特集: HIV 感染症の根治を目指して
HIV 感染症の根治( Cure )を目指した in vitro HIV リザーバー解析と新規治療薬開発
In Vitro HIV Reservoir Analysis and the Development of Novel Therapeutics toward HIV Cure
松田 幸樹,前田 賢次
Kouki MATSUDA and Kenji MAEDA
国立研究開発法人国立国際医療研究センター・研究所・難治性ウイルス感染症研究部 National Center for Global Health and Medicine (NCGM) Research Institute 日本エイズ学会誌21 : 159⊖166,2019
1. 緒 言
HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス1型)によって引き起こさ れるAIDS(後天性免疫不全症候群)の発見から35年余り がたった今1, 2),抗ウイルス療法の進歩により患者の予後 は飛躍的に改善,AIDSは致死的な疾患から治療可能な慢 性感染症となったが,それには逆転写酵素(RT)阻害剤
(NRTIs),プロテアーゼ阻害剤(PIs)やインテグラーゼ阻 害剤(INSTIs)などを組み合わせた多剤併用療法(cART)
が大きく貢献している3, 4)。さらに薬剤による各種の副作 用,既存の抗HIV薬に対する薬剤耐性ウイルスの出現な どcART黎明期に残されていた多くの懸念に関しても,最 近では有効かつ安全性の高い新規の抗HIV薬が次つぎと 開発されている。国連は2030年までにAIDSの流行を終わ らせることを目標としており,これを達成するためにHIV
感染者の90%が検査を受けて自身の感染を知り,そのう
ち90%がcARTを受け,さらにそのうち90%が治療の効 果で体内のウイルス量が検出限界以下になっている状態を 目指す“90⊖90⊖90”を提唱しており5, 6),これが実現すると新 規HIV感染者の拡大を防ぐことができると期待される。
その一方で,cARTは患者体内で産生されるウイルスを 検出限界以下に減らすことはできても,患者の細胞の中に 組み込まれたHIV(遺伝子)を体内から排除することはで きない。そしてそれらの感染細胞は治療薬の中断後に再び ウイルスを産生することとなる。つまり一度HIVに感染し た患者は生涯にわたり治療を受ける必要がある。実際に20 年以上にわたり抗HIV薬の服用を続けているような高齢 著者連絡先:松田幸樹(〒162⊖8655 東京都新宿区戸山1⊖21⊖1 国 立研究開発法人国立国際医療研究センター・研究所・
難治性ウイルス感染症研究部)
2019年6月19日受付
の感染者の増加に伴いAIDS関連疾患以外のさまざまな合 併症も問題となっている。このような中で,近年HIVの治 癒(Cure)に向けた研究が精力的に行われており,既存の抗 HIV療法とは異なる新規の治療法も提唱されつつある。本 稿ではHIV潜伏感染のメカニズム解析とHIV根治(Cure)
に焦点を当て筆者らの最近の研究も含めて解説する。
2. HIV潜伏感染とリザーバー細胞
レトロウイルスであるHIV-1は,宿主のゲノムにウイル ス自身のゲノムを組み込むことで感染を成立させ感染者体 内に長期間潜伏,この潜伏感染細胞(リザーバー)の存在 がHIV感染症根治の妨げとなっている。現行のcARTは HIVの新規感染や増殖は抑えるものの,ウイルスを産生 していない潜伏感染細胞に対しては効果を発揮できない。
また潜伏感染細胞は一見すると正常な非感染細胞との見分 けがつかず,プロウイルスDNAの有無でしか選別するこ とができない。2017年に潜伏感染細胞のマーカーとして
CD32aが同定されたが7),すぐに別の研究グループにより
否定され,CD32+ T細胞の多くがCD69などの活性化マー カーを発現し,むしろHIVを産生している活性化T細胞 において発現が高いことが報告された8)。詳細なHIV潜伏 感染細胞の種類とそれぞれの特性を知るには更なる検証が 必要と思われる。
体内でリザーバー細胞(HIV潜伏感染細胞)を構築・維 持するためには,長期のcARTでウイルス血症が抑えられ ている中で,何年もの間replication-competentなプロウイ ルスを保持し続ける必要がある。HIVの標的細胞はCD4+ 細胞であるが,その中でもresting memory CD4+ T細胞がリ ザーバー細胞の大部分となる9)。本邦で研究者が用いるこ とができるHIV患者由来の検体は末梢血に限られること が多く,末梢血に存在するreplication-competentなプロウ
イルスを持つ潜伏感染細胞を解析することでその患者の体 内(特にリンパ節など)に残存するリザーバーの全体像を 予測するしかないのが現状と言える。現在のところリザー バーサイズ定量法のゴールドスタンダードとしてはquan-quan- titative viral outgrowth assay(QVOA)があるが,末梢血中 のCD4+ T細胞106細胞あたりに1細胞ほどしか存在しな いとされるリザーバー細胞を定量するため,採血量によっ ては検出が困難となることもある10)。さらに過去の治療経 過などによって患者体内のリザーバーサイズや性質は異な ると考えられる。
一方で,HIV潜伏感染細胞に対する薬剤などの影響を評 価する系としてHIV潜伏感染細胞から樹立された細胞株
(ACH2, J-Lat等)も良く用いられているが,これらの細胞 株はすべて同一のクローンであり,in vivoとの乖離があ る。一方でHIV患者末梢血からは微量のリザーバー細胞 しか得られない。In vivo(患者体内)でリザーバー細胞が 存在する状態をin vitroで完全に再現させるのは不可能で あるが,筆者らの研究グループは一般的な細胞株からHIV 産生細胞群,潜伏感染(HIV非産生)細胞群,およびHIV 非感染細胞群が長期間にわたり混在・維持されるin vitro HIV感染細胞系を確立し,薬剤によるリザーバーサイズ 減少を評価するための実験系を構築・解析を進めている
(詳細は第4項で述べる)。
3. HIVリザーバー細胞を排除する『Shock and kill 薬』の開発
前述のとおり,生涯のcARTをもってしても潜伏状態で 患者体内に存在するリザーバー細胞を排除することはで きない11)。そのような中で,近年Latency-reversing-agents
(LRA)はHIV根治のためのツールとして注目を浴びてお り,LRAを用いてHIVリザーバーを排除する「Shock and
kill」というアプローチが提唱されている12)。LRAによって
再活性化された潜伏感染細胞はその後細胞障害性Tリン パ球(CTL)などの免疫監視システム,もしくはCytopathic effect CPE)やアポトーシスにより排除される13, 14)(図1)。
しかしながらin vivoでLRAを使用してHIV潜伏状態を反 転(再活性化)させリザーバー細胞を排除することにはま だ多くの問題が残っている。これまでにin vitroの潜伏感 染細胞株を用いた解析でLRA活性が確認されている複数 のLRAが臨床試験でテストされているが,ほとんどの研 究でリザーバーサイズに変化はなく,これはin vivoでウイ ルスを一掃できなかったことを示している15, 16)。これらの
結果はin vitro(ex vivo)での効果が必ずしも臨床にもたら
されるわけではないことを意味しているが,それはin vivo でのHIV潜伏感染の維持に複数のメカニズムが関与して いるためと考えられる17)。最近の研究ではHIV感染T細 胞の活性化がすべてのfunctionalなlatentプロウイルスを 誘導するのではなく,replication-competentなプロウイルス を有する潜伏感染細胞でもHIV再活性化が誘導されない ものが含まれることが分かっている18)。さらに,未治療の HIV患者にLRAを単独で使用すると,再活性化されたリ ザーバー細胞から産生された感染性を有するウイルスが非 感染細胞へと感染することになる。つまりHIVリザーバー に対するLRAを用いた治療には強力なcARTの併用が不 可欠である。
現在,LRAとしての活性を有し,研究・開発が進めら れている薬剤として,Histone deacetylase : HDAC阻害剤
(Valproic acid : VPA, Vorinostat : SAHA, Panobinostatなど),
Protein kinase C : PKC活性化剤(Prostratin, PEP005, Bryostatin-1 など),Bromodomein protein 4 : BRD4阻害剤(JQ1など),
Toll like receptor 7 : TLR7アゴニスト(GS-9620)等の低分子 化合物がある19~22)。臨床的に評価された最初のLRA候補 化合物はVPAやSAHAなどのHDAC阻害剤であるが,こ れらは元来抗がん剤として開発されたものである。HDAC
図 1 Shock and killによるHIV潜伏感染細胞の再活性化
Latency-Reversing Agent (LRA)によりウイルスを産生しないHIV潜伏感染細胞を人為的に再活性化し,
殺傷することでHIVリザーバーを減らすことを目的とする方法。再活性化したHIV感染細胞はCTLや アポトーシスにより体内から排除される。
阻害剤のいくつかの臨床試験では,HIV潜伏状態からの 再活性化に伴うcell-associated HIV-1RNAおよび血漿HIV-
1 RNAの一時的な増加が観察されたが,リザーバー細胞の
明らかな減少は確認されなかった15, 16)。HDAC阻害剤の使 用に対するもう1つの懸念としては,CD4+ T細胞のHIV に対する感受性を増強させる点があげられる。これはおそ らくHIVに対する非感染CD4+ T細胞への感染性を増大さ せると考えられる23)。
他のクラスのLRAとしては,細胞増殖,分化およびアポ トーシスの調節において重要な役割を担っているPKCを 活性化させる薬剤(PKC活性化剤)である24, 25)。PKC活性
化剤はHIV-LTRに結合してHIV mRNAの転写を活性化す
るNF-κBのような転写因子を誘導する26)。最近の研究では
PEP005などのいくつかのPKC活性化剤がin vitroでHIV 潜伏感染細胞株およびHIV患者由来CD4+ T細胞において 強力なLRA活性を有することが報告されている19, 21, 22, 27)。 筆者らのグループはPKC活性化剤に属するbenzolactam誘 導体にLRA活性があることをHIV患者由来CD4+ T細胞 などを用いて評価,さらに作用機序の異なる他のLRAとの 併用で相乗的に強力なLRA活性を発揮することを報告し
た22)(図2)。われわれの報告も含め複数の研究グループが,
強力なLRA活性を得るためには作用機序の異なるLRAを 組み合わせて用いることが重要であると報告しているが,
その中でもBRD4阻害剤のJQ1とPKC活性化剤の組み合
図 2 Benzolactam誘導体のLRA活性評価
(A)Benzolactam誘導体の構造式。(B)J-lat10.6細胞を用いて各種LRAとの相乗効果をbliss independent modelで評価した。(C)HIV 患者由来CD4+ T細胞を用いてHIV mRNA転写レベルの増加を確認した。文献22(Matsuda K et al. J Biol Chem. 2019)より抜粋。
わせが最も有効なものの1つとして考えられている21, 22, 27)。 実際にPKC活性化剤のBryostatin-1を用いた最近の臨床研 究でもヒトでの単回投与の安全性は実証されたものの,血 中濃度が低かったこともあり,潜伏状態にあるHIV感染 細胞でのHIV転写活性化は認められなかった28)。
つまり,このような広範囲に作用する(broad-acting)LRA の単独投与では生体中のHIVリザーバーを根絶するのに 十分ではない可能性があり,異なる作用機序を有する他の 治療薬,もしくはそれらを組み合わせた治療戦略が必要と なるかもしれない。実際にBorducchiらはアカゲザルを用 いたサル免疫不全ウイルス(SHIV)感染サルモデルでART 治療中にLRA(GS-9620 : TLR7 agonist)に加えてHIV env 特異的広範囲中和抗体(PGT121)を併用することでART 中断後のウイルスのリバウンドを遅延・消失させることに 成功したことを報告している29)。
4. 新規in vitroリザーバー評価系の構築
LRAを投与して潜伏感染細胞を再活性化するという方 法は,既存の抗HIV薬では治療できない潜伏感染細胞を除 去できる可能性を秘めている。その一方で感染性を有する HIVの産生と非感染細胞への新たな感染を促す結果にも 繋がる,いわゆる諸刃の剣の治療法でもある。このような
Shock and killの治療への応用に向けた薬剤開発の基礎研
究の一環として,筆者らの研究グループはJurkat細胞など のT細胞株とHIV-1NL4-3などの野生株HIV-1を用いてHIV 産生細胞群,HIV潜伏感染(非産生)細胞群,さらに,HIV 非感染細胞群が長期間にわたり混在・維持されるin vitro HIV慢性感染細胞系を確立した(図3)。このHIV感染モ デルを各種の薬剤の評価に用いると,LRAによる潜伏感染 細胞の再活性化・除去と同時に既知の作用機序の抗HIV 薬[逆転写酵素阻害剤(NRTI),プロテアーゼ阻害剤,イ ンテグラーゼ阻害剤など]を併用することで,再活性化に 伴い産生されたウイルスによる2次的感染の阻害ができて いるかを評価することも可能となる。これによって今まで shock(潜伏再活性化)を評価するアッセイ系のみしかな かったものが,既存薬との併用による残存ウイルスと潜伏 感染細胞の除去(kill)を同時に評価することが初めて可能 となった(Widely-distributed intact provirus elimination : WIPE assay, 投稿準備中)。
実際にNRTIであるEFdA/MK-859130) 単剤では薬剤処理 後4~6週の間にウイルス産生が検出限界以下に達するが,
休薬後すぐにウイルスはリバウンドする。一方でPKC活 性化剤であるPEP00527) 単剤では薬剤処理によるウイルス 産生への影響は観察されない。それに対してEFdAと
PEP005を併用して処理すると,EFdA単剤処理と同様に
4~6週の間にウイルス産生が検出限界以下に達するが休
薬後のリバウンドは起こりにくく,約60%の実験結果で 治療終了後8週以上リバウンドが起こらない“experimental
cure”が観察された(図4A)。このように既存薬(NRTI)と
LRAの併用でウイルス産生能を有するHIV潜伏感染細胞 を完全に除去,experimental-cureに至った機序を解明するた めに,single-genome full length PCR31) とNGS(次世代シー クエンサー)を用いて残存プロウイルスの配列を解析した ところ,EFdA単剤でも薬剤処理により欠損型のHIVプロ ウイルスの出現が見られたが,LRAとの併用ではそれが さらに顕著に増加(解析した全配列が欠損型)することが 分かった(図4B)。
今回開発・評価したHIV慢性感染モデルと実際のHIV 患者由来T細胞のプロウイルスの宿主DNAへの組み込み 部位(integration site)を比較すると,各染色体への組み込 みのパターン(割合)がきわめて類似することが分かって いる。これは本慢性感染モデルでは実際のHIV感染者体 内で起こっているような感染細胞によるウイルス産生,感 染細胞の細胞死・潜伏化,それに加えて新しいウイルス粒 子による非感染細胞への新規感染が日々たえ間なく繰り返 される結果,多種多様なHIV-1感染クローン(細胞)が存 在しうるためであり,それにより既存薬とLRAの併用によ るHIV感染細胞除去の過程を見ることのできるin vitro治 療モデルとして有用であると考えられる。さらに本評価系
図 3 HIV潜伏感染細胞が長期間にわたり混在・維持
されるin vitro HIV感染細胞系の樹立
Jurkat(T細胞株)とHIV-1NL4-3を用いてHIV産生細 胞群,潜伏感染状態の細胞を含むHIV非産生細胞群,
さらに,HIV非感染細胞群が長期間にわたり混在・維
持されるin vitro HIV感染細胞系を確立した。
での薬剤の影響をウイルス定量的に見るだけでなく,NGS などによる詳細なプロウイルス解析を加味することで,残 存ウイルスの質的評価(欠損型プロウイルスの有無,ある いは組み込み部位解析)を行うことも可能となる。現在,
本評価系を用いて新規LRAの創薬ならびに既存の抗ウイ ルス薬との最適な組み合せを明らかにする研究を進める一 方で,(LRAも含めた)HIV治療薬に伴い減少していく残 存プロウイルスの動向・変化を追うことで,治療による HIVリザーバーの減少と治療に抵抗して残存するリザー バー内のプロウイルスの特性解析に向けた研究を進めてい
る(投稿準備中)。
5. 造血幹細胞移植によるHIV根治例から得られる HIV cureへ向けた治療戦略
HIV感染(侵入)にはCD4とco-receptorであるCCR5の 存在が必須であるが,コーカソイドの約1%には先天的に
CCR5遺伝子に32 bpの欠損(CCR5Δ32)を有し,HIV感
染に対し耐性を持つことが知られている。Berlin patientと して有名になった症例はHIV治療の途中で急性骨髄性白 血病に罹患し,治療としてCCR5Δ32をホモで持つドナー 図 4 WIPE(Widely-distributed Intact Provirus Elimination)assayを用いたLRAと既存薬の評価系の構築
(A)図3で樹立したHIV慢性感染細胞にNRTIであるEFdAとPKC活性化剤であるPEP005を併用処理すると,4~6週の間に ウイルス産生が検出限界以下に減少するが,休薬後のリバウンドは起こらず“experimental cure”が観察された。(B)Single genome full length PCRとNGSを用いた残存プロウイルスの質的解析。
(CCR5Δ32/Δ32)からの造血幹細胞移植(HSCT)を2回受 けた結果,HIV感染症と白血病を同時に克服した32)。最近,
骨髄移植により治癒に至った2例目の患者London patient が報告された33)。この患者も同様に治療中にホジキンリン パ腫を発症したため,CCR5Δ32/Δ32を持つドナーからの HSCTを行った。今回のLondon patientはBerlin patientと 比べて移植前の放射線処置を軽くしたにもかかわらず治癒 したため,骨髄移植によるHIV治癒には必ずしも放射線処 置が必要というわけでなく,移植に伴うGVHDがHIV感 染細胞の駆除に寄与している可能性を指摘している。
この2例はいずれも併発した血液悪性腫瘍の治療のため に行われたHSCTによりHIV感染の治癒も得ることがで きている。これは移植前の強力な化学療法+放射線療法
(と移植後のGVHD)によりHIV感染リザーバー細胞を極 限にまで縮小させた上に,新しい細胞はCCR5欠損により 被感染性をほぼ有しないという2つの要素の組み合わせに よる恩恵であると考えられる。つまりこれと同じ状況を Cureを目指すHIV患者で目指すためには,さらに強力
(効果的)な潜伏感染除去治療薬(治療法)と非感染細胞 を完全にプロテクトできる強力なcARTの併用が必要であ ると言えよう。上述のとおり,in vitro(ex vivo)でさえも 完璧とは言えない現在のLRA(もしくはART治療薬)で はリンパ節をはじめ体内のいたるところに潜んでいるリ ザーバー細胞に満遍なくゆきわたり,完璧に作用すること はまだ不可能と言わざるを得ない。より強力な作用を有す る薬剤の開発のみならず,(敵である)リザーバー細胞が 体内のどこにどれだけ存在し,それらがどのような治療に 感受性があるかをより詳細に把握するための研究がこれか らさらに必要となる。
6. おわりに
現行の強力なcARTをもってしても根治が困難なHIV 感染症に対して,われわれはまったく新しい機序,特にリ ザーバーを標的とした治療法で立ち向かわねばならない。
世界初のHIV治療薬の発見から30年余りが経った今,抗 ウイルス療法はHIV根治に向けた研究へシフトしつつあ る。HIV根治の実現により患者は生涯の服薬から解放さ れ,それに伴う費用対効果も大きい。本稿で示した各研究 成果のように,cARTに加えてLRAなどの新規作用機序 の治療法を駆使し,体内からリザーバー細胞を物理的に排 除することができればHIV感染症の根絶も可能となるか もしれない。しかし,服薬でHIVをコントロールできてい る患者に対して,このような治療を施すことに異を唱える 臨床家がいるのも事実である。また,ウイルス以外に及ぼ す影響が未知数であり,動物モデル等を用いた詳細な研究 により安全性が求められるが莫大な予算が必要となる。著
者らが開発した新規リザーバー解析法のようなin vitroの 評価系を用いて既存薬とLRAの詳細な併用効果の評価・
解析を可能とし,その試験で有望だったものを動物モデル など,ヒトの感染様式,免疫系により近い評価系にもって いくための,効率的なリザーバー解析・治療評価システム の確立が望まれる。
利益相反:開示すべき利益相反はない。
文 献
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