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論 文 審 査 の 要 旨

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Academic year: 2021

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別紙1

論 文 審 査 の 要 旨

報告番号 甲 第 2703 宮﨑 裕明

論文審査担当者

主査 歯学部歯科薬理学講座教授 高見 正道

副査 歯学部口腔生化学講座教授 上條 竜太郎

副査 歯学部口腔病理学講座教授 美島 健二

( 論 文 審査 の 要旨 )

学 位 申請 論 文「Identification of TNFSF7 as a CD44 downstream gene that supports the development of oral cancer stem cell niche (口 腔 癌 に お ける 新 規癌 幹 細 胞マ ー カー の 同 定と そ の 機能 解 析)」 につい て , 上 記3名 が個 別 に 審査 を 行 った .

【 目 的 】 さ ま ざ ま な 癌 種 に お い て 造 腫 瘍 性 や 薬 剤 抵 抗 性 を 示 す 癌 幹 細 胞 集 団 が 同 定 さ れ , そ れ が 難 治 性 癌 の 本 態 と 考 え ら れ て い る . 一 方 , 口 腔 癌 に お い て は 癌 幹 細 胞 集 団 が 同 定 さ れ て お ら ず , そ の 形 質 の 詳 細 は 不 明 で あ る . そ こ で , 本 研 究 は 口 腔 癌 の 癌 幹 細 胞 集 団 の 新 た な マ ー カ ー の 同 定 と そ の 形質 解 析を 目 的 とし た. 【 方法 と 結果 】癌幹細 胞 形 質の 1つで あ る 抗癌 剤 耐 性を 指 標と し て , ヒ ト 舌 癌 由 来 細 胞 株(HSC3,HSC4,SCC25,SAS)を シ ス プ ラ チ ン(CDDP)に 暴 露 し , フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー に より 一 般的 な 癌 幹細 胞 マ ーカ ー であ る CD44 の 発現 と ALDH活 性 を 解 析 した . その 結 果 , CDDPに 対 す る 耐 性 獲 得に 伴 いCD44の ア イ ソ フォ ー ム の種 類 が バ リ ア ント フ ォ ーム か らス タ ン ダ ー ド フ ォー ム(CD44s)へ 移 行 し た. 樹 立し た CDDP 耐 性 の SAS 細 胞 株 は ,CDDP 耐 性 下 に お いて CD44sシ グ ナ ル に 依 存 して 上 皮 間葉 転 換(EMT)が 誘 導 され ,造 腫瘍 性 が亢 進 し た .ま た ,CDDP 耐 性 細 胞株 で は,CD44sの 発 現 亢進 に 伴い ,EMT制 御 因子 の 1 つで ある ZEB1 の 発 現が 誘 導され た . さ らに CD44s 陽 性 の 細 胞 に特 異 的に 発 現 する 表 面 マー カ ーと し て 腫瘍 壊 死 因子 フ ァミ リ ーの 1 つ で あ る tumor necrosis factor ligand superfamily member 7(TNSF7,CD70)を 同 定 し た . そ こ で TNSF7 の レ セ プ タ ーであ る CD27 を 発 現 す る 制御 性 T 細胞 と の相 互 作用 を 検 討し た とこ ろ , 制御 T細 胞 が TNSF7/SAS細 胞 に 集積 し た.ま た 口腔 癌 臨 床検 体 より 樹 立 され た 別 の細 胞 株を 用 いた 時 も 同 様の 結 果が 得 ら れた . 【 考察 】 以 上 よ り,口 腔 癌 にお け る 癌 幹 細 胞集 団 がTNSF7を 発 現 す る こ と が明 ら とな り ,さら に CD44sの 新 た な 役割 と し て,TNSF7を 介 した 制 御 性 T細 胞 の癌 細 胞 へ の 集 積誘 導 が示 唆 さ れた .

上 條 委 員の 質 問と そ れ に対 す る 回答 :

〔質問1〕

PS1 と PS2 を RNAi などで阻 害 すると EMT の抑 制 はおこるのか推察 せよ.

〔回答〕

これまでに CD44 による遺伝 子 発現 制 御には Presenilin-1(PS1)や PS2 から形 成される-secretase により CD44s が切断され,その一 部が核内 に移 行することが重要 であることが報告されている (ref 1).本研 究に おいては,CD44 standard form (CD44s)を CDDP 耐 性の SAS 細 胞 株(SAS-3.4 細胞)に導 入した場 合に のみ EMT が観 察されている.また,Facs により EMT が誘 導された細 胞 画分 と誘 導されていない画分 をそ れぞれ分 取し,ウェスタンブロット法により解 析した結 果 から,PS1 は両 方の細 胞集 団において発 現している のに対し,PS2 の発 現 は EMT が誘 導された画分 でのみ確 認されている.以上のことから PS1 と PS2 の両 者 の発 現が CD44s による EMT 誘導 には必 須 であると考えられるので,PS1 や PS2 を siRNA などによりノック ダウンすると,EMT が解 除 されると考えられる.

〔質問2〕

CD44 細胞 外ドメインの切断 に関 与 する ADAM10 および ADAM17 は親株 および CDDP 耐 性株 において 発現 変 動がみられるのか

〔回答〕

本研 究 では,マイクロアレイを用いた解析 から CDDP 感 受性 株 と CDDP 耐性 株間 において ADAM10 や ADAM17 の発 現に変化 が見られなかったことを確 認している.今 後 はウェスタンブロット法により ,タンパクレ ベルでの検 討も行う予 定である.

(主査が記載)

(2)

〔質問3〕

CD44s によって ZEB1 の発 現が亢進 するメカニズムはあるのか述べよ.

〔回答〕

これまでに CD44s が EMT を誘 導することは乳がん細胞 において報告されているが,その分子 メカニズム は明らかにされていない.CDDP 耐 性の頭 頸部 がんにおいてのみ CD44s が転 写 因子 である ZEB1 を介し て EMT を誘 導することを本研 究がはじめて明らかにした.今 後はより詳 細なメカニズムを検討していく必 要 があると考えられる.

〔質問4〕

CDDP 耐性 株 SAS10.2 において ZEB1 の発 現 を抑 制すると EMT が解 除されるのか

〔回答〕

本研 究 では,マイクロアレイを用いた解析 から CDDP 感受 性 株 と CDDP 耐 性 株間 において変動 が見られ た EMT 制 御 因子 は ZEB1 のみであった.このことから ZEB1 をノックダウンすることで EMT が解除されること が予 想される.

この他 ,5. CD70 のマーカーとしての有 用性 について,6. 制御 性 T 細胞 を用 いても癌 幹細 胞に集 積する か,6. ヌードマウスにおいて形 成された腫 瘍 組織 で CD44 と Vimentin による免疫 染 色 の結果 についての 質問 がなされ,明 確な回 答 が得られた.

美 島 委 員の 質 問と そ れ に対 す る 回答 :

〔質問1〕

癌 幹 細胞 と EMTが 誘導 さ れ た細 胞 の細 胞 性 質の 相 同 性の つ いて 述 べ よ

〔回答〕

EMTを 経 て癌 幹 細胞 集 団 が形 成 され る こ とが 乳 癌 で報 告 され て 以 来 ,EMTを 示 すが ん 細胞 集 団 が 治 療 抵 抗 性 や 転 移 能 を 示 す と 考 え ら れ て い る . 一 方 で 間 葉 系 の 性 質 を 示 す が ん 細 胞 す べ て が 必 ず しも 上 記の 性 質 を示 さ な いこ と も報 告 さ れて い る (ref 1, 2). そ こで , 本 研究 で 示し たよ う に 癌 幹 細 胞 マ ー カ ー や 腫 瘍 形 成 能 な ど を 指 標 と し て 癌 幹 細 胞 集 団 を 同 定 す る こ と が 重 要 で あ る と 考 えら れ る.

〔質問2〕

高 濃 度 CDDP 耐 性 株 に お いて CD44s siRNAで 発 現 抑 制 し た とき ,EMT の 形質 は 消失 す るの か 考 察 せよ

〔 回 答 〕

CDDPを 添 加 せ ず に細胞 培 養 を行 っ た際 に ,CD44sの 発 現 低 下と EMTの 解 除 が確 認 され た た め , CD44s に よ る ZEB1の 発 現 誘 導 にエ ピ ジェ ネ テ ィッ ク な 制御 機 構が 介 在 しな い と 考え ら れる .よ っ て ,CD44s siRNAで ノ ッ クダ ウ ンし た 場 合に は EMTが 解 除さ れ ると 考 え られ る .

〔質問3〕

癌 幹 細胞 に おけ るCDDP耐 性 獲 得の メ カニ ズム を 述 べよ

〔 回 答 〕

癌 幹細 胞 にお け る 薬剤 抵 抗 性の メ カニ ズ ム とし て は 1)DNA修 復 機 構,2)薬 剤排 出 能, 3)酸 化 ス ト レ ス に対 す る防 御 能, 4)細 胞 周期 の 静 止化 な どが 報 告 され て いる . 本 実験 に お いて は CDDP 性 株 に おい て 薬剤 排 出 能を 有 す る ABC ト ラ ン スポ ー タ ー(Multidrug resistance protein 6 :MRP6, ABCC6)(ref 3) の 発 現が 約 3 倍更 新 し てい る 事を マ イ クロ ア レイ の 結 果よ り 確 認し て いる . し た が っ て本 実 験で は MRP6 CDDP耐 性 獲 得に関 与 し てい る と推 察 さ れる .

〔質問4〕

CDDP細 胞 内 ド メ イン(CD44ICD)の 核 内 へ の 移行 は 確 認し て いる か

〔回答〕

本 研 究で は ,ま だ CD44ICDの 核 内 移 行 は 検討 して い な い .一方 で, CD44ICDの 形 成 に-secretase が 必 要 であ り(ref 4),その 構 成 因子 で ある Presenilin1(PS1)お よ びPS2の発 現 を EMTが 誘導 さ れ た 細 胞 で確 認 して い る .ま た ,CD44sに よ る ZEB1の 転 写制 御 機 構は こ れま で 報 告が な いた め 新 EMT誘導 メ カニ ズ ムの 一 端 を明 ら かに し た と考 え ら れる .

この他 ,5. CD70 のヒト生体 内 での発現 局 在について,6.CD70 の機 能についての質 問がなされ,明確 な 回答 が得られた.

二 名 の 副 査 は , す べ て の 回 答 が 適 切 で 満 足 で き る も の と 判 断 し た . ま た 高 見 委 員 は 主 査 の 立 場 か ら ,二名 の 副査 の 質問 に 対 する 回 答の 妥 当 性を 確 認 した .以 上よ り ,本 論 文 が新 し い知 見 を 得 て お り,学術 上 価値 のあ る も のと 考 えら れ ,博士( 歯学 )の 学 位授 与 に値 す る もの と 判断 し た .

(主査が記載)

参照

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