Mem. School. B. O. S. T. Kinki University No. 12 : 49 ~ 57 (2003) 49
軽量イヒハニカムパネルの座屈強支に及ぼすセノレ形状の影響
大 政 光 史l, 榊 原 啓 之 上 田 幸 雄1
要旨
ハチの巣状の中空構造を平坦な面材で、挟んだ、ハニカムパネルは、軽量で剛性や強度の高い 部材として用いられている。その中空構造を形成しているセル形状は六角形がほとんどであ
るが、正三角形や正方形でも同様のパネルを作成することは可能である。
本研究では、ハニカムパネルを鉄道車両のフロアに使用し軽量化する場合を想定し、セル 形状の違いが座屈強度に及ぼす影響を検討した。フロアは垂直荷重により曲げを受け、セル 形状で、固まれる面材は全方向圧縮を受ける口他方で、セル材の各長方形平板は、面材を通し て一方向圧縮を受ける。このような応力状態に対する座屈を強度基準とした。正六角形の面 材に対する座屈理論式はないため有限要素法を用いた。次に、パネルの高さと面材の板厚を 変化させず、セル形状が変化しでも座屈強度を等しくするようにセル材の板厚と辺長を変化 させ、セル形状の違いによるパネル質量の違いを検討した。その結果、正三角形、正方形、
正六角形の中では、正六角形がもっとも軽量になることがわかった。
1 .緒論
ハニカムパネルはハチの巣状の中空構造を平坦な面材で挟み込んだ構造体であり、軽量で 剛性や強度の高い部材として、航空機や新幹線車両などに多く用いられている(1,2)。ハニカム パネルの設計における最小重量構造の決定では、中空構造体の形状は考慮せず平均的な密度 や剛性等をもとに面材の板厚やパネルの総板厚等を定める手法がとられている(1)。その場合の 中空構造を形成しているセルの形状としては、主として六角形が採用されている。一般に、
剛性基準の設計は軽い負荷条件の下で行われるものであり、その条件を越えて負荷された場 合には座屈、さらには塑性化などが問題となるため、剛性基準だけで決定されるセルの形状 や面材の板厚などが、座屈の場合においても良好な構造性を保っかどうかの検討を行う必要 があると考えられる。
そこで本研究では、ハニカムパネルの部分構造で、あるセル形状に注目し、座屈を強度基準 とした場合にセル形状の変化と軽量効果を検討する。同一形状で隙間なく敷き詰められる正 多角形としては正六角形以外にも正三角形や正方形があり、実際にも紙や樹脂を素材とする ハニカムパネルでは三角形や四角形のセル形状が用いられることもある。ここでは、セル形 状として、正三角形、正方形、正六角形の3種類を検討対象とする。車両用フロアパネルを 想定した使用条件においてハニカムパネルの面材およびセル材が座屈するという強度条件の
もとで、どのセル形状が軽量化に最適であるかを検討する。
1. Department ofMechanical Engineering出ldBiom.imetics, Kinki University, Wakayama 649・6493,Japan
2.ハニ力ムパネルの形状と荷重・拘束条件
ハニカムパネルは新幹線やリニアモーターカーでフロアパネルとして使われ始めているが、
設計要求の例としてはフロアパネルを支える支柱間隔は最大 1100m m、通路部分の荷重条件 としては4.66kPaの等分布荷重とされている(1)口
このような例をもとにして本研究では、図 1のような形状のハニカムパネルについて検討 した。パネル全体は
LxL
の正方形、面材の板厚t、セル材の高さb、セルの一辺の長さα、 セル材の板厚仁とした。これらの中で、セルの一辺の長さGとセル材の板厚仁を可変パラメ面材 (板厚t)
セル材 (板厚
t J
t¥V
tlt¥
(a)ハニカムパネル全体 (b)セル形状 図 1 ハニカムパネルの形状(模式図)
ータとしてセル形状の座屈強度への影響 を検討した。他の寸法はパネルの使用状 況により決定されるものと考え、本研究 では一定値とした。
ハニカムパネルの周囲 4辺を単純支持 されている状態で、パネル上面に等分布荷 重がはたらくと図2(a)のようにパネル全 体にたわみが生じる。この変形によって 面材の上側では面内方向の圧縮応力が生 じるため図2(b)のようにセル間で、面材が 座屈する可能性がある。また、図2(c)の ように面圧によりセル材が局部座屈する こともある。
(吟荷重によって生じるたわみ
(b)面材のセル間で、の座屈
(c)セル材の座屈
図2 荷重・拘束条件と座屈モード
51
3.苗材の座屈
3. 1 面材が受ける応力
等分布荷重を受けることによってハニカムパネルがたわむときに上側の面材に生じる圧縮 応力は中心部で最大となる。パネル中央の断面で、長さ L、幅 dのはりとして考えると、等 分布荷重wによって面材に生じる最大応力は曲げモーメント Mと断面係数Zを使って次式で 表される。
σ max
= 一 M 一
Z‑
wdL
2F こで、
z= 一一一'". ( b / 2 )
,M =
.Lr.L ‑一 一 一 8 一
また、このときの断面2次モーメント Iは、
I=2(~rd
となるので、これらをまとめると面材が受ける面内方向の最大応力は次式となる。
wL
2 σ =一一一max 8bt
3. 2 面材の座屈条件
( 1 )
(2)
(3 )
本研究で、はパネル全体は
LxL
の正方形として考えているので、式(3)の応力が直角二方向 に作用する。すなわち、パネル中央で、はあらゆる方向に応力を受けることになる。各セル形 状の面材は、図3に示すように面内方向に均等圧縮応力を受ける。(a)正三角形
σ
,/、、、 、 〆F
G
(b)正方形
図3 面材のセル形状と荷重条件
(c)正六角形
セル形状の周囲(多角形の辺)では面材とセル材が接合しているので、たわみ変形が拘束 され座屈による変形は接合部に対して逆対称になると考えられる(図2(b))。この周囲では 面材に垂直な方向の変位が拘束されるとしてモデル化すると、正三角形と正方形の場合の座 屈応力を求める理論式は次式で表されるな5)。
k
. ̲ E
1C2(t ,
2σ =‑‑r 、角1‑1
12(1 -v~
J ¥ α j
ただし、
K n :
n角形が等方向圧縮を受けた場合の座屈係数E:
ヤング率、 v:ポアソン比、t :
面材の板厚、 α:辺の長さ( 4 )
正三角形と正方形については座屈係数
Kn
が理論的に求められており、正三角形のときK3 =
16/3今 5.33、正方形のときK
4=2
となる。正六角形の座屈係数の解析解はないので有 限要素法を利用して次の手順で求めたD まず、正三角形、正方形、正六角形について有限要 素法解析により座屈荷重を求める。正三角形と正方形については上述のように理論値も得ら れるので、これらの値を比較して正六角形の座屈係数を求める。面材の座屈解析において用 いた解析条件を表 1に示す。表1.面材の座屈解析条件
セル形状 │正三角形,正方形,正六角形 面材の板厚t[mm]
I
0.8, 0.1, 0.05辺の長さa[mm]
I
5.0 辺上の分割数I
18表2.面材の座屈解析結果と理論値の比較
セル形状 面材の板厚 座屈応力 座屈係数 座屈係数
t [ m m ] σ
K , [MPa] 得税庁値)κr IC 0.8 6035 3.547正三角形 0.1 140.5 5.287 5.33 (理論値) 0.05 354.1 5.329
0.8 2668 1.569
正方形 0.1 52.41 1.972 2.00 (理論値) 0.05 13.20 1.987
0.8 1021 0.600
正六角形 0.1 18.80 0.707 0.717 (近似値) 0.05 4.730 0.712
53
解析結果と理論値の比較を表2に示す。計算に用いた変位関数の性質により、座屈係数の 数値解析値を理論値と比べると面材の板厚が小さいほど近い値となっている。この中で誤差 の少ない値として面材板厚 0.05m mの正方形の場合の値を基準とし、次の比例式から正六角 形の座屈係数を近似的に求めた。
K4 K6
(5)K4 K6
そして、
K4 = 2 . 0
、K4 = 1 . 987
、K6 = 0 . 7 1 2
からK6 = 0 . 7 1 7
を得た口3. 3 面材が座屈しないための条件
式(3)、式(4)より、面材が座屈しないための条件は次のようになる。
σ m a x <σ
1 7 < Z C } ( : ) '
(6 )この中でセルの一辺の長さである
α
について整理すると次式のような条件が得られる。2
b t
3K ̲ ̲ E
1C2a <
̲1 ̲1 、 (7)3wL'
(1‑v
L Jこの式から、荷重条件 wやパネルの大きさ(支持間隔)Lなどの使用条件をもとにして、
セルの一辺の長さGを決定することができる。
4.セル材の座屈
4. 1 セル材が受ける応力
σ c
セル材は面材を介して圧縮荷重を受ける。鉄道車両用パ ネルにおけるたわみ量は最大でも 2mm程度であり、パネ ル全体の支持間隔が 1m程度であることと比べてたわみ量 は小さい(1)ので、セル材は荷重を均等に分担すると仮定し た。図 4に示すような長方形のセル材が受ける一方向の圧 縮応力は次のように算出する。面材の中の一つの n角形部 分が受けている荷重を院とすれば、セル材は隣接する二 つの n角形部分からそれぞれ Wslnの荷重を分担すること
人
σ
C, / 、 、
、 、 、 〆F
G
図 4 セル材の荷重条件
から、セル材 1枚が受ける圧縮応力は次式で表される。
今 Ws
σ n
二2W
sa t
cn a t
c (8 )また一辺αの正 n角形の面積を考えると、面材が受ける荷重は次式のように表すことができる。
Ws
=K s na2w
(9 )ここで、
Ks n
は正 n角形のセル形状に対応した係数であり、正三角形のときK S 3
=J 3 / 4
、 正方形のときK S 4
=1
、正六角形のときK S 6
= 3J 3
/2 となる。式(9)を式(8)に代入すると、セル材が受ける圧縮応力は次式のようになる。
2 K ̲ ̲ ̲ a w σ
一ー
n t
c
(10)
4. 2 セル材の座屈条件
セル材の周囲 4辺は隣接するセル材や面材と接合しているため変形が拘束される。セル材 の 4辺の境界条件を単純支持としてモデル化すると、一方向圧縮を受けるセル材の座屈応力 は理論式から次のように表される(3‑5)。
σ k = Z 7 : ) ( と ) (11)
ただし、
E:
ヤング率、 y:ポアソン比、 tc:セル材の板厚、。:辺の長さ、
b :
セル材の高さ このとき、セル材の座屈係数Kc
は次式で表される。κ = ( 日 r
Adn一 一 α
一b
(12)ここで、圧縮方向の座屈波形の数mは
λ
の値によって次のように変化する。μ d
のとき、m=1
. f i <
A ,s16
のとき、m=2 16<λ
三J1iのとき、m=3
J1i
< λ
s,J20のとき、m=4
式(12)のλを変化させたときの
Kc
を求 めると図5のようになる。実際の使用状況6
を考えるとフロアパネルなどではλ>4と 5 考えられる。また、安全側をとる意味でも J
Kc
= 4.0と考えてよい。4. 3 セル材が座屈しないための条件 式(10)、(11)より、セル材が座屈しない ための条件は、
σ c < σ
Kcすなわち、
2
K ̲ ̲ ̲ a w K̲E
1C2( , ‑ ,
2叫
<12Q‑v2) い j
4
3 O
λ 図5 セル材の座屈係数
となる。この中で、セル形状を表すαと
t c
について整理すると次式のようになる。a nK̲E
1C2一一<3 I‑‑‑‑‑=‑‑, 、局
tcV 24K s n
WJ ‑ t
VL )4
これによりセノレ材の座屈限界におけるセル形状と荷重条件や材質との関係式が得られた。
5.セル形状とパネル質量の関係
55
5
(13)
(14)
面材の板厚は一定で質量は変化せず、セルの一辺の長さdとセル材の板厚仁を変化させた 場合にはセル材の質量だけが変化する。パネル全体の中のセルの数が極めて多いことから、
パネル全体におけるセル辺長の総合計は次式のようになる。
L
2na nL
2s=
一一一一一・一一=一一一一一K s n a 2
22K s na
したがって、セル材の質量は材料の密度をpとすると次式で表される。
F1btcL2 Adc=ρsbtc=
む し
2K s n
a(15)
(16)
一方、式(14)が等式となるときにセル材の座屈限界となるので代入すると次式となる。
(17)
こ … 座 間 川 河 吋
: J
ヲ 吋 … 山 一 切 角形の角数であり、K
sn~ま正 n 角形のセル形状に対応した係数である。したがって、この値は、セル形状の幾何学的な値で、構成されている。各セル形状について数値を求めたものを図6に示 す。図6の縦軸はハニカムパネルの質量に比例するので、座屈に対して同じ強度を持つ条件で は、正六角形のセル形状がもっとも軽量となることがわかった。
4
•
3
qL
円¥判
(E X¥
C)
• •
。 。
2 3 4 5 6 角数n
図6 角数nと
( n 1 K s J
2I3の関係7
6.結論
本研究では、ハニカムパネルの部分構造で、あるセル形状の座屈強度への影響を検討した。鉄 道車両用フロアパネルを軽量化するためにハニカム構造とする場合に、セル形状が座屈限界に 与える影響を理論式および有限要素法によって検討した。セル形状としては同形状で平面に敷 き詰めることができる、正三角形、正方形、正六角形の3種類について比較した。
( 1 )パネルがたわむことによって面材は面内等方向圧縮を受けると想定し、面材の座屈係数 を求め座屈条件をもとにすることによって、セル一辺の長さを、荷重、面材の材料特性 と板厚、パネルの大きさとの関係式として導出した。
(2)セル材については、一方向圧縮を受ける場合の座屈条件をもとにしてセル形状の条件式 を荷重や材料特性との関係式として導出した。
(3)セル形状を変えた場合のセル材の質量を算出し、セル材の座屈に対する強度を等しくす る条件で、は正六角形のセル形状のときに最も軽量化できることを検証した。
参考文献
( 1 )佐藤孝 (1995)ハニカム構造材料の応用、シーエムシー出版
(2)福原元一 (1992)非鉄金属材料選択のポイント、 (財)日本規格協会 (3)長柱研究委員会資料、弾性安定要覧
(4)寺沢一雄・松浦義一 (1966)材料力学、海文堂出版 ( 5) 日本軽金属株式会社広報資料 (2001)
英文抄録:
E f f e c t o f C e l l S h a p e on B u c k l i n g S t r e n g t h o f L i g h t w e i g h t e d Honeycomb Sandwich P a n e l s
Mitsushi Ohmasa
,
Hiroyuki Sakakibara and Yukio Ueda57
Honeycomb panels are often used as structural members, since they are lightweight and have high rigidity. The most common shape for the cel1s of such panels is hexahedral. Additional shapes th剖
may be appropriate for this pu中oseare the triangle and the square.
In the present paper, the effect on buckling strength of the difference in cell shape is evaluated, as in the case in which honeycomb panels are used for the floorsof railroad cars. The top surface plate divided by the cell shape may buckle under biaxial compression and the cell plates may buckle under uni‑axial compression. In order to evaluate the buckling strength of these plate elements, buckling formulae are prepared based on reference literature, except in the case of the hexagon, the formulae for which are derived using the五niteelement method. When the thickness of the top surface plate and the height of the panel are maintained constant, the thickness and length of a cell plate must be changed in order for the buckling strength of the top surface and that of the cell plates to be equal. The panel mass is evaluated for each cell shape, and it is found that the panel having the hexagonal cel1s is the lightest among panels having triangular, square and hexagonal cells.