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沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察

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【論 文】

沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察

The Role of Institutions in Okinawa’ s Economic Growth and TFP

宮 城 和 宏 Kazuhiro MIYAGI

【要 旨】

 本稿の目的は、成長会計の手法を用いて沖縄経済の集計的な成長要因や労働投入 1 単 位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に低迷する全要素生産 性( TFP )や所得水準の原因をその歴史的背景や政治的に形成されてきた制度との関係か ら考察することにある。本研究の主なインプリケーションは以下の通りである。 ( 1 ) 「復帰」

を契機とした大規模な制度変更による投資急増が、資本ストックと TFP の貢献を通じて 一時的な高成長率及び高労働生産性をもたらした。しかし、その後、資本の限界生産性逓 減や TFP の貢献低下により成長率は大きく低下した。 ( 2 )沖縄経済の成長の実態や低所 得の原因を歴史的に考察すると、沖縄戦以前は「琉球処分(併合) 」以降の日本政府によ る沖縄統治政策、戦後は米軍統治下の「米軍基地依存型輸入経済」 、 「復帰」以降の「財政 依存型経済」において形成されてきた米軍基地の維持・固定化を最優先する様々な植民地 主義下の制度が沖縄経済の成長や所得に影響をおよぼしてきたことが示唆される。

キーワード:成長理論、労働生産性、全要素生産性(

TFP ) 、財産権、制度、植民地主義

1. はじめに

 1972

年の「日本復帰」以降、 「本土」との格差是正や自立経済をキーワードに数次の沖 縄振興(開発)計画が実行され社会資本の整備が行われてきた。しかし、当初の重要な目 標の 1 つであった 1 人当たり所得格差の是正は、全国比 7 割程度から進まず、昨今では 貧困問題が注目されるに至っている

1

本研究は沖縄国際大学特別研究費(2014~2016年度)による助成を受けている。

1 2015年11月に実施された県内8自治体をサンプル(41万2805世帯、子ども数20万3591人)とし た調査より、子どもの相対的貧困率が全国16.3%に対して沖縄県29.9%と2倍近い状況にあることが明 らかとなっている(沖縄県(2016)「沖縄県子どもの貧困対策計画」3月)。また戸室(2016)によれば、

18再未満の末子がいる世帯のうち、最低生活費(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、一時扶助の合計)以 下の収入しか得ていない世帯割合を子どもの貧困率と定義した場合、2012年時点での沖縄県の子どもの 貧困率は37.5%で全国一高く、全国の13.8%を大きく上回っている。

(2)

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沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察 沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察

 本稿では「復帰」以降の沖縄経済成長の内実を定量的に明らかにすると同時に低迷する 全要素生産性( TFP )の原因をその歴史的背景や政治的に形成されてきた制度との関係か ら考察する。一般的に、 投入要素増加型の成長は、 Krugman ( 1994 ) で注目を集めたように、

限界生産性の逓減を通じて 1 人当たり所得の成長率を着実に低下させる。 Jones and Romer ( 2010 )の「成長に関する新たな定型化された事実( The new Kaldor facts ) 」に よれば、要素投入の違いは国の間の 1 人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明で きないのであり、多くは全要素生産性( TFP )の違いによる。そして TFP の違いをもた らすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の国々で観察される成長率の大き な格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」ある。さらに制度の形成 においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson

( 2005 ) 、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

 本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な 成長要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると 同時に現在の全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することに ある。 「琉球処分(併合) 」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成が なされ、それがどのような影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経 済制度、経済成果(成長率、生産性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているの か等について歴史的に検証していく。

 以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復 帰」から 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)

計画の期間区分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では低生産性 の背景を供給サイドと需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率 や TFP に及ぼしてきた影響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファイン ディングスを要約した上で今後の課題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係

 2-1. ソロー・モデルの概要

 外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の 通りである。

 ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、 は効率労働 当たり産出、 は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

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は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

��

)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

��

)、徐々 に減少する。

��

において

��� � �� � � � ����

が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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ここで、(1)式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

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産出、

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は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

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)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

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)、徐々 に減少する。

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が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

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人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

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は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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という

条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労

働単位当たり資本をもつ場合(

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)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇

する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

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)、徐々

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において

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が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均

斉成長経路に沿って成長する。

(3)

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沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察 沖縄経済の成長、生産性と「制度」に関する一考察

方、( 2 ) 式は資本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率) n は人口成長率、 g は技術 進歩率、 δ は資本減耗率を表している。 ( g 、 n 、 s 、 δ 、 α は定数)

 ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数という条 件により決定される(図 1 参照) 。もし経済が出発点において定常状態の水準 よ り も低い効率労働単位当たり資本をもつ場合 、効率労働単位当たり資本は時間が経つ に従って徐々に上昇する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水 準 よ り も 高 い 場 合 、徐々に減少する。 が成立しており、

この点で経済は定常状態に入り、均斉成長経路に沿って成長する。

図 1 ソロー・モデルにおける定常状態

     

 この 2 つの方程式より定常状態における均衡解

  

を求め、これより定常状態での労 働者 1 人当たり産出及び資本 を導出すると以下のようになる。

 ( 3 )、( 4 )式より定常状態における労働 1 単位当たりの産出 y と資本 k は技術進歩を表 す A と同率で成長し続けることがわかる。 A については、ソロー・モデルで一定の技術 進 歩 率 と仮定しているので y k g の率で成長する(均斉成長経路)こと がわかる。つまり、技術進歩が存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達する と、その後の 1 人当たり総生産(所得)の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

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本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

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)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

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)、徐々 に減少する。

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ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

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は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

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)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

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)、徐々 に減少する。

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人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

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(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

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ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

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本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

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という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

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3

図1 ソロー・モデルにおける定常状態

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この2 つの方程式より定常状態における均衡解��と��を求め、これより定常状態での労働者 1 人当たり産出及び資本�、�を導出すると以下のようになる。

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��� (3)

��� � ���� ������

��� (4)

(3)、(4)式より定常状態における労働1単位当たりの産出yと資本kは技術進歩を表すAと 同率で成長し続けることがわかる。Aについては、ソロー・モデルで一定の技術進歩率 g(�� �⁄ � �) と仮定しているのでyもkもgの率で成長する(均斉成長経路)ことがわかる。つまり、技術進歩が 存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達すると、その後の 1 人当たり総生産(所得)

の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の効率性を上昇させるような技術進歩率のこと)に等 しくなる2

ソロー・モデルによれば、初期時点での1人当たり資本ストックの違いがもたらす国別・地域別1 人当たり所得水準の相違は、一定の条件下(貯蓄率、人口成長率、技術進歩率等のパラメータが 同じ)では長期的にある定常状態の均斉成長経路に「収束」することが想定されている。この場合、

初期の1人当たり資本ストックが低い地域ほど資本蓄積のスピードが速く、1人当たり産出量(所得)

は 1 人当たり資本の増加関数なのでその成長率も高くなる。1 人当たり資本ストックが高い地域は その逆となる結果、初期時点で所得水準が異なる地域間の所得水準が長期的には等しくなってい

2 一方、総生産の成長率は、ハロッド中立的技術進歩率と人口成長率の和に等しくなる。

3

1

ソロー・モデルにおける定常状態

�� � � � ����

��

���

�� �� ��

この

2

つの方程式より定常状態における均衡解

��

��

を求め、これより定常状態での労働者

1

人当たり産出及び資本

を導出すると以下のようになる。

��� � ���� �

�����

���

3

��� � ���� �

�����

���

4

3

)、(

4

)式より定常状態における労働

1

単位当たりの産出

y

と資本

k

は技術進歩を表す

A

と 同率で成長し続けることがわかる。

A

については、ソロー・モデルで一定の技術進歩率

g

�� �⁄ � �

) と仮定しているので

y

k

g

の率で成長する(均斉成長経路)ことがわかる。つまり、技術進歩が 存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達すると、その後の 1 人当たり総生産(所得)

の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の効率性を上昇させるような技術進歩率のこと)に等 しくなる

2

ソロー・モデルによれば、初期時点での

1

人当たり資本ストックの違いがもたらす国別・地域別

1

人当たり所得水準の相違は、一定の条件下(貯蓄率、人口成長率、技術進歩率等のパラメータが 同じ)では長期的にある定常状態の均斉成長経路に「収束」することが想定されている。この場合、

初期の

1

人当たり資本ストックが低い地域ほど資本蓄積のスピードが速く、

1

人当たり産出量(所得)

1

人当たり資本の増加関数なのでその成長率も高くなる。

1

人当たり資本ストックが高い地域は その逆となる結果、初期時点で所得水準が異なる地域間の所得水準が長期的には等しくなってい

2 一方、総生産の成長率は、ハロッド中立的技術進歩率と人口成長率の和に等しくなる。

3

1

ソロー・モデルにおける定常状態

�� � � � ����

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この

2

つの方程式より定常状態における均衡解

��

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を求め、これより定常状態での労働者

1

人当たり産出及び資本

を導出すると以下のようになる。

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3

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3

)、(

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)式より定常状態における労働

1

単位当たりの産出

y

と資本

k

は技術進歩を表す

A

と 同率で成長し続けることがわかる。

A

については、ソロー・モデルで一定の技術進歩率

g

�� �⁄ � �

) と仮定しているので

y

k

g

の率で成長する(均斉成長経路)ことがわかる。つまり、技術進歩が 存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達すると、その後の 1 人当たり総生産(所得)

の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の効率性を上昇させるような技術進歩率のこと)に等 しくなる

2

ソロー・モデルによれば、初期時点での

1

人当たり資本ストックの違いがもたらす国別・地域別

1

人当たり所得水準の相違は、一定の条件下(貯蓄率、人口成長率、技術進歩率等のパラメータが 同じ)では長期的にある定常状態の均斉成長経路に「収束」することが想定されている。この場合、

初期の

1

人当たり資本ストックが低い地域ほど資本蓄積のスピードが速く、

1

人当たり産出量(所得)

1

人当たり資本の増加関数なのでその成長率も高くなる。

1

人当たり資本ストックが高い地域は その逆となる結果、初期時点で所得水準が異なる地域間の所得水準が長期的には等しくなってい

2 一方、総生産の成長率は、ハロッド中立的技術進歩率と人口成長率の和に等しくなる。

3

1

ソロー・モデルにおける定常状態

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���

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この

2

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��

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1

人当たり産出及び資本

を導出すると以下のようになる。

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3

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3

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4

)式より定常状態における労働

1

単位当たりの産出

y

と資本

k

は技術進歩を表す

A

と 同率で成長し続けることがわかる。

A

については、ソロー・モデルで一定の技術進歩率

g

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) と仮定しているので

y

k

g

の率で成長する(均斉成長経路)ことがわかる。つまり、技術進歩が 存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達すると、その後の 1 人当たり総生産(所得)

の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の効率性を上昇させるような技術進歩率のこと)に等 しくなる

2

ソロー・モデルによれば、初期時点での

1

人当たり資本ストックの違いがもたらす国別・地域別

1

人当たり所得水準の相違は、一定の条件下(貯蓄率、人口成長率、技術進歩率等のパラメータが 同じ)では長期的にある定常状態の均斉成長経路に「収束」することが想定されている。この場合、

初期の

1

人当たり資本ストックが低い地域ほど資本蓄積のスピードが速く、

1

人当たり産出量(所得)

1

人当たり資本の増加関数なのでその成長率も高くなる。

1

人当たり資本ストックが高い地域は その逆となる結果、初期時点で所得水準が異なる地域間の所得水準が長期的には等しくなってい

2 一方、総生産の成長率は、ハロッド中立的技術進歩率と人口成長率の和に等しくなる。

1

ソロー・モデルにおける定常状態

�� � � � ����

��

���

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この

2

つの方程式より定常状態における均衡解

��

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を求め、これより定常状態での労働者

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人当たり産出及び資本

を導出すると以下のようになる。

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3

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4

3

)、(

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)式より定常状態における労働

1

単位当たりの産出

y

と資本

k

は技術進歩を表す

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と 同率で成長し続けることがわかる。

A

については、ソロー・モデルで一定の技術進歩率

g

�� �⁄ � �

) と仮定しているので

y

k

g

の率で成長する(均斉成長経路)ことがわかる。つまり、技術進歩が 存在するソロー・モデルでは、経済が定常状態に到達すると、その後の 1 人当たり総生産(所得)

の成長率はハロッド中立的技術進歩率(労働の効率性を上昇させるような技術進歩率のこと)に等 しくなる

2

ソロー・モデルによれば、初期時点での

1

人当たり資本ストックの違いがもたらす国別・地域別

1

人当たり所得水準の相違は、一定の条件下(貯蓄率、人口成長率、技術進歩率等のパラメータが 同じ)では長期的にある定常状態の均斉成長経路に「収束」することが想定されている。この場合、

初期の

1

人当たり資本ストックが低い地域ほど資本蓄積のスピードが速く、

1

人当たり産出量(所得)

1

人当たり資本の増加関数なのでその成長率も高くなる。

1

人当たり資本ストックが高い地域は その逆となる結果、初期時点で所得水準が異なる地域間の所得水準が長期的には等しくなってい

2 一方、総生産の成長率は、ハロッド中立的技術進歩率と人口成長率の和に等しくなる。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

��� � ��� � �� � � � ����

( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

��

)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

��

)、徐々 に減少する。

��

において

��� � �� � � � ����

が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

��� � ��� � �� � � � ����

( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

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)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

��

)、徐々 に減少する。

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において

��� � �� � � � ����

が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性(TFP) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson(2005)、Acemoglue and Robinson(2012)等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入1単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、2節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、3節では1972年の「復帰」か ら2012年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率やTFPに及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2-1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � �� (αは0<α<1の定数) (1)

��� � ��� � �� � � � ���� (2)

ここで、(1)式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、�� � � ��⁄ は効率労働当たり

産出、�� � � ��⁄ は効率労働当たり資本である(A はハロッド中立的技術進歩)。他方、(2)式は資

本蓄積方程式であり、

s

は貯蓄率(=投資率)、

n

は人口成長率、

g

は技術進歩率、

δ

は資本減耗 率を表している。(

g 、 n 、 s 、δ、α

は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と��� � �という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(��)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(��)、徐々 に減少する。��において��� � �� � � � ����が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

��� � ��� � �� � � � ����

( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

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は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

��

)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇 する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

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��

において

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が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

��� � ��� � �� � � � ����

( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という 条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労 働単位当たり資本をもつ場合(

��

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において

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が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均 斉成長経路に沿って成長する。

2

人当たり GDP の大きな格差の半分以下しか説明できないのであり、多くは全要素生産性( TFP ) の違いによる。そして TFP の違いをもたらすものとして「制度の違いが、低所得と TFP の水準の 国々で観察される成長率の大きな格差の基本的な原因にちがいないという極めて広範な同意が」

ある。さらに 制度の形成においては政治が極めて重要な役割を果たすことが Acemoglue, Johnson and Robinson ( 2005 )、 Acemoglue and Robinson ( 2012 )等により主張されている。

本稿の目的は、成長会計の手法を用いて 1972 年の「復帰」以降の沖縄経済の集計的な成長 要因や労働投入 1 単位当たり生産(労働生産性)の成長を定量的に明らかにすると同時に現在の 全国最下位の低所得の背景を歴史的な制度形成との関係から考察することにある。「琉球処分

(併合)」以降の沖縄で、統治者の沖縄政策の下でどのような制度形成がなされ、それがどのような 影響を及ぼしてきたのか。植民地主義下における政治制度と経済制度、経済成果(成長率、生産 性、格差・貧困等)との関係はどのようになっているのか等について歴史的に検証していく。

以下、 2 節では経済成長と制度の関係についてサーベイを行い、 3 節では 1972 年の「復帰」か ら 2012 年までの沖縄経済の成長要因と労働生産性成長の要因を沖縄振興(開発)計画の期間区 分にあわせて成長会計の手法を用いて定量的に検証する。 4 節では近年における沖縄の低成長 率の背景を成長理論の援用により供給サイドからまず考察する。次いで、島嶼経済ならではの背 景を需要サイドから考察し、最後に政治が制度を経由して沖縄の成長率や TFP に及ぼしてきた影 響について歴史的観点より考察する。最後に、本稿のファインディングスを要約した上で今後の課 題を提示し結びとする。

2. 経済成長と制度の関係 2 - 1. ソロー・モデルの概要

外生的な技術進歩率を組み入れたソロー・モデルにおける 2 つの基本方程式は以下の通りで ある。

�� � ��

(αは 0 <α< 1 の定数) ( 1 )

��� � ��� � �� � � � ����

( 2 )

ここで、( 1 )式は効率労働 1 単位当たりの生産関数を表しており、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり

産出、

�� � � ��⁄

は効率労働当たり資本である( A はハロッド中立的技術進歩)。他方、( 2 )式は資

本蓄積方程式であり、 s は貯蓄率(=投資率)、 n は人口成長率、 g は技術進歩率、 δ は資本減耗 率を表している。( g 、 n 、 s 、δ、α は定数)。

ソロー・モデルにおいて定常状態における効率労働単位当たり産出は生産関数と

��� � �

という

条件により決定される(図 1 参照)。もし経済が出発点において定常状態の水準よりも低い効率労

働単位当たり資本をもつ場合(

��

)、効率労働単位当たり資本は時間が経つに従って徐々に上昇

する。逆に出発点において効率労働単位当たり資本が定常状態の水準よりも高い場合(

��

)、徐々

に減少する。

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において

��� � �� � � � ����

が成立しており、この点で経済は定常状態に入り、均

斉成長経路に沿って成長する。

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