別紙1
論 文 審 査 の 要 旨
報告番号 乙 第 2893 号 氏 名 光本(貝崎)明日香
論文審査担当者
主査 木内 祐二 副査 中村 明弘 副査 佐藤 均 副査 岩井 信市 副査 小林 靖奈
(論文審査の要旨)
周産期炎症は、新生児の脳炎症等に寄与するだけでなく、長期的には精神神経疾患と関連す る可能性が示唆されている。従って、周産期炎症による障害メカニズムや、その予防・治療策 を明らかにすることは臨床的上意義がある。本研究の第一章では、炎症惹起物質であるリポポ リサッカライド(LPS)の新生ラットへの腹腔内投与が、末梢 だけでなく中枢の炎症反応を生じ ることを示した。また、本実験モデルを用いて、中枢炎症が神経機能障害や神経行動学的能力 の低下を生じることを明らかにした。さらに、COX-2 選択的阻害薬である セレコキシブがこれ らの作用を減弱させることを明らかにし、一連の神経機能障害において COX-2 の誘導・活性化 が鍵となっていることを示した。本研究結果は、周産期炎症に起因する 神経変性疾患の治療に おいて重要な情報を与えるものである。
一方、本論文の第二章では、乱用薬物の周産期暴露が次世代 の神経発達に与える影響につい て検討した。モデル薬物として、麻薬に指定されているとともに現在多く流通する危険ドラッ グと構造を共有する 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)を用いて検討を行い、MDMA がin vitro 実験系において PC12 細胞の神経細胞分化を阻害 すること、in vivo実験系におい て、未熟仔の誕生や、仔の神経行動学的な能力の発達遅延を生じることを明らかにした 。これ までほとんど報告されてこなかった MDMA の次世代神経系に及ぼす影響が 、本研究により初め て明らかにされた。
本研究では、当初予想した MDMA の周産期暴露と次世代の神経発達障害における炎症の役割 を明らかにするには至らなかったものの、周産期の炎症と薬物暴露に関する多くの新知見を提 供する学術上の価値あるものである。
以上より、本論文は博士(薬学)の学位論文として相応しい内容であると判定された。
(主査が記載、500字以内)