慢性 透 析 患 者に おける ダイ ア ライ ザ ー 内残血量と凝 固 ・ 線 溶能の関連
金 沢大 学 医 学 部 内 科 学 第三講 座 (主任: 松田 保 教 授)
山 崎 雅 英
(平 成4 年1 月1 0 日 受付)
慢 性 糸 球 体 腎 炎に対し 血液 透析を施 行して い る4 9症 例に つ いて静 脈血の療血学 的パ ラメ ー タと ダ イア ライ ザ ー内 残血 量 の関係を検 討し た. 凝 固・ 線 溶 動 態ほ, 粒 子 計 数 免 疫 測定 法(particle c o u ntingim m u n o a s s ay, P CI A ) によ りフ ィ プリン分解 産 物 (c r o s s‑1inked fibrin degr adatio n pr odu cts, X D P) を, ま た酵 素 免 疫 測 定 法(e n zym e‑1inked im m u n o s o rbe nt a s s ay,
E LI S A ) によ りトロ ンビン ・ ア ンチ トロ ン ビンⅢ複 合 体 (thT O mb in‑a ntithr o mbin Ⅲ c o m ple x , T A T), プラス ミン ・ α2 プラス
ミン イン ヒ ビ タ q 複 合 体 (p las min一α2 Pla s min inhib itor c o m ple x , PI C ), プロ テイ ンC (pr o t ein C , P C ), プロ テイ ン S (pr otein S , P S ), 活 性型プラス ミ ノゲン ア ク チ ベ ー タイン ヒ ビ タ ー (a ctivefo r m pla s min oge n a ctiv ato rinhibit o rt y pel∴活性
型P A I), プラス ミ ノゲンア ク チ ベ ー タ(tis s ue‑t y Pe pla s min oge n a ctivato r, トP A )・P A I 複 合 体(p la s min oge n a citiv ato r/
pla s r nin oge n a ctiv ato rinhibito rt y pe l c o mple x , tP A/P A I) を測 定し た. 血管 内 皮 細胞上に存在し, 内 皮 細胞の障 害によ り流
血中に遊 離 するトロ ソボモジュリ ン(thr o mbo m odulin , T M ) と, 炎 症 時に生体に対し様々な障 害を与え ることで知ら れ ている 顆粒 球エ ラス タ ー ゼ(polym o rpho n u cle a r ela sta s e, P M N‑E ) につい てもE L IS A によ り測 定し た・ 血中の T A T , X D P , T M ほ透 析 前よ り有 意に上昇し ていた. T A T, P r C , t‑P A/P A I, T M , お よ び P M N‑E ほ 1 回の透析によ り有意に じ昇し, 活 性 型
P A I は有 意に低 下し た. 透 析 前の T M は短 期透 析 症 例と 比較し て長 期透 析 症 例において有 意に高 値を 示 し た・ 透 析によ る T M の変 動は P M N‑E の変動と 正の, 白血球 数の変 動と負の相 関を 示 し た. 残血量の多い症 例で は, 残血量の少ない症 例と比 較し て透 析 前よ り活 性型 P A I は高 値を 示 し, ま た透 析によ る T A T お よ び T M の上昇 度 も 高 度であった, ダイア ライ サ ー 内 残血量の多い症 例で は, 凝 固機 序の活 性 化と線 溶 機 序の抑制が生じ ているものと考え ら れ た. これ らの所 見よ り, 透 析を施 行 さ れて いる症 例で ほ, 血液と ダ イア ライ ザ 一 等の異 物 面との接 触によ り凝 固 機 序の活性 化が惹起さ れ, ま た 血管 内 皮 細 胞の障 害が生じて いるものと考え ら れ た. 血管 内皮 細 胞の障 害の原 因と してほ, 透 析に よ る トロ ン ビンの生 成と顆粒 球か らのエ ラス
タ ー ゼ の放 出が考え ら れ た.
Key w ords he m odialysis, thr o mbin‑antithro m bin Ⅲ c o mple x, a Ctive form pla s min oge n activ atorinhibito r t y pe l ,thr o m bom od ulin , r e Sidu al blo od v olu m e in dialyze r
長 期に血液 透 析(he m odialysis, H D) を要 する腎不全 患 者にお
いて ほ, 原 疾 患そのもの によ る種々の血液 学 的 変 化, すな わ ち
貧血1 }2 )や 血小 板減 少ユ14 )等の細胞 学 的 異 常を ほ じめ, 血凍 蛋n ,
特に α2 グロ ブ リンや補 体, その他の免疫 担 体5), あるいほ凝固
・ 線 溶 困千の異常6)を生じ得る. さ らに これ らの症 例で ほ, 長 期透 析を施 行す ることによ りこ のよ う な 血液所 見に修飾が 加 え られ8 〉, 透 析そのもの の有効 惟, あるいは患 者の 一 般 状 態な ど に影響を与え ること がある. す な わ ち透 析 時には体 外 循環回路 と 血流との接 触か ら ダ イア ライ ザ 一 等の回路 内に凝固 し た残血 が生じ透 析 効 率の低 下を来 す 症 例がある7 ㈲. こ の原 因と して は, 体外 循 環回路と 血流の接 触に よ り内因系 凝 固 機 序の活 惟
化丁ト 9 )や 血小 板の活性 化18 )1 1 )が惹起されること が考え られ る. 一
方, 透析回路の構 造上, 血流の停 滞し やすいダ イア ライ ザ ー 内 部や動 脈 側, 静 脈 側の ドリッ プチャンバ ー 部 等で は 回路 内の均
一 な速い流れか ら乱流を伴う遅い流れ と な り, 残血 を生じ やす
A b breviations : aCtive P A I, a Ctive fo rm plasmin ogen inhibito r ; α2 P I, α2 pla s min inhibito r ; A P C, a Ctiv ated
いものと考え られ る8‑. ニ の残血 を予防す る た め, ダ イア ライ ザ 一 等にお け る抗 凝固素 材の開 発‑ 2卜‖〉, 回路の抗血栓 性 構 造の 設計■8〉, 新しい抗血栓 療 法1 5}や抗血小 板療 法の併用1 6 ‑ け'等が試み ら れ ている. し か L , 回路 内 残血量の問題は解 決さ れ た わ け で ほ な く, 症 例によ り残血量の多 少がみられ その原因 や病 態は 必 ず し も 明 ら かにさ れて いない.
ま た, 透 析 症 例では透 析 時に心筋 梗 塞や脳梗 塞 等の血栓 症の 合 併を み ること が少な く ないl‑2
、
. こ の原因 と しても, 従 来血液 透 析 時の内 因系 凝 同 機 序の活 性 化, 血小 板の活 性 化 等が指 摘さ れてきた2‑が, 血管 内 皮細 胞の陣 営の有 無に ついて論じ た報 告 ほ み られ ない.
一方, 1 97 1年E ngva11 ら1 8} によ る酵 素 免 疫測定 法(e n zym e‑
1inked im m u n o s o rbe n t a s s ay, E L I S A ) の考案によ り, 凝 固・ 線 溶 分子マ ー カ ーの開 発にほ近 年めぎま しいものがあり, 血管 内
における凝 固 ・ 線 療 病 態を詳 細かつ鋭 敏に評 価 すること が可能
activ ator inhibito r t y pe l; αl P I, αl pr Oteina s e
protein C ; A P T T, a Ctiv ated partial thr o m bopla stin tim e; A T Ⅲ, a ntitho mbin Ⅲ; B U N , blood ure a nitr oge n; C A P D, C Ohtin u o u s a m bulato ry perito n e al dialysis ;
C 4 bp, C 4 binding protein ; C G N, Chro nic glo m e r ulonephritis ; Cr, Cr e atinin e ・; E L IS A , e n Zy m eqlink ed