的な分布 を持ち, 壁面近傍で絶対速度が低い, 境界層の存在を 示す速度分布が得られ, 断面内に二次流れが発生することを示唆している.
Tabakoffら[19841は円形断面のスクロールの三次元流れ場を熱線流速計を用いて 測定した. そしてスクロールのいくつかの断面で二つの反対に回転す る渦の存在を 示した. しかしながらその二次流れベクトルは傾斜熱線の測定ミスではないかと思 われる特有の統一的傾向のある誤差を含んでおり理解しがた い部分もある.
Ma1akとT abakoffら11987]はレ}ザ、流速計を用いて矩形断面の羽根な しスクロール 5
ノズ、ルの三次元 速度ベクトル を測定した. 最も二次流れの影響が現れる前後側壁近 傍の測定が光線の反射の関係で行われていないが, 円筒形の内壁上で出口へ向かう 速度ベクトルが卓越するのが観察され, こ れが二次流れの特徴を表している. ノズ ル流れ場の周方向分布が示されていないのが残念である.
Mill erら [198 8]は実用のターピンスクロールに追加工を施し, ノズル入口部の円筒 面の三次元速度 場を五孔ピトー管で測定した. 用いたピトー管の先端長さが長くピ トー管の首を振ると測定半径 が変わってしまうためか, 壁からかなり離れた(ノズ ル部の軸方向の無次元座標値で0.2ないし0.8)二次流れの影響の小さな流 れ場の測 定にとどまっている. 舌部端から周方向に約20度の測定点で主流部においても急峻 な全圧損失の極大値がみられ, この著者は言及していないが流入境界層内の低エネ ルギ流体の局所的集中流出を暗示している.
ここでベーン 付きスクロ} ルノズルのいくつかの実験についてふれる. ベ}ンの 入口流れ場にスクロール流れ場の特徴が伺われるからである. Hashemiら [1984]はベー ン付き半径流タ ーピンノズルの限界流線の可視化実験を行った. ベーン部の上流で どのように流体 を供給したかが明らかにされていないが , ベーンの流入流れはある 特定の部分で強く半径方向を向き, 本論文で後に述べる流入境界層内の流体の半径 方向の輸送を物語っている. 軸流ターピン 翼列で周知の , 馬蹄形渦から出発する三 次元剥離線と流入境界層の相互干渉が油膜法で可視化されている. この論文にはし かし, 限界流線の方向を主流の流れ方向と取り違えるという基本的な誤解が含まれ ているようである. KhalilとTabakoff[1976]はベーン付きスクロールノズルの下流に おいて三次元速度場を測定し ている. Erogluと Tabak off[1 991]はレーザ流速計を 用 いて翼問の三次 元流れ場を測定した. このとき彼らは流入流れ場に 特別の異常のな い翼列を選定し ており, ベー ン付きスクロールノズルにおいても流入境界層の挙動 が流れ場に影響していることを示唆してい る. 著者らは 翼列の入口の流れ角が壁面 側で大きく, こ れはスクロー ル流路の二次流れの影響を受けた結果であることを指 摘している.
Whitfield[ 199 4A]らは圧縮性を考慮したベーンレススクロ}ル の基本設計法を提 案し, それに基づいて設計したスクロールを用いて流れ場を調査した. 設計にあた っ
6
て, 彼らはスクロール流路を一次元的に考え, スクロールの断面流量が方位角方向 に線形に減少す る条件を課した. 渦室断面の図心に沿って角運動量が摩擦によって 失われる効果を角運動量保存係数Sで表わした. 流出角と断 面流量はAIR(Aはス クロール断面積, Rは断面の平均半径)とSによって定まるためにその評価は重要 である. 周方向速度の断面内の分布は, 自由渦流れを修正したCJ?ffi=COflstで近似し 角運動量指数mの方位角方向(流れ方向)分布を仮定することによって定めた. そ の分布は断面流量を介して渦室の面積分布に影響を与え るのであるが, スクロール の入口部のm=l (自由 渦流れ)から, 巻終りの m=O(周方向速度一定) まで変化す るある関数関係を仮定し, 最終的にはこの分布を経験的に修正する必要があるとし ている. 設計に当たっては, まずノズル出口の角運動量保存係数 Sとmから渦室の 全体形状を定める. 渦室の効率および壁面摩擦係数を仮定し, 5とmから定まる局 所的速度分布か ら求まる全体の圧力損失が, 初めに仮定した効率に一致するまで壁 面摩擦係数を修正し再計算を行う. 類似の方法にOwarish[1991Jらの一次元計算法が あり, 何れもスクロールの一次元的基本設計に際して壁面における損失を考慮しよ うとするものである. この考え方は損失を流路全体に割り振るのであるが, 現実の 流路の損失の発生は壁面近傍に限定され, 生じた低エネルギ流体は順次ノズルへ排
除されるため, 適当でないことを本論文で述べる.
Whitfield[1994B]らは続報で舌部角度23度(この角度は前述のHussain[1984]らの 研究で最適値であるとされた. ) , 断面の基本形状が台形, 再循環流量が5%の実用 スクロールノズルについて実験的研究を行 い, 上述の設計法の検証を行っている.
渦室の図心とノズル出口の軸方向中央位置 において, 5孔ピトー管を用いて速度ベ クトルと静圧の周方向分布を測定した. ノズル部の周方向から測った流出角は舌部 端からの方位角30度の位置で最大(約18度)となり240度付近で最小(約12度)と なり, 周方向に かなり非一様な流れ場が得られている. (設計平均流 出角が記述さ れていないために, 記載された幾何学デ}タを用いて5=1としてtan α=(A/ A2)1 (R/ R2)=0.38/1.6 6から平均流出角を類推すれば12.8度とな る. )測定した流出角の 周方向平均値を用いて角運動量保存係数の 校正を行っているのであるが, 多くの研 究で明らかなよ うに, 流出角 は流路の二次流れの影響を受けて軸方向に変化するた め, このような校正に用いるのは適当でないと考えられる.
2. 1. 2
スクロール流れ場の計算法
スクロールの一次元的解法は例えば前節に述べたHussainとBhinder l1984]の角運 動量と質量の保存に基づき周方向にスクロ ールの面積を配置する方法が一般的であ る. そしてこれ に圧縮性の影響を加味することが考えられた. スクロールの形状の 三次元性を考 慮 する流 れ 場の 非粘性解 法にはH amedら1 1980] の 有 限 要素法,
Bask ha ronel19 84]の有限要素法を用いたスクロ ールとベー ンの流路の最適化,
L ym be ropou losl19 881のスクロールの軸方向厚さを重みとして二次元オイラー方程式 に組み込んで解く方法, などの例がある. しかしながら, 後で詳しく述べるように スクロールの流れ場は粘性作用が顕著である. 非粘性の方法はスクロールの基本設 計に用いられる.
非粘性計算の例とし てHamedら11980]の計算例に触れる. こ の解析は半径内向き ターピンのスクロール流路とベーンレスノズル部における三次元の圧 縮性非粘性流 れを有限要素法を用いて解いたものである . スクロール形状は一次元的設計で定め た. 断面形状が ノズルに対して対称と, 非対称なスクロール流れ場を計算し, 形 状が出口流れにおよぽす影響を調べた. 流入と流出境界で一様流速を仮定している.
領域の多重連結の処理は分岐境界においてポテンシヤル関数にジャンプを与えてい る. 得られたスクロール部の流れは本研究で行った局所軸対称の計算(後述)と大 差はないようで ある. 流路の三次元性のために周方向に流出角が小さくなるが, 巻 終わりに近づくとスクロール 入口部の流出角との連続性を保つために流出角が急増 する結果を得た. スクロール は, 巻き終わりで面積がOになるように定められてお り, わずかな面積変化が流出角分布に大きく影響するのかもしれない.
粘性力を考慮したスクロール流れ場の計算例としてN.S.方程式を用いたKhalilら 11984]の例がある. こ れは部分放物形計算法でPratapとSpalding[1976]の計算手法を 改良したもので ある. その主 な点は 境界適合座標系を用いて任意形状の曲がり流 路をモデル化し たこと, 小さ な逆流領域が存在しでも計算の前進走査を可能にした こと, 流線の曲率の影響を評価するために修正二方程式乱流モデルを用いたことで ある. 流出境界 には物理量の線形外挿の条件を用いている. 曲がりダクトに流入す る発達した層流境界 層に対する数値計算で は主流方向速度分布が よく予想されてい る. 曲がりダク トの乱流の実験との比較において, 主流方向速度の分布は予測が良
8
いが, 二次速度成分は二次 流れの性質を表しきれていないよう である. スクロール の流れ場の計算では出口 の周方向平均静圧分布を示しているだけで, 発表されたデー タが少なく計算法の妥当性 を評価することは でき ない.
VuとShyy[19901は水力タービンの各種要素の三次元粘性解析 を 行った. そこ では レイノルズ平均N.S.方程式とkーε二方程式乱流モデルを用いている. 数値的には,
線形化した保存型の有限体積法を, 一般曲線座標系で計 算している. 国体壁 の全て の節点で滑りなしの条件を用 い, 固体壁に隣接する節点 では, いわゆる壁関数の取 り扱いを行った. 入口境界で速度プロフィルを指定し, 出口境界では 流線に沿って 全て の従属変数の一次微係数がOである条件を適用した. さ らに出口境界で静圧を 指定している. ケーシングの中央に比べて, 壁面近くは速度ベクトルが より半径内 向き であって , 著者はこれを “半径内向きに加速している" と表現している.
次にSh yyとV叫19931 の水力ターピンスクロールの 流れ場の計算例を見てみる. 彼 らはスクロール 流れ場を “大き な曲率と幾何学的変化 の多い壁面 で固まれた三次元 内部流れ" と表現している. スクロールの中心側に, 分配器と呼ばれる可変翼列が 並んでお り, この多重連結領域ま で含め ると, 計算がめんどうに な るため, スクロー ル流れ場の計算においては, この領域は多孔質物体と して取り扱い 翼列領域はス クロール計算の解を境界条件として,
別に計算した. 計算 法は前述のVu ら の ものと同ーである. 図2. 1 の二次速 度ベクトル図には壁面境界層の影響が 伺える. 著者は指摘していないが, こ れらは静圧勾配による壁面境界層の出 口への輸送を , ある程度表していると 思われる. しかし, 壁面 の限界流線は
表現されていない
|C…託ω訓tiω1
この二つの粘性計算 の論文では, 図 図2. 1 NS解析に よる子午面流れ場 2ム. 1の速度べクトル図から わ かるよ の 例 (ωSh匂yyら[19931))
うに, 壁面近傍に計算格子を多く配置せず, 速度 分布を壁関数で近似している. 対 数別に基づいた乱流境界層の経験式を用いていると思わ れるが 本論文で明ら かに されるように, スクロールの境界層は極めて薄く かっ 非常にねじれていること
9
が特徴であるので, 一般的な乱流境界層の経験式を用いたのでは, 十分な精度で流 れ場を予測するのは困難で、あると思われる.
2. 2 横流方向圧力勾配の大きい流れ場の境界層
に関するこれまでの知見
ターピンスクロールの入口ダクトにおいても境界層の発達は避けられない. それ はエンジンの排気孔から鋳鉄製の粗い表面の集合管や, 可携管や, あるいは生産性 の観点から接続が滑ら かでない異形の継ぎ手を経由して, ターボチャージャに至り,
さらに, スクロール入口にはバイパス弁も設置される からである. スクロール入口 での流れの加速によって 速度分布は多少改善されると思われるが, 流体力学的に 理想的とは言えない状況下で作動することに変わりはな い. 流れがスクロールに流 入すると, 境界 層は半径方向の圧力勾配の影響でねじれて, 複雑な流動を引き起こ す. このような 状況からスクロールの流れ場の理解において, ねじれ境界層の知見 は不可欠で、あり, この節ではこれまでのねじれ境界層の研究についてふれる.
主流方向に発達してきた境界層は 一般にせん断応力と圧力の, 二つの異なる応 力によってねじ れ始めて, 主流に直角方向の速度成分(以下では横流成分と呼ぶ) を持つようになる. 前者によるものはせん断駆動型の境界層と呼ばれ , 後者は圧力 駆動型の境界層と呼ばれる. また両者の混合した流れ場もある. せん 断駆動型の境 界層の例は, 回転機械の静止部分に発達した境界層が 回転部分に流 入した場合に 現れ, 横流方向のせん断力の作用が 壁から順次主流に向かつて及ぶ.
圧力駆動型の ねじれ境界層の例は 低気圧の流れ場で 地表付近の流れは圧力勾 配と境界層の相互干渉で, ねじれ境界層を構成しており, 境界層の主流成分と横流 成分は中心に向かつて同時に発達し, 気象学ではエックマン境界層と呼ばれ, その 厚さは1km程である. このねじれ境界層は, 熱帯低気圧の流れ場では, 海面の水蒸 気に富んだ大気を, 優先的に低気圧の中心部に集める(解説例. 木村[19881) .
圧力駆動型の他の例は, 上流で発達した境界層が, 主流に直角方向の圧力勾配の 作用の下でねじ れるもので, 多くの二次流れはこの作 用で生ずる. 例えば, 曲がり ダクトの流れ, コンブレッサやターピン翼列の流れ, 羽根なしデイフユーザの境界
10
層, 航空機の胴体の上の境界層と翼との干渉, 後退翼の 上の境界層, 蛇行する川底 の流れなどである. これらの流れ場では, 境界層内の流体が, 主流の圧力場に対応 して横方向に押し流され, それを補完するために主流に二次流れを引 き起こす. こ れは古典的渦理論では, 境界層の渦糸が流れ方向の速度差によって, 主流方向成分 を持ち, 渦からの誘起速度として説明される.
この流れ場では, 境界層厚さと圧力勾配の組み合わせによっては, 流れ場に縦渦
が発生し, 境界層の三次元剥離を伴うことがある. これは特に境界層の中の鈍頭物 体の前面から発達することが多く, 馬蹄形渦, 分岐渦, または首飾り渦, などと呼 ばれ, 潜水艦の指令塔, 建造物まわりの地表の流れ, 樹木や杭の根元 , 橋脚と川底 の流れの干渉, などがあり, 工学から自然現象まで枚挙にいとまがな い. ターピン 翼列においては , 馬蹄形渦の背後に主流を引き込み, 境界層が薄くなって壁面摩擦 と熱伝達を促進する.
ここでいくつか の境界層に関連した流れ場の例を見てみる. Olcmenら[19921は , 自分自身も含む9編の論文から, 三次元乱流境界層の速度分布の測定結果を参照し,
1 1人の著者によって提案された境界層速度分布の経験式に当てはめて, その適用 可能性を評価した. その目的は もしも三次元境界層に相似な速度プロフィルが存 在すれば, 数値計算において壁面付近の分点の数を増すことなく精度を上げること ができるからで ある. そのうち6編の実験は, 圧力駆動形境界層であって, これら は, 平板の上の一様な主流の流れ場に発達 した境界層が, 鈍頭物体近傍, もしくは 曲がり流路に流入し, 主流が曲げられるときに生ずる三次元ねじれ境界層に関する 実験である. 速度成分を, 局所的流線座標系において, 主流方向と横流方向に分け るとき, 主流方 向成分は, 内層において壁法則に比較的よく従うが, 外層において は, 圧力勾配に依存した関係が得られてい る. どの提案式も, 全ての流れ場に合致 するものではなかったが, この著者は, 主流方向速度分布に関し てはJhonstonの提 案式を, 横流方向速度分布に関してはMagerの速度分布を推奨している.
Venkateswaranl1991]は, 多段軸流圧縮機のケーシングに発達 する境界層を実験 的に調べた. これは極めて複雑な境界層の一つである. すなわち, 動翼のケーシン グ端壁の境界層 は, 動翼によって掻き取られ, その度に再生するにもかかわらず,
時間平均の流れは, 平板上の境界層に類似し 主流方向速度成分は内層領域で対数
速度プロフィルを示していた. 著者は, 摩擦係数をClauserプロット, もし くは Lud wieg- Tillmannの式により定めて, 普遍速度と普遍距離の座標にプロットして,
壁法則が, この ような複雑な 流れ場に適用可能であるか どうかを明らかにしようと した. ケーシングの境界層速度分布を片対数プロットしてみると, 特にロータ後流 で壁法則の普遍定数AとBは標準的な値からかけ離れていた. しかし, ステータ後 方の流れでは, 速度分布は標準的な二次元境界層の速度分布に類似していた.
最も広く研究されているのは,
実用上重要な, タービン翼列の端 壁(end wall)領域の流れの構造 である. この流れ場は, 加速流れ 場である こと, 流入境界層を伴う 主流が転向することなど, スクロー ル流れ場との類似性が大きく, 流 入境界層が圧力勾配によって横流 方向に輸送されることに特徴があ る. Si everdingl19 851は, ターピ ンの流れ場に関するレビューを行 い, その なかでターピン翼列と端 壁の流れ場の詳細な三次元渦構造 と, 三次元剥離線について解説し ている(図2. 2を参照). 端壁
凶{出ω2643
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図2. 2 ターピンノズルの端壁境界層 の解説(Sieverdingf19851) 境界層は, 翼列前方の壁面で三次
元言明j離を起こし , 馬蹄形渦を形作る. 馬蹄形渦の片方は正圧面の足, 他方は負圧面 の足と呼ばれ る. 馬蹄形渦の後方では境界層が薄くなり, 熱伝達が増加し, ノズル 翼列損傷の原因となる. この現象が, 1970年代に端壁領域の流れ場が興味をもたれ るきっかけとな った. 馬蹄形渦の正圧面の足は, 正圧面から負圧面へ向かう圧力勾 配によって, 隣接翼の負圧面 に向かつて流され, 流路を完全に横切ってしまう. 流 入境界層は, 横流方向圧力勾配と, 馬蹄形渦との干渉のために流路渦となり, 主流 の中に巻き上げられて損失の核を形成する. 正圧面の足の下流には 新たに非常に 薄い境界層が発達する. この領域の限界流線は, 完全に隣接翼の方向に向きを変え
非常にねじれた境界層が形成されているこ とがわかる.
Sharmaら119871は, 正圧面の足と負圧面 の足が相互干渉する流れ場の, 渦構造の概 念図を与えて, 端壁損失と馬蹄形渦の関連 について述べている(図2. 3) . この図
にみられるように, 翼列に流入する境界層 図2. 3 馬蹄形渦の挙動 は前縁部で馬蹄形渦を発生させる. このう (Sharmaら119871) ち圧力面側の足 は流路を横切るにつれて, 新しく作られる端壁の境界層から運動量 の小さな流体粒子を随伴し, この現象が流路渦の発達と, 二次流れの生成および端 壁損失を支配する. このメカニズムは粘性によって支配 されているために, 古典的 な非粘性の二次流れ理論を用いて, 翼列における二次渦度または端壁損失を見積も ることはできない. 負圧面側 の足は端壁から離れて流路渦と干渉する. 流れが下流 に進むにつれて , 渦の負庄面側の足は, 流路渦の周囲に軌道を描くが, 流路渦と混 合してしまうことはない.
ところで, 馬蹄形渦の存在が流れ場に本質的な影響を持っかどうかは, 疑問のあ るところである. Boyleら119891は, 翼列前縁の馬蹄形渦の存在が翼列の二次流れの 大きさに影響を与えるかどうかについて, 比較実験を行った. 彼らは , 通常の翼列 試験装置と, この試験装置の翼列入口前方に仕切板を伸長し, 全体的には曲がりダ クトの流路を構成した試験装置を用いて, ピトートラパースと油膜法で流路の二次 流れを調べ, 両者を比較した. 曲がりダクトの流れ場に は馬蹄形渦が存在しない事
と, 翼の負圧面 と正圧面上に仕切板の上で 発達した境界層が存在していることが,
翼列試験装置との相違点であ る. ダクト流れにおいては, ダクトの曲がりの影響が 翼列よりも上流までおよび, 二次流れが早くから発達する. しかし翼列出口におい ては, 両者の流 れ場に大きな相違点はなかった. どちらも端壁境界層は, 横流方向 圧力勾配によっ て端壁を横切って, 最終的には隣接翼の負圧面上に運ばれ, 流路渦 を形成した. そして, 端壁の 境界層はどち らも薄くなった. このことから馬蹄形渦 の存在は “翼列 入口部の流れ場" には影響を及ぼすが, 全体的流れ場には影響しな いと結論づけている. このこ とから, ターピン翼列で得られた多くの知見は, スク
ロール流れの理解を助けると思われる.
2. 3 三次元境界層計算の例
三次元物体表面に発達する三次元境界層に関する計算法は, いくつ か提案されて いる. ここではその代表的なものを述べる.
Karimipanahら[19931は, 回転翼面上に発達する三次元乱流境界層の計算法を提案 している. 非粘性流れの主流の計算結果から得られる表面流線に沿ってX座標を定 め, それに “ほぽ直角" の等ポテンシャル 線をz座標とし, 両者に直角で流れ場に 向かつてy座標を定義した. これは, 翼表面に張り付いた直交曲線座標系を構成す ることになり, 非直交座標系を用いるのに比べて, 基礎 方程式が簡略化される利点 がある. この座標系に おける運動方程式と連続の式に境界層近似を適用してy方向 に積分し, 境界層積分方程式を得ている. その内の二つは, 主流方向運動量厚さと 横流方向運動量厚さの流線方向への変化を表わす式で, 他は, 主流の流線に沿った エントレインメントの経験式である. 他に摩擦係数の経験式も使われる. 数値的解 法は, それぞれの流線に沿って, 基礎方程式を個別に, ルンゲ-クッタ法を用いて 積分することにより行う. 流線に直角方向への微係数が必要な場合は, 前回の流線 に沿った積分結果を用いて評価し, 繰り返し計算によって収束させることになると 思われる. この方法は, 計算条件が変化した時など物体表面を “適切に" 主流流線 で覆い直す必要があり, その都度流線の出発位置に関して試行を要し, 複雑な三次
元形状への適用は, 労力を要すると思われる.
Anderson[19871は, 直交曲線座標系で翼の表面をおおうのは , ねじれたタービン 翼列では困難で ある, として, 回転翼表面に非直交曲線座標系を配置し, それぞれ の座標軸に垂直な第三軸を持つ曲線座標系を定義した. 回転する一般曲線座標系に おける定常の運動方程式を基礎式として, 微分法を用いて境界層計算を行った. 乱 流モデルは, 二次元境界層計算で使われた モデルを改良して用いている. 境界層方 程式を解くには , 主流を与える必要がある. この論文では, 物体表面において評価 したオイラー方程式を, 既知の圧力分布のもとで解いて主流を得ている. タービン
14
翼列の端壁境界層においては, 翼列の前方で三次元剥離にともなう馬蹄形渦が発生 する. このため翼列流路の前半では, 限界流線に流れ場の特徴が表現されていない が流路の後半部では, 限界流線の実験結果とよい一致を得ている. 翼 の負圧面の計 算例では, 端壁 の計算例よりも限界流線が現実に近い. ターピン翼列の境界層は,
端壁の境界層が翼の負圧面 上に移動するなど計算領域聞の相互干渉があり, こ れら を考慮するためには 計算の複雑さが増す.
Swafford ら[19851は, 遷音速航空機翼の境界層計算を 行うために, 三次元 境界層 積分方程式を提案した. 基礎方程式は先の二つと異なり, 時間依存項を有した, 三 次元, 圧縮性の, 運動量と 運動エネルギの積分方程式である. 物体表面の表現性に 優れ, 非粘性 計算と格子を共有するために, 非直交曲線 座標系を用いている. この ために境界層方 程式は, 非常に複雑なものになる. 境界層の経験則は, 直交流線座 標系において蓄えられているために, お互いの座標系の問で, 積分パラメー タの相 互変換が行われる. 数値的解法は, 陽的時間進行法を用い, 初期値から出発して時 間ステップ毎にルンゲ・ クッ タ法, もしく は, オイラ}時間進行法を用いて, 解を 修正した. 主流方向速度プロフ ィルにはWhitefield のものを, 横流 方向の速度ブロ
フィルにはJhonstonの三角分布を用いた.
豊倉ら[19811は, 軸流ターボ機械の動翼に発達する 境界層の計算法を提案し てい る. 翼表面にらせん座標系を定義し, その上で 境界層の運動量積分方程式を導いた.
座標系に自由度が少ないため に 反りと厚みが共に小さな翼の解析しか行えない.
乱流境界層の計算では, 境界層の連続の式に対してHeadのエントレインメントの経 験式を用いた. 主流方向 の摩擦係数には, Lud wieg- Tillmannの 式を用い ている . 横流方向への解の変化が小さいという計算 結果を用いて, ほぽ主流方向の座標線に 沿って, 一次元的に数値 積分することで 解を求めており, 繰り返し 計算によって横 流方向の解の変化を考慮することは 行っていない. したがってスクロールの流れ場 のごとく, 横流方向への解の変化が激しい 場合には, この方法は適用困難であるよ うに思える.
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第3章 スクロール主流の流れ場の測定とその特徴
スクロールノズルは, 古くから半径内向きターピンに使用されてい る. その内部 流動は粘性の影 響 を強く受け, スクロール流路とノズルの流れ場は, 複雑な三次元 性を呈している. スクロールは複雑な三次 元的形状で, 形状パラメー タを系統的に 変化させて製作することは難しい. したがって2章でも 述べたように, これまでの 内部流動の研究は, 特定の形状のものに限定され, 形状パラメータが 内部流動に及 ぼす影響について系統的に調べた 研究は, 皆無であると言ってよい. また形状の複 雑性から内部流動の測定箇所が限られるた め, ノズルに おける流れの非一様性が生 成されるメカニズムも明らかにされていない.
スクロール入口のスロート面積とノズル 出口面積の比を定めれば, ノズルの平均 流出角が特定される. また, 入口の曲がりダクト部にお いては, 直進流が渦流れに 変換される. そこで本研究においては, ノズルの形状パラメータの中で重要なスロー ト面積比, およびスクロール 入口の舌部角度が系統的に 変化でき, か つ, スクロー ルの内部流動の 本質を失わな い試験装置を 考案し, 実験を行った. すなわち, 測定 の便利さを考慮し 断面が矩形の平行側壁スクロールを採用して, 前後壁の境界層 の測定を可能に し 後部側壁を軸方向に移動させることにより, スロ ート面積比を 変え, 舌部 を可換として舌部角度を変化させた. 本章で は実験装置と測定方法の概 要を述べ, 得ら れた試験結果, すなわちスクロール形状が流体力学特性 および内部 流動に及ぼす影響 について述べる.
3. 1 実験装置と実験方法
実験装置 スクロール試験装置の全体図を図3. 1に示す. 本図には示していな いが, 7.5KWの周波数変換器と二極誘導電動機で駆動する定格流量60m3/min, 定格 圧力6860Paの遠心送風機と 除塵フィルターや流量測定ノズルを備えた風洞設備が これに接続され ており, スクロールに所要の空気を送り込む. スクロールの前部基 板は, 大円板(disc 1)と, それに組み込んだ小円板(disc 2)から なり, それぞ、れ
16
air inlet
di s c 1 s crollJ
t(front wall) motor 1
図3. 1 実験装置全体図
を, ステップ当たりに微小回転角の高トルクステッピングモータで駆動して, 小円 板に搭載したトラパース装置をスクロールの任意の測定点に位置づけることができ る. トラパース装置には さらに二台の小型ステッピングモータを設置し, ピトー 管を軸方向に送り, かつ, 軸の回りに回転 させ, スクロールの三次元流れ場を測定 することができる.
ピトー管の先端は, 長さ5mmの首部を有し, 流れ場でヨーバランスを取るために,
ピトー管の首を振れば, 測定位置が変化してしまう. このためヨーバランスを取る たびに, すべてのモータの回転角を, 余弦定理を用いて再計算し, 修正角度分だけ わずかに回転させて, 測定位置が変化しないようにした. (ロボット工学の用語を 用いれば本測定装置は, 三軸の極座標ロボットに相当し, 上記の操作は, 測定点の
“作業座標" からモ}ターの回転角である “関節座標" を求めることに当たる. ) 試験部は, 図3. 2に示すように 矩形流路を持った平行側壁型である. 後部側 壁は軸方向に移動可能で, スクロールの幅b sを変えることによって, スクロール 流路とノズルの面積比を変え , 流量と角運動量の保存則にしたがって, ノズル流出 角を変えることができ, 一台の装置で, 異なる流動条件の内部流動と境界層を測定 することが可能である. さらに, 内壁(ハプ)と舌部を交換すること によって, 幾 何形状が内部流動に与える影響を, より広範に調査することができる. 可動後壁と 内壁の問, およ び前部基盤と外壁の問の隙聞は 独立気泡性シリコンゴムスポンジ 紐を, 可動部に接着してシールし, 入口ダクトからスクロール流路への空気の漏れ 込みを防いだ、.
17
|__ bs
__1
1-- つ
α ==5- 1
図3.
2
供試スクロールの形状供試スクロールの一次元理論 本実験で用いた平行側壁スクロールに 関して一次 元理論を述べる . スクロールノズルの第一の目的は, 周方向に一様な 流出角と角運 動量の分布を有するノスル流れ場を提供することである. したがって, スクロール 流路の面積分布 は その断面流量が周方向 に線形に減少するように取られる. 周方 向速度成分が自由渦分布に従い その定数がKiであるとすると 半径rにおける 周方向速度はKi /rであるので, スクロールの断面流量は 次式で表せる.
Q=kddr
( 3.1)
ここにbは, スクロールの軸方向流路幅で, 一般に半径rの関数, また, r sは, ス クロールの外壁半径, r hは, 内壁の半径である. 供試平行側壁スクロールは, 対数
らせんで構成し, その巻角をαsとすれば, 外壁半径は, 次の式で、示される.
7:rc
ゃいxp{(τ- 8)tanαJ
( 3.2)
ここに0は, スクロールの方位角で, 原点は舌部端にとる(図3.
2参照)
. r bは対数らせんの巻始めの半径である. 断面の形状は矩形でその流路幅がb で一定で あるので, 方位角。における断面流量は, 次式で表わされることになる.
18
Q =Kibz l
十
ー7JrKjbs{(τ
-8)凶αz+lnF
( 3. 3)このとき一般のスクロールノズルの設計の場合と同様に, 断面流量は周方向に線形 に減少し? ノズル部の半径方向速度は, ノズルの全周にわたって一定となるはずで,
これが外壁形状に対数らせんを採用した理由である. なお, 式3. 3において0に 2πを代入した とき流量がOにならないことと, 図3. 2に示すスクロールの平面 形状から分かるように, 本スクロールは入り口ダクトからの流入流れと, 内壁を周 囲してきた流れが舌, 部端面において互いに合流する. この周囲流れを再循環流れ と呼び, 舌部角度が3 0度の場合, その流量割合は流入流れの35.8%である.
ノズルの平均流出角α は, スクロール内の流 線が周方向とαsの角度をなすと仮 定すれば, 角運動量と流量の保存則を用いて次式で示される.
tanα = ーC b� bニtanα,
_ .>
e
( 3. 4)
上式において, b s/b
p
f一般のノズルのスロート面積比に相当する. ノズ ル流出角 α は, スロート面積比およびスクロール巻角によって変化するが, スクロールをできるだけ小型にするため, 巻角αsの大きさは制限されるので, スロート面積比が αeを変えるパラメータになる. 本実験においては, 巻
角はαs=5o, 対数らせ んの巻初めの 半径はrb- 100mmである.
先験方法 本研究では 図3. 3に示すように4種 類のbslんに対して内部流動と境界層の測定を行った.
舌部角度は, 0度から90度まで30度おきに変えた. 内 壁の直径は180mmとした.
舌部 角度 が30度のと きの代表的測定断面は, [火 3. 4に記した, 1から1 7の断面である. それぞ、れ の断面において, 前後壁面から1mm, 内外壁から6mm までの三次元流れ場を五孔管(図3. 5)で測定し,
19
一心.F
小.F
∞.N
ト.mu@A\ωA
図3. 3 bs/be比と 断面形状
←J
+→令+・+-φー← +・+ー+ー+
+++ + + + + φ φ φ 令 φφ Lφφ + + + + φ φ φ + ++
fφφ + + + + φ + φ φ H 4トφ+ φ + + φ + +- φ φ φφ 4φ+ φ +- +- +- +- +- φ +- +-+-
図3. 4 測定断面配置
ヌ:..5 : 4 9 d e 9
刈3. 6 子午断面の測定点分布
」「)ω
70-m帥
�ICコ
204��
図3. 5 五孔ピトー管
ノズル性能と二次流れの発達を評価した. 図3. 6に, 例として断面5における測 定点の分布を示している. b sl b e =3. 8の場合, スクロール内の測定点の総数は 2885点である.
本研究で舌部角度が30度のときの代表的運転条件を表lに 示す. 自由渦係数Kl の算出には, 入口の面積平均流量と平均半径150.75mmを用いている. 表中のDsは 舌部端のスクロール流路の水力直径で, レイノルズ数は水力直径と断面平均の流入 速度から算出している. 曲がりダクトの流れ場の性格を代表わするためによく用い られるディーン数は, 本スクロールではレイノルズ数の0.8377倍(入口の流路高さ をa, 半径をRとすると.Ja/ R = .J78.31 / 111.59 )である.
20
表1
運転条件b s/ b e C i (m/s) Ki (m2/s) 1.5 28.4 4.47 1.9 26.9 4.25 2.8 24.3 3.83 3.8 21.9 3.45
α e(deg) Ds(mm) ReDsX 10-4 7.3 48.52 9.18 9.6 59.97 10.75 14.1 78.88 12.78 18.6 93.87 13.71
実験では 常温空気を用い, プレナム圧力は比例積分制御によ って一定(4 .9X 103Pa)に保った. ピトー管の 圧力は, スキャニパルプを経由して圧力変換器に伝
えA/D変換機で読みとる. そして移動平均処理によって測定圧力が定常になったこ とを判断し, その値を最終値としてコンピュータのメモリーに取り込んだ. ピトー 管による流れ方向測定は, ゼロ点法(null method)によって行い, ヨー偏角が0.02 度以下になるまでピトー管のヨ一角を修正した. 圧力測定値から検定曲線を用いて 速度ベクトルを求めるときには, 不釣り合いとして残ったヨー差圧を考慮した. ト ラパース装置の位置制御と, ピトー管の駆動に用いた合計四台のステッピングモー タは, コンピュータで制御した.
3. 2 スクロールの基本形状と全体性能の関係
本研究では, 先細ダクトから舌部上面の曲がりダクト を含んで舌部端までを “入 口ダクト'\舌部端の位置 を “スクロール入口" と呼び, この位置から方位角が 150度程度までを “スクロール入口領域" その下流を “スクロール下 流部" と呼
ぶことにする. また多くの図においてs=で記した数字は, 図3. 4のスクロールの 測定断面の番号に対応する.
3. 2. 1
スクロール流路における自由渦流れの形成
始めに, スクロール流路の基本的な流れ場について述べる. 図3. 7は, 流路高 さ比b/ be=3.8におけるスクロール流路の無次元角運動量係数Kの半径方向分布で
21
ある. 図3. 7に示すスクロール流路の軸方向中央部の三点の周方向速度成分を代 数平均してむとし, そ の半径rを乗じて角運動量を求めた. そしてスクロール入口 の平均半径r iと平均速度Ciより定めた入 口の自由渦系数Ki= r i C iによって無 次元化した.
rC凸
K = E 7
(3.5)
そして, 流れ方向への変化 がわかるように断面順に並べた. 本図の左部に記したパ ラメータは, 測定断面番号である.
先細ダクトの終端, 断面2において, 自由渦流れは確立しておらず, 全域で半径 に依存した自由渦定数 が得られている. 断面3においては, スクロ ール入口の内径 側でほぼ自由渦 流れである が, 自由渦定数は, 外壁に向かつて滅少している. 断面 5では, 舌部後流に起因した角運動量欠損に加えて, 断面3と同じく外壁に向かつて 自由渦係数が減 少している. この領域においては, 後に示すように全圧損失はそれ ほど大きくなく , かつ自由渦係数の滅少 が流路方向に少なくなることからして, 外 壁付近の自由渦係数の減少は, 流れ場の三次元性による, 非粘性的な現象のためで あると考えられる. つまり直進的なスクロール入口流れを渦流れに変換するために,
s =17 ; 3600 〆H s =16 ; 3300 s =15 ; 3000
-・・一‘・
菅島ーー... 、.
s=14;270。 げ+十、
s =13 ; 2400 時ι十4専管 s =12 ; 2100 �ι..._守4気
s =11 ; 1800 '-(4九ι~
s=10;1500 y九~ーγ s =9 ; 1200
s =8 ; 900 s =7 ; 600 s =6 ; 300 s =5 ; 1 70 s =3 ; 0。
s =2 ; -300
80
ゾf下ヘ~、
ノi〆�、4
半径(mm)
1.0
対日 0.9
図3. 7 自由渦系数の半径方向分布 22
L吋
令+令 ・・...ー←・+-+・φー+ーφ・
4φφ φ φ φ φ φ + φ φ φφ
い + + φ φ + φ + φ 村 t++ φ φ φ + + φ φ φ φ+
スクロール外壁が圧力面として作用し, 対応する半径位置の自由渦流れよりも実際 の静圧が大きくなって, 絶対速度が低下しその結果自由渦係数が小さくなったもの であろう. このことから舌部角度30度では, 自由渦流れへの変換が不十分であるこ とが分かる. しかしながら本研究の3. 2. 4節に “舌部角度の影響" の項で述べ るように, ノズ、ル出口で積分平均した全圧損失係数は, 舌部角度。tが30度より大き いときに増加することが分かったので, 大部分の実験はこの舌部角度で行った. 外 壁近傍の自由渦係数の減少は, 断面7以降徐々に小さくなるが完全にはなくならな
しミ
3. 2. 2 ノズル性能の評価
図3. 6のス クロールの子午面流れ場の 測定点の配置図において, 最も 半径のA さな, 半径74mmの測定データを用いてノズル性能を評価する. ノズルの流路幅は 約21mmで, ノズルの壁面 から前後それぞれlmmまでの, ノズル出口円筒面上にお ける三次元速度場の測定結果を用いて, 流体力学的諸量の全体平均と軸方向分布お よび周方向分布を求めた. ノズルの流れ場を平均するにあ たっては, 流量重み付き 平均を用い た. 平均化の定義を以下に示す . ここにqは, 平均化される物理量であ り, gは重みで, ここでは半径方向質量流束ρCrを用いた.
周方向分布(軸方向に平均処理)
7ι ,d oo e bfh山 7~ ,d QA oo e bpt山 一一 、、,j nり 〆't、 -04
( 3.6) 軸方向分布(周方向に平均処理)
奇(z)
= fogq d8
/fogd8
( 3. 7)全体平均 (軸方向と周方向に平均処理)
5=j:FElegqωolj:31Egω。
( 3. 8)23