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貧困アセスメント作成調査報告書

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貧困プロファイル

インドネシア共和国

2001 年 2 月

国際協力銀行

(2)

国際協力銀行環境社会開発室では、初めての試みとして、インドネシア共

和国を対象とした「貧困プロファイル」を作成致しました。この「貧困プロフ

ァイル」は、既存文献/統計資料をもとに、各国毎の貧困・不平等の概況と要

因、政府貧困削減政策、ドナー等の支援状況の概況について纏めたものであり、

本行職員が国レベルでの貧困削減支援策を検討する際の資料とすべく作成され

たものです。

全世界では、依然として約12億人が1日1ドル未満の生活を余儀なくさ

れている絶対的貧困層

1

とされています。1996年に経済協力開発機構・開発

援助委員会(

OECD/DAC)が策定した新開発戦略は、「今なお、10億人以上

の人々が絶対的貧困の中で苦しんでいるが、こうした問題に取り組むことは、

我々先進国に暮らす者達にとって重要な人道的な責務である。

」とし、2015

年までに貧困人口比率を半減することを目標に掲げました。貧困削減が最重要

課題であるとの国際的な合意の下、援助機関は、途上国の貧困削減を目標とし

た、より一層効果的且つ効率的な開発支援を求められております。

国際協力銀行も、1999年12月に発表した海外経済協力業務実施方針

の中で、貧困削減を重点分野の一つと定め、開発途上国における貧困削減支援

のため、経済・社会インフラの整備や産業の育成による持続的な経済成長と、

貧困対策、社会開発等を通じた経済成長の成果の公正な配分の双方を引き続き

支援してゆく方針です。

貧困の要因は、当該途上国毎に多様であり、歴史・社会・文化的背景、自

然環境、経済構造、政治的問題等の諸要因が複雑に絡み合っています。貧困削

減支援を効果的・効率的に実施していくためには、このように多様な貧困要因

を的確に把握・分析した上で、各国の状況に合わせた貧困削減支援が必要です。

1 1998 年時点データ(世銀/IMF/OECD/UN, 2000)による。

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質的・量的拡充に取り組む所存であるところ、皆様方の忌憚のないご意見とご

指導を賜れれば幸いです

2

平 成 1 3 年 7 月

国 際 協 力 銀 行

環 境 社 会 開 発 室 長

畑 中 邦 夫

2本「貧困プロファイル」は、本行内の執務参考に供するとともに対外的にも紹介することを目的として いるもので、本「貧困プロファイル」にある調査結果については国際協力銀行の公式見解を示すものでは ないことをお断りしておきます。なお、本「貧困プロファイル」に係るご照会につきましては、次の問い 合わせ先までご連絡下さい。環境社会開発室社会開発班(電話番号:03-5218-3904)

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目次

第1章 インドネシアの貧困概況 ...1 1−1 貧困の測定基準...1 1−2 貧困人口と不平等度の推移 ...2 1−3 貧困人口の地理的分布...5 1−4 貧困の深度(Depth)、重度(Severity)およびそれらの動態...9 1−5 貧困層の特徴 ... 14 1−5−1 貧困層の類別 ... 14 1−5−2 教育... 16 1−5−3 保健医療... 21 1−5−4 職業... 24 1−5−5 ジェンダー... 27 第2章 インドネシア政府の取り組み... 29 2−1 国家開発計画と政府の貧困政策 ... 29 2−2 マクロ経済 ... 30 2−2−1 経済成長による貧困削減 ... 30 2−2−2 マクロ経済に対する経済危機の影響 ... 31 2−2−3 IMF プログラム... 34 2−3 国家貧困削減政策の概要... 36 2−3−1 貧困削減に関わる中央行政システム... 36 2−3−2 政府の貧困削減戦略 ... 37 2−4 地方分権化の現状... 38 2−5 省庁別の主要な貧困削減関連プログラム... 39 2−6 地域開発プログラム ... 40 2−7 ソーシャル・セーフティ・ネット(SSN)プログラム ... 43 2−8 その他の貧困削減プログラム(マイクロ・クレジット・プログラム) ... 48 2−9 労働関連政策 ... 49 2−10 社会サービス財政 ... 50 第3章 貧困削減のためのパートナーシップ... 51 3−1 パートナーシップの現状... 51 3−1−1 政府とドナーの連携(CGI 会議)... 51 3−1−2 貧困削減戦略ペーパーの策定 ... 52 3−1−3 NGOs と政府、ドナーとの連携 ... 53 3−2 ドナーによる取り組み... 53 3−2−1 ODA 全体の傾向 ... 53 3−2−2 ドナーによる援助の概要 ... 54 3−2−3 ドナー別取り組みの現状... 55 3−3 市民社会による「取り組み」... 58

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別添1:別添資料集... 61 別添2:用語集... 83 別添3:参考文献... 87 別添4:社会経済データマトリックス... 89 図表 図 1-1 都市・農村別貧困層の消費累積分布の比較(1996 年・1999 年 8 月)(%)... 13 図 1-2 小学校と中学校の総就学率の推移(%)... 17 図 2-1 インフレ率の推移(%)... 33 表 1-1 BPS の貧困ライン(月/人/ルピア) ...1 表 1-2 貧困人口および貧困率 ...2 表 1-3 支出階層別、都市部・農村部別の名目および実質的支出の推移(1996-99 年)(ルピア/月)...4 表 1-4 名目および実質農業賃金と農村の価格指数(1996-1999 年)...5 表 1-5 州・地域別の貧困率および貧困人口(1999 年)(千人)...6 表 1-6 州・地域別の貧困人口、貧困率、貧困ランクの推移(1996 年∼1999 年)...7 表 1-7 州別のジニ係数の推移(1993-96 年)...8 表 1-8 州別の都市部における貧困の深度および重度(1993-1999 年) ... 10 表 1-9 州別の農村部における貧困の深度および重度(1993-1999 年) ... 11 表 1-10 都市・農村別貧困層の消費累積分布の推移(1996-1999 年)(%)... 12 表 1-11 貧困の動態マトリックス(パネル世帯の推移:%) ... 13 表 1-12 支出階層別の支出の推移(1998 年 12 月∼1999 年 8 月)(%)... 14 表 1-13 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯状況の特徴 ... 14 表 1-14 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯主の職業(%)... 15 表 1-15 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯の居住環境 ... 15 表 1-16 貧困層と非貧困層の特徴(1999 年)... 15 表 1-17 男女間の教育格差の推移(男子を 100 とした場合の女子の割合)... 16 表 1-18 世帯主の教育レベル別貧困の状況(1999 年2月)(%)... 18 表 1-19 州別および支出階層別の成人識字率(1999 年)(%) ... 18 表 1-20 州別および支出階層別の平均就学年数(1999 年)(年) ... 19 表 1-21 州別および支出階層別の中学校の平均純就学率(1999 年)(%)... 20 表 1-22 保健基本指標... 21 表 1-23 支出階層別の保健基本指標... 22 表 1-24 地域別、乳児死亡率と 5 歳未満児死亡率の推移 ... 22 表 1-25 他近隣諸国との保健基礎指標の比較 ... 23 表 1-26 5 歳未満児の栄養失調の割合(%)... 23 表 1-27 家計支出の支出割合の変化... 24 表 1-28 州別の支出階層別の失業率(1999 年)(%)... 25 表 1-29 州別の支出階層別の不完全就業率(1999 年)(%) ... 26 表 1-30 貧困世帯の主な収入源(1999 年)(%) ... 27 表 1-31 性別・教育レベル別の賃金格差(ルピア)... 28 表 2-1 産業別の雇用人口の推移(%) ... 31 表 2-2 主要産業部門別の名目賃金および実質賃金の増加率(1990-98 年)(%) ... 31 表 2-3 産業部門別の経済成長率(1995-1998 年)(実質 GDP 成長率、%) ... 32 表 2-4 インドネシア政府による労働集約プログラムの概要(億ルピア) ... 47 表 3-1 2000 年 CGI 会議におけるプレッジ額推計(百万 US ドル) ... 54

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ADB Asian Development Bank アジア開発銀行 ASEAN Association of Southeast Asian Nations 東南アジア諸国連合 AusAID Australian Agency for International

Development

オーストラリア国際開発庁

BANGDA Directorate General for Regional Development 内務省地域開発総局 BAPPENAS Badan Perencanaan Pembangunan Nasional 国家開発企画庁 BKKBN Badan Koordinasi Keluarga Berencana

Nasional

国家家族計画調整委員会/人口家族 計画庁

BPS Badan Pusat Statistik 中央統計局

BRI Bank Rakyat Indonesia インドネシア庶民銀行

BULOG Badan Urusan Logistik 食糧調達庁 CCA Common Country Assessment

CGI Consultative Group for Indonesia インドネシア援助国会議 CIDA Canadian International Development Agency カナダ国際開発庁 CLGS: SDP Community and Local Government Support:

Sector Development Program

コミュニティー・地方政府支援開発 センタープログラムローン

CRP Community Recovery Program コミュニティー復興プログラム DHS Demographic and Health Survey 人口保健調査

DPR Parliament 国会

FAO The Food and Agriculture Organization 国連食糧農業機関 GBHN Guidelines of State Policy 国策大綱

GDP Gross Domestic Product 国内総生産

GTZ Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit

ドイツ技術協力公社

HIPCS Highly Indebted Poor Countries 重債務貧困国

IADP Integrated Area Development Program 地域総合開発プログラム IBRA Indonesian Bank Restructuring Agency インドネシア銀行再建庁 IDA International Development Association 国際開発協会

IDT Inpres Desa Tertinggal 後進村向け大統領布告 ILO International Labor Organization 国際労働機関

IMF International Monetary Fund 国際通貨基金 KDP Kecematan Development Project 郡開発プロジェクト KKN Korupsi, Kolusi, Nepotism 腐敗・癒着・縁故主義 KUPEDES Kredit Umum Pedesaan 農村一般クレジット LKMD Lembaga Ketahanan Masyarakat Desa 村落保全委員会 MPR Majelis Perumusyawarantan Rakyat 国民評議会 ODA Official Development Assistance 政府開発援助

OPK Operasi Pasar Khusus 特別市場操作

P3DT Pembangunan Presarana Pendakung Desa Tertinggal

後進村支援インフラプロジェクト

P3T Proyk Penanggulangan Pengangguran Pekerja Terampil

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Impact of the Economic Crisis

PDKMK Proyek Penanggulangan Dempak Kekeringan dan Masalah Ketenaga Keriaan

労働省の農村・都市労働集約プログ ラム

PKSK Proyek Padat Karya Sektor Kehutanan 林業省の都市労働集約プログラム PKT Pengembangan Kwasan Terpadu 村落総合開発プログラム

PMD Pembangunan Masyarakat Desa 内務省村落開発総局 PROPENAS National Development Program 国家開発計画

PRSP Poverty Reduction Strategy Paper 貧困削減戦略ペーパー REPLITA Rencana Pembangunan Lima Tahun 5ヵ年開発計画 SMERU Social Monitoring and Early Response Unit

SPSDP Social Protection Sector Development Program 社会保護セクター開発プログラム SSN Social Safety Net Program 社会的安全網

SUSENAS Survei Social Ekonomi Nasional 社会経済調査 UDKP Unit Desa Kerja Pembangunan 郡開発協議会 UDP Urban Development Program 都市開発プログラム UNDAF United Nations Development Assistance

Framework

UNDP The United Nations Development Programme 国連開発計画 UNICEF United Nations Children’s Fund 国連児童基金 UNSFIR United Nations Support Facility for Indonesian

Recovery

UPP Urban Poverty Program 都市貧困対策プログラム

USAID United States Agency for International Development

米国国際開発庁

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第1章 インドネシアの貧困概況

1−1 貧困の測定基準

インドネシアの中央統計局(BPS: Badan Pusat Statistik)は、社会経済調査(SUSENAS: Survei Social Ekonomi Nasional)のデータに基づき、貧困ラインの設定および貧困ライン以下の人口を設 定している。BPS は、「貧困ライン」を「一人一日 2,100 キロカロリー相当の食糧1と、それ以外の 必需品(衣服・住居・教育・保健・交通等の 25∼27 非食品項目)を得るのに最低限必要な支出水 準」と定義し、都市部と農村部別に総合貧困ラインを定めている。この総合貧困ラインは、 SUSENAS が実施される度に見直されている。なお SUSENAS は、1984 年から 3 年毎に 65,000 世 帯を対象に実施されてきたが、1993 年からは 200,000 世帯に調査対象が拡大された2 表 1-1 BPS の貧困ライン(月/人/ルピア) 貧困ライン(ルピア) 年 都市 農村 1976 4,522 2,849 1978 4,969 2,981 1980 6,831 4,449 1981 9,777 5,877 1984 13,731 7,746 1987 17,381 10,294 1990 20,614 13,295 1993 27,905 18,244 1996 38,246 27,413 2/1996 42,032 31,366 12/1998 96,959 72,780 2/1999 92,409 74,272 8/1999 89,845 69,420

出所:BPS, 2000, Penyempurnaan Metodologi Penghitungan Penduduk Miskin dan Profil Kemiskinan 1999. (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.11 より引用)

BPS による貧困ラインは、インドネシア政府の貧困削減プログラムのための予算配分の基礎資料 として活用されている。しかし、プログラムのターゲティングのためには、貧困人口・地域に関 するより詳細な情報が必要である。そのため、国家開発企画庁(BAPPENAS:Badan Perencanaan Pemban Gunan Nasional)やその他の省庁が貧困削減プログラムのターゲティングを行う場合には、 国家家族計画調整委員会/人口家族計画庁(BKKBN:Badan Koordinasi Keluarga Berencana Nasional) の家計調査によって把握された各世帯の所得水準に関するデータを活用して貧困世帯の数を算出 している。

一方、世銀、AusAID、USAID の支援を受けて設立された共同研究機関である SMERU(Social Monitoring and Early Response Unit)は、貧困世帯調査から割り出した支出額に基づいて、BPS と 同様、一人一日 2,100 キロカロリーの貧困ラインで貧困人口を出している。この測定方法では、 消費食糧について品目別価格、カロリーなどを詳細に算出し、インフレやデフレによる価格調整 なども精密に分析し、調査対象者を特定し反復調査するなど、統計上の誤差を極力抑えながら食 糧貧困人口が算出されている。SMERU の測定手法によれば、1999 年 2 月の一人当たりの最低月 1 インドネシアの食糧バスケット・リストに関しては、別添資料 1-1 を参照されたい。

2 ADB, ADB Poverty Assessment: Indonesia, September 2000. なお、ADB などのドナーも BPS の貧困ライン測定基準を適用して

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額支出額は、都市部では 90,490 ルピア、農村部では 81,184 ルピアとなっている3 1−2 貧困人口と不平等度の推移 インドネシアの貧困人口は、1976 年の 5,420 万人(総人口の約 40%)から 1996 年には 2,249 万人 (同約 11%)へと、絶対数でも対総人口比でも大幅に減少した(表 1-2 参照)。他のアジア諸国に 比べると、貧困削減の幅が大きすぎるという指摘もあり、貧困人口の算出手法については様々な 論議が提起されている。しかし、1976 年から 1996 年の 20 年間にインドネシアの国内総生産(GDP) は約 7%と高い成長率を示すなど、経済発展により貧困人口の削減が達成されてきたことは疑念 の余地が無い。 表 1-2 貧困人口および貧困率 貧困人口(百万人) 貧困率(%) 年 都市 農村 全国 貧困人口 変化(百 万人) 都市 農村 全国 貧困人口 変化(%) 1976 10.0 44.2 54.2 - 38.8 40.4 40.1 - 1978 8.3 38.9 47.2 -7.0 30.8 33.4 33.3 -6.7 1980 9.5 32.8 42.3 -4.9 29.0 28.4 28.6 -4.7 1981 9.3 31.3 40.6 -1.7 28.1 26.5 26.9 -1.7 1984 9.3 25.7 35.0 -5.6 23.1 21.2 21.6 -5.2 1987 9.7 20.3 30.0 -5.0 20.1 16.1 17.4 -4.2 1990 9.4 17.8 27.2 -2.8 16.8 14.3 15.1 -2.3 1993 8.7 17.2 25.9 -1.3 13.5 13.8 13.7 -1.4 1996 7.2 15.3 22.5 -3.4 9.7 12.3 11.3 -2.3 2/1996 9.6 24.9 34.5 13.6 19.8 17.5 12/1998 17.6 31.9 49.5 14.4 21.9 25.7 24.2 6.6 2/1999 15.6 32.4 48.0 -1.4 19.4 25.0 23.4 -0.8 8/1999 12.4 25.1 37.5 -10.5 15.9 20.2 18.1 -4.2

出所:ADB, Poverty Assessment:Indonesia, Final Draft, September 2000, P.62.

しかしながら、1997 年 7 月に始まったアジア通貨・経済危機は、政府財政収支・国際収支の悪化、 インドネシアのルピアの暴落と高いインフレ、失業率の増加など、インドネシア経済の急激な悪 化をもたらした。エルニーニョによる干ばつに伴う米不足もあり、ジャカルタの標準米価格(kg) は 1997 年 7 月の 1,219.8 ルピア4から 1998 年 7 月には 2,500 ルピアと約 2 倍となった5。小麦やガ ソリンなどの各種補助金の削減や廃止に伴って物価が上昇し、特に食料品、食用油、粉ミルクな どの生活必需品の価格上昇と品不足が発生した。1996 年 2 月から 1998 年 12 月の間に、総合指数 におけるインフレ率は 98.64%上昇し、中でも食料品におけるインフレ率は 148.6%も上昇したと

3 SMERU, Measurements of Poverty in Indonesia:1996, 1999, and Beyond, June 2000.なお、SMERU の測定手法によれば、1999 年2

月の貧困率は 27.1%(BPS の測定では 23.5%)である(World Bank, Poverty Reduction in Indonesia:Constructing a New Strategy –Draft, 2000)。

4 2000 年 12 月現在で 1 米ドル=9,510.86 インドネシアルピア。

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報告されている6。さらに、経済危機に伴う景気の後退、特に製造業の低迷は雇用の悪化をもたら し、失業者が増大した。また、都市部の近代部門セクターの悪化は、農業セクターの低迷を引き 起こし、全ての所得階層において所得低下が見られた。 経済危機に伴う社会経済的な影響を把握するために、様々な調査が実施された7。これらの調査結 果によると、貧困人口は 1996 年 2 月の 3,450 万人(17.55%)から 1998 年 12 月には 4,950 万人 (24.23%)と、約 50%上昇したと推計された(表 1-2)。生活必需品、特に食糧品価格の急激な増 加に伴って、1996 年と 1998 年の貧困ラインは、都市部では 153.5%(38,246 ルピアから 96,959 ル ピア)、農村部では 165.5%(27,413 ルピアから 72,780 ルピア)も上昇した(表 1-1)。 表 1-3 は、生活必需品を得るのに最低限必要な一人当たりの支出水準を示したものである。これ によれば、1996 年 2 月から 1998 年 12 月の間に都市部では、下位 40%支出世帯の支出は 0.4%低 下したのに対して、上位 40%の支出世帯の支出においては 13.9%も低下したことが示されている。 すなわち、経済危機は全ての支出階層に社会経済的影響を与えたものの、支出格差や不平等度は あまり拡大せず、むしろ都市部の支出中位以上の比較的裕福な階層が経済危機の影響を強く受け、 支出低下が引き起こされたと言える8 一方、農村部においては、同時期に支出水準が全体で約 6%上昇し、支出下位 40%で約 9%増、 支出中位 40%で約 8%増、支出上位 20%で約 0.9%増と、支出階層が下位になるほど上昇率が増 加する逆進傾向(支出不平等度改善)を示しつつ、いずれの支出階層においても支出水準が上昇 している。これは、ルピア下落に伴う貿易財/非貿易財相対価格変化により、農村部のうち輸出農 業作物生産地域の所得増が、農村部全体の支出水準上昇に貢献しているものと思われる。しかし ながら、各州農村部における生産財及び投入財の貿易財・非貿易財別シェアによっては、農村部 内における相対価格変化に伴う裨益効果に地域間格差が発生した可能性がある。後に見る農村部 における地域別各種貧困データに大きなばらつきが見られるのはこのためと思われる(P.6∼11)。 更に、食料品等生活必需品価格の上昇、補助金撤廃による肥料等投入財価格の上昇、後にのべる 農村部賃金労働者の実質賃金低下(P.4)等の要因により、農村部各支出階層内における支出格差 が拡大している可能性もある。後に見る貧困ライン以下支出階層の消費累積分布において(P.11 ∼12)、経済危機間に貧困ライン以下支出階層グループ内における不平等度が悪化しているのは、 この要因によるものと思われる。

6 BPS, Monthly Statistical Bulletin-Economic Indicators, var. issues, in Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia,

2000.

7 主な調査としては、世界銀行と BPS が行った Nationwide Kecanmatan Rapid Assessment(4,025 郡の質的な影響調査)、UNICEF

と BPS による 100 カ村の家計調査、RAND とインドネシア大学人口問題研究所の Indonesia Family Life Survey 2 +(IFLS2+)、BPS の SUSENAS がある。

8 Siryahadi et al. (2000)の推計では、1996 年 2 月から 1999 年 8 月の間に、下位 20%の支出世帯の支出は約 7%低下したのに対

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表 1-3 支出階層別、都市部・農村部別の名目および実質的支出の推移(1996-99 年)(ルピア/月) 都市部 農村部 支出下位 40% 支出中位 40% 支出上位 20% 全世帯 支出下位 40% 支出中位 40% 支出上位 20% 全世帯 2/1996 46,918 91,576 226,633 100,639 30,552 50,809 100,920 52,696 12/98 92,790 (46,713) 168,249 (84,700) 387,463 (195,058) 181,809 (91,527) 65,970 (33,211) 109,394 (55,071) 202,463 (101,924) 110,601 (55,679) 2/99 98,907 (47,753) 186,599 (90,092) 419,272 (202,430) 198,056 (95,624) 70,697 (34,133) 115,414 (55,414) 212,261 (102,482) 116,893 (56,437) 8/99 97,369 (48,672) 184,030 (91,992) 430,960 (215,426) 198,701 (99,325) 67,379 (33,681) 112,801 (56,386) 217,919 (108,932) 115,603 (57,787) %Change 96-12/1998 97.8 (-0.4) 83.7 (-7.5) 71.0 (-13.9) 80.6 (-9.1) 115.9 (8.7) 115.3 (8.4) 100.6 (0.9) 109.9 (5.7) 12/98-2/99 4.9 (2.2) 9.4 (6.4) 11.2 (3.8) 9.3 (4.5) 2.1 (2.8) 3.1 (0.6) 7.6 (0.5) 4.5 (1.4) 2/99-8/99 -1.6 (1.9) -1.4 (2.1) 2.8 (6.4) 0.3 (3.9) -4.7 (-1.3) -2.3 (1.8) 2.7 (6.3) -1.1 (2.4) 注:( )内の数字は、インフレによる価格調整による実質的支出を示す。

出所:Irawan and Romdiati (2000), P.12. in Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000.

最近の推計によれば、貧困人口は 1999 年 2 月以降、減少傾向にあると指摘されている。表 1-2 は、 貧困人口が 1998 年 12 月に急激に増加した後、1999 年 8 月には、ほぼ 1996 年 2 月のレベルにま で減少したことを示している。1999 年 2 月から 8 月の間に貧困人口は 1200 万人も低下したもの の、この間に経済成長はほとんど見られないことから、経済危機における貧困状態の変化に関し ては更なる詳細な分析が必要とされている9 一方、明るい兆しも見られた。1999 年になると為替相場が落ち着きを取り戻し、それに伴って物 価も安定した。1999 年には食糧品価格が落ち着いたことで 3 月から 9 月にかけてはデフレを記録 するなど、年間を通じたインフレ率も低下した。特に米の価格の引き下げは、貧困層の購買力を 回復させ、貧困削減、ひいては経済の回復をもたらしたと見られる(マクロ経済の動向について は第 2 章を参照)。 また、実質賃金の上昇も、賃金労働世帯の購買力の回復をもたらした。表 1-4 は、1996 年から 1999 年の名目および実質農業賃金と農村の価格指数を示したものである。これによれば、実質農業賃 金は、1997 年の後半から 1999 年の初頭の急激なインフレの結果、38%低下したが、デフレに入 った 1999 年 3 月から回復に向かった。実質賃金は 1999 年 10 月までに経済危機以前の 80%まで 戻している。同様の現象は、工業セクターにおける実質賃金においても見られる10 経済危機がもたらした社会経済的影響から導き出される教訓は以下の 2 点である。第一に、良好 なマクロ経済運営および金融セクターの再生は、マクロ経済のみならず、貧困の削減にとっても 重要課題である。第二に、経済危機による一時的貧困層の急増は、インドネシアにおける脆弱人 口層の大きさを示唆している。そのため、これらの脆弱人口に対する社会保護的メカニズムの確 立が急務であると言われている。

9 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000. 10 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000.

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表 1-4 名目および実質農業賃金と農村の価格指数(1996-1999 年)11 年 月 名目賃金 農村価格 指数 実質賃金 年 月 名目賃金 農村価格 指数 実質賃金 96.02 285.82 247.6 115.44 98.01 354.69 308.4 115.01 96.03 284.99 237.2 120.15 98.02 368.82 340 108.48 96.04 289.04 233.9 123.58 98.03 375.54 352.3 106.6 96.05 291.37 232.9 235.11 98.04 383.59 369.9 103.7 96.06 292.57 232.3 125.95 98.05 399.75 395.5 101.07 96.07 293.76 234.6 125.22 98.06 411.36 437.5 94.02 96.08 299.17 234.5 127.58 98.07 428.23 478.6 89.48 96.09 299.95 234.2 128.07 98.08 442.76 526.2 84.14 96.10 300.94 235 128.06 98.09 466.65 578.9 80.61 96.11 303.14 236.3 128.29 98.10 473.45 566.8 83.53 96.12 305.76 238 128.47 98.11 478.70 568.5 84.2 97.01 310.79 241.9 128.48 98.12 489.15 581.3 84.15 97.02 312.59 243.7 128.27 99.01 503.01 617.2 81.5 97.03 314.11 244.1 128.68 99.02 516.36 625 82.62 97.04 317.20 244 130 99.03 531.84 620.9 85.66 97.05 318.61 244.5 130.31 99.04 544.11 614.1 88.6 97.06 319.87 244.6 130.77 99.05 556.81 607.3 91.69 97.07 320.61 246.9 129.85 99.06 563.98 592.8 95.14 97.08 323.06 250.3 129.07 99.07 569.96 578.2 98.57 97.09 326.91 256.7 127.35 99.08 573.24 564.2 101.6 97.10 329.12 256.7 127.35 99.09 582.53 558.1 104.38 97.11 334.11 275.7 121.19 99.10 587.24 557.7 105.3 97.12 339.96 282.9 120.17 99.11

出所:Farmers Terms of Trade Data, Central Bureau of Statistics.

(ADB, Poverty Assessment:Indonesia, Final Draft, September 2000, P.62 より引用)

1−3 貧困人口の地理的分布 1)都市部と農村部別の貧困人口 都市部・農村部別に経済危機の影響を見ると、都市部の方が農村部より大きな影響を受けた(表 1-2)。1996 年から 1999 年の間に貧困人口の絶対数は、農村部では 31.6%増加したが、都市部では 63.2%増加した12(別添資料 1-2 参照)。その背景としては、次の 2 点が考えられる。第一に、金 融サービスや大企業といったインドネシアの都市型産業が経済危機の出発点であったため、都市 部の近代部門雇用者が大きな影響を受けたこと。第二に、経済危機は、失業の増大とこれに伴う 所得の減少、あるいは名目賃金の上昇をはるかに上回る物価の上昇という形を通して、とりわけ 都市部の食糧事情に大きな影響を与えたためである。食糧の供給があっても、これを賄うだけの 購買力を持たない世帯が、経済危機の結果、都市部を中心に拡大した。特に、経済危機による貧 困層の増加は、最も都市型産業が集中しているジャワ島に深刻な影響をもたらした。

11 なお、本表は ADB の ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000 を引用したが、同資料において農村価格指数が何時

難点の価格を 100 としたものかについては記載されていない。

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2)州別の貧困人口 インドネシアには「開発の進んだ西部インドネシア」対「開発の遅れた東部インドネシア」とい う構図のもとに、種々の経済的・社会的な地域格差が存在する。社会資本等の整備の格差が、経 済格差を引き起こす要因の一つであると考えられる13。表 1-5 は、1999 年の州別・地域別の貧困 率および貧困人口を示したものである。西ジャワ州、中部ジャワ州、東ジャワ州の 3 州は、イン ドネシアにおいて人口が最も集中している州であり、貧困人口の集中している州でもある。これ らの 3 州は、面積では国土の 5%以下に過ぎないものの、全人口の 50%が偏在し、インドネシア の貧困人口の 60%が集中している。また、イリアン・ジャヤ州、マルク州、西ヌサトゥンガラ州、 東ヌサトゥンガラ州の 4 州は面積では国土の 30%を占めており、全人口の 6%が偏在し、貧困率 が最も高く、貧困人口の 10%が居住している。なお、貧困率が最も高い地域はイリアン・ジャヤ 州(55%)で、貧困率が最も低い地域はジャカルタ首都特別地区(4%)である。また、貧困人口 が最も多い地域は東ジャワ州(10 百万人)で、一方貧困人口が最も少ない地域はバリ州(25 万人) である。 表 1-5 州・地域別の貧困率および貧困人口(1999 年)(千人) 都市部 農村部 合計 州/地域 貧困人口 貧困率(%) 貧困人口 貧困率(%) 貧困人口 貧困率(%) スマトラ アチェ 104.7 10.15 497.5 16.3 602.1 14.75 北スマトラ 968.4 18.28 1,004.3 15.49 1,972.7 16.74 西スマトラ 237.4 18.23 364.1 11.24 601.5 13.24 リアウ 142.7 9.06 447.0 16.95 589.7 14.00 ジャンビ 176.9 22.35 500.1 28.59 677.0 26.64 南スマトラ 566.3 23.99 1,247.4 23.32 1,813.7 23.53 ベンクル 97.7 22.01 204.6 18.88 302.3 19.79 ランプン 307.2 24.03 1,730.0 30.24 2,037.1 29.11 ジャワ ジャカルタ首都特別地区 379.6 3.99 - - 379.6 3.99 西ジャワ 4,279.0 21.15 4,114.5 18.53 8,393.4 19.78 中部ジャワ 3,032.2 27.80 5,723.2 28.82 8,755.4 28.46 ジョクジャカルタ特別地区 482.7 23.81 306.4 30.79 789.1 26.10 東ジャワ 3,047.5 24.69 7,238.9 32.10 10,286.4 29.47 ヌサトゥンガラ バリ 114.5 9.42 143.3 7.94 257.8 8.53 西ヌサトゥンガラ 249.3 31.93 1,027.6 33.21 1,276.8 32.96 東ヌサトゥンガラ 146.3 29.20 1,632.7 49.39 1,779.0 46.73 カリマンタン 西カリマンタン 95.7 10.79 920.6 30.72 1,016.2 26.17 中部カリマンタン 26.5 5.64 235.3 18.54 261.7 15.06 南カリマンタン 99.5 10.41 340.7 16.16 440.2 14.37 東カリマンタン 127.9 9.96 381.3 30.74 509.2 20.16 スラウェシ 北スラウェシ 102.9 12.88 401.8 20.33 504.6 18.19 中部スラウェシ 125.7 23.05 473.7 30.68 599.4 28.69 南スラウェシ 447.2 18.26 1,014.8 18.35 1,462.0 18.32 南東スラウェシ 68.7 15.73 436.2 34.23 504.9 29.51 マルク/イリアン・ジャヤ マルク 166.6 27.20 847.3 53.47 1,013.9 46.14 イリアン・ジャヤ 49.6 9.03 1,099.1 70.95 1,148.6 54.75 インドネシア全体 15,642.5 19.41 32,332.2 26.03 47,974.7 23.43

出所:BPS:Penyempurnaan Metodologi Penghitungan Penduduk Miskin dan Profil Kemiskinan 1999, August 2000. (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.13 より引用)

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表 1-6 は、1996 年から 1999 年の州・地域別の貧困人口、貧困率、貧困ランクの推移を示したもの である。この表によると、森林火災やエルニーニョの被害を被ったジャンビ州と東カリマンタン 州、農業産品価格などの高騰の結果、経済が著しく成長した北スラウェシ州を除いて、経済危機 以前の 1996 年と危機以後の 1999 年の 3 年間における州別の貧困ランクにはほとんど変化は見ら れない。県レベルにおける詳細な分析が必要であると思われるが、総体的な結論として、経済危 機以前の貧困州は経済危機以後も依然として貧困州として位置付けられていると言える14 なお、前述の別添資料 1-2 によると、同期間における貧困人口は、東カリマンタン州、西スマト ラ州の都市部で急増しており、これらの地域の貧困人口増加率は国の平均増加率を 2 倍以上上回 っている。また、農村部ではジャンビ州、南カリマンタン州、東カリマンタン州において貧困人 口が急増した。 表 1-6 州・地域別の貧困人口、貧困率、貧困ランクの推移(1996 年∼1999 年) 貧困人口 貧困者率(%) 州/地域 1996 年 順位 1999 年 順位 1996 年 順位 1999 年 順位 スマトラ アチェ 491.8 15 602.1 15 12.72 19 14.75 21 北スマトラ 1,475.7 5 1,972.7 5 13.22 18 16.74 19 西スマトラ 426.2 19 601.5 16 9.84 22 13.24 24 リアウ 496.7 14 589.7 18 12.62 20 14.00 23 ジャンビ 354.5 20 677.0 14 14.84 16 26.64 10 南スマトラ 1,151.4 9 1,813.7 6 15.89 15 23.53 13 ベンクル 236.9 22 302.3 24 16.69 14 19.79 15 ランプン 1,712.2 4 2,037.1 4 25.59 6 29.11 7 ジャワ ジャカルタ首都特別地区 215.8 26 379.6 23 2.35 26 3.99 26 西ジャワ 4,358.8 3 8,393.4 3 11.06 21 19.78 16 中部ジャワ 6,417.6 2 8,755.4 2 21.61 10 28.46 9 ジョクジャカルタ特別地区 537.8 13 789.1 13 18.43 11 26.10 12 東ジャワ 7,503.3 1 10,286.4 1 22.13 9 29.47 6 ヌサトゥンガラ バリ 227.0 24 257.8 26 7.81 25 8.53 25 西ヌサトゥンガラ 1,169.3 8 1,276.8 9 31.97 4 32.96 4 東ヌサトゥンガラ 1,395.1 6 1,779.0 7 38.89 3 46.73 2 カリマンタン 西カリマンタン 885.7 11 1,016.2 11 24.21 7 26.17 11 中部カリマンタン 221.8 25 261.7 25 13.50 17 15.06 20 南カリマンタン 247.5 21 440.2 22 8.53 24 14.37 22 東カリマンタン 227.7 23 509.2 19 9.73 23 20.16 14 スラウェシ 北スラウェシ 476.2 16 504.6 21 17.94 12 18.19 18 中部スラウェシ 435.4 18 599.4 17 22.31 8 28.69 8 南スラウェシ 1,268.3 7 1,462.0 8 16.71 13 18.32 17 南東スラウェシ 466.4 17 504.9 20 29.23 5 29.51 5 マルク/イリアン・ジャヤ マルク 934.7 10 1,013.9 12 44.57 1 46.14 3 イリアン・ジャヤ 830.3 12 1,148.6 10 42.26 2 54.75 1 インドネシア全体 34,164.2 47,974.7 17.55 23.43

出所:BPS:Penyempurnaan Metodologi Penghitungan Penduduk Miskin dan Profil Kemiskinan 1999, August 2000. (ADB, Poverty Assessment:Indonesia, Final Draft, September 2000, P.66 より引用)

14 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000。なお、同資料では貧困州については固有名詞としてでなく、単に

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3)ジニ係数の推移 表 1-7 は、1993∼99 年の不平等度の推移をジニ係数で見たものである。これによると、支出階層 間不平等度は相対的に農村部において低い特徴を示す。93 年∼99 年までの不平等度推移を見ると、 都市部・農村部全体で 93 年∼96 年に不平等度が拡大し、96 年∼99 年に縮小する傾向にある。ま た、99 年の数値は、都市部 0.326、農村部 0.244 で、双方とも 93 年よりも小さいのが特徴であっ た。ちなみに、インドネシアでは、ジニ係数が 0.35 から 0.50 の場合「不平等度が中程度」、0.35 以下は「不平等度は低い」と分類されている。したがって、99 年の数値は都市・農村双方とも不 平等度は低いカテゴリーに入っている。 表 1-7 州別のジニ係数の推移(1993-96 年) 都市部 農村部 合計 1993 1996 1999 1993 1996 1999 1993 1996 1999 アチェ 0.318 0.254 0.280 0.244 0.225 0.202 0.293 0.259 0.244 北スマトラ 0.299 0.303 0.276 0.222 0.239 0.209 0.295 0.301 0.260 西スマトラ 0.327 0.269 0.281 0.252 0.254 0.238 0.305 0.278 0.263 リアウ 0.245 0.313 0.250 0.239 0.237 0.191 0.266 0.300 0.233 ジャンビ 0.241 0.275 0.256 0.223 0.213 0.221 0.242 0.246 0.246 南スマトラ 0.285 0.303 0.286 0.235 0.232 0.230 0.297 0.300 0.263 ベンクル 0.266 0.270 0.258 0.214 0.263 0.235 0.281 0.273 0.259 ランプン 0.279 0.267 0.289 0.239 0.261 0.266 0.264 0.276 0.288 ジ ャ カ ル タ 首 都 特別地区 0.342 0.363 0.323 - - 0.423 0.363 0.323 西ジャワ 0.300 0.361 0.304 0.256 0.285 0.232 0.299 0.357 0.290 中部ジャワ 0.302 0.320 0.291 0.259 0.237 0.220 0.295 0.291 0.265 ジョク ジャカル タ 特別地区 0.339 0.356 0.341 0.251 0.389 0.266 0.331 0.378 0.341 東ジャワ 0.347 0.319 0.307 0.225 0.267 0.241 0.325 0.311 0.292 バリ 0.318 0.320 0.296 0.263 0.280 0.233 0.315 0.309 0.278 西ヌサトゥンガラ 0.313 0.333 0.308 0.235 0.244 0.229 0.274 0.286 0.261 東ヌサトゥンガラ 0.327 0.336 0.284 0.199 0.244 0.228 0.254 0.296 0.262 西カリマンタン 0.295 0.277 0.267 0.245 0.248 0.206 0.302 0.300 0.275 中部カリマンタン 0.280 0.296 0.256 0.217 0.205 0.196 0.259 0.271 0.244 南カリマンタン 0.265 0.318 0.272 0.252 0.229 0.232 0.274 0.292 0.269 東カリマンタン 0.300 0.277 0.266 0.248 0.310 0.259 0.313 0.319 0.283 北スラウェシ 0.284 0.316 0.277 0.249 0.289 0.246 0.291 0.344 0.277 中部スラウェシ 0.297 0.303 0.308 0.251 0.275 0.256 0.287 0.302 0.288 南スラウェシ 0.249 0.311 0.305 0.249 0.289 0.277 0.273 0.323 0.299 南東スラウェシ 0.264 0.328 0.262 0.234 0.238 0.253 0.272 0.311 0.278 マルク 0.243 0.269 0.216 0.260 0.269 0.217 0.300 0.210 0.245 イリアン・ジャヤ 0.286 0.309 0.282 0.350 0.277 0.279 0.363 0.387 0.360 インドネシア全体 0.332 0.362 0.326 0.257 0.274 0.244 0.335 0.356 0.311 出所: 1993,、1996 、1999 年 Susenas データよりローカルコンサルタントが算出。 (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.14 より引用)

経済危機の間に不平等度が改善した要因として、次のように考えられる。前述した通り、経済危 機による影響により、1)都市部においては中位及び上位支出階層の支出レベルが大きく低下し、 低位支出階層の支出レベルも低下したものの、その低下幅は中位及び上位支出階層支出レベルよ りも大幅に低く、このことが各支出階層間格差を縮小する結果となったこと、2)また、農村部に おいては、すべての支出階層において支出レベル上昇傾向が見られたが、上昇推移は低位支出階 層ほど支出レベルが高くなる逆進傾向を示し、これが各支出階層間格差を縮小する結果となった ことが、経済危機間の不平等度の改善に繋がった要因と推測される。

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1−4 貧困の深度(Depth)、重度(Severity)およびそれらの動態 1)貧困の深度と重度 表 1-8 と表 1-9 は、貧困層が貧困ラインをどの程度下回っているかを示す貧困の深度(P1)と、 貧困人口間における所得分配の状態を示す貧困の重度(P2)の推移(1993 年∼1999 年)を州別、 都市部・農村部別で見たものである。経済危機以前の 1993-1996 年の間に、貧困の深度および重 度はほとんど全ての州で改善されていることが判る。これら数値(P1・P2)の同時期における都 市部・農村部の低下率を見ると、農村部にてマイナス 9%(P1)・マイナス 7%(P2)、都市部にて マイナス 31%(P1)・マイナス 34%(P2)と、都市部における数値低下率(貧困の深度・重度改 善度)は相対的に高い傾向を示した。都市部における例外(表 1-8)は、南東スラウェシ州(P1・ P2)、西スマトラ州(P2)であり、農村部における例外(表 1-9)は、西ジャワ州、中部ジャワ州、 南東スラウェシ州(P1・P2)、ジョグジャカルタ特別地区(P1)、ベンクル州とランプン州(P2) である。 しかし、経済危機発生後の 1998 年では、ほとんど全ての地域に渡って貧困の深度および重度は深 刻化した。都市部・農村部別で比較すると、貧困の深度(P1)及び重度(P2)は、都市部におい て高い数値を示す。更に、推移率で見ると、農村部数値上昇率が 1996 年∼1999 年の間で、55% (P1)・61%(P2)の上昇を示した一方、都市部における同時期の上昇率は、(1998 年∼1999 年に P1・P2 ともマイナス約 20%程度の減少を示したものの)、115%(P1)・137%(P2)と大幅な悪化 傾向を示した。また、農村部は貧困の深度(P1)・重度(P2)ともに都市部よりも悪化傾向は相対的 に緩やかであったが、都市部と異なり、1999 年時点でも悪化傾向は下げ止まらず、この点(農村 部貧困層消費水準悪化と農村部貧困ライン以下支出階層間不平等度悪化傾向)についても今後も 留意が必要である。 また下表により、経済危機が貧困の深度・重度に与えた影響は、地域によって大きな格差があっ たことが判る。1998 年時点において最も深刻な影響を受けた州は、中部ジャワ州とジャカルタ首 都特別地区であり、インドネシア西部に比べてインドネシア東部および東ジャワ州において深刻 な影響があった。また、1999 年までに、ほとんどの州で貧困の深度および重度は若干改善したも のの、南スマトラの都市部・農村部および西ジャワ州の都市部は、依然として深刻な状況にある。

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表 1-8 州別の都市部における貧困の深度および重度(1993-1999 年) 貧困ギャップインデックス(%)(P1) 二乗貧困ギャップインデックス(%)(P2) 1993 1996 1998 1999 1993 1996 1998 1999 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) アチェ 1.911 1.469 2.537 2.128 0.559 0.402 0.658 0.522 北スマトラ 1.602 1.359 2.574 0.342 0.327 0.598 西スマトラ 0.983 0.909 2.912 0.191 0.221 0.658 リアウ 0.894 0.622 1.754 1.565 0.235 0.155 0.348 0.305 ジャンビ 1.351 0.979 4.725 0.281 0.205 1.358 南スマトラ 3.597 1.829 4.662 1.035 0.381 1.353 ベンクル 1.307 0.873 3.503 3.518 0.262 0.195 0.852 0.919 ランプン 1.779 1.376 3.685 0.418 0.309 0.914 ジャカルタ首都特別地区 0.875 0.353 2.609 1.033 0.212 0.079 0.630 0.257 西ジャワ 2.741 1.971 3.478 3.929 0.752 0.560 0.955 1.199 中部ジャワ 2.815 1.999 7.735 4.869 0.736 0.532 2.409 1.335 ジョクジャカルタ特別地区 2.447 1.667 3.720 0.659 0.378 1.005 東ジャワ 2.858 2.029 4.547 3.704 0.783 0.467 1.299 0.946 バリ 2.146 0.786 1.490 0.576 0.163 0.345 西カリマンタン 3.496 2.242 2.175 0.894 0.656 0.497 中部カリマンタン 2.276 1.224 1.149 0.550 0.373 0.265 南カリマンタン 1.997 1.791 2.476 0.510 0.432 0.612 東カリマンタン 2.084 0.791 2.404 0.567 0.189 0.712 北スラウェシ 1.023 0.995 2.824 0.254 0.231 0.763 中部スラウェシ 1.015 0.647 5.261 4.193 0.259 0.150 1.595 1.296 南スラウェシ 2.259 1.655 3.341 0.740 0.396 0.801 南東スラウェシ 1.138 2.062 2.916 0.192 0.877 0.849 西ヌサトゥンガラ 4.310 3.314 5.423 1.249 0.809 1.615 東ヌサトゥンガラ 2.701 2.324 6.293 0.684 0.580 1.838 マルク 1.180 0.913 4.776 0.320 0.193 1.289 イリアン・ジャヤ 2.218 1.463 2.539 0.673 0.324 0.704 インドネシア全体 2.285 1.588 4.351 3.409 0.611 0.406 1.267 0.937

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表 1-9 州別の農村部における貧困の深度および重度(1993-1999 年) 貧困ギャップインデックス(%)(P1) 二乗貧困ギャップインデックス(%)(P2) 1993 1996 1998 1999 1993 1996 1998 1999 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) アチェ 1.841 1.682 2.277 2.602 0.407 0.379 0.460 0.610 北スマトラ 2.272 1.875 2.515 0.720 0.470 0.624 西スマトラ 1.983 1.392 2.337 0.415 0.311 0.504 リアウ 1.727 1.425 2.179 2.655 0.416 0.364 0.531 0.833 ジャンビ 2.141 1.628 4.198 0.597 0.484 0.981 南スマトラ 1.479 1.194 3.935 0.310 0.248 0.960 ベンクル 1.790 1.663 3.821 4.175 0.378 0.392 0.975 0.955 ランプン 1.494 1.490 6.595 0.299 0.320 1.972 ジャカルタ首都特別地区 1.414 1.270 2.788 3.578 0.341 0.261 0.655 0.880 西ジャワ 2.067 2.228 6.088 4.599 0.484 0.543 1.679 1.193 中部ジャワ 1.064 1.152 5.053 0.197 0.284 1.332 ジョクジャカルタ特別地区 1.518 1.544 4.494 5.273 0.380 0.346 1.202 1.452 東ジャワ 1.485 0.465 1.553 0.429 0.086 0.402 バリ 4.725 3.602 8.560 6.666 1.178 0.771 2.947 1.873 西カリマンタン 3.168 1.770 3.574 0.668 0.363 0.985 中部カリマンタン 3.394 2.229 4.337 0.877 0.498 1.108 南カリマンタン 3.179 2.083 4.312 1.046 0.563 1.168 東カリマンタン 2.198 1.984 4.883 0.511 0.486 1.559 北スラウェシ 1.660 1.215 5.365 0.434 0.276 1.801 中部スラウェシ 0.858 0.852 5.005 3.610 0.199 0.177 1.475 0.894 南スラウェシ 1.551 0.990 5.888 0.323 0.211 1.687 南東スラウェシ 2.497 2.552 3.654 0.560 0.583 0.857 西ヌサトゥンガラ 3.917 3.590 10.736 0.991 0.969 3.314 東ヌサトゥンガラ 6.074 4.676 8.565 1.745 1.319 2.439 マルク 6.259 4.915 19.866 1.977 1.399 9.082 イリアン・ジャヤ 1.992 1.803 4.737 0.497 0.425 1.324 インドネシア全体 1.841 1.682 2.277 2.602 0.407 0.379 0.460 0.610

出所:Irawan and Romdiati (2000). (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.16 より引用)

表 1-10 は、1996 年∼1999 年間における貧困層の消費累積分布の推移を都市・農村部別に示した ものであり、インドネシアでは、貧困ラインに近い消費水準レベルに貧困人口が集中する特徴を 示している。1996 年時点では、全国レベルで貧困ライン以下人口の約 7 割が貧困ラインから 20% 以内の消費レベルであったが、1999 年 8 月時点では(1996 年時点調整値で)、全国レベルで貧困 ラインから 20%以内の消費レベル貧困層シェアは、約 6 割に低下した。これは、過去 3 年間にお いて、貧困ラインから 20%以内の貧困人口シェアが低下した一方で、より貧困ラインから遠い 30%以下の貧困人口シェアが増加したことによるものである。つまり、貧困の重度(P2)推移も 示すように、経済危機間において貧困ライン以下支出階層間の不平等度が拡大したことが分かる。 同様に、都市部・農村部別に 3 年間の推移を見ると、都市部では、貧困ラインから 10%以内の消 費レベル貧困層シェアが低下、20%∼70%以内の貧困層シェアが増加し、農村部では貧困ライン 20%以内の貧困人口シェアが低下、30%∼70%以内の貧困層シェアが増加し、相対的に農村部に おいて、より貧困ラインから遠い支出レベルの貧困層シェア(貧困ライン以下低位支出階層シェ ア)が拡大する傾向にある。

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つまり、経済危機間の農村部においては、貧困の深度(P1)及び重度(P2)の絶対値水準・変化 率ともに、都市部よりも低い絶対値水準と緩い悪化傾向を示しているものの、この結果は、必ず しも農村部における貧困ライン以下支出階層の消費水準及び貧困ライン以下支出階層の不平等度 が都市部よりも深刻でないことを意味するものではない15(図 1-1)。なお、農村部における貧困 ライン以下支出階層のうち、低位支出階層人口シェアが相対的に増加している要因としては、農 村部失業率の上昇・実質労働賃金の低下による農業労働所得(又は農業外所得)の低下及び都市 部失業率の上昇・実質労働賃金の低下による移転所得(都市部配偶者・親族からの仕送り等)の 低下によるものと考えられ、総所得に占める賃金収入及び移転所得比率が高い世帯ほど、通貨危 機によるマイナスの影響を受けやすい脆弱貧困層であるものと推測される。 表 1-10 都市・農村別貧困層の消費累積分布の推移(1996-1999 年)(%) % Distance of per capita monthly expenditure to poverty line 1996 12/98 12/98 a) 2/99 2/99a) 8/99 8/99a) 都市部 : 1. ≤10% 41.2(2.98) 35.0(6.15) 32.3(3.74) 30.1(4.86) 34.4(4.68) 36.0(4.38) 35.2(2.58) 2. ≤20% 68.9(4.98) 60.4(10.62) 60.6(7.01) 56.9(9.18) 60.0(8.16) 59.2(7.20) 64.6(4.74) 3. ≤30% 87.0(6.28) 81.7(14.36) 80.5(9.32) 76.7(12.37) 78.6(10.69) 77.3(9.41) 82.0(6.01) 4. ≤40% 95.8(6.92) 93.4(16.42) 93.7(10.85) 91.2(14.71) 90.8(12.35) 88.7(10.79) 88.9(6.52) 5. ≤50% 99.0(7.15) 98.5(17.32) 98.6(11.41) 98.0(15.81) 97.6(13.27) 92.7(11.28) 96.4(7.07) 6. ≤60% 99.8(7.21) 100.0(17.58) 100.0(11.57) 100.0(16.13) 100.0(13.60) 97.4(11.85) 99.6(7.30) 7. ≤70% 100.80(7.22) - - - - 100.0(12.17) 100.0(7.33) 農村部: 1. ≤10% 48.2(7.34) 31.4(10.03) 33.6(8.38) 33.2(10.26) 32.8(6.73) 33.2(8.49) 38.0(6.40) 2. ≤20% 76.0(11.57) 59.0(18.85) 63.0(15.71) 61.3(18.94) 58.9(12.09) 57.4(14.67) 60.6(10.21) 3. ≤30% 91.5(13.93) 79.6(25.43) 81.2(20.25) 80.6(24.90) 79.7(16.36) 72.8(18.61) 76.7(12.93) 4. ≤40% 98.2(14.95) 92.5(29.55) 93.0(23.19) 92.1(28.45) 90.8(18.64) 84.1(21.50) 86.4(14.56) 5. ≤50% 99.8(15.20) 98.1(31.34) 97.9(24.41) 97.7(30.18) 96.5(19.81) 90.6(23.16) 93.5(15.76) 6. ≤60% 100.0(15.23) 99.7(31.85) 99.5(24.81) 100.0(30.89) 98.2(20.16) 98.1(25.07) 97.4(16.41) 7. ≤70% - 100.0(31.94) 100.0(24.94) - 100.0(20.52) 100.0(25.56) 100.0(16.85) 全体 : 1. ≤10% 45.8(10.32) 32.7(16.18) 33.2(12.12) 32.1(15.11) 34.9(11.41) 34.2(12.87) 37.1(8.99) 2. ≤20% 73.5(16.55) 59.5(29.46) 62.1(22.72) 59.7(28.11) 61.4(20.25) 58.0(21.87) 61.8(14.95) 3. ≤30% 90.1(20.22) 80.3(39.79) 80.9(29.57) 79.2(37.27) 80.0(27.05) 74.3(28.01) 78.4(18.94) 4. ≤40% 97.4(21.87) 92.8(45.97) 93.3(34.04) 91.8(43.16) 92.3(30.98) 85.6(32.29) 87.2(21.08) 5. ≤50% 99.5(22.35) 98.3(48.65) 98.2(35.82) 97.8(45.99) 96.7(33.08) 91.3(34.44) 94.4(22.83) 6. ≤60% 99.9(22.44) 99.8(49.43) 99.7(36.39) 100.0(47.02) 98.7(33.75) 95.9(36.93) 98.1(23.72) 7. ≤70% 100.0(22.45) 100.0(49.52) 100.0(36.51) - 100.0(34.12) 100.0(37.73) 100.0(24.19)

注: 12/98a), 2/99a), 8/99a)の各項目の数値は 1996 年の数値を基準に調整。 ( )内は貧困ライン以下の各支出階層人口シェアを示す。

出所: Irawan and Romdiati (2000). (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.18 より引用)

15 都市部と比較して、農村部における貧困の深度(P1)・重度(P2)の絶対値・悪化推移が相対的に低く緩やかである一方、貧

困ライン以下支出階層のうち、相対的に農村部の低位支出階層の人口シェアが拡大しているのは奇異な印象を与えるが、こ れは農村部における貧困ライン以下支出階層ごとの人口シェアの分散が、都市部よりも低いことによるものと思われる。但 し、この点については今後更なる分析が必要である。

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≦10% ≦20% ≦30% ≦40% ≦50% ≦60% ≦70% 1999年8月 1996年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 都市部 ≦10% ≦20% ≦30% ≦40% ≦50% ≦60% ≦70% 1999年8月 1996年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % 農村部 図 1-1 都市・農村別貧困層の消費累積分布の比較(1996 年・1999 年 8 月)(%)

出所: Irawan and Romdiati (2000). (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.18 より作成)

2)貧困の動態 表 1-11 は、1999 年 8 月時に貧困層、非貧困層に分類された人々が、1998 年 12 月の調査時にどの グループに属していたかを調査した結果である。例えば、調査対象者の 18.1%は 1999 年 8 月に貧 困層であったが、そのうち 11.2%の人口が 1998 年 12 月当時も貧困層であった。すなわち、これ らの人々は、少なくとも経済危機の間には慢性的貧困層として分類されたグループである。しか し、慢性的貧困層グループの人口は、1998 年当時は貧困層に属していたが 1999 年時には貧困状 態を脱した人々の数(12.7%)よりも少なくなっている。後者は経済危機によって一時的に貧困 層に陥った一時的貧困層グループに属した人々である。なお、慢性的貧困層の割合は、都市部 (9.2%)よりも農村部(12.5%)の方が高く、一時的貧困層の割合も、都市部(12%)よりも農 村部(13%)の方が若干高くなっている16 表 1-11 貧困の動態マトリックス(パネル世帯の推移:%) 1999年8月の貧困状況 貧困層 非貧困層 合計 貧困層 9.24 12.00 21.24 非貧困層 5.76 73.00 78.76 都 市 部 合計 14.99 85.01 貧困層 12.46 13.17 25.58 非貧困層 7.76 66.66 74.42 農 村 部 合計 20.22 79.78 貧困層 11.17 12.67 23.84 非貧困層 6.96 69.20 76.16 1 9 9 8 年 1 2 月 の 貧 困 状 況 合 合計 18.13 81.87

出所: Susenas-type December 1998 and August 1999 の粗データより対象世帯のみに関して算出。(サンプルとなった 10,000 世帯 のうち 8,112 世帯または 全体の 83%の世帯にあたる) (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.19 より引用)

表 1-12 は、都市・農村部を合わせた、支出階層別の動態マトリックスである。都市・農村別のマ トリックスは別添資料 1-4 に示したので参照されたい。同表は、1998 年 12 月の時点で Q1グルー

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プ(支出階層下位 20%)に属していた人々の 53.14%が 1999 年 8 月時点でも同じレベルに留まっ ていたことを示している。また、Q2、Q3、Q4 グループの中位支出レベルに属する人々の動態が、 Q1 および Q5 グループより大きい、すなわち、中位グループが社会・経済変動の影響を受けやす いグループであることが判る。 表 1-12 支出階層別の支出の推移(1998 年 12 月∼1999 年 8 月)(%) 1998年12月 Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 合計 Q1 53.14 27.23 12.71 6.50 1.87 20.01 Q2 25.66 30.83 25.81 13.53 4.94 20.00 Q3 14.06 23.40 28.68 24.41 9.76 20.01 Q4 5.17 13.44 24.24 33.54 23.03 19.99 Q5 1.97 5.10 8.56 22.02 60.40 19.99 1 9 9 9 年 8 月 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 出所: Susenas-type December 1998 and August 1999 よりローカルコンサルタントが作成。

(Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.20 より引用)

1−5 貧困層の特徴 1−5−1 貧困層の類別 インドネシアの貧困層の特徴を分析するにあたり、経済危機直後の社会経済調査結果17をもとに、 どのような特徴をもったグループが貧困層に留まり、あるいは貧困から脱出するのかを分析した。 この分析に際し、便宜上、貧困層を以下の 3 つのグループに分けた。 慢性的貧困層: 1998 年から 1999 年を通して貧困層として分類された人口層 一時的貧困層: 1998 年においては貧困層に分類されたが 1999 年には貧困層を脱出した人口層 脆弱人口層: 1999 年の貧困ラインよりも 20%上回っているが、将来貧困層になりうる可能性の ある貧困予備軍 表 1-13 は、「慢性的貧困層」、「一時的貧困層」、「脆弱人口層」世帯状況の特徴を示したものであ る。これによると、平均世帯規模が 5 人に近く、世帯主の教育レベルが 6 年に満たない層が貧困 層に留まっているといえる。なお都市・農村別の特徴については別添資料 1-5 を、また、詳細な 分析については次項 1-5-2 を参照されたい。 表 1-13 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯状況の特徴 特徴 慢性的貧困層 一時的貧困層 脆弱人口層 平均世帯人数(人) 4.98 4.30 4.35 女性世帯主の割合(%) 10.89 13.39 12.31 世帯主の平均年齢(歳) 46.08 46.27 46.32 世帯主の教育レベル(年) 5.16 6.73 6.19

出所: Susenas-type December 1998 and August 1999 よりローカルコンサルタントが作成。 (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.21 より引用)

また、世帯主の職業に関する特徴をみると、貧困層から脱出できない世帯の職業には、自営業あ るいは無償の家内労働か農業が多い。また、慢性的貧困層と脆弱人口層の傾向が似ているのが特

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徴である。さらに、99 年時に貧困層から完全に脱出した世帯の職業には、サービス業と被雇用者 の割合が比較的高く、平均労働時間も他のグループよりは長い。なお都市と農村別の特徴につい ては別添資料 1-6 を、詳細な分析については次項 1-5-4 を参照されたい。 表 1-14 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯主の職業(%) 世帯主の従事業種の割合 慢性的貧困層 一時的貧困層 脆弱人口層 農業 67.40 50.29 56.22 サービス業 19.12 32.25 25.52 賃金労働 3.41 8.86 8.77 自営業あるいは無償の家内労働 70.32 64.44 70.16 被雇用者 27.38 32.72 28.32 平均労働時間/週 37.90 39.88 37.54 出所: Susenas-type December 1998 and August 1999 よりローカルコンサルタントが作成。

(Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.22 より引用)

表 1-15 は、居住環境の特徴を示したものであるが、慢性的貧困層は、一人当たりの床面積が狭く、 茅葺かアスベスト(石綿)製の屋根と竹壁の家に住み、安全な飲料水や電気へのアクセスが限ら れ、公共トイレに依存した生活を営んでいる。なお都市部と農村部別の特徴については別添資料 1-7 を、詳細な分析については次項 1-5-2 を参照されたい。 表 1-15 慢性的貧困層、一時的貧困層、脆弱人口層別の世帯の居住環境 慢性的貧困層 一時的貧困層 脆弱人口層 一人当たりの平均床面積(㎡) 13.25 17.30 15.43 茅葺・アスベスト屋根(%) 31.00 30.97 29.84 竹壁(%) 57.54 44.47 26.57 安全な飲料水のない世帯割合(%) 50.84 38.79 39.11 公共トイレを使う世帯(%) 53.23 39.07 44.30 電気のない世帯(%) 31.96 22.45 23.22

出所: Susenas-type December 1998 and August 1999 よりローカルコンサルタントが作成。 (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.23 より引用)

最後に、SUSENAS のサンプル・データを基に、支出階層別で見た貧困層と非貧困層の特徴を分 析したのが表 1-16 である18 表 1-16 貧困層と非貧困層の特徴(1999 年) 最貧困層 (最低分位 20%) 最富裕層 (最高分位 20%) 1.平均世帯人数(人) 4.9 3.3 2.男性の平均就学年数(年) 6.0 10.4 3.女性の平均就学年数(年) 4.9 9.8 4.中等教育以上の教育レベルの男性の割合(%) 11.8 65.4 5.中等教育以上の教育レベルの女性の割合(%) 6.5 52.6 6.医療従事者の立会いによる出産(%) 39.6 90.3 7.0-4 歳児の予防接種率(%) 85.1 96.1 8.フォーマル・セクター労働者の割合(%) 27.3 56.2 9.インフォーマル・セクター労働者の割合(%) 72.7 43.8 10.農業従事者の割合(%) 66.6 14.3 11.サービス業従事の割合(%) 9.0 37.1 12.労働時間が週 20 時間以内の労働者の割合(%) 21.8 10.6 出所: Insan Hitawasana Swjahtera, Provincial Poverty and Social Indicators SUSENAS 1993-1999, 2001 より作成。

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以上の分析の結果、インドネシアの貧困層は以下の特徴を持つと言える。 平均世帯人数が大きい 中等教育以上の教育を受ける機会が少ない 中等教育以上の教育を受ける女性が少ない 医療従事者の立会いによる出産が少ない フォーマル・セクター労働者が少なく、インフォーマル・セクター労働者が多い 農業労働者が多く、サービス業従事者が少ない 平均労働時間が短い 上記の特徴を踏まえ、以下に教育(1-5-2)、保健衛生・家族計画(1-5-3)、職業(1-5-4)およびジ ェンダー(1-5-5)に分けて分析する。 1−5−2 教育 1)教育機会の拡大 インドネシアの教育は、量的側面では、これまで概ね順調な拡大を続けてきた19。小学校の総就学 率は 1973 年には 62%に過ぎなかったが、1983 年には早くも 100%を達成した20。教育機会の拡大 は、同時に教育における男女間格差の縮小をもたらした。表 1-17 は、男子の就学率を 100 とした 場合の女子の割合を示したものである。高等教育レベルにおいては、若干の男女格差が見られる ものの、小学校、中学校、高校レベルにおいては、いずれも男女間の格差がほとんどなくなった ことが判る。 表 1-17 男女間の教育格差の推移(男子を 100 とした場合の女子の割合) 小学校 中学校 高校 高等教育 1976 85.9 65.1 56.7 - 1987 92.3 80.8 75.8 - 1996 98.5 99.9 92.3 83.1 1999 99.7 100.0 99.3 -

出所:ADB, Provincial Poverty and Social Indicators 1993-1999, March 2000 for 1999 and 1996,Table 1.3,World Bank (1998) for 1987 and 1976 (ADB, Poverty Assessment:Indonesia, Final Draft, September 2000, P.63 より引用)

中学校の就学率も急速に伸びており、1980 年には男子 34.7%、女子 23.3%であった総就学率は、 1999 年にはそれぞれ 55.8%、47.6%にまで伸びた。しかし、近隣諸国のマレーシア、タイの中学 校の就学率は、それぞれ 83%(1990 年)、63%(1994 年)であり、インドネシアの中等教育レベ ルは依然として低い水準に留まっている21 しかしながら、教員の質的問題、教材やカリキュラムの質の問題などにより、生徒の学習達成度 が十分でないなどの問題も指摘されている。特に、貧困世帯の子どもは、栄養状況が悪く、両親 が宿題を見てくれない、本や文具などを購入できないなどの理由によって、学習能力の低下を招 19 インドネシアの教育制度は、6・3・3 年制の上に、2∼3 年制のアカデミー(短大)、4∼5年制の大学が設置されている。94 年の 6 月より、小学校・中学校の9年間の基礎教育課程が義務化された。

20 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000. 21 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000.

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108.0 115.5 116.4 74.2 73.0 76.0 0 20 40 60 80 100 120 140 1997 1998 1999 年 % 小学校 中学校 いている22 2)経済危機の教育セクターへの影響 今回の経済危機による就学率の減少および教育の質の低下を最小限に食い止めるため、インドネ シア政府は貧困家庭の生徒に対する奨学金の支給、貧困地域の学校に対する運営維持予算の支給 (ブロック・グラント)などを柱とした教育支援プログラムを実施した。図 1-2 は、小学校と中 学校の総就学率の推移を示したものである。これによれば、小学校の就学率は経済危機の間も増 加し続け、中学校の就学率は 1998 年にわずかに減少したものの、1999 年には経済危機以前の状 態にまで回復している。このことは、教育支援プログラムが生徒の学校離れを防いだこと、並び に経済危機にも関わらず、各家庭において教育への支出が継続して行われたことを示唆するもの である。 図 1-2 小学校と中学校の総就学率の推移(%)

出所:ADB, Provincial Poverty and Social Indicators 1993-1999, March 2000.

(ADB, Poverty Assessment:Indonesia, Final Draft, September 2000, P.64 より引用)

3)教育水準と貧困 前項で述べたとおり、教育水準と貧困の関係は大きく、教育レベルが高いほど貧困率は低い。表 1-18 は、世帯主の教育レベル別の貧困状況を示したものである(1999 年)。これによれば、貧困 層世帯の 87%が初等教育課程修了、初等教育課程中退、もしくは非識字者である。また、識字と 貧困との関係は大きく、世帯主が識字者である場合に、貧困率は約 10%低下することが示されて いる。中等教育を受けた人口の貧困率(16.9%)は、国の平均値(23.4%)以下であり、大学教育 を受けた人口の貧困率は 2%以下と、非常に低い数値を示している。

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表 1-18 世帯主の教育レベル別貧困の状況(1999 年2月)(%) 最終学歴 貧困率 貧困層への寄与率 なし(非識字者) 47.51 19.34 初等教育中退(識字者) 36.68 31.82 初等教育 29.66 35.34 中等教育 16.85 7.61 高等教育 8.59 5.05 大学(Diploma) 1.98 0.34 出所:SMERU, Measurements of Poverty in Indonesia:1996, 1999 and Beyond, June 2000, P.21.

表 1-19、表 1-20、表 1-21 は、成人識字率、平均就学年数、中学校の純就学率を、地域別、支出階 層別のそれぞれについて示したものであり、支出レベルと教育レベルの相関関係が見られる。成 人識字率、就学年数、中学校の純就学率は、Q1 グループ(下位 20%の低支出世帯層)で最も低 く、Q5 グループ(上位 20%の高支出世帯層)において最も高い。また、全国および州レベルに おいても同様の傾向が見られる。さらに、識字率、就学年数、中学校の純就学率を州別で見てみ ると、州間格差が存在していることが判る。 1980 年に 71.1%であったインドネシアの成人識字率は、その後急速に上昇し、1990 年には 85%、 1999 年には約 90%に達した23。しかしながら、1999 年の成人識字率を州別に見ると、26 州中 10 州(38.5%)が全国平均に達していない。中でも貧困度が高い、西ヌサトゥンガラ州とイリアン・ ジャヤ州の成人識字率平均は低い(表 1-19)。また、支出階層別では、Q1 グループで 13 州、Q2 グループ 10 州、Q3 グループ 9 州、Q4 グループ 6 州が全国平均の 84.8%に達していない。このよ うに、識字率と支出水準にはある程度の相関関係が見られるが、貧困率の高いマルク州の成人識 字率が高かったり、貧困率の低いバリ州やジョクジャカルタ特別地区の成人識字率が全国平均よ り低いなどの例外が見られる。その理由として、初等教育の普及状況や生徒の就学年数などが関 係していると考えられるため、詳細な分析が必要であると ADB は報告している24 表 1-19 州別および支出階層別の成人識字率(1999 年)(%) Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 合計 アチェ 88.0 87.5 88.9 91.4 94.6 89.8 北スマトラ 92.2 95.1 94.4 95.6 95.5 94.8 西スマトラ 87.6 90.9 91.2 93.3 96.5 92.7 リアウ 86.8 92.7 91.6 92.9 94.2 92.6 ジャンビ 85.5 88.4 88.8 89.5 94.7 89.2 南スマトラ 88.9 90.3 91.3 92.2 94.5 91.2 ベンクル 86.1 87.8 89.6 93.7 96.2 90.9 ランプン 85.2 88.0 89.1 89.9 95.3 88.4 ジャカルタ首都特別地区 93.7 91.0 95.4 95.9 97.5 96.8 西ジャワ 84.2 86.0 87.2 91.0 94.3 89.0 中部ジャワ 75.2 79.2 82.4 85.9 92.4 80.9 ジョクジャカルタ特別地区 69.0 75.7 79.7 84.8 93.3 82.4 東ジャワ 66.5 73.9 78.7 83.8 91.9 76.6 バリ 66.6 74.2 74.8 79.3 88.6 80.0 西ヌサトゥンガラ 56.1 63.4 66.8 72.2 88.0 66.4 東ヌサトゥンガラ 74.2 80.3 84.0 88.8 95.0 78.6 西カリマンタン 70.8 74.6 78.0 79.9 87.6 78.3 中部カリマンタン 93.9 91.3 91.6 91.5 94.7 92.5 南カリマンタン 83.1 86.2 88.2 89.8 94.2 88.9 東カリマンタン 79.6 88.3 90.7 93.0 96.1 91.4 23 BPS, Statistics, 1999 年。10 歳以上の成人識字率。 24 ADB, ADB Poverty Assessment:Indonesia, September 2000.

(29)

Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 合計 北スラウェシ 90.0 95.5 97.3 98.5 99.0 96.5 中部スラウェシ 87.0 89.9 91.3 94.4 96.7 91.0 南スラウェシ 71.0 74.7 79.4 84.1 91.3 78.9 南東スラウェシ 78.4 82.3 85.9 86.3 90.3 83.2 マルク 92.9 94.5 93.3 96.5 98.7 94.6 イリアン・ジャヤ 51.5 70.3 75.4 87.9 95.2 68.3 インドネシア全体 75.6 81.5 84.9 89.0 94.3 84.8 注:塗りつぶしは、平均以下を示す。

出所:1999 Susenas Core. (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.25 より引用)

全国の学校就学年数の平均は、7.3 年(1999 年)である。これを州別・支出階層別に記したのが 表 1-20 であるが、11 州が平均年数を下回っている。所得階層別では、Q1 レベル 25 州、Q2 レベ ル 21 州、Q3 レベル 14 州の学校、Q4 レベル 1 州で、7.3 年を下回っている。また、前項の成人識 字率と同様に、西ヌサトゥンガラとイリアン・ジャヤの平均就学年数が 5 年台と非常に低く、特 に Q1 グループでは、両州とも 4 年以下の短さ(小学校低学年)である。 表 1-20 州別および支出階層別の平均就学年数(1999 年)(年) Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 合計 アチェ 6.3 7.1 7.7 8.7 10.0 7.8 北スマトラ 7.1 7.7 8.3 9.1 10.2 8.6 西スマトラ 6.0 6.7 7.6 8.6 10.0 8.1 リアウ 6.0 6.7 7.2 7.9 8.9 7.8 ジャンビ 5.7 6.5 6.9 7.9 9.7 7.2 南スマトラ 5.8 6.3 7.0 8.0 9.5 7.1 ベンクル 6.1 6.4 6.9 8.2 10.0 7.6 ランプン 5.8 6.6 7.1 7.9 9.4 7.0 ジャカルタ首都特別地区 7.6 7.7 8.6 8.9 10.4 9.9 西ジャワ 5.6 6.1 6.5 7.8 9.7 7.3 中部ジャワ 5.3 6.2 7.0 8.4 9.9 6.7 ジョクジャカルタ特別地区 6.4 7.5 7.9 9.6 11.3 9.0 東ジャワ 5.0 6.1 6.8 7.9 9.7 6.7 バリ 5.2 5.9 6.5 7.6 9.3 7.6 西ヌサトゥンガラ 4.0 5.1 5.7 6.9 9.5 5.7 東ヌサトゥンガラ 5.4 6.9 7.8 9.1 10.6 6.5 西カリマンタン 4.3 5.0 5.8 6.7 9.1 6.1 中部カリマンタン 6.3 6.6 6.9 7.3 9.2 7.4 南カリマンタン 5.2 6.0 6.7 7.5 9.5 7.2 東カリマンタン 5.6 6.9 7.6 8.4 9.9 8.2 北スラウェシ 6.2 7.4 7.9 8.8 10.3 8.2 中部スラウェシ 6.0 6.9 8.0 8.7 9.8 7.5 南スラウェシ 5.5 6.3 7.3 8.4 10.1 7.2 南東スラウェシ 6.2 7.1 7.8 8.3 9.5 7.4 マルク 6.7 8.0 8.7 10.0 10.3 8.3 イリアン・ジャヤ 3.4 5.5 6.3 8.2 10.1 5.7 インドネシア全体 5.4 6.3 7.0 8.1 9.9 7.3 注:塗りつぶしは平均以下を示す。

出所:1999 Susenas Core. (Peter Gardiner & Puguh B. Irawan, A Poverty Profile for Indonesia, 2000. P.26 より引用)

1999 年の全国の中学校における平均純就学率は、59.1%であるが、同様に 26 州中 15 州(57%) が全国レベルに達していない。50%に達していないのは、中部スラウェシ、西カリマンタン、イ リアン・ジャヤ、東ヌサトゥンガラ州であり、特に東ヌサトゥンガラ州の純就学率が 34.9%と低 い。また、支出階層別では、Q1 レベル 23 州、Q2 レベル 21 州、Q3 レベル 7 州が達しておらず、 Q4 レベルからはすべての州で全国平均を超えている。

表 1-3  支出階層別、都市部・農村部別の名目および実質的支出の推移(1996-99 年)(ルピア/月)  都市部  農村部  支出下位 40%  支出中位40%  支出上位20%  全世帯  支出下位40%  支出中位40%  支出上位20%  全世帯  2/1996  46,918 91,576  226,633 100,639 30,552 50,809 100,920 52,696 12/98  92,790  (46,713)  168,249 (84,700)  387,463 (195,05
表 1-4  名目および実質農業賃金と農村の価格指数(1996-1999 年) 11 年 月  名目賃金 農村価格  指数  実質賃金 年 月  名目賃金 農村価格 指数  実質賃金 96.02  285.82 247.6 115.44 98.01  354.69 308.4 115.01 96.03  284.99 237.2 120.15 98.02  368.82 340 108.48 96.04 289.04 233.9  123.58 98.03 375.54 352.3  106.6 96.05
表 1-6 は、1996 年から 1999 年の州・地域別の貧困人口、貧困率、貧困ランクの推移を示したもの である。この表によると、森林火災やエルニーニョの被害を被ったジャンビ州と東カリマンタン 州、農業産品価格などの高騰の結果、経済が著しく成長した北スラウェシ州を除いて、経済危機 以前の 1996 年と危機以後の 1999 年の 3 年間における州別の貧困ランクにはほとんど変化は見ら れない。県レベルにおける詳細な分析が必要であると思われるが、総体的な結論として、経済危 機以前の貧困州は経済危機以後も依然
表 1-8  州別の都市部における貧困の深度および重度(1993-1999 年)  貧困ギャップインデックス(%)(P1)  二乗貧困ギャップインデックス(%)(P2)  1993  1996  1998  1999  1993  1996  1998  1999  (1)  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  アチェ  1.911 1.469 2.537 2.128 0.559 0.402 0.658 0.522 北スマトラ 1.602 1.359 2.574
+7

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