4
微分と積分
(
定義と基本的な性質
)
4.1
定積分
定積分を考えるときには, 特に断らない限り, 区間 [a, b] は有界であると仮定する. 定義 4.1. 定積分を定義するために必要な言葉を準備しておく.
1. 有界閉区間 [a, b] ∈ R に対して, x0 = a, xn = b, xi < xi+1 をみたす n + 1 個の
点 ∆ = {x0, . . . , xn} を [a, b] の分割とよび, 分割の幅を |∆| = max{|xi+1− xi|} と
おく. 2. 区間 [a, b] の分割 ∆ = {x0, . . . , xn}, ξ = {ξ1, . . . , ξn}, xi−1 ≤ ξi ≤ xi に対し て, 区間 [a, b] 上の有界な関数 f : [a, b] −→ のリーマン和 S∆,ξ(f ) を S∆,ξ(f ) = n X i=0 f (ξi)(xi− xi−1)と定義する. 3. 区間 [a, b] 上の有界な関数 f : [a, b] −→ が積分可能であるとは, ある定数 S(f) に 対して, 任意の ε > 0 に対して, ある δ > 0 が存在して, |∆| < δ をみたす [a, b] の 任意の S∆,ξ(f ) に対して, |S(f) − S∆,ξ(f )| < ε が成り立つことを言う. このとき, S(f ) を f の区間 [a, b] 上の定積分と呼び, S(f) = Z b a f (x) dx と書く. 注意 4.2. 高校数学では, 定積分を「区間 [a, b] で関数 f のグラフと x 軸が囲む面積」と 考えていたのだが, そこでは「面積」の定義が曖昧であることに注意してほしい. リー マン和の定義は, 「幅 xi− xi−1, 高さ f(ξi)の長方形」の面積を f(ξi)(xi− xi−1)と考え, 有限個の長方形の面積の和に他ならない. さらに, 定積分 S の定義は, 「どのような分 割を取っても, 分割の幅を細かくしたときに, リーマン和が収束する値」である. すなわ ち, 長方形の面積が「幅×高さ」であることのみを仮定して, 「関数のグラフが囲む面 積」を定義したのが定積分の意味である. 分割が与えられたとき, その分割の幅 xi− xi−1 を ∆xi と書いてみよう. すると, リー マン和は S∆,ξ(f ) = n X i=0 f (ξi)∆xi と書くことができる. この値の |∆| → 0 の極限を取ったものが定積分であるので, 「和 の記号」を「積分記号」に, 「∆x」を「dx」に置き換えて, S∆,ξ(f ) = n X i=0 f (ξi)∆xi → Z b a f (x) dx = S(f ) と書いたと考える. すると, 定積分にあらわれる「dx」の意味が明らかになり, 「dx」と は, 面積をきめるために必要な「幅(横)方向の(微少)目盛り」と考えることができる. 定理 4.3. 区間 [a, b] 上で連続な関数 f : [a, b] −→ R は積分可能である.
補題 4.4. 区間 [a, b] 上で定義された有界な関数 f : [a, b] −→ R と, 区間 [a, b] の分割 ∆ = {x0, . . . , xn} に対して, s∆(f ) = n X i=0
mi(xi− xi−1), mi = inf{f(x) : x ∈ [xi−1, xi]},
S∆(f ) = n
X
i=0
Mi(xi− xi−1), Mi = sup{f(x) : x ∈ [xi−1, xi]}
とおくと, {s∆(f )}∆ は上に有界, {S∆(f )}∆ は下に有界であり, sup ∆ s∆(f ) ≤ inf ∆ S∆(f )が 成り立つ. 【証明の概略】 任意の分割 ∆ に対して m(b − a) ≤ s∆(f ) ≤ S∆(f ) ≤ M(b − a) が成 り立つ. ここで, m = inf f(x), M = sup f(x) とおいた. よって, {s∆(f )}∆ は上に有界, {S∆(f )}∆ は下に有界である. また, 任意の2つの分割 ∆, ∆′ に対して, s∆(f ) ≤ S∆′(f ) が成り立つ. これは, 分割 ∆ の「細分」∆′′ に対して, s∆(f ) ≤ s∆′′(f ) ≤ S∆′′(f ) ≤ S∆(f ) が成り立つことから導くことができる. よって, sup ∆ s∆(f ) ≤ inf ∆ S∆(f ) が成り立つ. 以下, 簡単のために, S(f) = sup ∆ s∆(f ), S(f ) = inf ∆ S∆(f ) とおく. 補題 4.5. 区間 [a, b] 上で定義された有界な関数 f : [a, b] −→ R に対して, 以下の3つの 条件は同値である. 1. f は [a, b] 上で積分可能である. 2. S(f ) = S(f ) が成り立つ. 3. 任意の ε > 0 に対して, S∆(f ) − s∆(f ) < εをみたす分割 ∆ が存在する. 補題 4.5 の証明は少々長くなるので省略するが, 補題 4.4 から得ることができる. 補題 4.5 を使うと定理 4.3 を証明できる. 【定理 4.3 の証明の概略】 有界閉区間上の連続関数 f が積分可能であることを示すた めには, 任意に ε > 0 を与えて S∆(f ) − s∆(f ) < ε をみたす分割 ∆ を作ればよい. この とき, Mi = max [xi,xi+1] f (x), mi = min [xi,xi+1] f (x) とおけば, S∆(f ) − s∆(f ) = X (Mi− mi)(xi+1− xi) となる. 一方, f は有界閉区間上の連続関数なので, 一様連続であり, この ε > 0 に対し て, ある δ > 0 が存在して, |x − x′ | < δ ならば |f(x) − f(x′ )| < ε が成り立つ. よって, 分割 ∆ が |∆| < δ をみたせば, S∆(f ) − s∆(f ) = X (Mi− mi)(xi+1− xi) ≤ ε(b − a) が成り立つ. すなわち, f は積分可能である. 定理 4.6. 区間 [a, b] 上で定義された有界な関数 f, g が積分可能であるとき,
1. 定数関数 f(x) = k は積分可能であり, Z b a k dx = k(b − a) が成り立つ. 2. 関数 f + g は積分可能であり, Z b a (f (x) + g(x)) dx = Z b a f (x) dx + Z b a g(x) dx が 成り立つ. 3. k ∈ R を定数としたとき, 関数 kf は積分可能であり, Z b a kf (x) dx = k Z b a f (x) dx が成り立つ. 4. 関数 fg は積分可能である. 5. 任意の x ∈ [a, b] に対して f(x) ≥ 0 ならば, Z b a f (x) dx ≥ 0 が成り立つ. 6. 関数 |f| は積分可能であり, Z b a f (x) dx ≤ Z b a |f(x)| dx が成り立つ. 7. 任意の c ∈ [a, b] に対して, Z b a f (x) dx = Z c a f (x) dx + Z b c f (x) dx が成り立つ. こ の主張は, Z b a f (x) dx = − Z a b f (x) dx と定義すれば, a, b, c の順序に依らず成り 立つ. 【証明の概略】 定数関数 f(x) = k に対しては, 任意の分割 ∆ に対して s∆(f ) = S∆(f ) = k(b − a) が成り立つ. 特に S(f) = S(f) = k(b − a) = S(f) が成り立つ. したがって定数関数は積分可能であり, 1 が成り立つ. 2 に関しては, リーマン和の定義と上限・下限の性質 (演習問題 1.14) から, 任意の分 割 ∆ に対して S(f + g) = S(f) + S(g), S(f + g) = S(f) + S(g), が成り立つ. よって, S(f + g) = S(f ) + S(g)が成り立つ. 3 もリーマン和の定義から明らかである. 4 に関しては, まず, f が積分可能な時 f2 が積分可能であることを示す. この事実は, 分割 ∆ = {x0, . . . , xn} に対して, S∆(f2) − s∆(f2) ≤ C(S∆(f ) − s∆(f ))が成り立つこと を使って示すことができる. 一方 fg = 1 4(|f + g| 2− |f − g|2) と書けることを使えば, 2, 6 を用いて, fg が積分可能であることがわかる. 5 に関しては, 任意の分割 ∆ = {x0, . . . , xn} に対して, f(ξi)(xi − xi−1) ≥ 0 (ξi ∈ [xi−1, xi]) となるので, S∆(f ) ≥ 0, s∆(f ) ≥ 0 が成り立つ. よって, S(f) ≥ 0, S(f) ≥ 0 が成り立つ. 6 も同様に, 不等式 | n X i=0 f (ξi)(xi− xi−1)| ≤ n X i=0 |f(ξi)|(xi− xi−1)が成り立つことを使 えば, |S(f)| ≤ S(|f|), |S(f)| ≤ S(|f|) が成り立つ. よって, |f| が積分可能であることを 示せばよい. |f| が積分可能であることを示すためには, 演習問題 1.15 を使えば, 任意の 分割 ∆ の各小区間 Ij に対して, sup Ij |f(x)| − infI j |f(x)| ≤ supIj f (x) − infI j f (x) が成り立つ ので, S∆(|f|) − s∆(|f|) ≤ S∆(f ) − s∆(f ) が成り立つ. よって |f| は積分可能である. 7 は, また, c ∈ [a, b] を分点に含む分割を考えれば 7 を得ることができる.
定理 4.7. 区間 [0, 1] 上で連続な関数 f に対して lim n→∞ 1 n n−1 X k=0 f (k/n) = Z 1 0 f (x) dx が成り立つ. 【証明】 区間 [0, 1] の分割 ∆ = {0, 1/n, 2/n, . . . , (n − 1)/n, 1} と ξ = {0, 1/n, . . . , (n − 1)/n} を考えれば, 1 n n−1 X k=0 f (k/n) はリーマン和 S∆,ξ(f ) と考えることができる. この 形の分割に対して n → ∞ とすることは |∆| → 0 とすることに他ならない. よって, lim n→∞ 1 n n−1 X k=0 f (k/n) は f の [a, b] 上の定積分に収束する. 例 4.8. lim n→∞ n−1 X k=0 n n2+ k2 = Z 1 0 1 1 + x2 dx が成り立つ. なぜなら, f(x) = 1 1 + x2 とおけ ば, f(k/n) = 1 1 + (k/n)2 = n2 n2 + k2 が成り立つ. よって, 1 n n−1 X k=0 n2 n2+ k2 = 1 n n−1 X k=0 f (k/n) が成り立つ. 例 4.9. 関数 f が [a, b] 上で区分的に連続(区間 [a, b] で連続でない点が有限個に限るこ と)であるときには, f は積分可能となるが, 一般には連続でない関数は積分可能とは限 らない. 例えば, f (x) =( 1 x ∈ Q, 0 x ∈ R\Q, は [0, 1] 上で積分可能でない. 実際, inf ∆ S∆ = 1, sup∆ s∆= 0 となる. 定理 4.10 (積分の平均値の定理). 区間 [a, b] 上の連続関数 f : [a, b] −→ R に対して, 1 b − a Z b a f (x) dx = f (ξ) をみたす ξ ∈ [a, b] が存在する.
【証明】 m = inf{f(x) : x ∈ [a, b]}, M = sup{f(x) : x ∈ [a, b]} とおくと, m ≤ f(x) ≤ M が成り立つ. よって, m ≤ 1 b − a Z b a f (x) dx ≤ M が成り立つ. 一方, f は [a, b] 上の連続関数であるので, 任意の µ ∈ [m, M] に対して, f (ξ) = µ となる ξ ∈ [a, b] が存在する. したがって, µ = 1 b − a Z b a f (x) dx とおけば, 1 b − a Z b a f (x) dx = µ = f (ξ) が成り立つ.
4.2
関数の微分
定義 4.11. 実数 a ∈ R の近傍で定義された関数 f : X −→ R に対して, 極限 lim h→0 f (a + h) − f(a) h が存在するとき, その値を a における微分係数と呼び, f′ (a), d dxf (a), df dx(a) などと書 く. また, 関数 f の a における微分係数が存在するとき, f は a において微分可能と呼 び, 微分可能な点 x において, その微分係数 f′ (x)を値とする関数を f の導関数と呼ぶ. また, 関数 f に対してその導関数を求める操作を微分と呼ぶ. 定義域の全ての点で微分 可能であるとき, 単に f は微分可能であると言う. 注意 4.12. 定積分を考えたときと同様に, 極限を取る前の h = (a + h) − a を, 独立変数 方向の微少変化と考えて「∆x」と書き, f(a + h) − f(a) を f の x = a での微少変化と 考え ∆f = f(a + h) − f(a) と書くと, lim h→0 ∆f ∆x → df dx と考えることができる. 定理 4.13. 関数 f が x = a で微分可能ならば, x = a で連続である. しかし, x = a で 連続であっても微分可能とは限らない. 【証明の概略】 f が x = a で微分可能ならば, 任意の ε > 0 に対して, ある δ > 0 が存 在して, |h| < δ ならば |f(a + h) − f(a)| < h(ε + |f′ (a)|) である. ここから, f が x = a で連続であることを導けばよい. また, x = a で連続であって微分可能ではない例として f (x) = |x| を考えればよい. 定理 4.14. 以下が成り立つ. 1. 関数 f, g が x = a で微分可能ならば, f +g は x = a で微分可能で, d dx(f + g)(a) = d dxf (a) + d dxg(a) が成り立つ. 2. k を定数としたとき, 関数 f が x = a で微分可能ならば, kf は x = a で微分可能 で, d dx(kf )(a) = k d dxf (a) が成り立つ. 3. 関数 f, g が x = a で微分可能ならば, fg は x = a で微分可能で, d dx(f g)(a) = d dxf (a) g(a) + f (a) d dxg(a) が成り立つ. 4. 関数 f, g が x = a で微分可能で, g(a) 6= 0 ならば, f/g は x = a で微分可能で, d dx f g (a) = 1 (g(a))2 g(a) d dxf (a) − f(a) d dxg(a) が成り立つ.5. 関数 f が x = a で微分可能, g が x = f(a) で微分可能ならば, g ◦ f は x = a で 微分可能で, d dx(g ◦ f) (a) = d dxg(f (a)) d dxf (a) が成り立つ. 6. 関数 f が x = a の近傍で逆関数を持ち, f が x = a で微分可能の時, f−1 は y = f (a) = b で微分可能で, d dxf −1 (b) = d dxf (a) −1 が成り立つ. 【証明の概略】 4 は, g = 1/f を考えれば, 1/g(a + h) − 1/g(a) h = 1 g(a + h)g(a) g(a) − g(a + h) h → − 1 (g(a))2 d dxg(a) であることと 3 を使えばよい. 5 を示す. f が x = a で微分可能であることから, f (a + h) = f (a) + hf′ (a) + ε1h と書くことができる. このとき, h → 0 の時 ε1 → 0 が成り立つ. この式は, f の x = a での微分係数の定義式そのものと考えればよい. 同様に g(b + k) = g(b) + kg′ (b) + ε2k が成り立つ. したがって, b = f(a), b + k = f(a + h) とおけば g(f (a + h)) − g(f(a)) = (f(a + h) − f(a))(g′
(f (a)) + ε2) が成り立つ. よって, g ◦ f(a + h) − g ◦ f(a) h = g(f (a + h)) − g(f(a)) f (a + h) − f(a) f (a + h) − f(a) h = (g′ (f (a)) + ε2)(f ′ (a) + ε1) → g ′ (f (a))f′ (a) となる. 最後に 6 を示す. 逆関数の定義から, f−1 ◦ f(x) = x が成り立つので, 5 を使えば良 い. 注意 4.15. 逆関数の微分公式は y = f(x) と書くと, x = f−1 (y) であるので, 1 = ∆y ∆x ∆x ∆y → dy dx dx dy, dx dy = dy dx −1 と考え, 合成関数の微分公式は, y = f(x), z = g(y) と書けば, ∆z ∆x = ∆z ∆y ∆y ∆x → dz dx = dz dy dy dx と考えればわかりやすい.
注意 4.16. 多項式関数と初等関数の有限回の四則演算・合成・逆関数で作られる関数の 集合を F としよう. 定理 4.14 を使えば, 任意の f ∈ F に対してdxd f ∈ F が成り立つこ とがわかる. すなわち F は「微分」演算(導関数を取る操作)について閉じていること がわかる. また, 定理 4.14 の計算ルールを使って, 数式処理としてコンピュータで微分 を行うプログラムを書くことは比較的平易である. 定義 4.17. 関数 f の導関数 f′ が存在して, f′ が x = a で微分可能であるとき, その微 分係数を f′′ (a), d 2 dx2f (a), d2f dx2(a) などと書き, 関数 x 7→ f ′′ (x) を f の2階導関数と呼 ぶ. 同様に, 高階導関数も定義でき, n 階導関数は, f(n)(a), d n dxnf (a), dnf dxn(a)などと書く. f が n 回微分可能であり, f(n) が連続であるとき, f は Cn 級の関数であるという. さ らに, f が何回でも微分可能であるとき, f はなめらかである, または C∞ 級であると いう. 定理 4.18 (Leibniz rule). 関数 f, g が n 回微分可能であるとき, (f g)(n)(x) = n X k=0 n k f(k)(x)g(n−k)(x) が成り立つ.
4.3
平均値の定理
定理 4.19 (Rolle の定理). 区間 [a, b] 上で定義された関数 f が連続であり, 区間 (a, b) で微分可能とする. このとき, f(a) = f(b) = 0 ならば, ある ξ ∈ (a, b) が存在して, f′ (ξ) = 0が成り立つ. 【証明の概略】 f は定数関数ではないと仮定してよい. いま, f は [a, b] 上で連続なの で, その最大値を M, 最小値を m とおく. すると, f(a) < M または m < f(a) が成り 立つ. 以下, f(b) = f(a) < M と仮定し, M = f(ξ) をみたす ξ ∈ (a, b) をとる. このと き, f′ (ξ) = 0 を証明すればよい. 実際, 任意の h 6= 0 に対して, ξ が最大値を取る点であ ることから, f(ξ + h) − f(ξ) ≤ 0 が成り立つ. したがって, f (ξ + h) − f(ξ) h ≤ 0, h > 0, f (ξ + h) − f(ξ) h ≥ 0, h < 0, となるので, f′ (ξ) = 0 が成り立つ. 定理 4.20 (平均値の定理). 区間 [a, b] 上で定義された関数 f が連続であり, 区間 (a, b) で微分可能ならば, ある ξ ∈ (a, b) が存在して, f (b) − f(a) b − a = f ′ (ξ) が成り立つ.
【証明の概略】 k = f (b) − f(a) b − a , F (x) = f (b) − f(x) − k(b − x) とおくと, F (b) = F (a) = 0, F′ (x) = −f′ (x) + k が成り立つ. そこで, F に Rolle の定理を適用して, ξ を F′ (ξ) = 0となる点とすれば k = f′ (ξ)が成り立つ. 系 4.21. 区間 [a, b] 上で定義された関数 f が微分可能であると仮定する. このとき, 任 意の c ∈ (a, b) において f′ (c) > 0 ならば, f は (a, b) で狭義単調増加であり, 任意の c ∈ (a, b) において f′ (c) ≥ 0 ならば, f は (a, b) で単調増加である. 【証明】 この証明には平均値の定理 (定理 4.20) を用いる. いま x1, x2 ∈ (a, b) を考え ると, 平均値の定理より, ある ξ ∈ (x1, x2) が存在して, f(x2) − f(x1) = f′(ξ)(x2− x1) が成り立つ. 仮定から f′ (ξ) > 0 であるので x2 > x1 ならば f(x2) > f (x1) が成り立つ. 後半の主張も同様に証明できる.
定理 4.22 (Cauchy の平均値の定理). 区間 [a, b] 上で定義された連続関数 f, g が (a, b) で微分可能ならば, ある ξ ∈ (a, b) が存在して, f (b) − f(a) g(b) − g(a) = f′ (ξ) g′ (ξ) が成り立つ. 【証明の概略】 k = f (b) − f(a) g(b) − g(a), F (x) = f (b) − f(x) − k(g(b) − g(x)) とおき, F に対 して Rolle の定理を適用すればよい.
系 4.23 (de l’Hopital の定理). 関数 f, g は x = a の近傍で微分可能であり, lim
x→af (x) = lim x→ag(x) = 0であると仮定する. このとき, lim x→a f′ (x) g′ (x) = α ならば x→alim f (x) g(x) = α が成り立つ. 【証明】 証明には Cauchy の平均値の定理 (定理 4.22) を用いる. いま, f, g が x = a で定義されていれば f(a) = g(a) = 0 が成り立つ. もし, そうでな ければ, f(a) = 0, g(a) = 0 とおく. いま, x = a の近傍で f, g が微分可能であることか ら, 十分 a に近い b をとると, b < a の時, ある ξ ∈ (a, b) が, a < b の時, ある ξ ∈ (b, a) が存在して, f (b) g(b) = f (b) − f(a) g(b) − g(a) = f′ (ξ) g′ (ξ)
が成り立つ. いま, b → a とすると ξ → a となるので, limb→af (b)g(b) = lim
ξ→a
f′
(ξ)
g′(ξ) が成り立
4.4
原始関数・不定積分・微積分学の基本定理
定理 4.24 (微積分学の基本定理). 関数 f は区間 [a, b] で積分可能であると仮定する. こ のとき, F (x) = Z x a f (t) dt とおくと, 以下が成り立つ. 1. 関数 F は区間 [a, b] で連続である. 2. f が [a, b] で連続であれば, F は [a, b] で微分可能であり, d dxF (x) = f (x) が成り 立つ. 【証明】 まず, F が連続であることを示そう. 関数 f の積分が定義できる前提条件と して, f は有界な関数であることを仮定していた. したがって, 任意の x ∈ [a, b] に対し て |f(x)| ≤ M が成り立つ. よって, 任意の x, y ∈ [a, b] に対して, x < y ならば |F (x) − F (y)| = Z x a f (t) dt − Z y a f (t) dt = Z y x f (t) dt ≤ Z y x |f(t)| dt ≤ M(y − x) が成り立つ. 同様に x ≥ y の場合も考えれば, 任意の x, y ∈ [a, b] に対して |F (x) − F (y)| ≤ M|x − y| が成り立つ. よって, F は [a, b] 上で連続となる. 後半の証明には, 積分の平均値の定理 (定理 4.10) を用いる. 以下 f は連続と仮定す る. このとき, 任意の x, y ∈ [a, b] (x < y) に対して, ある ξ ∈ (a, b) が存在して, F (y) − F (x) y − x = 1 y − x Z y x f (t) dt = f (ξ) が成り立つ. y < x の時も同様に考えれば, 任意の x, y ∈ [a, b], x 6= y に対して, ある ξ ∈ (a, b) が存在して, F (y) − F (x) y − x = f (ξ) が成り立つことがわかった. ここで, y → x とすれば, f の連続性から f(ξ) → f(x) とな り, d dxF (x) = f (x) が成り立つ, 定義 4.25. 区間 [a, b] で定義された関数 f が与えられたとき, f を導関数に持つ関数 F が存在すれば, F を f の原始関数と呼ぶ. 注意 4.26. 微積分学の基本定理によれば, 区間 [a, b] 上の連続関数 f が与えられたとき, F (x) = Z x a f (t) dt は f の原始関数となる. 特に, 連続関数の原始関数は連続となる. 一 方, f の原始関数 F が与えられたとき, 定数 C を用いて G(x) = F (x) + C とおけば, G′ = F′ = f であるので, G も f の原始関数となる. 逆に, G を f の任意の原始関数と おくと, d dx(G(x) − F (x)) = 0 であることから, G(x) = F (x) + Z x a 0 dt = F (x) + C =Z x a f (t) dt + C となり, f の任意の原始関数の差は定数 (積分定数と呼ぶ) となることが わかる. (関数 f(x) = 0 の原始関数が定数関数に限ることは, 平均値の定理を用いて示 すことができる.) 定義 4.27. 関数 f の原始関数に積分定数を加えたものを f の不定積分とよび,Z f (x) dx であらわす. 定理 4.28. 関数 f を区間 [a, b] 上で定義された連続関数, F を f の原始関数(の一つ) とすると, 任意の c, d ∈ [a, b] に対して, Z d c f (x) dx = F (d) − F (c) =: [F (x)] d c が成り立つ. 【証明】 注意 4.26 から, F は f の定積分を用いて F (x) = Z x a f (t) dt + C と書くこと ができる. したがって, F (d) − F (c) = Z d a f (t) dt + C − Z c a f (t) dt + C = Z d c f (t) dt が成り立つ. 系 4.29. 関数 f を区間 [a, b] 上で定義された微分可能な関数としたとき, 任意の c, d ∈ [a, b] に対して, Z x a d dtf (t) dt = f (x) − f(a) が成り立つ. 【証明】 f は d dxf の原始関数であることを使えば, 定理 4.28 から直ちに従う.
4.5
種々の関数の微分と積分
例 4.30. 1. C を定数とすると, d dxC = 0. 2. 自然数 n ∈ N に対して d dxx n = nxn−1. 3. d dxsin(x) = cos(x). 4. d dxe x = ex 5. d dxlog |x| = 1 x 6. d dxArcsin(x) = 1 √ 1 − x2.例 4.31. 関数 f が微分可能であり, 任意の x ∈ Dom(f) に対して f(x) > 0 が成り立つ とき, g(x) = log f(x) も微分可能となる. よって, 合成関数の微分公式を使えば, d dxg(x) = d dxlog f (x) = 1 f (x) d dxf (x) が成り立つ. この式を使って微分を計算する方法を対数微分法と呼ぶ. 1. α ∈ R を定数としたとき, x > 0 で定義される関数 f(x) = xα に対して, d dx(x α) = αxα−1 が成り立つ. 【証明】 d dx(log x α) = α d dxlog x = α x となるので, d dx(x α) = (xα) d dx(log x α) = αxα−1 が成り立つ. 2. x > 0 で定義される関数 xx の微分は d dxx x = xx(1 + log x) となる. 例 4.32. 積の微分の公式 d dx(f (x)g(x)) = f (x) d dxg(x) + d dxf (x) g(x) の両辺を積分することにより, Z x a f (t) d dtg(t) dt = [f (t)g(t)]x a− Z x a d dtf (t) g(t) dt, Z f (t) d dtg(t) dt = f (t)g(t) − Z d dtf (t) g(t) dt, が成り立つ. これを部分積分法と呼ぶ. 例えば, Z log x dx = Z (x)′ log x dx = x log x − Z x(log x)′ dx = x log x − x + C と計算できる. 定理 4.33 (置換積分法). 関数 f は [a, b] で微分可能で, f′ が連続, 関数 g は f([a, b]) で 連続であるとき, Z f(b) f(a) g(x) dx = Z b a g(f (x))f′ (x) dx, Z g(x) dx = Z g(f (x))f′ (x) dx, が成り立つ. 【証明】 G(x) = Z x α g(t) dtとおくと, G′ (x) = g(x)である. いま, 合成関数 G(f(x)) を x について微分すれば, d dxG(f (x)) = G ′ (f (x))f′ (x) = g(f (x))f′ (x)
が成り立つ. よって, Z b a g(f (x))f′ (x) dx = G(f (b)) − G(f(a)) = Z f(b) f(a) g(x) dx が成り立つ. 注意 4.34. 置換積分法は, 合成関数の微分公式 dg dx = dg dy dy dx を積分したものと考えるこ とができる. この式の両辺を x について積分すれば, Z dg dxdx = Z dg dy dy dxdx となる. 例 4.35. 置換積分を用いると, 複雑な関数の積分が実行できる場合がある. 1. 1 x2+ 1 を積分する. x = tan(t) とおくと, dx dt = 1 cos2(t) であるので, Z 1 x2+ 1dx = Z 1 tan2(t) + 1 dx dt dt = Z dt = t + C = Arctan(x) + C 2. √1 − x2 を積分する x = sin(t) とおくと, dx dt = cos(t) であるので, Z √ 1 − x2dx = Z q 1 − sin2(t) cos(t) dt = Z cos2(t) dt =1 2(t + cos(t) sin(t)) + C = 1 2 Arcsin(x) + x√1 − x2+ C となる. 特に, Z 1 0 √ 1 − x2dx は半径 1 の円の内部の面積の 1/4 であるので, 半径 1 の円の内部の面積 S は S = 4 Z 1 0 √ 1 − x2dx = 2hArcsin(x) + x√1 − x2i1 0 = π と計算できる. 3. x > 1 で定義された関数 1 x√x2 − 1 を積分する. (a) t = 1 x とおいて積分すれば, Z 1 x√x2− 1dx = − Z 1 √ 1 − t2 dt = − Arcsin(t) + C = − Arcsin( 1 x) + C (b) t = √x2− 1 とおいて積分すれば, Z 1 x√x2− 1dx = Z dt t2+ 1 = Arctan(t) + C = Arctan( √ x2 − 1) + C
(c) t = 1/√x2− 1 とおいて積分すれば, Z 1 x√x2− 1dx = Z 1 1 + t2 dt = Arctan(t) + C = Arctan(1/ √ x2 − 1) + C 注意 4.36. 積分 Z 1 −1 dx 1 + x2 を求める場合, その原始関数として Arctan(x) を使えば, Z 1 −1 dx 1 + x2 = [Arctan(x)] 1 −1 = π/2 となり, 正しい積分値を得ることができる. 一方, −(Arctan(1/x))′ = 1/(1 + x2)であることから, Z 1 −1 dx 1 + x2 = − [Arctan(1/x)] 1 −1 = −π/2 となり, 明らかに誤った値が出てくる. これは, Arctan(1/x) が x = 0 で定義されていな い(連続でないと言ってもよいだろう)ことが原因である. 注意 4.37. 「数式処理ソフトウェア」を利用しても注意 4.36 と同様な問題が生じる場合が ある. 例えば, R 上で連続な関数 R(x) = x4− 3x2+ 6 x6− 5x4+ 5x2+ 4 の不定積分を Mathematica (Version 7.0.0) で計算すると, Arctan x(x2− 3) x2 − 2 と出力する. この「原始関数」は x = ±√2 で連続ではない. 正しい原始関数は Arctan((x5 − 3x3+ x)/2) + Arctan(x3) + Arctan(x) である. 注意 4.38. 注意 4.16 で指摘したように, 多項式関数と初等関数(指数関数・三角関数) の有限回の四則演算・合成・逆関数で作られる関数の集合 F は, 「微分」演算について 閉じている. 不定積分を求めるためには, 部分積分法および置換積分法を必要ならば繰 り返し用いることにより, 種々の積分を計算することが可能であるが, F は「積分」演 算(不定積分を求める操作)について閉じていないことに注意する必要がある. ★ どんな関数が積分できるか 区間 [a, b] 上で有界な関数 f を与えると, F (x) = Z x a f (t) dt は f の原始関数である. しかし, 一般に f ∈ F を与えたとき, その原始関数 F が F ∈ F とはならず, F ∈ F と なるか否かを判断するのは易しいことではない. 以下では, F ∈ F とできる例と, f ∈ F とできない(F の中で積分ができない)例を挙げる. 定義 4.39. 多項式関数 P (x), Q(x) を使って R(x) = P (x) Q(x) と書ける関数を有理関数と 呼ぶ. ここで, P (x) の次数が Q(x) の次数よりも高い(または等しい)場合には, P (x) を Q(x) で割れば, P (x) = Q(x)q(x) + r(x) となる多項式関数 r(x) が存在して, r(x) の 次数は Q(x) の次数よりも小さくなる. よって, 有理関数を考える際には, 分子の多項式 の次数は分母の多項式の次数よりも小さいと仮定してよい. 定理 4.40. 任意の実係数多項式は, 実係数の範囲で1次多項式と2次多項式の積に書き 表すことができる. すなわち, P (x) を実係数多項式とすると, P (x) = A(x − α1)i1· · · (x − αk)ik(x2+ β1x + γ1)j1· · · (x2+ βℓx + γℓ)jℓ と書ける. ただし, A, αi, βi, γi ∈ R であり, βi2− 4γi < 0 である.
この定理は, 次の「代数学の基本定理」からの帰結であり, 証明はこの講義の範囲を越 える. 定理 4.41 (代数学の基本定理). 複素係数の n 次多項式は, 複素数の範囲に重複をこめ て n 個の根を持つ. 定理 4.40 の事実を使うと, 有理関数の積分を求めるための基礎となる部分分数分解を 得ることができる. 定理 4.42 (部分分数分解). Q(x) の 定理 4.40 による分解にあらわれる因子を (x − αk)ik, (x2 + βℓx + γℓ)jℓ とおくと, 有理関数 R(x) = P (x) Q(x) は, A (x − αk)n (1 ≤ n ≤ i k) と Bx + C (x2 + β ℓx + γℓ)m (1 ≤ m ≤ j ℓ) の和で書くことができる. 特に, 有理関数の積分 Z P (x) Q(x)dx は, Z dx xn, Z dx (x2+ 1)n, Z x (x2+ 1)ndx の積分に帰着できる. 部分分数分解の計算原理は, 1変数多項式全体のなす環でのユークリッドの互除法か ら得ることができる. 注意 4.43. ここで出てきた積分のうち, Z x (x2+ 1)ndx は, l = 1 の時には log(x 2+ 1), l > 1の時には 1 2(1 − n)(x2+ 1)n−1 に等しい. Z dx (x2+ 1)n は, 部分積分を使えば計算で きる. (演習問題 4.6 参照) 例 4.44. 部分分数分解を使うと, 有理関数は以下のように積分できる. 1. R(x) = x (x − 1)2 を積分する. R(x) = 1 x − 1 + 1 (x − 1)2, Z R(x) dx = Z dx x − 1 + Z dx (x − 1)2 = log |x − 1| + 1 1 − x+ C 2. R(x) = x 2+ 3x + 1 (x + 1)(x − 1)2(x2+ 1)(x2+ x + 1)2 を積分する. R(x) = − 18x + 11 − 2572 1 x − 1 + 5 36 1 (x − 1)2 − 3 4 x x2 + 1 + 3 4 1 x2+ 1 + 5 9 1 (x + 1 2)2+ 3 4 +11 9 x (x + 1 2)2+ 3 4 − 23 x (x +12)2+ 3 4 2 と部分分数に分解されるので, 各項を積分すればよい. 定理 4.45 (三角関数の有理式の積分). 2変数有理関数 R(x, y) を用いて R(cos(x), sin(x)) の形に表される関数は, t = tan(x 2)と変数変換することにより, t に関する有理関数の積 分に帰着できる.
【証明】 tan2(x) + 1 = 1/ cos2(x) が成り立つことを使い, t = tan(x/2) であるので, dt dx = 1 2 1 cos2(x/2) = t2+ 1 2 が成り立つ. 半角の公式を使えば, cos(x) = 1 − t2 1 + t2, sin(x) = 2t 1 + t2 が成り立つ. よって, Z R(cos(x), sin(x)) dx = Z R 1 − t 2 1 + t2, 2t 1 + t2 dx dt dt = Z R 1 − t 2 1 + t2, 2t 1 + t2 2 1 + t2 dt が成り立ち, t に関する有理関数の積分に帰着できた. 例 4.46. R(cos(x), sin(x)) の形の関数でも, 定理 4.45 の方法を用いなくても原始関数を 求めることができるものも多い. しかし, 定理 4.45 の方法を用いれば, 部分分数分解を 経由して必ず原始関数を求めることができる. 例えば, f(x) = 1 a sin(x) + b cos(x) を積分してみよう. 定理 4.45 の方法を使えば, Z dx a sin(x) + b cos(x) = Z 2 2at + b(1 − t2)dt = 1 √ a2 + b2log bt − a +√a2+ b2 bt − a −√a2+ b2 + C となって, 有理関数の積分に帰着させて積分することができた. しかし, 一方, 三角関数 の合成公式から a sin(x) + b cos(x) = A sin(x + α) と書くことができる. よって, t = x + α とおけば Z dx a sin(x) + b cos(x) = 1 A Z dt sin(t) = 1 A Z du 1 − u2 = 1 2Alog | 1 − u 1 + u| として積分を実行できる. 定理 4.47. R(x, y) を2変数有理関数としたとき, R x,r ax + bn cx + d ! の形に表される関 数は, ad − bc 6= 0 の時には, t = r ax + bn cx + d と変数変換することにより, t に関する有理関 数の積分に帰着できる. 例 4.48. 以下の関数の原始関数は, 初等関数を使って書き表すことができないことが知 られている. 1. Z x2ne−x2 dx, n = 0または n ∈ N. n = 0の時は, 「正規分布」に関連する重要な積分であり,√π = Z R e−x2 dxである ことが知られている. (この積分は, 「重積分」を経由して求めるのが標準的な方 法である.)
2. Z pa sin(x) + b cos(x) dx, Z q a sin2(x) + b cos2(x) dx, Z dx pa sin(x) + b cos(x), Z dx pa sin2(x) + b cos2(x). これらの積分は「楕円積分」と呼ばれ, 「楕円の周長」. 「単振り子の運動」など と関係する非常に重要な積分である.
4.6
広義積分
定義 4.49 (広義積分). 関数 f が (a, b], [a, b), (−∞, a], [a, ∞) で連続であるとき, それ らの区間上での定積分を Z b a f (x) dx = lim α→a+ Z b α f (x) dx, Z b a f (x) dx = lim β→b− Z β a f (x) dx, Z a −∞ f (x) dx = lim α→−∞ Z a α f (x) dx, Z ∞ a f (x) dx = lim α→∞ Z α a f (x) dx, で定義し, 右辺の極限が存在するとき(有限の値を持つとき)積分は収束するという. 例 4.50. 1. α ∈ R に対して f(x) = xα の [1, ∞) 上の積分は, α < −1 の時に限り収束する. 2. α ∈ R に対して f(x) = xα の (0, 1] 上の積分は, α > −1 の時に限り収束する. 定義 4.51 (広義積分). 関数 f が (a, b), (−∞, ∞) で連続であるとき, それらの区間上で の定積分を, ある, η ∈ (a, b) または η ∈ R を取って, Z b a f (x) dx = lim α→a+ Z η α f (x) dx + lim β→b− Z β η f (x) dx, Z ∞ −∞ f (x) dx = lim α→−∞ Z η α f (x) dx + lim β→∞ Z β η f (x) dx, で定義し, 右辺の極限が存在するとき(有限の値を持つとき)積分は収束するという. 例 4.52. 1. f (x) = √ 1 1 − x2 の (−1, 1) での積分を考えると, Z 1 −1 dx √ 1 − x2 = limα→−1+ Z 0 α dx √ 1 − x2 + limβ→1− Z β 0 dx √ 1 − x2 = lim
β→1−Arcsin(β) − limα→−1+Arcsin(α) =
π 2 − (−
π 2) = π となる.
2. f (x) = 1 1 + x2 の R での積分を考えると, Z ∞ −∞ dx 1 + x2 = limα→−∞ Z 0 α dx 1 + x2 + limβ→∞ Z β 0 dx 1 + x2 = lim
β→1−Arctan(β) − limα→−1+Arctan(α) =
π 2 − (− π 2) = π となる. 3. f (x) = 1 x の (−1, 1) での積分を考えると, Z 1 −1 dx x = limα→0− Z α −1 dx x + limβ→0+ Z 1 β dx
x = limα→0−log |α| − limβ→0+log |β|
となるが, この極限は存在しないので, この積分は収束しない. 例 4.53. 区間 [0, ∞) 上で定義された連続関数 f : [0, ∞) −→ R が, f(x) > 0 かつ単調減 少であると仮定する. このとき, 任意の n ∈ N に対して, n−1 X k=0 f (k + 1) ≤ Z n 0 f (x) dx ≤ n−1 X k=0 f (k) が成り立つ. なぜなら, [0, n] の分割 ∆ = {0, 1, . . . , n} を考えると, 各小区間 [k, k + 1] で は f(k + 1) ≤ f(x) ≤ f(k) が成り立つので, s∆= n−1 X k=0 f (k + 1), S∆= n−1 X k=0 f (k) が成り立 つからである. この事実を用いると, 級数 ∞ X n=1 1 nα は, α > 1 の時収束し, 0 < α ≤ 1 の時 発散することがわかる. 特に α = 1 の時, log(n + 1) = Z n+1 1 dx x ≤ n X k=1 1 k ≤ 1 + Z n 1 dx x = 1 + log(n) が成り立つ.
★ 問題
演習問題 4.1. 以下の関数を微分しなさい.1. sec(x), 2. cosec(x), 3. cot(x), 4. sinh(x), 5. cosh(x), 6. tanh(x), 7. Arccos(x). 8. Arctan(x). 9. Arctan(1/x). 10. Arcsinh(x). 11. cos(k Arccos(x)). 12. etan(x).
1. √x2 + a2. 2. 1 1 +√x2 + 1. 3. r 1 − x 1 + x. 4. 1 sin(x). 5. 1 a + b tan(x). 6. 1 x3− 1. 7. 1 x√x2− 1, 8. Arctan( √ x), 9. x(Arctan(x))2,
10. Arccos(x). 11. Arctan(x). 12. Arctan(1/x). 演習問題 4.3. 区間 [a, b] 上で連続で, (a, b) 上で微分可能な関数 f が, f′ (x) ≡ 0 をみた すならば, f は定数関数であることを示しなさい. 【ヒント】 平均値の定理を使う. 演習問題 4.4. 定理 4.47 を証明しなさい. 演習問題 4.5. n ∈ N に対して, Z x2n+1e−x2 dx の不定積分を求めなさい. 演習問題 4.6. In = Z dx (x2+ 1)n とおくと, In+1 = 2n + 1 2n In− 1 2n x (x2 + 1)n,, n ∈ N が 成り立つことを示しなさい. 演習問題 4.7. Z π 0 sinn(x) dx を求めなさい. 演習問題 4.8. ∞ X n=1 1 nα の収束・発散を調べなさい. 演習問題 4.9. [1, ∞) 上で定義された非負値を取る連続関数 f が, ある s > 1 に対して lim x→∞x s f (x) = A をみたすならば I = Z ∞ 1 f (x) dx は収束し, ある 0 < s ≤ 1 に対して, lim x→∞x sf (x) = A をみたすならば I は発散することを証明しなさい. 演習問題 4.10. 以下の広義積分の収束・発散を調べなさい. ただし, α, β は全て定数と する. 1. Z 1 0 sin x xβ dx 2. Z ∞ 0 | sin(x)| x dx 3. Z ∞ 0 eαxsin(x) dx 4. Z ∞ 0 xα−1(1 − x)β−1dx 演習問題 4.11. p > 0 に対して, Γ(p) = Z ∞ 0 e−x xp−1dx とおくと, Γ(1) = 1, Γ(p + 1) = pΓ(p) が成り立つことを示しなさい. 演習問題 4.12. 宇宙の始まりの時点から, 1秒に1項づつ 1/k を加算していき, an = n X k=1 1 k の値を計算しているとしよう. 宇宙の始まりから現在まで, 約 139 億年経過して いると考えられているが, 現在の an の値はおおよそどのくらいになっているかを計算し なさい.
★ 変更履歴
• Version 1.0.1 (May 08, 2012): 定理 4.6, 2 の和の記号が抜けていたことを修正, 定 理 4.23 の証明の不等号を修正, 定理 4.24 の証明の最初の式の積分区間が逆になっ ていたことを修正.