九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
初代肝細胞の三次元培養法を利用した肝臓シュミ レータの開発
中澤, 浩二
九州大学工学化学工学
https://doi.org/10.11501/3122989
出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
初代肝細胞の三次元培養法を利用した 肝臓シミュレータの開発
平成9年1月
中津 浩二
目 次
第1章 序論
1.1 本研究の目的
1.2 動物実験の現状と動物実験代替法の必要性
1.3 肝臓シミュレータ
1.4 本研究の方針
1.5 モデル薬物の選択
1.6 本論文の構成
5 7 9 1 1 12
第2章 既往の研究
2.1 肝臓の構造と機能 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 2.1.1 肝臓の構造 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13
2.1.2 肝臓の機能
2.1.3 肝臓の薬物代謝機能
2.2 初代肝細胞の培養技術
2.3 薬物代謝研究のための肝臓シミュレータ開発の展開
2.3.1 肝薬物代謝研究の歴史
15 16 19 21 21 2.3.2 In vivoにおける研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2.3.3 In vitroにおける研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 2.4 動物実験代替法研究の進展と近年の動向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . • . 25
第3章 初代肝細胞の三次元培養法の確立
3.1 初代肝細胞培養法の課題
3.2 本章の目的
3.3 初代ラット ・ イヌ ・ プタ肝細胞の三次元培養
3.3.1 実験方法
3.3.2 実験結果
3.3.3 考察
〆hU 寸/
寸I 7' nxu cJ
「L 内,L 司L 勺L 丹、】
AU寸
3.4 木章のまとめ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47
第4章
静置培養を利用した肝臓シミュレータの開発 4.1 はじめに4.2 三次元培養肝細胞の薬物構造変換機能の評価 4.2.1 本節の目的
4.2.2 モデル薬物の選択
4.2.3 実験方法
4.2.4 実験結果
4.2.5 考察
48 49 49 50 51 57 72 4.2.6 本節のまとめ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 74 4.3 三次元培養肝細胞の薬物代謝酵素誘導機能の評価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 75
4.3.1 本節の目的 4.3.2 実験方法 4.3.3 実験結果 4.3.4 考察
4.3.5 本節のまとめ
75 76 78 84 86 4.4 本章のまとめ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 87
第5章
濯流培養を利用した肝臓シミュレータの開発 5.1 i甚流培養を利用した肝臓シミュレータ構築の意義 5.2 本章の目的5.3 i甚流培養を利用した肝臓シミュレータの開発と性能評価 5.3.1 実験方法
5.3.2 実験結果 5.3.3 考察
88 89 91 91 97 101 5.4 本章のまとめ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 02
第6章 結論
6.1 本論文のまとめ
6.2 動物実験代替の可能性について 6.3 今後の展望
103 105 106
参考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 108
謝辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 113
第1章 序論
1 .1
本研究の目的
近年, 医薬品開発プロセスにおける新規医薬品の安全性・有効性試験として動物実験の占める割合 は 大きい。 これ は, 臨床試験の危険回避を目的に, 前臨床試験として動物実験による予備的研究が義務づ けられているためである。 しかしながら, 欧米を中心とした動物愛護精神の定着化や経費削減の観点,
動物実験では結果のばらつきが大きいことや臓器 あるい は細胞レベルの薬理効果までは 評価できないな どの問題から, 動物実験の 代替法の開発が望まれている。
この代替法として, 少数の実験動物の利用と制御された環境下で再現性ある結果を定量的に評価でき るという理由から 臓器由来の初代培養細胞の利用が最も良い代替法とな ると考えられている。 しかし
ながら, Fig.トト1で示すように生体内に吸収された薬物は, 生体全体に分布し, 肝臓によって代謝され,
腎臓などの排池器官から排池されることや各薬物に よって作用する臓器や細胞が異なることから, 培養 細胞を代替法として利用する場合,
(1) どのような細胞を使用するのか。
(2)その細胞を使用して, どのような項目を評価するのか(具体的な項目はTable 1-2-1に 示す)。
以上, 二つのことが明確にされなければならない。
代謝-
- --)1---薬物構造変換反応Fig. 1-トl 薬物の生体内動態
「肝臓」は生休における最大の臓探であり, 生体外から取り込まれた薬物を代謝する中心臓器として 知られる。 薬物代謝とは, 薬物の生体内での情造変換反応を意味するが, この反応は薬物の薬理効果の 維持や毒性発現と大きな関連をもっO このため, r培養肝細胞を使用して, 薬物の代謝を許制するJこ とは, 薬物の代謝研究の動物実験代替法として重要であり, その開発が期待されている。
一方, 近年生体を構成する臓器機能の解明と初代培養細胞の単離 ・培養技術の発展に伴って, 培養細 胞から出発して生体外で組織体を再術築する研究1)や人工的な臓器を構築する研究2)が盛んに行われてい る。 このような生休外で臓器由来の機能を発現できる培養技術あるいは培養装置は臓器モデルであり,
肝臓においても培養肝細胞を利用した肝臓モデルの開発が盛んに行われ, 特に臨床応用を目的とした肝 臓モデルであるハイ ブリッド型人工肝臓(以下単に人 工肝臓と略す)の研究は国内外で盛んに行われてい る3).4)。 人工肝臓は主に臨床応用を目的に開発が進められる肝臓モデルであるが, 言い換えれば , 生体 外で肝機能を再現できる肝臓モデルであり, 様々な肝機能を少量の細胞を用いて評価できるモデル実験 系であるともいえる。 そこで本研究では, このモデル実験系を肝臓シミュレータと名付けたO また, 人 工肝臓の場合, 患者の救命に必要な肝機能を代替することが求められるが, 肝臓シミュレータは特定の 肝機能を対象とし, 臨床応用とは異なった利用を目的とするものである(Fig.l-ト2)。 例えば, 本 シミュ レータによって肝臓のタンパク質代謝機能を研究することで, ヒト血紫タンパク質の大量生産といった 方面に利用することが期待できる。 問機に, 肝臓の一機能である薬物代謝機能に注目することで, この 肝臓シミュレータは薬物代謝研究の動物実験代替法 として利用することが期待される。 このように様々 な利用法が期待される肝臓シミュレータであるが, 本研究では薬物代謝の動物実験代替法を目指した肝 臓シミュレータの開発を試みた。
動物細胞培養技術
〈
肝臓モデル〉 127jzfitr 〆/
一�込
一一一一目見 一タ一し第 一たえ、
一レ一、正レ 一ユ一昨利
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シ一
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一臓一例附一則一定リ一
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ハイブリツド型人工肝臓〉
患者の救命に必要な肝機能 を発現させ, 最終的に臨床 応用を目指す
タンハ.ク代謝 :肝臓における病理: 薬物代謝 機能の研究 :メカニスムの解析: 機能の研究
, : , : ,
ヒトI侃妓7ンハ・7 : 肝不全などの
その応用分野
l
:動物実験代替法質の大量生産 : 病理モデル 肝臓の機能
Fig.ト1-2 肝臓シミュレータとハイブリッド型人工肝臓との違い
2
ここで, 医薬品開発プロセス側から薬物代謝研究に必要な項目を以下に列記した。
1 .薬物の構造変換過程とその結果生成される構造変換産物の評価
肝臓によって併造変換された薬物の代謝産物は, 肝臓を含めた多くの臓器にとっ て, 必 ずしも無害とは限らず, より薬理効果を高めたり, 副作用を誘導するような有害物質に変 換され る場合がある。 特に, 副作用を誘導す る有害物質は医薬品として利用するこ とがで きない。 これま での多くの研究から, 変換さ れた代謝産物の構造によってこれらの効果を ある程度判断で、きること から, 新規医薬品として可能性をもっ化合物のスクリーニングが 行われる。
2.薬物による薬物代謝酵素活性変化の評価
ある種の化合物は肝臓 内の薬物代謝酵素活 性を誘導したり阻害すること があり, これが 薬物の薬剤Jを減少させたり増加させ たりする原因となる。 このため, 研究対象となる化合 物の薬物代謝酵素活性変化への影響が評価される。
3.薬物の消失速度の評価
肝臓による薬物の消失速度は, 薬効の維持期間を支配する。 このため, 薬物の消失速度 が評価される。
以上のような評価は, 生体内薬物の毒性発現や薬効維持期間と大いに関連があり 実験動物によって これらの評価が行われる。
そこで, 肝臓シミュレータを動物実験代替法として利用するには以下の機能が必要である。
(1 )肝臓内の薬物構造変換過程を再現できる。
(2)肝臓内の薬物による酵素活性の変化 を再現できる。
(3)肝臓内の薬物消失速度 を再現できる。
肝臓シミュレータによって, すべての機能を評価できることが望ましいが, これらの機能をそれぞれ 独立した形で評価できるものであっても, 肝薬物代謝研究における動物実験の代替法として利用するこ
とができる。
薬物代謝に関するこれまでの多くの研究から, 肝臓の薬物代謝機能は動物種によって異なることが知 られている。 したがって, 肝臓シミュレータを開発するには様々な動物種あるいはヒトの肝細胞の利用 が必要である。 また, これまで動物実験代替を目的とした肝臓シミュレータとして, 主に肝来111胞を府養 担体表面で一層状に培養する単層培養法が用いられてきた。 しかしながら, 単層培養法で、は2----3日間し か機能維持ができず, 一度の主III!J包調製で長期にわた って薬物代謝の研究に利用できない, あるいは大型 動物やヒトなどの肝細胞のように手軽に入手することが困難な細胞を有効利用できないことが問題とさ れてきた。 さらに, これまでの研究では静置培養法 が用いられ, 薬物の構造変換過程のような定性的評 価には利用できるものの消失速度のような定量的な評価においては培養肝細胞の薬物代謝機能が生体レ ベルを反映することができないことが問題とされてきた。
以上の理由から, 肝臓シミュレータの実現には以下の条件を満たすことが必要で、ある。
(A) 様々な動物種の肝細胞の利用
(B) 肝細胞の薬物代謝機能を維持できる培養技術の確立 (C) 肝細胞の薬物代謝機能を引き出せる培養環境の確立
本論文は, 生物学および生化学的手法から, 肝細 胞の機能維持が困難な二次元状の単層培養法に置き 変わる培 養技術として, アルブミン合成能等の肝特異的機能が 培養後約2週間以上維持で、きる三次元府 養法を利用することとし, 動物実験に利用されるラット ・ イヌ ・ ブタの初代肝細胞の三次元培養法の時 立を行うとともに, その細胞がもっ薬物代謝機能の評価を行った。 また, 生物化学工学的手法から, 培 養肝細胞の薬物代謝機能を向上させるため, 静置培養よりも生休環境に近い培養環境として生体流れを 考慮した 培養装置の開発とその性能評価を行うこと で前記の(1)・(2)・(3)の機能の達成を目指した肝臓 シミュレータの開発を試みた。
4
1.2動物実験の現状と動物実験代替法の必要性
現在, 新規医薬品開発の プロセスはFig.ト2-1の概略図で示されるような2つのステップにより行われ る。 1つは前臨 床試験として動 物実験による新規化合物の治験薬への絞り込みを行うスクリーニング操 作であり, もう一方は実際にヒトを対象とした臨床試験である。 過去3年間の日木での開発例として,
13万種類もの医薬品として可能性をもっ新規化合物が動物実験によって約1/850にまで絞り込ま れ, さ らに臨床試験によって約1/8にまで絞り込まれている。 すなわち, 新規化合物が実際の医薬品として利 用でき る成功率は約1/6800と大変低い確率で、ある。 さらに, この開発には100億円以上ともいわ れる膨 大な経費と10年以上におよぶ長年月が必要である。 この開 発プロセスの中でも動物実験は臨床実験の予 備的研究として欠くことができない。
日本での開発成功率の例
|
新規化合物ト---ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
化合物130,000種類
5�8年
|
治験薬|
5�8年
|
医薬品|
前臨床試験(スクリーニング) 小 ・ 中実験動物によ る薬理・安全性試験
臨床試験 臨床試験フェイズI 臨床試験フェイズIV
Fig.ト2-1 新規医薬品開発プロセスの概略図5)
絞り込み率 1/850
化合物 154種類
絞り込み率 1/8
化合物 19種類
動物実験の内容は, I薬理試験」と「安全性試験 」に分けることができる。 I薬理試験」は薬物の標 的臓器あるいは細胞に対する薬の効き目を評価するものであり, I安全性試験jは薬の危険性を評価す るものである。 肝臓の薬物代謝研究は安全性試験の一つの評価内容に分類される。 動物を用いる前l臨床 安全性試験の種類を厚生省の指針に従っ て分類するとTable卜2-1のようになる。 これらの試 験に主に使 用される動物は, マウス, ラット, モルモット, ウサギ, イヌ, サルなどのIfrn乳類であり, 特に小動物 となると動物実験の 対象となる数が急増する。 その例として, 小動物を使った急性毒性試験[Tableト2-1
IV b)]では約50匹, 代謝動態に関する試験[Tablcト2-1III a)]では約20匹が一つの薬物に対する試 験に使用 されている。 Table 1-2-2に過去30年ほどの聞に使用された年間当りの実験動物数を示した。 これらの実 験動物は, そのほとんどが医薬品開発のための前臨床試験に利 用されている。
国 年 度
ーマ ウ
フ "/
Tableト2寸 前臨床試験の種類6)
I 化学的・物理的項目 IIV 通常の急性および亜急性毒性試験
a)化学的純度の分析と不純物的同定 a)生体への作用および毒性の用量ー反応関係 b)生体試料からの抽出と定量法 | 確定
c)必要な分解産物および代謝産物の合成 I b)数種動物で強力な暴露経路を用いての d)イオン化定数と脂溶性の測定
e)構造ー活性相関の研究
f )タンパク質との相互作用について結合hの 測定
rr .&収, 分布. 排i世
a)暴露経路(皮膚, 肺. ì肖化管) b)分布の見かけの量
c)血紫および組織蛋白質との結合 d)輸送機梅と事的責臓器
e)生体膜透過(小枢神経系. 腸. 胎盤など) f)排i世経路(腎, 胆汁, 肺など)
LDso
c)効力. _力. 蓄積効果. 安全率の決定 d)低および過敏感受性
e)一般薬理
f)免疫反応による活性化と抑制 g)アレルギ一反応
h)小毒に対する解毒法の確立 V 長期毒性試験
a)機能陣容(感覚, 心血W. 神経筋など) b)病理組織学的変化
c)生化学的変化 g)種々の経路による吸収,分布.排池の動)J学 IVl 特殊長期毒性試験
!日 生体内精進変換 a)生体内での動向 b)代謝産物の同定 c)代謝部位の確認 d)代謝経路の同定 巴)代謝産物の生物活性測定
a)妊娠および出産 b)催奇形性 c)突然変異誘発性 d)発焔性
VJI 統計解析
f )代�をかえる化学物質または条件の検討 g)種差と遺伝的変動
a)実験計画と結論の妥当性 刊l 毒効果の分類と分析
IX 化学物質に伴う健康陣容の予測
Table 1-2-2 実験動物年間使用数7)
日 本
1956 1960 1970 1975 1981 1986 1988
ス 1275442 2459683 11150143 9670235 8412865 5123992 4099426 160047 353050 1600643 1611445 1810259 2463974 2125328
1989 4575999 2465579 ハムスター類 21884 32543 36820 200988 230回7 239543 モルモ ット 67561 121716 144936 149438 166560 70636 44164 53014
ウ サ 占f 71762 164714 152917 184371 158524 172053 138537 150263
イ ヌ 27486 48570 68052 53142 58282 77023 84523 74717
ネ コ 10154 16465 13757 12963 14569 14744 14811 14540
サ 1レ 類 99 5361 3526 3884 3957 8327 6841 8949
その他晴乳類 6430 16939 32918 17546 13526 407 2020 1817
,鳥 類 27527 68777 482199 222257 117696 92760 159962 123826
両 生 類 96200 152126 150639 135564 116656
� J)� 2834175 43569965 30525065 1872467
アメリカ 1970 25669458
9862974 870056 737899 192792 182728 56645 54433 212424 887253 2039490
動物実験代替の必要性の一つは動物実験の廃止を訴える動物愛護論者の運動という外力によるもので あるが, 組織府養技術の発展から, 動物実験よりも簡便, かつ短期間に結果の得られる 組織晴養系を確 立することが代替法の開発を可能にするものである。
動物実験代替法とは, RussellとBurch8)によって提唱され, 現在の試験に用いられる動 物数を減少させ る"Reduction", 現行の試験法に置き換える"Replacement" I そして現在の試験法をさらに高度化・ 洗練化 する"Refinement"の三つ を目標としている。 そして, 本研究の目的で述べたように, 臓器由来の初代培 養細胞の利用が最も良い代替法となると考えられている。
培養細胞を使用した代替法が, 医薬品開発のための新たな評価法として確立されるためには, 以下に 示す条件を満たす必要がある。
(1)どこでも得られ易い標本であること
(2)操作が比較的容易で, 結果の判定が客観的で, 標準化が 可能であること (3)様々な研究室で再現性の良い結果が得られること
(4)経済的であること
(5) in vilroで、得られた結果からin vivoの結果を予測できること
1.3肝臓シミュレータ
すでに述べたように, 薬物は生体に取り込まれてから各臓器に分布して薬理効果を発揮し, 肝臓によっ て代謝され, 胆汁中あるいは腎臓を通して排池される。 また, 1.2の動物実験の現状で述べたように,
新規医薬品開発において動物実験によって評価を行わなければならない項目は多い。 このため, これら すべての試験を行う代 替法を開発しようとすれば, 単一の臓器モデルや生体内のさまざまな臓器モデル を組み合わせた多臓器モデルを開発する必要があり, 困難を極める。
本論文では, このような薬物の「吸収・分布・代謝・材料削の過程の中で肝臓による「代訪日のみに 注目し, これを評価できるシミュレータの開発を目指した(Fig. 1-3-1)0 薬物代謝のみに注目す るため,
薬物が肝臓以外の組織や臓器へ与・える影響は評価することができないが, これはTab!eト2-]の厚生省が 定めた安全性試験の「生体内情造変換」を評価できるものである。
本研究において, 肝臓シミュレータとは培養肝細 胞レベルで薬物の構造変換過程および消失速度を評 価し, それらに某づき生休内現象を予測するモデル実験系であると考えることができる。
この肝臓シミュレータには以下の特徴が挙げられる。
(1)薬物の構造変換産物の検家および構造変換経路を検討する。
(2)薬物処理による薬物代謝酵素活性の変化を調べる。
(3)薬物の消失速度を検討する。
(4)動物種による薬物情造変換過程の違いを調べる。
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( 1.薬物構造変換反応過程の評価\「 代 謝
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2.薬物代謝酵素活性変化の評価1. ::�:)'�t , �:.:::�I� / :� '== �-:V_:' ��� \
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3.薬物消失速度の評価/
Fig.ト3-1 肝臓シミュレータの位置付け
肝臓シミュレータを用いた薬物代謝研究では, 反応の条件を人為的に設定するので そこで進行する 反応が必ずしも生体内での反応を反映するとは限らないということを考慮しておかなければならない。
しかしながら, 本シミュレータの開発は, 実験動物その ものを使用せず, しかも一回の細胞調製で大量 の肝細胞を得ることができるため少数の実験動物から多くの化合物のスクリーニングを行うことが可能 となり, 動物実験の"Reduction", "Replacement"として大いに貢献することができる。 また, 実験動物で、
は個体差による結果のばらつきが大きいが, 本シミュレータの開発は制御された環境下で評価を行うこ とが可能なため再現ある結果を得ることができ ると考えられ , こ れは動物実験の"Refinement"につなが
るものである。
8
1.4本研究の方針
「研究の目的Jで述べたように, 本研究が目指す肝臓シミュレータは, 培養肝細胞レベルで生体肝臓 内の「薬物構造変換過程J, í薬物代謝酵素常性の変化J, í薬物消失速度Jを評価できるものである。
本研究では, 静置培養とj荏流培養というこつの培養方法を利用して肝臓シミュレータの開発を試みるこ ととし, 以下に示した項目)11買に研究を進めた。
(1)初代肝細胞の三次元培養技術の確立
初代肝細胞は壁付着性を示すため, これまでコラーゲンのような細胞問マトリックスを使用し, 培養 デイシュ底面にコートしたマトリックス上で細胞に一つの層を形成させる単層培養法が用いられてきた。
しかしながら, 単層培養法では肝細胞が従来もつ立方体状の形態が平面状に変化し, これに伴う機能低 下が問題とされてきた。 一方, 近年の培養技術の進歩から, 単離細胞から組織J僚の構 造体の再構築が可 能となり, 初代肝細胞においても三次元的 な球状細胞集塊(スフエ ロイド)培養法として報告されている 9),10)。 このスフエロイド培養 肝細胞は, アルブミン合成能やアンモニア解毒能などの肝特異的機能を,
単層培養肝細胞より高活性で長期間維持できることか ら, 単層培養法よりも有効で、あると考え られる。
また, 本研究では培養肝細胞の薬物代謝機能の向上を目指すために, 生体肝臓内のIÛl管綱を考慮した ミニ肝臓と称しうる培養装置の開発を目指していることから, スフエロイド肝細胞を容易に固定化し,
装置化できる培養担体が必要である。 そこで, 本研究は松下ら11)によって報告されている硬質ポリウレ タンフォーム(PUF)を培養担体とした肝 細胞のスフエ ロイド培養法 を利用することとした。 また, 松下 らの報告は, 初代ラット肝細胞を対象としたもので あったが, 本研究では医薬品開発に利用される動物 種を考慮してイヌおよびプタの初代 肝細胞も研究対象とした。 さらに, PUFの孔径および表面特性がス フエロイド形成に与える影響を検討-することで, スフエロイド形成機併を考察した。
(2)静置培養を利用した肝臓シミュレータの開発
静置培養は培養方法として最も操作が簡単であり , しかもランニングコストが安い。 また, 動物実験 代替法として利用するには操作が簡単で, できるだけ少量の薬物で測定を行える培養方法がよいことか ら, 静置培養を利用した肝臓シミュレータを用いて検討を行った。 これまで培養肝細胞による「薬物構 造変換過程」や「薬物代謝酵素治性の変化J, í薬物消失速度Jの研究には単層培養法が用い られてき たが, (1)で確 立したPUFjスフエロイド月下細胞のもつ薬物代謝能が, 単層培養法に比べ, í生体内での 反応を再現でき, いかに機能維持が可能かJを示すことが, この培養法を動物実験代替法として利用す ることの有効性の実証につながる。 そこで, 数種のモデル薬物を使用して, 静置培養下のスフエロイド 肝細胞の薬物代謝能を検討することで, 動物実験代替法を目J旨した肝臓シミュレータ開発の可能性につ いて+食言すした。
ここで重要となる 検討項目を以下に示した。
ト スフエロイド肝細胞によるモデル薬物の構造変換産物及びそこから予測される構造変換過 程が生体肝臓を再現できるかどうか。
2.薬物処理によるスフエロイド肝細胞内の薬物代謝酵素活性 の変化が生体肝臓を再現できる かどうか。
3. スフエロイド肝細胞によるモデル薬物の消失速度が生体肝臓を再現できるかどうか。
4.単層培養肝細胞と比較して, スフエロイド 培養肝細胞の薬物代謝機能の長期間維持が可能
かどうか。
(3)濯流培養 を利用した肝臓シミュレータの開発
静置培養 は(2)で示した利点はあるものの, 血液流れをもっ生体肝臓と比較して, 肝細胞への十分な酸 素や栄養素などの供給あるいは代謝老廃物の除去が期待できない。 このため, 培養環境を改善すること によって肝細胞の薬物代謝機能を向上させることが期待できる。 そこで, PUF充填型の府養装置を作製 し, 生体 肝臓に近い培養環境である培養 培地の流れ を血液流れと見立てた条件のもとで, スフエロイド 月干細胞の薬物代謝機能の検討を行った。 そして, 静置培養との薬物構造変換活性の比較を行うとともに,
モデル薬物の消失速度を既往の生体肝臓データと細 胞レベルで比較することによって, 肝臓シミュレー タ開発の可能性について検討した。
ハU噌EEA
1.5モデル薬物の選択
「本研究の方針」で述べた (2)と(3)に関し て, モデル薬物を使用し た肝臓シミュレータの薬物代謝能 力の評価が必要である。 肝臓内の薬物構造変換反応の型は, 主にTable 1ふlに示す約10干重類に分類でき,
生体外から取り込まれる化合 物はこれらの内のいずれかの反応の型あるいは複数の 反応の型によって 構造変換される。 動物実験代替法として 肝臓シミュレータの有効性を立証するには , これらすべての 反応を評価し, 生体肝臓内と同様の反応が進行する ことを証明しな ければな らない 。 本研究で は, ま ずその第lステップとして, これらの反応の型の一部について評価 を行うこととし, モデ ル薬物として は生体肝臓内の薬 物代謝機構がすでに多くの研究者によって研究されている既知の化合物を用いるこ ととしt:..o
まず, 構造変換過程の評価については, リドカイン(局所麻酔剤), 下エトキシ クマリン(生体異物),
アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)を取り上げ, 反応の型のN-脱アルキル化, 0-脱アルキル 化, グルクロ ン酸および硫酸抱合について評価を行った。 また, 酵素活性変化の 評価 については 子メチルコラント レン(環境汚染物質)と7-エトキシク マリンを使用して肝細胞内の薬物代謝酵素活性の誘導に ついて評価 した。 さらに, 消失速度の評価については, リドカインおよびアセトアミノフェンを用いて評価した。
Table 1-5-1 肝臓内の薬物構造変換反応の分類とモデル薬物の選択
反応、の型 機構
N-脱アルキル化 R-NllCII3 → R-NII2 0-脱アルキル化 R-OCII]
一.
R-Oll官山入|
S一脱アルキル化 R-SCII3 → R-SH反応 脂肪肢の水般化 R-CII3 → R-CII2-OII 芳子宇肱環の水般化 C6"sX → 110・Ci;H4X 脱アミノ化 R-CH2NI12→ R・COCI�
本研究における モデル薬物 使用目的
リドカイン (局所麻酔斉IJ) 7-エトキシクマリン
(生体災物) mw変換過程のilf(illi
�-�-!・-府知刊変化の許制li
「似速度の詳細目
アセトアミノフェン=土l (解熱鎖揃剤)
I
Iアセトアミノフェン-τ士一!
3-メチルコラントレン (党ガン物質)
AH
1υd Hf
般
〆 d J d d
AHAHJ H れ Hれ
ロ A
Hンル
ク
抱
シ
チ ル
椴
リ
セ グ
硫 グ
ア
/fill--\
応 反 入品H 河リ d ya
R-OII → R-0-Ci;1I906 R-OH → R-0-S 03I1 R-COOII R-CONIIGI2COOII R-N112 → R・NIIOCI�
1.6本論文の構成
第l章では, 本研究の必要性および検討すべ き事項を列挙した。 さらに, 木研究を遂行するための方 針について述べた。
第2章では, 木研究 に関連する分野の既往の研究について示した。 2.1 節では, 生体肝 臓の構造と機能 につい て触れ, その中でも木研究 に重要である 肝臓の薬物代 謝機能につい ては詳しく記述したo 2.2 fiîí では, 初代肝細胞の代表的な塙養技術として, 浮遊培養法, 被包化培養法, 単層培養法, 三次元培養法
の4種類を紹介した。2.3節では, 肝臓の薬物代謝研-究としてI 1ηvivoあるいはin vitroで、これまで、行われ てきた方法を紹介し, 2.4節では , 近年の動物実験代替法の動向について示し, 木研究の必要性を再確 認した。
第3章では, ポリウレタンフォーム(PUF) を細胞の培養担休として用い, ラット ・ イヌ ・ プタの初代肝 細胞の球状細胞集塊(スフエロイド)培養法を確立するとともに, 機能発現に関与する生存細胞 の変化を 検討-した。 さらに, PUFの孔径および表面特性がスフエロイド形成に与える影響を検討-することで ス
フエロイド形成機構について考察した。
第4章では, 静置培養を利用 した肝臓シミュレータの開発について示すために, スフエロイド培養初 代肝細胞が有する薬物代謝機能を数種のモデル薬物を用いて検討した。 その結果, モデル薬物の消失速 度は生体肝臓を反映できるレベルまでは至らないも のの, 構造変換産物は生体肝臓で報告されている産 物と同じであり, 培養細胞によって生体肝臓の構造 変換過程を予測できることを示した。 また, 生体肝 臓内の薬物処理によってみられる薬物代謝酵素活性の変化がスフエロイド肝細胞でも再現できることに ついても示した。 さらに, スフエロイド肝細胞は単層培養肝細胞よりも高い薬物代謝活性を維持できる ことを明らかにした。これによって, 静置培養のス フエロイド肝細胞は「薬物構造変換過程Jや「薬物 代謝酵素活性の変化Jを評価する肝臓シミュレータとして有望であることを示した。
第5章では, 生休肝臓に近い培養環境を再現できる濯流 培養 を利用した肝臓 シミュレータの開発につ いて示した 。7龍流培養を行うこ とでスフエロイド肝細胞のモデル薬物の構造変換機能は静置培養の約2 倍に向上することを示した。 また, 少量のラット肝細胞を使用した瀧流培養の肝臓シミュレータによる モデル薬物の消失速度を評価し, 生休肝臓と細胞レ ベルで活性を比較することで「薬物消失速度Jを評 価する肝臓シミュレータとして有望であることを示した。
第6章では, 木論文の総括を 行うとともに, 本シミュレータによってどの程度の実験動物個体数を代 替できるのかについて考察した。 さらに, 本論文の成果をもとに, 今後の木研究の展開について記述し た。
12
第2章 既往の研究
2.1
肝臓の構造と機能
2.1.1 肝臓の構造12),13), 14)
肝臓は身体の中で、全体重の約1/S0を占める最大の臓器であり, 生命維持に必要な代謝解毒機能を行っ ている。その重量はラットでは約10g, イヌでは約300g, 成人ヒト肝臓では約1400gで、あり, 肝臓19当り 1.00�2.14 X 10R個の肝細胞が存在するといわれている。肝細胞は集合してJJ干小業(hepatic Jobule)と呼ばれ る直径が0.8�2.0mmの多面体の構造をとり, ヒト肝臓の場合, 約SO万個の肝細胞から構成された肝小 葉が約SO万個集まって肝flll誌を情成している(Fig.2-1-1)。肝細胞の配列ならびに血管お よび胆管の走行と の聞の解剖学的な関係がJJ干小葉を形成する と考えられており, その中心に中心静脈(central vein)が位置 し, 小葉の辺縁角に門脈域 が位置している。門脈域(portalspace)を肝外から入ってきたJJ下動脈(hcpatic artery)と門脈(portal vein) および肝外へ向かう胆管(bile duct)が併走している。一層の肝細胞からなる肝細 胞索が中心静脈から辺縁に向けて放�'J�犬に配列し, それぞれの肝細胞索の間が類洞(sinusoid)と呼ばれる。
類洞には肝小葉辺縁から酸素に宵んだIDJJJJJRIrrLと栄養素に富んだ門脈血とが一緒に流入し, rl寸心静脈に向 かう。一方, 胆管系は 肝細 胞索のJJ干細胞同士が接する而に肝細胞膜で四ま れて形成さ れた毛細胞管 (biliary canaliculus)に始まり, それらを集めた)]g管が門脈域をJJ干動脈や門脈とは逆方向に走っている。こ のような構造が肝臓木来の機能を発現するために必要な最少の単位である。
肝臓は, 総細胞数の 約70 %を占め る肝実質細 胞(parenchymal hepatocytes) と 約30 %の非実質細胞 (nonparenchymal hepatocytes)からなる。肝機能を目的とする研究に は, 当然ながら機能 の担い手である肝 実質細胞(単に肝細 胞と称する)が対象となる。肝細胞は約18�20μmの大きさで, 6� 12の而を有する多 面立方体である(Fig.2-1-2)o
肝細胞の情養研究において, 肝細胞の立方休構造維持が機能発現に大きく関与すると考えられている が, 一度生体外に取りIUされるとその併造の維持が難しいことが指摘されている15)。また, 肝細胞は生 体内では旺煤な再生能を有するが, 初代!JF細胞において生体外では未だにその噌殖系は確立 されていな
し、。
Sinusoid Bile canaliculus
Sinusoid lining cells Inter10bular ductule
11 \J \A,
Branch of po口al vcin
Cen住al vein
Fig. 2-1-1 肝/J、葉構造の詳細図12)
Fig. 2-1-2 肝細胞の詳細図14)
14
2.1.2 肝臓の機能
肝臓は, 外来の栄養物を取り込んで, いろいろな形で貯蔵・変形さらには必要に応じて放山すると同 時に, 解毒・排j世にも大きく関与している臓器であ る。 その機能は代謝機能・解毒機能 ・排池機能・循 環調節作用の4種類に大きく分類できる(Table 2↓1)。
代謝機能には, 糖質・脂 質・アミノ酸・タンパク質および核酸などの代謝が含まれる。 門脈により運 ばれてくるそれらの物質を取り込んで, 再び血中に 血糖・リポタンパクあるいは血柴タンパクの形で送 り出し, 一種の内分泌的な機能を示す。 また, 他の臓器の代謝にも重要なピタミンやホルモンも肝臓で 代謝され, 活性化ないしは不活性化する。
代 謝機能
解毒機 能
排池 機能
循環調節作用
Table 2-1-1肝臓の機能13)
糖質代謝
グルコースの取り込み グルコースの解糖酸化 グリコーゲンの新生
ガラクトース. フルクトースの代謝 脂質代謝
リポ蛋白の合成と血中への放出 コレステロール, リン脂質の合成 脂肪酸の取り込みと分解
L CATの合成, 放出 アミノ酸・蛋白代謝
アミノ酸の代謝(脱アミノ, アミノ基転移, 酸化) アンモニアの処理(尿素回路)
蛋白合成と分解
血竣蛋白質(アルプミン)の合成と放出 核酸代謝
再生・壊死
ピタミン, ホルモンのイ℃謝 ピタミンの不活化, 貯蔵 ホルモンの不活化, 分解
薬物代謝酵素系による薬物の酸化・水酸化
グルクロナイド, グルタチオンおよびその他の抱合 アルコールの代説t
アンモニアの処理 クッパー細胞の食作用 胆汁分泌
胆汁酸の生成分泌
コレステロール, リン脂質, ピリルピン等の分泌 解毒された薬物などの胆汁中への分泌
解毒機能は, 内fE]性あるいは外因性の物質を解毒し, 排d止するものである。 内因性の物質としてアン モニア ・ ピリルピンを解毒するほか, 外因性の各種生体異物の滑面小胞体による酸化反応が挙げら れる。
それ以外にもグルクロン酸抱合・グリシン抱合その他の解毒機構が, 薬物などの極性を高めて水に溶け 易い状態に変え, 血中へそして尿へ, あるいは一部は胆汁a中に排池され る。
排j世機能は, 胆汁を生成し, これを胆管を介して腸管に送ることである。
循環作用として, 肝臓は造血に関与したり, 血液凝固に必要な因子を生成し, 放出も している。 また,
肝臓は非常に大きな臓器であることか ら, 血液の循環調節の機能もはた している。
以上のように肝臓は多種の機能を有し, その機能は複雑に絡み合っている。 その機能 は500種類を超 えるといわれ, 未だに未知の機能が存在すると考えられている。
2.1.3肝臓の薬物代謝機能16)
2.1.2の肝臓の機能でも述べたように, 薬物代謝機能は肝臓の解毒機能に分類され, 肝臓は薬物代謝を 行う酵素を豊富にもつ臓器である。 自然界に は様々な化合物が存在するが 陸に上がった艇虫類以上の 動物にとってこの酔素の存在がなければ, 排地機能を手助けすることはできず, 大変重要な機能である。
⑭
第一相反応 (官能基導入反応)
P-450酵素系
第二相反応 (抱合反応) 抱合酵素系
Fig. 2-1-3肝臓における生体異物の解毒機構
16
体内に摂取された薬物は血巾に溶け込み, 門Illf\を通して肝臓内に運ばれる。 薬物は一般に脂溶性が高 く, ほぼ中性であり電解質としての性質を示すものはまれである。 肝細胞はこれら脂溶性ないしは非極 性の薬物を極性増大の方向へ変換する反応を行って いる。 この理由は排池の過程と密接な関係がある。
薬物の体外への排出にはさまざまな経路が存在するが, 最も重要なものは尿中へのお何世である。 ところ が非極性の薬物は, 腎JI蔵の尿細管において再吸収されて血中に再びもどるのでお何世されにくい。 したがっ て, 肝臓が薬物を極性化することによってJ非池しやすくすると考えられる(Fig.2-1-3)。
このような肝細胞による薬 物構造変換反応は, 第一相反応(Phase 1 reaction)と呼ばれる宮能基導入反 応と第二相反応(Phase II reaclion)と呼ばれる抱合反応の二つに分類することができる(Fig.2-1-3)o
第一相反応には酸化 ・ 還元・ 加水分解などの反応があり, これによって薬物分子に位性の官能基(水 酸基・ アミノ基など)が新しく生ずる。 これらの反応の中で最 もよく見られるのは酸化反応であり, そ の中でも一原子酸素添加酵素(モノオキシゲナーゼ)反応と呼ばれるものが圧倒的に多い。 この反応は肝 細胞中の小胞体に局在するチトクロームP-4S0(以下単にP-4S0と称する)と総称される酵素が中心となっ て触媒作用を示す。 P-4S0による代表的な反応をTable 2-1-2に示した。
Table 2-1-2 P-4S0による代表的な薬物酸化反応17), 18)
反応様式 反応機構
脂肪族炭化水素
の水酸化反応 R-CH3 →R-CH,-OH . n.-'-'J..12
芳香族炭化水素
の水酸化反応 CLHcX→HO-C6 J..1 ::HAX S^" . Ln.r '-'6 J..14
N-脱アルキル反応、 R-NHCH3→[R-NHCH20H]
→R-NH2+HCHO
o-!l見アルキル反応
]O H H o c 円抗∞肋Rー-、→→ 司、dH C O R
脱アミノ化反応
R -CH(NH2)CH3→
[R -C(OH)(NH2) -CH3]→
R-CO-CH'l+NH 3,lH13 S原子の酸化反応 RふR'→[R-S+(OH)R']
→R-SO-R'+H十
酵素反応 は一般に基質特異性を持つが, P-4S0は他の酵素と違って それほど基質に左右されな いのが 特徴であ る。 これは数十万と存在する 薬物に対して存在するP-4S0は数十種類であることや新しく開発 された薬 物に対しても反 応を行う点からもわかる。 例えば, ラット肝臓では約30種のP-4S0が存在し,
これがある程度の基質特異性を規定すると考えられている。
第二相反応は, 第一相反応によって薬物分子に出現あるいは増加した極性官能基に対し, グルクロン 酸やグリコシドなどの水溶性原子団を結合させる合成反応であり, 生成物は抱合体と呼ばれる。 これら の代表的な反応をTable 2-卜3に示した。
Table 2-1-3 代表的な第二相反応、17), 18)
反応様式 抱合される官能基
グルクロン酸抱合 ーOH,ーCOOH
-NH 2,ーSH
グリコシド抱合 ーOH, -COOH -SH
硫酸抱合 -NH2,-S02NH2
ーOH
メチル抱合 ーOH, -NH2
アセチル抱合 -NH2, -S02NH2 ーOH
アミノ酸抱合 -COOH
グルタチオン抱合 エポキシド
ハロゲン化有機化合物
脂肪酸抱合 ーOH
縮合 各種
薬物構造変換反応、は以上の二段階に大別できるが すべての薬物が必ずこれらの二段階の反応を経て から排池されるわけではない。 薬物の一部あるいは全部が未変化のままで排j世されることもあるし, 第 一相反応で生じた生成物が抱合体にならずに排i世される場合もある。 また逆に もともと極性基を有す る薬物では第一相反応を経ずにそのまま抱合体になることもある。 さらに, 未変化体も含めて各段階の 構造変換産物のいずれもが多少とも排他されること も見られる。 しかし, 一般的に薬物構造変換反応に おいては, これら二段階による反応が特に顕著である。
18
薬物は肝臓内で変化を受けることによって, その生体への活性(薬理作用)を変え ることが多い。 第二 相反応では一般的に薬物の薬理作用の消失あるいは減少へと反応が進行するのに対し, 第一相反応につ いてみれば, 活性のない薬物の活性化, 活性のある薬物の別の活性への変化, 逆に活性を有する薬物ま たは構造変換中間産物の不活性化の例が多く知られている。 そのため, 新規医薬品開発プロセスでは,
肝臓による新規化合物の構造変換産物の同定とその効果を調べる必要がある。
2.2初代肝細胞の培養技術
1968年にHowar寸とPeschl9)によって, はじめてラット肝組織をコラゲナーゼで消化することにより機能 を維持した肝細胞の分離法が報告された。 翌年, 1969年Be町とFriend20)によってin situのコラゲナーゼ 酵素消化法が開発された 。 その後, さらにSeglen21)によって改良が加えら れ, 再現性よく高収率で約 90%という高い生存率の肝細胞 が分離できるようにな った。 そして, 1970年代後半より, 分離し た初 代肝細胞を用いた肝機能の生化学的研究が行われるようになった。
初代肝細胞の培養法として, 浮遊培養法, 被包化培養法, 単層培養法(二次元培養法), スフ エロイド 培養法(三次元培養法)などが一般的である。Fig.2-2-1にそれぞれの培養法の模式図を示した。
A
①
G
ら %
@@①@①Gら
@ ④@①①① @ ①④ O
Fig.2-2-1 初代肝細胞の代表的な培養法
A,浮遊培養法 B,被包化培養法 C,単層培養法
0;スフエロイド培養法
(1 )浮遊培養法
浮遊培養法は, 単離した肝細胞をそのまま培養容器内で培養する方法である。 この培養法では浮遊さ せた状態で振没することが多いため*IlIJJ包の傷害による生存率の低下が著しく, 代謝活性も2�3時間の短 時間で低下してしまう。 さらに, 細胞分散時に起こ る細胞膜傷害のために肝機能やホルモン応答能が低 下している。 例えば, 分離直後ではタンパク質合成能が低く, 合成能よりも分解能に片寄っていること 22).23)が報告されている。
(2)被包化培養法
細胞の被包化の研究は, Limら刊がアルギン酸カルシウムにJJ革ランゲルハン ス氏島細胞を被包化する ことにより, 機能延長ができることを報告 したことに始まる。 1986年Miuraら25).2fi)はラット肝細胞をア ルギン酸カルシウムに被包化し, その代謝能を検討した。 その結果, 尿素合成能やフェノール, 脂肪般 の解毒代詩!などを数日間にわたって維持できることを報 告している。 また, 1989年に大島と相11ら27)はア ルギン酸カルシウム被包化のラットおよびウサギ肝 細胞が, 負荷したアンモニアの代謝, 尿素の生合成 を行えることを見出している。 しかし, これら被包化された肝細胞は, ゲル膜の存在による物質移動速 度が低下し, またそれに伴う機能の低下を避けることはできない。
(3)単層培養法(二次元培養法)
分離された肝細胞の膜傷害による肝機能やホルモン応答能の低下は, 数時間から一日間培養すること により回復することが知られている28)0 このため, 壁付着性の特徴をもっ肝細胞を培養担休上で初代暗 養する研究が行われた。 培養担体として, 細胞問マトリックスであるコラーゲンを培養容器に固定化す ることで, 初代肝細胞は 一層状にや1I展するこ とが見出さ れた。 この培養法は単層培養法(Monolaycr culture)と呼ばれ, 今日, 初代肝細胞の最も一般的な培養法として知られている。
この培養法によって, 数日間からl週間程度の細胞生存や肝機能の維持が報告されている問。 また,
この培養技術の開発とともに初代肝細胞の培養に適し た培養培地の検討30)も行われ, 機能発現とその維 持に大きく貢献した。
(4)スフエロイド培養法(三次元培養法)
ここ数十年のあいだ, 初代肝細胞の培養は単層培養法が主流とされてきたが, 近年肝細胞構造とそれ をとりまく細胞外環境の解析が進み, 培養細胞から出発して, ある程度組織構築がなされた三次元培養 系が注目されるようになってきた。
この培養法は, 1960年Moscona 31)が, ニワトリの脹やマウスの胎児の細胞を フラスコ内で旋回培養す ることにより, 細胞集塊を形成(集塊培養)し, その際に培養温度と旋回速度を制御することで形成され た細胞集塊がさらに分化した形態に移行することを示したことに始まる。 その後, 1989年から1990年 にかけて小山ら32)が細胞外のマト リックスであるレチクリン繊維から分離したプロテオグリカン上に肝 細胞を播穐すると, その表而のてJI滑化の生じた球状細胞集塊(スフエロイド)を形成することを見出した。
このスフエロイド内部では, jJ_Q符械の併造や細胞間連絡網であるギャップジ ヤンクションがある程度情 20
築され, さらに, これまで有効とされてきた単層培養系に比べ, 高レベルかつ長期間肝特異的機能を安 定して維持できることを報告している。 また同様に , 肝細胞の集塊形成およびその時の高機能発現とそ の維持については, Landyら33)やTong ら34)の新生ラット肝細胞の非接着性プラスチック基質上での府養 においても示されている。 さらに, スフエロイドに関する研究として, 1991年酒井ら35)・36)はポリリジン 上で肝細胞 を培養することでスフエロイドの形成がみられ, 上皮性細胞増殖因子(EGF)を添加すること でスフエロイドの形成と機能維持が向上することを報告している。 また, 同年竹津ら37)は, 細胞按=活性 の蛋白質であるI型コラーゲンと細胞非接着性の温度感受性ポリマーであるポlトN-イソプロピルアク リルアミドとの混合物質から, ヒト真皮由来繊維芽細胞とラット肝細胞を共存培養させたスフエロイド の作製に成功し, 移植組織や動物代替を考えた薬物評価などへの応用の可能性を示している。
これと時を同じくして, 松下ら11)も多孔質材であるポリウレタンフォーム(PUF)を細胞の付着担体と して用いることによって, 初代ラット肝細胞がPUF孔内でスフエロイドを形成し, その高機能発現を確 認できることから, ハイブリッド型人工肝臓としての有効性を示している。
これらの研究により, 肝細胞の立方体構造の維持や機能発現において, 細胞の分化あるいは組織化を 生じさせる三次元培養方法の有効性が認識されるようになった。
2.3薬物代謝研究のための肝臓シミュレータ開発の展開
2.3.1肝薬物代謝研究の歴史
生体内の薬物代謝研究が行われるようになったきっかけは, 1842年に安息香酸がグリシンと抱合して 馬尿酸が生成され, それが尿中に排他されることが発見されたことである38)。
その後, 1956年にBrodieら38) が肝細胞 のミクロソー ム酵素で種々の薬物が酸化されることを発見し,
1958年にK1ingenberg3R)が肝臓ミクロソームの懸濁液に一酸化炭素を通気すると吸収スペクトルが変化し てのOnmに短大を持つスペクトルが現われることを報告した。 この物質は不安定であっために, 本体不 明のままで一酸化炭素結合性色素(CO‘binding pigment)と記載されたが, ]962年に大村 ・佐藤3R)によって この本休がヘムタンパク質であることが示され, 450nmに吸収極大を持つ色素(pigment)という意味でチ トクロームP-450と名付けられた。 そして, 1963年 Couperら38)によって肝臓ミクロソーム中のP-450が薬 物代謝の中心酵素であることが見出された。
この発見から三十数年たった現在, P-450の安定な精製法とX線解析などが進み, 分子レベルで薬物代 謝の研究が行われるようになった。 しかし, P-450のような特異的な酵素を人工的に造り山すことは現 在でも不可能であり, 薬物代謝の研究に実験動物の肝臓を使用することを避けることができないのが現 状である。
2.3.2生体内(ín vivo)における研究39)刈)
動物個体を使用した薬物の生体内動態の研究とし て, 一般に薬物をアイソトープでラベルしたオート ラジオグラフィ一法が使用される。この方法はあくまで、薬物の各臓器や組織への分布動態を調べるもの であり, 肝臓による薬物の代謝動態の研究には別の方法がとられる。
動物個体を使用した肝臓の薬物代謝試験としては, 以下の方法がある。
(1)薬物投与した動物の尿および糞から得られる構造変換産物を分析する方法
(2)動物を生かしたまま血液の一部を採血, あるいは全血 を採血することによる血液内の薬物代謝 動態を評価する方法
(3)全肝臓を摘山後, 全身循環とは独立した肝臓循環系を人工的に作製し , 薬物の構造変 換産物・
消失速度について分析を行う肝漣流方法
ここで, (1)については, 肝臓によって構造変換された産物の同定が目的であり, 定性的な評価のみと なってしまう。(2)については, イヌなどのような大型動物では連続的な採血が可能であり, 構造変換産 物の同定と消失速度の評価が行えるが, ラットのよ うな小動物では血液量の少なさから全血液の採血を 避けることはできない。また, この評価法は全身の 薬物代謝動態の研究としては優れているが, 直媛L!0 な肝臓の薬物代謝機能の評価にはならないo (3)は生体(in vivo)を用いた方法というよりもむしろ生休肝 臓の状態を保持したまま(in situ)利用す る方法に 分類されるが, ここでは全肝臓を使用しているという 意味でJnVIVO の研究として取り上げ・た。この方法は制御された環境下で実験を行うことができるため丙
現性の高い結果をあげることができ, しかも他の臓器との関連を絶ち切っているため肝臓のみの楽物代 謝機能を評価する上で最も優れている。しかし, 外科的な処置による機能への影響と短期間しか機能維 持ができないことが問題として指摘される。また, (2)・(3)の方法について は再現性を確認するため,
多数の実験動物を必要とするという問題は避けることができない。
2.3.3生体外(ín vitro)における研究
これまで動物実験による肝薬物代謝研究の代替法として, 月下kID故(肝スライス)・肝細胞・JJ干ミクロソー ム酵素分画を用いた検討が行われてきた。以下にそれらの研究の特徴を示す。
2.3.3.1 肝スライスを用いた石庁究40)
肝スライスは, 薬物代謝の研究が開始された1950年代の後半から1960年代にかけ, 主に用いられてき た。特に, 細胞膜を保持した状態で細胞機能を知ることができ, しかも, より少ない薬物量で検討でき ることから現在でも重要な材料とな っている。 数mmに切り取られた肝スライスは正常な臓器と同じ細 胞構造と生理機能を有していることから, 薬物の構造変換産物の同定や消失速度などの定量的な研究)J 法として行われている。
しかし, その問題点として以下のことが挙げられている。
(1)正碍に切り取ったスライスでも均一の細胞集団ではない。
22
(2)スライスされた内部の肝細胞には充分な酸素や栄養素の供給が行われず細胞の生存を保つこと ができない。
(3)肝スライスでは停に第二相反応である抱合系の代謝研究における有用性が挙げられるが, 第 相反応であるP-450活性の維持は2時間程度が限界である。
以上の点から, 肝スライスは作製直後の状態でしか薬物代謝の研究には使用できないことが示される。
2.3.3.2肝薬物代謝酵素群を用いた研究41)
肝ミクロソームに存在する薬物代謝両手素群を使用した薬物代謝の研究は, 動物実験の代替法よりもむ しろ肝薬物代謝機構の解明を目的としていることが多い。 これは, 研究対象となる醇素は, 肝臓という 組織やそれを構成する肝細胞よりもさらにミクロな吐界のものであり, 第一相と第二相という一連の楽 物構造変換過程が分離された状態で評価されるためである。 従って, 木方法は薬物代謝の中心酵素であ るP-450が行う薬物の構造変換過程 ・消失速度を直接測定できるという利点から注目され, 発ガンなど
の変異原物質の代謝的活性化などの研究や肝臓がもっP-450量の測定などにしばしば用いられている。
このようなP-450酵素群を対象とした研究では, 以下の問題点が挙げられる。
(1)酵素状態では第一相と第二相という一連の薬物構造変換過程が評価できない。
(2) その活性が維持できるのは数十分から数時間であり, 長期反応は調べ られない。
2.3.3.3培養肝細胞を用いた研究
初代培養肝細胞を用いた研究は, JJ r-薬物代謝の動物実験を代替できる最も有効な方法であると考えら れている。 これは一つ一つの釧胞がバラバラな状態で培養されるため, 肝スライスの研究で問題とされ た細胞集団の不均ーさや物質交換の悪さを解消でき, しかもP-450酵素白休を用いた研究では行 うこと ができない第一相と第二相という一連の薬物構造変換過程を評価できるからである。
また, 培養肝細胞を用いた 薬物代謝研究として, 肝臓から単離した直後の 遊離肝細胞 もその対象とは なるが, 元来肝細胞は壁付着性であるため遊離状態ではその機能の維持は約6時間が限界である42)白州州。
さらに, 初代培養肝細胞は継代培養が困難なことから, 増殖性で継代培養が可能な形質転換細胞やJJ下ガ ン細胞を用いた研究も行われてきたが, 細胞の基本的特性が正常細胞と著しく異なること45)が女11られて おり, 初代培養細胞が最も有効で、あると考えられている。
すでに述べたように, 初代肝細胞の培養に寸支的に用いられてきたのは二次元状 の単層培養法であり,
この培養法を利用した薬物の構造変換過程や毒性試験は近年多くの研究者によって盛んに行われている 46).47)・48)。 これによって, 肝スライスや薬物代謝酵素系を用いた研究で最大の問題とされてきた数H寺問の 機能維持が数日間に延長できることが見出され, 代替法としての有効性は示されているものの, 単層培 養状態では培養開始とともに肝細胞の立方休構造が平面状に変化し, それに1'1; -)機能の低下が問題となっ ている49)o
一方, 肝細胞の立)J休構造の維持が肝機能発現に重要な役割を果たすこと50),51)が示された。 Baderら52) は, コラーゲン二次元府発法を応川した方法としてOrganotypicalculture(器官模式引培養)と名付ーけた府 養法を開発している。 このよ行養法は, 初代肝細胞を細胞外マトリックスで挟み込んだ, いわゆるコラー