[資料] ディスクロージャーと法定監査制度に関す る調査
その他のタイトル [Material] Research of Financial Disclosure and Auditing Institution
著者 高柳 龍芳
雑誌名 關西大學商學論集
巻 20
号 6
ページ 519‑556
発行年 1976‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00021060
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ディスクロージャーと法定監査 制度に関する調査
高 柳 龍
芳
は じ め に
わが国における監査制度が隧生してすでに四半世紀を経過したが, その 間,日進月歩の発展をみるとともに,これに関する世間の関心もかなり高ま ったものと考えてよいであろう。
欧米の先進国においては,その長い歴史の重みの故に公認会計士に対する 世間の評価も定着しており,会計情報公開制度の発展にも安定感がみられる のであるが,ふりかえってわが国をみる場合,会計士誕生の日も浅く,加え るに,近時における経済成長の激しさとその反動による景気の低滞というそ の振幅の大きさの故に,会計情報公開制度や会計士監査制度というものが,
.
.
理くつの上では極めて重大な役割を荷なうものであることを認識しえても,
実践上,このような激しい経済変動に耐えうるものとしてどれだけの期待と 関心が世間一般から抱かれているかということについては,あいまい模糊と
してその姿を明確にすることができないのが現状であろう。
そこで,われわれは,会計士の独立性と会計情報の公開という点に問題を しぽり,監査制度に関する世間一般の関心度と要望度についての調査を企図 した。
最初に,監査制度に関する関心度と要望度は,監査を受ける立場,監査を
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行なう立場,監査の結果を利用する立場というように,その立場を異にする ことにより異なること,あるいは全く利害が相反してしまうことになるの で,今回のわれわれの調査対象は,財務諸表を利用する側の人々に限定し
‑O
また,調査方法の計画段階で,マスコミ,銀行,証券会社などから一部を 選んでパイロットテストを実施し,実態に合わない質問事項の削除,または 適切な質問の追加などを繰返し,当初の案に比較すると,かなり理くつっぼ い質問事項や,かたさのある事項などがはぶかれた。
この調査の結果は,ある程度予想された回答をえられたとはいえ,同時 に,その逆に,回答の中には,かなり矛盾するような返答も含まれているの で,これらを分類し,分析し,解説を加えて整理するにはかなりの日時を要 することとなるので,さし当り,総括の過程でえられた感想を述べるに留め て,集計された結果を中間的に報告することとした。
なお,調査を後援し,たえず助言を戴いた監査制度研究会の諸先生方,ぉ よび,調査計画の出発点から,パイロットテスト,蒐集ならびに計算集計に 至るまで,実務界の実情に精通し,かつこの方面でのヴェテラン会計士であ る安原誠吾・永井一之両氏が一貫して最後まで協力して下さったことに厚く お礼を申し上げたい。
1. 目 的
高 柳 龍 芳 河 合 秀 敏
第 一 章 本 調 査 の 概 要
ディスクロージャー制度の充実や,監査制度の強化ということについて は,今日,抽象的な理念としてならば,大いに賛同の意を与えることについ ては,誰しも異存のないところであろう。しかし,より具体的に,例えば,
半期報告書のあり方や,この度開始された商法監査の実際的な運用といった ような点になると,財務情報を提供する側,これを利用する側,さらに,そ
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調究(高柳) (521) 69 れを監査する側という,それぞれの関係者の間において,それぞれの利害が 対立し,誤論が紛糾の度を加え制度の強化や充実といっても,なかなか理<
つ通りには進展しがたいのが実情のようである。
もともと,ディスクロージャー制度,あるいは,.法定監査制度は,戦後,
証券市場の健全な育成と発展とを意図して,主に,アメリカの制度を参考に しつつ, わが国に導入されたものであることは周知の通りである。 と は い ぇ,ディスクロージャー制度や法定監査制度が,社会制度としての,安定し た指定席を,硯実にわが国にあって獲得しているか否か,あるいは,獲得し うるか否か,といった点については,必ずしも明確な回答を得ているとはい えない。即ち,戦後の経済復興のプロセスの中で,採用され,定着してきた 他の諸制度と同様に,ディスクロージャー制度や法定監査制度についても,
わが国の経済構造,特に,金融構造の現実の姿に対する適合性の有無が,そ の制度としての安定性や定着性を決定する重要な要因となるものである。こ れなくして,単に,抽象的な理念のみを追求することは,仏作って魂入れず の,形骸だけのものとならざるをえないのは,論をまつまでもない。
ディスクロージャー制度や法定監査制度のあり方について, 単に, 「アメ リカでこうだから」という模倣的発想で議論することは,導入の当初におい ては,許されるかもしれない。しかし,制度の導入後,既に, 20数年を経過 し,しかも,世界第二位の経済大国に成長した今日の日本にあっては,まっ た<誤った考え方であろう。このあたりで,アメリカでも,西欧でもない,
日本の経済楷造に適合し,密着した形での,ディスクロージャー制度や法定 監査制度のあり方が,真剣に,模索されねばならないのではなかろうか。
このように考えるならば,ディスクロージャー制度や法定監査制度のあり 方に関する研究態度としても,アメリカを始めとする,諸外国の制度の研究 ゃ,それと日本の制度との比較研究にだけ止まるべきではないことは明らか である。さらに進んで,諸外国における,その制度の実態,あるいは,制度 を生成し,維持している実態の研究,さらに,これらと,わが国の実態との 比較に関する研究が必要となるのであろう。わが国のディスクロージャー制
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳) (523) 71 のような財務情報の利用者たる一般企業を,すべて除外した理由は,その大 部分が,公開財務情報の提供者であるためである。即ち,かかるアンケート 調査を,一般企業に依頼した場合,その回答部署は,殆ど経理部門となるこ とが,容易に予想され,その場合,公開財務情報の提供者としての立場と,
その利用者としての立場とが,微妙に交錯し,利用者としての純粋な意見が 引き出しにくいという事情を考慮した結果である。上記に列挙した専門的利 用者の場合にも,回答依頼部署を,すべて,投融資審査部門や調査部門と し,経理部門を意識的に避けたが,これも,同様の配慮に基づくものであ る。
公開財務情報の利用者としては,以上の外に,個人株主などが考えられる のであるが,調査対象のサンプリング手法について,良い方法が発見出来 ず,純技術的理由から,今回の調査では,除外せざるをえなかった。
3. 調 査 項 目
調査項目は,大別して,①ディスクロージャー制度に関する意見と,②法 定監査制度についての意見との二点である。
(1) ディスクロージャー制度について
ディスクロージャー制度に関しては,まず,公開財務情報の範囲をどう考 えるか,という問題があるが,本調査では,この範囲を,有価証券報告書及 ぴ半期報告書に限定している。
ディスクロージャー制度について考える時,単に,ディスクロージャーへ の要望事項などを聞くだけでは不十分である。より進んで,その要望を,背 後で規定している要因との相関関係を明らかにすることによって,平面的な 要望度の集計に止まらない,より深い分析が可能となると考える。
このために,本調査では,ディスクロージャーに対する要望度を左右する 要 因 と し て , ① 業 種 R 公 開 財 務 情 報 利 用 度 , ⑧ デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー 意 識
(ディスクロージャーをより強力に進めるべきか,否かの区分)の3点に焦 点を合わせた。上記①〜⑧によって,ディスクロージャー制度に対する,現
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実の要望度は,異なっていても当然であるし,また,①〜⑧の各別に,分類 比較するならば,それぞれの要望度の,真の意味が,より深く把握しうると 考えたからである。従って,上記①〜⑧の業種,利用度,および,意識は,
要望度を分析するための尺度として使用する目的で,質問を設定した。
(2) 法定監査制度について
次に,法定監査制度について,この調査の中核をなしているのは,公認会 計士による法定監査制度に対する意識(信頼度や公認会計士の独立性に対す る評価)を浮きぼりにすることであると考えている。昨年来の,日本熱学工 業や,東京時計などに象徴される,一連の粉飾事件は,法定監査制度のあり 方に関する,さまざまの論議を惹起している。かかる粉飾事件が後をたたな いのは,第一義的には,当該経営者の倫理や,監査を担当した公認会計士の 資質の問題であることは,当然と言える。しかしながら,わが国の法定監査 制度が,制度として発足して,既に, 20数年を経過しているにもかかわら ず,なお今日,必らずしも,社会制度として,完全な定着をみずに,種々議 論の的となるのは,単に,個々の経営者の倫理,あるいは,個々の公認会計 士の資質を超えた,より根源的な問題点が問われるべきではないかと考える のである。
法定監査制度が,強固なものとして,定着していかないことについては,
より深いところに問題がないか。誰しもが抱くこの疑問に対して,日本の証 券市場における,大衆株主の未発達とか,企業の資金調達源泉における,間 接金融のウエイトの異常な高さとかいった説明を与えることは,もちろん,
もの事の本質を指摘していると言って,間遮いはない。しかし,こうした,
一刀両断の解答を提出する以前に,法定監査制度に対して,公開財務情報の 利用者が有している意識を,より明確かつ根源的に,つきとめることが重要 であると考えるのである。
かかる観点から,本調査では,設問の中心を,法定監査制度,特に,公隠 計士の独立性に対する意識や評価を明らかにする,いくつかの設問に置い た。そして,さらに,その意識や評価を規定する,最大の要因として,決算
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳) (525) 73 における,利益操作や粉飾に対する寛容度(絶対に不可という,きわめて厳 格な態度をとるのか,あるいは,ある程度,やむをえないと考えるのかとい う区分)をさぐる設問を行なった。これは,粉飾寛容度と会計士の独立性へ の評価との相関をみることが,目的となっているが,これにくわえて,前述 のディスクロージャー意識と,この会計士独立性評価との相関,ディスクロ ージャー意識と,粉飾寛容度との相関,これらが,共に,重要な意味をもっ てくると考えている。端的に言えば,ディスクロージャー意識, 粉 飾 寛 容 度,会計士独立性評価,と言う 3個の因子の相関が本調査の中心テーマであ
る。
この 3個の因子の相関を掘り下げる場合に,ディスクロージャー意識につ いては,大別すると, 3つのグループに分類できるように,問題が設定され ている。具体的には,有価証券報告書の詳細化について,①詳細化に消極的 とするグループと,R積極的に贅成するグループとの区分は当然であるが,
さらに,⑧中間的な意見としての,主力銀行,大株主,幹事証券会社など,
特定の関係先には,より積極的にディスクローズし,その他の一般大衆に は,ディスクローズ消極的という,特異なグループを抽出できるようにして ある。粉飾寛容度についても,同趣旨から, 3分類が可能なように,設問し てある。この中間グループが,実際に,どの程度存在するかが,わが国にお ける法定監査制度のあり方を決定づける,重要なファククーの一つとなると 考えていることが, 上記のような 3分類法を採用した理由であり, こ の 点
も,本調査の重要な特色の一つである。
、また,法定監査制度,特に,その中心となる,公認会計士独立性評価に影 響を及ぼす因子として,上述のディスクロージャー意識や粉飾寛容度の外 に,①業種,R監査制度についての知識の有無,⑧法定監査に関する実際体 験の有無,を明らかにする質問が用意されている。これらの設問は,その質 問自体には,何等の意味のあるものではなく,上記のディスクロージャー意 識,粉飾寛容度,およぴ,会計士独立性評価と,何等かの相関があるかどう かを調べるための質問である。
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さらに,もう一つ,かかる調査としては,奇異の感を禁じえないかもしれ ないが,会計士イメージに関する質問を用意した。特に,会計士に対しても っているイメージを鮮明にするため,官庁調査官や裁判官についてのイメー ジも,同時に質問している。このイメージに関する質問は,会計士に持って いるイメージを明らかにすることによって,会計士独立性評価に対する態度 を側面から裏付けることを目的としている。別言すれば,会計士独立性評価 態度などが,ともすると,クテマエとホンネとを混同して,回答されやすい という欠陥をいくらかでも補足したいという意図で,このような感性面から の質問を出したものである。
(3) 要 約
以上の点を要約して,図示すると, 9頁の「設問の論理図式」の通りであ る。この図は,設問の全体的な関連を明らかにしているが,これから明らか なごとく,本調査における,設問のボイントは,次の5点である。
① ディスクロージャーに対する要望度と会計士独立性評価が設問の中心 をなしていること。
R ディスクロージャーに対する要望度に,最も強い影響を及ぽしている と考えられる因子として,ディスクロージャー意識の質問,また,会計 士独立性評価については,最重要因子として,ディスクロージャー意識 と粉飾寛容度の質問を,それぞれ設定していること。
⑧ ディスクロ•-ジャー意識と粉飾寛容度は,是非,または,賛否という 両極だけではなく,第三のグループとして,前述した特異な態度の回答 が,どの位あるかを明らかにしようとしたこと。
④ 業種,公表財務情報の利用度,監査知識の有無,被監査体験の有無 が,上記のメイン設問に,いかなる影響を与えているかを,明らかにす るようにしたこと。
⑥ 会計士に対するイメージという,感性面の質問を行なうことにより,
上記の質問を補足したこと。
最後に付言すると,かかる調査の回答にあたって,ともすると,クテマエ
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳)
設 問 の 論 理 図 式
①ディスクロージャー制度について
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/
I業 種 I\
1‑1三 十 二
│ .ディスクロージャー要望度 1 2‑3‑A{ディスクロージャーについて2‑8‑B
戸:げばり加す:ー□事ーA呵B?―謬
監査報告害のあり方 2‑7‑B ・C 連結財務諸表のあり方 2‑4‑A ・B
② 法 定 監 査 制 度 に つ い て
亨/戸三土
こ 決算操作ふ5‑A・B ・ C I会計士イメージIA │ │ 古 い 粉 飾 3‑5‑D I A
立直しの時間 か せ ぎ 粉 飾 3‑5‑E
― │ l悪 質 な 粉 飾V3‑5‑F
I 会計士独立性の輝 I
テ咬臼→/ 雇りい正,\4ヽ原因 3‑7‑B
2‑3‑A 監査した会計士に関する関心度合 2‑‑7‑.‑¥ 2‑8‑B 戦後の証取監査の功紹 2‑8°A
1‑1 2‑6‑A ・B ・ C
3
( 注 ) 記 号 は 質 問 の ナ ン バ ー を 示 す 。
例。 3‑7‑Bは 第3部 問7のB間 の 略
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とホンネが混同され,公式的なタテマエの意見だけが前面に出されてくる危 険性が強いという点についてである。このような可能性を,完全に払拭する ということは,到底困難であり,ある程度は,やむをえないと考えている。
しかし,その反面,設問用紙の設計にあたって,次のような配慮を行ない,
クテマエだけが前面に押し出されることを,極力,防止しようとした。即 ち,①回答記入者個人としての意見で良い(換言すれば,会社としての公式 見解不要)ということを,再三にわたって,ことわったこと,②会計士独立 性評価や粉飾寛容度など,クテマエが出やすい設問は,そのものを直接に問 わず,物語形式(たとえば粉飾問題など)や,世間で一般に言われている意 見に対する個人的見解を聞くと言うように,間接的設問形式をとったこと,
⑧会計士イメージなどの感性面の質問で,補足したこと,④「どちらかとい えば,こっち」といった徹妙な答え方で,回答しやすくしたこと,などがそ の主なものである。これらの配慮の結果,クテマエに傾くのが相当程度に防 止され,完全とはいえないまでも,ホンネの意見を聞き出することが出来る
ようになったと考えている。
第 二 章 回 答 の 状 況
1 回 答 状 況
本調査は,昭和50年11月10日で締切った。回答状況は,表Iの 通 り で あ る。
回答率は,全休として63%に達し,郵送方式によるアンケート調査として は,極めて良好な回収率を得ることができた。このことは,本調査に対す る,各社の関心の高さを示すものと言えるだろう。しかし,個別的には,表
I⑥と⑥の回収率が極端に低く,また,回答を得られたものの内容について も,一部の例外を除いて,有価証券報告書の専門的利用者としては,必らず しも適当でなかった調査先が多く含まれているように思われる。このよう に,調査先の選定について,一部の誤りがあったように見受けられるととも に,この⑥と⑥の回答を集計しても,到底,それが,その業種としての,平
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳) (529) 77 均的な意見を表わしているとは認めがたく思われる。そこで,今回の集計の 過程では,表I⑤と⑥とに属する業種の回答17件は,参考意見として,上記
①〜④の集計に含めず,別個に取扱うこととした。
①〜④の回答率については,表1の通り66%に達し,これら4つ の 業 界 の,それぞれの平掏的意見を反映していると考えるのに,十分な回答率であ ると考えている。
(表I) 回 答 状 況
業 種 I ?戸嗜 I回答件数 1回収率%
① 都銀,長銀,信託銀行,政府系金融機限 31 I 24 I 77.4
③ 地方銀行,相互銀行 I n I 47 I 66.2
③ 生命保険会社,捐害保険会社 41 I 34 I 82.9
④ 証券会社,投資信託販売会社 125 I 72 I 57.6
① 〜 ④ 小 計 268 177 66.0
⑤ 一般紙,経済専門紙,経済雑詰,各社 22 8 36.4
⑥ 証券凋係研究機関叉は団体 18 9 I 50.0
A 口 計 308 194 63.0
第 三 章 回 答 集 計 結 果
前章で述べた如く,第一次の集計から除外した,一般紙,経済専門紙,経 済雑誌の各社および,証券関係研究機関または団体,これら以外の 177社の 単純な集計結果は, 17頁の資料I「『ディスクロージャーと法定監査制度に 関する調査』の質問書と回答集計結果」の通りである。
質問相互間の,種々の関連や,より詳細な分析結果,および,それに対す る筆者のコメントの発表は,後日に譲るとして,以下で,特に重要な意味を もつものについて報告したい。
1. 主な質問に対する業種別の回答内容のばらつき
主な質問16個を選んで,業種別に集計したものが, 37, 38頁の資料I「主
78 (530) ディスクロージャーと法定監査制度に凋する調査(高柳)
な質問についての業種別集計表」である。これによると,業種によって,回 答内容に比較的目立った差異のある質問は,次の 8問である。
① 有価証券報告書の利用状況 (No.1,資料Iの番号,以下同じ。)
R 有価証券報告書の詳細化についての意見 (No.2)
⑧ 半期報告書を公表すべきか否かの意見 (No.・5)
④ 半期報告書の開示内容について (No.6)
⑥ 監査報告書の記載内容 (No.8)
⑥ 限定意見の詳細化 (No.9)
⑦ 決算操作の可否について (No.12)
⑧ 会計士独立性についての意見 (No.16)
これらから見る限り,業種毎の意見のばらつきは,相当程度に大きい。
2. ディスクロージャーについての認識
ディスクロージャーを,積極的に,進めるべきか,否かの質問 (2‑8‑
B丙及び丁)には,当然のことながら,賛成意見が極めて高く,丙問につい ては,全体の83.6鍬 丁 問 に つ い て は , 全 体 の76.3% に 達 し て い る 。 し か し,ディスクロージャーに関する, より具体的な,他の設問,例えば,有価 証券報告書の記載内容の詳細化についての質問 (2‑3‑A)に対する回答 では,上のような「ディスクロジャー」一般についての賛成派が,賛成態度 を,必らずしも一貫させているとは言えないようである。即ち, 「ディスク
ロージャー」一般についての質問2‑8‑B丙に,賛成している 148社のう ち, 50社が, 2‑3‑A問に対する回答において,特定閲係先(主力銀行,
大株主,幹事証券会社など)に対しては,詳しい情報を提供すべきだが,広 く,一般公共には,企業内容の公開は,可能な限り,・簡略化すべきだとして いる。また,同じく,「ディスクロージャー」一般についての賛成148社のう ち, 31社が,時間かせぎ粉飾 (3‑5‑E)について,特定関係先にのみ,
その粉飾内容を説明することを条件に,公表決算においては,粉飾を容認す るとの回答をしている。特定関係先にのみ真相を知らせ,一般には粉飾を容
ディスクロージャーと法定監査制度に槻する調査(高柳) (531) 79 認するという,この回答を示したのは69社あったが,この69社 の う ち , 実 に, 57社が,「ディスクロージャー」一般については,賛成派なのである。
このようにみてくると,ディスクロージャーを,広く,一般公共への企業 内容の開示という意味に解さず,特定関係先にのみ,真相を通知し,一般に は秘密に付することも,ディスクロージャーの一種と考えている人が,相当 程度,存在するのかもしれないと思われる。
3. 決算操作及び粉飾決算に対する態度
業績立て直しのための時間かせぎ粉飾の可否 (3‑5‑E), 過去の粉飾 の公表の可否 (3‑5‑D),決算操作の可否 (3‑5‑A),に関する質問 は,粉飾寛容度,即ち,粉飾に対して,どの程度のものまで許容するかを明 らかにする質問である。かかる質問は,クテマエの回答が,前面に出やす く,ホンネを明らかにすることが難かしい項目であり,質問方法について,
苦心を払った項目である。
回答の結果は,予想通り,決算操作一過去の粉飾一時間かせぎ粉飾の順 に,回答者の態度が厳格になり,時間かせぎ粉飾については,これを是認す る意見はなかった。しかし,次の2点について,ここでは,重要な問題とし て,特記したい。
① 決算操作(主として,継続性の変更による利益調節)について,ある程 度は,やむをえないとする意見と,有価証券報告書で,その操作がわかる ようにさえなっていれば,決算操作は許されるとする意見との合計 (53.7
%)が,決算操作に反対する意見 (44.6%)をこえる点である (3‑5‑
A)。有価証券報告書による開示は, 事業年度の終了の3か月後であり,
一般株主の目に触れるのが,逝かに後であることを考慮すると,有価証券 報告書に開示さえすれば,決算操作は許されるとする意見(換言すれば,
継続性の変更についても,比較的寛容な態度)が42%近くもあることは,
やや意外と言わざるをえない。特に,証券会社において,この決算操作に 反対する意見が多い (52.8%)のに対して,都銀等のグループが, 37.5
80 (532) プィスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳)
%,地銀と相銀のグループが38.3%,生保と損保のグループが41.2%とい うように,反対意見が少ないことは,見事な対比をなしている。
R 過去の粉飾についても,公表の要ありとする意見が57.1彩あり,業績の 立て直しのための時間かせぎ粉飾といえども許さないとする意見が74彩に 達していることとともに,当然であるといえる。過去の,古い粉飾に対す る意見に関する問題点は,逆に,粉飾時に,特定関係先(主力銀行,大株 主,幹事証券会社など)に説明済なので,今更,一般公共に公表する必要 はないだろう,という意見が22%もあった点である。また,さらに,時間 かせぎ粉飾についても,特定関係先にのみ,真相を詳しく説明してありさ えすれば,一般に公表する財務諸表では,粉飾もやむをえない,とする意 見が,同じく22%に達したという事実である。前述の如く,かかる質問へ の回答は,ホンネよりもクテマエが出やすいものである。しかも,この調 査の回答者の大部分が,投融資審査部門や調査部門の人達であり,恐らく,
やむをえず,粉飾決算に加担するという立場には,立たされたことのない 人達である。しかるに,特定関係先にのみ,真相を明らかにし,一般公共 に対しては,粉飾を是認するという意見が,本調査で,全体の22彩を占め るということは,このような意見が,実務界では相当根強く,かつ,広範 に普及した考え方であるということをあらわしているのであろうか。
以上,①および②の点,ならぴに,既述した有価証券報告書の詳細化につ いて,特定関係先には詳細に,一般にはもっと簡素化すべし,という意見 (2‑3‑A)が39彩の賛成を得,はっきりと反対したものが47.5彩で半数 以下であること,これらを考え合わせると,わが国における,公開財務情報 の専門的利用者たる立場にある人々の考え方は,必らずしも,ディスクロー ジャーに,単純かつ無条件に賛成しているわけではなく,また,決算操作や 粉飾に対しても,無条件に反対しているものでもなく,さまざまな配慮が働
き,複雑にからみあっているように思われる。
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳)
4. 公認会計士の独立性についての評価
このテーマに関する主な質問と回答は,次の 3つである。
① 会計士の独立性についての意見 (3‑7‑A)
(533) 81
@ 概ね,独立的態度でのぞんでいると考えるもの 20.3%
⑥ やや独立的態度に欠けると考えるもの 72.9%
R 公認会計士に対してもっているイメージ (3‑2, 3, 4)
`信頼出来るか 妥協的か 公正不偏か 正義の味方か
(公認会計士) (官庁の調査官) (裁判官)
74.0%肯定 60.5%肯定 84.7%肯定 33.3 11 5.1 11 9.6 I/
48.0 // 56.5 11 81.3 // 28.8 // 36.1 11 75. 7 //
⑧ 戦後,証取監査の果した役割の評価 (2‑8‑A)
@ 所期の目的を概ね果しt::. 29.9%
⑥ 不満足な点も多いが,ない場合よりは良かった 40.7%
R 所期の目的を果していない 26.6%
以上, 3つの質問に対する回答の結果から,財務情報の専門的利用者たる 人々が,公認会計士というもの,特に,その専門としている監査について,
どの程度の信頼感を有しているかが,ある程度は読みとれると思う。
証取監壺の果した役割を高く評するか,あるいは,会計士の独立性に,全 面的な信頼を置いている回答者の割合は,各々,ほぼ2, 3割位にとどまっ ている。また,会計士に対するイメージのうち, 「妥協的か」, 「公正不偏 か」,「正義の味方か」の 3点において,大蔵省や国税局の調査官,裁判官に 比べて,相当低いイメージになっていることは,公認会計士の独立性につい て,必らずしも,高い評価を与えているものではないと推定して,さしつか えないと思われる。特に,都銀等や,生保損保のグループが,この公駆会計 士の独立性に関する評価について,厳しい意見をもっていることは,注目さ れるところと思われる。 (資料llNo.16参照)
82 (534) プィスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳)
5. む す ぴ
以上は調査結果を集計する過程で,特に目立った点についての感想であ る。文中でも指摘した通り,今後更に深く掘り下げた分析を行なう予定では あるが,ここに,一応,現段階での中間速報を記して,報告の責を果した次 第である。 (50年11月24日)
ディスクローシャーと法定監査制度に関する調査(高柳) (535) 83
資料 I「ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査」
質問書と集計結果
ディスクロージャー(財務情報の公開)と法 定監査制度に関する調査についてのお願い
ここ数年来,企業の社会的責任に対する関心の高まりとともに,公表される財務情報 の真実性の保証と公開性の充実をめぐって,法法監査制度の強化を求める要望が強まり つつあります。ディスクロージャーの充実や監査制度の強化については,抽象的な理念 としては誰しも異存のないところでありますが,具体的な問題となりますと,情報を提 供する側,これを利用する側,さらに,これを監査する側,とそれぞれの関係者の間 で,それぞれの利害が対立し,議論が紛糾しつつあるように思えます。
私共,会計学及び監査理論の研究者グループとしましては,このように複雑にからみ あう利害関係者から中立の立場に立つ第三者として,わが国が直面しているディスクロ ージャーや監査制度のあり方に対し,硯状に即した真の解決の方向を見極めたいと念願 しております。
そのため,まづ,第一段階としまして,経理情報の利用者側である皆様方が.これら の問題に対し,どのような意識と期待を持っておられるかについて,実証的に,計量的 に明らかにしたいと存じ.この社会調査を企画いたしました。質問事項が多く,皆様に 多大のご迷惑をおかけいたしますが,しかし,この種の本格的調査は日本では最初の試 みであり,幸にして,皆様のご協力により, 100彩の回収が得られますならば, この調 査のもつ学問的意義は極めて高いものと思われます。
諸事ご多忙のところ恐縮ですが.上記の趣旨を十分ご理解いただき.同封いたしまし たアンケート用紙にご回答下さいますよう.よろしくお願い申し上げます。なお,申す までもありませんが,ご回答の内容,会社名などの機密保持には.万全の注意を払い,
また,ご協力をいただきました先には,集計結果を御報告申し上げたいと存じます。
昭和50年8月
監査制度研究会
調 査 担 当 : 関 西 大 学 商 学 部 教 授 高 柳 龍 芳 愛 知 大 学 経 済 学 部 教 授 河 合 秀 敏 後 授 : 神 戸 大 学 経 営 学 部 名 誉 教 授 久 保 田 音 二 郎 甲 南 大 学 経 営 学 部 教 授 近 沢 弘 治 和 歌 山 大 学 経 済 学 部 教 授 桜 井 弘 蔵
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追 記
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳)
神 戸 大 学 経 営 学 部 教 授 高 田 正 淳 香 川 大 学 経 済 学 部 教 授 森 実 滋 賀 大 学 経 済 学 部 助 教 授 大 矢 知 浩 司
調査範囲は,専門的利用者の皆様ということで,全体で300社に限定し, そ の 代 り に,その回収につきましては100%を目標にいたしております。従って,期日までにご 回答いただけない場合は,直接お伺いして回収をお願いする予定でおりますので,何卒 ご協力の程お願い致します。
なお,このアンケート調査の概要は次の通りです。
1. アンケートの主な内容
(1) ディスクロージャー(財務情報公開)について
(
イ) 有価証券報告書の利用度
(口) ディスクロージャーに対する考え方
(ハ) ディスクロージャーについての要望事項 (2) 法定監査制度について
(イ) 上場会社の決算操作や紛飾決算についてのご意見
(口) 公認会計士による法定監査制度についてのご意見
2. 回答依頼先の概要(財務情報の専門的利用者に限定してあります)
(1) 都市銀行,外国為替銀行,長期信用銀行,信託銀行,政府系金融機凋 (2) 地方銀行(一部),相互銀行(一部)
(3) 生命保険会社,損害保険会社 (4)証券会社,投資信託販売会社 (5) 一般紙,経済専門紙,経済雑誌社(一部)
(6) 証券関係研究機関又は団体(一部)
3. 回答記入をお願いする方
有価証券報告書などの財務情報をもっとも頻繁に利用される部署の方
(ご送付申し上げた部署がこのアンケート回答記入にふさわしくないときは,社内の しかるべき部署にご回付下さるようお願い致します)
4. 調査担当者の略歴
高 柳 龍 芳 ( 簿 記 , 監 査 論 専 攻 ) 神戸大学院経営学研究科博士課程終了
関西大学講師,助教授を経て,昭和47年教授,現在にいたる。
主な著書:監査報告書論(千倉書房)
河 合 秀 敏 ( 会 計 学 , 監 査 論 専 攻 ) 神戸大学経営学博士
愛知大学講師,助教授を経て,昭和44年教授,硯在にいたる 主な著書:監査理論の基礎(同文館) 財務諸表監査論(同文館)
ディスクロージャーと法定監査制度に関する調査(高柳) (537) 85
I 一 般 的 事 項 の 質 問
問1 あなたの会社(又は団体)はどの業種に属しますか。下記の該当する番号の一つ に0印を付して下さい。
1. 都市銀行・外国為替銀行・長期信用銀行・信託銀行・政府系金融機関 (2ili) 2. 地方銀行・相互銀行 (47社)
3. 生命保険会社・損害保険会社 (34社) 4. 証券会社•投資信託販売会社 (72社)
5. 一般紙・経済専門紙・経済雑誌社(別途集計)
6. 証券関係研究機関又は団体(別途集計)
問2 このアンケートにご回答いただいているあなたの所属部署または,担当業務の 性格について,該当する番号の一つに0印を付して下さい。
1. 投融資,または引受審査部門 2. 調査研究部門
3. 投融資の現業部門
4'. 記事等の執筆,あるいは編集部門 5. その他(具体的に)
(42.4%) (32.8%) (9.0%) ( 0 ) (15.8%)
問3 このアンケートにご回答いただいているあなたの所属部署では,お仕事との関連 において,証券取引所に上場されている上場会社の企業内容や業績について,いろ いろ知りたいという必要性が生じますか。該当する番号の一つに0印を付して下さ い。
1. その必要はよくおこる 2. 時々おこる
3. 減多におこらない 4. N A
I デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー に つ い て の 質 問 '
(75.7%) (15.3%) (6.8%) (2.2%)
問1 上場会社の企業内容や業績を把握する有力な手段の一つとして,有価証券報告書 を利用するという方法があります。あなたのところでは有価証券報告書をどの程度 ご利用になっていますか。
1. 公表されている殆んどすべての会社の有価証券報告書について,毎期,多角的
に活用している (18.1%)
86 (538) ディスクロージャーと法定楠査制度に凋する醐査(高柳)
2. 取引先や,これから取引しようとする先,並びにその閲連会社.または,同業 同種の会社など特定のヒ場会社の分について,必要の牛ずる都度,有価証券報告
書を利用している (67.2彩)
3. 極く稀にしか有価証券報告書を利用しない 4. N A
(13.0彩) (1. 7彩)
問2 有価証券報告書を入手,または,閲覧されるルートは次のいづれですかn
(主なものを一つだけ選んで下さい。)
取引又は特殊な関 左以外の一般未上場 係のある会社分 の上場会社分会社分 11社 36社 3社 1. 証券取引所で閲覧する
2. 3.
大蔵省または財務局で閲覧する その会社から写しを提出して貰う 49
ー
4. 市販の有価証券報告書を購入する 14
1 0 9 4
5 9 2 1 1
問3 次に,有価証券報告寄の内容のあり方についておたずねします。
A問 有価証券報告書の記載内容について,もっと詳細にした方がよいという意見 と,反対に,もっと簡略にした方がよい,という意見とがあります。下記のそれ ぞれの主張に対し,利用者の立場にあるあなたはどうお考えですか。
甲:激化する企業競争下において,会社は,自衛の立場から企業秘密を外部に漏 らさないよう細心の注意を払う必要がある。このような現状下では,企業内 容を社外に公表するための有価証券報告嘗の記載事項は,最少限度に止める べきである。
乙:企業秘密を建前にして,完全な社外秘にすることには問窟がある。少くとも 主力銀行,大株主,幹事証券会社などに対しては,その要請に応じて,各々 個別に詳しい事業内容を説明する必要があり,それが適正に行われている限 り,不特定多数の利害閲係者を対象とする有価証券報告書に関して,企業内 容の公開ぱ出来るだけ簡略化してその概要を把握できる程度でよいと思う。
丙:上場会社は社会的責任を果さなければならないのであるから,広く一般・公 共に対しても充分な企業内容を内表する必要がある。したがって.有価証券 報告書は一層詳細な記載事項を含まなければならない。
,全面的 どちらかと どちら どちらかと そうは に賛成 い え ば 贅 威 と も い い え ば そ う 思わな N A
に近い え な い は 思 わ な い い
甲の意見について 0.6彩 2.8彩 3.4% 31.1% 55.4% 6.7%
乙の意見について 13.0 丙の意見について 35.0
0 4
. .
9 2
ー
0 2
. .
6 8 2 2
26.6 12.4
20.9 4.5 6.8 5.2