本論は、時代精神というものが想定でき、その空間表出として [ 建 築 ] に、時間表出として [ 音楽 ] に表象されてきたという立場
(fi g.01)に立ち、 音楽側から時代性を見出し空間として昇華させる
(fi g.02)試みである。
□はじめに
心地よい空間とは何であるのか、 建築の持つ社会性や建築家 の思想の反映の特異さが価値となる現代の建築が、 被経験者 の好感を求むことはないものかという疑問から始まった。
□建築と音楽、 なぜコンテンポラリージャズか
建築と音楽はどちらも芸術の一カテゴリーとして古くからその時 代の精神を表現してきた。 現在のパッケージングされた建築なり 商業音楽は、 どちらも大量消費社会というバックボーンをもって 成立しているだろう。
コンテンポラリージャズとは、 1990 年頃よりフュージョンジャズの 中から出てきたジャズの分類である。 クラシック要素が強く、 派 手さとは一線を画しているコンテンポラリージャズが現在多くの人 に愛され、 新たなジャンルとして確立したものになってきている のは、 聴衆が 「飽く」 を基本とするそのシステムに 「飽き」、 素 直に美しいものやきれいなもの、 普遍的感動を求めているから ではないだろうか。 “甘美” の追求であるコンテンポラリージャ ズから時代精神を抽出し、 その空間表出として建築に落とすこと ができたなら、 現世代の建築空間の可能性の一つとして示すこ とができるのではないかと考える。
□研究方法 01. 分析
ジャズの歴史の変遷を軸にその時代的必然性とその思想を追 い、 同じ概念を持つ建築をピックアップして考察し、 系統付けを 行う。 そしてその結果としてコンテンポラリージャズに相応する建 築空間を模索、 考察する。
1-1 においては出来事とムーヴメントとジャズ史を基軸におき、
現代において時間的表象としてのジャズ、 空間的表象としての 建築がどのように進んできたかを明記する。
1-2 において主題であるコンテンポラリージャズより見出せる時代 精神を探り、 1-3 では 1-1、 1-2 をうけて、 ジャズ史のムーヴメン ト、 スタイルの時間軸上に時代精神を抽出させ、 それらの特徴 および出来事などを考察。 1-4 において、 それに相応する建築 の特徴を 《建築的》 に図式化し、 組み合わせることでそれぞれ のムーヴメント型空間をモデル化する。
02. 設計
01. より導かれたコンテンテンポラリージャズに相応する部分のモ デルを基本空間枠組みとし、 実際の建築空間を設計していく。
□ Dixieland-New Orleans-Swing
(1900~1940)(ジャズの起源の頃であるため、 本論の趣旨であるところの時代精神を反映するものと しての建築と音楽、 の両翼の扱いでは未だ語れない)
▣ 第一次世界大戦後のヨーロッパにおけるパラダイムシフト、 歴史の拒否 ▣ ヨーロッパ人による黒人文化の見直し
▣ 近代社会化、 特定個人より不特定多数の時代 ▣ 自動機械の発達
○ジャズの起源
○白人音楽理論を基にした黒人音楽の発展形
○ビッグバンド ・ 巡業興業スタイル
●生産することや新技術への興味、 機械的速度への憧れ
●第一次世界大戦後、 アメリカ型合理主義的都市が世界中につくられる
□ Bebop-Modern
(1940~1960)▣ 第一次グローバリゼーション、 大量消費社会化
▣ ソ連の人工衛星に代表される 50 年代科学万能主義
○曲そのものよりも個人のアドリブに価値がおかれ、 技術が飛躍的に上がる
○手法がバークリーメソッド ( バッハの 12 等分平均律をもとにした商業音楽を簡単に つくることのできる理論体系 ) と合致し、 ジャズが記号的に処理され、 数学的で再 現性があり、 誰でも理論を学べば簡単に生産可能なもの、 同時にとてもコスモポリ タニズムなものへとなる
●コルビュジェ 近代建築の5原則
●インターナショナルスタイル、 バウハウス
●世界中でモダニズムと土着の問題の解決がなされる
●国際的なロマン主義運動の流れ
□ Free / Funk / Soul
(1960~1980)▣ 60 年代の科学万能主義の崩壊
▣ 冷戦構造による緊張と反動としてのマス ・ ヒステリー ▣ カウンターカルチュア、 マリファナ的な感覚の歪みへの偏向 ▣ パーソナルな心情表現
○アンプリファイヤを使った非機能和声的音楽空間 (Free)
○単一コードの進行中でのシャウト、 アジテーション (Funk)
○ブラックナショナリズムの台頭
●視覚的歪み ・ うねりへの偏向
●枠組の拒否
□ Mode-New Mainstream
(1960~1970)▣ 20 世紀後半 理性の時代から感性の時代へ
▣ 構造主義思想の到来、 様々な分野で全体と部分の思想は広がっていった
○ Miles Davis “Kind of Blue” 1959
○単コードの推進による 「色」 が主体となる 「モード」 によって曲が作られる
○多彩な音楽の分析と統合
○西洋音楽理論やバークリーメソッドの箍が外れ、 よりアーティスティックになっていく
● CIAM の解体、 TeamX の台頭
●建築家によるヴァナキュラーへの興味
● 1962 「絶対建築」 …建築の機能からの脱却
□ Fusion
(1970~)▣ 技術の飛躍的発展
▣ ベトナム戦争、 冷戦構造の反動としての享楽性
○多ジャンルの音楽を異化して取り込む
○モダンの構造にエレクトリックの濁りや 16 ビートを加え、 現代風にカラーリング
○量産性、 技術重視の果ての形骸化とマンネリ化
●高度なテクノロジーの顕示、 過去の文化と現代のフュージョン
●対象との相対によって価値を見出す方向性
□ Techno
(1980~)▣ 80 年以降、 様々な面で電化が進み、 パーソナルコンピューターが普及
▣ 自然摂理の制覇の欲望
○ MIDI 規格の制定。 すべての音のファクターを数値に換算、 デジタル化すること が可能になる
○バークリーメソッドの完全なる終焉
○超正確なコンピューターとそれを操ることができ、 且つ上手な人間とのコラボレート
○ポップでアヴァンギャルド
●建築家の具現化が可能になり、 浮遊感、 生命感への偏向
●アルゴリズムなどの数値による形成動機
コ ン テ ン ポ ラ リ ー ジ ャ ズ 的 建 築 空 間 の 形 成
ジャズ ・ スタイル史を基軸とした空間形成概念の変遷/インプロヴァイスされる身体
508065-0 寺
て ら だ ゆ り田裕梨 指導教員 赤堀 忍 建設工学専攻 ( 修士課程 )
建築設計研究
00. 序論 01. 分析
1-1 ジャズスタイル軸時代的考察
fi g.01 fi g.02
空間芸術
建 築
時代精神
時間芸術
音 楽
空間芸術
建 築
時代精神
時間芸術
音 楽
▣ …出来事や時代精神
○ …ジャズ史、 スタイルの特徴
● …建築史、 特徴
コンテンポラリージャズの特徴は、 甘美性と旋律のわかりやすさ、
コンポーザーの個人的な 「夢世界」 の具現化としてつくりだし た音楽が、 多くの聴き手にとっても 「自分の夢の中で鳴ってい る音楽」 に思えてしまう、 個人的なイメージを 『普遍』 に直結さ せる力 ( 共感覚 ) を持つ。 音響構造は新主流派から続くモーダ ル ・ コーダルであるが、 見せ方によってはコード進行であったり、
モード進行であったりと使い分けがされる。 音韻構造はポリリズ ムや変拍子の多様が見られるが聴き手にとって不快や違和感を 感じさせない。
これらのことより、 コンテンポラリージャズから見出せる時代性は 以下であるとする。
▣ 美的追求 ・ 抒情化
▣ 枠組みの再構成
▣ エキゾチズム ・ デジャヴュ
1-3 よりそれぞれのスタイルの共通する概念をモデル化し、 系統 付けを行う。 表の流れと 1-2 を考慮したり、 コンテンポラリージャ ズ的概念を持っている建築を考察し、 Contemporary の枠を創
出する。
(fi g.04)歴史に現れるすべての建築を網羅しているわけで
はなく、 かなり強引なやり方ではあるが、 コンテンポラリー空間 の片鱗を導くための最適な強硬策であると考える。
建築家の設計概念の中で下記の要素がどのよう捉えられ、 考え られているかを図面 ・ 文章 ・ 写真などから分析する。
(fi g.03)対象となる 28 の建築は、 ジャズのスタイルが反映している時代 精神を反映しているものと考えられるものを選択した。
▣ 平面概念
▣ 断面概念
▣ 構造と構成
▣ 内部空間と立面の関係
▣ 外部からの動線
▣ 内部と外部の関係
インプロヴァイスされる身体
インプロヴィゼーション [improvisation] … 演奏即興主要参考文献
五十嵐太郎 ・ 菅野裕子 『建築と音楽』 NTT 出版、 2009 年
S.E.Rasmussen 『経験としての建築』 (佐々木 宏 訳) 美術出版社、 1966 年 菊池成孔 ・ 大谷能生 『東京大学のアルバート ・ アイラ― 東大ジャズ講義録 ・ 歴史編』 文藝春秋、 2009 年 村井康司 『ジャズの明日へ―コンテンポラリー ・ ジャズの歴史』 河出書房新社、 2000 年 松本俊多 『20 世紀の建築思想 キューブからカオスへ』 鹿島出版会、 1998 年
小結 : コンテンポラリージャズ的建築空間形成
以上より、 コンテンポラリージャズ的建築空間を形成するため の要素概念を 1900 年以降の現代史、 建築史、 ジャズ史よ り抽出することができた。 これらの要素をもって、 さらにはコン テンポラリージャズの作られ方の最大の特徴である 「甘美なイ メージの具現化」 の考えをもってつくられた建築を 「コンテン ポラリージャズ的建築空間」 とする。 建築家は、 自らの体験 に基づく抒情的描写を用い、 万人に同じような感覚をもって もらうように計画する。
(fi g.05)Dixieland
OrleansNew Swing
Be-bop Modern
Funk Soul
Mode New
Mainstream Fusion
Free Techno Contem-
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fi g.03 データシートサンプル
fi g.04 ①ジャズスタイル名 ②平面概念 ③断面概念 ④立面と内部空間の関係 (A…立面 B…機能 )
⑤コンテクストと建築 ⑥構造と構成 (X…構造 Y…構成 ) ⑦シークエンスの心理的効果 fi g.05
02. 設計
Contemporary ᯟ⤌䜏ᴫᛕ䛾ᵓᡂ⨾ᚨᕼồ 䞉 ᢛ
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Architecture
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1-2 コンテンポラリージャズから見出せる時代精神性
1-4 スタイル型空間概念のモデル化 1-3 スタイル型空間概念の分析
以上より、 コンテンポラリージャズ的建築を計画することで本論 の結とする。
空間において 「行きたくなる」 や 「立ち止りたくなる」 などの衝 動は即興演奏における妄聴
(場の音の力道がどっちへ向かおうとしているか察知する能 力。 ソリストはその妄聴の方へ行ったり、 わざとずらしたりする)と同じであり、 コンテンポ ラリージャズ的建築の場合、 建築家はその妄聴を喚起させ、 そ の場その場で建築家の表現したいイメージ通りに感じ、 動いて もらうように計画する。
コンテンポラリージャズ的建築
* 建築家の具体的なイメージや甘い夢の具現であること * そしてそれが被験者にとってもそうであるように感じること * 甘美であり、 違和感をもたらさないものであること
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እ㒊䛛䜙䛾ື⥺ ෆ㒊䛸እ㒊䛾㛵ಀ ファンズワース邸
Farnsworth House Mies van der Rohe , 1950 , USA
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