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牛アミロイド投与による兎の実験的アミロイドーシスに関する研究

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Title 牛アミロイド投与による兎の実験的アミロイドーシスに関する研究( 本文(FULLTEXT) ) Author(s) 堀内, 雅之 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第247号 Issue Date 2008-03-13 Type 博士論文 Version author URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/23192 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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牛アミロイド投与による

兎の実験的アミロイドーシスに関する研究

2007年

岐阜大学大学院連合獣医学研究科

(帯広畜産大学)

堀内雅之

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牛アミロイド投与による

兎の実験的アミロイドーシスに関する研究

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【目次】 序論 3 第1章 牛アミロイド投与による兎の実験的アミロイドーシス 発症に要する諸条件の検索 6 緒言 7 材料および方法 8 結果 11 考察 12 小括 14 第2章 牛アミロイドの静脈内投与による兎の実験的 アミロイドーシス 15 緒言 16 材料および方法 17 結果 20 考察 22 小括 25 第3章 牛アミロイドの胃内投与による兎の実験的 アミロイドーシス 26 緒言 27 材料および方法 28 結果 30 考察 31 小括 33 総括 34 謝辞 36 参考文献 37 要旨 42 Abstract 44 図表 46

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序論 アミロイドーシスは異状蛋白であるアミロイドが,全身諸臓器の 細胞外に沈着してその機能障害を引き起こす疾患群である【11,24】。 アミロイドは異常な蛋白質群で,通常ヘマトキシリン・エオジン (H.E.)染色下で均質無構造弱好酸性に染まる沈着物として観察さ れるほか,ヨード反応を起こす事から類でんぷん質(アミロイド) と命名された。全てのアミロイドはコンゴーレッド(CR)染色下で 橙赤色に染まると共に偏光顕微鏡下で緑色偏光の複屈折性を呈する。 また,超微形態学的に,アミロイドは直径約 10nm の分枝のない線 維状物質として観察される。血清アミロイドA 蛋白(SAA),免疫グ ロブリン L 鎖,プリオン蛋白等,生体内に存在する前駆蛋白は様々 な原因により,βシート構造を多く含む構造に変位・重合してアミ ロイドを形成する。生化学的に,アミロイドはその前駆蛋白により 約20 種類ほどに分類される他,全身性や限局性といった沈着様式な どにより分類される【28】(表 1)。 ヒトにおける反応性アミロイドーシスは,全身性アミロイドーシ スの一つで,リウマチなど慢性炎症疾患に反応性に発生する難治性 の疾患である【6,9】。反応性アミロイドーシスにおける沈着物質は AA アミロイドで,炎症刺激に応じて産生される急性期炎症性蛋白の 一つである SAA が前駆蛋白となり形成されるが【25】,慢性炎症性 疾患により起こる血中SAA 濃度の持続的な高値が原因として注目さ れているものの詳細な発症機構は不明である。反応性アミロイドー シスと同様に AA アミロイドの沈着を引き起こすアミロイドーシス

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には家族性地中海熱やMuckel-Wells 症候群があるが,反応性アミロ イドーシスと同様に持続的に血中SAA 濃度が高値である他詳細な発 症機構は明らかにされていない。しかしマウスにおいては,カゼイ ンなどの炎症刺激物質の約 1 ヶ月に渡る反復投与により,脾臓や腎 臓に AA アミロイドを沈着させる事が可能で,実験的 AA アミロイ ドーシスとして報告されている【13,21,23】。また,マウスの実験的

アミロイドーシス作成過程において,Amyloid Enhancing Factor (AEF)を炎症刺激と併せて投与することで,アミロイドを沈着さ せるまでに要する期間を約 1 から 2 週間ほどに短縮できる事も報告 されている【2,15】。AEF の本態は不明であるが,合成繊維【8,14】 や変性させた絹【16】,脾臓混濁液上清【30】などが AEF として報 告されているほか,近年,マウスより抽出した AA アミロイドもマ ウスに対して AEF として作用すると報告された【20】。更に,ウシ から抽出した AA アミロイドが,種の壁を越えて,経口投与によっ てもマウスに対してAEF として作用する事が報告された【4】。 AA アミロイドーシスはヒトのみならず,ウシやウマ,鳥類等多く の動物種で発生が報告されている【12,19】。ウシにおいてはヒトの 反応性アミロイドーシスと同様,慢性炎症に続発して AA アミロイ ドが全身諸臓器に沈着する,続発性アミロイドーシスとして認知さ れており,ヒトの反応性アミロイドーシスとウシの続発性アミロイ ドーシスは同様の発症機序が想定されているが詳細は不明である。 ウシ続発性アミロイドーシスの典型的な臨床症状は治療に反応しな い下痢や腎不全及び水腫で,治療法は存在しない。ウシ続発性アミ ロイドーシスにおいて,アミロイドは肝臓,脾臓,腎臓,心臓,副

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腎,甲状腺等,全身諸臓器に沈着する。近年,ウシ続発性アミロイ ドーシスにおいて既知の主要臓器のみならず,骨格筋など食に供さ れる臓器にもアミロイドが沈着している事が報告された【29】。ウシ の続発性アミロイドーシスに特異的な診断法は存在せず,典型的な 臨床症状は病床末期においてのみ現れる事から,臨床症状を呈さな い続発性アミロイドーシス罹患ウシが食肉として処理されている可 能性がある。食肉検査所で食肉として解体されたウシでの報告にお いて,藤永【7】の調査では 1,800 頭中 22 頭,Tojo ら【27】による 調査では302 頭中 15 頭の腎臓にアミロイドの沈着が認められたと報 告されている。よって,続発性アミロイドーシス罹患ウシにおいて, アミロイドの沈着が骨格筋にも観察される事を併せて考えると,ヒ トが食肉を通じてアミロイドを摂取している可能性がある。ウシ由 来AA アミロイドの AEF 効果はマウスにおいて確認されているのみ で,ヒトを含めた他動物種においては確認されていない。そこで, ウサギを用いてウシ由来AA アミロイドの AEF 効果の有無を検索す るため, ウシ由来 AA アミロイド投与による兎の実験的アミロイド ーシスに必要な諸条件を検索し(第1 章),ウシ由来 AA アミロイド の静脈内投与よる兎の実験的アミロイドーシスを作出し(第 2 章), ウシ由来AA アミロイドが経口投与時においても,AEF として作用 するかを検索する事で(第 3 章),AA アミロイドーシスに関する研 究を行った。

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1 章

牛アミロイド投与による兎の実験的アミロイドーシス 発症に要する諸条件の検索

(9)

緒言 ウサギにおける実験的アミロイドーシスは,月に一回LPS を皮下 投与する事により,約一年で AA アミロイドーシスを発症させる事 ができる系が報告されている【1】。しかし,アミロイドーシス発症 までに要する時間が約一年と長期に渡るため,ウシ由来 AA アミロ イドがAEF 効果を持つか否かの判定を行うには不向きである。ウサ ギに比べて,マウスにおける実験的アミロイドーシスはカゼイン投 与による炎症刺激を用いる場合には連日【11】,FCA 投与による炎 症刺激を用いる場合は1 週間おき【21】の反復した炎症刺激により, 約 4 週間程度でアミロイドを沈着させる事ができると報告されてい る。マウスにおけるAEF 投与による実験的アミロイドーシスにおい ても同様に,炎症刺激をどの物質を用いるにせよ,集中的な炎症刺 激を用いている【2,4,8,14-16,20,30】。そこで本章では,ウサギに対 してマウスと同様に短期間に集中的な炎症刺激を与える手法を用い て,様々な炎症刺激物質や刺激方法を用い,ウシ由来 AA アミロイ ドを併せて投与して観察する事で,ウシ由来AA アミロイドの AEF 効果の有無を探ると共にどのような実験プロトコールがウサギにお いて最適であるかを検討した。

(10)

材料と方法 動物 日本白色種ウサギ計 312 羽(ジャパンラム)と,研究用抗血清作 成に用いられたが一般状態の悪化などの理由により廃用譲渡された 日本白色種ウサギ計38 羽(富士レビオ帯広研究所),総計 350 羽を 用いた。ウサギの一般状態には特に異常なものは観察されなかった が,中手骨付近の接地部に潰瘍を形成する“Sore Hock”(SH)【18】 と呼ばれる疾病が全350 例中 25 例に認められた。使用した兎の入手 形態と足の状態によって分類した一覧を表に示す(表 2)。ウサギは コンベンショナルな環境下で個別のケージにて飼育し,ボトルに入 れた水道水とウサギ用固形飼料CR-3(日本クレア)を自由摂取させ た。 アミロイドの精製 続発性アミロイドーシスと組織学的に診断されたホルスタイン種 の腎臓から,Pras ら【22】によって報告されている水抽出法に従っ てアミロイドを抽出した。まず,組織を0.15M の食塩水中でホモジ ェナイズし,46,600 X g ,4℃下で 20 分遠心を行い,上清を廃棄し た。この過程を上清の吸光度(280 nm)が 0.20 以下になるまで繰 り返した。次に上清廃棄後の沈渣を冷蒸留水中でホモジェナイズし, 46,600 X g ,4℃下で 20 分遠心を行い,上清を回収した。この操作 を4 回繰り返し,2 回目から 4 回目に得た上清を 100,000 X g ,4℃ で 1 時間遠心を行い,上清を廃棄してアミロイドが主体となる沈渣

(11)

を回収した。沈渣はコンゴーレッド染色でエメラルドグリーンの偏 光を示した。沈渣はその後湿重量20mg/ml で蒸留水中に溶解し,実 験に使用するまで4℃で保存した。 アミロイド投与実験操作手順 マ ウ ス に お け る 実 験 的 ア ミ ロ イ ド ー シ ス の 報 告 【2,4,8,14-16,20,30】を参考に実験を行った。実験の概略はウサギに 対して 2 から 4 週間集中して反復した炎症刺激を与え,その前後に 上述したアミロイド溶液(20mg/ml)を投与することで行った(表 3)。 炎症刺激に用いた物質はフロイント・コンプリート・アジュバント (FCA, Calbiochem),1%硝酸銀溶液,10%カゼイン溶液,血清型 別O:111 B:4 大腸菌由来 LPS(Wako)で,単独或いは組み合わせて 使用した。また,単純に炎症刺激物質の投与を行った実験に加え, 足への処置を行った後に炎症刺激物質を投与した実験も行った。足 への処置は膝関節への炎症刺激物質の投与,足底部への炎症刺激物 質の投与,或いは足底部の脱毛によって行った。アミロイド投与 1 ~30 日後に麻酔下放血殺により剖検を行った。 以上の動物実験は帯広畜産大学動物実験委員会の承認の下に行わ れた。 組織学的検索 剖検時,脾臓と腎臓の組織を採取して15%ホルマリン中で固定し た。固定した組織は,常法に従ってパラフィン包埋して4μm 切片を 作成した。切片はH.E.染色し組織学的な観察を行い,アミロイド沈

(12)

着の有無を確かめた。腎臓或いは脾臓のどちらかにでもアミロイド が沈着していた個体をアミロイド沈着例とした。

(13)

結果 全350 例中 30 例にアミロイドの沈着を認めた。実験に用いたウサ ギの種類別では,新規購入したウサギでは全 312 例中 9 例,うち非 SH 罹患ウサギでは 294 例中 7 例,SH 罹患ウサギで 18 例中 2 例に, 廃用譲渡されたウサギでは全38 例中 21 例,うち非 SH 罹患ウサギ で 31 例中 15 例,SH 罹患ウサギで 7 例中 6 例にアミロイドの沈着 を認めた(表2)。炎症刺激に主に用いた物質による分類では,FCA で全 99 例中 5 例,硝酸銀で 41 例中 2 例,カゼインで全 87 例中 8 例,LPS で全 123 例中 15 例にアミロイドの沈着を認めた(表 3)。 特に廃用譲渡されたウサギに対してカゼインを主に投与したもので は 14 例中 5 例,LPS を主に投与したものでは 12 例中 12 例,にア ミロイドの沈着を認めたが,無処置の新規購入したウサギではカゼ インを主とした実験例,LPS を主とした実験例共にアミロイド沈着 固体は観察されなかった。足への処置を行った例では127 例中 7 例 にアミロイドの沈着を認めた。

(14)

考察 本章で行った実験では,全350 例中 30 例にアミロイドの沈着を認 めた。よって,本章ではアミロイド非投与群を設けていないものの, アミロイド投与した実験例でアミロイド沈着が認められない固体が 多い事を考えると,被検体の条件によっては,ウシ由来 AA アミロ イドがAEF として作用する可能性があることが示唆された。 実験例を入手形態で見ると,新規購入した個体ではアミロイドの 沈着が確認できたのは 312 例中 9 例にとどまる一方,廃用譲渡され た個体では 38 例中 21 例と比較的高率にアミロイドの沈着が認めら れた。また足の状態により実験例を見ると,SH に罹患していた個体, 全25 例中 8 例にアミロイドの沈着が認められた。更に購入形態と足 の状態を合わせて見ると,廃用譲渡され SH に罹患していた個体 7 例中 6 例と高率にアミロイドの沈着が認められた。廃用譲渡された ウサギは抗血清作成に用いられていたため,事前に複数回の抗原を 投与されていた。よって,SH の罹患とアミロイド投与前の炎症刺激, という 2 つの条件がウシ由来 AA アミロイド投与によるウサギの実 験的アミロイドーシスに重要な条件であると考えられた。 SH は,飼育ケージの床に用いられるワイヤーメッシュによって生 じる擦過傷や体重過多,黄色ブドウ球菌の感染等様々な要因によっ て生じると報告されているが,その発症機序は不明である【3,10,18】。 SH に類似した病態を想定し,足へ種々の処置を行った後炎症刺激を 与える事でアミロイドを沈着させる事を試みたが 127 例中 7 例 (5.5%)にとどまり,足へ処置を加える事が SH の罹患に代替でき

(15)

る可能性が示されたが,現時点では沈着率は低く,実験手法の検討 の余地が残った。 実験に用いた炎症刺激物質による沈着例は,それぞれ主とする炎 症刺激物質が FCA の実験例では 99 例中 5 例(5.0%),硝酸銀では 41 例中 2 例(4.9%),カゼインでは 87 例中 8 例(9.2%),LPS で は 123 例中 15 例(4.1%)であり,炎症刺激物質によるアミロイド の沈着率に大きな差はなかった。しかし,廃用譲渡されたウサギに 限って見てみると,カゼインでは14 例中 5 例(35.7%),LPS では 12 例中 12 例(100%)と高い沈着率を示した。よってアミロイドの 沈着率は炎症刺激物質の選択によっても変わってくる可能性が考え られた。一方,無処置の新規購入したウサギに対してカゼイン或い は LPS を主とした炎症刺激による実験例では合わせて 86 例ではア ミロイドの沈着が確認されなかった事から,単純な反復した炎症刺 激だけではウシ由来 AA アミロイドの投与を行っても,ウサギにア ミロイドを沈着させるには不十分であり,SH の罹患などその他の条 件が必要となる事が考えられた。

(16)

小括

ウシ由来AA アミロイドはウサギに対しても AEF として作用する

可能性が示唆された。また,ウサギの実験的アミロイドーシスを作

出する際には,アミロイド投与前に炎症刺激を与えておく事と,SH

(17)

2 章

牛アミロイドの静脈内投与による兎の実験的 アミロイドーシス

(18)

緒言 第1 章においてウサギに対するウシ由来 AA アミロイドの AEF 効 果の有無を様々な方法で検討した結果,ウシ由来 AA アミロイドに はAEF として作用する可能性が示された。しかし,ウシ由来 AA ア ミロイド投与により実験的にアミロイドーシスをウサギに誘発する ためには,SH の罹患とアミロイド投与前の炎症刺激,という 2 つの 条件が重要であると考えられた。足に対して炎症刺激物質を投与す る事や足底部を脱毛する事で,SH の罹患に類似した効果を作出し, 炎症刺激とアミロイド投与を合わせる事で,アミロイドを沈着させ る事ができる可能性が示唆されたが,アミロイドの沈着率は低く, その実験手法には検討の余地が残った。そこで,足へ処置を加える 事で完全に実験的なウシ由来 AA アミロイド投与によるウサギの実 験的 AA アミロイドーシス確立を目指す前に,実験動物取り扱い業 者にSH 罹患ウサギを収集してもらい,SH 罹患ウサギに対して炎症 刺激と併せてアミロイドを投与することで実験を行い,ウシ由来AA アミロイドのAEF 効果の有無を検索した。

(19)

材料と方法 動物 実験に用いたウサギは SH に罹患している非近交系日本白色種ウ サギ雌45 羽(ジャパンラム)と非 SH 罹患非近交系日本白色種ウサ ギ雌12 羽の,体重が 2.8 から 3.2kg の成ウサギを用いた。全てのウ サギの一般状態は良好であった。ウサギはコンベンショナルな環境 下で個別のケージにて飼育し,ボトルに入れた水道水とウサギ用固 形飼料CR-3(日本クレア)を自由摂取させた。 アミロイド投与実験操作手順 ウシ由来AA アミロイドが AEF としての作用を有するかを調べる ためにA・B 群,AEF 誘発実験的ウサギアミロイドーシスに必要な 条件を探るために C・D 群の計4群にウサギを分けて実験を行った (表 4)。すなわち,A 群(

n=

18)と B 群(

n=

9)には SH 罹患ウ サギを用い,5 回の炎症刺激を与えた後 A 群にはアミロイドの投与 を行い,B 群にはアミロイドを投与しなかった。 C 群(

n=

9)には 非SH 罹患ウサギを用い,5 回の炎症刺激を加えた後アミロイドを投 与し,SH 罹患という条件が必要かどうかを調べた。D 群(

n=

15) にはSH 罹患ウサギを用い,更に D-0 群から D-4 群までの 5 つの小 群(

n=

3)に分けた。D 群では小群番号に応じた回数の炎症刺激をそ れぞれ与えた後にアミロイドを投与することで,必要な炎症刺激の 回数を調べた。 炎症刺激はフロイント・コンプリート・アジュバント(FCA,

(20)

Calbiochem)と 200μg の血清型別 O:111 B:4 大腸菌由来 LPS(Wako) で作成した乳剤1ml を,4 日おきに皮内投与することで与えた。 アミロイドは第 1 章で使用したアミロイド溶液(湿重量20mg/ml) を用い,投与はD-0 群を除いて,最終炎症刺激時に 1ml のアミロイ ド溶液を耳静脈内に投与することで行った。 A 群はアミロイド投与後 1 日目(

n=

3),3 日目(

n=

5), 6 日目(

n=

7), 8 日目(

n=

3)に,B 群は最終炎症刺激後 1 日目(

n=

3),3 日目(

n

3), 6 日目(

n=

3)に,C 群はアミロイド投与後 1 日目(

n=

3),3 日目(

n=

3),6 日目(

n=

3)に,D 群においては全ての小群でアミ ロイド投与後3 日目に,麻酔下放血殺により剖検を行った。加えて, 実験開始時に 3 羽の SH 罹患ウサギと 3 羽の非 SH 罹患ウサギを剖 検し,アミロイドの沈着がないことを確かめた。 以上の動物実験は帯広畜産大学動物実験委員会の承認の下に行わ れた。 組織学的,免疫組織学的検索 剖検時,脾臓と腎臓の組織を採取して15%ホルマリン中で固定し た。又一部の材料については生材料を10 倍希釈ルゴール液に浸して 観察した。固定した組織は,常法に従ってパラフィン包埋して 4μm 切片を作成した。切片はH.E.染色とパトラーのアルカリ CR 法にて 染色して組織を観察すると共に,偏光顕微鏡での観察も行った。腎 臓と脾臓におけるアミロイド沈着の程度はH.E.染色下の観察で,軽 度のアミロイドの沈着が観察されるもの(1+),中等度の沈着が観察 されるもの(2+),重度の沈着が観察されるもの(3+)に分類した。

(21)

H.E.と CR 染色のほか,抗ヒト AA マウスモノクローナル抗体(1: 500,Kyowa)を一次抗体として Envision+ kit(Dako)を用いて免 疫組織学的染色を行った。

(22)

結果 剖検時の肉眼的な観察では,アミロイドが沈着していた腎臓は最 大で通常の約2 倍ほどに腫大,黄褐色に褪色し硬度を増しており(図 1),ヨード反応に陽性で沈着部位は黒褐色に変色した(図 2)。同様 にアミロイドが沈着していた脾臓も通常の2~3 倍ほどに腫大してお り(図1),ヨード反応に陽性であった(図 3)。一方,アミロイドが 沈着していなかった脾臓も髄外造血のため腫大していたが,ヨード 反応陰性であった。 組織学的な観察によって,全 57 例中 19 例でアミロイドの沈着を 脾臓と腎臓の両方或いはいずれか一方に確認した(表 4)。A 群では 全ての個体にアミロイドの沈着を認め,アミロイド投与後 1 日目で は脾臓(3/3),腎髄質(1/3)にアミロイドが沈着し,3 日目では脾 臓(4/5)腎臓(皮質 4/5,髄質 5/5,計 5/5),6 日目では脾臓(5/7) 腎臓(皮質3/7,髄質 5/7,計 5/7),8 日目では脾臓(3/3)腎臓(皮 質2/3,髄質 3/3,計 3/3)にアミロイドの沈着を認めた(表 5)。 脾臓におけるアミロイドの沈着は,ほぼ濾胞辺縁に観察された(図 4a)。腎皮質においては糸球体に(図 5a),腎髄質では間質にアミロ イドの沈着が観察された(図 5b)。A 群以外の個体では D-4 群のウ サギ 1 例の脾臓に軽度のアミロイドの沈着を認めた。沈着していた アミロイドは CR 染色標本の偏光顕微鏡での観察において緑色偏光 を示し,免疫染色で陽性反応を示した。以上の個体を除いては,実 験開始時に確認のために剖検を行った無処置の SH 罹患ウサギと非 SH 罹患ウサギを含め,脾臓と腎臓においてアミロイドの沈着は観察

(23)
(24)

考察 本研究では,SH 罹患ウサギに対して 5 回の炎症刺激を加えた後ア ミロイドを投与した A 群全例で,アミロイドの沈着を確認した。一 方アミロイドを投与しなかった B 群ではアミロイドの沈着は観察さ れなかった。この結果により,粗精製したウシ由来 AA アミロイド がウサギに対してAEF 類似の作用を有している事が示唆された。 マウスにおける実験的なAA アミロイドーシスモデルでは,1 回か ら複数回の炎症刺激に併せたAEF の投与により,約 1 から 2 週間で ア ミ ロ イ ド の 沈 着 が 確 認 さ れ る 事 が 報 告 さ れ て い る 【2,4,8,14-16,20,30】。それに対して非 SH 罹患ウサギは,5 回の炎 症刺激後にアミロイドを投与してもアミロイドの沈着は観察されな かった。同様に,SH 罹患ウサギに対してアミロイドを投与しても, 事前の炎症刺激が 3 回以下であった場合にはアミロイドの沈着は観 察されなかった。これらの結果は,SH に罹患している事と一定回数 以上の炎症刺激を加えるという特定の条件が,ウサギにおいてアミ ロイドーシスを実験的に誘発するためには必要であり,アミロイド 発症に必要な条件はマウスでの報告のように単純なものではない事 が示唆された。本研究ではウシ由来 AA アミロイドが,ウサギに対 してAEF に類似した作用を有している事を明らかにしたが,この事 はマウス以外の動物種に対してもウシ由来AA アミロイドが AEF 作 用を持ちえるという可能性を示している。続発性アミロイドーシス 罹患ウシにおけるアミロイド沈着の体内分布【29】や,食肉検査場 でのウシ腎臓のアミロイド沈着率【7,27】などから,ヒトはウシ肉

(25)

の摂取等を通じてアミロイドを摂取している可能性がある。もし仮 にウシ由来AA アミロイドがヒトに対して AEF 作用を持つならば公 衆衛生上の重大な問題になりえるが,本研究において複数の発症条 件が必要であったように,アミロイドの摂取単独では直接的な危険 因子にはならない可能性もあると考えられた。 AA アミロイドの前駆蛋白は炎症刺激に応じて産生される急性相 蛋白であるSAA であり,反応性アミロイドーシスは慢性炎症に経発 するものと一般的に考えられている。しかし,全ての炎症性疾患が 反応性アミロイドーシスを引き起こすわけではなく,ヒトにおける 反応性アミロイドーシスは,数多くある炎症性疾患の中でもリウマ チ性関節炎罹患者に多発する【6,9】。本研究ではウサギの SH 依存性 の実験モデルを示したが,水禽類の自然発生 AA アミロイドーシス は SH 類似の疾患である足底部の壊死性皮膚炎である趾瘤症罹患例 に多く観察されると報告されている【5】。リウマチ性関節炎や SH, 趾瘤症には共通した AA アミロイドーシスの病因が存在している可 能性がある。 全てのリウマチ性関節炎患者が反応性アミロイドーシスを発症す るわけではなく,一部の患者が発症するという事が報告されている 【17,26】。同様に,本研究では SH 罹患ウサギの中でも事前に複数 回の炎症刺激を与え,アミロイドを投与するという特定の条件を与 えた個体にのみ,アミロイドの沈着が確認された。リウマチ性関節 炎と SH は異なる疾病であり単純に同列に扱う事はできないが,リ ウマチ性関節炎或いは SH を罹患しているものの一部にアミロイド ーシスが発症或いはアミロイドの沈着が起きるという点で類似して

(26)

いる。よって,本研究の SH 罹患ウサギを利用した実験的アミロイ ドーシスモデルは,ヒトの AA アミロイドーシスに関する病因学的 研究に有用であると考えられた。加えて,ウサギはある程度の量の 血液を連続的に採取できるという利点がある。この利点もいまだ詳 細な病理発生が不明である AA アミロイドーシスの研究に役立つも のであると考えられた。 本研究では,アミロイドの沈着は脾臓の沈着を経て腎臓に沈着し て行くという傾向が窺えるものの,脾臓と腎臓におけるアミロイド 沈着の変遷や沈着の程度の変化は明瞭に観察する事はできなかった。 この結果は,実験に用いたウサギが自然発生の SH 罹患ウサギであ り, SH の程度を含めて個々の状態が均一でなかったことによるも のであると考えた。経時的な病変の移り変わりを検索するために, 自然発生 SH に依存しない実験的ウサギアミロイドーシスモデルを 開発して行く必要性がある。加えて,アミロイドーシスの病理発生 を明らかにして行くためにも,脾臓と腎臓以外の全身所臓器におけ るアミロイド沈着を,実験的に確かめる必要がある。

(27)

小括

SH に罹患し一定回数の炎症刺激を与えたウサギに対して,ウシ

由来 AA アミロイドは静脈内投与によりアミロイドーシスを誘発す

(28)

3 章

牛アミロイドの胃内投与による 兎の実験的アミロイドーシス

(29)

緒言 第2 章では,SH に罹患し一定の炎症刺激を与えたウサギに対して, ウシ由来粗精製アミロイドは静脈内投与によりアミロイドーシスを 誘発する作用を有している事を明らかにした。しかし自然状態でウ シ由来 AA アミロイドを静脈内に直接摂取する事態は起こり難い。 自然状態で起こり得るのは経口摂取であるが,経口投与と静脈内投 与では肝臓における初回通過効果の有無など薬物の投与後動態に大 きな差があり,その薬効にも差が出てくる。マウスにおいては経口 投与によってもアミロイドの AEF 作用が確かめられているが【3】, ウサギを含めて他動物種においては確認されていない。ウサギにお いてもウシ由来AA アミロイドが経口投与によっても AEF に類似し た作用を発揮するかどうかは,ウシ由来 AA アミロイドのヒトに対 する危険性を考える上で重要である。よって本章では,ウシ由来AA アミロイドを胃内投与する事で,そのアミロイドーシスを誘発する 作用を確かめる研究を行った。

(30)

材料と方法 動物 実験に用いたウサギは非近交系日本白色種ウサギ,体重 2.8 から 3.2kg の成ウサギ 36 羽(ジャパンラム)で,内 24 羽は SH 罹患ウ サギ,内12 羽は非 SH 罹患ウサギを用いた。全てのウサギの一般状 態は良好であった。ウサギはコンベンショナルな環境下で個別のケ ージにて飼育し,ボトルに入れた水道水とウサギ用固形飼料 CR-3 (日本クレア)を自由摂取させた。 アミロイド投与実験操作手順 A 群(

n=

12),B 群(

n=

12),C 群(

n=

12)の実験群を設定した。 A 群と B 群は SH 罹患ウサギ,C 群は非 SH 罹患ウサギで構成した。 全群のウサギに対し5 回の炎症刺激を与え,A 群と C 群のウサギに のみアミロイドを投与し,B 群のウサギにはアミロイドは投与しな かった。アミロイド投与後も炎症刺激は与え続けた。 炎症刺激は第1 章と同様,FCA(Calbiochem)と 200μg の血清型 別 O:111 B:4 大腸菌由来 LPS(Wako)で作成した乳剤 1ml を,4 日おきに皮内投与することで与えた。 アミロイドの投与は麻酔下でカテーテル(Terumo)を胃内に挿入 し,第1 章で用いたアミロイド溶液(湿重量 20mg/ml)を蒸留水で 5 倍に希釈した溶液を 5ml 投与する事で行った。 A 群と C 群はアミロイド投与後,B 群は最終炎症刺激後 1 日目 (

n=

3),4 日目(

n=

3), 7 日目(

n=

3), 12 日目(

n=

3)に麻酔下

(31)

放血殺により剖検を行った。 以上の動物実験は帯広畜産大学動物実験委員会の承認の下に行わ れた。 組織学的,免疫組織学的検索 剖検時,脾臓と腎臓の組織を採取して15%ホルマリン中で固定す ると共に, 10 倍希釈ルゴール液に浸す事でアミロイド沈着の有無を 確かめた。固定した組織は,常法に従ってパラフィン包埋して 4μm 切片を作成した。切片はH.E.染色とパトラーのアルカリ CR 法にて 染色して組織を観察すると共に,偏光顕微鏡での観察も行った。腎 臓と脾臓におけるアミロイド沈着の程度はH.E.染色下の観察で,軽 度のアミロイドの沈着が観察されるもの(1+),中等度の沈着が観察 されるもの(2+),重度の沈着が観察されるもの(3+)に分類した。 第 1 章と同様,抗ヒト AA マウスモノクローナル抗体(1:500, Kyowa)を一次抗体として免疫組織学的染色を行った。

(32)

結果 剖検時の肉眼的な観察では,A 群全例の脾臓或いは腎臓もしくは 両方で,ヨード反応に陽性であったが,B 群と C 群のいずれの個体 にもヨード反応陽性となる脾臓と腎臓は観察されなかった。 組織学的な観察によって,A 群においては全例でアミロイドの沈 着を脾臓と腎臓の両方或いはいずれか一方に確認した(表 5)。A 群 では全ての個体にアミロイドの沈着を認め,1 日目では脾臓(3/3), 腎(0/3)にアミロイドが沈着し,4 日目以降では脾臓(9/9)腎臓(9/9), にアミロイドの沈着を認めた(表 6)。組織学的にアミロイドの沈着 は第 1 章での結果と同様,脾臓においては濾胞辺縁に,腎皮質にお いては糸球体に,腎髄質では間質に観察された 沈着していたアミロイドは CR 染色標本の偏光顕微鏡での観察に おいて緑色偏光を示し,免疫染色で陽性反応を示した。

(33)

考察 A 群では全ての個体にアミロイドの沈着を確認し,B 群の個体で はアミロイドの沈着は確認されなかった。この結果は経口摂取した 場合においても,粗精製したウシ由来 AA アミロイドが,マウス以 外の動物種であるウサギに対しても,AEF 類似の作用を有している 事を示唆している。 本研究では 5 倍に希釈してあるものの,第 1 章で静脈内投与に用 いた量と同量のアミロイドを胃内投与した。剖検を行った時期に若 干相異があるものの,投与経路が異なっても,アミロイドの沈着は 脾臓から沈着してゆくという傾向が第 1 章と同様におぼろげながら 観察された。この結果は,AA アミロイドーシスの発症に脾臓が関わ っている可能性を示している。 ヒトは食事を通してウシ由来の AA アミロイドを摂取している可 能性があるが,本研究のウサギのように特定の条件下にあるヒトが アミロイドを摂取する事で,アミロイドーシスを発症する可能性は 排除できない。ヒトに対してアミロイドの投与実験を行う事はでき ないが,今後,マウスやウサギ以外の動物種においてもウシ由来AA アミロイドの持つAEF 作用を検討してゆく事で,ヒトに対する危険 性を明らかにしてゆく必要性があると考えられる。同時に,ウシ由 来 AA アミロイドの最小有効量を検討する事も必要となる。マウス においては数 ng から【20】,マウス由来 AA アミロイドが静脈内投 与でAEF として作用すると報告されているが,ウサギにおいてもウ シ由来AA アミロイドが AEF としての作用を発揮する量を経口投与

(34)

においても検討しなくてはならない。しかし,非 SH 罹患ウサギで 構成された C 群ではアミロイド沈着が観察されなかったように,本 研究で示したウサギにおける実験的アミロイドーシスモデルは自然 発症 SH に依存しているため,アミロイドが沈着していない結果が 出たときに,それが投与量の不足であるか否かを判定する事ができ ない。最小有効中毒量を検討するという観点からも,今後自然発生 SH に依存しない実験モデルを作出する事が必要であると考えられ た。

(35)

小括

SH に罹患し一定の炎症刺激を与えたウサギに対して,ウシ由来粗 精製アミロイドは経口投与によりアミロイドーシスを誘発する作用 を有する事が示唆された。

(36)

総括 第 1 章では粗精製したウシ由来 AA アミロイドが,ウサギに対し て AA アミロイドーシスを誘発する作用を持つ可能性が示唆される と共に,発症には複数の条件が必要である事が示唆された。第 2 章 では SH の罹患と一定回数以上の炎症刺激を与えるという特殊な条 件下にあるウサギに対してウシ由来 AA アミロイドが静脈内投与さ れる事で AA アミロイドーシスを誘発する作用を持つという事が示 唆された。第 3 章では胃内投与した際でも,ウシ由来アミロイドが アミロイドーシスを誘発する作用を持つという事を明らかにした。 マウス以外の動物種であるウサギにおいてもウシ由来 AA アミロイ ドがAEF 類似の作用を有している事は,ヒトが食事を通じてアミロ イドを摂取している可能性がある事から公衆衛生上重大な問題とな り得る。ウシ由来 AA アミロイドの有する作用は,今後とも研究を 続けて行く必要がある。また,反応性アミロイドーシスに代表され るヒトの AA アミロイドーシスはその発症機序が不明であり治療法 も存在しない。AA アミロイドーシスはその前駆蛋白である SAA の 分解機序,アミロイドという異状蛋白になった際の分解機序などが 機能しなくなる事が原因ではないかと目されているが,本研究で明 らかにしたウサギの実験モデルはマウスと異なりある程度の血液を 経時的に採血できるという利点があり,今後 AA アミロイドーシス 自体の発症機序を研究する上で有用である。 プリオン病に代表される,病原性を有する蛋白質,という概念は, 比較的一般に受け入れられている新しい概念であるが,病因の本態

(37)

が蛋白質に存在するのか否かについては,未だに決着がついていな

い。本研究で明らかにしたウサギの実験的 AA アミロイドーシス誘

発モデルは,自然発生のSH 依存による系であるなど欠点があるが,

この系を発展させていく事によって,蛋白質の病原性に関しても研 究が進展して行く可能性が考えられる。

(38)

謝辞 本稿を終えるにあたり,本研究の遂行に際して終始御指導賜りま した帯広畜産大学畜産学部獣医学科病態獣医学講座家畜病理学教室 松井高峯 教授に深謝します。 本稿作成に際し,有益な御助言と御校閲を頂いた帯広畜産大学 猪熊壽 教授,東京農工大学家畜病理学教室 三森国敏 教授,岩 手大学家畜病理学教室 岡田幸助 教授,岐阜大学家畜病理学教室 柵木利昭 教授に深甚なる謝意を表します。帯広畜産大学畜産学部 獣医学科病態獣医学講座家畜病理学教室 古岡秀文 教授,同 古林 与志安 準教授には,なかなか良い結果が出ない時に御助言・御鞭 撻を頂きました事を感謝いたします。

(39)

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(43)

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(44)

要旨 牛由来アミロイド投与による兎の実験的アミロイドーシスに関す る研究を行った。 始めに,日本白色種ウサギ計 312 羽と,研究用抗血清作成に用い られたが一般状態の悪化などの理由により廃用譲渡された日本白色 種ウサギ計38 羽,総計 350 羽を用いて牛由来アミロイド投与による 兎の実験アミロイドーシス成立の諸条件を探った。用いたウサギの 内新規購入したウサギのうち18 羽,廃用譲渡されたウサギの内 7 羽 は足の裏の潰瘍性皮膚炎であるSore-Hock (SH)に罹患していた。実 験は炎症刺激をウサギに与え,炎症刺激に併せて続発性アミロイド ーシス罹患ウシから抽出したアミロイドを投与することで行った。 結果,350 例中 30 例のウサギにアミロイドが沈着しており,特に廃 用譲渡されたウサギで SH に罹患しているウサギ 7 例中 6 例と高率 にアミロイドの沈着が確認された。廃用譲渡されたウサギは事前に 複数回の抗原投与がなされていた事から,アミロイド投与前の炎症 刺激とSH の罹患という二つの条件が重要であると示唆された。 そこで,SH 罹患ウサギにおける,牛由来 AA アミロイド投与に よる兎の実験的アミロイドーシスに関する研究を行った。研究はま ず 2 群に分けられた SH 罹患ウサギに対して 5 回の炎症刺激をフロ イント・コンプリート・アジュバントとリポポリサッカライドの皮 内投与により行い,5 回目の炎症刺激の後に,一方の群にはウシから 抽出したアミロイドを静脈内投与し,他方には投与しなかった。更 に比較のために2 つの群を設定した。3 番目の群は非 SH 罹患ウサギ

(45)

で構成し,5 回の炎症刺激の後にアミロイドを投与した。4 つ目の群 はSH 罹患ウサギで構成し,0 から4回の炎症刺激を加えた後アミロ イドを投与した。SH 罹患ウサギで 5 回の炎症刺激を与え,アミロイ ドを投与したウサギではアミロイドの沈着が観察された(18/18)。4 番目のグループの中で,4 回の炎症刺激を加えた後にアミロイドを投 与した SH 罹患ウサギ 3 例のうち 1 例ではアミロイドの沈着が観察 された。それ以外のウサギではアミロイドの沈着は観察されなかっ た。これらの結果はウシ由来の AA アミロイドが SH 罹患ウサギに 対してアミロイドーシスを誘発する作用を有している事を示してい る。 加えて,同様の実験をアミロイドの胃内投与によって行った。24 羽の SH 罹患ウサギを 2 つの群に分け,全ての個体に 5 回の炎症刺 激を与えた。一方の群にはアミロイドを投与し,他方には投与しな かった。アミロイドを投与した群では全ての個体でアミロイドの沈 着が観察されたが,非投与群ではアミロイドの沈着は観察されなか った。この結果は胃内投与された場合においても,ウシ由来 AA ア ミロイドが SH 罹患ウサギに対してアミロイドーシスを誘発する作 用を有している事を示している。

(46)

Abstract

Herein, I report the experimental amyloidosis of rabbit induced by bovine amyloid fibrils. At first, I attempted several experiments using 350 rabbits. However, rabbits rarely develop AA amyloid depositions (30/350), which had been subjected to a protocol for inducing accelerated experimental AA amyloid in mice by injections of an inflammatory agent and amyloid fibrils, and subsequent injections of the agent were then given at intervals of several days. Meanwhile, I noticed that rabbits with ulcerative pododermatitis (8/25), so-called “Sore Hock” (SH), and rabbits retired from commercial anti-sera production that had been previously stimulated by antigen in Freund’s complete adjuvant (21/38) were more likely to develop amyloid depositions than normal rabbits. Thus, I collected SH-afflicted rabbits for experimental use and attempted to produce experimental rabbit amyloidosis by the protocol in which AEF was given after several stimulations. Two groups of SH-afflicted rabbits were subjected to 5 inflammatory stimulations at intervals of 4 days by intradermal injection of a mixture consisting of Freund’s complete adjuvant and lipopolysaccharide. One group of rabbits was administered amyloid, extracted form cow, in conjunction with the last inflammatory stimulation and the other group was not. For additional control, 2 groups were designed. The third group

(47)

consisted of rabbits without SH, which were subjected to 5 stimulations and were administered amyloid. The fourth group consisted of SH-afflicted rabbits, subjected to 0-4 stimulations and administered amyloid. Amyloid depositions were observed in SH-afflicted rabbits, and was which had been stimulated 5 times and given amyloid (18/18). In the 4th group, only 1 rabbit, which had been subjected to 4 stimulations, showed amyloid depositions. No amyloid depositions were observed in the other rabbits. These results suggest that bovine AA amyloid fibrils have an Amyloid-Enhancing-Factor (AEF) like effect on SH-afflicted rabbits.

In addition, similar experiment was performed by intragastric administration of bovine amyloid fibrils. Twenty-four SH-afflicted rabbits were divided two groups. All rabbits were subjected to 5 inflammatory stimulations at intervals of 4 days by intradermal injection of a mixture consisting of Freund’s complete adjuvant and lipopolysaccharide. One group of rabbits was administered amyloid in conjunction with the last inflammatory stimulation and the other group was not. All amyloid-administrated rabbits showed amyloid depositions and others did not. This result indicates that intragastrically-administrated bovine amyloid fibrils also have an AEF-like effect to SH-afflicted rabbits.

(48)

図1 A 群アミロイド投与後 3 日目剖検時肉眼像。左挿入図に示す正常な腎臓に較べ て著しく腫大し,表面不整,黄褐色に 褪色していた。脾臓も腫大している。 46

(49)

図 2 ヨード反応陽性腎臓。髄質から腎盂にか けて黒褐色に染まっているほか,皮 質では糸球体が点状に黒褐色に染まっ ている。図1と同一の腎臓。 47

(50)

図 3 10倍希釈ルゴール液に浸した脾臓(上) と未処理の脾臓(下)。未処理の脾 臓では特に異状は観察されないが,ヨ ード液に浸す事で濾胞周囲に沈着しているア ミロイドが黒褐色に染め出されている。 48

(51)

図 4 ( a )アミロイド沈着例脾臓 H.E. 染色像(× 40 ) 。 濾胞周囲に好酸性均一無 構造のアミロイドが沈着している。本 例はアミロイドの沈着が重度, 3+ と判定した。 ( b )同抗ヒト AA 抗体を用いた免疫染色像( × 40 ) 。 沈着してるアミロイドは AA アミロイドであると確認された。

ab

49

(52)

ab

図 5 ( a )腎皮質でのアミロイド沈着( × 100 ) 。 糸球体にアミロイドが重度に沈 着している。( b )腎髄質でのアミロイド沈着(× 40 ) 。 間質にアミロイドが重度 に沈着している。 45

(53)

分類 沈着蛋白 前駆蛋白 Ⅰ全身性アミロイドーシス 1.免疫グロブリン性アミロイドーシス AL IgG L鎖 2.反応性アミロイドーシス AA SAA (血清アミロイドA蛋白) 3.家族性アミロイドーシス a.FAPⅠ・Ⅱ ATTR トランスサイレチン b.FAPⅢ AApoAl アポAl c.FAPⅣ AGel ゲルソリン b.家族性地中海熱 AA SAA c.Muckel-Wells症候群 AA SAA d.家族性アミロイドーシス Alys リゾチーム e.家族性腎アミロイドーシス AFibA フィブリノーゲンAα 4.老人性全身性アミロイドーシス ATTR トランスサイレチン 5.透析アミロイドーシス Aβ2M β2-ミクログロブリン Ⅱ限局性アミロイドーシス 1.脳アミロイドーシス a.アルツハイマー型痴呆など Aβ β前駆体蛋白 b.英国型遺伝性痴呆 ABri ABriPP c.遺伝性アミロイド脳出血(type I) ACys シスタチンC d.クロイツフェルト・ヤコブ病 APrP プリオン蛋白 2.内分泌性アミロイドーシス a 下垂体プロラクチン産生腫瘍 APro プロラクチン b 甲状腺髄様癌 ACal プロカルシトニン c 膵島アミロイド&インスリノーマ AIAPP IAPP(アミリン) 3.皮膚アミロイドーシス AD ケラチン 4.角膜アミロイドーシス ALac ラクトフェリン 5.限局性結節性アミロイドーシス AL IgG L鎖 表1 ヒトのアミロイドーシスの分類 (厚生省特定疾患調査研究班新分類一部改変・略) 51

(54)

表 2 第 1 章で使用したウサギの購入形態,足の状態,及びアミロイド沈着の結果 。 入手形態 正常な足 (沈着例 /個体数,沈着率) SH (沈着例 /個体数,沈着率) 計 (沈着例 /個体数,沈着率) 新規購入 7/294 , 2.4% 2/18 , 11 .1% 9/312 , 2.9% 廃用譲渡 15/31 , 48.4% 6/7 , 85.7% 21/38 , 55.3% 計 22/325 , 6.8% 8/25 , 32% 30/350 , 8.6%

(55)

表 3 第 1 章におけるウサギのアミロイド沈着結果。 *は炎症刺激に主に用いた物質を挙げている。 ** 足へ施した処置は足の裏の脱毛,足底部 皮下への炎症刺激物質の投与,膝 関節への炎症刺激物質の投与が含まれる。 入手形態 FCA* (沈着例 /個体数) 硝酸銀 * (沈着例 /個体数) カゼイン * (沈着例 /個体数) LPS* (沈着例 /個体数) 廃用譲渡 4/12 5/14 12/12 新規 0/58 2/41 0/30 0/56 新規(足へ処置) ** 1/29 3/43 3/55 計 5/99 2/41 8/87 15/123

(56)

表 4 第 2 章における実験群,実験経過及び結果。 *剖検日即ちアミロイド投与後経過日数を示す, B 群においては最終炎症刺激後の経過日数を示す。 N.C. は実験開始時に剖 検を行った陰性対照例 アミロイドの沈着 (沈着例数 /動物数 ) 群 動物数 足の状態 炎症刺激数 アミロイドの投与 1* 3 6 8 A 18 SH 5 + (3/3) (5/5) (7/7) (3/3) B 9 SH 5 - (0/3) (0/3) (0/3) C 9 Non SH 5 + (0/3) (0/3) (0/3) D-0 3 SH 0 + (0/3) D-1 3 SH 1 + (0/3) D-2 3 SH 2 + (0/3) D-3 3 SH 3 + (0/3) D-4 3 SH 4 + (1/3) N.C. 3 SH - - (0/3) N.C. 3 Non SH - - (0/3)

(57)

表 5 第 2 章 A 群におけるアミロイド沈着の程度。 腎臓 剖検 日 脾臓 皮質 髄質 1 1+ - - 1 2+ - - 1 2+ - 1+ 3 - - 3+ 3 2+ 3+ 2+ 3 3+ 3+ 2+ 3 3+ 3+ 3+ 3 3+ 2+ 3+ 6 - - 1+ 6 - - 3+ 6 1+ - - 6 1+ - - 6 2+ 2+ 3+ 6 3+ 1+ 2+ 6 3+ 1+ 2+ 8 2+ 1+ 1+ 8 3+ - 2+ 8 3+ 3+ 3+ アミロイド沈着の程度は以下に従って決定した: -,沈着無し; 1+ ,軽度沈着; 2+ ,中等度沈着; 3+ ,重度沈着

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表 6 第 3 章 A 群におけるアミロイド沈着の程度。 腎臓 剖検 日 脾臓 皮質 髄質 1 1+ - - 1 3+ - - 1 2+ - - 4 3+ 3+ 3+ 4 3+ 3+ 2+ 4 3+ 3+ 2+ 7 1+ 3+ 3+ 7 1+ 2+ 3+ 7 2+ - - 12 3+ 3+ 2+ 12 3+ 3+ 2+ 12 1+ 3+ 2+ アミロイド沈着の程度は以下に従って決定した: -,沈着無し; 1+ ,軽度沈着; 2+ ,中等度沈着; 3+ ,重度沈着

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