論文内容要旨
論文題名 Inhibitory effect of oxethazaine on midazolam metabolism in rats
(オキセサゼインのミダゾラム代謝に対する阻害作用)
Biological and Pharmaceutical Bulletin Vol.40 No.9 2017 年掲載予定
専攻科目名 病理系 薬理学 (医科薬理学分野) 専攻 氏名 難波 北人
内容要旨
【目的】
OTC 医薬品は近年,使用頻度が高まっているが,多剤併用時での薬物相互 作用に関する情報は不十分である.これまでに我々は,OTC 医薬品として も購入可能である消化器官用薬の cytochrome P450 (CYP)に対する阻害効 果について,ヒト肝ミクロソーム画分を用いて検討を行い,オキセサゼイ ン (OXZ)が CYP3A 活性を強く阻害することを報告してきた.しかし,この 阻害作用が生体内においても同様に生じるかは明らかにされていない.そ こで本研究では,OXZ の CYP3A 阻害を介する薬物相互作用を明らかにする ことを目的として,ラットを用いin vivo実験系で検討した.
【方法】
SD 系雄性ラットに OXZ (50 mg/kg)または水 (コントロール)を単回経口投 与し,その 30,60,または 120 分後に,CYP3A を介する代謝の指標薬物と してミダゾラム (MDZ) (15 mg/kg)を経口投与した.その後,経時的に採 血し,血清中 MDZ 濃度を HPLC を用いて測定し,薬物動態学的パラメータ (Cmax,AUC0-∞,t1/2)を算出した.また,in vitro実験系で,ラット肝およ び小腸ミクロソーム画分を用い,OXZ の MDZ 1’位水酸化活性に対する阻 害効果を検討した.
【結果・考察】
MDZ 投与 120 分前に OXZ を投与した結果,コントロール群と比べ,MDZ の Cmaxは約 5 倍上昇,AUC0-∞は約 6 倍増加した (p<0.01)が,t1/2には変化を 認めなかった.さらに,in vitro実験において,OXZ は肝のみならず小腸 MDZ 1’位水酸化活性を濃度依存的に阻害した (肝:IC50=8.6μM,小腸:
IC50=65μM).これらのことから,OXZ はラットの生体内において CYP3A 活 性を阻害することにより MDZ の薬物動態を変化させることが示唆された.
OXZ は他の医薬品と併用する機会が多いと考えられるため,多くの医薬品 代謝に関与する CYP3A の阻害を介する薬物相互作用には十分な注意が必 要である.一方,MDZ 投与 30 分,60 分前に OXZ を投与した場合には,い ずれの薬物動態学的パラメータにも有意な変化は認められなかった. OXZ は消化管蠕動運動抑制作用を有しており,これらの投与間隔では MDZ の小 腸への移行を遅延させると考えられるため,小腸 CYP3A が阻害されていて も急激な MDZ の血中濃度上昇は生じなかったと推察される.
【結論】
OXZ はラットにおいて,肝および小腸 CYP3A 活性を阻害することにより CYP3A の指標薬物である MDZ の血中濃度を著明に上昇させることが示され た.この作用は,両薬物の投与間隔が 120 分の時に顕著であり,MDZ の AUC0-
∞が約 6 倍増加することが示された.