ア メ リ カ に お け る パ ー ト タ イ ム 問 題 の 史 的 展 開
次 は じ め に
I 一九一〇︱四〇年におけるパートタイム問題の形成 1 パートタイムの諸就業形態における位置と担い手 2 低賃金と労働時間及び労働強度など
Ⅱ 第二次大戦における既婚女性のパートタイム化
1 労働力供給源と既婚女性
2 評悪狙林性のパートタイム化とその状態
Ⅲ 戦後におけるパートタイム問題の展開 1 女性のM字型労働カカーブとパートタイム 2 年齢別労働力率の台型への転換とパートタイム 3 連邦・州政府におけるパートタイム選択権
おわりに
ァメリカにおけるパートタイム問題の史的展開 一昌
紀
二〇七
敬
法 経 研究 二 九 巻 一号
︵一 九九
〇 年
︶ は じ め に
二〇八
パートタイムは︑家事o育児の仕事が一段落して労働市場に再流入した既婚女性によって主として担われ︑また︑そう した私的な労働と社会的な職業労働とを時間的に調整するうえですぐれた利点をもつ︑と長いあいだ考えられてきた︒そ うした議論は歴史的には第二次大戦期のイギリスをはじめアメリカ及びカナダなどの欧米諸国における労働力政策のより どころをなしてきた︒議論の体系化は︑A・ミュルダール/V・クラインの共著﹃女性の二つの役割﹄︵一九五六年︶に よる︒これはこれで︑戦後における労働力政策のよりどころとして国際的に大きな影響を及ぼしてきた︒出版されてすで に三〇年以上の歳月がすぎ︑当時の経済的及び政治的な風潮は︑今日とは大きくことなるけれども︑依然として著しい影 響力を発揮している︒ ミュルダールとクラインの主要な関心は︑労働市場に女性が流入するパターンの変化についてである︒その要因は多岐 にわたるが︑もっとも重要なそれは家族にかかわる︒人口とりわけ二〇世紀に起った平均寿命の延長︑家族構成員の減少 とこれにともなう出産・育児期間の短縮︑耐久消費財の導入による家事時間の短縮︑産業構造のサービス化による女性の 就業機会の拡大︑これらがあげられる︒女性が︑育児の終了してのち労働市場に再流入することが︑﹁四〇歳からの再出 発﹂として注目される︒雇用管理と社会政策の整備が労働市場への女性の再流入を促がすことができるとし︑たとえばパー トタイムをはじめ育児施設︑ホーム・ヘルプ︑耐久消費財の利用による家事の合理化︑家事負担を減らすための公共サー ビスの拡充︑これらを提案する︒パートタイムは︑完全雇用を迎えた各国の労働力不足の解決手段として有益であり︑他 方既婚女性とその家族にとっても彼女たちの二重の役割︑すなわち家事労働と職業労働とを同時に担ううえで︑かけがえ のない選択方法である︒女性は︑家庭と仕事という二つの領域に関心をもつのが男性とはことなる特徴である︒既婚女性
が 家︑ 事 と外 の仕 事 のた め に自 分 の時 間を 半分 ず つに 分 け られ るよ う に︑ も とっ 多 く の パ ート イタ ム就 労 の機 会 を つく る こと は︑ たし か 望に ま し いこ と であ る︒ 第 一に
︑ パー トタ イ ム の仕 事 な らば 女︑ 性 が それ ま で に訓 練 を受 け きて た仕 事 の 領域 と接 触 を続 ける こと が でき る︒ 第 二 に︑ パ ート イタ ムの 仕 事 で は︑ 子供 が 下校 し てく る頃 には
︑ 母親 も 帰宅 す る こと が きで る︒ 最後 に︑ パ ート イタ ム職 は︑ きま りき たっ 家事 労 働 単の 調 さを 破 るが ま︑ 家た 事 を それ ほど ひど く犠 性 にし な いで も すま せ られ る︒ この 議論 は︑ 女性 の結 婚 を機 にし た労 働 市場 から の引 退 と育 児 の終 了 とに なも う パ ー ト タイ ム形 態 の再 流 入 を イラ フサ イ ク ルの モデ ルと し 描て い てい とる い てっ よ い︒ そ うの え パで ー ト イタ ムは 既︑ 婚 女 性 にと てっ 種 々 の利 点 を も つと 評す る ので あ る︒ この 議論 は︑ こう
し てみ ると わが 国 の最 近 のパ ート タ イ 論ム のな か にも 再生 産 され て いる と いう こと が でき る︒ 女子 パー タト イ ム労 働 対策 関に す る研 究会
︵座 長
・高 梨 昌氏
︶ まの とめ た報 告 書 が
︑ それ であ る︒
﹁女 性 が子 育 てが 終 わ たっ ちの 再就 職 し てい くと いう のは 社︑ 会 的潮 流 とし てこ れか ら相 当 に強 ま てっ くい こと はあ てっ も急 速 に弱 ま る こと はな いで し ょ う
﹂と し て パー ト イタ ムの 供給 圧力 予を 測 し︑ これ を
﹁一 つの 可 能 な就 労 形 態 であ てっ
︑ そ の就 労 形態 にふ さ わ し い処 遇 確を 保 し て いく こと こそ 必要 な のだ
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﹂と 提起 され る︒ し かし
︑ A ヽヽミ ーュ ルダ ー ル/ V ク・ イラ のン 議論 は︑ 性分 業 と女 性 のM 字 型 労働 カ カ ーブ を 想定 す る こと にお いて は とも か くと し て︑ 女 子 パー タト イ ム労 働対 策 関に す る研 究 会 の報 告 書 には 全 くな い積 極的 な論 点 を も つ︒ 第 一に
︑ 日及 び 週労 働 時間 の短 縮 を 展望 し て いる こと であ る︒ す べて 男の 女 の労 働 時 間 が︑ 週 四 八時 間 か ら 四 二時 間 に︑ ま たは 四〇 時 間 か 二ら 五時 間 に短 縮 され るこ とを 想定 し︑ これ は長 期い 間 を か け 到て 達 でき る こと では あ ると うい 限 定 を つけ な がら
︑ 好 まし いも ので あ ると 述 べて るい 夫0 や父 親 を単 な る
﹁夜 の来 訪者
﹂ から 家︑ 庭 の問 題 に関 す る完 全な 協力 者 に変 える のは
︑ 二〇 九 メァ リカ にお ける パー タト イム 問題 の史 展的 開
法経研究三九巻一号︵一九九〇年︶ 一一一〇 非常に望ましいことであるとされ︑労働時間の短縮を基礎に見通される︒第二に︑パートタイムを女性にとっては﹁たん に臨時の便宜的なもの﹂あるいは﹁一時しのぎの﹂解決策とみていることである︒既婚女性の多少とも永続的な就労のパ ターンとしては︑パードタイムが︑女性にとって実利的でも望ましいものとも考えられない︒パートタイムを少しばかり 強調しすぎると︑そのことが︑既婚女性と仕事の問題のまさに解決策であるかのような誤解を受け︑女性を袋小路へ追い 込む伏線のようになる危険性をもつ︒労働時間の一般的な短縮を念頭において︑既婚女性がパートタイムで就くよりもフ ルタイムの仕事につくことが好ましい︑という︒パートタイムは︑ 一般的な週労働時間に対する予備的あるいは補充的な ものである︒最後に︑パートタイムの仕事は︑低賃金であり︑これに就く女性たちが補助労働者とみられている︑と評し ていることである︒ これらの三つの論点は︑.V・クラインの単著﹃女性労働者︱労働時間とサービスー﹄︵経済協力開発機構︑ 一九六五年︶ にも継承され︑また︑国際労働機構︵ILO︶女性の雇用に関する専門家会議︵一九五六年一一月︶のパートタイム論と も共通する︒しかるに︑わが国の女子パートタイム労働対策に関する研究会報告書は︑すでに二五︱三〇年以上も前に展 開された国際レベルの積極的な成果を意識的にか無意識的にか無視してかかっている︒ A・ミュルダールとV・クラインのパートタイム論は︑わが国の高梨昌氏などの議論に較べるとき︑はるかに積極的な 論点を含む︒しかし︑問題もまた指摘しておかなければならない︒ 第一に︑パートタイムの担い手はもっぱら既婚女性であることが合意されている︒パートタイムは︑彼女たちが育児の 期間を終えて﹁四〇歳からの再出発﹂に旅だつとき︑﹁一時しのぎ﹂であれ﹁便宜的﹂であれ︑﹁いろいろな利点﹂をも つと評される︒しかし︑パートタイムの歴史的展開過程を少し丹念に調べてみると︑既婚女性のパートタイム化は︑ 一定 の時代の歴史的な所産であることがはっきりとする︒すなわち︑これは︑第一次大戦下のフランスにおいてはじめて政策
化さ れ︑ 第 二次 大戦 下 イの ギ リ スを はじ め メア リ カ及 び カ ナダ にお い て大 量 現象 と し て形 成 され た も の あで る︒ パ ート タ イ ムの 主 た 担る い手 は︑ これ 以前 には 独身 男の 女を 主 流 にし て いる
︒ 既婚 女 性 のパ ー トタ イ ム化 は︑ あ た かも 過去 か ら の くご 自 然的 な存 在 であ るか のよ う に広 く受 け 入れ れら いさ さか の疑 念 も も たれ なか たっ が
︑ そう で なは い︒ 第 二 に︑ パー タト イ ム選 択権 は︑ 一九 七
〇年 代 各に 国 おに い て制 度 化 さ れ は きっ り と し た取 得 実の 績 残を し てい ける れ ども か︑ るか 状況 は︑ A
・ミ ルュ ダ ー ル/ V
・ク ライ とン は こと な る パ ー タト イ ム論 を求 め て い る︒ パ ー ト タイ ム選 択 権 は︑ スウ ーェ デ をン はじ め フ ラン ス︑ ア メリ カ及 び カ ナダ など 各の 国 にお い 制て 度 化 され 男︑ 女 両 性 開に かれ 権た 利 であ る︒ 政策 課題 とし ては
︑ イギ リ スに お いて も論 じ れら てい る︒ こ の権 利 は︑ フル イタ ム労 働 者 を 対 象 にし
︑ パ ート イタ ム を へて も と のフ タル イ ムに 復帰 す る とこ 想も 定す る︒ 労働 市場 か ら の流 出 と 再流 入と 考は え れら ず
︑ む し ろ継 続 就 業 を担 保す る こと にな る︒ A
・ミ ルュ ダ ー ル/ V ク・ イラ がン 提示 し た イラ フサ イ ク ル︑ す な わ ち 結婚 を 契 機 すに 労る 働 市 場 か ら の流 出 と育 児 の 一段 落し た年 齢層 での 再流 入と は︑ あ きら か に こと な る︒ 性 分 業を 前 提 にす る パ ー ト タ イ ム論 では
︑ い ささ か 説明 しえ な いの であ る︒ パー トタ イ ム 歴の 史的 な展 開 は 今︑ 日 こう し た事 態を も そ のう ち に含 む の であ る︒ 最後 に︑ いう と ろこ の
﹁い ろ いろ な 利点
﹂ は︑ にわ か に肯 首 しが た い︒ 女 史 たち が
︑ パ ー ト タイ ムが 既 婚 女 性 にと てっ
﹁い ろ いろ な利 点﹂ をも ら すた と うい とき に注 意 を払 う のは
︑ 日当 り の労 働 時間 の長 さ であ る︒ 労 働 時 間 帯 や曜 日に つい ても
︑ た かし に注 意 を喚 起 す る︒ し かし
︑ それ は︑ 働労 者と そ 家の 族 都が 合 よく 買物 の きで るよ う 営に 業 時 間 を 調整 す る こと に つい てで あ る︒ 具体 的 には 夕︑ 方 や 日曜 日 の朝 など 正規 開の 店 時 間 以外 に営 業 時 間 を 延 長 す る こと の奨 励 であ る︒ パー タト イ ム労 働者 がそ う たし 時間 帯 や曜 日 に傾 斜的 に配 置さ れ
︑ いう と ころ の 家﹁ 庭 生 活 と 有給 仕の 事 双の 方
﹂ を 調﹁ 和 のと れ た全 体像 に融 合﹂ す る こと と は︑ ま たっ く反 対 の事 態 が う まれ る の であ る︒ 両女 史 は︑ 労 市働 場 にお け 政る 策 的 な 調整 に つい て論 ず ると き 第︑ 二次 大 戦 にお け る既 婚女 性 の労 力働 化 に つい て周 到 にも 日 配 りを し て い る︒ し かし
︑ 工場 メァ リカ にお ける パー タト イム 問題 の史 的展 開 一一 一一