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橋梁の中長期維持管理計画策定の高度化に関する研 究

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(1)

橋梁の中長期維持管理計画策定の高度化に関する研

著者 小川 福嗣

著者別表示 OGAWA Fukutsugu

雑誌名 博士論文本文Full

学位授与番号 13301甲第5343号

学位名 博士(工学)

学位授与年月日 2021‑03‑22

URL http://hdl.handle.net/2297/00062888

(2)

橋梁の中長期維持管理計画策定の 高度化に関する研究

小 川 福 嗣

令和 3 1

(3)

博 士 学 位 論 文

橋梁の中長期維持管理計画策定の 高度化に関する研究

    

金沢大学大学院 自然科学研究科

    

環 境 デ ザ イ ン 学 専 攻

 学 籍 番 号 2024052001

 氏     名 小 川 福 嗣

 主任指導教員名 中山 晶一朗

 提 出 年 月 2021 1

(4)

目 次

第1章 序論 1

1.1 はじめに . . . 1

1.1.1 橋梁の老朽化と維持管理 . . . 1

1.1.2 橋梁点検と長寿命化修繕計画 . . . 3

1.2 本研究の目的 . . . 6

1.2.1 橋梁点検所見の分析と維持管理への活用 . . . 6

1.2.2 橋梁点検結果の活用と経年劣化予測 . . . 6

1.2.3 災害時道路ネットワーク接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕 計画の検討 . . . 7

1.3 関連する既往研究の整理 . . . 8

1.3.1 維持管理の実態と課題 . . . 8

1.3.2 マネジメントシステム . . . 9

(1) 橋梁の健全度評価および補修優先度 . . . 10

(2) 劣化予測 . . . 12

(3) 計画の最適化 . . . 13

(4) 長寿命化修繕計画 . . . 14

(5) 道路ネットワークの接続性および脆弱性 . . . 14

(6) 自然言語処理技術の援用 . . . 14

1.4 本研究の位置づけ . . . 16

1.5 本研究の構成 . . . 19

参考文献 22 第2章 橋梁点検所見の分析と維持管理への活用 31 2.1 はじめに . . . 31

(5)

2.2 トピックモデルの概要 . . . 35

2.3 橋梁所見記述に対するトピックモデルの適用 . . . 37

2.3.1 利用データとトピック数 . . . 37

2.3.2 分析結果および考察 . . . 41

(1) 各トピックの特徴. . . 41

(2) トピックと架設年および健全度の関係 . . . 41

(3) トピックと所見記述の関係 . . . 44

2.4 おわりに . . . 48

参考文献 49 第3章 橋梁点検結果の活用と経年劣化予測 51 3.1 はじめに . . . 51

3.2 石川県における橋梁点検の概要 . . . 52

3.3 橋梁点検結果に関する基礎集計 . . . 53

3.4 区分線形回帰による経年劣化傾向の判定 . . . 58

3.5 劣化曲線の設定 . . . 61

3.6 点検データの取捨選択および劣化予測手法違いによる比較考察 . . . . 65

3.7 おわりに . . . 68

参考文献 69 第4章 災害時道路ネットワーク接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕計画の検 討 70 4.1 はじめに . . . 70

4.2 利用するデータ . . . 74

4.3 計画策定の条件設定 . . . 76

4.4 災害時道路ネットワーク接続性を考慮した長寿命化修繕計画 . . . 83

4.4.1 石川県の緊急輸送道路ネットワークの接続性の基礎的分析 . 83 4.4.2 予算の平準化 . . . 89

4.4.3 路線健全度 . . . 92 . . . .

(6)

4.5 おわりに . . . 99

参考文献 101

第5章 結論 102

5.1 研究成果のまとめ . . . 102 5.2 今後の課題と展望 . . . 104

謝辞 105

(7)

第 1 序論

1.1 はじめに

1.1.1 橋梁の老朽化と維持管理

わが国では,図–1.1に示すように1950年代ごろから戦後復興および急速な経済 成長とともに道路,橋梁,トンネルをはじめとした社会インフラが急速に整備さ れてきた.これらの社会インフラの老朽化の進行に伴い,補強や補修をはじめと した必要な投資が急増することが想定される.しかし,投資の急激な増加に合わ せた予算および人員の確保は困難であるため,計画的かつ効果的な維持管理を実 施し,ライフサイクルコストの縮減を図ることが求められている1)–3)

米国では,日本に先んじて1920年のニューディール政策後に大規模なインフラ の整備が進められていたため,インフラの老朽化に関する問題も比較的早くから 顕在化した.1981年にはパット・チョートとスーザン・ウォルターにより「荒廃 するアメリカ」が出版され,その実態に関する警告が鳴らされた5).日本でも翌 年の1982年に翻訳版が出版され,日本国内におけるインフラの老朽化対策の必要 性に関して警戒が鳴らされてきた5)

(8)

しかし,道路管理においては新規道路の建設に力点が置かれ,予算は対前年度 比といった指標をもとに決定されてきた.そのため,直轄国道の道路事業費と維 持修繕の内訳の推移(図–1.2)に示されるように維持修繕費が十分に確保されて こなかった.また,計画的な予防保全は実施されず顕著な劣化の発現後に対処療 法的に修繕されることが一般的であり,道路の維持管理に関する総合的な取り組 みは行われてこなかった.その結果,第三者被害につながるコンクリート構造物 の剥離・剥落をはじめとした損傷が発現するなど,道路構造物の信頼性が揺らぎ 始め,「荒廃するアメリカ」と呼ばれた状況に近づきつつあった6), 7).このような背 景から,道路構造物の今後の管理・更新等のあり方に関する検討委員会では2003 年4月には「道路構造物の今後の管理・更新等のあり方に関する提言」8)を公表し ている.これを受けて,翌2004年に国土交通省は「橋梁の維持管理の体系と橋梁 管理カルテ作成要領(案)9)」,「橋梁定期点検要領(案)10)」,「道路橋の定期点検 に関する参考資料11)」等を作成している.このときにはじめて5年ごとの定期点 検サイクルが提示された.各道路管理者は,これらの資料を参考に独自に点検要 領等を作成し,点検および維持管理を実施してきた.

図–1.2 直轄道路事業と維持修繕費12)

点検要領等の整備は進められてきたが,その後もインフラの老朽化の進行に伴 う損傷の発見や事故の発生が相次いだ.2007年6月には三重県にある国道23号 線の木曽川大橋において,重大な事故につながりかねないトラス斜材の腐食によ る破断が発見され,同8月に秋田県の本荘大橋でも斜材が破断する事例が確認さ れた.また,同年8月には米国ミネソタ州で供用中であった鋼トラス橋の崩壊に よって13人が死亡している13), 14).これらの事例発生を受けて,老朽化対策の実施 推進のために,道路橋の予防保全に向けた有識者会議では2008年5月に「道路橋

(9)

の予防保全に向けた提言」15)をとりまとめている.提言では,点検,診断,補修,

補強の信頼性が十分に確保されていないこと,市区町村では9割の自治体が定期 的な道路橋点検を実施していないことなどの問題点を指摘している.また,的確 な対応を実施するために,点検の制度化やデータベースの構築と活用といった5 つの方策により,早期発見・早期対策の予防保全システムを構築する必要がある としている(図–1.3).しかし,その後も国の直轄事業も含めて,維持修繕に関す る予算を十分に確保し実施されてきたと言い難い状況が続いていた.そのような 中,2012年12月に中央自動車道の笹子トンネルにおいて天井板の落下事故が発生 した.この事故では9名が犠牲となったことで,社会に広くインフラの老朽化が 進行している現状および適切な維持管理実施の必要性が認知された.これを受け て,国土交通省では2013年を社会資本メンテナンス元年と位置付け,「社会資本の 老朽化対策会議」を設置し必要な施策の検討やメンテナンスの着実な実施に向け た取り組みを行ってきている.2014年には道路法が改正され,5年に一度の近接 目視による定期点検の実施が規定された.これにより実態が十分に把握されてい なかった橋長15m以下の小規模橋梁を含めた管理橋梁全体の実態把握が着実に進 むとともに,緻密な維持管理計画をはじめとした政策の立案・策定が行えるよう になった.

図–1.3 予防保全に向けた提言15)

1.1.2 橋梁点検と長寿命化修繕計画

前述の通り,メンテナンス元年となった2013年以前から老朽化が進行する橋梁

(10)

期点検の実施について,昭和63年に建設省土木研究所により橋梁点検要領(案),

平成16年には国土交通省道路局により新たな知見を追加した橋梁点検要領(案)

が提示されている.国土交通省では,これらの要領に基づいて5年に一度の定期的 な点検が実施されてきた16).また,都道府県等の道路管理者においても,これら の要領に準じ定期点検要領を定め点検を実施されてきた.しかし,定期点検要領

(平成16年版)による定期的な点検実施には法的拘束力がないことや橋梁管理者 の財政的および人的制約から,点検を含めた維持管理が十分に実施されてきたと は言い難い.急速に増大する老朽橋梁を管理を行っていくためには,定期点検お よび日常的な維持管理を着実に実施するとともに,対症療法的な修繕および架替 えから予防保全による対応に転換しライフサイクルコストを縮減する必要があっ た.そのため,国土交通省は2006年に長寿命化修繕計画策定事業を創設し政策転 換を図っている.事業では2007年から2011年までの5年間(市町村に当たって は2013年までの7年間)に長寿命化修繕計画の策定に要する費用の1/2を補助し,

事業終了後には計画に基づかいない修繕,架替えの補助を行わないとした.これ により,図–1.4に示すように,2012年(平成24年)には都道府県および政令市の 100%近く,市区町村の約80%で長寿命化修繕計画が策定されている.

図–1.4 地方公共団体の橋梁長寿命化修繕計画策定状況の推移17)

(11)

現在は,2013年に政府が策定したインフラ長寿命化基本計画に基づいて,各イ ンフラを管理・所管する国,地方公共団体等はインフラ長寿命化計画(行動計画)

を策定している.また,インフラ長寿命化計画(行動計画)に基づいて,橋梁をは じめとした個別施設ごとに具体の対応方針として個別施設計画を定めており,橋 梁長寿命化修繕計画は個別施設計画のうちの一つに位置付けられる.

2014年から義務付けられた近接目視による定期点検は,2018年度に一巡し,2019 年度からは2巡目に入っている.一方で,道路メンテナンス年報(令和元年度)18) によると1巡目の点検で早急に措置を講ずべき状態と判定された橋梁のうち修繕 などに着手した橋梁は,国土交通省管理橋梁で約69%,地方公共団体では34%し か措置に着手されていないことが明らかとなっている.今後は点検および点検結 果の活用を含めた橋梁マネジメントシステムの高度化および効率化を図り,補修 等の対策実施まで含めた着実な維持管理を実施できる体制の構築が急務である.

(12)

1.2 本研究の目的

前節で述べた通り,老朽化が進行する膨大な量の橋梁ストックを継続して安全 に供用するために,橋梁マネジメントシステムの効率化および高度化を図る必要 がある.本研究では,これらのシステムを構成する劣化予測をはじめとした要素 技術に着目し研究を行う.取り組んだ各研究の目的を示す.

1.2.1 橋梁点検所見の分析と維持管理への活用

維持管理の必要性に関する認識が高まり,定期点検の義務付け,点検要領をは じめとした基準類の整備や長寿命化計画の策定といった各種取り組みが行われて きた.一方で,点検を含めた維持管理に関する負担は大きく,補修等の対策実施 まで行うことができない現状も明らかとなってきた.今後は蓄積された点検結果 を有効に活用し,橋梁の健全性評価や劣化予測を行ない,優先的に補修の実施が 必要な橋梁や劣化の進行を継続的に監視すべき橋梁を選定するなど効率的な維持 管理の実施が必要である.しかし,部材の損傷程度が同程度であっても,それら が橋梁の健全性に同程度の影響を与えるとは限らず,データーベースに蓄積され た個々の部材の損傷程度といった情報を集約して,橋梁としての総合的な評価を 行うことは容易ではない.そのため,点検を踏まえた今後の維持管理の方針の決 定には,点検結果を踏まえた専門技術者による総合的な判断が重要となる.すな わち,点検結果を踏まえ記載される専門技術者による点検所見は維持管理を行う 上で重要な事項が含まれていると考えられる.このような点検所見から維持管理 において重要なもしくは必要な情報を抽出することができれば,維持管理の効率 化を行えるとともに,データベースの検証や簡略化につなげることができると考 えらえる.本研究では点検所見記述についてトピックモデルを援用して分析する ことにより,所見記述の有効活用の可能性について検討することを目的とする.

1.2.2 橋梁点検結果の活用と経年劣化予測

橋梁を効率的かつ効果的に維持管理するために,蓄積された点検結果を分析し,

現状の把握,劣化原因の推定や劣化予測等を行い,維持管理計画を策定し実行し ていくことが求められている.既存橋梁の点検結果をもとに,既存橋梁の現状お

(13)

よび蓄積された点検結果の情報を整理する.点検結果の整理を踏まえて,維持管 理に対する認識や対応が十分でなかったこともあり,点検結果には偏りが生じて いることから,劣化予測を行う際の点検データの活用について,分析考察を行う.

また,近年健全度の劣化予測手法として開発がすすめられたマルコフ劣化モデル と回帰モデルによる劣化予測について比較考察を行う.回帰モデルは離散値で表 現される健全度の劣化予測手法として妥当とは言えない.しかし,簡便性や利便 性から用いられる既存手法が,離散値の健全度劣化予測手法として開発された劣 化予測手法と大きく違わないことが確認できれば,簡便な現行の手法を用いるこ との妥当性を示すことができると考えられる.

1.2.3 災害時道路ネットワーク接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕

計画の検討

ミクロおよびマクロな橋梁の健全性の評価,劣化予測および維持管理のLCC縮 減に関する研究は多数行われてきた.また,橋梁を道路構造物の一つであること から,災害時には損傷に伴い道路ネットワークの接続性に影響を与えるリスク要 因の一つとして,道路ネットワーク接続性,脆弱性の評価に関する研究もおこな われてきた.しかし,橋梁の維持管理もしくは橋梁長寿命化修繕計画策定に際し て,道路ネットワークの接続性が十分に考慮されていない.本研究では,緊急輸 送道路を対象として,道路ネットワーク接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕計画 の策定について提案を行う.

(14)

1.3 関連する既往研究の整理

本節では,本研究に関連する橋梁の維持管理マネジメンシステム,およびそれ らを構成する点検データベースや劣化予測の要素技術や関連技術に関する既往研 究について整理する.

1.3.1 維持管理の実態と課題

国土交通省では,橋梁点検要領の策定や長寿命化修繕計画の策定に関する補助 制度をはじめとして,維持管理の実施および予防保全への移行に向けた政策や取 り組みが実施されてきた.しかし,各橋梁管理者は,財政的および人的制約から 十分な維持管理を実施できておらず,特に比較的規模の小さな市町村では深刻な 状況である.

小澤19)は,橋梁の維持管理における政策的な経緯や取り組みについて整理して いる.特に地方公共団体において,財源不足や技術者不足を原因として点検が実 施されていない実態と課題を示し,その現状を積極的に国民へ情報提供する必要 性について述べている.

稲垣ら20)は,都道府県や政令指定都市の橋梁管理者に対するアンケートおよび ヒアリング調査を通じて,橋梁資産に比較して予算が非常に少ないこと,補修履 歴等過去のデータが保存されておらず,アセットマネジメントを行うにはデータ の補完が必要であることを指摘している.また,複数の自治体における補修予算 と健全度には相関があり,予算の確保が健全度向上の重要な要素であると示唆し ている.

宮崎21)は,埼玉県内市町村を事例に橋梁長寿命化修繕計画が策定されない原因 について,各市町村に対する維持管理状況のアンケート調査結果などから,財源 や人員の不足から点検が実施できておらず現状把握ができていないという全国共 通の問題に加えて,庁内の合意が得られないといった市町村として計画策定しよ うという意思の欠如があることを指摘した.また,長期的コストを考慮すると計 画策定すべきであることから,都道府県による関与や支援が必要と指摘している.

一丸ら22)は,特に財政的条件が厳しい市町村における橋梁長寿命化修繕計画に ついて,内容分析およびインタビュー調査を行った.その結果,規模が小さい町

(15)

村は機械的に長寿命化修繕計画を策定し公表している可能性があること,県や比 較的規模の大きい市町村は計画を策定しているが,計画通り実施できないことか ら計画の公表を見送っている実態があることを明らかにしている.

美濃・森川23)は,長寿命化修繕計画の策定に関わった経験をもとに,都道府県,

市町村および外郭団体の関係,および各組織内における維持管理の体制や運用に ついて整理した.そのうえで合理的な維持管理体制の実践事例を示し,各橋梁管 理者が今後構築すべき体制について展望を述べている.

工藤・杉本24)は,ある地方公共団体に属する市町村について,策定された長寿 命化修繕計画,財政力指数および将来推計人口を用いて,橋梁維持管理の持続可 能性について分析を行った.その結果,現状の長寿命化修繕計画では未補修橋梁 が補修橋梁を上回っており,この状況が続けば状態の悪化が進行し住民負担が大 きくなるとともに,人口減少の度合いの違いから市町村間での格差が生じる可能 性を指摘している.

前述した実態調査や研究結果からも,今後,橋梁点検や橋梁マネジメントを発 展させ,対策の実施まで含めたマネジメントサイクルを確立する必要がある.

1.3.2 マネジメントシステム

限られた予算内で増加する老朽橋梁を計画的に維持管理を実施していくために,

橋梁管理データベースの構築,将来の劣化予測やLCC(Life Cycle Cost)の縮減の含 めた総合的な橋梁マネジメントシステム(Bridge Management System,以下BMS) の構築に関する研究が行われてきた.

日本に先んじて橋梁の老朽化が進行したアメリカでは,1991年にISTEA法(総 合陸上交通効率化法)が制定され,各州においてBMSの構築が義務付けられた.

ここで多くの州で採用されたBMSとしてPONTIS25)があり,日本における橋梁マ ネジメントシステムの構築においても参考にされてきた.

橋梁の維持管理にあたっては,国および道路保全技術センターといった外郭団 体で制定した基準等が,技術的助言として通知および公表されてきた.一方で,橋 梁を含む道路を安全かつ円滑な交通の確保のための責務は各道路管理者が負って いる.そのため,各道路管理者がそれらを参考に独自の基準や要領の制定やシス

(16)

春名・進藤26)は橋梁維持管理のためのデータベースを構築し,それらのデータ を駆使して維持管理へ活用していく維持管理システムの体系を組み上げる必要性 について提案および考察を行っている.

宮本ら27)は,橋梁の維持管理を最適に行うためBMSを開発にあたり,基礎と なる概念や用語の整理を行い,BMSのプロトタイプの作成を試みている.その後 も各要素技術の高度化を図り,実橋梁の点検データを用いてシステムの有効性の 検証を行っている28), 29)

水野ら30)は情報の共有や再利用に着目したマネジメントシステムのプロトタイ プを構築している.

橋梁管理者には,国や地方自治体のみならず首都高速をはじめとした高速道路 会社がある.都市高速である阪神高速道路では,橋梁構造が総延長の86%を占め ており,維持管理費が土工区間の多く,自治体等のその他の橋梁管理者に比べて 維持管理費がかさむ.そのため,有効かつ効果的な維持管理実施の必要性に迫ら れており,橋梁マネジメントシステムの開発31)–33)が進められてきた.

橋梁マネジメントの方法論に関する研究もおこなわれてきた.Flagopolら?, 34)は ライフサイクルコストの解析により予防保全の有効性が示され,予防保全を基本 に維持管理を行えるように取り組みが進められてきた.また,Fukasawa35)は橋梁 の健全性のみならず,経済性についても考慮した場合には予防保全による維持管 理の有意性を示している.

マネジメントシステムが構築され点検結果の蓄積が進んだことにより,次項以 降に述べるマネジメントシステム内の各要素技術に関する研究も進められてきた.

(1) 橋梁の健全度評価および補修優先度

管理橋梁数は管理者によって大きく異なっているが,都道府県の規模となると

2,000橋を超える36).そのため個々の橋梁に関する詳細な維持管理計画に加えて,

マクロな視点から管理橋梁群をを中長期に渡って計画的に維持管理を行う必要が ある.そのため,現状の健全性を評価するとともに,限られた予算内で効率的に 補修等の対策を実施するために,補修対象橋梁の抽出や優先順位付けを行う必要 がある.しかし,膨大な管理橋梁の点検結果を踏まえて専門技術者が適切な判断 を行うことは容易ではなく,アカウンタビリティの点からも客観的な指標を示す

(17)

必要がある.

そのため,点検データベースを活用して,管理橋梁の整理を行い全体像を明ら かにするとともに,橋梁を構成する部位や橋梁全体の健全性評価や対策が必要な 橋梁の抽出や優先順位付けに関する研究が行われてきた.

大竹ら37)や本城ら38)は,岐阜県で実施された橋梁点検データを用いた主成分分 析の結果を活用し,健全性評価手法および維持管理の指標の提案を行っている.全 国の地方整備局が管理する橋梁の点検結果について分析を行った事例として,玉

越ら39)–41)がある.玉越ら39)–41)は国土交通省の8地方整備局の道路橋の点検デー

タを用いて,コンクリート橋および鋼橋それぞれについて詳細な劣化傾向に関す る分析を行うとともに,将来予測を行う際に必要となる点検データ数に関しても 考察している.

環境条件や構成が異なる橋梁について複数の専門技術者によって行われた点検 は,点検によるばらつきが生じるとともに,同じ損傷程度と評価される場合であっ ても部材の健全性といった評価総合的に評価・判断する場合には評価者により判 断が分かれるケースなどが考えられる.このような矛盾をはらむデータを可視化 や抽出する試みも行われてきた.

近田ら42)は,自己組織化マップ(SOM)と学習ベクトル量子化法(LVQ)を用いる ことによって点検データの見直しする方法を提案している.江本ら43)はこれまで 活用できなかった同じ点検結果であるが評価判断が分かれるデータについて,ラ フ集合を用いたルール抽出を行うことにより活用できる方法論を提案している.

橋梁点検において,個々の部材について詳細な点検を実施,記録することも重要 であるが,これらの結果を今後の維持管理における意思決定に活かすには,専門 技術者による詳細な点検結果を踏まえた最終的な判断も重要である.しかし,こ れらの判断においては技術者の知識や経験,損傷形態や状況によって評価結果に 違いが生じる可能性がある.そこで,斉藤ら44)や前田ら45)は,専門技術者による 判断を支援するために,過去の類似点検データの検索手法について研究を行って いる.

補修優先順位を決定の方法論については,石田46)らによる橋梁通常点検結果を 用いた劣化予測式の作成と橋梁補修順位の検討,三上ら47)によるサービス効果を 考慮した橋梁の補修優先順位決定法に関する研究がある.また,川西ら48)は橋梁

(18)

管理者が作成した橋梁長寿命化修繕計画を分析し,補修対策優先度の決定要因に ついて考察を行っている.

(2) 劣化予測

橋梁の長期的な維持管理計画策定には,現在管理している橋梁の今後の劣化予 測も重要な要素技術である.特に,現状の劣化傾向の把握および劣化予測は計画 の精度に最も影響する要因の一つであるため,点検結果を用いた橋梁の健全性の 定量的な評価手法に関する研究や劣化予測に関する研究が多数行われている.

橋梁管理者によって,準拠する要領,マネジメントシステムおよび維持管理の 取り組みに関する状況が異なっている.そのため,それぞれの管理者における点 検データを利用し劣化状況に関する分析や評価が行われてきた.

玉越ら39), 40)は国土交通省の各地方整備局が管理する橋梁を対象に,コンクリー

ト部材および鋼橋の損傷状態の点検結果記録を用いて利用されている主要な部材 毎に詳細な分析を行い全体的な傾向に関する知見が得られている.

小池・長井49)は新潟県内の26市町村で実施された橋梁点検結果を用いて,橋梁 の健全度に関する平均的な経年劣化傾向について分析を行っている.

離散値で評価される橋梁および各部材の健全度の劣化予測手法として,津田ら6) によってマルコフ遷移確率モデルおよびその推定方法が提案された.その後も点 検観測時点が制限されていることによる不確実性を考慮した推計手法51),劣化の 進展が時間により依存することを考慮したモデル52),目視点検結果の蓄積ととも に予測モデルが更新できるようにベイズ推定手法の提案53)をはじめとして数多く の拡張モデルの開発や推計手法の提案が行われてきた.

橋梁の劣化の進行およびそれらに対する対策は日本国内のみならず,日本より 先にインフラ建設が進められたアメリカやイギリス等の国外においても課題となっ ており,効率的な維持管理を行う上で課題劣化予測モデルの構築およびそれらを 活用したライフサイクルコスト解析は重要な課題の一つとなっている.また,劣 化予測モデルとしては,回帰モデルをはじめとした決定論的モデル54), 55),マルコ フモデルを利用した確率論56)–59)および人工ニューラルネットワーク60)–62)を基本 としたモデルが提案されてきた.各劣化予測モデルの特徴を把握したうえで,補 修が必要な時期の推定や最悪の維持管理シナリオを描くなど維持管理を行う上で

(19)

必要となる情報に応じて使い分けることが重要であるといえる.

(3) 計画の最適化

膨大な管理橋梁の点検結果に基づき今後の補修時期および工法を推定したうえ で補修計画を作成する.ことのき予算制約や補修の時期や工法の組み合わせを考 慮したうえで計画を最適化する必要があり,組み合わせ最適化問題を解く必要が ある.このような最適化問題の解法として,近田63)によって遺伝的アルゴリズム (GA)の援用が提案され,以降橋梁の補修計画策定における最適化手法の一つとし て多く採用されてきた.

中村ら64)による遺伝的アルゴリズムおよび免疫アルゴリズムによる橋梁維持管 理計画最適化の検証,近田65)による橋梁補修計画へのウイルス進化型GAの適用 に関する研究橋梁の補修計画策定の最適化,古田ら66)による改良型遺伝的アルゴ リズムによる複数橋梁の維持管理計画策定システムの実用化をはじめとして,橋 梁長寿命化修繕計画の最適化におけるアルゴリズムの改良も試みられてきた.

補修計画の最適化としては,年次費用の均等化を目的関数とした近田ら67)の 研究をはじめとし,現実的な条件や目的関数の設定が試みられてきた.一例とし て,今野ら68)の多目的最適化による複数橋梁の維持管理計画策定方法の開発,服 部ら69)の道路橋梁群の維持管理コスト平準化と健全度向上を目的としたGAの適 用,木内ら70)による点検結果のばらつきを考慮した橋梁の最適維持管理計画に関 する研究,澁谷・杉本10)の地方公共団体のBMSの現実的問題設定とGAによる最 適化に関する研究,古田ら72)の橋梁群のアセットマネジメントにおける予定の変 更を考慮した補修計画策定,中津ら73)によるGAによる実用化を目指した長期的 な橋梁維持管理計画の策定,石橋ら1)のGAを用いた大規模橋梁群の長期的な維 持管理計画の最適化がある.また,確率モデルを利用したライフサイクルコスト の最適化を検討した事例56)がある.

橋梁の健全性の向上やLCCの縮減のみならず,橋梁を道路構造物の一部として 道路ネットワークの接続性を考慮した橋梁維持管理の最適化に関する研究も行わ れてきた.藤井ら75)による地震リスクを加味した劣化損傷化にある道路橋梁群の 維持管理や喜多・近田76)による道路ネットワークを考慮した道路構造物の耐震補

(20)

(4) 長寿命化修繕計画

長寿命化修繕計画自体の高度化に関する研究として,保田らによる研究77)–80)が 挙げられる.橋梁長寿命化修繕計画において災害レジリエンスに関する評価の取 込みの必要性および評価方法を提案80),各管理者が策定した計画の位置づけを把 握でき,計画の改善策を検討するための長寿命化修繕計画の脆弱性とレジリエン スによる評価マトリクスを提案78),インフラ長寿命化修繕計画におけるレジリエ ンス能力向上対策の提案79),橋梁長寿命化修繕計画への住民の感性考慮した景観 特性の反映ついての提案77)がある.

(5) 道路ネットワークの接続性および脆弱性

道路ネットワークの接続性評価については,交通工学の分野を中心にネットワー クの強靭化・冗長化を目的とし,特定の道路が途絶した場合の交通量や交通時間の 変化や影響について分析する研究が多く行われている.中山81)は交通工学を中心 としたネットワークレベルでの道路交通の信頼性研究に関する既往研究のレビュー とそれらを踏まえたうえでの今後の展望を述べている.宇佐美ら82)は福井県の主 要な幹線道路網を対象に,豪雨や暴風の災害に対して,過去の通行止め実績等の 道路保全指標を総合化し途絶の起きにくさを表わす強靭性を評価し,評価結果を 利用して特定の道路区間に途絶が発生した場合の影響評価分析に活用することで 道路の代替性や強靭性を評価でき道路整備の優先順位決定に有効な資料になると している.古田ら83)は地震対策の実施に関してレジリエンスの観点から道路ネッ トワークの連結性に関する信頼性解析を行った結果を用いて対策を実施すること で,避難距離及びネットワークの継続性(稼働率)を向上し頑健なネットワーク とすることができることを示している.

(6) 自然言語処理技術の援用

近年,普段話す言葉をコンピュータに理解させるための技術である自然言語処 理に関する研究・技術が急速に進展した.これにより,比較的容易にテキストデー タの解析が行えるようになってきた.その中の一つの技術としてトピックもであ るがある.トピックモデルは,確率モデルとして文章の生成過程を表現したもの

(21)

であり,不確実性を取り扱うことができ確率論の枠組みの中で様々な情報を統合 できることから,自然言語処理のみならず様々な分野での応用やモデルの拡張も 進められてきた.

トピックモデルを援用した研究の一例を示す.松河ら84)は授業評価アンケート の自由記述に対してトピックモデルを用いてトピックを抽出し,各トピックのラベ ルの妥当性の検証を行っている.その結果トピックモデルで得られたトピック(ラ ベル)が人間の感覚に適合したものであり,システム的に適切な分類を行える可 能性があることを示している.塚井・椎野85)は自治体で記録された討議録におい てトピックモデルを適用することで,複数のトピックで構成される討議録において 適切にトピックを抽出することができることおよび討議の進行に伴うトピックの 推移を追えることを示した.塚井・塚野86)は,地理情報分析におけるトピックモデ ルの適用性について因子分析により得られる結果と比較検討を行っている.ゼロ カウントが多いという特性のデータに対してトピックモデルが有効であることお よび得られる結果にパラメータが非負に制限されていることから解釈が比較的容 易に行えることを示している.里村87)はトピックモデルを拡張した結合トピック モデルを用いて顧客の購買履歴データと顧客のライフスタイルを同時に分析する ことで潜在的な需要に関する分析を行っている.Nanら88)らは,ニューヨーク市 のホテルに関する口コミをトピックモデルを用いて分析し,レビューにある情報 からグレードの高いホテルではサービス面およびコスト面に関すること,グレー ドの低いホテルでは設備に関する苦情が記述される傾向にあり,ホテルの満足度 を高めるために改善すべき点を明らかにしている.

(22)

1.4 本研究の位置づけ

定期点検の実施が法的に定められ,定期点検要領等の策定や橋梁長寿命化修繕 計画策定の推進といった対応が進められてきた.しかし,特に小さな市町村では 十分な維持管理体制が構築されていないことや補修等の対策が必要と判定された にもかかわらず着手できない現状も明らかになってきた.今後は,メンテナンス およびマネジメントの高度化および省力化を図り,適切な対策が実施できるよう に人材および予算のリソースを配分する必要がある.本研究では,今後の橋梁マ ネジメントにおける点検データの活用,劣化予測および長寿命化修繕計画の策定 といった要素技術に着目した.既にほとんどすべての橋梁管理者は橋梁マネジメ ントシステムを構築および運用されている.本研究では,橋梁管理データベース を含めてすでに構築されたシステムを活用しつつ,より効果的かつ合理的な維持 管理を行える方法論について研究を行った.

橋梁マネジメントの構成と本研究で論じる各要素技術の関係を図–1.5に示す.

図–1.5 橋梁マネジメントシステムの構成と本研究の関係

第2章では,石川県で実施および蓄積された橋梁点検結果の概要を整理する.実 務上の橋梁長寿命化修繕計画でよく用いられる回帰モデルとマルコフ混合劣化モ デルによる劣化予測手法について比較考察を行う.定期点検の実施やデータベー

(23)

スの構築といった維持管理体制の整備は近年急速に進められたため,過去の点検 記録や補修履歴等のデータが存在しないもしくは有効に活用できない状況にある.

そのため,劣化予測を行う際には得られた点検結果について,管理者ごとに独自 に健全度ごとの標準偏差σを求め,±2σ外にあるデータを除外する等処理を行っ ている.本研究では区分線形回帰モデルを用いて経年劣化傾向を把握するととも に点検結果の劣化予測への活用に関する基準の提案を行う.また,離散値で表現 される健全度の劣化予測モデルとして開発されたマルコフ混合劣化ハザードモデ ルと実際の橋梁長寿命化修繕計画で多く採用される回帰モデルによる劣化予測手 法について比較考察を行う.

第3章では,専門技術者による点検所見記述を分析することによる維持管理の 高度化について議論する.

各橋梁管理者は点検結果を管理するために橋梁点検データベースを構築してい る.橋梁点検データベースの構築に当たっては,橋梁点検要領に記載される部材 ごとの損傷程度といった標準的な項目のほかに,凍害による損傷といった地域に 応じた項目がある.点検結果を詳細かつ網羅的にデータベース記録されると,そ の後の点検結果を詳細に分析することもでき維持管理への活用可能性が高まると 考えらえる.また,今後橋梁の老朽化の進行や点検が進められることによって,点 検データベースに新たに記録・蓄積すべき項目が増加する可能性もある.しかし,

各橋梁は一品生産品であるため,蓄積すべき情報であっても多くの橋梁では入力 の必要がない項目であることも考えらえる.このようにしてデータベースに蓄積 すべき情報が増加することは,点検結果のデータベースへの入力の手間が増える ことを意味し,高度化によって複雑・煩雑なデータベースとなり活用しなくなる ケースも考えられる.このような点検記録の活用について点検データベースの項 目を詳細化とは別の方法として,専門技術者による所見記述から,維持管理に活 用できる情報を取り出すことができれば,前述したようなデータベースの項目の 増加とは別の形で高度化が可能になると考えらえる.

第4章では,災害時道路ネットワークの接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕計 画の策定について考察を行う.既存研究で述べた通り,橋梁を効率的に維持管理 するための補修戦略の最適化に関する研究は多数実施されてきた.また,災害リ スクを考慮した道路ネットワークの脆弱性や冗長性などの接続性に関する研究も

(24)

多数実施されてきた.一方で,これらを複合させ中長期の維持管理に援用した研 究はほとんどない.老朽化の進行に伴う外力による損傷リスクの増大や想定を超 える災害の多発を踏まえると,橋梁長寿命化修繕計画において,非常時のリスク マネジメントを考慮しておくことは重要であると考えられる.

(25)

1.5 本研究の構成

本論文は6章で構成される.構成図を図–1.6に示す.

第1章では,日本における橋梁維持に関する政策の経緯および研究の背景,関 連する既往研究を整理し,本研究の位置づけおよび位置づけを示す.

第2章では,点検データシステムで利活用されることが多い橋梁諸元や損傷度 といったシステムに共通の定性的なデータとは別の所見記述に着目し,資源言語 処理技術の一つであるトピックモデルを用い分析することにより橋梁の特徴を抽

(26)

出を試みた.所見記述の内容から損傷に応じた橋梁を分類できることを示し,点 検項目の増加と異なる方法による維持管理システムの高度化の在り方について指 摘した.

第3章では,蓄積された点検結果の内容について調査し,経年劣化傾向の分析 を行うとともに今後の劣化予測の方法論について,区分回帰分析を用いデータ取 捨選択の方法論を示した.また,利用の簡便さおよび説明の容易さから実務上利 用されることが多い回帰モデルによる劣化予測と利用される離散値で表現される 健全度の劣化予測として開発されたマルコフ混合劣化ハザードモデルによる劣化 予測について,比較考察を行った.経年劣化傾向を把握するには,建設からの経 過年数が大きい橋梁は補修履歴が利用可能な形で保存されていないことなどに起 因して健全度が回復しているものが多いことから適切にデータの取捨選択が必要 であることを示し,取捨選択の方法の一つとして区分線形回帰モデルによる方法 を示した.

また,回帰モデルと混合マルコフ劣化ハザードモデルでは,補修が必要となる 時期の推定に大きな違いは生じておらず,中長期の維持管理計画である長寿命化 修繕計画を策定する際に利用されるようなマクロな劣化予測については,現状の 回帰モデルを用いることの妥当性を確認することができた.一方で,低健全度の 点検データの蓄積が少なく,これらが劣化予測を危険側(健全)に推定する傾向 があり,今後のデータの蓄積方法の検討が必要であることを指摘した.

第4章では,近年では想定を超える災害が多発していることや橋梁の老朽化は 今後もが進行し,災害に対する損傷リスクが高まると考えらえることから,災害 時道路ネットワーク接続性を考慮した長寿命化修繕計画の策定方法について,緊 急輸送道路上の橋梁を対象として検討を行った.現状の個々の橋梁の健全度や重 要度を考慮した補修計画では,災害時に道路ネットワークの脆弱性が高くなる可 能性があることを示し,目的関数にネットワーク接続性に関する項を考慮するこ とにより,災害時における道路ネットワークの切断リスクを軽減することが可能 であることを示した.

第5章は,本研究で得られた成果をまとめるとともに,今後の課題について整 理する.

なお,第2章は「小川福嗣・近田康夫: トピックモデルを用いた橋梁点検結果

(27)

所見記述の維持管理への活用に関する基礎的分析,材料(Vol.69,No.3), pp. 197-203,

2020.」,第3章は「小川福嗣・近田康夫,橋梁点検データによる劣化予測に関する

一考察,構造工学論文集Vol.64, pp.120-128, 2018.」,第4章は「小川福嗣・近田康夫, 橋梁の劣化損傷を考慮した災害時の緊急輸送道路接続性に関する一考察,土木学会 論文集F4, Vol.73, No.1, pp19-25, 2017.」,「小川福嗣・近田康夫, 災害時緊急輸送道 路接続性を考慮した橋梁長寿命化修繕計画に関する研究,構造工学論文集Vol.65A,

pp.121-129, 2019.」の論文をもとに加筆・修正し,執筆たものである.

(28)

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74) 石橋健, 中津功一朗, 古田均, 野村泰稔,高橋亨輔:GAを用いた大規模橋梁群 の長期的な維持管理計画の最適化, 土木学会論文集A2(応用力学), Vol. 69, No. 2, pp. I 731–I 740, 2013.

75) 藤井久矢,田中新也,古田均,堂垣正博:地震リスクを加味した劣化損傷下にあ る道路橋梁群の維持管理, 材料, Vol. 61, No. 2, pp. 133–140, 2012.

76) 喜多敏春,近田康夫:道路ネットワークを考慮した道路構造物耐震補強の優先 順位設定におけるゲーム理論の適用, 構造工学論文集A, Vol. 59A, pp. 244–251, 2013.

77) 保田敬一,白木渡,井面仁志: 住民の感性を考慮した橋梁長寿命化修繕計画策 定, 日本感性工学会論文誌, Vol. 15, No. 1, pp. 107–116, 2016.

78) 保田敬一,白木渡,井面仁志:インフラ長寿命化修繕計画の継続的運用に係るマ トリクス評価, 土木学会論文集F6(安全問題), Vol. 73, No. 2, pp. I 171–I 180, 2017.

79) 保田敬一,白木渡:インフラ長寿命化修繕計画におけるレジリエンス能力向上 対策の提案, 土木学会論文集F6(安全問題), Vol. 74, No. 2, pp. I 63–I 76, 2018.

80) 保田敬一,白木渡:橋梁長寿命化修繕計画における自然災害リスクの反映方法 の提案, 土木学会論文集F6(安全問題), Vol. 75, No. 2, pp. I 137–I 156, 2019.

81) 中山晶一朗: ネットワークレベルでの道路交通の信頼性研究の諸相・展望と その便益評価の一考察, 土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 67, No. 2, pp.

147–166, 2011.

82) 宇佐美誠史,寺内義典,川上洋司,本多義明:災害時の道路網評価における道路 の強靭性に関する研究, 土木計画学研究・論文集, Vol. 15, pp. 713–720, 1998.

(36)

83) 古田均,中津功一朗,高橋亨輔,石橋健,香川圭明: 地域レジリエンスを考慮し た道路網の信頼性解析に基づく地震対策の評価, 土木学会論文集F6(安全問 題), Vol. 70, No. 2, pp. I 73–I 80, 2014.

84) 松河秀哉,大山牧子,根岸千悠,新居佳子,岩崎千晶,堀田博史:トピックモデルを 用いた授業評価アンケートの自由記述の分析, 日本教育工学会論文誌, Vol. 41, No. 3, pp. 233–244, 2018.

85) 塚井誠人,椎野創介: 討議録に対するトピックモデルの適用, 土木学会論文集 D3(土木計画学), Vol. 72, No. 5, pp. I 341–I 352, 2016.

86) 塚井誠人,塚野裕太: トピックモデルによる詳細地理情報分析, 土木学会論文 集D3(土木計画学), Vol. 74, No. 2, pp. 111–124, 2018.

87) 里村卓也: トピックモデルによる顧客データの統合的分析, オペレーション ズ・リサーチ, Vol. 63, No. 2, pp. 67–74, 2018.

88) Nan Hu and Ting Zhang and Baojun Gao and Indranil Bose:What do hotel customers complain about? text analysis using structural topic model, Tourism Management, Vol. 72, pp. 417 – 426, 2019.

(37)

第 2 橋梁点検所見の分析と維持管 理への活用

2.1 はじめに

蓄積された点検データを活用し維持管理の高度化や効率化を図る研究は多数行 なわれてきた.1.3.2で述べた通り,点検記録にある部位および損傷形態ごとの損 傷程度を用いて橋梁としての現状の損傷状況把握および今後の劣化予測等の研究 が行われてきた1).既存研究では,データが蓄積されていることや取り扱いが比 較的容易であることから主に各部材の損傷程度や健全度評価などの定性的な評価 項目が活用されてきた.

一方で,玉越ら2)の研究に示されるように各部位の損傷評価について,重回帰 分析によりデータベースに蓄積されるような関連付けが可能な属性データを説明 変数として用いても決定係数が低く,実態の診断結果や劣化に対して説明性の高 い関係式を得ることは容易ではなく,橋梁ごとに詳細な評価の困難さを表してい る.また,提供を受けた橋梁管理および点検結果管理データベースを確認すると,

データ欠損や適切な位置情報が入力されていないなどのデータを活用する際の問 題点も確認された.このことから,点検結果等のデータを維持管理への活用には,

データの補完やデータベースから適切な情報を整理や抽出といったデータベース を適切に扱える技術が必要となっている.

橋梁点検結果には部材および損傷の種類ごとの損傷程度などの評価項目に加え て,点検結果を踏まえた技術者による点検所見が記載されている.点検所見には,

専門技術者の持つ経験や知識を踏まえて維持管理の意思決定を行う上で重要とな ることおよびその判断に至った要因について記載されていると考えらる.これら 点検所見に記載された情報を定量的に評価することで,専門技術者の持つ経験知 を明らかにするとともに点検結果の維持管理への活用が進むと考えられる.

(38)

測モデルが急速に進展してきた.そのなかでも,比較的簡便に利用でき有効性の 高い解析手法としてトピックモデルがある.本研究では,橋梁点検データの所見 欄に記載されたテキストデータに着目し,トピックモデルを用いて橋梁の劣化傾 向に関して分析し,今後の維持管理への活用に関して検討および考察する.

橋梁点検データベースに蓄積されている情報およびその構成のイメージを図–2.1 に示す.既存研究では架設年次,橋梁,適用された道路橋示方書などの基本情報 および点検結果のうち各橋梁,径間,部材,損傷形態ごとの損傷程度に関する情 報を活用することにより,橋梁の損傷に関する特徴分析や橋梁および部材ごとの 健全度に関する劣化予測などが行われてきた.

図–2.1 橋梁点検データベースに蓄積される情報(イメージ)

しかし,前述した玉越ら2)の研究結果に示されるように,多種の部材から構成 される各橋梁について,橋梁全体の状況を適切に評価し把握することは困難であ る.これは橋梁長寿命化修繕計画立案時において橋梁健全度の数量化方法が管理 者ごとに異なっていることからも推察され,また,(1)各部材の損傷評価から橋梁 の健全性評価が困難であること,(2)多様な劣化状態に関して評価項目が不十分で ある,換言すればすべての損傷等に関してデータベース化することが困難である ことも原因の一つであると考えられる.このような状況において,専門技術者に よる各種点検結果を踏まえた橋梁の状況に関する総合的な診断結果,すなわち点 検所見は,今後の維持管理における補修等の意思決定における重要な情報の一つ であるといえる.所見記述の一例を図–2.2に示す.

(39)

図–2.2 所見記述の一例

所見欄記述には,点検データベースに入力される損傷程度といった定型的な項 目以外に点検者の暗黙知等の重要な情報を含んでいる可能性がある.橋梁の所見 記述に着目し,分析や活用に関して検討や研究を行った事例は筆者らが知る限り 存在しない.そこで,本研究では,点検結果の所見欄記述に着目し,言語処理分 野で開発されたトピックモデルを用いて分析を行い,点検所見へのトピックモデ ルの適用結果を踏まえ,今後の維持管理への活用可能性について検討する.北陸 地方では,橋梁のASRによる早期劣化が問題となっており3),今後橋梁を適切に 維持管理を行うにあたっては,これらの劣化損傷を早期発見し,予防保全を行う ことが重要である.内閣府による戦略的イノベーション創造プログラムの「イン フラ維持管理・更新・マネジメント技術」の課題の一つとして,「コンクリート橋 の早期劣化機構の解明と材料・構造性能評価に基づくトータルマネジメントシス テムの開発」に関する研究課題が採択され,2015年から研究も進められてきた4)

北陸地方におけるASR劣化コンクリート構造物の維持管理マニュアル(案)に よると,ASRの発生の判定は図–2.3に示す1〜7の判定項目のうち,1項目以上該 当する場合には「疑ASR」,A群もしくはB群の判定にそれぞれ1つ以上該当す る場合には「認ASR」,そのほかを「非ASR」と3段階で評価している5).しかし,

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