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看護におけるコーチングの活用とその効果

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Academic year: 2021

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(1)

Ⅰ.緒言

看護理論家である H.E. ペプロウや J. トラベル ビーなどは,看護師と患者は相互に影響を及ぼ しあう関係であるとする人間関係論で看護を説

明する.「看護婦と患者がお互いを同等ではあ るが,まったく異なる人間として,また問題の 解決に共にあずかる人間として,知り合い尊敬 し合うようになるとき,看護のプロセスは教育

Bulletin of Dokkyo Medical University School of Nursing

要 旨 本研究は,コーチングについての実践を研究した国内の文献をレビューすることによって,

日本におけるコーチングの活用とその効果を明らかにすることを目的としたものである.1983 年か ら収録を開始したデータベース医学中央雑誌の Web 版(ver.5),国立情報学研究所 学術情報ナビゲー タ (CiNii) および学術研究データベース・リポジトリ(GiNii)にて,キーワードを「コーチング&看護」

として検索し,コーチングの実践が明示されている文献を研究対象とした.その結果,35 件が抽出 された.看護におけるコーチングの活用とその効果として,以下の 6 点があげられる.1.最も早期 に出版された文献の年代は 2003 年であった.国内における医療場面を題材にしたコーチングの参考 書籍が出版された時期と合致し,この頃から医療の分野においてコーチングが活用され始めたと考え られる.その後 2005 年の 8 件がピークになって以来,2010 年迄の 5 年間では平均 5.7(SD ± 1.6) 件で,

文献の数でみる限りコーチングの活用が進んでいるとは言い難い状況である.2.文献に示されたコー チングの活用スタイルは,【実践的活用】【トレーニングとしての活用】【コーチング概念の活用】に 集約できた.3.現時点での看護におけるコーチングの活用の場は主に病院であり,看護職にとってコー チングは活用の前段階である学習の段階にあるが,今後さらなる活用の可能性が示唆されている.4.

コーチングによって,患者が治療と向き合い治療を少しでも楽に継続できるようサポートされるとい うことを示唆するメディカルコーチングの典型が示されている.5.看護師がコーチングを実践する ことによって,日常の看護活動が意識的な実践に変化し,コミュニケーションの質と量が向上すると いう,看護師の行動変容が起こることが示された.6.コーチングスキルという語彙を得たことによっ て,暗黙知であった自分の実践に言葉が与えられ,次に列なる課題を明確にし,向かうべき方向性の 示唆を得ることができる.

キーワード:コーチング メディカルコーチング 看護 文献レビュー Keywords :coaching,medical coaching, nursing,literature review

看護におけるコーチングの活用とその効果

−国内の文献レビューを通しての分析−

Practical Use of Coaching and its Effects on Nursing A Review of the Japanese Literature

石川 美智子  板倉 朋世 Michiko Ishikawa  Tomoyo Itakura

獨協医科大学看護学部

Dokkyo Medical University School of Nursing

(2)

的・治療的なものになると思われる」

1)

と H.E. ペ プロウは「人間関係の看護論」に著す.J. トラ ベルビーは「看護とは対人関係のプロセスであ り,それによって専門看護婦は,病気や苦難の 体験を予防したりあるいはそれに立ち向かうよ うに…援助するのである.」

2)

とその著書「人 間対人間の看護」に記す.さらにコミュニケー ションは「看護婦が人間対人間の関係の確立を することができるようにし,そのことによって 看護の目的を実現させるプロセスである.」

3)

としており,看護師にとってコミュニケーショ ンは関係形成や看護実践そのものに影響をもた らす非常に重要な課題であり,日々研鑽の必要 に迫られているものである.

一方コーチングとは,コーチングの会員制コ ンテンツサイトであるコーチヴィルによれば,

『目標達成に向けて必要な「知識」と「スキル」

と「ツール」を装備し,最短の時間で成果が上 がるよう継続的にサポートしていく,双方向の コミュニケーションを指す』

4)

と定義されるコ ミュニケーションスキルである.

歴史的な背景を振り返ると,1840 年代に英 国において受験指導をする個人教師をコーチと 呼んだという歴史に始まるとされる.その後,

1950 年代にマネジメントの分野でコーチとい う言葉が使われ始め,1992 年に米国において コーチを育成する機関  Coach  University  が誕 生し,コーチの育成プログラムが開始された.

ま た 1996 年 に は, 非 営 利 団 体  International  Coach  Federation (ICF,国際コーチ連盟)が コーチの質の維持を目的に設立されている.日 本におけるコーチングは,1990 年代にコーチ 育成プログラムの普及と共にビジネス界に取り 入れられ,ビジネスコーチングとしてビジネス の発展や人材育成などで成果をあげている.

1999 年に日本コーチ協会が設立され,2000 年 春には,杏林大学大学院において医療分野にお けるコーチングの応用と実践をテーマにした講 義が始められている.その後,2002 年 3 月,ウェ ルネス&メディカルコーチングの認知,普及の ための研究会 (Institute of Wellness & Medical  Coach:IWMC) が発足し,2011 年には日本コー

チ協会認定によるメディカルコーチ養成プログ ラムが開始された.今後は,医療に特化したプ ロフェッショナルコーチが増加することが期待 されている.

また,厚生労働省が 2004 年に示した「看護 職員として必要な基本姿勢と態度についての到 達目標」

5)

は,ペプロウやトラベルビーが求め るコミュニケーションスタイルをベースとした 関係作りに加えて,自分で考え主体的・自発的 に行動できる看護師像を求めている.そこで,

「一方的に何をしたらいいかの指示を出すので はなく,対等な立場から効果的な質問をなげか けることにより,自らの内側に答えを見つける ことを促す」

6)

コーチによるコーチングが看護 界でも注目されるようになってきた.看護学は これまでも学際の枠を超えて多様な知識を活用 してきたと同様に,看護師がコーチングのエッ センスを標準装備できたならば,コーチングを 看護するためのツールとして有効に活用するこ とができると考える.

そこで,コーチングについての実践を研究し た国内の文献をレビューすることによって,日 本国内の看護におけるコーチングの活用および その効果の把握が可能となり,今後コーチング を看護基礎教育に反映させ,臨床にコーチング のシステムを構築するにあたっての基礎資料と することができると考える.

Ⅱ.研究目的

コーチングについての実践を研究した国内の 論文をレビューすることによって,日本国内の 看護におけるコーチングの活用とその効果を明 らかにする.

Ⅲ.用語の定義

1. コーチングとは:相手が目標達成するため に,必要な知識やツールを備えさせ,最短の時 間で成果が上がるように,継続的にサポートし ていく双方向のコミュニケーションを指す

7)

2.「実践」と 「活用」:実践 (practice) とは自分 で行うこと,活用 (practical  use) とは効果的に 利用することとして用いる.

(3)

Ⅳ . 研究方法

1.研究対象の選定

データベースは医学中央雑誌の web. 版 ver. 

5,国立情報学研究所学術情報ナビゲータ (CiNii) お よ び 学 術 研 究 デ ー タ ベ ー ス・ リ ポ ジ ト リ

(GiNii)を用い,キーワードを「コーチング&

看護」として,1983 年から 2010 年までの 27 年

間に出版された論文を検索した.ヒット件数は 医中誌では 45 件,CiNii では 6 件,GiNii では 1 件であった.重複した論文を除いた中から,コー チングの実施方法を明示している 35 件を研究 対象文献として抽出した.新しい年代順に文献 番号を付与したものを表 1 に示す.

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(4)

2.データ収集期間

データ収集は,2011 年 11 月から 2012 年 1 月 の 3 ヶ月の期間に行った.

3.分析方法

D.F.Polit  et  al. の分類法を基に,年次別文献 数の分類,文献の筆頭著者の所属施設,コーチ ングの対象による分類,コーチングの活用,コー チングに対する評価の 5 つの視点からデータを 分類し,内容分析をおこなった.

Ⅴ.結果

文献の概要を以下の5つの視点から分類した。

1.年次別文献数の分類

医学中央雑誌が収録を開始した 1983 年から 2010 年までを検索した結果,最も早期に出版 された文献は 2003 年に 1 件検索されたのみで あった.2004 年 0 件,2005 年 8 件,2006 年 4 件,

2007 年 7 件,2008 年 6 件,2009 年 4 件,2010 年 5 件を検出し,その推移を図 1 に示す.2005 年 から 2010 年までの 5 年間では,年間の平均件数 は 5.7(SD ± 1.6) 件であった.

2.文献の筆頭著者の所属施設

コーチングの活用がすすめられている場を推 定するために,文献の筆頭著者の所属施設を分 類した.35 件中 21 件(60%)の著者が病院に 所属しており,他の 14 件(40%)は教育機関

であった.その内訳は大学 8 件(22.9%),短大 4 件(11.4%),研究所 1 件,大学校 1 件であった.

3.コーチングの対象による分類

コーチングの対象とされていたのは,看護師 17 件(48.6%),患者 8 件(22.9%),市民 3 件(8.6

%) ,学生 4 件(11.4%),保健師 2 件(5.7%),

教員 2 件(5.7%)であった.ID28 が対象を教 員および学生としているため対象の総数は 36 となるが,( )内の数値は文献数 35 に占める 割合を示した.看護師 ( 含保健師 2 件 ) を対象と する 19 件中 12 件が,コーチングについての研 修会前後の調査報告であった.中でもコーチン グの対象をプリセプターと明記した 4 件中 4 件 とも,プリセプター研修会の効果を測るもので あった.患者を対象とする 8 件中 5 件は入院し ている患者,3 件は外来に通院する患者を対象 としていた.市民として括った 3 件の内訳は,

高齢者 2 件および褥婦 1 件であった.

4.コーチングの活用スタイル

文献中に示されたコーチングの活用スタイル は,【実践的活用】16 件(45.7%),【トレーニ ングとしての活用】11 件(31.4%),【コーチン グ概念の活用】8 件(22.9%)に集約できた.

【実践的活用】における 16 件の内 8 件が患者 をコーチングの対象としており,看護師を対象 とした実践的活用は 3 件であった.市民 2 件,

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(件)

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   図1.年次別文献件数の推移

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(年)

(5)

学生2件,教員を対象とするものは1件であった.

市民 2 件の内 1 件は,地域で閉じこもりがちな 高齢者を対象とした「教室」での実践である.

この 「教室」 は,実践的活用として位置付けた.

【トレーニングとしての活用】では,11 件中 看護師 7 件,市民 1 件,患者 1 件,学生 1 件,保 健師 1 件をコーチングの対象とするものであっ た.内容は,研修会でコーチングスキルを学び,

ロールプレーなどでスキルを練習するもので あった.

【コーチング概念の活用】では 8 件中 6 件が看 護師を研究対象として実施されており,その内 容は,4 件が振り返りシートや半構成的インタ ビューなどで得られたデータをコーチングの概 念を用いて分析・考察していた.2 件の文献が CSI(Communication Style Inventory)による タイプ分類

注 a

を実施し,その結果 2 件の文献共 に看護師のタイプは,アナライザーが半数を占 めるという一致がみられた.その他の対象は,

保健師 1 件,教員 1 件であった.

注 a  CSI は人のコミュニケーションスタイルを 4 つのタイプに分類する。「コントローラー」

は人や物を支配するタイプ、「アナライザー」

は分析や戦略を立てることを好むタイプ、「プ ロモーター」は自分のオリジナルのアイディア を出すことを好むタイプ、「サポーター」は人 を援助することを好むタイプとされる。

5.コーチングに対する評価

患者を対象としたコーチングの実践 8 件中 6 件は 1 ないし 3 事例を対象とし,コーチングス キルを用いた関わりについての有効性を質的に 検証するものであり,2 件は自己効力感尺度に よりコーチングを用いた関わりの効果を測定し たものであった.コーチングの活用スタイルと 合わせてその効果に対する評価を表 2 から 4 に 示す.

コーチングを受けた患者は,「セルフケア能 力が向上した」{ 文献 ID(以下 ID と略す)6},「信 頼関係の構築につながる」(ID10,ID20),「治 療への揺れる気持ちを表出,治療前の自分を取

り戻した,目標の再確認は継続の糧となる,目 標の共有は治療継続の励みとなる,   コミュニ ケーションが支えとなる」(ID26),「有りのま まの自分でいることができる,看護者を信頼で きる,自由に感情を表出できる」(ID29),「自 己効力感が上昇した」(ID26,ID31)と評価し ている.コーチングを受けた褥婦は,「自尊感 情を高める効果がある,実際に起こりうる問題 への対応準備が行える」(ID16)行動に結びつ いていた.コーチングを受けた看護師は,「自 分は大切にされている」(ID4)「自分自身を信 じることができる」(ID4)と感じ,コーチン グを受けた教員は,「個として尊重してもらえ ていると感じていた,協力的な感情が生まれた」

結果,「皆で協力して目標達成を目指すという 方向性を認識した,個々人が自主的な努力を重 ねた,目的との一貫性を保つことができた,さ らに努力しなければという前向きな姿勢を持ち 続けることができた,協働の意識が自然に芽生 えた,連携しながら相互に補い合うことができ た」(ID2)という行動に至っている.コーチ ングを受けた学生は,「前向きになれた,肯定 的自己イメージが持続,自分のストレスマネジ メ ン ト が で き る セ ル フ ケ ア 行 動 が と れ る 」

(ID7)「意欲を高める,自己教育力を高める事 ができる」(ID17)と記述されている.

プリセプターはコーチングの研修会に参加し コーチングを学ぶ効果について「コーチングを 意識し,言語化することで精神的サポーターと しての役割を果たせた」(ID1),「コーチング の活用で,プリセプターが自信をもち関わるこ とができた」(ID9),「自己変化の認知が内発 的動機づけを向上させ,自分で考え,判断しな がら行動することにつながった」(ID12),「指 導に対する自信がついた,プリセプターのスト レスの軽減が図れた」(ID24)と評価している.

コーチングを実践した看護師の記述は,「苦 手意識の克服に繋がる」(ID3),「コーチング の活用で,自信をもち関わることができた」

(ID9),「自己変化の認知が内発的動機付けを 向上させ自分で考え,判断しながら行動するこ とに繋がった」(ID12) ,「相手の言葉を聞こう

(6)

文献ID コーチング

の対象 コーチングの実践 結果 コーチングに対する評価

2 教員5名 演習・技術試験作成の場面において、

コーチングを意図した働きかけを抽出

皆で協力して目標達成を目指すという方向性を認識し た。

個々人が自主的な努力を重ねた。

協力的な感情が生まれた。

目的との一貫性を保つことができた。

さらに努力しなければという前向きな姿勢を持ち続け ることができた。

協働の意識が自然に芽生えた。

連携しながら相互に補い合うことができた。

個として尊重してもらえていると感じていた。

コミュニケーションが促進され、効果的な相互作 用をもたらした。

個々人の動機付けと共同学習に効果的に関与し た。

4 看護師1名1.面接 2.振り返り

自分の問題に気づき、自分で目標を設定し、その目標 に向けて行動できるようになった。

自分は大切にされている、尊重されていると感 じ、自分自身を信じることに通じる。

5 閉じこもり 高齢者14名

1.目標設定 2.元気リスト 3.褒める 4.ありがとう 5.承認

グループ内の相互作用をもたらした。現実検討能力を 高めた。

達成感・孤独感からの脱却・自己肯定感を高める

コーチング技法を含む「教室」プログラムは自己 肯定感、自己効力感を高める方法として有効であ る。

6 患者1名 GROWモデルで働きかけた 患者のセルフケア能力が向上した 看護師は、答えは相手の中にあると信じた。

患者のモチベーションを高める支援をすること で、セルフケア能力が向上した。

7 学生11名 実習1w前にSAT法コーチング 11名中10名が前向きになれた

肯定的自己イメージが持続。

人間関係が改善。

自分のストレスマネージメントができるセルフケ ア行動がとれる

10 患者3名

1.拡大質問 2.ロールプレー 3.提案のスキル

1.質問の仕方に対する看護師自身の気づき:詰問 2.心の声を聞く余裕が無い看護師

3.100%味方となって対等な立場で話ができる安心感 4.質問に答えることで、今すべきことを見つけ出 し、解決方法がつかめた。

1.コーチ側の振り返りとなる 2.信頼関係の構築につながる 3.行動変容を促す

16 看護師

19名

A:1~2回/月コーチング技法:聞くス キル、承認のスキル、質問のスキルを 取り入れた面接、B:勤務中に声をかけ

4か月・8か月後に調査

短時間の面接・声かけの間のA/Bに有意差はない どちらも「不満」が無くなった。

どちらも「満足」が高まった。

相手の話を聞こうとする態度、場を設けようとす ること、意見・言葉を尊重しようとすることが伝 われば、満足感が得られる。

17 学生51名 コーチング理論からの分類 承認・質問が学生の意欲を左右する コーチングによって学生の意欲を高める、自己教 育力を高める事ができる。

20 患者1名

1.自己選択、自己決定ができる声か

2.楽しい会話:アイスブレーキング 3.明るく簡潔な声かけ

1.退院後のイメージングができた:自立心を支え る、自尊心を守る

1.自立心を支える,自尊心を守るコミュニケー ション

2.緊張をほぐす効果 3.信頼関係を構築する

22 患者107名

傾聴と承認を繰り返した。

承認と前向きな質問 承認・共感・

コミュニケーションが円滑になり表情が変化した。

自信が持てた。 承認のスキルはコミュニケーションを円滑にし、

充実感や自己効力感を向上させる可能性がある。

23 患者1名

1.アイスブレーキング 2.質問:オープン型/肯定型 3.ぺーシング

4.ゼロポジション 5.オウム返し

1.患者から笑顔で挨拶が見られるようになった。

2.レクリエーションの参加率が高まった。

患者-看護師間の緊張を和らげ、患者が自分の思 いを表出しやすく、問題の表面化に繋がりやす い。

患者のやる気を引き出し、行動の援助に役立つ

25 褥婦77名 介入群にコーチング:対面式60分2回

+電話1回

STAI得点:有意差なし

SE得点:介入群の3日目と1ヶ月後に有意差あり MCQ得点:「子供の心配」で介入群の3日目と1ヶ月後 に有意差あり

実際に起こりうる問題への対応準備が行える。

自尊感情を高める効果がある。

この時期の母親の情緒的支援に有用である。

26 患者35名 コーチングを用いた教育プログラムを 作成

治療への揺れる気持ちを表出 目的を明確にし、治療への覚悟をする 継続の意思を強く持つ

副作用症状の調整のコツと自信を得る 治療前の自分を取り戻した 目的の再確認は継続の糧となる 目標の共有は治療継続の励みとなる 目標の評価が自己効力感を高める コミュニケーションが支えとなる

症状マネージメント行動の動機付けを促進する 目的の再確認は継続の糧となる

目標の共有は治療継続の励みとなる 目標の評価が自己効力感を高める コミュニケーションが支えとなる

27

プライマ リー看護師

15名

1.セルフコーチングシートの記載 2.面接

1.シートを用いたことで、プライマリーナーシング に対する目標が明確になった。

1.スタッフ自身から答えが出てきた。

2.質問を受けることにより、さらに深く考える機 会になった。

29 患者1名 30分程度「お茶の時間」としてコーチ ングのコミュニケーションスキルを活

「お茶の時間」を楽しみにするようになって、自己中 心的訴えが減少した。

患者はありのままの自分でいることができ、看護 者を信頼し、自由に感情を表出できるようにな る。

質問を受けることで答えを自分も聞く

31 患者13名 面接時に実施 3回の面接実施者7名中6名が自己効力感が上昇。 コーチングアプローチは、自己効力感・HbA1cの評 価指標において効果が認められた。

表2.コーチングの実践的活用とその評価

(7)

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(8)

とすることで,不満がなくなる」(ID16),「指 導する自信が得られ,ストレスが軽減する」

(ID23)であった.

Ⅵ . 考察

1.コーチングの波及及び活用状況

1) 年次別文献数にみるコーチングの波及状況 1983 年からの文献を検索したが,検出でき たのは2003年以降であった.国内におけるコー チングについての書籍は,鈴木義幸

8)

が 2000 年に,伊藤守

9)10)

,佐藤

11)

によるものが 2002 年に出版されている.鈴木は,「コーチングを 新しいマネジメントツール,人材育成ノウハウ として取り入れる企業が急速に増えつつ」 

12)

ると指摘し,ビジネスにおけるコーチングの有 用性を説いている.伊藤は『「指示」ではなく,

会話の質と量によって彼らの自発的な行動を促 すことができる.コーチングとは,戦略的なコ ミュニケーションスキルのひとつであり,コー チとは会話を広げ,会話を促進する,コミュニ ケーションのファシリテイターである』 

13)

とし て,マネジメントに必要なコーチングスキルに ついて解説している.これらはビジネスの分野 を対象に書かれたものであるが,コミュニケー ションスキルを高めたいと考える看護師にとっ ても魅力的で分かりやすい書となっている.医 療場面を題材にしたコーチングの書籍も 2002

14)

,2003 年

15)

,2005 年

16)

と相次いで出版され,

具体的な臨床への応用がイメージしやすい書と なっている.これらの書籍は今回の研究対象と なった文献の参考文献に使用されていることか らも,研究が取り組まれていたであろう時期と 合致するこの頃から,医療の分野においても コーチングが波及し始めたと考えられる.

その後 2005 年の 8 件がピークになって以来,

2010 年迄の 5 年間では平均 5.7(SD ± 1.6)件と なり,原著論文に限定した数でみる限りコーチ ングの活用が進んでいるとは言い難い状況であ る.

2) コーチングの実践の場から考えられる活用状況 今回研究対象とした文献の筆頭著者の所属施

設は 21 件が病院の所属であり,コーチングの 対象は看護師と患者を合わせると 12 件となり,

看護におけるコーチングの実践の場は病院であ ると言える.看護師(含保健師 2 件)を対象と する文献の 22 件がコーチングについての研修 会前後の調査報告であったことは,コーチング は活用に至る前段階である学習の段階であると 考えられる.

また,表 2・3 に示されるように現段階では 実践的活用が 1 件のみであった保健師の領域に おいては,118 名の保健師を対象とした ID21 で 明らかにされたように,「全体によく実施され ていた」「日常的な対応として,保健師は実施 しやすい状況にある」とされることから,保健 師の領域においても今後に活用の可能性が示唆 される.

2.コーチングの効果 

1)コーチングを受ける側にとっての効果 コーチングは積極的傾聴によって始められる コミュニケーションであり,目標に向かって行 動を促すコミュニケーションでもある.また,

コーチングでは自己基盤が整うことによって人 は行動に移ることができるとされている.

コーチングを受けた ID26 の患者は,治療へ の揺れる気持ちを表出できたことによって,治 療前の自分を取り戻したと記述され,ID29 の 患者は,自由に感情を表出することができたこ とによって,有りのままの自分を保てていると いう実感を得ることができ,看護者を信頼でき るという行動に結びついた.さらに,ID22 の 患者は,自分の思いを表出することができたこ とによって,レクリエーションへの参加率を高 めることができた.

先ず積極的傾聴によって本来の自分自身を表 現することができ,その効果として自己基盤が 整い,それぞれの行動に繋がっていく.「アク ナレッジメント(承認):受け入れられてはじ めて人は行動を起こせる」 

17)

と伊藤がコーチン グスキルを説明するように,ID22,26,29 の 実践を通して,傾聴してもらい承認してもらう ことによって,自尊感情を保持し自己効力感が

(9)

高められ,患者−看護師間の緊張感が軽減する などの結果に結びつくことが実証されている.

また,ID26 はがん患者 35 名を対象としたコー チングの実践によって,「目的を明確にし,治 療への覚悟をする,継続の意思を強く持つ,副 作用症状の調整のコツと自信を得る,目的の再 確認は継続の糧となる,目標の共有は治療継続 の励みとなる,目標の評価が自己効力感を高め る,コミュニケーションが支えとなる」との結 果を得ている.コーチングによって,患者が治 療と向き合い治療を少しでも楽に継続できるよ うサポートされるということを示唆する結果で ある.医療現場においてコーチング(メディカ ルコーチング)

18)

が機能すると,ID20 は退院 後のイメージングができ,ID26 は症状マネジ メント行動の動機付けの促進に発展する.コー チングを受けた褥婦は,自尊感情が高まり,実 際 に 起 こ り う る 問 題 へ の 対 応 準 備 を 行 う

(ID16)行動に結びついていた.地域および外 来で対象となるクライアントの背景は,生活習 慣病をはじめとした非常に多様なものであるこ とから,今後のコーチングの有用性を示唆して いるものであり,この機能こそがメディカル コーチングであるという 1 つの典型が示されて いると考える.

コーチングを受けた学生は「前向きになれた,

肯定的自己イメージが持続,自分のストレスマ ネジメントができるセルフケア行動がとれる」

(ID7),「意欲を高める,自己教育力を高める 事ができる」(ID17)と記述されている.また,

コーチングを受けた看護師は,「自分は大切に されている」(ID4) 「自分自身を信じることが できる」(ID4)と感じ,「スタッフ自身から答 えが出てきた,質問を受けることにより,さら に深く考える機会になった」(ID27)と,行動 に変化が表れた.コーチングを受けた教員は「個 として尊重してもらえていると感じていた,協 力的な感情が生まれた」結果,「皆で協力して 目標達成を目指すという方向性を認識した,

個々人が自主的な努力を重ねた,目的との一貫 性を保つことができた,さらに努力しなければ という前向きな姿勢を持ち続けることができ

た,協働の意識が自然に芽生えた,連携しなが ら相互に補い合うことができた」(ID2)とい う行動に至っている.本間が『コーチング能力 を高め,社内のコミュニケーションを活性化す ることで,「学習する組織」の実現が初めて可 能になる』

19)

と説くように,コーチングは人 と人の関係性を高め,意義ある組織を形成する ときに機能する効果があると言える.

2)コーチングを実践する側にとっての効果 コーチングを実践した看護師は,コーチング を意識して活動することによって,コミュニ ケーションの傾向が明るく楽しい会話(ID20)

や,共感的で前向きな働きかけとなり(ID22),

コミュニケーションの量も増えることが示され ている.その結果,役割を果たせた実感を得る ことができ(ID1),自分で考え,判断しなが ら行動することができるようになる(ID12).

「患者主体の意識が向上」(ID32)することや「答 えは相手の中にある」(ID6)と信じることは 相手のペースを尊重することであり,相手を待 つことができるようになることである.日常の 看護活動が意識的な実践に変化している結果で あると考えられる.

また,研修会で具体的なノウハウを学びロー ルプレーなどトレーニングを受けることを通し て自信を得ることで,自己効力感が高められて いることが ID3,9,23,33 の記述から理解で きる.その結果,話をよく聞けるようになった という実感や,先入観を持たずに見ることがで きる(ID32)という行動に繋がり,すなわち それは,コーチする側(看護師)のコミュニケー ションの質と量が向上した(ID32)結果であ り成果である.

コーチングの概念を学ぶあるいは活用すると いうことは,コーチングという語彙を得ること でもある.伊藤は「双方向のコミュニケーショ ンから課題を解決するインタラクティブ・ソ リューション.それがコーチングです」

20)

説明を加える.鈴木は『コーチングとは一言で 言うと,相手の自発的行動を促進させるための コミュニケーションの技術.どうすれば相手の

(10)

思考を「しなければならない」から「したい」

に変え,自発的に動かすことができるのか,そ れがコーチングを学ぶことによって手にする技 であり,知識です』

21)

として,50 のスキルを 展開している.コミュニケーションの上達を課 題としている看護師には,簡潔で分かりやすく 興味を引かれ,チャレンジしてみようという行 動につながる.

看護は人間関係のプロセスである,あるいは 人間関係の相互作用であるとするとき,コミュ ニケーションが非常に重要な課題となり,看護 師は自ずとコミュニケーションに対する問題意 識が高くなる.実習指導方法をコーチングスキ ルによって分析した ID28 は,「教員は意識して いなくてもコーチングの理論と同様の視点を もって,学生に関わっていた」と結論で記述し ている.これはコーチングスキルという語彙を 得たことによって,自分の実践に言葉が与えら れ,その語彙の概念に照らして振り返りや評価 などが可能となったことを示している.本間は アメリカにおけるコーチ養成機関の創設者トマ ス・レナードの功績の一つとして,「ともすれ ば暗黙知にとどまりがちなコーチのスキルを,

学習しやすい明白知の体系に整理したこと」

22)

と指摘する.ID28 の教員はコーチングスキル という語彙を得たことによって,次に列なる課 題を明確にする事ができ,向かうべき方向性の 示唆を得ることができた.コーチングの効果の ひとつであると考える.

Ⅶ.結論

看護におけるコーチングの活用とその効果と して,以下の 6 点があげられる.

1. 1983 年から 2010 年までを検索した結果,合 計 35 件が得られた.最初の文献は 2002 年に 出版されたものであった.その後 2005 年の 8 件がピークになって以来,2010 年迄の 5 年間 では平均 5.7(SD ± 1.6)件で,文献の数で みる限りコーチングの活用が進んでいるとは 言い難い状況である.

2. 文献に示されたコーチングの活用スタイル は,【実践的活用】【トレーニングとしての活

用】【コーチング概念の活用】に集約できた.

3. 現時点での看護におけるコーチングの活用の 場は主に病院であり,看護職にとってコーチ ングは活用の前段階である学習の段階にある が,今後さらなる活用の可能性が示唆されて いる.

4. コーチングによって,患者が治療と向き合い 治療を少しでも楽に継続できるようサポート されるということを示唆するメディカルコー チングの典型が示されている.

5. 看護師がコーチングを実践することによっ て,日常の看護活動が意識的な実践に変化し,

コミュニケーションの質と量が向上するとい う,看護師の行動変容が起こることが示され た.

6. コーチングスキルという語彙を得たことに よって,暗黙知であった自分の実践に言葉が 与えられ,次に列なる課題を明確にし,向か うべき方向性の示唆を得ることができる.

Ⅶ.研究の限界と課題

本研究の限界は,サンプル数の少ないことで ある.コーチングの実践の状況を把握する手段 として研究論文を選択した結果 35 件での分析 となり,コーチングの実践の状況を把握するに は十分な数とは言えない.今後さらなる実践の 集積と検討が必要である.

引用・参考文献

1)  H.E.Peplau,稲田八重子他訳:ペプロウ人 間関係の看護論,医学書院,1973,p.9.

2)  J.Travelbee,長谷川浩他訳:トラベルビー 人間対人間の看護,医学書院,1974,P.3.

3) 前掲2),p.131.

4)  Coachvill  :(2011.12.10)http://www.

coachville.co.jp/

5)   厚生労働省:新人看護職員の臨床実践能力 の向上に関する検討会報告書(2011.12.10)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/

s0310-6.html.

6) 前掲4)

7)   CTP コ ー チ ト レ ー ニ ン グ プ ロ グ ラ ム:

(11)

(2011.12.10)http://www.coach.co.jp/

coaching/

8)  鈴木義幸:コーチングが人を活かす やる 気と能力を引き出す最新のコミュニケー ション技術,株式会社ディスカヴァー・

トゥエンティワン,2000.

9)  伊藤守:人と組織のハイパフォーマンスを つくる コーチング・マネージメント,株 式会社ディスカヴァー・トゥエンティワ ン,2002.

10)伊藤守:もしもうさぎにコーチがいたら,

大和書房,2002.

11)佐藤英郎:職場のコーチング術,アーク 社,2002.

12)前掲書8)

13)前掲書9),p.3.

14)安藤潔,柳澤厚生:難病患者を支える  コ ー チ ン グ サ ポ ー ト の 実 際 , 真 興 交 易

(株)医学出版部,2002.

15)奥田弘美:医療者向けコミュニケーション 法メディカル・サポート・コーチング入 門 , 株 式 会 社 日 本 医 療 情 報 セ ン タ ー , 2003.

16)中村香織:対話40例でわかるコーチング・

スキル,日総研,2005.

17)前掲書9),p.225

18) メディカルコーチング研究会:(2011.12.10)

http://med-coaching.org/report/

19)本間正人,松瀬理保:コーチング入門,日 経文庫,2006,p.178.

20)前掲書9),p.35

21)前掲書8),「はじめに」

22)前掲書19),p.29

参照

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