コミュニケーション能力を高める対話型授業づくり
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話すこと・聞くこと』を中心とした国語科における教材開発と授業実践を通してー 高度学校教育実践専攻授業実銭・カリキュラム開発コース 増 井 教 訓l
第I部 実 践 研 究 編 第1章 課 題 分 析
1 課題設定理由 (1)実習校の実態
実習校は,静岡県西部地区に位置する,中規 模の中学校(全校生徒322名)である。
学校アセスメントレポートの作成を通して,
実習校の生徒は,素直で明るく,指示されたこ とを忠実に実践する生徒が多く,ボランティア 活動や地域行事,学校行事への意欲的な取り組 みがみられることが分かつた。
課題としては,自主性や自尊感情,規範意識 の低さがあげられる。また,学習,生活両面に おいてコミュニケーション能力に課題があるこ とが分かった。人と気持ちを伝え合いたいとい う思いはあるが,コミュニケーションをとるこ とに自信が持てない生徒の姿や授業の中で発言 や話し合いの機会が与えられているにもかかわ らず,自ら発言したり質問したりすることに消 極的な生徒の姿が明らかになった。効果的に話 したり,聞いたり,話し合ったりする方法を知 らない生徒が多いことも知ることができた。
こうした実態を受けて,実習校の教職員が生 徒のコミュニケーション能力育成の必要性を強
く感じていることも分かつた。
(2) 実習校の校内研修とのかかわり
実習校の校内研修では
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豊かに表現する生徒の育成 言語活動を充実させることで,自己肯
実 習 責 任 教 員 小 野 瀬 雅 人 実 習 指 導 教 員 川 上 綾子
定感を実感させるために ~J を研究主題として
設定している。各教科において,授業の中に言 語活動を設定し,学び合い伝え合う授業展開の 工夫に努めることを授業改善の柱として,生徒 の表現力の育成に取り組んでいる。
研究の方法として,教職員が教科や学年の枠 を越えて学び合うグループ研修
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拡大教科部 会J)を3年前から取り入れている。(3 )今日的教育課題とのかかわり
新しい学習指導要領には,これからの時代に 求められる学力の重要な要素が,
r
基礎的・基本 的な知識・技能の習得J,r
知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力
・表現力等J,
r
学習意欲Jであると示されている。また,思考力・判断力・表現力を育むため には,言語活動が重要であり,各教科等で国語 科で培った言語能力を基本に,記録,説明,論 述,討論といった学習活動を充実させることは,
今回の学習指導要領の改訂において重要な改善 の視点でもある。
こうした中で,実生活で生きではたらき,各 教科の学習の基本となる言語力を基盤としたコ
ミュニケーション能力の重要性が学校現場だけ でなく,現代社会全体で高まっている。
以上のようなことから,生徒がこれからの時 代に求められる学力をバランスよく身につける のと共に,自分の価値に気づき,他者とかかわ り合いながら成長していくためには、対話型の
授業の中で言語活動を充実させ,計画的にコミ ュニケーション能力を育成するととが必要であ ると考え,本主題を設定した。
国語科においては,r話 すこと・ 聞くこ と」の
領域を中心に学習指導計画に言語活動を位置づ け,単元や授業構成の改善,学習教材の開発,
対話型の授業実践に取り組む中で対話を核とし たコミュニケーション能力の育成を図りたいと 考えた。国語科で培った力が学校生活全般に派 生するよう,実習校の校内研修の方向に沿って,
他教科や特別活動等との関連も考えながら研究 を進めていくこととした。
2 先行研究・実践事例の分析
課題解決の方策として rコミュニケーション 能力J, r 国語科における 『新しい学力観~J , rw話 すこ と・聞くこ と』領域の学習J, r対話型の授
業づくり」について,それぞれ先行研究を検討 した。「対話型の授業」については,多国 (2009), 村 松 (2001)の理論をもとに「対話型授業のモ
デノレ図J(図 1)を作成した。
対話型授業のモデル困
情纏{事実書疎 と感情}の共有
第2章 課 題 解 決 1 研究構想
(1) 目的
本研究においては,国語科の「話すこと ・聞 くこ とJの領域において,言語活動を充実させ た対話型の授業を実践することで生徒のコミュ ニケーション能力を高めることを目的として研 究を進めていくこととした。
(2) 仮説と方法
研究を進めていくにあたり以下のような研究 仮説を立てた。
仮説 1 国語科において音声言語の基礎・基 本を定着させたうえで,言語活動を充実させ た対話型の授業を行うことは,生徒のコミュ ニケーション能力の育成につながるのでない だろうか。
仮説2 コミュニケーション能力の育成は,
生徒がこれからの時代に求められる学力をバ ランスよく身に付けるのと共に,自分の価値 に気づき,他者とかかわり合いながら成長し ていくことにつながるのではないだろうか。
研究仮説の検証にあたり,以下の手立てを中 心に研究を進めていくこととした。
手立て 1:国語科における教材開発と対話型 授業の実践
①言語活動の充実を図るための教材開発
②実習校における国語科対話型授業の実践 手立て2 実習校の校内研修との連携
手立て3 コミュニケーションによる学校課 図1 対話型授業モデル図 │題研究の共有化
2 実践研究の実施
また,鳴門教育大学附属中学校,坂井市立丸 ( 1 )国語科対話型授業の実践
阿南中学校,京都市立御池中学校,静岡大学附 1)授業実践 1 (実習。フィーノレドワーク〔以 属静岡中学校における先行実践事例の分析を行 下 rF WJと略す) 1)
い,本研究の参考とした。 実習校教職員との協議を通して,筆者の国語
科対話型授業を「コミュニケーション能力の育 成」に教職員,生徒が共通理解のもと,
む第一歩として位置づけた。
取り組
実習 (FW[)においては,学習活動や人間 関係作りにおけるコミュニケーションの基盤と なる 「聞くカ」に焦点化した対話型の授業を行
うこととした。また,学校課題研究の共有化と 実習校全体へ大学院での学びを還元することを 目指し,全学年,全学級で授業を行うこととし た。
本授業実践においては,ペアやグノレープでの 対話による言語活動を通して, 「聞くことの意味 や価値」 を実感を伴いながら理解できるような 教材の開発と授業展開の工夫に努めた。
授業における言語活動の意味づけを行い, 「聞 くことの意味や価値Jを整理する際に使用した ワークシート (校内研修会で教職員に紹介した もの)を図 2に示す。
R E F 園 j 岨 L 函 ! E 圏 内 !
? ? i │ 刷用岡市;刷 3
~ 1 1 し 問円 1 U U i
図2 授業ワークシート
授業の最後に,授業での学びを生徒に振り返 らせるための自己評価を行った。
自己評価シートの数値や記述欄について学年 別に分析を行い, 生徒の実態把握に努めた。ま た,実習 (FW[[)における国語科対話型授業 の構想を繰るための参考とした。
2)授業実践E (実習 FW [[)
実習 (FW[[)においては,学年の実態に合 った国語科対話型授業を行うこととした。学年 のごとの生徒の実態は,実習 (FW [ )におけ る国語科授業実践と参観授業での生徒観察, 「身 につけたいコミュニケーション能力Jについて の生徒アンケー卜, 「育成したいコミュニケーシ ヨン能力Jについての職員アンケート,職員イ ンタビュー等から分析したものである。また,
教材開発や生徒の実態把握,授業実践における 生徒への学習指導を実習校国語科担当職員と協 働的に行うこととした。
1年生においては,相手を意識したよりよい 話し方や聞き方について学ぶことを目的とした
国語科対話型授業を行った。
2年生においては,有意義な相互交流をつく りだす効果的な質問の方法について学ぶことを 目的とした国語科対話型授業を行った。
3年生においては,話し手の意見を正しく閉 き取ったうえで,自分の考えを相手に分かりや すく説明する方法について学ぶことを目的とし た国語科対話型授業を行った。
どの学年においても,①実習 (FW で実 践した「聞くことJに関する対話型授業との関 連,②授業における「教材との対話J, r自己内
「他者との対話」場面の設定,③対話型 対話J,
授業で身につけたカの学習や生活場面への汎用 性といったことを意識しながら,教材開発と授 業実践に取り組んだ。
実習 (FW[[)においては, 自己評価シート の記述欄に「授業で学習した内容が生かせそう,
または生かしたい場面Jについて書かせた。自 己評価シー卜の数値や記述内容をもとに, 国語 科対話型授業実践の成果と課題について分析し た。
(2)校内研修との連携
実習校の校内研修会の中で,コミュニケーシ ョン能力の育成に関する学校課題研究について の共有化を図り,協働的に研究を進めていくこ とを目指した。実習校の校内研修会には,平成22 年 度 2月,平成 23年度 5月, 6月, 10月, 11 月の計5回参加し,研修主任と共にファシリテ ーターを務めた。以下に研修内容を示す。
① ワークショップによる「生徒のよさと課題 マップ」づくり
② 学校課題研究についての説明と国語科対話 型授業の体験
③ 学校現場における教師のコミュニケーショ ンについての研修
④ 各教科で育てたい表現力とその手だてにつ いての研修
⑤ 実習 (FW 1, II)の成果と課題について の報告
(3)学校課題研究の共有化
実習 (FW1, II)中は,学校課題研究の見 つめ直しと共有化のために幅広くコミュニケー ションをとるよう心がけた。国語科対話型授業 と校内研修以外の取り組みを以下に示す。
① 職員とのコミュニケーションのために .各種会議への参加
・職員インタビューの実施
・「授業参観レポートJ.
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部活動参観レポート」の作成
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実習 (FWI,II)日誌」の作成② 生徒とのコミュニケーションのために
・登下校指導と校内,校外の巡視
・生徒インタビューの実施
・特別活動,部活動の参観と指導補助
・「部活動ワークショップ型ミーテイング」の実 施
③ 校外でのコミュニケーションのために
‑磐田地区教育研究会国語部研修会への参加 .地域の施設訪問とインタビューの実施
・静岡大学教職大学院において研修
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神明タイムズJ(学校新聞)の原稿作成 3 実践研究の成果と課題国語科対話型授業に対する生徒の満足度は高 く,どの学年においても,他者との対話だけで なく,真剣に教材や自分自身と向き合う姿が見 られた。また,授業後,特に「聞くこと」に対 する生徒の意識と態度に望ましい変容が見られ た。育成したい力を明確にし,言語活動を意図 的に設定することによって,生徒が,ついた力 やその力の汎用性を実感することができること も明らかになった。こうした,対話による学び の積み重ねが,コミュニケーション能力の育成 につながるものと思われる。
しかし,コミュニケーション能力の育成と学 力の向上やよりよい人間関係づくりのつながり
については,明確な検証結果を示すことができ なかった。今後,さらに実践の継続と検証を続 けていく必要があると思われる。
学校課題研究における筆者の取り組みは,生 徒のコミュニケーション能力育成に向けてのき っかけづくりにすぎない。全校生徒を対象とし た国語科対話型授業の実践によって,コミュニ ケーション能力育成の種をまいたにすぎない。
ただ,実践した対話型授業や校内研修などを通 じて,まいた種からどんな花を咲かせたいのか,
そのためにどんな手入れをすればよいのかを生 徒や職員と共に考え,思いを共有することがで きたことは,事実である。生徒も職員も学校課 題を他人事ではなく,自分の学校のこと,自分 自身のこととしてとらえる姿が見られたことが 本研究の一番の成果で、あったと考える。