博士(理学)前野英毅 学位論文題名
マウス・ラミンBl 遺伝子のクローニングと構造解析 学位論文内容の要旨
ラミ ンは 核膜 の内 側に 存在 する 核ラ ミナ の主 要 な構 成成 分であり、夕ンパク構造上 の 特微 からIF( 中間 系フ ィラ メン ト) 夕ン パク フ ァミ リー に分類される。一般的に多 細 胞生 物で は同 一個 体あ るい は細 胞中 に複 数種 の ラミ ンが 存在し、免疫学的及び生化 学 的 にAとBの2っ のタ イ プに 分類 され る。A夕 イプ に はA 及 びCが 、B夕イ プに はB1及 びB2が 知ら れて おり 、こ れら のラ ミン が個 々の 機 能を 持つ のか不明だが、いずれも核 構 造の 維持 が主 な機 能で ある と考 えら れて いる 。A夕 イプ とBタイプでは発現様式が異 な り、A夕 イプ ラミ ン が発 生分 化の 調節 を受 ける のに 対し 、B夕イプラミンは全ての体 細 胞で 発現 する 。本 研究 でiま ラミンB1遺 伝子の構造と発現調節機構の解明を目的とし て 、マ ウス ・ラ ミンB1遺 伝子 のク ロー ニン グ、 構 造解 析、 プロモーター機能領域の検 索を行った。
スDASHをべクターとする1.5 x106の独 立のクローンよりなるマウスゲノミックライ ブ ラ リ ー を ス ク リ ー ニ ン グ し 、10個 の独 立の クロ ーン を得 た。 個々 のス クロ ー ンの BamHI,Eco RI,Hindlllを用いた制限酵素切断点地図を作成し、ラミンB1遺伝子コード領 域 を 含む 約66kbp(キ口 塩基 対) の範 囲の ゲノ ムDNAの制 限酵 素地 図を 作成 した 。 スク 口 ー ン 挿 入 断 片 中 のcDNA配 列 と ハ イ ブ リ ダ イ ズ す るDNA断 片を プラ スミ ドベ ク ター に サブ クロ ーニ ング し、cDNA配列 コー ド領 域の 限 定と 塩基 配列の決定を行った結果、
マ ウ ス ・ ラ ミ ンB1のcDNA配 列 は 約43kbpに渡 るゲ ノ ムDNA中 に10個の イン トロ ン (第 1から第10イントロンの順に約20,0.7,1.0,2.4,6.1,0.7,1.6,4.8kbp)により11個のエキ ソン(第1から第11エキソンの順に約600,157,126,171,125,221,226,105,120,111,約 810bp)に分 断さ れて コー ドさ れて いる こと が判 っ た。 また 、全てのイント口ンの両端 は ス プ ラ イ シ ン グ 部 位 の 共 通 配 列 で あ る5|GT及 び3|AGの 配 列 で あ っ た 。 マウ ス・ ラミ ンB1遺伝 子構 造を 最近 報告 され た ヒト ・ラ ミンB1遺伝子と比較すると エ キソ ン/イントロン構成が全く一致して いた。本研究でマウス・ラミンB1遺伝子の構 造 が明 らかになったことにより、哺乳類で 初めて同一生物種゛(マウス)における全て の 主要 な4っの ラミ ン(A,C,B1及 びB2)の遺 伝子 構造 が既 知となった (ラミンCはラミ ンAと同 一の 遺伝 子領 域 にコ ード され 一次 転写 産物 の異 なる プロ セシ ング によ り 生じ る こと が報 告さ れて いる )。 マウ ス・ラミンA,B1,B2をアミノ酸配列の相同性に基づ いて並べ、各々のエキソン構成を比較した結果、以下のような差が見られた。、(i)イン ト ロ ン 挿 入 位 置 は ラ ミ ンB1に10箇 所 、 ラ ミ ンA及 び ラ ミ ンB2に 各々11箇 所存 在 する が 、そ の内9箇 所の イ ント ロン 挿入 位置 (ラ ミンB1の 第10イントロン 、ラミンB2の第1 と 第11イ ント ロン 、ラ ミンAの第10と 第11イン トロ ンは 除く )は 、コ ドン を分 断 する 位 置も 含め て一 致し てい た。(ii)ラミ ンA及 びラ ミンB1の 第1エキソンに相当するラミ ンB2の エ キ ソ ン は 、B2に 特 異 的 な イ ン ト ロ ン の 挿 入 に よ り2つ に分 断さ れて い た。
(iii)ラミンAIの第11エキソンはラミンB1及びB2とァ ミノ酸の相同性が見られず、ラミン B1の 第10エキ ソン と第11エ キソ ン間(B2に おい ては 第11エキ ソン と第12エ キソ ン 間)
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に存 在し ていた。(iv)ラミンB1の第7エキソンと第10エキソンに相当するエキソン はマ ウス ・ラ ミン間で相同性が低かったが、この2っのエキソンを異なる生物種のラミ ン間 で比 較す ると ラ ミンB1の 第7エキ ソン だけ は アミ ノ酸 相同 性が保存されていた。 この た め ラ ミ ンB1の 第7エ キ ソ ン が ラミ ンBl固有 の 機能 を担 って いる 可能 性が 示唆 され た。
ま た、 マウ ス ラミ ンB1の遺 伝子 構造は他のラミン遺伝子と同様にIF夕ンパクフ ァミ リー に属 する 遺 伝子 の構 造の 特徴 を保持しており、IF夕ンパクファミリーが同一 の祖 先 か ら 進 化 し て き た と い う 今 ま で の 説 を 支 持 す る 結 果 が 得 ら れ た 。 プ ロモ ータ ー 機能 領域 の検 索を 行うために、塩基番号‑222(翻訳開始コドンの 最初 の塩 基を+1と す る) から 上流 約3kbpを持っゲノムDNA断片を5.側から種々の長さ に欠 失させた欠失体にレポーター遺伝子 を結合したプラス,ミドを作成し、各々の欠失体の プロ モー ター 活 性を トラ ンス フェ クション法により測定した。その結果、塩基番 号‐
749以 上欠失させると欠失 の大きさに依存して徐々にプロモーター活性は低下し、 塩基 番号‑322まで欠失させても‑ 749と比較して約20%の転写活性を保持していたため 、プ ロモーター活性領域は塩基番号‑ 749‑‑‑ ‑222に存在すると考えられた。また、比較的急 激に 活性 が低下する領域に転写因子C/EBP,MLTF,AP2及びSP1の認識配列が見い出 され た。 ヒト のプ ロ モー ター をマ ウス のプロモーターと塩基配列の相同性に基づいて 並べ る と 、 マ ウ ス で 比 較 的 急 激 に 転 写活 性が 低下 した 領域 にヒ トで も転 写因 子C/EBPと MLTFの 認 識 配 列 が 見 出 さ れ た 。 その ためClEBPとMLTFが ラミ ンB1遺伝 子の 転写 に必 要で ある 可能 性 が示 唆さ れた 。プ ロモ ータ ー活 性を 持つ 領域 を含むDNA断片(塩 基番 号‑810〜‑1)はGC含 量 が 高 く 、 複 数 の 転 写 因 子SP1の 認 識 配 列が 存在 し、 典型 的な TATA配列 がな い など 、多 くの ハウ スキーピング遺伝子のプ口モーターに見られる 構造 をしていた。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
マ ウス・ ラミン Bl 遺伝子の クロー ニングと 構造解析
ラミン蛋 白質は真 核細胞の 核膜の内 側に存在す るラミナ の主要構 成成分で あり、
染色体の 複製や転 写に関与 している と思われて いる。ま た、細胞 分裂にと もなう核 膜の消失 と再生の 過程には ラミンの燐酸化と脱燐酸化が重要な役割を果たしている。
ラ ミ ン に はA/Cタ イ プ とBタ イ プ の2つ に 大別 さ れ、 そ の 発現 はA/Cタイ プ では 発 生 分 化 に と の な う 調 節 を 受 け る が 、Bタ イ プ は 全 て の 体 細 胞 で 発 現 し て いる 。 著 者 は 、c DNAの ク ロ ー ニ グ と 塩 基 配 列 が 決 定 さ れ て い る が 、 ゲ ノ ムDNAに つい て は 報告 の なぃ マ ウ スの ラ ミンBl遺伝 子 の クロ ー ニン グとそ の構造に ついて 研究 し た 。c D.NAから は 不 明な 転 写の 調 節 に関 与 す る上 流域 の塩基配 列と、遺 伝 子のエキ ソン・イ ントロン 構造とその各々の長さを求めることができるからである。
入 フ ァ ー ジ ベ ク タ ー に よ る ゲ ノ ム ラ イ ブ ラリ ー から 選 別 して10個の ク ロー ン を 単離する ことによ り、66,000塩 基対にわ たる遺伝子 の全体をカバーすることができ た 。 制 限 酵 素BamHI,E放 )RI,Hmdmに よ る 切 断地 図 を完 成 さ せた 。 さら に 、 遺 伝子上流 部分とと もに、全 てのエキ ソン・イン 卜ロンの 境界を合 む領域の 塩基配列 の決定を 行い、遺 伝子のエ キソン・ イントロン 構造を明 らかにす ることが できた。
様々 な 長 さの11個 の エ キソ ン 、10個 のイ ン ト ロン よ り成 っ ている。 他のマウ ス・
ラミンや 他の生物 のラミン 遺伝子と の構造比較 、さらに ラミンが 属する中 間フィラ メント構 成蛋白質 スパーフ んミリー 間での比較 が可能と なり、ラ ミンの進 化の過程 を考察で きた。
上 流 領 域 には 、 複 数の 転 写因 子 の 結合 配 列 が存 在 する が 、SP1因 子 の認 識 配 列 が多数存 在してい る。上流 からの欠 失を多数作 製し、マ ウス細胞 に導入し て、その 転写活性 への影響 をレポー ター遺伝 子の発現で 調べると 、プロモ ーター活 性が徐々 に減少す る。この 現象は多 くのハウ スキーピン グ遺伝子 で同様に 観察され ており、