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後接成分とオノマトペの性質について

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

後接成分とオノマトペの性質について

著者 加藤 久雄, 坂口 昌子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 45

号 1

ページ 1‑12

発行年 1996‑11‑25

その他のタイトル A Classification of Onomatopoeias −a view of syntax−

URL http://hdl.handle.net/10105/1561

(2)

後接成分とオノマトペの性質について

加 藤 久 雄・坂 口 昌 子*

(奈良教育大学国語学教室) (平成8年4月30日受理)

I は じ め に

英語のオノマトペが、 Stars twinkled in the sky. The diamond sparkled on her finger. The rich ladyglittered with herjewels.のように、動詞としてふるまうことが多いのに対して、日 本語のオノマトペは、 「きらきらと光っている」 「ぴかぴかと光っている」 「ぎらっと光っている」

というように副詞としてふるまうことが多い。英語が動詞の違いによって表現していることを、

日本語は、同じ動詞「光る」をどのようなオノマトペが修飾するかということによって、その意 味内容を分化させ、より細かな概念の表現を成立させているのである。しかし、 「イライラする」

「ノソノソする」のように「スル」を伴って、動詞述部になることもあり、また、 「彼にメロメロ ダ」 「ぼろぼろナ駐烏」 「ピカピカノお皿」のように「ダ」 「ナ」 「ノ」を伴って形容詞としてふる まうこともある。

このように、日本語のオノマトペの構文上のふるまいは、多様な様相を見せるのであるが、な おかつ、すべてのオノマトペが等しく「ダ」や「スル」を後接することができるわけではなく、

形容詞化できないものや動詞化できないものも存在し、オノマトペの構文上のふるまいは一様で はない。このような個々のオノマトペの構文上のふるまいの違いは、個々のオノマトペの性質の 違いに起因するものであると患われる。本稿は、オノマトペの構文上のふるまいの違いを手がか

りにオノマトペの分類を試みるものである。

II 先行研究

オノマトペの構文的ふるまいを明らかにすることで、オノマトペの分類を試みた論究には、宮 地(1978)や星野(1991)などがある。宮地はオノマトペを後置モーフから4種に分けて、それ

らの重なりと意味記述について考察している。その上で、これら相互間の関わりは、類別が全く 不可能というわけではないが、割り切れない部分が多く存在するということを認め、明確な分類

は提示していない。

星野(1991)は、リ終わりのオノマトペに分析の対象をしぼり、考察を行っている。しかし、

オノマトペには、派生形を持っものが多く、派生で生じた形によって、以下のように、それぞれ

* 現在 本学研究生

(3)

加 藤 久 雄・坂lj 昌 子

の構文的ふるまいが変わってくる場合もある。

(1) a ケーキが ふわふわしている。

b ケーキが ふわふわだ。

C ケーキが ふわふわに 焼けた。

2) a ケーキが ふわっとしている。

b'ヶ〜キが ふわっだ。

Cホヶ‑キが ふわっに 焼けた。

(3 a ケーキが ふんわりしている。

b'ヶーキが ふんわりだ。

Cネヶ‑キが ふんわりに 焼けた。

さらに、オノマトペの形態は、それが修飾している用言の性質と密接に関わっていて、動作性 や状態性という用言の性質によって、修飾できるオノマトペの形態が限られてくる場合があるの である。このようなオノマトペの特性は、分析の形態をひとつに限定することによって、見えに くくなるわけで、本稿では、リ終わりだけではなく、構文的ふるまいに積極的に関わってくる派 生形についても考察する必要があると考え、分析するオノマトペを形によって限定しない。

また、星野(1991)が提示するマトリクスは、横軸に後接成分が平坦に並べられており、品詞 性の問題や呼応の問題が同じレベルで論じられている。本稿では、格助詞の問題、品詞の問題、

呼応の問題を、それぞれ切り離して扱うこととした。

この他にも、スルの補足成分としてのオノマトペについて、西尾(1981)、中北(1991)が論 究している。西尾(1981)は、スルと結合するオノマトペについて、アスペクト・テンス、意志 動詞・無意志動詞、自動詞・他動詞、使役、受け身、格支配などの観点から分析を加えている。

中北(1991)は、スルと結合するオノマトペについて、オノマトペが動詞になり得る語嚢的意味 を持っていても、単独では動詞として機能することができないので、形式動詞スルと結合して、

動詞相当の機能を得るのであるということを述べ、 「スル」 「ダ」を伴うか伴わないかということ から、オノマトペを4種に分類している。

本稿では、これに加えて、形式動詞の場合だけでなく、一般の用言をとる場合も考察し、形式 動詞と一般の用言を対比させ分析を行う。これによって、 「スル」の唆昧性というものがさらに 明確に見えてくると考えたからである(1)

III 調査方法

1 調査対象

オノマトペが構文上でどのような後接成分をとり、どのような後接成分をとることができない かということを明らかにするために、次のような調査を行った。

まず、扱うオノマトペの範囲を限定するために、日向・日比谷(1989)にあげられていた325 語のオノマトペと、その意味記述を用いて、次節の図1に示す体系に従って、 ¢格とダ・スル・

用言を後接できるか、ト格とダ・スル・用言を後接できるか、ニ格とダ・スル・用言を後接でき るかどうかという調査を行った。

(4)

日向・日比谷(1989)を用いたのは、まず第‑に、オノマトペの多義性が生む構文的ふるまい の違いと、分析の対象となっているオノマトペ本来の構文的ふるまいの違いとが、混同されてし まうことを避けたかったためである。 「菌がグラグラする」と「お湯がグラグラ煮えたぎる」の

「グラグラ」は別語であるとして分析を進めねばならないわけで、この資料は、意味の記述がオ ノマトペに付加されているので、それをこの別語の認定に使用した。また、形の限定をせずに、

網羅的にオノマトペを収集したかったため、小規模な辞書ともいえるこの資料にあげられている オノマトペすべてを調査対象とした。

次に、日向・日比谷(1989)から抽出したオノマトペの構文的ふるまいを客観的にとらえるた めに、用例を収集し、構文的ふるまいを調査した。用例の採取できない語は、内省によって補っ た部分もあるが、主に、エッセイを中心とした文庫などからオノマトペを含む一文を抽出し、

データベ‑ス化したものを言語資料として使用した。エッセイを中心に資料を求めたのは、オノ マトペが書き言葉よりも話し言葉に多用されることからである(2)。

2 後接成分について

星野(1991)は、マトリクスの横軸に、オノマトペの後接成分として、 「ニ・ト・トスル・ス ル・ダ・ナ・ノ」をとるかどうか、名詞、形容詞、動詞のどれを修飾しているか、 「〜ナイ」と 呼応するかどうかという11の項目を置き、それらの条件をどれだけオノマトペが満たすかとい

うことから、オノマトペを分類している。しかし、文は階層的構造をなしているものであるから、

星野(1991)のように、助詞の問題や品詞性や呼応の問題を、同一軸上に並べて論じることには 疑問を持たざるを得ない。そこで、本稿では、後接成分について、図1に示すような階層性のあ

る分類を試みた。

[図1]

形容詞型」二;:書芸(ダ'ナ'ノ)

‑:

形容詞型‑工;:書芸(ダ̀ナ'ノ)

動詞型‑三豊霊悪霊

書芸(ダ'ナ̀ノ)

」二聖霊霊雷芸

図1は、オノマトペの直後に、 「¢ (無助詞を示す)」 「卜」 「ニ」の助詞が後置して、その助詞 の後に、 「ダ」、形式動詞である「スル」、スルやナルなどをのぞいた一般の動詞の3つの要素が くるということを示している。ダ型に①と②を定めたことは、後でも述べるが、ダ型①が

(5)

加 藤 久 雄・坂 口 昌 子

「ノ」で連体修飾することのできる「ダ」、ダ型②が「ノ」で連体修飾をなすことのできない

「ダ」である。 「くねくね」で以下に例を示しておく。

(4) 飴が くねくねダ。

(5) 飴が くねくねスル。

(6) 飴が くねくね曲がる。

(7   飴が くねくねトスル。

(8) 飴が くねくねト曲がる。

(9) 飴を くねくねニスル。

(10) 飴が くねくねこ曲がる。

¢格・ダ型①

¢格・形式動詞型

¢格・一般動詞型 ト格・形式動詞型 ト格・一般動詞型 二格・形式動詞型 こ格・一般動詞型

図1は、後接成分の部分だけを取り出したもので、アスペクトやテンスと関わる部分はこれ以 降にあると考えている。以下で、これらの後接成分のひとつひとつについて考察していく。

IV 考  察

1 格について 1.1 ¢格について

オノマトペは基本として「卜」を後接するが、 「ト」を伴わないものも存在する。以下のよう な例がそれである。

(ll) a 海の魚がすっかり浮かび上がってきた。 [中2 270]

bホ海の魚がすっかりと浮かび上がってきた。

(12) a かがやける大都会もそっくりお前達が譲り受けるのですO [6年99]

b 'かがやける大都会もそっくりとお前達が譲り受けるのです。

彰飛(1985)は、 「ぎりぎり」「かっきり」 「そこそこ」 「すれすれ」 「ちょっきり」などの、数 を限定したり、程度を示したりするものは普通は「ト」を後接しないと指摘している。確かに、

これらは音象徴性を感じさせなくなっているし、派生形を持たず、オノマトペの周辺部に位置し ているオノマトペであるといえよう。しかし、すべての程度副詞が「卜」を後接しないわけでは なく、 (13)にあげる「シッカリ」や「‑ッキリ」「タップリ」などは、任意に「ト」をとること ができる。

(13) a 体験というのは、体のどこかにシッカリと刻まれているものだと思う。 [パイ12]

b 体験というのは、体のどこかにシッカリと刻まれているものだと思う。

1.2 ト格について

ト格は、ニ格のように決まった意味だけを表すということはなく、比較的任意にオノマトペに 後接して働くが、次のようなものは必ず「ト」を伴わなくてはならない。

(6)

(14) 4拍以下のもの

(15) 4拍以上でも最終拍が促音もしくは樽音のもの

また、一般的傾向としては、社会的に約束されたオノマトペではない、一時的なものや、音象 徴性が高いオノマトペは「ト」を伴うことが多いといえ、逆に音象徴と意識されなくなったよう なものは、普通「ト」を後接しない傾向にあるようだ。つまり、 「ト」は、オノマトペが昔象徴 性を失い、一般の副詞やその他の品詞に変化していく過程で省略される傾向にあるのである。逆 に、音象徴性が高いオノマトペは、 「卜」を後接した形で用いられる傾向にあるのだと考えられ

る。

1.3 ニ格について

「ニ」は、オノマトペに後接し、 「何かが起こった結果、どのようになったか」ということを表 す。そのため、変化の結果を表すことのできるオノマトペだけが、このこ格をとることができる。

ニ格をとることのできるオノマトペには、次のようなものがある。

(16)カラカラに 乾く。

(17)クシャクシャに する。

(18)フラフラに なる。

(19)ベロベロに 酔う。

(20)ドロドロに 分解される。

(21)カンカンに 怒る。

これら「ニ」を伴うオノマトペは、以下の(22) (23)のように、変化の結果の状態がある一 定期間続いている状態を表すものであると思われる。

(22)羽は、ばらばらになっていて、繕うことなんか、もう思いもよらなかった. [中1 252}

(23)僕とAは、コチコチに緊張しつつ、その店に入った。 [ぼく 47]

そのため、瞬間性・一回性が高いと考えられる非畳語形は「ニ」を伴うことがない。

(24) a おからを洗ったらどうなるか。ドロドロになって形も何もなくなってしまうではな いか。 [憤怒12]

b'おからを洗ったらどうなるか。ドロッになって形も何もなくなってしまうではない か。

C おからを洗ったらどうなるか。ドロッとなって形も何もなくなってしまうではない か。

また、程度性を表すオノマトペも、 「ニ」を伴うことができない。

(25) a 周りを円く石で囲み、たっぷり水をやりました. [小6 上95]

(7)

加 藤 久 雄・坂 口 昌 子

b'周りを円く石で囲み、たっぷりこ水をやりました。

ただし、 「ニ」を伴うオノマトペの中には、 「ト」も、後接させることのできるものがある。こ れらは、 (26)のように「ニ」だけを後接できるオノマトペとは異なり、 (27)のように、 「ニ」

を伴って何かが変化した後の結果を表したり、 「卜」を伴ってその時の状態を表したり、という 両方の過程を表すことができる。 (26)は、酔っぱらった結果である「ぐでんぐでん」という様 子だけを表しているために、その結果に至る過程の状態を表すことはできないのであるが、 (27) は、殴られている最中の様子も、殴られたあとの状態も表すことができる。

(26) a 父はぐでんぐでんに酔っぱらって帰ってきたO [中1 195]

bホ父はぐでんぐでんと酔っぱらって帰ってきた。

(27) a チンピラにドプにたたき込まれて、ポカポカに殴られていたそうだ。 [ぼく166]

b チンピラにドプにたたき込まれて、ポカポカと殴られていたそうだ。

2 形容詞型・動詞型について 2.1形容詞型について

奥津(1978)は、副詞のダ型文が連体修飾するときに、 「ノ」が立っことから、 「ナ」だけが連 体形なのではなく、 「ノ」も同様に連体形であるとしている。本稿でも、採取した用例の中に

「ナ」で連体修飾した例がなく、すべて「ノ」で連体修飾をなしていたことから、 「ナ」と「ノ」

をともに「ダ」の連体形として扱う。

奥津(1978)は、すべての副詞が「ダ」の前にたっわけではないことを指摘しているが、オノ マトペも同様で、 「ダ」のつくものとつかないものとがある。 (28)は、形容詞型(ダ型)も一般 動詞型も可能だが、 (29)は、形容詞型のbが不可である。

(28) a 劉さんは E]本語も中国語も ぺらぺら喋れる。

b 劉さんは 日本語も中国語も ぺらぺらだ。

(29) a お父さんはそれを見てにっこり笑うと、何も言わずに汽車に乗って行ってしまいま した。 [4下14]

b 'お父さんはそれを見てにっこりだ.

ところで、 「ダ」には2種類があると思われる。一種は「ノ」で連体修飾をなすもので、もう 一方は連体修飾をなさないものである。便宜的に前者をダ型①、後者をダ型②とする。ダ型② は(30)のように、会話文などでは、かなり任意にオノマトペと結びっくことが可能である。

(30) A氏: 「彼女驚いてた?」

B氏: 「もう、あたふただよ」

そのため、本稿では、ダ型②の形式は考慮せず、ダ型①のように「ノ」を伴って連体修飾す るものだけをダ型として扱う。

ダ型①になり得るものには、 「アッサリ」「カサカサ」「カチカチ」「カラカラ」「キチキチ」

(8)

「ピッタリ」 「ブクブク」 「ホカホカ」などがあるが、これらの特徴として、ニ格をとることので きるオノマトペであるということができる。

(31) a 机の中が ゴチャゴチャだ。

b 机の中が ゴチャゴチャになっている。

(32) a 老犬で ヨポヨボだ。

b 歳をとって ヨボヨポになった。

ニ格は、何かが完了し、その結果の状態を表す時に使われるものであるが、 「ダ」も同様の働 きをすると考えてよいと思われる。 「ゴチャゴチャではなかった机の中がゴチャゴチャになって いる」という変化の過程を持つものは、ダ型を持つことができ、 「ニッコリ」などのように一瞬 の様子を表し、変化の過程を持つことのできないものは、ダ型を持っことができないのではない だろうか。つまり、動作の開始から終了という一連の動きが完了した状態が、ある一定期間持続 している状態について、言及できるオノマトペが、 「ダ」を後接させることができるのではない かと考えられる。このように、ダ型とこ格は、非常に密接な関わりを持っているが、例外もあり、

「タップリ」は「ダ」を後接するが、 「ニ」を伴うことができない。これは、程度を表すためで、

程度副詞的な用法を担うためであると考えられる。程度副詞がこ格をとれないことは、 「IV. 1.

1」で述べた。

2.2 動詞型について

多くのオノマトペが「スル」を後接させ動詞として働くことができる。形式動詞「スル」をと り得るオノマトペには、 「ツルツル」「クシャクシャ」「ブヨブヨ」「フラフラ」「ゴタゴタ」「カラ リ」 「サラリ」 「ムッ」などがある。これらの中には、 「スル」以外の一般動詞をもとり得るもの と、形式動詞以外はとり得ないものとがある。 「スル」しか後接しないものには、 「ゴタゴタ」

「オタオタ」「ダブダブ」「ドキドキ」 「ヒヤヒヤ」「ムカムカ」などがある。

さて、これらのオノマトペに共通する特徴は何であろうか。 「このようなオノマトペが、 「ス ル」だけを後接する」といった特徴づけをすることは難しいが、一つ注意すべき点は、形式動詞 しかとらないオノマトペには、擬情語が多く見られるということである。田守(1993)は、次の ように指摘している。

「オノマトペ+スル」形式について、動詞化が可能なオノマトペは、一部のS (SOUND) オノマトペをのぞけば、すべてM (MANNER)オノマトペである。人間の心理状態を記述 する擬情語は、例外なく動詞くみ入れが可能である。 (p.45)

逆に、 「スル」をとることができず、構文上では動詞を修飾する副詞としてだけ働くものには、

「ポキポキ」「ピッショリ」「メキメキ」「ヤンワリ」「ポクボタ」「ミシミシ」「ワイワイ」「リンリ ン」などがある。これらの中には、擬音語が数多く存在している。これらの擬音語に「スル」が つかないことは、宮地(1978)、中北(1991)に指摘がある。

「スル」がつくかつかないかについて、一般化した規則を提示することは難しい、擬情語が

「スル」を後接することができ、擬音語ができないということは、 「スル」は抽象度の高い語に後

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加 藤 久 雄・坂 口 昌 子

接することによってのみ、動詞的な働きをそのオノマトペに与えられるといえるのではなかろう か。そのため、具体的な音声に近い擬音語にはつくことがないといえる。

また、 「サラサラ」などには、二つの意味がある。 (34)のサラサラは形式動詞を後接できない のに対して、 (33)のサラサラは、形式動詞以外の動詞が後接することはない。

(33)サラサラした髪の毛。

(34) a 小川がサラサラ流れる。

b'小川がサラサラしている。

これは、動作性と状態性ということのあらわれだと考えられる。西尾(1981)の「相の言葉で あるオノマトペは、 「スル」が付加された形においても状態詞として働く」 (p.93)ということ に関わってくるのだと考えられる。サラサラの状態を表す時には、形式動詞が用いられ、 「サラ サラ」という動作の形容として用いられるときには、オノマトペは「スル」を伴っても動詞相当 の働きはできず、動詞を副詞として修飾する他はないのであろう。

Ⅴ ま と め

これまでの考察で明らかになったのは以下の3点である。 (図2参照)

(35) ダ型①は、開始と終了がはっきりしている動作について、その終了時の状態が、ある 一定の時間、継続している状態のあることを示す表現であることO

(36)形式動詞型は、開始と終了が唆味な動作について、ある期間の状態を示す表現で、その ため心情の変化などのように外からでは観察しにくい事柄を表している擬情語などに、

この形をとるものが多いこと。

(37)一般動詞型は、ある一定の動作について、その動作をより詳しく表すために、並列的に その状況を表すことができる表現であること。

終了状態の持続 動作開始 終了

動作

(10)

後 接 成

タ  イ  プ オ ノ マ ト ペ ¢      卜

ダ スル用 ダ スル 0 併 用 型      ツルツル クシャクシャ ヌメヌメ 0 0 0 ‑ ○

形式動詞型     サラサラ ゴヮゴヮ       ○ ○ × 一 〇 × A系一般動詞型      ビリビリ ピッショリ      ○ × 〇 一 × ○

B系

程度副詞 タップリ      〇 〇 〇 一 〇 〇 一 × × 結果副詞 カチカチ キチキチ カラカラ  ○ × × ‑ x x 一 〇 〇 併 用 型      アッサリ イソイソ ウネウネ

形式動詞型 擬情語 アタフタ クラクラ ムッ 般動詞 擬音語 カサカサ ガラリ  ダラリ 例 外 副  詞 ウッカリ

× 0 0 ‑ 0 0 ‑ × ×

× ○ × ‑ ○ × ‑ x x

× × 〇 一 × 〇 一 × ×

× 0 0 ‑ x x ‑ × ×

図3は、オノマトペが「ダ」をとり得るか、 「スル」をとり得るか、動詞をとり得るかという ことを、 ¢格・ト格・こ格の場合に分けて考えたものである。 A系はすべて変化の過程を持ち、

結果を表すことのできるオノマトペであるのに対し、 B系は変化の過程を持たず、結果の状態を 表すことのできないオノマトペである。これらはそれぞれ、その内部において、さらに形式動詞 である「スル」と共に動詞としてふるまい、さらに一般の動詞を副詞として修飾できる両型のも のと、 「スル」を伴って動詞となるか、動詞を修飾して副詞となるかの一方しか持てない形式動 詞型、一般動詞型の3種に分類できる。例をあげると、 「つるつる」というオノマトペは、以下 のようにふるまうことが可能なので、 A系の併用型ということになる。

(38)卵のように つるつるダ。

(39)卵のように つるつるスル。

(40)廊下が つるつる 滑る。

(41)卵のように つるつるト スル。

(42)廊下が つるつる卜 滑る。

(43)頑を剃って つるつるに してしまう。

(44)頑を つるつるに 剃った。

¢格・ダ型

¢格・形式動詞型

¢格・一般動詞型 ト格・形式動詞型 卜格・一般動詞型 二格・形式動詞型 二格・一般動詞型

「木の糞がカサカサ鳴る」などの「カサカサ」はB系である。次のように「ダ」をとることが できず、また「スル」を後接することもできない。そのため、構文上では動詞を修飾する副詞と

してしかふるまうことができない。また、 「ダ」を持つことができないために、 「ダ」とほぼ同じ 意味を表すこ格も後接することができない。

(45) ホ木の葉が カサカサグ.

(乾燥しているという意味ではない) (46) 木の葉が カサカサスル。

(47) 木の葉が カサカサ鳴る。

(48) 木の葉が カサカサトスルo

¢格・ダ型

¢格・形式動詞型

¢椙・‑一般動詞型 ト格・形式動詞型

(11)

, ,

*

*

1111

9 0 1 4 5 5

̲ I , 1

加 藤 久 雄・坂 日 昌 子

カサカサト鳴る。

カサカサニスル。

カサカサニ鳴る。

卜格・一般動詞型 二格・形式動詞型 二格・一般動詞型

このA系B系を分ける要素になるのは、ダ型を持てるかどうかということに関わる。 「服がく しゃく しゃダ」や「破れてびりびりダ」のようにダ型を持っものがA系、ダ型を持たない

「'木の葉の音がかさかさダ」 「'お客が来るから、朝からいそいそダ」のようなものがB系と いうことである。

図3からも分かるように、オノマトペはその構文的ふるまいから、大きくは8つ、細かくみて いくと9つに分類することが可能である。ただ、すべてのオノマトペがこのようにきれいにまと まるわけではなく、例えば「どリビリ」は、「どリビリだ」「どリビリに破る」「どリビリと破る」

「どリビリにする」のように、 「ダ」 「ニ+一般動詞」 「ト+一般動詞」 「ニ+形式動詞」は、後接 させることができるが、 「*どリビリとする」のように、 「ト+形式動詞」を後接させることがで きない。また「ヨボヨボ」は、 「ヨポヨボだ」 「ヨポヨポした」のように¢格と「ヨボヨポにな る」のようにこ格はとれるが、ト格の「'ヨボヨポとする」は非文になってしまう。このことか ら、これらの語をそれぞれ一般動詞型の特殊型、形式動詞型の特殊型とした。

以上のようにオノマトペと後接成分との関わりを見てきたが、オノマトペの分類ということ以 外に、後接成分の性質についての考察がさらに必要になってくるように思われる。本稿では

「ダ」と「スル」と一般動詞を同じ階層にあるものとして扱ったが、図3からも分かるようにト 櫓や二格と「ダ」は共起しない。このことから考えて、奥津(1978)がいうように結果語という 範噂を立て、それらにこの「ニ」 「卜」 「ダ」を入れるべきなのかもしれない。また、 「ニスル」

と「トスル」の用法を同じスル系ではまとめられない自他の対応に関わる問題もあり、ニ格、ト 格、ダ型には、まだまだ問題が多いように思われる。

また、オノマトペは語嚢的な要因が大きく、 「ヨボヨポ」や「ピンピン」などのように少しず つ図3の形態からはずれたふるまいをする語もある。これらは個々の語嚢的な問題であると考え たが、これらの割り切れない問題をどうするかということも残っている。

今後の課題としたい。

(1)言語の語根は、つきっめれば擬音(onomatopoeia)と音象徴(sound symbolism)であるという。

英語で鶏の鳴き声が"cock‑a‑doodle‑doo"であることは、周知のことであるが、おんどりのcockがこ れと関係しているということは容易に想像できる。しかし、すべての単語が、もとの擬音を推察させ る形を保っているかというとそうではなく、特に英語は、 15世紀に大母音推移があったために、語根 を感じなくなった擬声語が多いようである。また、日本語に関していえば、畳語形が多いということ、

リ終わりの語が多いということなどから、形による類推が働き、オノマトペから他の品詞の語が派生 (転成)したのか、他の品詞からオノマトペが転成したのか、一つ一つの語を語史的に見なければ明ら かなことは言えない。そのため、オノマトペであるという範囲の限定は、話者がそれを昔を象徴して いると感じるかどうかという内省にたよるしかなく、その範Bflは唆味である。

本稿では、適時的にはどうであれ、現在、音象徴性が感じられる語を、 3種の辞書と内省によりオ ノマトペと認定している。また、音を象徴する擬音語、様子や状態を表す擬態語、人間の心情を表す 擬情語、ものの様子を表す擬容語などと呼ばれるものをまとめる概念としてオノマトペという言葉を 用いる。

(12)

(2)オノマトペの文法性の判断は、個人によるゆれが多く、たとえば形式動詞型一つとっても、保育語 (幼児語)などでは「ガラガラしようね(うがい)」などのように自由に結びっくことも可能であるた め、作例だけでは客観的な観察は難しい。また、書き言葉よりも、話し言葉に多用されることもあっ て、本稿では、エッセイを中心とした文庫などからオノマトペを含む一文を抽出し、データベ‑ス化 したものを言語資料として使用した。 1レコードは、 「オノマトペ」 「後接形式」 「文:オノマトペの例 文」 「資料名」の4項目から構成されている。収集した用例数は2,049例、異なり語数は698語。桐 Ver. 4 (管理工学社)を使用した。約634,000バイトの大きさである。

文   献

奥津敬一郎(1978) 『「ボクハウナギダ」の文法 ‑ダとノー』:くろしお出版 宮地裕(1978) 「擬音語・擬態語小論考」.'『国語学』 115集

西尾寅弥(1981) 「「擬音語擬態語+する」の形式について」 : 『語学と文学』 20 彰飛(1985) 『日語擬声擬態詞簡析』 :商務印書館

日向茂男・日比谷潤子(1989) 『外国人のための日本語例文問題シリーズ14 擬音語擬態語』.'荒竹出版 星野和子(1991) 「擬声語擬態語のシンタックス」 : 『東京女子大学日本文学』 75

中北三千子(1991) 「擬音語擬態語と形式動詞「する」の結合について」 : 『Eg文目白』 31 渡部昇一(1993) 「英語の語幹創生とオノマトペ」 : 『言語』 22‑6

田守育啓(1993) 『オノマトピア』勤草書房

坂口昌子(1995) 「教科書にみえるオノマトペ」 : 『国文 研究と教育(奈良教育大学)』 18 阿刀田稔子・星野和子(1995) 『擬音語擬態語使い方辞典第二版』 :創拓杜

資   料 栗原一登監修(1990) 『国語‑上〜六下』 :光村Egl書[小1上〜小6下]

加賀乙彦(1990) 『死刑囚の記録』 :中公新書[死刑]

木下順二監修(1991) 『新版中学国語‑〜三』 :教育出版[中1 ‑中3]

二葉亭四迷(1991) 『あいびき』 :小田切進編『日本の短編小説[明治大正]』潮文庫[あい]

吉本ばなな(1992) 『パイナップリン』:角川文庫[パイ]

中島らも(1994) 『僕に暗まれた町と僕が踏まれた町』:朝日文芸文庫[ぼく]

佐藤愛子(1995) 『憤怒のぬかるみ』 :集英社文庫[憤怒]

・ [  ]の中は用例出典を示す際の略号である。

・用例引用に際しては、原文の表記法をかえた場合もある。

(13)

12

A Classification of Onomatopoeias

‑a view of syntax

Hisao Kato and Masako Sakaguchi

{Department of Japanese Linguistics, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Recieived April 30, 1996)

A lot of English onomatopoeias are used as verb on syntax, on the other hand, Japanese onomatopoeias are used as adverb. For example, PIKAPIKA‑HIKARU or GIRATT0‑HIKARU and so on. However, not all of the onomatopeias play the same role.

Some of them are used as added to SURU or NARU, others are used as adjectives added to DA or NA or NO and are used as a predicate.

In this paper, we suggested the differences of these patterns are based on the onomatopoeic meanings.

In the result, we have classified onomatopoeias into 9 patterns.

The patterns are followed after,

A Type: [十process of time] [+show result]

COMBINATORY TYPE SURU VERBIAL TYPE VERBIAL TYPE

EXCEPTIONAL (DEGREE ADVERBIAL TYPE/RESULT ADVERBIAL TYPE)

B Type: [‑process of time] [‑show result]

COMBINATORY TYPE SURU VERBIAL TYPE VERBIAL TYPE EXCEPTIONAL

参照

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