企業の異質性および直接投資の選択と均斉成長
高 木 か お る
企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
Abs t r ac t
Thi spa pe rpr o vi de sadynami cmode lwi t ht hee xt e r nal i t yof kno wl e dge ,i nc o r po r a t i n gf i r m he t e r o ge ne i t y.Wede ve l o pamo de lo f t hes e l e c t i o no fhe t e r o ge ne o usf i r msa st owhe r et he yma n uf a c t ur et he i r br a nd‑ pr o d uc t sa ndho w s uppl yt he m t ot hema r ke t ,a ndo ft hee n‑
do ge no usde t e r mi na t i o no ft henumbe ro ft hea c t i vef i r msb yt hel a bo r ma r ke t .Wef i ndt ha tt heba l a nc e dgr o wt hr a t ei sa f f e c t e df r o m t he di f f e r e nc eo ft hel a bo re ndo wme nt si nt woc o unt r i e sa ndt hes e l e c t i o no f f i r msa st owhe r et he yma n uf a c t ur et he i rpr o d uc t s .
Ke ywor ds・ .f i r m he t e r o g e ne i t y,di r e c ti n ve s t me nt ,kno wl e dg ee xt e r ‑ na l i t y
3 8 3
1
.は じ め にBe r nar d,Ea t on,J ens on,andKor t um( 2003)
,He l pman,Me l i t z,andYea‑
pl e( 2004)
,Mel i t z( 2003)
な どに代表 される,企業の異質性を考慮 した動学 モデル分析が近年数多 く見 られるようになった。た とえばMe l i t z( 2003)
は,Hopenhayn( 1 992)
の動学産業モデル を独 占的競争下の一般均衡モデルへ適 用 し,貿易が産業部門間の再分配構造や産業全体の生産性へ及ぼす影響につ いて考察 している。その一方でPer et t o( 2003)
は,知識のスピルオーバーを ともな う標準的な動学モデルを用いて,寡 占企業か ら構成 される経済におけ るアウタルキーか ら貿易への移行が経済成長におよばす影響 について分析 し ている。本論文で提示するモデルは,動学産業モデルの独 占的競争下の一般均衡モ デルへの応用 とい う点で
Mel i t z( 2003)
と共通 している。一方で高木( 2004 b)
同様,企業の異質性を直接投資にかかる企業間のコス ト構造の相違 ととらえ, 直接投資の選択が企業の利潤指向的意思決定か ら内生化 される動学モデルを 提示 している。 さらに,高木( 2004 b)
では直接投資 に ともな うコス ト ・デ ィスア ドバンテージの分布は可変限界費用に反映 され る と想定 したのに対 し, 本論文ではそれは固定費用 によって把握 される としている。 また
,Pe r e t t o
( 2 0 03 )
によるモデル分析 を基礎 に,研究開発の外部効果を内包 した動学成長 モデルの構築を試 みた点で も高木( 2 00 4 b)
の拡張 となっている。以下
,2
節 においてモデルの構成を,消費者の需要行動,企業の供給行動, 生産および研究開発,生産拠点の選択,の順に定式化する。3
節では均斉成 長経路を導 出したあ と,均斉成長率の決定 に影響を及ぼ しうる外部効果,2
国全体の労働賦存量, 2国間の労働貝武存量の相違,および生産拠点の選択に ついて検討する。2
.モ デ ル規模の異なる
2
国か ら構成 される経済を考察対象 とし,2
国について添字H
お よびF
を付 して区別す る。 は じめに2
国の消費者 の需要行動 について 定式化をおこな う。そのあ と, 2国それぞれの企業の意思決定 について,坐 産,研究開発 および生産拠点の選択の順 に検討する。2 .
1.
需 要2
国の代表的消費者の意思決定を,内生的経済成長理論の標準的な定式化 にしたがって提示する。 同じ国内に居住するすべての消費者の意思決定は同 質的であ り,また以下 に示す とお り, 2国間の消費者の需要行動 も対称的 となる。
d 国
( d ‑H ,F)
に居住す る代表的消費者の選好 を,代替の弾力性一定の 効用関数ud
‑ [ l w ∈ o q w p d w ] 1 / p (1)
企業 の異 質性 お よび直接投資 の選択 と均斉成長
3 8 5
によって定義する
1
。qwはd
国の代表的消費者が需要するブラン ドWの消費 量である。 釧 ま各消費者が入手可能なすべてのブラン ド製品の集合であ り,2
国のすべての消費者共通 にn個の差別化製品か ら構成 され る 。0< p< 1
はブラン ド製品間の代替の弾力性
α>1
によって定義 されるパ ラメータであ る。( 1 )
は,代表的消費者がすべてのブラン ド製品を対称的に選好することを 意味 している。代表的消費者は,異時点間の予算制約の もとで生涯効用が最大 となるよう に各ブラン ド製品の需要量を決定する。 よく知 られた手順か ら
,d
国の代表 的消費者の各ブラン ド製品に対する需要量 qwはq w ‑ 克 者 ( 2 )
によって決定 され る。pwは各ブラン ド製品の価格 である。 0
‑ =1 /
(1 ‑ p )>1
は,任意の 2つの差別化製品間の代替の弾力性をあ らわすパ ラメータであ り,2
国のすべての消費者 に等 しい値 として与えられる。Ed
はd
国の各消費者 の総支出,すなわちEd ‑
Jw。
講 qwdwであるoまた Pdは,d国の各消費者が 入手可能なすべてのブラン ド製品の価格を集計 した価格指数であ り,p d ‑l J , D ∈ 譲 o dw] 1 / ' 1 1 0 )
(3)と定義 される。
財の輸出入コス トをゼロとすれば,各ブラン ド製品は 2国のすべての消費 者に対 して等 しい価格で供給 され したがって価格指数
P d
も2国のすべて の消費者に とって共通 となる。d国の各消費者が需要するブラン ド製品の集 計量 Qdを Od‑Udと定義すれば,Ed ‑Pd Qd
であることを確認で きる。さらに, よ く知 られた代表的消費者の異時点間最適化の もうひ とつの条件 式 として
1
)各変数に付 される添字d
は,消費者 (需要)の観点か ら2
国を識別する ときに用いる。ただ し,結果 として2国のすべての消費者q)需要行動は対称的 とな るので,変数q
w ,p w 等
について居住国を識別す るための添字dを省略 している。
(4)
が導出される
。
γは利子率である。2
国の各消費者の総支出品
について,Ed ‑1
と規準化すれば,Ed / Ed ‑
0,したがって( 4 )
か らr‑p
が得 られる。2. 2
供 給2
国それぞれにn s
社( S ‑H , F)
の企業が存在 し,各企業はそれぞれ独 自 に差別化 された最終財 (ブラン ド製品)を製造で きるとす る2
。ブラン ドの 競合は同国内の企業間および 2国間いずれにおいて も生 じない とする。 この とき,2
国の各消費者がすべてのブラン ド製品を需要するな らば,2
国のす べての企業がその製造可能な財をかな らず 2国 ともに供給 しなければならない 。
輸 出入 にかかるコス トをゼ ロ と仮定すれば
,S
国に本拠 をお く第i
企業 (以下,
S国の第i
企業)が供給する製品は, 2国いずれの消費者に対 して も同一の価格で供給 される。 この ときd
国に供給 されるブラン ド製品の価 格は,それを供給する企業の本拠によって九
‑P i s ・i ∈( 0 , n s ] ,
5‑H ,F
と表す ことができる。ベル トラン寡 占理論にもとづいて,各企業は自社ブラン ド製品に対する消 費者の需要関数を既知のもとでその生産量を決定で きる。具体的には(
2 )
およ び( 5 )
か ら,d
国の消費者へ供給されるS
国の第i
ブラン ド製品の需要量は消 費者あた りでq w ‑ q i s ‑ P l :
sd p B, i E' 0 , n s L s ‑H
,Fで与えられる。
2)各変数に付 される添字 Sは,企業の本拠国を識別するときに用いる.
( 6 )
企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
3 8 7 d
国内に居住する消費者の意思決定は対称的であるか ら,
S国の各企業の 産出量のうちd
国へ供給 される量は,Ld q w‑Ld q
isとなる。Ld
はd
国に賦存 する労働量 であ り,同時 にd
国に居住す る消費者の数 を表 す。各企業の ブラン ド製品に対す る需要は 2国のすべての消費者の需要の合計すなわち∑
Ld q
wであるか ら, xi
sをS
国の第 i企業の供給量 とすれば,
S国の第 iブd
‑H, F
ラン ド製品に関する需給均衡式 として
H i s ‑ 9
;s o p A
・A‑ ∑ Ld d ‑ H, F Ed ( 7 )
が得 られる。 2国の労働賦存量 エ♂は外生的に与 え られる定数であ り,また
2
国の各消費者の総支出をE d ‑
1と規準化するとき,( 7 )
のA
は外生的に一 定な値A‑L …L H +L F
すなわち2
国全体に賦存する労働量 に等 しい.なお,2. 1
項で確認 した とお り2
国の各消費者に とっての価格指数はすべての消費 者に とって対称的であるか ら,( 7 )
ではP‑PH‑P
Fと表記 している.2. 3
生産および研究開発各企業の製造活動 に要する投入物 を労働のみ とする。具体的には
,
S国の 第i
企業の財製造 に関する生産関数をxi s ‑Z
isLxi s ( 8 )
と定式化する。L xi s
はS
国の第 i企業が財生産に投入する労働量である.ま た ZisはS
国の第i
企業の技術水準を示す知識ス トックである。一方で,各企業は労働の一部 を企業内の研究開発 に充当 し,その結果,各 企業の知識ス トックが時間の経過 とともに蓄積 される。本論文では知識ス ト
ックの蓄積,いいかえれば技術の生産関数を
Zi s‑K i J zi s
と規定する
.L zi
sはS
国の第i
企業が研究開発に充当する労働の量である。すなわち,企業が
L zi s
の労働を研究開発 に充てるとき,時間dt
のあいだにZi s
だけの新 しい知識が生み出されるoまたK
isをKh‑Z i s +α J zJ s d j+αJzJ v d j ,
V≠s
j∈Sl")≠T J
∈Oy
(10) と定義する。
( 9 )
および(10)k次の ことを意味 している.Ki s
は,各企業の研究開発の効率 を規定す る一般知識ス トックであ り,( 1
卵こおいてすべての企業の知識ス トッ クをウエイ ト付けして加算 したもの と定義 されている.すなわち,S国の第i
企業の研究開発の効率は,自企業 自身の知識ス トックZi s
のみな らず,自国
(
S国)に本拠をお く他の企業の知識ス トックZj s( j ∈( 0 , n s
],j
≠i)およ び他国( V
国, V ≠S )のすべての企業の知識ス トック
Zju( j ∈( 0
,nv])に影響 を受ける。つま り,各企業にとって 自企業の研究開発の成果である知識は専 有可能ではな く,2
国のすべての企業が相互に外部性を及ぼし合いなが ら研 究開発が実行 される3 。
ただ し, 自企業以外の知識ス トックか ら受ける外部効果について,その本 拠が自国内か他国かにかかわ らずすべての企業に等 しいウエイ ト
α
を仮定 し ている。 また,自企業以外の知識ス トックか ら受ける外部効果は,自企業 自 身の知識 ス トックの影響 に比べて相対的に低い と一仮定する.つま り,α<1
とする。
とくにパラメータ
α
をα‑行
詰手打 ,0 ‑ 'γ
,∂‑ '1
(川と定義する。(lBは,企業間の研究開発の相互作用について次の性質を意味す る。パ ラメータ 再ま,他の企業から受ける知識のスピルオーバーの程度を示 し,またパ ラメータ ∂は,企業間の研究開発の重複の程度を示す。た とえば
3
)各企業の製造す るブラン ド製品は差別化 された財である一方,各企業の研究開発およ びその成果である知識ス トックは互いに共有可能な性質を もつ点が特徴的である。企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
3 8 9
∂‑0
な らば,企業間の研究開発 に重複はな く,他企業か らの知識のスピル オーバーの程度はα ‑
γ≦1である。また∂‑1
な らば,企業間の研究開発が 完全に重複するため,他企業か らの知識のスピルオーバーの程度は企業数 nと反比例 しα
‑
γ/ n
≦1である。 この ことか ら,研究開発の重複 のために, (研究開発の重複度 が∂‑1
の場合を含め) 自企業以外の企業の研究開発か ら受ける外部効果の程度すなわちαは,2
国全体q)企業数 nの増大に とも なって低下することが理解 される。最後 に,賃金については
2
国間で等 しい と仮定 し, とくに賃金率を 1に規 準化する。 この ときS
国の第i
企業が生産立地国 としてm 国( m ‑H , F)
を 選択 した場合に獲得で きる利潤7 T
器は打芳‑
PisXis‑LxwILz
.ls‑¢冨 再 と表 される4 。婿
は各企業の財生産 に要する固定費用である。のちに示す と お り,各企業がその生産拠点を自国および他国のいずれに選択するかに依存して, ¢芸は企業 ごとに異なる値 とな りうる.
2 . 4
企業の最適化選択2. 2
項および2. 3
項の設定に基づいて,各企業の最適化問題の解 を求める。その際に,以下の点に留意する必要がある。まず,各企業 レベルの意思決定 において,固定費用 鰭 は所与 とす る。各企業の生産拠点の選択 は固定費用
¢芸に依存するが,それについてはあ らためて
2. 5
項で考察する。次 に,各 企業はベル トラン寡 占企業 として需要関数( 6)
および (7)を既知の もとで 意思決定ができる。 しかし, 自企業の価格決定が他企業の価格に影響を及ぼ し,間接的に自企業のブラン ド製品に対する需要および価格が変化 しうるこ とはその意思決定において考慮 されない。すなわち他企業が供給する製品価 格を所与 として意思決定を行 う。 この とき,各財 についての需要の価格弾力4
)各変数に付 される添字m は,生産拠点国を識別するときに用いる。性はすべての財に等 しく一定である。 さらに,自企業の知識ス トック
Zi s
の 変化は一般知識ス トックK
isを変化 させ,知識のスピルオーバーを通 じて間 接的に自企業の知識ス トックの変化 に影響を及ぼしうる。 しかし,個々の企 業 レベルの研究開発に関する意思決定 において,このK
isの変化 を通 じた知 識のスピルオーバーは考慮されない。すなわちK i
sを所与 として意思決定が 行われる。ヽヽ)
各企業は,利潤(ネット キャッシュ ・フロー)の割引現在価値 JR(
T ) 打 i s (
I)dT, ただ しR( I
)‑eX p [ i
rsds],の最大化 を図るo Ai s
をラグラ:ジ ュ乗数 とす るハ ミル トニアン関数Hi s
‑Rl ( 1 ‑ 読 ) p
is Xi s‑L z L S ‑ P
芸]‑ Ai s K i s L z
,凍 用い て,通常の異時点間の最適化問題 と同様 に,各企業のP i s
およびL
zwの選択 に関する1
階条件,および状態変数二 ㍍
に関する条件が次式のように導出さ れる5。ただし,l i s ≡ Ai s /R
である。p i s ‑芸 zi s
ji s K i s
‑1‑ ̲ : ‑= ‑ 一 一 ii L. s Zi Y。 s
( 1 3 )
は,各企業の価格設定 に関す る条件式である。ベル トラン寡占戦略 にもとづ き各企業は独 占的な価格づけをおこな うことで他の企業をそのブラ ン ド市場か ら排除できる。そのために各ブラン ド製品の価格は,その製造 に 要する可変限界費用, ここではすべての製品に等 しく賃金率1
にマークア ッ プを上乗せ した水準に決定される。一般に,標準的な寡 占理論におけるマー クア ップは需要の価格弾力性によ‑て定まる一定値 芸 であるo しかし本論 文の定式化の もとでは,マークア ップは芸 zi s
であ り,一定でな く各企業 の知識 ス トックの水準 に依存 して変化 す る。 この とき( 7)か ら,各企業
の財供給量 xisも各企業の知識 ス トックの水準 に依存 す る. また( 3)
は5
)以下では,時間を表す添字 tは省略する。企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
3 9 1 p
‑芸[
IE Os,S=H,FZto d i ] 1 / ( 1o )と
な り,価 格 指 数p
も知識ス トックの加重平均 によって規定 される。
( 1 4)
,( 1 5)
および2. 1
項 に示 したγ‑p
か らK
Ka
‑K#
xw‑p
が得 られる。加えて,知識ス トックの蓄横式
( 9)
を髪 ‑K # z w
( 1 6 )
( 1 7 )
と書 き直す。
( 1 6 )お よび (
17)か ら,各企業の財生産 お よび研究開発へ充 当され る労働Lx
wおよび エzbは,知識ス トックZ
isおよびK i s
によって規定 されることがわかる。2 . 5
企業の異質性 と生産拠点の選択2
国の各企業はその製造活動 をどこでおこな うかを選択で きる。すなわち, 自国 (本拠 国)内に工場 を建設 し生産 をおこな うか,あるいは他国に現地工 場 を建設 しそ こで生産 をお こな うか,いいかえれば直接投資 をお こな うかの 選択 に直面す る。 (本拠 にかかわ らず)m
国( m‑H,F)
内に建設 された工 場の製造活動 にはその工場が立地す る国 (m国) に賦存する労働 が雇用 され るとすれば,財生産 に必要な可変限界費用は,生産拠点国 (m国)の賃金率, すなわち2
国 ともに1
である。S
国に本拠 をお く企業 (以下,
S国企業)が 自国外で製造活動 をおこな うこ とを選ぶ とき (m≠
Sの とき), 自国内の工場で製造活動 をおこな う場合 に比 べ追加的な費用を負担 する必要があ ると想定する。た とえば他国の現地工場 における製造活動 を管理運営するためには 自国内生産 に必要な費用を超 えた 負担 を要す ることを反映 している。本論文では, この追加的な費用負担は, 財生産 に ともな う固定費用 に反映される と考 える。 またその追加的負担は, 同国内の企業間で異なる大 きさであ ると想定 し,具体的には以下 に示す分布によって規定 される。
S
国企業が 自国内に製造工場 を所有す る とき( m‑
Sの とき),財生産 に必 要な固定費用は同国(
S国)内のすべての企業 に等 しい一定値 砿 ‑¢Sとする。一方
,
S国企業が他国 (V国)へ直接投資をお こな うとき (m≠
Sの とき), 負担すべ き固定費用 は同国(
S国)内に本拠 をお く企業 によって異な り,そ の相違は分布 を ともな うパ ラメー タ 銅こよって 砿 ‑晩 と表示 され る。 ¢Vは, 進 出国 (γ国)に本拠 をお く企業が財生産 に必要な固定費用であ り一定値 で あ る。 0∈(1,…)は,均衡 において分布関数g
(頼 こしたが う各 国内の企業 間の異質性を示すパ ラメータであ り,同国内の企業によって異なる値を とる6 。
以上 をま とめれば
,
S国企業 は, 自国(
S国) 内に生産拠点をお く場合 はS
国のすべてq)企業 について等 しい固定費用 ¢Sを負担 し,一方,他国 (V国) に生産拠 点をお く場合 は他国におけ る固定費用 ¢Vに,直接投資 に ともな う 追加的なコス ト ・デ ィスア ドバンテージ βを負担す る必要がある。 このコス ト ・デ ィスア ドバンテージは企業間の異質性 に ともなって同国内の企業閣で 異なる大 きさ となる。β> 1
よ り,直接投資を選択する企業が負担する固定 費用 β動は,進 出国 (〃国) に本拠 をお く企業 が 自国内での製造活動 におい て負担すべ き固定費用 動をかな らず上回る。2国の各企業はその製造活動 を自国および他国のいずれでおこなうかを選 ぶ ことがで きる一方で, 自社ブラン ド製品をかな らず 2国 ともに供給する必 要がある。 したがって,生産拠点 と自国および他国への財供給ルー トの選択 について複数の想定が可能である。 しかし本論文では次の 2つのケースに し ぼって議論 を進める。第
1
に, 自国内のみに工場を建設 し (直接投資はおこ なわず), 自国か ら自国へは現地販売 に よって,他国へは輸 出をつうじて 自 社ブラン ド製品を供給する。第 2に,直接投資をつ うじて他国のみに工場 を 建設 し (自国内には工場 を所有せず), 自国への供給は逆輸入に より,また6) 2
国それぞれの企業は異なる βの分布 に したが うと考 え られ る。 ただ し以下の議論 で は,F
国q)すべての企業 が (Cの分布 に関係な く) 自国内生産 を選択す るケースに限定 され,H
国の企業の分布のみが明示的に示 され る。企業 の異質性 お よび直接投資の選択 と均斉成長
: l l 0 3
他国へは他国内の現地工場か らそれぞれ 自社ブラン ド製品を供給する7 0
2
国のすべてq)企業がそれぞれ生産拠点の選択 を行 うが, ここではあ らか じめ2
国間の コス ト構造 に相違がある と前提 す る.具体的 には,H
国では 一部の企業が国内生産 を,残 りの企業 が直接投資 を選択で き,一方でF
国 では,すべての企業が国内生産 に特化 し直接投資 を選択する企業は存在 しな い とする。 この前提が成 り立 つために必要な条件 は,2
国の各企業が 自国内 生産 を選 んだ場合 に要す る固定費用 についてQH>
QFを仮定す ることであ る.すなわち,H
国の製造活動 に要する固定費用 はF
国に比べ相対的に大 きい と仮定する。 この とき上記 に示 した 2国問の コス ト構造 に格差 が生 じる ことは,以下の とお り確認できる。各企業が獲得する利潤
( 1 2 )において固定費用 を除いた部分,すなわち可
変的な利潤pi #i s‑ Lx I S‑ Lz
wは,2.4
項で確認 した とお り各企業の知識ス トックの水準に依存 して決 まる。 しかも初期時点における 2国のすべての企業の 知識ス トックが対称的 と仮定すれば,可変的利潤 は 2国のすべての企業 につ いて対称的な大 きさ となる。つま り,各企業間の利潤の差は固定費用の差の みに依存する。
各企業は,国内生産 を選択 した場合に獲得で きる利潤 と,海外生産 を選択 した場合に獲得で きる利潤を比較 し, よ り大 きい寡 占利潤 を獲得 で きる方を 生産拠点に選 ぶ。具体的 には,疏‑
¢ S <( >)
0¢V‑乾 の とき, 7ris>(<)砿とな り
,
S国企業はその生産拠点 として 自国 (他国)を選択する。以下では 2国それぞれに分けて議論 を進める。 まず, 自国内生産 に要する 固定費用が相対的に低 い
F
国について考 える。図1
は,F 国を本拠 とする 企業 (以下,F 国企業)のコス ト ・デ ィスア ドバンテージの序列 と,それぞ れが負担すべ き固定費用の関係を図示 した ものであ る.F
国企業 は, もし生 産拠点 として他国 (H 国)を選び直接投資 をお こな う場合 に負担 すべ き迫7) 自国および他国の 2国 ともに工場 を建設 し,輸 出および現地販売 を組み合わせ るケー ス も考 えられるが,設定するパ ラメータを一定の範囲に限定すれば このケースを排除す
ることが可能である。高木
( 2 0 0 4 b)
も参照。図
1 F
国企業の 0の分布 と固定費用加的なコス ト ・デ ィスア ドバンテージ βについて互いに異なっている。そ こ で図
1
では,コス ト ・デ ィスア ドバンテージが小さい企業か ら大 きい企業の 順 に序列づけ,横軸 にコス ト ・デ ィスア ドバンテージ βを,縦軸 に製造活動 に ともな う固定費用 を測 っている。この とき 2変数の関係は右上が りとなる。すなわち ,F 国企業 が直接投資 を お こな う場合 の固定費用 は,図
1
の線 OF F‑
eQH
で示 され る。一方,F国企業が国内 (F国)生産を選択 した場合に 負担すべ き固定費用は, 拡 ‑毎 で一定である。条件QH>
QFの も とでは明 ら かに,F 国のすべての企業 に とって,直接投資に要する固定費用は国内生産 に ともな う固定費用 をかな らず上回 る。つま り,F 国のすべての企業が国内 (F 国)生産 を選択 し,他国 (H 国)への財供給は輸出によって行われ る。次に, 自国内生産 に要す る固定費用が相対的に高い
H
国について考 える。図
2
は,図1
と同様 に,H
国を本拠 とする企業 (以下,H
国企業)の コス ト ・デ ィスア ドバンテージの序列 と,それぞれが負担すべ き固定費用の関係 を図示 した ものである.H
国企業が直接投資 を選択 した場合の固定費用の 分布は,図2
の線脇‑
o毎
で示 され る。一方,H 国企業が国内 (H 国)坐 産を選択 した場合 に負担すべ き固定費用は,すべてのH
国企業共通に一定企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
β*
図
2 H
国企業の 0の分布と固定費用3 9 5
脆
‑QHである.条件 QH>毎 の もとでは,H
国内の各企業の生産拠点q)逮 択は一律ではな く,次の 2つの企業群への分割が生 じる。H
国企業 の うち直接投資 に ともな うコス ト ・デ ィスア ドバン テージ0
が 相対 的 に小 さい企業 ,すなわち1 <0<
0*の分布 内に入 るH
国企業 は, 脇 ‑QH>0毎 ‑Q F
Hよ り7 T F H <
7TFH が成 り立 つの で ,生産拠 点 として他 国(F国)を選択するO他国に工場を建設するための固定費用が 自国に工場を 建設するための固定費用 に くらべ小 さ く,他国への進 出に ともな う固定費用 の節約分は,相対的に小 さな直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージの負担 を十分上回るか らであ る. これ らの
H
国企業が製造する製品は他国 (F国) へは現地販売 に よって,また 自国 (月 国)へは輸入 (逆輸入) によって供 給 される。一方,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ Cが相対的に大 きい
H
国 企業,すなわち0>
0*の分布内に入 るH 国企業は,脆
‑転 <0毎
‑脇
より打 F H <7 r F H
が成 り立ち,生産拠点 として 自国( H
国)を選択する.他国に工 場 を建設するための固定費用は 自国に工場 を建設す るための固定費用 に くらべ小 さいに もかかわ らず,他国への直接投資に ともな うコス ト ・デ ィスア ド
バソテージの負担が大 き く,固定費用の節約分を上 回るか らであ る。 これ ら の
H
国企業が製造す る製品は,他国 (F国)へは輸 出によって供給 され る。以上 をま とめれば,
H
国企業 の財製造 に ともな う固定費用 をあ らためて 以下の とお り表す ことがで きる。Qi H
‑¢
;・H
(0, ‑ 忠
,1;三
言 o*( 1 8 ,
0*は,図 2お よび上記 の議論 か ら,H
国企業 が生産拠点 として 自国お よ び他 国のいずれを選 んで も等 しい大 きさの利潤 を獲得 で きる直接投資 コス ト デ ィスア ドバンテージであ る。0 ‑
的 こおいて 嘩 F‑QHが成 り立 つ必 要 があるか ら,β
『ま2国の固定費用 の格差 によって決 まる。以上 か ら,
H
国企業 はその生産拠 点の選択 に応 じて2つ企業群 ,すなわ ち生産拠 点 として 自国 (H 国) を選 ぶ企業群 と他 国 (F 国) を選 ぶ企業群 に大別 され る。前者 は直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ βが相対的に 高い企業 か ら,逆 に後者 は直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ βが相対 的に低 い企業 か ら構成 され る。これ ら2
つの企業群 の企業数の相対的比率は,2
国の固定費用の格差 に依存す る。H
国企業の直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ Cの分布 は,均衡 に おいて分布関数g( o )
,ただ し0∈(
1,‑),で示 される。 この とき,H
国企 莱 (お よびそれ らが製造す るH
国ブ ラン ド製品)の うち,本拠 国内( H
国) で製造活動 をお こな う企業 の数 (お よび財の個数)のシ ェアを1‑G(0 * )
, 一方 ,直接投資 をつ うじ本拠 国外( F
国)で製造 活動 をお こな う企業の数 (お よび財 の個数)のシ ェアをG(0*)で表 す こ とがで きる。関数G(0)は0
の累積分布関数であ り,その性質 か ら 0*の増加に ともな ってG(0+)は増加 し, すなわちG(0*)は増加関数 であ る8 。
8
)企業の異質性の分布に関する取 り扱い,お よび ここに示 されるH
国企業群のシ ェア構 成については,Me l i t z( 2 0 0 3 ),He l pma n,Me l i t za ndYe a pl e( 2 0 0 4 )
な どを参照。企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
3 9 7
すでに確認 した とお り, (円ま財製造 に ともな う固定費用 の 2国間の相対 的格差 によって定まる。すなわち,2
国間の固定費用の格差が大 きい (小 さ い)ほ ど, 0㌦まより上昇 (低下) し, したがってH
国企業の うち海外生産 を選択 する企業のシ ェアG(
0*)が上昇 (低下)す る。 こq)因果関係は直観 的にも納得のい くものである。2. 6
労働市場モデル設定の最後 に
2
国の労働市場の需給均衡 について考察す る。2. 5
項 で示 した とお り,財製造 に要する固定費用の 2国間格差,および直接投資 に ともな うコス ト ・デ ィスア ドバンテージの分布 によ り,2
国は異なる企業群 の構成 となる。その ことが 2国それぞれの各国企業の労働需要 に も反映され る。まず,
H
国企業の うち,シ ェア1‑G(
0')の企業 は 自国( H
国)での財生 産を選択 し,残 りのシ ェアG(
0')の企業は他国( F
国)での財生産 を選択す るが, これ らの企業群 か らの労働需要 はそれぞれ 自国 (H 国) お よび他 国 (F 国)の労働市場 において満たされる必要があ る。 また,すべてのH
国 企業の研究開発は 自国 (H 国)内で行われ, したがって労働需要 は 自国 (H 国)内で調達 される。他方,F国企業については,そのすべての財生産お よ び研究開発 が 自国 (F国)内で行われ,労働需要 も自国 (F国)内で充足 さ れる。以上 を
2
国おのおのの労働市場について整理すれば,次の労働需給式が得 られる。LH‑n H
(1‑G(
0*))Lx i H+n H Lz i H LF‑n HG(0 ' ) Lxi H+n F Lx
iF+n F Lz i F
さらに
( 1 9 )
と( 2 0)を合計すれば, 2
国全体の労働需給式L‑ ∑ ns ( L
xfS + Lz w )
S ‑ H, F
が導 出される。3 .均斉成長率
2
節 に提示 したモデル設定に基づいて,均斉成長経路を導 出す る。そのあ と,均斉成長率 とそれに影響をおよほ しうる諸要因 との関係を検討する。3. 1
均斉成長経路2国のすべての企業の知識ス トックの単純集計を
2‑ ∑ 〜zi s d i
とすれs
‑H, Fi
∈托 ば,K
isの定義( 1 0)
か ら警 ‑1‑α.α孟
¢功を得 る.補論 1に示す とお り均斉成長経路上では
2/ zi s
が一定 であるか らHi s / Zi s
は一定 となる.つま り,均斉成長経路上でKi
s/ Ki s = Zi
s/ Z b ‑2
/Zが成 り立つ。以下では,均斉成長率を
g‑KJKb‑Z k / Zh‑2/ Z
‑と表す。初期時点の知識 ス トックに関 して
2
国のすべての企業が同じ水準にある と 仮定す る。 この とき,知識 ス トックの動態 を規定す る( 9)
お よび( 1 0)
のもとでは,均斉成長経路上 における知識ス トック
Zi s ,
一般知識ス トックK
is, さ らには (16)
お よび (17)
か ら財生産 お よび研究開発へ充 当 される労働Lx
wおよびL
zkは2
国のすべてq)企業について対称的 となる。結果 として,各 消費者 お よび各企業の意思決定を反映 した( 1 3)
お よび( 1 6)
,知識ス トッ クの蓄積式( 1 7 )お よび労働市場の需給均衡式 ( 1 9 )〜 ( 2
1)か ら,均斉成 長経路上 における 2国全体の企業数nや均斉成長率
gが決定 される。以下にその導 出を示す
9。
zk‑‑ Z
ぉよびKi s ‑元
が均斉成長経路上ですべての企業について対称的で あることを利用 して( 22)
および( ll )
より,+ ∂ )
(n‑1)Hi s ̲. . 1 +
(a‑ a( n ) …l Z 禁 ‑11α+α i s ⊥ u■ u 乃 "
1+ a
(nll)¢3 )
9) 2
国のすべての企業について対称的な値 となる変数は, 2国全体の平均 として表 す こ とがで きる。以下の導出の過程ではそれ らを変数に上付 きバーを付 して表記する。企業の異質性お よび直接投資の選択 と均斉成長
3 9 9
を定義する。αを用 いれば (
1 6)および ( 1 7)か ら,各企業の財生産 お よ
び研究 開発 へ充 当す る労働需要 はそれぞれL x k ‑L x
‑(g+p)/aお よびL z b ‑Lz‑g / a
となる。 さらにこれ らを2
国全体の労働需給式( 2
1)に代入し整理すれば,均斉成長率
‑ ‑ 二 1 1 ‑ L : : i , ‑ ‑
二が導出され る。 (
24)は標準的な内生的成長モデルで導 出される均斉成長率
と同じタイプである.すなわち,企業数 n一定の下で,労働既存量L
の増 大に ともない均斉成長率 gが上昇する,いわゆ る規模の効果を現出させ るタイプの均斉成長率である。
( 2 4)を用いて各企業の財生産および研究開発へ充当する労働需要をあ ら
ためて導出すれば,Lxw ‑ fx ‑ 拍
+‡) ¢ 5 ,
およぴ
Lz w ‑云Z
‑持 ‑‡ ) e6,を得 る。 さらに
( 2 5)
と( 2 6 )を H
国およびF
国の労働市場の需給均衡式( 1 9 )および ( 2 0 )に代入 し整理すれば
禁
‑p
βG(0.)( LF‑L H ‑l l ‑ P‑
P(1‑G(0"] L)
11 銅 が導出される。
βは2
国全体の企業の うちH
国企業の比率β‑nH/ n
であ り, 外生的に一定 と仮定する.以下では議論 を簡略化する目的か ら,2国の企業 数は等 しい と仮定する。すなわちβ‑1 / 2
の とき( 2 7 )は
2(LF
‑ L H )
G
(0')‑L] 1 1 ¢8 ,
となる。 ( 28)
(あるいは より一般に( 27 ))の右辺 に含 まれる変数の うち労
働量
L H ,L F
お よびL
は外生的に与 えられる変数であ り,また 0*も製造活 動 に要する固定費用毎 および毎 の2
国間格差 に依存 して外生的に決 まる。すなわち
( 2 8 )
か ら,操業をお こな う2
国全体の企業数 nが内生的に決定 される1 0
。( 2 3 )
お よび( l l )
か ら,( 2 8 )
の左辺すなわち a(n)/n は2
国全体の企 業数n
の減少関数であ ることが確認 される1
1。 a( n)
は定義( 2 3 )
か ら各企 業の知識 ス トックあた りの一般知識 ス トックであ る.企業数n
が増大するとき,外部性を もた らす 自社以外の企業数の増大に ともない一般知識ス トッ クが増大す るため,a(n)は増大する。 しか し
( l l )
に示 したパ ラメータの 仮定の もとでは,a( n )
の増大は nの増大を相対的 に下回 り,a( n ) /
nは減少 する。この結果 を用いて 2国全体の企業数 nの決定 をグラフ化 して示 したのが 図
3
であ る.図3
において,( 2 8 )
の左辺を表す線a(
n)/n と( 2 8 )
の右辺a ( n ) / n
p l
篭
評 ‑L r l図
3
企業数 nの決定1 0 )( 2 8 )
が解 を もつためには, 2
国の労働賦存量の差 が十分大 きい必要 があ る。 ここでは そのための条件 が満 たされ る とする。l l )
補論2
参照。企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
4 01
を表す線pB1の交点で2国全体の企業数 nが決定 される。 また, この図3 を用いることで,各パ ラメータの変化 に ともなって2国全体の企業数 (およ び2国全体のブラン ド製品数)nが どの ように変化するかを容易に確かめる ことがで きる。 さ らに この結果 と
( 2 3 )
を用 いて,均斉成長率 g と諸因子 の関連性 について も議論が可能である。以下 にその結果 を示す。3 . 2
外部効果まずは じめに,企業間の外部効果の程度 を特徴づけるパ ラメータ γお よび
∂の変化 について,以下の ことが確認 される。他の企業への知識のスピルオー バーの程度 を示すパ ラメータ γの上昇および企業間の研究開発の重複度 を示 すパラメー タ ∂の低下は,いずれ も図3の線
a( n) / n
の右方向へのシフ トを 意味す る。 したがって均衡 における 2国全体の企業数 (お よびブラン ド製品敬) n
は増加する。ただ し,n
の増加 に伴いa( n ) / n
も増加する点に注意が必 要であ る。a(n)はその定義
( 2 3 )
および( 9 )
か ら,知識 ス トックあた りで測 った研 究開発の生産性 を意味する。すなわち,知識のスピルオーバーの程度の上昇 あるいは企業間の研究開発の重複度の低下は,各企業の (知識 ス トックあた りで測 った)研究開発の生産性 を向上 させ る。一方で企業数 nの増加 に と もない企業間での労働 の競合が生 じ,各企業が研究開発へ充当で きる労働量 は減少する。 これ らの効果が互いに相殺 しあい,均衡 におけるa( n ) / n
は不 変 となる。さらに上記の結果 と
( 2 4)か ら,知識のスピルオーバーの程度の上昇ある
いは企業間の研究開発の重複度の低下 によって均斉成長率 gは影響 されな いことが確認 される。すなわち本論文のモデル設定 においては,労働の拡大 を ともなわない研究開発の効率の改善は均斉成長率 gを変化 させ ることは ない, とい うことがで きる。3. 3
労働賦存量の拡大 (規模の効果)次に,
2
国全体の労働賦存量L
の増大について考 える。 ( 2 8 )および図 3
から容易に確かめ られるケース として,2
国の労働賦存量の格差LF‑L H
は 一定のまま2
国全体の労働賦存量上
が増大する場合,いいかえれば労働賦 存量の増大が2
国 ともに同 じ規模だけ生 じる場合 には,2
国全体の企業数(およびブラン ド製品数)
n
が減少する。より一般化すれば,
2
国全体の労働賦存量の増大の効果は2
国それぞれの 労働賦存量の増大の相対的大 きさに依存する1 2
。すなわち,H
国の労働賦存 量の増大がF
国の労働賦存量の増大 を相対的に上回 り (十分に下回 り)な が ら2
国全体の労働賦存量L
が拡大する場合には,2
国全体の企業数 (お よびブラン ド製品数)nの減少 (増大)が生 じる.内生的に決定 される2国 全体の企業数 nは労働市場に制約され,企業数 nが変化するときそれ と比 例的にH
国か らF
国への直接投資の変化が生 じる。それを可能 にするため には直接投資受け入れ国であるF
国において相対的に多 くの労働供給量の 変化が必要になるか らである。さらに
( 23)
から,2
国全体の労働賦存量上
の増大が均斉成長率g
へお よばす効果 について以下のことを確認で きる.H
国の労働賦存量の増大が 相対的に大 きい場合 には均斉成長率g
は上昇 し,いわゆる規模の効果が確 認 される. しかし逆 にF
国の労働賦存量の増大が相対的に大 きい場合には 規模の効果が発生す る とは限 らず,む しろ均斉成長率g
の低下 が生 じる可 能性がある。補論3を援用すれば次のことが確認 される. 2国それぞれの労働賦存量の 増大について,
H
国の労働賦存量の増大がF
国の労働賦存量の増大を上回 るか,あるいは F 国の労働賦存量の増大が H 国の労働賦存量の増大を上回 っても 2国の労働賦存量増大幅がほぼ等 しいな らば 億 <去+誓 および%
H
,喜一
誓 の とき),企莱数 (およびブラン ド製品数)n
の減少 と均斉1 2 )以下の詳細な解析 については補論 3
参照。企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
(̲;・/Jl・ 4
4 0 3
成長率
g
の上昇が生 じる。労働賦存量の増大 と企業数の減少 に ともない企 業あた りの研究開発へ充当される労働量の増加が可能であることによる。 し かし,F 国の労働賦存量の増大幅が H 国の労働賦存量の増大幅をより上回る状態では
( 去
.響く %F<去+
讐 ユ(1.B)
お よび 去+讐ユ ,
%H,喜一(
1+β)
の とき),企莱数 (お よびブラン ド製品数)〝
はむ しろ増加す るようにな り,さらにF
国の労働賦存量の増大幅がH
国の労働賦存量の増 大幅を十分上回 る状態では( %F,
去.
響 (1+B)
‑ び警 <喜
一GiQ4
2(
1+B)
の とき),企業数nの増加に ともない企業あた りの労働量の減少が制
約 とな り,均斉成長率g
は低下する.企業数 nや均斉成長率g
への効果に おいて,G(0*)すなわちH
国における国内生産お よび直接投資の生産拠点選 択に関する企業群構成が関与する点は興味深い。3 . 4
労働賦存量格差の変化 (労働移動の効果)次に,
2
国全体の労働賦存量L
は一定のまま2
国の労働賦存量の格差が 変化する場合,すなわち一方の国の労働賦存量の増大 と他方の国の同じ大 き さq)労働賦存量の減少が生 じる場合を考 える. (28)'および図 3か ら,H
国 の労働賦存量の増大 (減少) とF
国の労働賦存量の減少 (増大)は,2
国 全体の企業数 (およびブラン ド製品数)nを減少 (増加)させることが容易 に確認できる。 さらに( 2 4 )か ら, 2
国全体の企業数 (およびブラン ド製品 数)nの減少 (増加)により均斉成長率gの上昇 (低下)が生 じることになる。
これは,F 国から H 国へq)(H 国か らF 国への)労働移動が生 じた場合 の効果 を示 す ものであ る。本論文 におけ る 2国は,労働賦存量 について
LH<L F
,お よび製造活動 に ともな う固定費用 について如>
QFと特徴づけ ら れる. この ことか ら,H 国を先進 国,F 国を発展途上国 と想定できる。 し たがって上記の結果は,発展途上国か ら先進国への労働移動は 2国全体の企 業数 (およびブラン ド製品数)n
の減少をもた らし,企業あた りの研究開発への労働量が増加す るため,均斉成長率
g
の上昇が実現 されることを示唆 している。3. 5
企業群構成の変化最後 に,
2
つの企業群か ら構成 されるH
国において,その企業群のシ ェ アが変化する場合について考察する。本モデルにおいて 2つの企業群構成へ の分割は,各H
国企業の直接投資に ともなうコス ト ・デ ィスア ドバンテー ジの分布 に由来す る。そして2. 5
項で確認 した とお り,2
つの企業群の構成 変化は,製造活動 に要する固定費用の 2国間格差に変化が生 じる場合におこ る。た とえば 2国間の固定費用の差が縮小するとき (0*の低下),H
国企業 の うち国内生産 を選択す る企業群シ ェア1lG(0*)の上昇お よび直接投資を 選択する企業群シ ェアG(0*)の低下が生 じる.この とき
( 2 8 )
および図3
から,2
国全体の企業数 (およびブラン ド製品 敬)n
は増加する.直接投資受け入れ国であるF
国においてH
国現地企業 の撤退が生 じ,F 国の労働が開放 されるため企業数 nの増大を可能 とする。しかし企業数 nの増大は
H
国およびF
国において企業あた りの研究開発へ 充当できる労働量を減少させ,均斉成長率g
は低下することになる。いいかえれば, 2国間の製造活動に ともな う固定費用の格差が大 きく,そ のため発展途上国 (F 国)への直接投資進 出を選択する先進国 (H 国)企 業のシ ェアが高いほ ど,
2
国全体の経済成長の観点か らは均斉成長率の上昇 が実現される, とい うことがで きる。4.お わ り に
本論文では,標準的な研究開発の外部性を内包 したモデルを基礎に,企業 の異質性か ら各企業の生産拠点が選択 される構造を取 り込んだモデルの構築 を試みた。 これは,
Pe r e t t o( 2 0 0 3 )
の研究開発型成長モデルに,Gl a s sa nd
企業の異質性および直接投資の選択 と均斉成長
4 0 5 Saggi ( 2002)
な どの動学的OLI
モデル とMel i t z( 2003)
による動学産業モデル q)独 占的競争下の一般均衡モデルへの適用の考 え方を組み合わせ ることで可 能 になった ものである。本論文のモデル設定の特徴は,製造活動 に要す る固定費用 について
2
国間 格差お よび直接投資 にかかるコス ト構造 について企業間の相違 がある と想定 した点にある。すなわち直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージについて分 布をもつ多数の企業か ら構成 される 2国において,利潤指向的な意思決定を つうじ各企業が生産拠点を国内生産 か直接投資 による海外移転 かを決定 し, その結果 として2
回おのおのの産業構造が規定 される。とくにMel i t z( 2003)
では対称的な 2国のみが分析対象 とされたのに対 し,本論文では労働賦存量 お よび製造活動 に要す る固定費用が相異なる非対称 な2
国を取 り扱 った。 ま た同様 の観点か ら構成 された高木( 2004b)
のモデル を,研究開発の外部性 を 内包 したモデル分析へ拡張 した もの となっている。本論文では初期時点の各企業の知識 ス トックが対称的 と仮定 した こ とか ら,
2
国間あるいは各企業間の知識ス トックの相違 は存在 しない構造 とな っ た。次の課題 として,知識ス トックの分布が存在す る 2国,お よびそれに基 づいて企業群構成お よび経済の移行経路が内生的 に決定 されるモデルを分析 対象 とする必要がある。補論
1
( 9)
および( 1 0)
か らZi s / Zi s ‑
[11 α+ α 2/ zi s ] L
zISである。均斉成長経 路上ではZi s / Z
isが一定であることを利用 して これを時間について微分すれば0 ‑
(1‑ α 妻 + α
Z (妻+4 %
t)
を得 る。 これか ら,均斉成長経路上 において