保育士の健康調査
一 子 ど も の 育 ち を 保 障 す る よ り よ い 保 育 の た め に ‑
学校教育専攻
幼年発達支援コース 船 本 孝 子
1.問題の所在
保育所で過ごす子どもたちにとって、保育士 の存在は今のみならず、将来に計り知れない影 響力をもたらすことから、保育士の心身の健康 状態は、保育所で長時間保育を受ける子どもた ちにとっても重要で、あるo しかし近年、医療等 ヒューマンサービ、スに従事する者と同様、保育 士の強いストレスやノ〈ーンアウト症状が問題視
される状況になってきている 1)。
保育士が不健康に追い込まれる要因の1つに、
保育所へのニーズの高まりがある。子どもより も親とのかかわりが、ストレスの原因をもたら しているというのが 2点目である。 3点目はイ呆 育士の専門性・労働環境にある。 2003年、保育 士が国家資格となり、専門職としての責任と役 割が明確化された。しかし、保育制度改革の実 際は企業の参入といった市場的保育サーピ、スの 提供を求め、健やかな子どもの育ちを願い、努 力と実践を続けてきた保育士の労働環境を脅か
し始めたことに起因している。
2. 目的と研究方法 (1)目的
本研究は、保育士の労働実態とストレス状況、
指 導 教 員 橋
J
11喜美代(2)研究方法
①調査対象 T県公立保育所・幼稚園 (41ヶ所) 合計回収率 41.0% 有効回答数188票
女性186名、男性2名
②調査期間 2007年 7月'"'‑'9月
③調査方法無記名自記式アンケート調査
④調査内容
(a)性別・年齢・経験年数・雇用形態、 (b)職 務の状況、 (c)家庭状況・仕事生活時間、 (d) 最近の保育・職場・仕事生活状況、 (e)健康状 態、 (f)ストレス要因・ストレス反応、 (g)上 司・同僚などのサポート、 (h)仕事・生活の満 足感等
(e) ~ (h)は旧労働省委託研究「作業関連疾患 の予防に関する研究jによる「職業性ストレス簡 易調査表jを用いて尋ねたえ
(3)分析方法
年齢による比較 (5歳ごと 8段階に区分)、職 務状況による比較、雇用形態による比較、小学 校教員(女性)・日本の標準(女性)との比較を行 い、健康状態・ストレス要因・ストレス反応に 影響する諸要因の関連を調べた。
ストレスに影響する要因を明らかにし、保育士 3.健康調査結果
の労働環境の改善を検討し、子どもの育ちを保 今回の調査研究では、保育現場は活気が高く 障するよりよい保育を構築するための課題を明 働きがいもあるが、心身の負担も大きい職場で
らかにすることを目的とする。 あることがわかった。
匂
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(1)ストレス要因・自覚的身体負担度
9種のストレス要因の中で一番高い値を示し たのは「自覚的な身体負担度Jで、あったo この 結果を小学校教員と日本の標準値との比較をし た場合、日本の標準値では「やや高し、/多しリが 19. 7%、「高し、/多し¥Jが 9.6%であるのに対し、
今回の調査は「やや高し、/多しリが39.4%、「高い /多し、」が52.7%で、あったo これは、小学校以上 の教職員(女性)との比較においても「高い/多 しリでは保育士のほうが上回る結果で、あったo要 チェックレベルで、ある「高い/多しリは標準値 の5倍以上であり、保育士の身体負担度はかな
り強いといえる。
ストレス要因該当 ストレス
酪 ;
要 因 ; 一
一
i佃 λ 普 通 や や高い%
高い
;保育土 1.1 5.9 39.4 52.7 自覚的j
な身体;小学校教員 2.1 13.9 41.4 42.6 負担度;;標準(女性 37.0 19.7 9.6 一一一」
33.7
また、 χ2検定の結果、 「対応に注意や時間を 要する幼児の有無jと「自覚的な身体的負担度J は 関 連 が あ る こ と が わ か っ た(χ2=30.502, df=8,pく0.001)。
(2)ストレス反応 活気・疲労感
6種のストレス反応の中で、「活気Jが他の要 因と大きな違いが見られた。小学校教員と日本 の標準との比較では、標準値は「やや高し ¥j多いj
が21.3%、「高し¥/多いjが8.8%であるのに対し、
保育士では「やや高し、/多しリが 32.4%、「高し、/
多いjが 17.0%と、高い値になっている。小学 校教員(女性)は、標準値とよく似た値である。
また、「活気J~こは、「対応に注意や時間を要す る幼児の有無Jが影響することが、 χ2検定の結 果からわかったはた34.324,df=10,pく0.001)0
対応に注意や時間を要する幼児の存在は、ポ ジティブな面にも影響を与えている。
ストレス反応該当率の比較
2 2 :
職 種 : 低 い や や低い 普通 や や高い
号6
高い
; 保 育 空 j ? : 3
,! ? : ? ? ? " ! ? ? 』 170
活気;小学校教員 12.0 14.2 43.7 22.8 7.4 21.3 8.8
一一一」
j標準(女性 13.4 19.2 37.3
保育士のストレスに一番影響を及ぼすのは、
疲労感で、あったo
r
疲 労 感Jにも、[対応に注意 や時間を要する幼児Jは影響を与えていること がt検定の結果、わかった(t(163)=‑2.641, pく0.01)04.まとめ
日々成長・発達の目覚ましい乳幼児と生活す る保育士にとって、子どもからの全面信頼を受 け、成果が目の当たりにできた時、その喜びと 感動は忘れがたいものである。保育土の「活気j
が、その意味から高いのも当然といえば当然か もしれない。反面、乳幼児は方法を伝えるだけ で成長・発達を促すことができない。小学校以 上の教育機関との大きな差は援助の必要性の多
さにあり、それに伴う身体疲労と思われる。
「対応に注意や時間を要する幼児Jは保育士の ストレスに対し、正負両面に働いていた。
r
気に なる子Jが増加している現在、その存在をも視野 に入れた保育環境の改善が必要である。注
1) 植田 智「保育士におけるパーンアウト:
他のヒューマンサービスと比較して
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島根大学 研究紀要~ 45、2002年、 39'"'‑'47頁2) 教職員の健康調査委員会『教職員の健康調 査~ 2006年
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