Mr s .CT l a d bc k に つ い て
‑ Mi s s Le y を中心 として‑
佐 藤 匡
2 9
TT.肇 +宣 .1・"・7! r・r pF,.j IJtrT ・.言 1r:.TT
Ⅰ
" Mr s .Cr addoc k" ( 1 9 02)
は," Li z aofLambet h" ( 1 8 97 )
," TheMa ki ngof aSai nt "(1 89 8)
,短篇集" Or i e nt a t i ons "(1 89 9)
," TheHe r o" ( 1 9 01 )
,の つ ぎ,第五番 目の作 品であ る。
しか し, この作 品は,1
9α)年にかかれ てお り," TheHe r o"
の前であ り,Hei ne ma nn
の選集 に初期の作品か ら" Li z a"
につ いで入れ てい る所か ら見 ると,モームの第二作 と見な され て もさ しつかえない よ うであ る。 R.T.St ot
tも,初期 の作品 中で, 現在 で も読むにたえ る の は『ライザ』 についでは, この作品だけであ る と言 ってお り.
P.Dot t i n
氏 も,( 1 )
『ライザ』 に類似点あ り,その延長線上にあると論 じてい る
。 ( 2)
" TheMa ki ngofaSa i nt "
『戎聖者の半生』は,Andr ew La ng
の小説作法 の文章 を読み, 同時代 の風俗習慣 を書け る程, 人生 の経験 を積 んでいない若い 作家に, 歴 史は物語や人物を提供 し,若い ロマ ンテ ィ ックな情 熱に訴え,歴 史 小説を善 くに必要 な気 力を与え るであろ う。
歴 史小説 これ こそ若 い作家の書いI て成功 し得 る唯一の小説だ とい う意見に共鳴 し, 感 心 し, マキ ャヴ ェ リの 『フ ロ Vンス史』 を読み,文献 を さ く り,夏 カブ t)島に行 き. 毎朝六時に起 き,懸 命に書 きあげた ものであ った。暴君あ り.陰謀 あ り, 美 男美女 あ り剣戟あ り恋 愛あ りで, まことに賑やかだが,それだ けの ものだ そ うであ る。
尚,モ ームはL . ・ 3)
この ラングの意見は誤 りで あ った とし, 小説家は,思索や.生活の変転に よ っ て,世 の中の知識 を得 , また周囲の人 々の個性を永年探究 し, 人間の本性をえ
TIJ.T・‑T T :'I VET :'・V J. .7'・ '一一 億
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3 0
ぐり出す直観を獲得 し,過去 の時代 の人物 を壇解 し, それ に よ って再現出来 る よ うにな る晩年にな ってか らこそ歴 史小説に向 うべ きで ある とのべてい る. 又
( 4 )
" Or i e nt a t i ons "
『指針』 は," ThePunc t i l i ous nes sofDon Se ba s t i a n "
," A Ba dExa mpl e' ' ,"DeAmi c i t i a"
," Fai t h
''," The Choi c eofAmynt a s"
,"Dai s y" ,
を集めた短篇集で あ る。
これに対 して.若 さ故の倣慢 さが最大 の欠 陥で, 自分 の売むづか しく狭い量見にさか ら うものは悉 く噺笑 してい るのが鼻 もちにな らない と感想を もらしてい る。 しか し, 次 の よ うな巻頭 のア フォ リズ( 5)
ムを読む と, この感想 も相賀 され る程 の若いモ ‑ムの作家 と.しての構えを推察 す ることが出来 る。
C' e s ts ur t outpa rl e snouvel l esd' unj e une6c r i va inqu' Onpe uts er e ndr e c ompt edu t ourde s on e s pr i t . I ly c he r c he l avoi ep u 主l uies tpr opr e da msunes と r i ed' e s s ai sdege nr eetde s t yl e di f f e r e nt s ,quis ontc omme de so r i ent at i onspourt r ouve rs o nmoil i t t 6 r at ur e.
(主 として若い作家 の′J\説を通 して, 人は 自己の精神傾向を理解す ることが 出来 る。若い作家は,彼 の作品 の中で, 一連 の相異なる ジ ャンル とスタ イ/レの 試み の中か ら自分に適当 した途 を求めてい る。 それち の試みは,人が 自分 の文 学的 自我を発見す る為 の指針 の よ うな もので ある。) (田中西二郎氏 :短 篇小説
「モ‑ ム研究」新 潮社)
自作が, 如何に未熟であ り,習作 めいた ものであろ うと,それ相応 の存在理 由はあ るのだ とい う,文壇 に雄 飛せん とす る, 気負 った若いモ ームを よ くあ ら わ してお り, 単な る通俗的作家 とは異 な る所があ るとい う意気 を示す ものであ っ
た 。
しか も,初期 のモ ーム‑" OfHuma nBonda ge"(1 91 5)
前迄 の頃‑に とっては,すべてが,職業作家 としての成功へ の足組, 実地練 習であ ると自 覚 していた のである.読者に阿ゆす る気 な ど毛頭 なか った よ うであ る
O
自己 目 的な場を設定せず,読者の興味 を引 き寄せ て行 くよ うな場 の背景に隠れ, 表現 の完成に努力 した作家である とい ゝ得 る。単 に読者をa mus e
させ よ うと は せ ず,e nl i ght e n
Lよ うとした作家 で もある。Benot dec e i ved,gent l e r ea de r
,nos el f ‑ r e s pe c t i ngwr i t e rc a r e sat wo pe nnyda mnf oryo u.
(読者 よ,だ まさ3 1 れ ない よ うにせ よ 。 自信のある作家は. 読者の ことな ど念頭におかぬ ものだ。 )
( 6 ) とは本作品中の作家の告 白である。 彼の文学観の板抵には.読者に喜 びを与え ることが原則 として横たわ ってい るが. その為に作家の自我を殺す ことは しな か った よ うである。 シ′ ニカ/ レとか, ブ/ レーク/ レとか.腕達者 とかいわれてい る が, それには侮蔑が こめ られているのだろ うが,同時に,モ ームの持味が.作 品にあ らわれてい る証拠で もあろ う 。
註
(1)
a T.St o t t ,The W rz ‑ t i ng o fW .S.M au gham,Appe nd i x4,P・ 1 2 4.
( 2) P.Dot t j n,So meT I S e tM au gham e tSe sRo ma
ns,P.3 8.
(3) 上 田勤,
『モ ー ム 』P.4 4 ( 4 ) TheSummi ng
UP,XLI V.
( 5) Pr e f a c et o‑ TheTr e mb Z i 7 2 g 4 aLe a f ( TheCol l e c t edEdJ ' t i o n) . ( 6 ) M T l S .Cr addo
ck,P.259.
Ⅱ
『クラ ド ック夫人 』 に至 る迄, その題材は皆異な り.カ メレオン的 モームを 示 してい るが , 処女作 『ライザ』 とは,前に も,一寸ふれたが,色 々,類似点 が あ り,一つの s equence をな していることが分 る。 『ライザ』では,年は も いかない小娘 ライザが. 中年男に衝動的な愛を感 じ,世間の冷たい 目をあびな が ら, 遂に不慮の死にあい,はかな くも彼女の恋は散 って行 くが, 『クラ ド ッ ク夫人』では,女主人公 Ber t haLey もライザ と同 じく衝動的な,肉にひかれ る恋愛か ら始 ま り. 以後障碑を押 し切 って結婚に入 り,結婚 中の愛情 の起伏, 衰え, 死滅の過程を細かに心理分析的に描いている。 『ライザ』 の場面は貧民 窟であるが, ここの場合は. 1 890‑ 1 9 ( 氾年代の英国の片隅の生活で,時代は一 時代の終 りであ り. 旧勢力が新興勢力に よって とって代 られ よ うと している時 である 。 理想主義に背を向けて,貧民窟で赤裸 々な人 々を兄で快哉を呼んだ モ ームは. こ ゝで も.既 に彼等の使途 もな く, 自然に消滅すべ き運命にあ り乍 ら それに気づかず, 過去の泰平 の夢をむ さぼろ うとす る地主連 中や.因襲のみな
ぎる周囲に , ロマ ンテ ィックなパ ーサ. イロニカ/ レな Mi s sLey を登 場 さ せ
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3 2
て,彼等の仮面をは ぎ振 ろ うとす るのであ る
.
『ライザ』に於 て も,貧民窟の 人 々の割合, 自由な生活の中に も,何か世間態にか ゝず らってい るその弱点を つ いたが, こ ゝでは更にそれ以上 の痛烈 な暴露批判 をあびせてい る。
Ⅲ
この′j\説の第一頁に於 て,モ ームは, この小説の タイ ト/レは "TheTriumph
of L ove"
『愛 の勝利』 と して もよかろ うとい ってい るが,一人 の女が,理想 の 愛 をか ゝげ, (元来 ,肉欲的だが, 彼女は恋を恋す るとい った ロマ ンテ ィック な心情 の持主であ った),それに翻 弄 され. あげ くの栗にその恋に敗れ,孤独 に沈む こととすれば, 愛が一人 の女性を征服 した ことにな るであろ う。又,莱 火に も似た愛を経験 して, それに敗れ て魂が浄化 され,新 しい人生観に 目ざめ ほ のぼの とした幸福 感を得た ことは, 愛 の勝 利に慣す るで あろ うとい うこれ ら の理 由は, あま りに も逆 説的で納得 させ られ ない。パ ーサの火 の よ うな愛情 が クラ ド ックのて ごたえない態度に, 愛は嫌悪 とな り,最后に無 関心に変 るその 推移か ら見れば,明 らかにP.Dot t i n
氏,K. G.Pf e i f f e r
氏のいわれ る"Nai s ‑ s a nc eetMo 一 tdeI ' Amour "
,"The De at h ofLove"
の テーマではなか ろ( 1
)( 2)
うか. ロマンテ ィックな生活態度 の妻パ ーサ‑ 彼女に とって愛す ることは, 火 とな って燃 え ることであ り, その他 の生活をすべてその火焔の中に投入 して 了 うことであ り‑ , リア リステ ィックな生活態度のエ ドワー ド‑ 愛情 とは 神 の摂理に よる便 宜的かつ必然的な慣習であ り, 衣服を注文す ると同 じ様に, なに も興奮 して, 大騒 ぎす る必要 のない,い となみ であ った‑ との戦 いで結 局 は, リア リステ ィックな夫 の生活態度が勝 った とい うことも明 々白々の こと で, リ7 リズ ムの勝利は モーム自身 の得意 とす る命題 ではないか。
註
田
切P.Dot t i n ,So P ne ne tM au ghaf ne tSe sRo mans ,P. 48.
K.G
,Pf e i f f e r ,Sm e r s e tM au gham P.
41.
3 3
Ⅳ
K.G.Pf e i f f e r氏は, 『クラ ド ック天人』は あ きらかに,毛 ‑ムの伝記的作 品であ って,主要 な人物,Be r t ha と Mi s sL e y とは, 毛 ‑ムの二面をあ らわ してい るとい ってい る。即ち,/i‑サほ, 自分の積極的な愛 し方に, しか るべ き反応 を示 さない相手をに くむ とい う,情熱的で感 じ易い面を, ミス ・リイは 自分 を含めて誰 も彼 も, 無価値 で不合理 な存在であ ることを見抜いてい る皮肉 i l 懐疑 な面 を夫 々あ らわ してい るのである。当時 の毛 ‑ムの逆説 的 な 態 度 は,
(1
)
"A Wr i t e r ' sNot e book"で明 らかの よ うに,痛烈 な ものであ り. ミ ス ・リイ にそのはけ 口を見出 した ことは当然 の よ うに感 じられ る。 パ ーサが ロマ ンテ ィ
シズ ム, エ ドワ̲ ‑ ドが リア リズ ムを代弁す るとすれば ,彼女は シニ シズ ムのにな い手である 。 "Mr s .Cr a ddoc k"( TheCo l l ec t edEdi t i on)の序文に よれば,作 品中のモデルは全部彼 の知 ってい る人 々であ ったが, この Mi s sLe yだ けは, 例外で,ナポ リの博物館の Agr i ppi naの彫像に もとずいた とい って い る。 ミ
( 2 ) ス ・リイの容貌は. 口が一番特徴 的で, 大 きな 口では な く,両層が少 し薄す ぎ 口もとは, いつ も, しっか りと結ばれて.いかに も意志 の堅固 ら しい印象を与 え, 口の端 のあた りには,表情 のゆたか な動 きが見えていて,彼女 の口 もと以 外の所か ら受け る印象 とは妙に矛盾 した感 じを人に与え てい る。 彼女は.冷た い 目つ きで, 人を見つ め る癖が あ って,人 々を少 なか らず当惑 させ るのだ と描 写 され てい るがそ うい った特徴 が, 日頃彼が吐露 した い気持を托す のにふ さわ しい ものだ と心に きざみつけ られた ものであろ うか。彼女は , 作家 の一 視点 と し て, 物語 りの展開を御 し,彼女 の得意 の人間分析 の メスをふ る うの でー ある 。 Mi s sLe yは.人間は愚か な存在であることか ら痛罵 の鍔を向け て行 く。人間の 愚か な ことは鶏の よ うな ものだ し, 涙を流す ことは愚か しい こと,た とえ,器 量 の良い人で も, 泣 き出 した ら二 目と見 られず ,不器量な女だ った らぞ っとす る程いや ら しい とい う。 恋 し合 う男女の姿は出来 るだけ人 目につかぬ よ うにせ ねは な らぬ。愚か な人間のい となむ慣 習 とか,行事に も毒づいて行 く。さまざま な感傷にみ ちた心を人に対 して抱 き, すべ ての隣人に胸襟を開 くク リスマスは
」。'; ∵ :.・T ,.:,T tIF <T T L.7 ・・rj 1ぷ '、'・T J./‑l tTT Ti7r :I..T TP..増 .、.. ⁚十 L. 問題 濁 濁 瑠 璃 闇 頂 絹 轡 璃 Y.篭 茂 男 瑠腰 謂 適 確 絹 腰 苛 儲 瑠 欄 欄欄 召 欄叩判 溺瑚 題 感湖 掴濁 朋周 凋 笥 周 ヨ 項
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で 「‑j::.了:W、写郡.3 4
彼女に板 って不愉快 でな らぬ。 夏で も,榛の木を見 ると,中流階級の森 々の飾
りつ けや, ガス燈 の シャンデ リヤがぶ ら下げ られた,ヤ ド1 )木や,行 きあた り
は った りに女 とキスす ることを嬉 しが ってい る. お ろかな老紳士の ことな どを
す ぐ思い出 して しま う 。 成人式な どの祝 いのお祭 り騒 ぎな どほ好 ま しく思えな
いO 昔気質 の英国人 ら しく,祝辞をのべ,祝福を捧げ られ ることは. こっけい
さ と, 厳 粛 さと感 傷をつ きまぜた よ うで,彼女に とっては聞 くにた えない もの
である 。 姪 の誕生 日について,一言言わね はな らぬ ことが,煩わ しくてな らな
い。 「女は二十五を過 ぎると, 自分の誕生 日を何か不謹慎なことで もあ るかの
よ うにや りす ごす . 所が,男は 自分が, この世に生れ出た こ とを とて も賢明だ
と思い こんでい るので, 誕生 の記念 日とい うものに関心を持つんだ。そ して,
その馬鹿 な男達 は, 他人 も自分 と同 じよ うに関心を持 ってい ると考えてい るん
だ」 と独語す る 。 彼女 の考えてい るまともな人類 とは.大部分が,人 の世話に
な らず 自立 し得 るだけの資産を持つ 中年女性であ り, 大陸を旅行 した り,高雅
な文学を愛読 した り, 世間のあらかた の人 を嫌悪 し, と りわけ,博愛主義的な
金切 声を上げ て,宗教を押売 りした り, 押 しつけが ま しい熟 しさで奮励努力 し
た りす るのを一番や り切 れ ない とす る人 々なのである。 結 噂は,離塘裁判所 の
判事 のす る仕事を作 ってや る制度だ と し, 自活 し得 るだけ の資力を持 ってい る
女性が結 婚 したが る愚 の骨頂 を とき, 結 噂なん て.十 中八九は,不満足であ り
家柄が古いな どは問題にな らない, 問題になるのは.家門を断絶す るよ りは,
一家を創始す る人の方が好 ま しい と, 現実的であ り,改革的である 。 支配階級を
軽蔑 して, 主人一族 よ りは,召使た ちの方が.数等いや ら しさがな くて感■ じが
い ゝと断ず る。 そ して,厳 しい態度 で,結 噂の本質論 を展開す る。結婚な どと
い うものは,‑か八かの冒険で, 情熱 あ って こそ,それをす る価値が認 め られ
る。 結婚を神聖視 し,霊的 な結びつ きと考え,女 と しては.夫を愛 し,尊敬 し
その意志 に服従 し, 天 を助け支えて.やが て訪れ る死 を迎える用意が出来 てい
るよ うな生活を夫 と共にい となむ とす る, 今迄 の結噂観に其 向か ら反対 し,結
嘩本来 の理 由は . 生殖本能である ときめつけ,女 の与え られた特別の働 きは,
その種族を生みふやす ことである,私の姪は, 雄 にひかれ る雌だ と,む ごた ら
3 5
しくも言い放つ。 この考え方は.毛 一毛には板強い もので あ り.恋愛は生殖線 か ら うみ出 され る分泌物の もた らす ものであ り, 塩 めて動物的慾求であるとす る意見 と共に, 医学校生活か ら得 られた ものに相違 あるまい。 1 8 94年の頃,
『 作家の手帖』に彼は次の よ うなことを書 きとめてい る。 産婦人科教授の言葉 として。
Ge nt l eme n,woma ni sa n a ni malt hatmi c t ur at e soncea da y , def ec at es onc eawe ek,mens t r uat esonc eamont h,par t ur at esonceaye a randc opu ‑
l at eswhe nevers hehast heoppor t uni t y.
( 3)
彼女の心には,偏向がな く,常に問題の両面を明確に眺めて, その どち らに も加担す ることがない。当然, 同性の愚か さに も目をつむ っては居 られない。
(この作品は , ‑ モ‑ムの女性蔑視を示す最初の作品であろ う.)女性 とい うもの は,四十八な どとい う年齢はみ とめ よ うとしない,四十五才だ とい つ あ る , オー/ レドミスの慰めは死 んで しまった り, 或は他の女 と結婚 して しまった恋人 を3 0年間 もこい こがれ てい ると他人にい うことだ として. 人間性の欠陥をつ こ うとしてい る
.四十才以下の女は例外な く共に語 るに足 らず,又, Be r t ha と Ger al dとの関係を知 っては,ほんの五分間で も,た とえ七十 の老婆 も.十 四の 少年 と一緒に してお くわ けにはいかない と反省 し, Ge r a l d の立つ 日に,パ ー サがいないのに気づ き, さては,かけおちか と考え,メ ‑サに限 ってそんなこ とをす る馬鹿 とは思わないが, 女は馬鹿げた ことの出来 る動物だ とす ると,い つだ ってや りかね ない と心配す る
。パ ーサ とエ ドワー ドとの結婚の幸福の所在 について示す, Mi s sCl ove r ,Dr .Rams a y らの皮相な観察に よって判断を下 す視野 の狭 さ, 独断,愚鈍 さもいかんな く狙上にのせてい る。 しか し. このよ うに,一方的 に冷笑をあびせ る中年女性の姿だけをモ ームは描かない. ミス ・ リイは 自分 自身の理論を絶対的に信 じこんで, その理論を噺笑 した りす ること の出来 ない タイプの女ではない。 パ ーサ と共に,大陸を旅行 して.教会や,袷 画や, 都会を沢山見て くるが,その感銘を相共にか くし,感動的な場面に接 し て も, ミス ・リイは感情をあらわす ことを恥辱 と思い. 泣 くまい として笑い, 感傷をおおいか くす為に, しば しは上品な皮肉を用いたのであるが , そ の 態
滞 J議 磯 濁 磯 濁伯儲 頂 瑠 凝 議 甥磨 丸蓋 肇 蔑 絹 登 ∴ ▲・" ]〜 一・TI. r ・Ir ・'Jr :: 瑚 月 j lj llj lj HT .T .T IT: .」r r J..P・⁚ 冶 nJX ;fTT tT::7 7 7≠当 畑
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㌧̲3 6
度は.彼女の独創ではな く, J . Gr i ma l di の演技の焼直 してであ った と, その 自分の態度を.心中.噸笑す るのであ った。 パ ーサ とエ ドワー ドとが結噂 し.
ハ ネ ・ムーン中に ミス ・リイは. Cour tLe ysを去 るべ く用意を し. パ ーサの 滞在す るよ うに との鼠 いを ことあ って. 私が,私 とい う人間を よく見 きわめて い るか ら, そのす ゝめを私が受け入れ ることが出来 ない のは よ くお分 りであろ ラ,私は とりわ け. 自己否定の癖 の強い女 であるか ら,ほ どは どの収入を持 っ た着 虫身女が住む よ うに運 命づけ ちれてい る, イダ リ‑の安 ホテルの人生に身を 投げ入れ るこ とにす るO そ して,私は他の人達程 ‥ 馬鹿ではない と考えた くな った時.ベ デカの赤い表紙 を見て. 自分 も. たかが一人の人間であることを思 い出そ う, この手紙は.夫に見せない方が よいが.見せ るこ とが義務だ とお考 えにな るなら, 一私の性格理解 の為に役立たない もので もあ ります まい, 自分 の そ うした性格を学ぶ為に, 私 自身楽 しい年 月をす ご して来たのだか らと書 き送 っている。 ユ ーモアをた ゝえなが ら,彼女 の心の真率 さ, 自己認識の熱意 の程 が うかがわれ る。又,Ge r al d の前で.Cr addoc kが模範的な人格者で, 決断的 ,
しか も道徳的, 廉直で.誠実,健康で.典型的な英 国人で. とて も偉い と感心
し.好 きにな らなけ りや な らないが, 好 きになれないのは.板性 まが りのせい
だ ろ うとのべ.又 , ヂ ェラル ドが, あなたは慈悲深い人 であるとい うと,手を
ふ りなが ら,女 とい うものは生れつ き底意地が悪 くて. 量兄が狭い もの.慈愛
深 い ら しい人がいた ら. その女 自身が,慈愛を とって も欲 しが ってい る証拠だ
と否定す る。 このよ うな態度が. ミス ・リイの毒気 を うすめ 一好 ま しい人物に
感 じさせ る所以で ある。 更に彼女 をグ ロテス クにせず,立体的な,生 きてい る
性格 に仕立ててい る要素 と して考えられ るのは, 彼女が,彼女 の透徹せ る論理
の尾にひ っか ゝった り, その冷静 な眼が曇 ることもあ るとい う.人間通有の弱
み を露呈す る所 であろ う。 彼等の結噂半年後に. ェ ドワー ド夫妻のたっ ての要
請 でi 腰 を上げた リイ女 史が再び, コ一 十・リィズを訪れ て,その結婚生活に
分析の 目を放 ち. 結局 .結靖生活に.バ ラの花び らが まかれていない ことに売
づ く。 それ で.す ぐ脳裡 をかすめた ことは, Dr .Rams a yが,早速,飛んで来
て彼女の見込み違いをな じるだ ろ うとい うこ とだ ったが . 実際会 って見 る と,
3 7 彼女を笑 う所か. 彼が誤 っていた ことをみ とめ, さぞや満足であろ うといわれ て.彼女は当惑 して, Rams a y の底意が分 りかね.か らかわれ てい るのではな いか と,困惑 して しま うのであ る . この ことは, 自己の論理を追 うに余 りに急 な る為か ら出来 した.不覚 であ り. 彼女 も人の子であることを示す 一 例 と 思 われ る。鋭い眼 も曇 ることのあ る とい う例は次 の例 であ る。 パ ーサ とヂ ェラ ブ レ
ドの間を.パ ーサのあか らさまの愛の言葉を聞いて も, 疑 わなか った ことであ る 。 勿論,モ ームは この事に対 して. ミス ・リイの為に, あか らさまに事実を ぶち まけ ることは. 人の 目を くらます最上 の策であ り,それが,無意識に語 ら れた場合はなお さらであ り.五十才前後の女性は. 二十五才をす ぎた 同性を見 さかいな く自分 と同年輩に見立て る習性が あ るのだ と弁 じて い る 。 しか し, Ge r a l d が, い とまごいに来た時,/し サが頭痛を理由にパ ‑テ ィを欠 席す る 旨を告げた時 に, い ささか の疑い もは さまず,一人での この こと出かけた こと は,彼女に して千慮の一失 ともい うべ きことであ った と思われ る。 会半ばに し て,たぶ らか された ことに気付 き,駐足で室 内に飛び こんで来たあわてぶ りの 一幕は. まことに喜劇的 であ り.ほ ゝえ ま しい. 尚,彼女の魅力的 な特徴 とし て,忘れ られぬ ことは. 人 の為 には出来 るだけの ことを してや ろ うとい う暖か い善意にみちた心づかいである 。 ヂ ェラ/ レドが .女 中 とい ざこざを起 して,母 親は,その不良の我が子を アメ 1 )カに送 る前, 一 ケ月の生活 を頼み こむ と,喜 んでそれ を引受け もした し,亦,前 々か ら. 父親 と喧嘩 して彼女 の所に来れば 暖かい皮肉さで,‑ この金の使途は,言 って くれ るな, 聞けば文句がい ゝた くなるだ ろ う. しか し. もっと入用だ った ら, 又おいでなさい‑ 5 ポ ン ド与 えてい るのであ る. (悪人好み モ ‑ムのシニカJ V・ な一例証 であ る。)又. Dr . Ra ms a y(彼女 の軽蔑 の的)が, エ ドワー ドが. パ ーサの結婚相手 として 適 当 でない とい う時. 反対をつづけて来た ミス ・リイは.彼 の後見人 としての立場 のつ らさを察 して, こんな不景気 な時代には, お百姓 に とってた ゞ一つ頼み に 出来 る方策は,女地主 と結婚す ることで しょ うか と.救いに出 る 。 彼等の結墳 生活半年後に招かれて.一週間滞在 して,帰 りしなに. も早.二人 の間の不和 を察 して, もし. ロン ドンに買物に来た くな った ら, いつで も泊めて上げ ます
莞 JT 凋 瑠 璃 領 濁 眉 欄 濁 濁 欄潤 頭 頂 月 竃 屈 濁 澗濁 烏 周 濁 領
.ナ4 ㌔
ぎナ Jr ,III
t I‑ I
3 8
と, いつ にな く,優 しい言葉 をパ ーサにか け るのだ が , その裏 には,いつ で も 困 った時 は, あなた の親 しい真実 の友 と して, 私 のい る こ とを忘れ るな とい う 気持 を伝 えた か った のであ る
。
喜 怒 哀楽 をあ らわ に 出す ことの出来 ない この種 のタ イプの女性 の最大級 のや さ しい心 のあ らわれ であ った ので あ る。 人は皆 , 自分 の信条を 守 って, 自分 の道 を開拓す べ きだ とす る彼女 は, 二 人 の完 全 な不 和 の後 ,パ ーサ とローマで一 緒に滞在 してい て も, その間, エ ドワー ドの名は 絶対 に 口に 出 さず ,何 も感 づ い ていないふ りを し. 「賢 い女 に とって, 一番 む づ か しい こ とは , 自分が愚物 で あ るふ りをす る ことだ 」 との逆 説 を忘れ ない。復 活祭 がす ぎて, ロ y ドンの シーズ ンを楽 しみ , オペ ラで も見 るか とロン ドン 行 を提案す るが. コー ト・リイズには行か ない こ とに しよ うと, パ ーサ の心 を 察 し, 「申 しわ け ない こ とに, エ ドワー ドに泊 って もら う部屋 が ない . とて も 狭 くてね」 と皮 肉を とはす。 モ ームの皮 肉 とい うこ とは , 敵 をや んわ りとた ゝ く武器 で あ る ら しい。彼 の言に よれ は ,皮 肉は, 神 が与 え て くれた才能 であ り 一切 の話 法 の中で最 も精妙 な ものであ る
.
即 ち, 甲胃 であ り,武器 であ り,哲 学 で あ り,永遠 の楽 しみ であ る。
才 智に うえた 人 には食物 とな り,笑 いに渇い た 人には飲 料 ともな る。
敵 対 者 を訊刺( s a r c a s m)
の斧 で虐殺 し, 罵言 の梶棒 で殴打 した りす る よ りも,…皮肉(i r ony)
のパ ラで止 めを さす 方が , どれだ け 優雅 で あ るこ とか。 皮 肉の達 人は , 自分だ けが , そ の意味 を知 ってい る時 に, 皮 肉の効用 を楽 しみ味わ ってい るので あ り,遅鈍 なす べ ての人た ちが , 彼 の言 葉 を額面 通 りに受け板 る時, 内心ひ そか には
ゝえむ とい うので あ るO モ ‑ムほ シニ カ/レとい う世 間の評価 に反対 して, 悪 人だ けを称 揚 してい るのでは な く, 人 間 の善意 に 目をつ む る もので は ない,悪 人 の 中の善 の方 が , 一層光 って見 え る もの であ る と( TheSummi ng Up ,ⅩVI I )
のべ てい るが ,彼 に とって善 な る ものが ,信 じられ る唯 一の価 値 であ る とす る彼 の価値観 と.又 , 小説 中に現 わ れ る善意 の人 々へ の モ ‑ムの憧懐 とをに らみ あわせ て, モ ‑ムの この特 質が , 分身た る ミス ・リイに 自ら反映 してい るこ とは疑 い ない所 で あろ う。 この よ う な 皮 肉的 な見解 は ,彼 が ,詔諺 の セ ンスの持 主 であ る こ との証左 で あろ う。
人 間は善 い事 をす る よ りも,琴 い こ とをす る傾 向に あ る と考え るのが ・ 皮 内的 な3 9 見方であるならは,それは, 人が ヒューマーのセ ンスを持つ者の払わねはなら ぬ代償であるか らである
。「他人を笑 う時には, 怒 りは含 まれない。 ヒューマ ーは,寛容を教 えるものであ り, ヒューマーの所有者は,微笑 と,おそ らくは 溜息 と共に,他人を牡鹿す るよ りは肩をす くめ るのである. (この動作は, 彼 の作品でいかに くり返 され ることか).彼は道徳を とか ない。 理会す ることに
( 筆者 )
満足 してい る
.この理解す ることは,あわれみ,そ して赦す ことであ る
.モ ‑ ( 4) ムを残忍であ り, シニカルであるとして も, この よ うな傾向が底に流れている ことを見忘れてはなるまい。
註
( 1 】 氏.G.Pf e i f f e r ,So me T : S e tM au gham,P.4 3.
( 2) Pr e f a c et oM rs .Craddo c k ,TheCo l l e c t e dFdi t i on ( ・ 3 ) A Wrz ' i e T J sNo t e bo o kP.1 2
( 4 ) TheSu mmi 7 Z g Up ,XX.
Ⅴ
愛の死 のテーマは, 悲劇を意味 しない。 それには compens at i ons があ る 。
( 1)
愛の業火に,身を さら し.最后には,それか ら脱 して. 静穏 の境地に達す るの である。 こ ゝに彼 のはのかなオブテ ミズ ムを感 じるのである 。 しか も, この よ うなテーマは,彼が好んで用い る所であ る 。 パ ーサ と同 じケースで,理性では ど うしよ うもない愛欲 の うずに まきこまれ るが,最后には超克 した Ki t t yを主 人公に した, "ThePai nt ed Vei l " に於て も,そ うである し, 『人間の鮮』の フ
ィリップにせ よ,最后には静か な,平凡な, 落ちついた結婚生活に入 るのであ る
。あらゆ る秤を脱 して,初めて自己を知 り,人生に戎悟 りを開 き, 再出発す る人 々を描 きつづけた のである
。これは, と りも直 さず, あの有名な人生模様 のモームの人生観につ らなる
。人生は無意味であ り, まさに生 きるに値い しな いが, 虚無に落ちず,人生模様を完成す る為に生 きて行かねはならぬ とす る。
これは, た しかにか って医学生であ ったモ ームの人生に与えた処方隻である。
若いモームは. 自分 の周囲の美 とか,生命 とかの, うつ ろい易い ものを, 自分
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の及ぶか ぎ り,楽 しみ,味わお うと努力 したのだ。 「若 さ と, 心労 とは相容れ ない ものであ り, この生 きてい る世界の驚異を,腕を さ しのべ て,我が胸にだ き しめ よ うと してい る中に, すべ てが,はか な く終 って しまわねはな らぬ運命 にあ るとい う恐 しい思いが追い払われ て行 くのである
。
死は厭わ しい もの.坐 はいつ も意気揚 々として感ぜ られ る.
バ ラも, ヒア ジンス も, 人間の朽 ち果て た所か ら花を咲かせ るのであ る。人 間が消滅 して行 くことは, 只 々次の誕生 の 合図で しか な く,世界は美 しく,常に新 ら しく, その活力を渠 しみ ,味わいな が ら進んで行 くのであ る。」若 さだけが, すべてをバ ラ色に彩 らせ るわけでは( 21
ない。一度苦難に さいな まれ て も,やがては.それに慣れ,悲哀 も忘れ , この 世は再び生 きるに.価いす る と思 うのが人間 とい う生物であ る。パ ーサは ,ヂ ェラ ル ドとの恋に敗れ,傷心の態で, コー ト・リイズに帰 って来 て, 人生は一切 の 風味を失 った, 自分の倦怠は果 しない ものだ と断 じたが, それは オ ーパ ない ゝ 方 であ って.人生が思 った よ り, 我慢で きることが分 って腹立た しくな って く るのである
。
モ ームはい う, 「人間の魂 ・心情 ・心意 とい うものは,一種 の楽 器であ って.無数 の曲を奏で ることが出来 るに して も,そ う長い間. 一つの曲 にはか り, 感応 し続け ることは出来 ないのである。
どんなに精妙な情感で も, 時 の流れは,それ を鈍 らせ,いかに胸を ひきさ くほ どの悲嘆で も.時はそれ を やわ らげ て しま うのだ。人は物事 に慣れて行 くよ うに出来 ていて, いかに,た え難 い倦怠に も,無感覚 にな り,単調 さもた えがた くな くな り,環境に順応 して, 人生を さほ ど退 屈な もの とも思わ な くな る」 と。
又,読書 とか,古典音楽 を聞(3)
く事 の効用を とく。それ らは人を人工の禁園に さそい, 世 のすべ てに無関心に し, 愛憎,希望,絶望,野心,情念 とかを起 さなければ,人生は庵めて容易で あ る.ことを悟 らせ るとの ことである
。
パ ーサは ,苦悩か ら逃れ るには,死以外 にはない と自殺を幾度か 考え るが, 自殺す るには,大 きな勇気が必要 であるこ とが分 り,同時に.かつ ては, あれ程神を呪 った彼女に とっては, 不思議 な こ とだがhe l 1 ‑ f i r e
へ の恐怖が障碍 とな って くる.
モ ームに よる とこの怖 れ は, 実 に不条理であるが,我 々の心に しみ こんで,いかに努力 して も, 理性や論 証 を発動 して も,拭い去 ることは出来ず, 人間に永劫 の罪を負わせ る神へ の恐怖4 1
が依然 と して我 々に残 ってい るのだ そ うであ る。
これは,又,必然的 な死 も, も早. 自然 に肉体が衰弱 して,意識 を麻 捧 させ て しま うか ら. 何の苦痛 も与 え ないのだ とい うことにつ らな って くる。
自殺す るこ とは出来ず,死は苦痛 な く 迎え られ,時 の作用 ,人間 の魂 の正常へ の制御作用 , 人間の発 明 した慰め事 で( 4)
苦 しみ も,不安 も忘れ るこ との出来 る可能性, 人間は放 ってお いて も善に向 う とい う人間性へ の信頼感 , (ミス ・リイの,パ ーサに対す る判断), それ らは
( 5)
更に, ミス ・1)イの次 の言葉か ら推測出来 る, モ ‑ムの実際性, 常識性に よっ て支 え られ てい る
。
「この世 の中では. ど うすれば, よいのか を知 るのは, と て もむづか しい。 人は よ く善 と琴 とを区別 しよ うと焦 るけれ ど実 は・ それは多 くの場合 ,似た りよ った りの ものだ。世間には よ く, 何の疑 い も持たず十戒を守 ることに満足 しきって. 自分 6r,}身の処 し方を正確 にわ きまえ, 天国へ の希望 と 釘技 を手に した蹄 の割れ た悪魔へ の恐怖 とに しっか り支え られ てい る人 が い る け ど.私はそ うい う人を とて も幸福 な人だ と思 ってい る。 『汝すべか らず 』に 対 し Fなぜ』 と答え る私達 は, コムパ スな しで冬の海を行 く船 乗 りみた いな も のなのだ。理性 と本能 とが こ うだ とい うと,因襲 はそ うじゃ ない と言 う。
こゝ
で一番いけ ない ことは, 人間の心が十戒 で育 てられ,地 獄の劫火 で養われ てい て, しか も.そ うした 良心 の言葉が最后的 な断定にな ってい るこ とだ. この点 を考慮に入れ てお くことは,そ りゃ卑法か も知れ ないけれ ど, で もた しか に思 慮あ ることだ と思 う。
(中略 )世 間一般 の見方に反抗 して進む為 には, か な り 強い 自信が必要 にな るものだ。も しそれ程 の 自信が ないのだ った ら,そんな危険 を 冒す こ とは しないで,世間 の人が歩 くの と同 じ安全 な遠を行 った方が得策 だ と思 う。
それはBrJrにすは ら しい こともな く,雄 々 しくもな く,退 屈 きわ まる遠 であ る.
で もそれは安全 な道であ る」 自業 の時 に ものべた よ うに.又, 上述 の( 6)
よ うに,十戒に疑 問を抱 き, 反 間す る生 き方 は,実に危険で あ り,安全に生 き るには,理性 とか, 本能 とか では ど うしよ うもない現実 の流れに まかせねは な らぬ とい うこ とに落ついてい る
。
生活派 モ ームの当然 の儒 著であ る。
この言葉 紘, ミス ・.)イが,失意のパ ーサに人生の極意を伝授 した よ うな もので, 本作 品中,最后 に発せ られた ものだけ に, 印象的 で もあ り, モ ームの生 き方 の本心消凋涌mt瑠淵頂瑠璃溺淵濁頭淵謂唱欄遷屈欄讃潤湧竃月梢頂凋濁.頂W/Tm
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をのぞかせてい るよ うに感ぜ られ るq彼 の脊景には, 常に深測然 とな って現実 が控えてい る
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現実暴露は彼 の得意である. この探測を警戒す るモームの常識 性を欠陥だ とし,作家 としての限界をなす のではないか, とい うよ うな問題は さておいて.彼が シニカルであ り,不可知論 者だ と論 じて も, この常識 性が彼 の人生模様 をい ささか の破綻 もな く維持 してい る源泉であること は 明 白 で あ る.バ ‑サが夫の死後, 人間の孤独を新たに認識 し,慰めを見出 し,読書 し始 め るとい う結末は. 以上 の よ うな常識性に さ ゝえ られた一種 の楽天観の自らの 帰趨 ではあるまいか。( 7)
註( 1 7
K.G.Pf ei f f er ,So me r s e tMaz L gham,P.4
1. ( 2) l WT T S .Cr addo c k ,XXVI I .
( 3 ) Z
bi
d.,XXXI V.
( 4 ) TheSu mmz ' ng
Up,XXXI I I
「生命力 とは強い ものであ る。 それ に伴 う喜びは人 間が直面す る苦痛 や辛苦のすべ ての埋合わせ をす る。 それは,人生 を生 きる価値あ らしめる。 なぜ な らば,それは 内部か ら作用 し,その明 るい煩 で,各人の還項 を照 らすのでいかに耐 えがたい こと を も,なおかつ耐え得 るよ うに思わせ るか らである。」
( 5 ) M r s .Cr addo c k,I V.
( 6) Zbi d. ,XXXI I T .
(
T J TheSI L mml ' T t g
Up,LXXI I I .
「我 々が,文明化 されてい ると呼びな らわ した国々で.現在で も,人 々が互い に相 手 を扱 ってい る冷酷 さを見る時,彼等が苦 よ り,い くらか よ くな ってい るとい うの は性急 であろ うが,それ に も,か ゝわ らず.大体 において, 世界は,歴史が,我 々 の前に並べ て くれ る過去0}世界 よ りも,住み良い場所 にな ってい る し,現在 も悪 く はあ るが,大 多数の人は.苦ほ どひ どくない と考 え ることは,必ず しも迷妄でない とい う気がす る し,知識の増大 ,多 くの残酷な迷信や 使い古 された因襲の追放, ち つと強い,愛情 あ る心優 しさを もってすれ ば.人 々が うけ る多 くの君 も除かれ るだ ろ うとい う希望 を持 って も,不合理 ではないだろ う。」