建築請負における瑕疵概念について : 裁判例の分 析を中心として
著者 中山 実千代
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 7
ページ 431‑472
発行年 2009‑02‑28
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011645
建築請負における瑕疵概念について四三一同志社法学 六〇巻七号
建築請負における瑕疵概念について ―裁判例の分析を中心として―
中 山 実 千 代
(三四四九)
一 はじめに二 瑕疵の意義三 建築請負における瑕疵判断の類型四 裁判例における瑕疵の認定状況五 裁判例の分析
―
主観説の機能について六 おわりに一 はじめに 建築物は、建築物として通常の利用目的や性質に沿った安全性を備えている必要がある。しかし、一九七〇年以降の
建築請負における瑕疵概念について四三二同志社法学 六〇巻七号
わが国では、欠陥住宅が大きな社会問題となっている (
を路性全安の上造構、はで災震大淡・神阪の年五九九一、たま。 1)
欠くことに起因する建物倒壊による圧死事故が多数報じられている。さらに、二〇〇五年の一連の耐震偽造事件では、最低限の安全性を欠くマンション等が多数存在していることも明らかとなった (
、響はで年、近え加に影の件事のられこ。 2)
アスベスト被害やシックハウス問題とも相俟って、建築物の安全性に対する社会的関心が一層高まっている。
建築物の安全性の欠如という問題への法的対応としては、一九九九年に﹁住宅の品質確保の促進等に関する法律﹂が
成立し、住宅の基本性能を検査する制度(住宅性能表示制度)が設置されるとともに、施行後の新築住宅における一定の瑕疵(主要構造部分と雨水浸入防止部分等)につき、売主・請負人の瑕疵担保責任の期間が引渡しから一〇年と定め
られた (
定。で要必がとこすた満を件要の一りはにるす用適を法同、しだたあ 3)(
え争に決解的法の紛っの種のこ、てとてがないといき大おは、味意つ持が法民ったを消争の全て解するものでない。し 建物築、は法同安のる全性欠如に起因す紛 4)
る (
。 5)
建築物の安全性欠如に起因する紛争の多くは、請負契約における瑕疵担保責任の問題として現れる (
。すなわち、請負 6)
人は、仕事の目的物に瑕疵がある場合、民法六三四条以下の規定に基づき、一定の無過失責任を負う。この責任の法的性質は、一般に、債務不履行責任の特則として理解されている (
念ば概疵瑕の条四三六法民、れよに説学の来従てしそ。 7)
については、ドイツ民法の議論の影響を受けた研究を基礎として、客観説、すなわち目的物が通常有すべき性質の欠如をもって瑕疵とする説と、主観説、すなわち契約上定められた一定の性質の欠如をもって瑕疵とする説の二つが主張さ
れてきた。現在の学説の主流は、主観説である (
るい ( をに立つことら明観かにして説主。三また、二〇〇年もには、最高裁 8)
合で断の基準は、当事者間の疵合意の内容と建築物とが判瑕説なたがって、現在の学と。判例によれば、基本的し 9)
致しているか否かであるといえる。そして実際に、建築請負においては、注文者から様々な希望や指示が述べられるこ
(三四五〇)
建築請負における瑕疵概念について四三三同志社法学 六〇巻七号 とが多いため、瑕疵の判断基準として主観説をとる意義は少なくないと思われる。
しかし翻って考えてみると、大企業が注文者になる場合を除けば、多くの注文者は建築に関する素人であり、契約締
結時に瑕疵判断の基準となる合意を明示しておく能力に欠けるはずである。建築物の設計・施工に関する知識は専門知識に属し、一般人が容易に理解できるものではないからである。その結果として、このような当事者間の合意を書面化
しておくこともまた、一般人にとってはかなり難しいのではないかと推測される。そして、先述のように、多くの注文者は様々な形で自己の希望を請負人に述べることが多いと思われるが、これが注文者の一方的な希望の表明にとどまる
のか、それとも具体的な合意内容にまで高められていると言えるのかの判断もまた、契約内容の書面化が充分ではない場合には、簡単でないはずである。
以上のことからすれば、瑕疵判断の基準として主観説を採用するだけでは、具体的な紛争解決の基準として充分と言えないのではないだろうか。むしろ、契約内容の書面化が充分ではない場合、あるいは合意の内容自体が明らかでない
場合に、どのようにして瑕疵を判断するのかの枠組みを考えておかなければならないはずである。ところが、瑕疵判断につき主観説をとる従来の学説において、建築請負における瑕疵につき、上記のような観点からの検討を行っている学
説は見当たらない。
本稿は、このような問題意識に基づき、建築請負に関する従来の裁判例を検討することによって、実際に実務ではどのような形で瑕疵の存否が判断されているかを明らかにする。この作業によって、建築請負における瑕疵判断につき、
主観説が実際に有効な判断基準として機能しうるのか、そして充分に機能しないとすれば、それを補うべき基準としてどのような枠組みが考えられるのかを考察するための手がかりが得られると思われるからである。
なお、以下の検討に当たっては、建築請負における瑕疵判断の実質的な枠組みを明らかにするうえで有用と思われる
(三四五一)
建築請負における瑕疵概念について四三四同志社法学 六〇巻七号
限りで、請負人の瑕疵担保以外の事案も、適宜考察の対象に含めることにする。民法六三五条ただし書により、土地工
作物については、原則として民法六三五条本文に基づく解除は認められないという制限があるが、この制限の結果として、実質的には瑕疵担保として処理されることが予定されているものであっても、通常の債務不履行として構成する事
案が存在することが、すでに指摘されているからである (
。 10)
以下では、まず、請負の瑕疵概念に関する主要な学説および裁判例による見解を示し(二)、引き続き、従来の裁判
例に現れた瑕疵判断の類型を抽出する(三)。そして、各類型において、裁判例による瑕疵認定の状況を明らかにする(四)。最後に、裁判例における瑕疵の認定の基本的な枠組みを明らかにし、注文者(消費者)保護の視点から、建築請
負における瑕疵概念を検討する(五)。
二 瑕疵の意義 1学説 現在の主要な学説は、一致して主観説の枠組みを採用している。まず、我妻榮教授は、﹁目的物に瑕疵があるとは、 完成された仕事が契約で定めた内容通りでなく、
―
使用価値もしくは交換価値を減少させる欠点があるか、または当事者が予め定めた性質を欠くなど―
不完全な点を有することである (請場と者文注、ばれよに立のこ。るいてしと。﹂ 11)
負人との間で予め定められた内容に反する工事は、当事者間で予め了解していた範囲内の若干の変更がなされた等の場合を除き、瑕疵のある工事と解される。同様に、星野英一教授は、仕事の﹁目的物ニ瑕疵﹂のある場合について、﹁仕
事の結果が契約に定めたところと一致しないことを指す (
合佳の者事当、ずま、﹁は授教男見潮、にらさ。るいてしと﹂ 12)
(三四五二)
建築請負における瑕疵概念について四三五同志社法学 六〇巻七号 意内容を基準に﹃瑕疵﹄の有無を判断した上で、具体的契約から明確な帰結がでてこないときには、当該契約当事者の地位に置かれた合理人ならば契約目的に照らしてどのような品質・性能を期待していたであろうかという観点から﹃瑕 疵﹄の有無を判断すれば足り﹂るとしている (
に要えいとるいてれ入必が。ある場合り客観的基準るこ取在うよえいと説力有の現の、がみ組枠の授教見潮を ( 観る見教授の枠組みにおいては、主説。を前提としつつ、これを補完す潮 13)
。 14)
他方、瑕疵の判断基準について、客観的基準と当事者の合意に基づく基準の双方を並列的に挙げる学説も見られる。たとえば、鳩山秀夫教授は、瑕疵の意義について、目的物が通常有する性質または当事者が特に保有すべきものと定め た性質を欠くために、その物の使用価値または交換価値を減少させるような欠点があるか、あるいは、当事者が予め定めた性質を欠くことをいうとしている (
で欠は、①材料の点疵から生じたものと瑕之。事仕、﹁は授教丞の蔵曲津、たま 15)
あると、仕事を完成するために支出した精神的もしくは肉体的労務の不完全から生じた仕事の疎漏であるとに拘らず、②通常もしくは当事者が契約によって期待していた一定の性状を欠いていたり、③仕事の結果が請負人の保証した性質
を有さなかったり、④それが経済的価値を減ずるような不完全な点があったり、⑤法律上の制限があったりする場合である (
三るし明説らがなし用引を条三い六法民ツイド旧、てしと。﹂て 16)(
目内くじ同と買売、は容の疵瑕、﹁は授教穣田石。 17)
的物の有する欠陥であり、目的物が通常有している品質や性能、あるいは、請負契約において特に表示された品質や性
能を基準にして判断される (
で観す用採をみ組枠の説主ばよせにれずい、しだれ、。性のもなうよのどが質の契定一たれらめ定上約たいなはで確明 こいおに解見のられ、、してし。るいてしか合は関もしず必、は係の﹂と準基的観客と意と 18)
あるのかについて、当事者間における合意内容の確定を行うことが前提となる。
なお、民法六三四条における﹁瑕疵があるとき﹂とは、完成された仕事が契約上具有すべき一定の性質を欠いている
状態をいい、未完成の場合とは区別される。未完成の場合には、注文者は仕事完成の請求権(もともとの注文者の請求
(三四五三)
建築請負における瑕疵概念について四三六同志社法学 六〇巻七号
権)を有するのに対して、瑕疵があるときには、原則として、瑕疵修補請求権を中心とする担保請求を追及しうるにと
どまる。また、仕事の引渡しを要しない請負契約(注文者所有の土地において仕事をなす建築工事の請負は通常このような場合である)では、未完成であれば、報酬支払い義務を拒絶できるが、完成後には、瑕疵あることのみを理由とし
て拒絶できないとされており、効果の上で相違がある (
。 19)
2裁判例 従来の裁判例において用いられている瑕疵の判断基準は、必ずしも統一的ではない。基本的に主観説に立つ裁判例と しては、﹁完成された仕事が契約で定めた内容通りでなく、使用価値若しくは交換価値を減少させる欠点があるか、あるいは当事者が定めた性質を欠くなど、不完全な点を有すること (
内もの定一が人負請、やのす示てし用引を説妻我と﹂ 20)
容を保証していた場合につき、﹁仕事の結果が請負人の保証した性質を有せず、通常若しくは当事者が契約によって期待していた一定の性状を完全には備えないこと (
か説ら明が容内約契、もつつち立に観あ﹂、しだた。る主がのもす示と 21)
でない場合には、少なくとも﹁社会通念上最低限期待される建物の性状 (
等年られこ、はで近連。いなくな少が一のもせ書図計設、﹁てさ見化体具りよを解のす欠に容をく工示事瑕疵があると るなに容法内約契しと令て、建築基準﹂の内が 22)
によって明示された当事者の合意に反する工事が施工された場合はもちろん、当事者の明示の合意がなくても、請負の目的物が通常備えるべき品質、性能を有することは黙示に合意されているとみるべきであるから、建築基準法令等の建
築関係法令に定められた技術基準の外、住宅金融公庫融資住宅仕様書(公庫基準)や日本建築学会の建築工事標準仕様書で指定された技術水準を具備していない場合にも、瑕疵があるということができる (
。﹂と示すものもある。 23)
ただし、建築工事(仕事の目的物)が未完成である場合、瑕疵による担保責任があるとして取り扱わずに、債務不履
(三四五四)
建築請負における瑕疵概念について四三七同志社法学 六〇巻七号 行責任によって処理する見解が一般的である。多数の見解では、仕事が未完成である場合と完成されたが瑕疵がある場合との区別について、契約で予定された最後の工程を終えない場合が仕事の未完成であり、工事が予定された工程まで 一応終了したが、不完全なため修補を加えなければ完全なものとならない場合を瑕疵ある工事としている (
。 24)
以上の裁判例では、目的物がある一定の合意された性質を欠く場合に瑕疵があると示しており、学説と同じく主観説 の立場をとっている。そして、瑕疵判断の際には、﹁まず契約によって定められた仕事の具体的内容が何であったかを図面や見積書、当事者間の了解事項等で確定する必要があり (
で取何がのもたし待期、め決が者事当約契、﹁はいるあ﹂、 25)
あったかを設計図、仕様書、見積書等契約内容を明らかにする資料から確定する必要がある (
、者って、瑕疵判断の基準は、当事間たにおける合意内容を確定した後がし定あ容の確。重要でがるとを示しているこ 、しており内先ず合意﹂と 26)
建築物が設計図や仕様書等によって具体的に定められた合意内容どおりに施工されているか否かであり、これが明らかでない場合、建築物が建築基準法令等の客観的な基準により通常備えるべき性質を具備しているか否かである (
。 27)
三 建築請負における瑕疵判断の類型 1確の容内意合るおけに約契負請築建定 現在の主要な学説・裁判例の見解による﹁瑕疵﹂の概念は、目的物が契約で定めた内容を欠くことであり、合意内容
が明らかでない場合、客観的に通常備えるべき性質を欠くことであると示される。この立場によれば、瑕疵判断の際には、先立って、契約によって定められた仕事の具体的内容(=合意内容)が何であったのかを確定せねばならない。こ
の合意内容を確定する作業によって、合意に含まれている瑕疵判断の基準が明らかになる。ただし、建築請負契約では、
(三四五五)
建築請負における瑕疵概念について四三八同志社法学 六〇巻七号
当事者間での合意の要素となるものにつき、口頭によるもの、設計図によるもの、見積書によるもの等と様々であり、
その明確さも様々であるため、合意内容を確定する場面において複雑さ・困難さを伴う。
建築請負契約の実態では、坪単価や一式見積りだけの提示で契約がなされることも多く (
、個人向けの住宅建築では、 28)
正確な設計図書がないまま契約が締結されるケースも少なくない (
おれ努力義務規定とさて契請り、契約書のない負約築らるす因起にとこいななもはに効無でけだれそ建 ( 条がれは、建設業法一九に。定める契約書作成義務こ 29)
。設計施工を一 30)
括して受注する中小建築業者の大半と注文者との間では、工事代金に関する合意と建物の平面図に関する合意のみしか存在しないことが多い (
、請な個人住宅の建築負規に用いられることは模小関がた、建築請負にす。る各種の共通約款ま 31)
ほとんどないとされている (
際六請申の認確築建)、条第に法準基築建(がいな時はな認実にうよいすや得を確、築建てっよに人負請らばけ受をね 法建築建定予に前築で、は事工築建、にら物令がの)認確築建(査審か。るいてし合適に等さ 32)
の契約内容と異なる図面等が添付されることもある (
後た文者がすを絶なるい実態もあり注 ( 法求要を築建違間、して、建物内の広い取。りを確保するためにそ 33)
注もを要する場面見慎られる。なお、重き内つ事者での合意容、の取り扱いに当 34)
文者の資金調達方法によっては、建築工事にあたり、融資側から提示される担保価値の確保のための設計基準・仕様書(旧住宅金融公庫の公庫基準あるいは住宅支援機構の設計基準など)を利用せねばならない。こうしたなか、当事者間
において変更合意や追加合意が加われば、より一層合意内容の特定がしにくくなる。
請負に関する建築瑕疵紛争では、このような実態のいずれかまたは複数を併せているケースがほとんどである。当事
者間での合意内容が不明確であればあるほど、瑕疵判断の基準を抽出するのが困難となる。この点につき、裁判例では、﹁建築請負契約は、極めて大雑把な契約文書しか備えず、また口頭によるものも少なくなく、契約当事者の意図の客観
的な再現が極めて困難なものが多い。そうなると、結局工事目的物の性質・種類、契約締結時の事情、請負代金額、工
(三四五六)
建築請負における瑕疵概念について四三九同志社法学 六〇巻七号 事目的物についての法令制限、当事者の意図など諸般の事情を考慮してこれを決するほかはない (
。案るいてし示を性要必の勘な的 合総、りおてしと。﹂ 35)
なお、建築工事には、技術上や生産システム上の問題も伴うため (
で日とるなに能可後っがとこたっあでいた可、額高が金代事工や技性対相の準水術能不。、ない例えはば当時の技術で 瑕てせ併せも題問の判疵ね断の際に考慮、ばならこ 36)
さえあれば技術的に対処可能であるといった金額との相対性等が挙げられる。
このように、建築請負において合意内容を確定させ、合意に含まれる瑕疵判断の基準を抽出するには、様々な事情を
検討せねばならない。多くの紛争においては、当事者間での合意に含まれる瑕疵判断の基準を特定しにくいといえる。実のところ、瑕疵を判断するに当たっては、当事者間での合意内容を確定させ、合意に含まれる瑕疵判断の基準を明確
にすることが最も困難なのである。
2瑕疵判断の類型 本来、建築請負契約では、当事者間における合意内容を何らかの客観的指標により明示的にした上で、請負人の仕事
に関する具体的内容を特定しておくべきである。しかし、先述のとおり、むしろ合意内容が不明確な場合も多い。その
ため、確定された当事者間での合意内容の性質によって、瑕疵判断の基準に関する具体性が異なってくる。建築請負における瑕疵を判断するに当たっては、少なくとも、次の四つの瑕疵判断の類型がある。
⑴ 具体的な瑕疵判断の基準が合意内容に含まれている場合 具体的な瑕疵判断の基準が合意内容に含まれている場合、最も明確で詳細な瑕疵判断が可能である。例えば、当事者
(三四五七)
建築請負における瑕疵概念について四四〇同志社法学 六〇巻七号
間において、建築物にバリアフリー性を備えるという合意がなされ、その具体的方法が仕様書等によって明示されてい
る場合がある。このような場合、具体的な瑕疵判断の基準を含む合意の内容が客観的指標によって示されているため、瑕疵判断の基準は、建築物が仕様書どおりの施工によってバリアフリー性を備えているか否かである。仮に、建築物が
一定のバリアフリー性を備えていたとしても、仕様書どおりの施工がなされていなければ、その工事は瑕疵のあるものとなる。
⑵ 瑕疵判断の基準となる合意の存在のみが明確な場合 瑕疵判断の基準となる合意の存在は明確であるが、請負人の仕事完成の方法等を特定していない場合、合意に含まれる瑕疵の判断の基準は、先述の⑴よりも具体性に欠ける。例えば、当事者間において、建築物にバリアフリー性を備え
るとだけ合意される場合がある。このような場合、どのようなバリアフリー性を備えていればよいのかが具体的でなく、当事者間において合意したバリアフリー性は、どのような内容であったのかを客観的に考察せねばならない。当事者間
において、バリアフリー性に関する個々の性能が明示されていなければ、原則として、一般的・標準的とされる客観的基準を参照して瑕疵が判断される。仮に、当事者間において、バリアフリー性に関する何らかの個別性能を特定してい
たとしても、当該性能を満たす具体的方法は特定されていないため、当該性能を満たすか否かについては、何らかの客観的基準を参照して瑕疵を判断せねばならない。建築物にバリアフリー性を備えるという合意の存在のみによって瑕疵
を判断するのは、やや困難さを伴うことになる。
(三四五八)
建築請負における瑕疵概念について四四一同志社法学 六〇巻七号 ⑶ 瑕疵判断の基準となる合意の存否が不明確な場合 瑕疵判断の基準となる合意の存否が不明確な場合、瑕疵判断の基準が最も限定的なものとなる。例えば、当事者間に
おいて、建築物にバリアフリー性を備えるという合意の存否が不明確な場合がある。このような場合、当事者間において、バリアフリー性に関する合意が存在した(あるいは、当事者間において認識し得た)と解されれば、瑕疵判断の基
準は、建築物がバリアフリー性を備えているか否かである(先述の⑵と類似する)。ただし、当事者間において、バリアフリー性に関する合意が存在しなかったと解されれば、建築物にバリアフリー性を備えるという瑕疵判断の基準は排
斥される。基本的には、建築物にバリアフリー性を備えるという合意の存否が不明確であれば、請負人が自認している場合を除き、合意の存在に関する事実認定が困難であるため、バリアフリー性を欠く工事について瑕疵を認めることが
できない。
⑷ あえて瑕疵担保の構成をとらずに債務不履行の構成をとる場合 未だ﹁仕事の完成﹂に至っておらず、注文者がもはや請負人の仕事の完成を必要としない場合には、債務不履行に基
づく処理も可能である。民法六三五条のただし書きにより、土地工作物については、原則として民法六三五条本文に基
づく解除は認められないという制限がある。この制限の結果として、実質的には瑕疵担保として処理することが予定されているものであっても、通常の債務不履行として構成するものがある。例えば、当事者間において、建築物にバリア
フリー性を備えるという合意が存在したにもかかわらず、建築物にバリアフリー性を備えることがもはや不可能な状態で工事終了を迎える場合がある。このような場合、限定的ではあるが、請負人が予定の工程を終了していたとしても、
未だ﹁仕事の完成﹂に至っていないとして扱い、債務不履行として契約を解除するものがある。換言すれば、民法六三
(三四五九)
建築請負における瑕疵概念について四四二同志社法学 六〇巻七号
五条のただし書きの規定を回避する手法がある。
四 裁判例における瑕疵の認定状況 1場るいてれま含に容内意が合準基の断判疵瑕な的体具合
⑴ 具体的な瑕疵判断の基準を用いる場合 【
1厚では、設計図と比べてさ頁や幅の少ない粗雑な基)六】月東京地判昭和四四年三八五日(判例時報五六四号礎
工事がなされた点に瑕疵を認めており、﹁請負人たる原告が保証し注文者たる被告が期待していた設計図のとおり基礎工事ではなかったものであるから、仕事の瑕疵というべき﹂としている。【
2年判(日一二月九八】四和昭判高京東例
時報七二四号三五頁)では、坪単価八万円と合意したのに坪単価五万五千円を超えない程度の建物しか建築されなかった点につき瑕疵を認めており、﹁建物の客観的価値はたかだか坪単価五万五千円に過ぎず、契約で定められていたとこ
ろよりはるかに価値の劣るものであったというのであるから、かような場合は、とりもなおさず、民法六三四条にいう﹃仕事の目的物に瑕疵がある﹄場合に該当するものというべきである﹂としている。【
3】大阪地判昭和五九年一二月二
六日(判例タイムズ五四八号一八一頁)では、当事者間において、﹁公庫基準に適合することを内容とする本件請負契約を締結した﹂ことが明示的であったため、公庫基準に反する基礎、使用木材、床下地盤高等に瑕疵を認めている。
【
注をが人負請、りおてめ認疵本瑕きつに庫車たっかな﹁件で施を容内事工ういと﹂工の乗庫車な能可庫出入が車用き庫 4四三一四一報時例判(日一七月六年三成平判地京東号】出所入が車動自たいてし有時頁当のそが者文注、はで)八
文者に保証し、結局それを実現できなかったのであるから、﹁この種契約に基づいてなされた工事としては受容されな
(三四六〇)
建築請負における瑕疵概念について四四三同志社法学 六〇巻七号 いもので瑕疵ある工事というべきである﹂としている。本事案の車庫は、車庫としての通常の性能・機能は果たしているものの、注文者所有の自動車が入出庫できない点で瑕疵を認めたものであり、主観的瑕疵の一つの典型例を示してい
る。【
食るてめ認を疵瑕きつに点いりてっ回上を定規たれさお、記将腐のトーリクンコに来も現てくなは障支ら何に在載で書 5八四一報時例判(日一月二二一年四成平判地京東五】号の様仕記特が量有含分塩ト一ーリクンコ、はで)頁四
を及ぼす虞があるとして、﹁明らかに契約の趣旨に副わないもの﹂としている。【
設文)は、身長一三七㎝の小柄な注主二様の物建るあで仕が準標ーカーメ頁四消欠費者のための陥(住宅判例第三集三 6日〇三月〇一年三一成平判地都京】
計・設備では諸々の不自由を強いられることになる点につき瑕疵を認めており、請負人が﹁設備等を原告の身長に適合した高さに取付ける﹂旨の依頼を受け、これを了承したのであるから、﹁設備の設置等について、可能な限り原告の身
長や年齢に配慮した設計、施工をすることが本件請負契約の一内容となっていた﹂として、注文者にとって出窓の鍵が届かない、玄関の覗きアイが覗けない等の数々の設計・施工につき、﹁本件請負工事の設計の瑕疵に当たるというべき
である﹂、あるいは、﹁契約に違反する瑕疵であるとの評価を免れない﹂としている。【
しででは、設計図記載どおりの商品は集ない現場取付け品が屋上笠木と)例高ム最判裁判所ホーペ日ージ下級裁判所( 7八月四年五一成平判地戸神】
て施工された点につき、設計図と相違しており、豪雨や風向きによっては水を呼び込む虞が生じるとして瑕疵を認めて
いる。【
主震性全安りよで点の性耐高、が者文注たいてっなのい質×を骨鉄い太の㎜〇〇三㎜建〇〇三、めたるすに物に経神に 8最日〇四八一報時例判(〇判号月〇一年五一成平一】一に性全安の物建てっよ災頁震大路淡・神阪、は)八
柱に使用することを請負人と約定したところ、請負人が注文者の了解を得ないまま二五〇㎜×二五〇㎜の鉄骨を使用したことに対して、構造計算上で安全性に問題がなかったものの瑕疵を認めたものである。本事案では、﹁前記事実関係
によれば、本件請負契約においては、上告人及び被上告人の間で、本件建物の耐震性を高め、南棟の主柱につき断面の
(三四六一)
建築請負における瑕疵概念について四四四同志社法学 六〇巻七号
寸法三〇〇㎜×三〇〇㎜の鉄骨を使用することが、特に約定され、これが契約の重要な内容になっていたというべきで
ある。そうすると、この約定に違反して、同二五〇㎜×二五〇㎜の鉄骨を使用して施工された南棟の主柱の工事には、瑕疵があるものというべきである﹂としている。【
9日宅住陥欠のめたの者費消(七】二月〇一年七一成平判高島広判
例第四集四一六頁)では、注文者と請負人との間で建物の基礎コンクリート・コアの圧縮強度を二一
六縮・六一に的分部は度強圧の際実、ろ N/㎟とことたし定約 N/㎟~二九・二
N/㎟て二ていおに分部の全の、りおてっなと囲範一
N/㎟になっていな
かった点に瑕疵を認めている。少なくとも、圧縮強度が一六
八基、他の客観的準なでも圧縮強度一く N/㎟壊振あれば地震や台風等の動すや衝撃で倒は性険でる危 N/㎟事二ていおに分部のて全、はで案本を、ろことるいてしと﹂的般一﹁一
N/㎟で
ない点につき、﹁合意内容に反するという相対的な瑕疵である﹂としている。【
ネホヒデルアムルがの者文注、はでト発頁をエ省たし用使料生材たえさおを)六費住のための欠陥宅〇判例第四集二者 10消一大阪地判平成八(年二月二三日】
住宅を建てるため、請負人と屋根裏下地防水シート材にルフタイトと呼ばれる素材を使用するよう仕様書で約定したところ、請負人が注文者の了解を得ないままアスファルトルーフィングを使用した点に瑕疵を認めている。ルフタイトは、
VOCを含有しない素材であり、一方で、アスファルトルーフィングは、VOCを含んでいるものの防水機能に優れており危険性も少ない素材であるとして、法令により使用を禁止されていない。また、ルフタイトは発売開始されたばか
りで未だ施工実績がほとんどない素材であり、発売以前は通常アスファルトルーフィングの使用が一般的であったところ、﹁本件請負契約における約定に違反して、集熱側の屋根裏防水シートに﹃ルフタイト﹄ではなくアスファルトルー
フィングを使用して施工した点については、瑕疵があるものというべきである﹂としている。
(三四六二)
建築請負における瑕疵概念について四四五同志社法学 六〇巻七号 ⑵ 合意内容が限定的に解釈される場合 注文者が違法建築に関与している場合、契約時の当事者の意思がどうであったのかが、慎重に推し量られている。
【
11六稿本(日四一月年】三成平判地京東【
で(不光採が)庫車分と部階一の物建に的良な結認案事本。るいてめをっ疵瑕、きつに点た果、をい頼依に人負請し旨 4法違が注者文案、はで)築事の建】でも構わなから是非建築して欲しい
は、﹁発注者の指示とは、拘束力を持つものでなければならず、単に発注者が希望を述べ、請負人がこれに従ったというだけでは、指示によったということはできない﹂とし、﹁発注者が誤った指示をした場合であっても、請負人がその
ことを知っているときは、それを発注者に知らせ、それを改める機会を与えるべきである。それをせず、漫然とその指示に従い瑕疵工事をした場合、請負人は瑕疵担保責任を免れない(民法六三六条)のであって、請負人が建築工事の専
門家として少しの注意を払えば知りえたのに、重大な過失によって知らず、誤った指示により工事をした場合も同様というべきである﹂としている。【
12判めの欠陥住宅例の第一集四一二頁た者】〇大阪高判平成一年費一二月一日(消)
では、注文者自らが建ぺい率、容積率違反の建物の建築を要望したことを認めていたが、建物が法令上の耐火性能を欠く点等に瑕疵を認めている。本事案では、法令違反となる瑕疵につき、﹁建ぺい率、容積率違反の建物の建築を強行し
たため、資格を有する工事監理者を付けることができなかったことにもその原因があるが、最も大きな原因は、被控訴
人に本件建物の種類、構造、規模を有する建物の建築経験がなく、耐火構造その他本件建物に備わるべき構造仕様につき建築基準法を全く知らなかったことにあるべきというべきである﹂とした上で、注文者の指示は﹁せいぜい外観、間
取り程度の範囲に過ぎないものというべきである﹂としている。同様に、【
、建建の法準基築がいら自者文注、ぺ率で了がたいてし承き、つに反違率積容も)欠判めの頁陥住宅例の第一集三九四た 13一神戸地判平成一】年七月七日(消費者
建物が法令上の耐火性能を欠く点等に瑕疵を認めている。本事案では、﹁本件建物には、前記のように建築基準法に違
(三四六三)
建築請負における瑕疵概念について四四六同志社法学 六〇巻七号
反する各点が存するところ、右違反事項を工事内容として明示した契約書等の書面が作成されているわけではなく(建
ぺい率等の原告自認の点を除く)、また、一般に建築請負契約の当事者間においては、明示するか否かにかかわらず最低限建築基準法に適合する工事を施工する旨の合意をするのが通常であり、また、一般に注文主において建築基準法等
の規制法規の内容を把握していることは通常はない一方、請負業者にはその知識があることが一般であることからして、前記建築基準法違反の諸点については、原告において建築基準法等に違反することを理解した上でなおそのような
指示をし、被告の施工内容はこれに基づくものであることを、被告が立証しない限り、瑕疵修補請求の対象となる瑕疵があるものと認めるべきものと解される﹂としている。
2場な確明がみの在存の合意るなと準基の断判疵瑕合 【 事者地﹁で間のと人負請が文や注るす配心を害被るよ震台下が工礎基なうよいなれ崩物風建もてき起が災天の等に沈同 14のめたの者費消(日〇二月一一年四一成平判地戸神欠】住は不や害被るよに震地、で宅)頁六九二集三第例判陥
を行う﹂との合意を明示的にしていたところ、請負人が底盤幅を通常よりも幅広としただけの設計を行い、阪神・淡路大震災により基礎部分が大きく損傷してしまったため、基礎工事の瑕疵を認めている。本事案では、﹁本件建物敷地北
側の
て止をとこ﹂るいてれらめい実食で限小最が害被、に事認たでれ免を傷損が家隣るあ況定状盤地の様同ぼほ、しめたい Cあが壁擁のさ高じ同ぼほと地敷物建件本に側東、はり邸敷がてれさ工施で礎基杭、る地いてじ生が下沈同不の、
いる状況を瑕疵判断に反映させている。【
こ仕用使てしと屋部事﹁るを部一の室居の物す﹂が明とたいてしに的示にと人負請を的目うい建者注、はで)集例判文 15四二月二一年地一成平判日幌札七】(ー所判裁級下ジペ最ムーホ判裁高所
ろ、請負人が一般的な居室用の床工事を行い、注文者がキャスター付きのイスを使用することにより床が剥離してしま
(三四六四)
建築請負における瑕疵概念について四四七同志社法学 六〇巻七号 ったため、床工事につき瑕疵を認めている。本事案では、﹁仕事部屋として使用する以上、キャスター付きイスを使用することは特別な使用方法とはいえず﹂とした上で、請負人が﹁キャスター付きのイスの使用にも耐えうるような床材
を選択・使用すべきであった﹂としている。【
のにグマるれさ想予実チ確来将﹁ていおにニュ者耐性震耐のけだるえにー震地大海東の八ド間事、はで)頁八七三集当 16六二月五年京一成平判地日東七】(消費者のめの欠陥住宅判例第四た
ある建物﹂、﹁音楽鑑賞、ピアノ演奏、独唱を楽しむため等の防音室の設置をすること、通行人の話し声からの遮音、雑音からの遮音、防音室から他室へのピアノ、音楽鑑賞、歌声の遮音﹂という合意を明示的にしていたところ、地盤につ
いて、ボーイング調査、スウェーデン式サウンディング検査等を経た結果により﹁致命的な欠陥﹂があるとされ、防音室について、日本建築学会の遮音性能等級により特級の水準に至っていないとして﹁致命的な欠陥﹂があるとされてい
る。
3場な確明不が否存の意合るなと準基の断判疵瑕合 瑕疵判断の基準となる合意の存否および内容が明確でない場合、裁判例では、当事者間での意思解釈を様々な形で示
している。
⑴ 契約全体の趣旨から瑕疵を判断する場合 【 らみ不過濾が水たれらげ上汲能、ていおに事工げ上み可なのに得を質水の定一たし適業有営、りおでん含を物機汲水下 17事民所判裁級下(日一三月〇一年六三和昭判地阪大裁】例)地ので設施場浴、はで頁集九二六二号〇一巻二一判
れなかった点に瑕疵を認めている。本事案では、浴場施設における請負契約であったことから、﹁注文者が浴場を経営
(三四六五)
建築請負における瑕疵概念について四四八同志社法学 六〇巻七号
する者であり、本件の工事が浴場営業用水の鑿井を目的としている﹂ことに鑑みて、﹁契約全体の趣旨より考えて浴場
の営業用水に適する水質であることを除外されていたと認めることはできない﹂としている。【
点とは、いわゆる﹁心理的瑕疵﹂し)て、鬼門に便所が設置されたで頁日タ六月二二二(判例イ四ムズ三九七号一〇年 18五和昭判地屋古名】
に瑕疵を認めている。本事案は、設置された便所の方位について、設計図作成前の段階で当初予定していた便所の位置では鬼門の方角になるという注文者の意見によって、便所の位置が変更され施工されたところ、結局変更された位置で
も鬼門にあたってしまったという経緯をもつ。そこで、﹁鬼門の嫌忌は、建物の構造、性状そのものについての欠陥ではなく、あくまでも心理的、精神的なものであるけれども、建物の構造ないし間取の位置に関連してその入居者に不幸、
病難が起こるかもしれないとの不安、懸念を与え、心理的な圧迫感をもたらすものであること﹂を否定し難いとし、﹁建築関係者においても家屋建築上この習俗的嫌忌を避止すべきものとして認識されている﹂こと、および注文者も﹁鬼門
を避けるつもり﹂でいたことが認められるとして、目的物の瑕疵に該当すると解するのが相当としている。【
るおでは、マンション建築にい頁て、高齢で身体障害者であ)七日(平成六年三月二九一判地例タイムズ八六八号二判 19京東】
注文者が完成後に居住していたところ、開扉後四〇秒経過すると閉扉する玄関自動ドアの開扉時に転倒して負傷したため、そのドア工事の瑕疵を争ったが、瑕疵を否定している。本事案では、当事者間における契約目的について、注文者
が認識する身障者や高齢者向けのマンション建築であったのか、それとも請負人が認識する外国人向け高級マンションであったのかを、契約全体の趣旨に及んで検討している。本事案では、当事者間での打ち合わせ時において、玄関の車
椅子用スロープを除き、他に身障者や高齢者の居住の便を考慮する内容が注文者から発注されていなかったことから、請負人は注文者の主張する特化した目的を認識できないとしている。本件ドア工事については、﹁身障者や高齢者の使
用に特別な配慮をすべきような場合には、その設置に問題がないとは言い難い(身障者や高齢者がドアと接触する位置
(三四六六)
建築請負における瑕疵概念について四四九同志社法学 六〇巻七号 において、身体の自由を失ったような場合には、危険な状態となろう)﹂としたものの、﹁本件ドアを設置するにつき、身障者や高齢者の使用を専らにするなど特段の事情ないし合意があったとは認め難い﹂として、通常の使用形態におい
て危険性がないために瑕疵はないと示している。
⑵ 注文者の期待を請負人が保証すべきとして瑕疵を判断する場合 【 20年稿本(日八月三四】四和昭判地京東【
1南くながのもるぎえさに帯一方が】造構置位の物建、はで)案事の、
傾斜をなして川に至るという特殊性を有しているところ、﹁我国においては例年九月前後に台風が襲来しかなりの風雨にみまわれること公知の事実であるから、異例空前の大台風であって簡易建築はおおかた倒壊破損するような場合以外
通常の台風には耐えうるものと期待するのが通常であり、その故にこそ請負人も右の程度の耐風性は注文者に対して保証するのが合理的である﹂として、建物の位置構造の特殊性にみあった屋根工事をしなかった点に瑕疵を認めている (
。 37)
【
配がを疵瑕に点るいてじ生等め裂亀や凸凹に面壁、れ認てな約右はで内囲範の額金定、いしも、﹁はで案事本。るさが 21二八七五報時例判(日四月六九年四四和昭判地阪大号】事と工官左な雑粗に由理をこ頁い安が金代事工、はで)二
慮を尽くすことが採算上困難であるならば、その旨を施主に告げてその判断を仰ぐべきが信義則上当然期待される﹂と
しており、﹁たとえ本件工事が格安であったにしても、原告において右代金を承知の上本件工事の完成を約している以上、被告がその仕事の性質にかなった一定の出来映えを期待するのは当然であり、又社会通念上予定された性状は最低
限これが保証されるべきである﹂と示している。【
22一載登未集例判(日四二月〇年】一六和昭判支郷西裁地江松 (
宅と万円)に鑑みると、注文者し三ては少なくとも一般庶民住七りるた﹁契約締結時におけ請負代金九〇〇万円(坪当 )、はで 38)
を対象とする公庫仕様書を下ることはないと期待するのが通常であるから、明示がない事項については公庫仕様書の工
(三四六七)
建築請負における瑕疵概念について四五〇同志社法学 六〇巻七号
事施工基準に照らして瑕疵の有無を判断するのが合理的である﹂として、公庫基準に反する施工部分に瑕疵を認めてい
る。
⑶ 瑕疵判断の基準となる合意の存在を推認して瑕疵を判断する場合 【 23建)では、﹁建築基準法は築四物の構造設備等に関す頁四】月東京地判昭和四七年二二号九日(判例時報六七六る
最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とし(同法一条)建築主に一定の建築物につき着工前にいわゆる建築確認を義務づけ(同法六条)、建築主に対し完工後建築主
事から検査済証の交付を受けてその後使用を許容し(同法七条)、特定行政庁は法令の基準に違反した建築物につきその建築主、請負人に対し、工事の施工の停止又は違反の是正のため必要な措置をとることを命じることができ(同法九
条)、法令の基準に違反した建築につき関係者に刑罰が科される(同法九八条ないし一〇二条)のである。⋮⋮建築主は建築基準法の定める最低基準に達しない建築設計につき着工前の建築確認を得られず、又同様の建築工事につき完工
後検査済証の交付を受けられず、その使用を許されないのであるから、かような設計および工事によっては、設計請負契約、工事請負契約をした目的を遂げることはできない﹂とした上で、﹁契約当事者がとくに建築基準法所定の最低基
準と異なるような設計・工事を契約したと認められるような特段の事情のない限り、契約当事者は同法所定の最低基準による意思を有したと推認するのが相当とする﹂とし、法令に反する防火扉の工事に瑕疵を認めている。【
24】神戸地
判昭和六三年五月三〇日(判例時報一二九七号一〇九頁)では、﹁建物の建築工事において、契約の内容が不明確な場合は、当事者間には少なくとも建築基準法の﹃第二章建築物の敷地、構造及び建築設備﹄(同法施行命令の関係部分を
含む。)に適合した建築工事をする合意ができたものと推認するのが相当であり、同法に適合しないことは建築工事に
(三四六八)
建築請負における瑕疵概念について四五一同志社法学 六〇巻七号 瑕疵があるというべきである。蓋し、建築基準法第二章は、建築物が安全であるための構造等に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的とし、国民にその遵守を定めているからである﹂として、基
礎や軸組構造が法定による安全性を欠く点に瑕疵を認めている。【
定﹃地敷の物築建が構法準基築建、﹁は、造)るを準基の低最す設関に途用び及備で頁欠め一三集二第例判宅住陥四の 25京都地一判平成一二年】一月二二日(消者のた費
めて国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的﹄としていること(法一条)、違反建築物が強行されたときには、特定行政庁は、工事の停止、建築物の除去命令等をなし得(法九条)、法に違反し
た建築に付き関係者の刑罰が科せられる(法九八条ないし一〇二条)こと等に鑑みると、当事者間で、特に法が定める最低限の基準と異なる契約をしたと認められるような特段の事情のない限り、法、施行令ないし具体化した技術基準に
適合した建築をする旨の合意があったと推認すべき﹂として、法令や技術基準に違反する部分につき、交換価値や使用価値を減少させるものとして瑕疵と評価している。
⑷ 瑕疵判断の基準となる合意が黙示に存在したとして瑕疵を判断する場合 【 26五稿本(日〇三月年】三六和昭判地戸神【
24くえ備常通が物的目の負請もてな】が約特の示明、﹁はで)案事のる
べき品質・性能を具備することも黙示に合意されているとみるべきであり、建物の建築工事において、雨漏りや顕著な壁の亀裂、柱の傾き、床の不陸があれば、仕事の目的物に瑕疵があるということになる﹂とした上で、本件建物には一、
二階共に床面の傾斜・不陸があり、その程度は静止させたラムネの玉が自然に転がり出すほどであるという事実認定を行い、﹁本件建物には、床面が水平であるという建物が通常備えるべき品質・性能を欠いているから、本件請負契約(黙
示の合意)違反の瑕疵があるというべきである﹂としている。【
27二めたの者費消(日五月】三年〇一成平判地本熊の
(三四六九)
建築請負における瑕疵概念について四五二同志社法学 六〇巻七号
欠陥住宅判例第一集二〇四頁)では、﹁当事者の明示の合意がなくても、請負の目的物が通常備えるべき品質、性能を
有することは黙示に合意されていると見るべきであるから、建築基準法令等の建築関係法令に定められた技術基準の外、住宅金融公庫融資住宅仕様書(公庫仕様書)や日本建築学会の建築工事標準仕様書で指定された技術水準を具備し
ていない場合にも、瑕疵があるということができる﹂として、掲げた客観的基準を並列的に瑕疵判断の基準に用いて、それに反する部分につき瑕疵を認めている。【
28一住陥欠のめたの者費消(日一月】五年八一成平判支訪諏裁地野長宅
判例第四集五二六頁)では、﹁設計図やその他の設計図書によって明示されていなくとも、建築基準法及びその関連法規によって要求される事柄は建築物に要求される最低限の要素であり、日本建築学会の定める標準仕様書(JASSと
いわれるもの)の内容は、慣例上、建築社会において建築工事を行うについての基準とされているものであるから、注文者と請負人との間では、明示の合意がなくとも、建築されるべき建物が建築基準法及びその関連法規を遵守し、日本
建築学会の定める標準仕様書に合致すべきことは黙示に合意しているというべきである﹂として、掲げた客観的基準との齟齬が法律上の﹁瑕疵﹂にあたるとしている。
⑸ 直ちに客観的基準を用いて瑕疵を判断する場合 【 にンを準基的観客の等ータセち築建本日、会協災防築直に本こ等針指や準基術技られ、瑕てい用てしと準基断判疵建日 29月めたの者費消(日〇三一欠一年三一成平判地戸神の】、は会学築建本日、令法、で住)頁六六四集二第例判宅陥
反する部分を瑕疵として認めており、建て替えが妥当と述べている。【
し令学築建本日、法等、はで)頁六会の四瑕と準基断判疵に客ち直を準基的観二集者(第例判宅住陥欠のめたの二費消 30横平浜地裁川崎支判】成一三年一二月二日〇
て用いて、これら技術基準等に反する部分を瑕疵として認めており、取り壊した上で再築するしかないと述べている。
(三四七〇)
建築請負における瑕疵概念について四五三同志社法学 六〇巻七号 【
、まを表覧一疵瑕たし用利ま付のそを表理整点争たし添し提載てしとるあでりおとの記て紙別は否存の疵瑕、りお出の 31四者費消(日〇一月五年一た成平判支関一裁地岡盛の】者頁文注に文決判、はで)六の〇二集三第例判宅住陥欠め
法令、日本建築学会、公庫仕様書等の客観的基準を直ちに瑕疵判断基準として用いながら、これら技術基準等に反する部分を瑕疵として認定している。【
32判めの欠陥住宅例の第三集二五二頁た者】四京都地判平成一年費七月一五日(消)
では、法令、建設省告示という客観的基準を直ちに瑕疵判断の基準として用いて、それに反する部分に瑕疵を認定し、解体・除去の上で再築するしかないと述べている。
4場るとを成構の行履不務債にずらとを成構の保担疵瑕てえあ合 【 理体の事工き抜手るたわに全め、がたいてっ整応一もたに外るをれこ、し明判がとこあ回のスミ工施いたがし復観のて 33二一四一報時例判(日一二月〇一年三成平判高京東号】〇外しと物建、りわ備も壁て九経を式棟上、はで)頁一
由に注文者が履行不能により契約を解除している。本事案では、﹁民法六三五条によれば、建物その他土地の工作物に関する請負契約においては、仕事の目的物に契約の目的を達成することができないような重大な瑕疵がある場合であっ
ても、注文者は、その請負契約を解除することができない旨規定している。しかし、右の規定は、仕事の目的物が建物
等である場合に、目的物が完成した後に請負契約を解除することを認めると、請負人にとって過酷な結果が生じるばかりか、社会経済的にも損失が大きいことから、注文者は、修補が不能であっても損害の賠償によって満足すべきである
との趣旨によるものであって、仕事の目的物である建物等が社会経済的な見地から判断して契約の目的に従った建物等として未完成である場合にまで、注文者が債務不履行の一般原則によって契約を解除することを禁じたものではない﹂
としている。【
34五稿本(日七二月年】六一成平判地京東【
16負了終応一は程工らか人請】が者文注、はで)案事のし
(三四七一)
建築請負における瑕疵概念について四五四同志社法学 六〇巻七号
たとして建物の鍵を受け取っており、注文者は未だ入居をしていなかったものの、注文者自らで新たに鍵を取り替える
等をしていた際に建物内に設計・施工ミスのあることが判明したため、注文者が建物は未完成であり完成させるようとの通告を行い、結果的に請負契約の履行遅滞および不完全履行を理由とする全部解除を認めている。
五 裁判例の分析
―
主観説の機能について 1瑕疵の認定の基本的な枠組み 第一に、具体的な瑕疵判断の基準が合意内容に含まれている場合には、当事者の当該合意に基づき瑕疵を判断している。【1】~【
7し合や支障が顕在化て不いること、あるいは都の】にの裁判例は、注文者とかって、現段階で何ら、 将来的に支障の生じるおそれがあることを併せて考慮している (
、【つつし持 益維を場立るす慮考を利な的質実の者文注なうよのこ。 39)
8化とが約定違反を正当すする根拠とならないとこた】法の最高裁判決では、令満という客観的基準を判 断している (
に客さと準基的観う反いと令法、もえしし認例判裁いなめをな疵瑕、ばれけて ( やるあが障支合容当意合ので間者事と都質性の物建、は前内と。と不のから何てっにが者文注、ずせ致合従 40)
、近はで審級下の年、がたいてし在混も 41)
【
8事準に左右されない案的も目立ち始めている基観】響の最高裁判決の影を客受けて、法令という(【
9】、【 評観ている場合、統一的に主説まの立場を機能させているとれ含な瑕裁判例は、具体的に疵時判断の基準が合意内容の 10近。】)
価できよう。
また、当事者間で建築基準法等の規定に反する合意がなされた場合、通常の主観説とは異なる瑕疵判断の枠組みがと
られている。この枠組みは、当事者間における専門知識の格差等を配慮して、注文者の指示や関与を限定的に解釈する
(三四七二)
建築請負における瑕疵概念について四五五同志社法学 六〇巻七号 ことにより、違法ないし不適切な合意内容を排斥しながら客観的基準を取り入れて瑕疵を判断するものである(【
~【 11】
13意単体規定﹂に反する合がるなされたと請負人が主﹁け】)当。この典型例として、事お者間で建築基準法令に張
する場合が挙げられるが、請負人の当該主張(単体規定に反する当事者間での合意)は排斥され、単体規定が優先して瑕疵の判断基準となる。建築基準法令の単体規定とは、個々の建物が単体として具備していなければならない安全性や
防火性等に関する最低の技術的基準を定めた規定である (
に二施)、七二の条五法計同(務義保確の工画技の実誠を督監導指への者るす事従に成作術工)、条一法業設建(務義施 正人す関にの負請、めた建るな設工事の適。施工を確保するそ 42)
行う義務(同法二六条の三)、建築士の業務誠実義務や設計内容の法令適合義務(建築士法一八条一項~三項)を根拠として、請負人の助言義務・説明義務が履行された場合を前提とした﹁あるべき合意﹂を基準にして、瑕疵が判断され
ているといえる。このような立場は、消費者保護や専門家責任の見地からも妥当といえよう (
。 43)
一方で、建築基準法は最も遵守されていない法律の一つに挙げられているほどであり、特に、容積率や建ぺい率に関 する規定、道路の斜線制限等に関する規定は、しばしば注文者において、建築確認と離れて法規を無視する工事を求めることがあるのが実態である (
別﹂って、﹁単体規定とに﹁集団規定﹂に大よ点体観築基準法の実的。規定は、規制の建 44)
されており、集団規定とは、都市計画という公益的な観点から、建ぺい率や容積率、道路の斜線制限等に関する規定と
して、都市計画区域内にのみ適用される規制である (
あ、っもを分部反違き機除を合場るれさくて能儀障も性能可いなが支やに別格はに性久耐な余造改の分部反違にめを 令る行、合場規す反に定庁団政やの是正命。近隣との紛争等のた集 45)
る。このような違法建築物に関しては、特定行政庁において、措置命令を発するか否か、いかなる内容の措置命令をいつ発するのかにつき広範な裁量権があると解さざるを得ず (
命い権請申るめ求を令置な措、はに民住隣近、も 46)(
。注文者が 47)
了承している集団規定違反の違法建築物については、集団規定がそもそも都市計画の観点から定められており(建築基
(三四七三)
建築請負における瑕疵概念について四五六同志社法学 六〇巻七号
準法四一条の二)、都市環境の整備における合理的な土地利用の調整のための基準であることからすれば、実際に集団
規定違反をもって直ちに瑕疵とは評価しにくいと思われる。これに対して、単体規定については、当事者間においてこれを満たす建築物を完成させることが黙示の合意の範囲内であると解されている (
。 48)
そのため裁判例でも、構造上の安全性等に直結する単体規定違反の瑕疵と、必ずしもそれに直結しない集団規定違反の瑕疵とを区別しながら瑕疵の判断をしており、単体規定違反に関する当事者での合意を厳密に排斥しているといえる(【
11】~【
13】)。 第二に、瑕疵判断の基準となる合意の存在のみが明確な場合には、瑕疵判断の基準となる合意に応じているか否かの
確認をするために、何らかの客観的指標を用いて瑕疵を判断している。具体的には、【
、【の況状の傷損 14時に】る隣家震地ていおによ 15部況状用使のてしと屋事】仕な的般一ていおに、【
16術てい用を針指や準基技】の外以令法ていおに、
瑕疵を判断している。当事者間で定めた合意に関する具体的な達成方法を特定していない場合には、主観説の立場を機能させるため、客観的基準を持ち込まざるを得ないことになる。
第三に、瑕疵判断の基準となる合意の存否が不明確な場合には、当事者間での意思解釈を様々な形で示しながら、客観的基準を用いて瑕疵を判断している。本稿では、裁判例が用いた文言に従って、契約全体の趣旨から瑕疵を判断する
場合(【
17】~【
19べ合場るす断判を疵瑕てしときす】)証保が人負請を待期の者文注、(【
20】~【
(【在合場るす断判を疵瑕てし認推を存の意合るなと準 22】)基の断判疵瑕、 23】~【
25合たし在存に示黙が意る】)なと準基の断判疵瑕、と
して瑕疵を判断する場合(【
26】~【
28い合場るす断判を疵瑕て用】)を準基的観客にち直、(【
29】~【
説大、用いられた文言の相違にきれな意味はなく、むしろ主観ばすし裁している。ただ討、判紹例の結論を詳細に検介 32をつ五の】)
を機能させにくい事案については、これらのような形で結果的に客観的基準を取り入れているに過ぎない。主観説に取
(三四七四)