身体的発育発達における性差に関する研究
田井村明博
(昭和63年4月30日受理)
The Sex Differences in the Physical Growth and Development
Akihiro TAIMURA
Abstract
The purpose of this study was to clarify the physical developmental changes in the degree of contribution of factors relating to the sex differences. The fourteen test items, which were picked out the area of physical fitness subdomain were administered to 576 boys and 508 girls aged from seven to 17 years of age. In this study, physical attributes and physical abilities were estimated with some reasonable functions of the measured items.
The major findings are shown below :
1) Sex differences in physical abilities extracted as factor became greater after adoles‑
cence. The degree of contribution of four ability domains relating to the sex differences changed along the increase of age.
2) The degree of contribution of fundamental motor skill factor and flexibility factor were greater between 11 and 13 years of age.
3) After 14 years of age, the sum degree of contribution offundamental motor skill factor and body bulk‑muscular strength factor were approximately 90 percent.
4) Fundamental motor skill factor was the greatest one relating to the sex difference in physical fitness after adolescence.
I緒昌
体力,運動能力などの身体的発育発達に関する研究は,これまでに数多く報告され,身体的 属性や,能力についての発育発達の傾向が明らかにされてきた.それらの中で,特に性差に注 目した研究1)6)8)9)も多く見られるが,その多くは単に測定項目別あるいは能力領域別に性差 の統計的有意差の有無の観点から考察しているものが多く,能力の性差という立場から論じら れたものはきわめて少ない.
これまでの報告より,身体的属性や能力の発育発達にともなう性差の全般的傾向としては, 男子と女子では出生直後にすでに体格に差があり,その他の多くの測定項目においても男子が 女子を上回っていることが明らかにされてきた.体格については,恩春期の発育促進の時期の 性差にともなって,一次的に女子が男子を上回っている時期が存在し,さらに,身体の柔軟能 力を除いた体力,運動能力などについては,いかなる年齢段階においても女子が男子を上回る ことが出来ないという事実がある.また,思春期以後になると多くの能力領域において男女の 性差がより大きくなる.
しかしながら,こうした傾向はあくまでも,男女間の平均値的傾向であり,男女それぞれの 性においても個人差が存在し,しかも同年令の男女の分布を同一軸上に描くと各属性や能力領
域によって程度の差はあるものの,分布におおくの重なりがみられ,この分布の重なりの程度 は,各年齢において異なることが考えられる. Matsuura, Y.は,身体的発育発達における4)
個人差の程度を,判別分析によって得られた判別関数値を用いて計量的に検討している.その 結果,平均値の有意な差が集団として大きく異なった集団を表すことはないことを報告してい る.田井村,松浦7)は, 10歳から17歳の男女の16集団について判別分析を行い,その判別率 が能力領域によって異なり,思春期以前では判別率が低く,その分布に大きな重なりが見られ
ることを報告している.これらの研究により能力領域別の年齢及び性についての個人差の程度 が明らかになったが,身体的属性や能力の全体として,男女がどのように異なるかについては 検討されていない.すなわち,身体的発育発達にともない,体力・運動能力における性差がど のように変化していくのか,また,性差をもたらすのにどのような属性や能力がどの程度関与 しているかを検討することである.そこで,本研究では,判別分析の手法を用いて,体力・運 動能力からみたとき男女の判別の程度が加齢にともなってどのように変化していくのか,さら に,男女の性を区別するのにどのような属性や能力がどの程度関与しているかについて検討す ることを目的とした.
Ⅱ研究方法 1.標本
本研究に用いた標本は,小学校1年生から高等学校3年生までの7歳から17歳の児童生徒 合計1,084人であった.各年齢,性別の標本数はTable1.に示すとおりである.
2.測定項目
測定項目の選択にあたっては,体力の下位領域からこれらのTable 1. Sample size 領域を測定していると考えられる項目で,さらに, 7歳から
17歳の比較的広い範囲の年齢に共通に適用できるような項目, 合計14項目を選択した.
1)体格:身長,体重,胸囲,座高 2)静的筋力:背筋力,担力
3)瞬発筋力:垂直跳び
4)筋持久力:時間懸垂,上体起こし 5)敏捷性:シャトルラン
6)柔軟性:立位体前屈
7)基礎運動技能: 50m走, ‑ンドボール投げ 8)呼吸・循環系持久力: 5分間走
3.測定方法
Age Boy Girl Total
一 H I 蝣
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‑ I 蝣
>
‑ I O
>
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* J O C T
>
C N ) O 蝣 r
‑ H O O C T 3 L O 1
1
1
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1
1 O c j O サ ー I A 一 4 6 一 H T
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c o t o t o t r t l o c o l o l 3 4 5 3
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T
0 h14項目の内9項目については,文部省のスポーツテスト実施要項,及び一般的におこなわ れている方法にしたがい,残りの5項目については,比較的広い範寓の年齢に共通に実施でき
るように多少の修正を行った.
1)時間懸垂:高鉄棒を用い,鉄棒が顎より下にくるように両腕を深く曲げた状態を できるだけ長く(120秒を最高とする)持続させ,頭頂が鉄棒より下 にさがるまでの時間を,四捨五入により秒単位で測定した.
2)上体起こし: 1分間の最大繰り返し回数を測定した.
3)シャトルラン: 10mの平行線の中を2往復する時間を10分の1秒単位で測定した.
4)ハンドボール投げ:女子の国際公認球を使用した.
5) 5分間走:四捨五入によって10m単位で走った距離を測定した.
測定は1986年5月中旬から7月上旬にかけて学校段階別に行い,各測定項目ごとに熟練し た同一検者が測定した.
4.分析方法
本研究では,測定によって得られた測定値は,程度の差こそあるが,相互に関連しあってい ることから,測定値そのものを考察するのではなく人間の属性や能力を測定変量の一次結合で 推定する,能力の一次モデルの立虜)5)を採用した.
まず,測定によって得られた14項目のデータに年齢を加えた合計15項目のデータについて 相関行列を求め,求めた相関行列から年齢の影響を取り除くために,年齢を制御変数とした偏 相関行列を求めた.この偏相関行列に主因子法による因子分析を適用し,全年齢に共通な因子 の抽出を行い,完全推定法により因子得点を求め,各個人の能力得点を推定した.次に,推定 した能力得点について,年齢別に男女の平均値の差の検定をT‑test (有意水準はP<0.05と設 定した)によって行った.
さらに,これらの推定された能力得点をもとに,年齢別に性についての判別分析(判別分析 紘,ステップワイズ選択法(変数増減法),を用い,編入用F値,除去用F値ともに1.0とし た)を適用し,正判別率及び判別分析の結果得られた半勝り関数の標準判別係数と郡内相関係数 から,各能力因子の判別に対する相対的貢献度を求めた.
Ⅲ結果及び考察
1.因子分析による能力得点の推定 1 )能力領域の推定
先にも述べたように,能力の一次モデルの立場を採用することにしたので,まず能力領域の 抽出のために因子分析を適用した.その結果, 4因子が抽出された. Table2.は, Normal Varimax基準による回転後の因子負荷量を示したものであり,抽出された4因子で全分散の 75.31%を説明するものであった.
第一因子は,上体起 こし,垂直跳び,シャ トルラン,時間懸垂, ハンドボール投げ, 50 m走, 5分間走に高い 因子負荷量を示してい ることから,基礎運動 技能因子,第二因子は, 体重,胸囲,背筋力, 握力,肺活量,ハンド ボール投げに高い負荷 量を示していることか ら,幅量育および筋力 因子,第三因子は,身 良,座高,体重に高い
Table 2. Rotated factor pattern matrix
Variable FACTOR 1 FACTOR 2 FACTOR 3 FACTOR 4 Communality
Stature Sitting Height Body Weight Chest Girth Back Strength Grip Strength Trunk Flexion Sit Ups Vertical Jump Shattle Run Vital Capacity Flexed Arm Hang Handball Throw 50m Dash 5 min. Run
0.29051 0. 14055
‑0.06395
‑0. 05924 0. 48064 0.49480 0.01561 0.75985 0.68516
‑0.82481 0. 35625 0.80667 0.66925
‑0.80687 0.78947
0.39481 0.33980 0.76087 0.74116 0.73011 0.68882
‑0.00297 0.08637 0.40660
‑0. 18884 0.67018 0.08284 0.52031
‑0. 18882
‑0.01840
0.80980 0.85200 0.52372 0.35806 0.08255 0.21419
‑0.01522 0.01743
‑0.01763
‑0.06050 0.27542 0.07936 0.08805
‑0.19565 0.27609
‑0.07954 0.02094 0.05661 0.07903
‑0.01985
‑0.02202 0.98741
‑0.02714 0.07546 0.03493
‑0. 10573 0.07227
‑0.17651
‑0.06024
‑0.08399
0.90237 0.86156 0.86050 0.68728 0.77128 0.76566 0.97546 0.58587 0.64077 0.72085 0.66309 0.66910 0.75753 0.72860 0.70688
Contribution 4.81479 3. 37828 2.04578 1.05796 ll. 29682
因子負荷量を示しておDegree 。f
り,更に,身長,座高contribution 42.62 29.90 18.ll 9.37 75.31
の負荷量が体重のそれに比べて大きいことから,特に長青に関連した体格因子,第四因子は,立位 体前屈のみに高い負荷量を示していることから,躯幹の屈曲に関する柔軟能力因子と解釈した.
2 )能力得点の推定
次に,抽出された4因子について完全推定法により,因子得点を計算し,各標本の能力得点 を推定した.
推定された能力得点の年齢,性別の平均値を求め,さらに年齢別に男女の平均値の差の検定 をT‑testによって検討した結果はTable3‑1, 3‑2, 3‑3, 3‑4に示すとおりである.基礎 運動技能因子である第一因子では, 10歳,幅量育及び筋力因子である第二因子では, 7, 10, 12歳,長背に関連した体格因子である第三因子では, 7, 13, 14, 16, 17歳と部分的に有意差 のみられない年齢があるが,ほぼすべての因子において男女の間に有意差が認められた.なか でも柔軟能力因子である第四因子の全ての年齢において,また,長青に関連した体格因子の8 歳から12歳にかけては,女子が男子より有意に大であることが認められており,この結果は,
これまでに報告された多くの研究結果と同様であり,本研究で推定された能力因子及び能力得 点の妥当性の一面を保証するものであると考えられる.また,これらの因子において,男女間 に有意な差が認められたことから,程度の差は存在するであろうが,これらの因子が性差をも たらすのに影響していることが推測される.
Table 3‑ Mean, standard deviation and T‑value : Factor‑1
Boy Girl
Age Mean S. D. Mean S. D. T‑value
‑0.997 0.475 ‑1.453 0.426 4.58詛
‑0.630 0.495 ‑0.876 0.553 2.36 *
‑0.365 0.562 ‑0.749 0.483 4.14詛 10 ‑0.434 0.589 ‑0.452 0.503 0.16 ll 0.059 0.708 ‑0.179 0.409 12 0.520 0.537 ‑0.200 0.551 13 0.989 0.656 0.152 0.503 14 1.338 0.716 0.081 0.472 15 1.161 0.524 ‑0.300 0.586 16 1.209 0.584 ‑0.357 0.442 17 1.094 0.484 ‑0.254 0.496
2.05*
7.34*
7.26詛 ll.04詛 ll.
14.86 * 9.61*
Table 3‑3. Mean, standard deviation and T‑value : Factor‑3
Boy Girl
Age Mean S. D. Mean S. D. ‑value
7 ‑1.060 0.467 ‑1.154 0.322 1.04 8 ‑1.087 0.409 ‑0.864 0.338 ‑2.99詛 9 ‑0.730 0.391 ‑0.569 0.368 ‑2.40*
10 ‑0.405 0.355 ‑0.191 0.447 ‑2.71 * ll ‑0.110 0.345
12 0.117 0.433 13 0.493 0.440 14 0.613 0.442 15 0.735 0.473 16 0.641 0.453 17 0.560 0.585
0.060 0.387 ‑2.26*
0.467 0.348 ‑4.93*
0.618 0.359 ‑1.57 0.598 0.368 0.19 0.497 0.393 2.44*
0.529 0.389 1.32 0.337 0.323 1.82
Table 3‑2. Mean, standard deviation and i‑value : Factor‑2
Boy Girl
Age Mean S. D. Mean S. D. T‑value
7 ‑0.847 0.341 ‑0.864 0.230 0.26
‑0.702 0.409 ‑0.944 0.314 3.32詛 9 ‑0.653 0.363 ‑0.881 0.333 3.71 * 10 ‑0.549 0.437 ‑0.704 0.392 1.87 ll ‑0.379 0.555 ‑0.589 0.398 2.15 * 12 ‑0.183 0.536 ‑0.202 0.532 0.20 13 0.340 0.603 0.102 0.474 2.22*
14 0.787 0.610 0.396 0.520 3.61 * 15 1.214 0.619 0.693 0.519 4.07*
16 1.603 0.750 0.793 0.427 6.71 * 17 1.979 0. 0.907 0.434 7.02詛
Table 3‑ Mean, standard deviation and T‑value : Factor‑4
Boy Girl
Age Mean S. D. Mean S. D.
7 ‑0.743 0.685 ‑0.265 0.654 8 ‑0.701 0.548 ‑0.145 0.651
‑0.942 0.790 ‑0.435 0.626 10 ‑0.979 0.763 ‑0.250 0.733 ll ‑0.850 0.769 ‑0.322 0.814 12 ‑0.350 0.745 0.612 0.789 13 0.001 0.798 0.834 0.614 14 0.386 0.725 1.028 0.773 15 0.260 0.652 1.130 0.
16 0.426 0.741 1.127 0.734 17 0.249 0.744 1.120 0.489
T‑value
・3.21詛
‑4.
‑4.00 *
‑4.91 *
‑3.23 *
‑6.95 *
‑5.93 *
‑4.52 *
‑4.93 *
‑4.72ナ
ー4.50 *
2.判別分析 1)正判別率
Fig. 1は,先に推定された四つの能力得点を独立変数とし,各年齢別に性についての判別分 析を行い,導き出された判別関数の関数値から,各標本がどの程度正確に本来の性に判別され
たかを正判別率(Classificationrate)によって図示したものである. 7歳で84.15%, 10歳 で72.82%, 13歳で90.38%, 15歳で99%, 17歳では100%であった.多少の変化はあるもの の, 7歳で84.15%, 10歳で72.82%, 12歳以降になると90%を越えており, 17歳ではその判 別率は100%となっている.このことは,女子の発育発達のスパートが男子より2年から3 年はど早く現れ男子の値に接近,あるいは上回ることによって男女の分布の重なりの程度が大
きくなり,その後男子のスパートが現れることによって再び女子を上回ったり,差が大きくな ることによって,分布の重なりが小さくなり,性差が大きくなることを示すものである.
Tanner, J. M.は, Ⅹ線撮影による骨の計測値と体脂肪量を独立変数とし性についての判8)
別分析を行っている.その誤判別の割合が7.5歳38%, 10.5歳29.0%, 13.5歳14.0%,成人5
%と加齢とともに減少し,性差が明確になることを報告している.測定に用いた項目が異な るので,本研究の結果と直接的な比較はできないが,性差は加齢ともに,特に思春期を境にし て大きくなるという点では,本研究の結果と一致するものである.
7 89柑11121314151617白ge
Fig. 1 C一assification rate
2)相対的貢献度
Table4.は,判別分析によって得られた,標準判別係数を示したものである.各因子の標準 判別係数を絶対値でみると,特に基礎運動技能因子である第‑因子の係数が大であり,この因 子が導き出された判別関数に大きな影響を及ぼしていることが推測される.逆に,長青に関連 した体格因子である第三因子では,ほとんどの年齢においてその大きさが小さく,判別関数に 対する影響力の小さいことが推測される.ここで各係数は全体的にみると上述の傾向を示して
いるが, 10歳の第‑因子の係数(‑0.493)は他の因子を比較すると小さい値を示しており,
それぞれの年齢において各因子問の係数の大小関係は,必ずしも全年齢で共通ではない.ここ で,さらに詳しく考察するために, Table4.に示した標準判別係数と,判別関数と独立変数で
ある各因子との相関を示す郡内相関係数から,これらの4因子の判別に対する相対的貢献度を 算出した. (相対的貢献度(R%) ‑標準判別係数×郡内相関係数×100)
Fig. 2は,各因子の判別に対する相対的貢献度 を図示したものである.図から,年齢によって各 因子の貢献度が異なっており, 10歳を境にして, その相対的貢献度が大きく変化していることがう かがえる.なかでも,第一因子の基礎運動技能因 子の貢献度は, 7歳で71.75%と最も大きく, 10 歳で1.05%と急激に減少している.その後再び 大きくなり, 12, 13歳では, 50%程度, 14歳から 16歳では65%程度であり大きな変化がみられる.
第二因子である幅量育および筋力因子はi, 9 歳で30%程度,その後減少し, 12歳では 0.85%と非に小さい貢献度を示した. 13歳以降 になると,再び大きくなり17歳では36.37%に
Table 4. Standardized discriminant function coefficient
Age F‑l F‑2 F‑3 F‑4
1.352 1.055 0.245 ‑0.587 8 ‑0.928 ‑0.843 0.195 0.767 1.027 0.885 ‑0.218 ‑0.580 10 ‑0.493 ‑0.740 0.650 0.914 ll ‑1.017 ‑0.990 0.526 0.795 12 ‑1.126 ‑0.678 0.320 0.900 13 ‑0.932 ‑0.566 0.259 0.817 14 1.085 0.769 ‑0.134 ‑0.590 15 1.198 0.975 0.451 ‑0.454 16 0.972 0.758 0.417 ‑0.476 17 0.862 0.968 0.577 ‑0.235
なり,基礎運動技能因子の次に大きな貢献量を示した.
第三因子である長青に関連した体格因子は, 10歳の22.87%が最も大きく11歳で15.37%, 12歳で9.72%と減少傾向を示した.その他の年齢における貢献量も, 7%以下で他の因子と 比較して小さい値であった.
第四因子である娠幹の屈曲に関連した柔軟因子は, 7歳で21.88%, 10歳で58.17%, 14歳 で15.58%と変化が大きく,基礎運動技能因子とは相反する傾向を示した.さらに,この因子 と基礎運動技能因子は他の2因子と比較すると全体的に大きな貢献度を示していることから, 男女の性を判別するのにより大きな要因であることが推測される.
4
C O n
⊥ し
﹁
‑
‑ Q z J 暮 し
‑ o
c 7 8 9柑11 1213141516IT【〕ge
Fig. 2 Degree of relative contribution
Table5.は,各年歯斜こおいて貢献度が特に高い因子について示したものである. ●がもっと も高く, ○が次に高い貢献度であることを示している. 10歳までは,性差に関与する因子の 貢献度に一定した傾向がみられずに大きく変化しているが, 11歳から13歳にかけては基礎運 動技能因子と躯幹の屈曲に関連した柔軟因子が, 14歳以降になると基礎運動技能因子と幅量 育および筋力因子の貢献度が大きくなり,加齢にともなってその傾向が変化している. 7歳か ら10歳あるいは11歳にかけて,一定した傾向がみられないのは,この時期は女子の発育発達 促進によって,個人差が大きくなること,あるいは全体的な発育発達のアンバランスが生じる
などの理由により結果されたものと推測される.基礎運動技能因子の貢献度は, 12歳以降に なると, 50%以上を占めており,さらに14歳以降
になると幅量育及び筋力因子と2因子で90%に近 い貢献度を示していることから,この2因子は思春 期以後においで性差を決定ずけるのに大きな要因で
あることが推測される.
このように思春期以後に男女の性差が大きくなる ことは,第一義的には思春期の第二次成長期におけ る性ホルモンや成長ホルモンなどの内分泌との関連 などの人間の生理的発育発達機序が大きく関与して いるものと考えられる.
しかしながら,こうした傾向は一般的傾向であり, Wilmore, J. H. '‑が主張するように女性の鍛練者
Table 5. The level of contribution
F‑l ‑2ト3 F‑4
C
‑
0
0
0
5
0
>
‑
i
<
N
C
5
‑
<
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O
t
 ̄
‑
1 1 l l l l l l
○
●
●
●
◆
●
●
〇
〇
〇
〇
〇〇〇〇
○
●
●
●
○
○
の体重,あるいは除脂肪体重(Lean Body Mass)
当りの下肢の筋力や持久力能力が男性の鍛練者の値と比較するとほとんど差がみられないこと から,必ずしも本質的な差を意味するものではないものとも考えられる.本研究では,測定に よって得られた測定値そのものを分析したので,その結果にはエネルギーの絶対的な量からみ た差異が反映されたと考えられる.近年,女子のスポ‑ツ選手において,記録の上で男子との 差が接近してきていること,いままでに男子に限られていたサッカーやマラソンあるいはトラ ィァスロン等の種目においても女子の競技が開催されていることなどを考えると,猪飼l)が報告し ているように,男女の性差には,体力の質的な側面であるサイバネティクス系よりも,量的な 側面であるエネルギー系のはうがより大きく影響しているものと考えられる.さらに,内外の 多くの研究者が報告しているように,これまでの慣習や,生活様式,身体運動への参加の機会 が少ないなど,種々の環境の影響によって女子の思春期以後の身体的発育発達の可能性を減少
させているのではないかとも推測される.これらの問題を含めて,さらに詳しく検討すること が今後の課題であると考えられる.
Ⅳまとめ
本研究では,身体的発育発達における性差をもたらす要因の加齢にともなう変化について検 討するために, 7歳から17歳の児童生徒男子576人,女子508人の合計1,084人に,体力・運 動能力に関する14項目の測定を行った.
分析にあたっては,測定値そのものを用いるのではなく,能力の一次モデルの立場から能力 領域の抽出を行ない,それらの能力領域が性の判別にどの程度関連しているかを検討した.
その結果,思春期以後に男女の性差が急激に大きくなり,年齢によって4つの能力領域の性 の判別に対する相対的貢献度が異なることが明らかにされた. 10歳までは,一定した傾向が
みられず, 11歳から13歳にかけては,基礎運動技能因子と柔軟能力因子が, 14歳以降では, 基礎運動技能因子と幅量育及び筋力因子が性差をもたらすより大きな要因であった.
参考文献
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4 ) Matsuura, Y∴ A Study on Physical Growth and Development through investigating in the
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5 ) Matsuura, Y・ : Multivariate Assessment of Physical Fitness, Kinanthropometry II, edited by M. Ostyn, G. Beunen, and J. Simons, University Park Press, Baltimore, pp. 161 ‑75,
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6)野口義之:運動適性因子の性差について第1報,九州大学体育学研究, 1 (5), 1‑12, 1952.
7)田井村明博,松浦義行:判別関数値の分布からみた身体的発育発達の検討,日本体育学会第37回大 会号, p. 837, 1986.
8 ) Tanner, J. M∴ Growth at Adolescence, 2nd edition, Blackwell Scientific Publns, Oxford, pp. 40‑54, 1962.
9)徳永幹雄,藤本実雄:身長の発育現象にみられる地域差・性差,体育学研究, 17 (2), 75‑80, 1972.
10) Wilmore, J. H. : The Female Athlete, The Journal of School Health, 47 (4), 227‑33, 1977.