• 検索結果がありません。

火成岩類の岩石学的性質からみた環伊豆地塊蛇紋岩 帯の発達史

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "火成岩類の岩石学的性質からみた環伊豆地塊蛇紋岩 帯の発達史"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

火成岩類の岩石学的性質からみた環伊豆地塊蛇紋岩 帯の発達史

著者 高橋 直樹

著者別名 Takahashi, Naoki

雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査

結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科

巻 平成21年6月

ページ 298‑303

発行年 2009‑06‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/26951

(2)

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目 論文審査委員(主査)

論文審査委員(副査)

高橋直樹 博士(理学)

博甲第1096号 平成21年3月23日

課程博士(学位規則第4条第1項)

火成岩類の岩石学的性質からみた環伊豆地塊蛇紋岩帯の発達史 荒井章司(理工研究域・教授)

海野進(理工研究域・教授),加藤道雄(理工研究域・教授),

森下知晃(フロンティアサイエンス機構・准教授),

杉本幹博(人間社会研究域・教授)

Abstract

ApartoftheyoungestophioliticrocksinJ「apanaredistributedinthe

Circum-IzuMassifSerpentineBelt(Mineoka,Hayama,Kobotokeand SetogawaBelt).TheconstituentrocksintheMineokaBelt,suchasbasalts,

gabbrosandperidotites,arealmostdismemberedanClareeXposeClas

tectonicblocksinserpentinitem61angesinshearzonesofthetrenchfinor fbrearcsediments,theHotaGroup、Ontheotherhand,ophioliticrocksare exposedasgravelsinsedimentaryrocks,ThefbrmerprotrudedtotheHota

GroupintheRecentwhereasthelatterareassumedtobetheEarlyMiocene・

OphioliticrocksarealsofbundintheMiddleMiocenetoPleistocenefbre

arcbasinsedimentsaroundtheMineokaBelt・Petrologicalcharacteristicsof

serpentinitegravelsinthesedimentsareverysimilartothoseinthe

MineokaBelt,suggestingthathomogeneousperiClotiteswereprobably widelyupliftedinthefbre-arcreglonoftheMineokaBeltthroughoutthe

timeaftertheEarlyMiocene、

GabbrosinconglomerateshavehighAncontent(=Ca/(Ca+Na)atomic ratio)inplagioclase,andclinopyroxeneandorthoWroxenearecharacterized highandlow-WM=Ca/(Ca+Mg+Fe)atomicratio)contents,respectivelyB Thesefbaturesindicatethatthegabbroswerefbrmedunderhydrous

conditionsandwerethenequilibratedatlowtemperatureconditions・In

theseconglomerate,fblsictointermediaterockssuchasandesite,rhyolite,

quartzdiorite,tonalitearealsofbundSo,theyarefbrmedatarc-setting・On theotherhand,basaltsintheRecentserpelltinitem61angehavebeen interpretedtobeofoceanicoriginSo,constituentrocksintheserpentinite

m61angeswerechangedfiPonlarc-typetooceanic-typethroughthetimeficom

theEarlyMiocenetotheRecent、

Thesefbaturesarealsoreco=nizedintheSetogawaareaThechangein

-298-

(3)

constituentrocksintheserpentinitem61angesthroughthetimewouldbe ubiquitouslyoccurredintheCircum-IzuMassifSerpentineBelt・Itis

infbrredthattherockscomposedoftheuppermantletocrustof`paleo-Izu

arc,protrudedalongthetransfbrmfaultatthenorthernendoftheShikoku BasinduringopeningoftheBasinintheEarlyMiocene,andlatertherocks beneaththeShikokuBasinwereincorporated

曰本列島には各所にオフイオライト様岩体が分布するが、本州中部の南部フ ォッサマグナ地域に分布する環伊豆地塊蛇紋岩帯(嶺岡帯、葉山帯、小仏帯、

瀬戸川帯)(荒井・石田,1987)は、新生代古第三紀一新第三紀中新世ごろに形

成された日本列島で最も新しいオフイオライト様岩類の露出する地帯と考えら れている。それゆえ、これらの岩石の形成、定置、そしてその後の発達史の過 程を、より詳細に検討することが可能であり、本邦及び世界各地のオフイオラ イト様岩体の発達史の解明に関して大きな'盾報を与えるものとなろう。

房総半島嶺岡帯は特徴的な地形を有する。地すべりが頻発し、緩斜面を持つ 地すべり地形が普遍的に発達する。衛星画像を見ると、この地帯にのみ東西方 向のリニアメントが多数みとめられる。この構造は、活断層研究会(1991)が

示した「鴨川‘地溝帯,北断層」と「鴨川‘地溝帯,南断層」に挟まれた区域

に特徴的に見られるものであり、後述のオフイオライト様岩類の産出もこの区 域内に限られ、地形と地質構造が密接に関係していることを示している。また、

この地質構造の形成が現在でも活動中である可能性が示唆される。

嶺岡帯では蛇紋岩類、斑れい岩類、玄武岩類、遠洋性堆積岩類などのオフィ

オライト様岩石が産出するが、それらはほとんど断片的であり、周囲の地層と の産状関係が不明な場合が多い。そこで、これらの岩石の産状を明らかにする 目的で詳細な地質調査を行った。その結果、オフィオライト様岩類が断続的な がら直線状に分布すること、特定の岩石種が1つの直線上に産出する場合が多 いことなどが判明し、オフイオライト様岩類が保田層群分布域内に何本もの平 行する断層帯を形成して露出することが示唆された。断層帯は潜在的に蛇紋岩 類を基質としてその中にその他のオフイオライト様岩類を構造的に取り込むよ うな構成をしていると推測される(いわゆる蛇紋岩メランジュ)。蛇紋岩類が目 立たずに、他の構成岩石が単独で保田層群中に露出する場合も存在する。なお、

-299-

(4)

この断層帯は現在でも活動が継続中である可能`性があり、それらを胚胎する保 田層群は激しく剪断変形を受け、結果として地すべりを頻繁に引き起こしてい

ると推定される。このような変形した保田層群は、自然露頭としては現れにく

く、採石場や道路工事現場など人工的な露頭でのみ確認されている。

嶺岡帯に産出するオフイオライト様岩類のうち、これまでにあまり報告がな されていない斑れい岩類について産状や岩石学的性質の詳しい検討を行った。

斑れい岩類の産状としては、蛇紋岩中に岩脈として含まれるもの、蛇紋岩中に 構造岩塊として含まれるもの、保田層群分布域内に単独の岩塊として露出する もの、斑れい岩類の礫が卓越する堆積性の礫岩(斑れい岩質礫岩)中に産する ものなどが存在する。これらの産状の違いによって岩石学的性質に違いがみら れるかどうか検討した。蛇紋岩中の構造岩塊として含まれるものは、ホルンブ レンド斑れい岩が多く、両輝石を含む斑れい岩が伴うなど、組成は比較的単調 であるのに対して、斑れい岩質礫岩を構成する岩石はかんらん石を含むものか ら石英を含むものまで変化に富んでいる。斑れい岩質礫岩中の礫は鉱物化学組

成(特に単斜輝石のM餅[=Mg/(Mg+Fe)])では2つのグループに分けられ、

M餅の高いグループはかんらん石を、低いグループは石英を含むのが特徴であ

る。蛇紋岩中の岩塊の組成はこの2つのグループの中間の値を示す傾向がある が、この理由は不明である。両輝石の組成から求めた平衡温度では、蛇紋岩中 の岩塊に比べて斑れい岩質礫岩中の礫は低い温度を示す。また、斜長石のAn値 [=Ca/(Ca+Na)]は全般に高い値を示す。以上から、嶺岡帯の斑れい岩類は比較 的低温で水に富む条件下で生成したものと推測され、特に斑れい岩質礫岩中の 礫はより低温(浅部)で形成されたと考えられる。

嶺岡帯に産するオフイオライト様岩体の産状は、それらの地表(海底)ヘの 貫入・突出の年代の違いと見ることができる。すなわち、斑れい岩質礫岩の礫 は前期中新世(嶺岡層群あるいは保田層群の形成時)に海底に突出した岩体か らもたらされ、蛇紋岩中の岩塊は、現在に近い時代に上昇・突出したものと位 置づけられる。斑れい岩質礫岩は荒井ほか(1983)が報告した蛇紋岩砂岩(保 田層群の要素とされている)と連続するものである可能性がある。この前期中 新世の地層以外にも、嶺岡帯内及びその周辺地域に分布するより新しい時代の 地層中にこれらの岩石が礫あるいは砂岩中の粒子として含まれる場合があり

(三浦層群大崩層(1600万年前)(奥澤・久田,2004)、同千畑層(600万年前)

-300-

(5)

(荒井ほか,1990)、上総層群市宿層(70万年前)(荒井ほか,1990)、同長浜層(60 万年前)(高橋ほか,2008)}、それらはそれぞれの時代に海底に貫入・突出した 岩体から供給されたと考えられる。各時代の地層中の蛇紋岩礫は岩石学的特徴

がよく似ており{含まれるクロムスピネルの化学組成が、M餅に富み、

Fe3+/(Cr+Al+Fe3+)比が低い}、基本的に共通した岩体からもたらされていると

考えられる。つまり、前期中新世から現在まで、嶺岡帯付近において一連のオ フイオライト様岩類(蛇紋岩メランジュ)が継続的あるいは断続的に上昇・突 出を繰り返していることを示す。このことは、これらの岩体の当初のエンプレ

イスメントの過程を考察する上で、大きな制約条件となりうる。つまり、垂直

方向にかなりのボリュームを持った岩体が当初に固体貫入したことが想定され る。各時代に貫入・突出したオフイオライト様岩類の岩石学的性質を詳細に見 ると、中期中新世の岩体は蛇紋岩類、斑れい岩類、玄武岩類ともに島弧的な性

質を示す岩石が多いが、時代を経るにつれて海洋的な岩石が露出する。玄武岩 類では大崩層や千畑層にはすでにホットスポット起源の岩石が含まれ(高橋・

荒井,1994)、現在では、中央海嶺起源の岩石が卓越する(小川・谷口,1987)。

しかし、斑れい岩類については、千畑層にはAn値が高く、嶺岡帯の岩石よりも さらに低温条件下で形成された斑れい岩類が産出し、現在でもホルンブレンド やCaに富む斜長石を主体とし、水に富む比較的低温の環境で形成されたとみら れ、あまり海洋的ではない。岩石種によってこのような違いが生じる理由はは っきりしない。今後、さらに詳しい検討を要すると考えられる。

嶺岡帯の発達史や、含まれる岩石の起源を考える際には、環伊豆地塊蛇紋岩 帯全体についての発達史や構成岩石の性質を考慮する必要がある。そこで、環 伊豆地塊蛇紋岩帯でオフィオライト様岩類がよく露出する赤石山地南部の瀬戸 川帯について、特に斑れい岩類を中心に詳しい調査を行った。瀬戸川帯の斑れ い岩類の産状としては、嶺岡帯と同様に、蛇紋岩中の構造岩塊及び斑れい岩質

礫岩の礫が存在し、さらに泥質基質の地層中に礫が含まれる(含礫泥岩)。斑れ い岩質礫岩と含礫泥岩は瀬戸川層群の堆積岩中に地層として挟まれるものであ り、形成年代が特定される(前期中新世:杉山・下川,198sなど)。岩石学的検 討の結果、斑れい岩質礫岩と含礫泥岩中の礫は岩石種構成及びそれらの岩石学 的特徴がよく似ており、両者とも変化に富んだ鉱物組成を持つことが判明した。

また、鉱物化学組成の分析(単斜輝石、ホルンブレンドのM餅,TiO2wt%,

-301-

(6)

Cr203wt%,REE存在量)では、ダナイトーウエールライトー単斜輝岩一斑れい

岩と一定の分化トレンドを示し、一連の岩体から供給されたものであることを 示す。ただし、石英を含む岩石ではこれらと組成のギャップを持つものが存在 する。斑れい岩類は斜長石のAn値が高く、嶺岡帯と同様に水に富む低温の条件

下で形成されたと考えられる。

嶺岡帯と瀬戸川帯に産する斑れい岩質礫岩は全体の礫種構成がよく似ている。

両者とも、斑れい岩、閃緑岩のほか、単斜輝岩などの超苦鉄質集積岩や安山岩 一流紋岩などの中性一珪長質火山岩が含まれる。斑れい岩類の岩石学的性質も 鉱物組成が変化に富む点や斜長石がCaに富む点などよく類似する。しかも、そ れらは全般的に島弧的な性質を示す岩石である。このことは、瀬戸川帯から嶺 岡帯にかけての延長数100kmに及ぶ範囲で、島弧的な性格を示す上部地殻から 下部地殻(さらに上部マントルまで)に渡る共通の岩体が海底に固体貫入.突 出し、周囲に礫を供給したことを示している(同時か時間差があるかは現時点 では不明)。そして、貫入・突出した岩体は当初は島弧的な‘性格のものだが、後 には、海洋的な性格の岩体に変化していく。以上のことは、これらの岩石のエ

ンプレイスメントの過程に対する大きな制約条件となり、四国海盆拡大時にフ ィリピン海プレート北端部がトランスフォーム断層となり、その断層に沿って

当初は四国海盆の東端に存在した古伊豆弧の物質が貫入・突出し、その後、四 国海盆の海底を構成する物質が本州弧側に付加されたとする考え(Arai,1991)

を支持するものである。ただし、玄武岩類の形成年代(40-50Ma)を考慮する と、海洋性岩石の起源は古伊豆弧の基盤をなす西フィリピン海盆の岩石の可能 性も考えられる。

四国海盆拡大時に固体貫入・突出し、本州弧に付加されたオフィオライト様

岩類は、四国海盆拡大停止後、特に房総半島嶺岡帯では、フィリピン海プレー

トの沈み込みによる圧縮力を受けて再活動し、本州弧前弧域で上昇を続け、外 縁隆起帯として挙動するようになったと考えられる。その岩体の上昇は前期中 新世以降断続的に繰り返され、各時代の地層中に砕屑物を供給した。そして、

最も新しい上昇・突出岩体が、現在の嶺岡帯において地表に露出するもの、と いうことになる。

-302-

(7)

学位論文審査結果の要旨

高橋L直樹氏の提]ローl論文鎧圭叺…弓F1成.2jL集旦且且且Q目頭発表Q結晶塗迫と_に蓋i査委員 会_塗開催上,…以工Q結論鳶f畳ijt号旦…高橋氏催1-房総圭鳧嶺岡荒なら静岡県瀬戸j11叢腫菫る.

第三系の11ね」’2畳…[j環便:夏地塊蛇j紋;岩措」-1三分布丈重爆成豈類灸_桧に灘jfLkl豈一(ガヱ区)L 鐙圭jqiな上.量山岩2類塗詳細二jtii[討上左cL-高jli謎XLQ岩石鴬H1ヨムJli圧究の桧長は、…蝋質裳鮒、…王

・久上烏以之的萱j舅L塗自負nt垣j夏を調査隆.圭.ZL完全1二翼耀。iこる_と_二畳塵.あり_>…重厚重確実 な成果塗jtA友_ら上正宣迄。L_副喬氏LQ班究iiSt象Lは,…嫌在な成因の岩五ZlS云_亥上量.払久に混 合LnlZM量.z量呈上.厩懲jtk畳-M9)蚕』w岩石裳飽班窓ZlS-困」雑煮jjiz則.」情報I二二LZb1n 迄jMLnjh量1-また灸_我丞国J工§最LL着kl-[Zt三Mオブ式上叢.L蚕迫迄灸輿_高橋氏は、_Lu

】1iHjtu/L鎧と_L五J鬘i」弧的なjM)が卓越丈豆具.と雲、_(2)L鳧弧的なZ黒止:Z以之岩丞蜜接應佳 _コーニーと.,」_.(且)L、ZM`L旦上岩劉二J多犠怯鎧・Jtn蓑i軍11生鐘迄魚二.と.愈一(、全)L環臣真蝋塊臓X岩 j叢zi致島弧前縁部jx5p援iまれ断層職1GI三髭成臺迦迄上・藤粗臺れゑ二.と全_窪.蔓塗睨ら魁皇上 上風一二鯉」M}成果は,_旦杢列島の発達史鐙圭、i丈Z弘或:二M上成因論JQZX(友に識_し4重 j裏Z:E知見産長えゑ輿…蓑語カー1M室分:蚕迄魚_と制断上左。…よ2五1-杢議査委と員会!式全会三二致 n-j?'三論文峰高橋直樹氏健j婁土L_(理裳Lの裳位産長えゑQ1三金嶌ね.L虹]M1と判11ilrコオニ畳_

'

へ‐

-303-

参照

関連したドキュメント

それ以外に花崗岩、これは火山系の岩石ですの で硬い石です。アラバスタは、石屋さんで通称

『サンスクリット文法』 (岩波書店〈岩波全書〉、 1974、のち新装版 ) 、および『サンス クリット読本』 (春秋社, 1975

岩手県 ポワッソン・ブラン - 洋食専門店が作業効率改善により取組む新テイクアウト商品の開発 岩手県 有限会社幸楼

岩内町には、岩宇地区内の町村(共和町・泊村・神恵内村)からの通学がある。なお、岩宇 地区の高等学校は、 2015

第四系更新統の段丘堆積物及び第 四系完新統の沖積層で構成されて おり、富岡層の下位には古第三系.

〒020-0832 岩手県盛岡市東見前 3-10-2

・コナギやキクモなどの植物、トンボ類 やカエル類、ホトケドジョウなどの生 息地、鳥類の餌場になる可能性があ

敷地と火山の 距離から,溶 岩流が発電所 に影響を及ぼ す可能性はな