アンカー工設置のり面の
健全性評価に関する研究
報告
平成22年9月10日
プロジェクトリーダー
神戸大学名誉教授
沖村
孝
研究体制
・研究代表者:神戸大学都市安全センター特別研究員
沖村孝(神戸大学名誉教授)
・参加大学 :神戸大学(沖村孝、芥川真一)
・近畿地整 :道路部
姫路河川国道事務所
近畿技術事務所
・参加企業 :西日本高速道路株式会社
日特建設株式会社
ライト工業株式会社
応用地質株式会社
株式会社ダイヤコンサルタント
研究の背景
切土のり面の安定化工法としてアンカー工が多くののり面
で採用されてきたが、アンカー工が
昭和32年(1957年)に我
が国において初めて導入
されて以来、
50年近くが経過
しア
ンカー工の
腐食
や、のり面の
劣化
等の問題が発生しており、
アンカー工設置のり面の健全性を評価
することが重要な課題
となってきている。
特に
昭和63年(1988年)
11月に制定された土質工学会(地
盤工学会)基準「グランドアンカ-設計・施工基準」(JS
F:D1-88)において
二重防食が義務づけられ
、続いて
グラウンドアンカーがその目的に応じて適切に使用されるよ
うに、
平成2年
2月に
「グラウンドアンカー設計・施工基準、
同解説」
が発刊された。これ以前のアンカー(以後
「旧タイ
プアンカー」
と呼ぶ)は、防食を重要視していなかったため
、アンカーの腐食・劣化等によりアンカーが破損し、飛び出
し現象などが見られ、ひいては交通障害を招くおそれがある
状況が発生している。
破断したアンカー
研究目的
このような背景から、本研究では、近畿
圏におけるアンカー工設置のり面の実態把
握や現地調査を実施し、この結果から現状
を明らかにするとともに、のり面の変状や
アンカー緊張力の簡易なモニタリング手法
の開発を進めるとともに実際のモニタリン
グなどを通じて、アンカー工が設置されて
いるのり面の健全性評価手法確立のための
課題を明らかにすることを目的とする。
NO
YES
アンカー工設置斜面の抽出
法面の健全性評価を実施
アンカー体の健全性評価
地山の健全性評価
平成2年
以前か
磁歪法による軸力測定
手法の検討
①目視点検
②頭部背面調査
③リフトオフ試験
④磁歪法による軸力測定
⑤モニタリング
①地表踏査
②現地調査による確認
・物理探査
・ボーリング
③変状観測
①アンカー変状状況の確認
②アンカー体の健全性確認
・リフトオフ試験による
軸力測定
・磁歪法による軸力測定
①斜面変状の確認
②地質状況の確認
③変状原因の推定
④変状速度等の確認
アンカー工が設置された法面の点検手法の検討
と健全性評価に向けての課題抽出
評価する路線の抽出
20年度実施
21年度実施
22年度計画
研究の
フローチャート
磁歪センサ
磁歪センサ
•
•
非破壊で鉄表面の応力を計測できる.
非破壊で鉄表面の応力を計測できる.
アンカーの軸力推定
アンカーの軸力推定
•
•
アンカー固定部の応力を計測.
アンカー固定部の応力を計測.
•
•
その応力から間接的に軸力を
その応力から間接的に軸力を
推定
推定.
リフトオフ試験装置
調査対象位置図
9号関宮地区
29号シソジカ谷地区
29号原地区
フリーフレーム工法(現場打ち吹付法
枠工)
型式F300-2.0m×2.0m
許容最大設計アンカー力
約80kN
受圧
構造
物
自由長
Lf=5.0~9.0m
定着長
La=3.0m
アンカー長
L=8.0~12.0m
総ネジPC鋼棒
φ23mm
ゲビンデスターブ(ナット定着方式)
規
格
29号
シソジカ谷
地区
「旧タイプアンカー」*施工現場
20年度 リフトオフ試験・磁歪法
モニタリング(アンカー)
21年度 地盤調査
モニタリング(地山)
22年度 予定
アンカー引き抜き試験
・モニタリングの継続
調査の経緯
H20年点検でアンカー頭部にゆるみ
H20年度
リフトオフ試験
(一部のアンカーで引き抜
け)
→
断層破砕帯の影響か?
H21年度調査
→
地質状況の把握(特にアンカー定着部)
→
地山の変状の観測
アンカー頭部のゆるみ
間詰めモルタル除去後
リフトオフ試験
荷重-変位量曲線
メンテナンスジャッキ
リフトオフ試験結果
シソジカ谷地区
●リフトオフ荷重は、約25~80kNとバラツキのある。
●最下段のI列に大きい荷重が集中している。
●リフトオフ試験荷重で25kN程度のアンカー(B-8,H-8)は、全体の平均に比べ荷重が低いことから、荷重が
減少した可能性がある。
3本のアンカーの引き抜けを確認
引原断層の位置
日本の活断層
1991年
確実度Ⅱ 活動度
C
近畿の活断層
2000年
L(リニアメント)
引原ダムの東側をほぼ南北に走る。
山地の高度不連続、断層鞍部が続く。
調査地
調査地
現地調査の目的・内容
アンカー定着部の地質確認
→ アンカーが抜けた原因の究明
• 弾性波探査:1測線
L=100m
・断層破砕帯位置の把握
• ボーリング:2箇所
・標準貫入試験:N値の把握
・孔内水平載荷試験:岩盤の変形特性の把握
・PS検層:Vp、Vs速度の把握
現状の法面は安定か?
• 観測
・孔内傾斜計:地中の変位
・地下水位計:水位変化
No1
No2
現地調査の順序
①主測線設定(平面測量・縦断測量)
②弾性波探査
③調査ボーリングおよび原位置試験
④孔内傾斜計および地下水位観測
ボーリングNo1位置
No1
ボーリング
No2孔位置
No2
H 477.75 478.26 477.92
至 戸倉
477.11 477.77TA.3
478.41
TA.4
477.72
477.37
TA.5
TA.6
506.48
TA.7
522.22
TA.8
520.00
501.93
TA.9
TA.10
493.67
A1T
477.79
A2T
477.95
国道29号
至
山崎
509.97 477.00 477.02 477.02 478.05 478.04 477.94 477.83 477.68 477.48 477.32 477.54 477.40 477.26 477.13 476.35 478.37 489.07 488.97 489.26 489.45 489.77 489.56 489.05 490.47 490.60 479.42 485.14 497.00 478.92 477.27 482.02 479.22 481.94 482.80 495.76 496.62 477.80 477.69 478.63 510.03 509.73 506.87 504.54 501.39 499.94 496.71 493.46 488.43 486.04 487.86 481.74 476.26 477.75 478.78 479.79 509.96 501.79 496.75 497.65 498.26 499.15 481.58 487.82 497.23 497.57 486.84 493.93 497.09 492.83 487.79 496.55 494.21 500.97 496.21 501.33 502.19 504.49 505.88 507.28 506.59 512.82 510.07 507.51 499.30 494.36 488.29 495.76 506.34 519.14 517.34 519.90 523.94 526.91 530.31 534.01 536.80 541.41 546.60 535.75 527.86 513.32 513.42 523.24 534.51 543.05 534.05 531.34 529.37 522.46 518.33 516.45 513.00 509.38 538.15 536.63 544.71 549.16 543.25 537.33 535.57 535.79 542.99 529.63 530.49 521.03 514.88 521.79 527.28 513.68 513.97 511.88 511.81 512.01 505.42 506.02 509.70 508.20 507.82 506.36 506.16 503.63 507.60 504.77 500.73 498.77 497.27 499.28 499.35 499.36 497.70 497.42 498.81 501.17 500.84 502.97 502.40 502.02 503.64 499.55 506.21 502.80 494.56 500.47 494.11 486.52 497.24 495.44 502.81 490.48 491.21 501.34 495.75 530.66 506.99 501.57 500.93 495.44 501.93 503.50 502.49 506.14 513.98 519.68 523.22 512.83 504.20 497.29 490.56 485.84 493.04 485.57 485.26 494.19 498.17 501.04 499.81 503.59 499.86 500.94 494.96 502.79 500.92 483.35 483.11 483.71 492.95 499.25 502.40 479.46(土)
As As As As S S S S 480 485 490 495 500 520 525 530 535 540 545 505 510 515 54 5 545 54 5 54 0 53 5 53 0 52 5 520 51 5 51 0 50 5 49 5 50 0 48 5 4 90 48 0 500 500 49 0 4 9 5 4 8 0 4 8 5 4 9 0 4 9 5100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
弾性波探査L=100m
No2-1,No2-2ボーリング
No1-1,No1-2ボーリング
N
鞍部
鞍部
急崖部
崩落土砂
低速度帯
低速度帯
低速度帯
断層位置
断層位置
崩壊地
推定地すべりブロック①
推定地すべりブロック②
1:500
0
10
20
30m
調査地平面図
鞍部
↓
鞍部
↓
調査地周辺のルートマップ
尾根の鞍部
鞍部
↓
主測線の設定
No2位置
No1位置
主測線
弾性波探査測線
リフトオフ試験で引き抜けた
アンカー(A-3,7,8)
FH= GH=482.47