• 検索結果がありません。

フィリピンの投資環境 物流 インフラ フィリピンの人口の大部分が集中しているマニラ首都圏は フィリピン全土の発展に大きく寄与している 他方 この地域は 慢性的な交通渋滞や自然災害によって引き起こされる頻繁な洪水などのリスクを抱えている 上記の課題に対処すべく マニラ首都圏における運輸交通セクターのイ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "フィリピンの投資環境 物流 インフラ フィリピンの人口の大部分が集中しているマニラ首都圏は フィリピン全土の発展に大きく寄与している 他方 この地域は 慢性的な交通渋滞や自然災害によって引き起こされる頻繁な洪水などのリスクを抱えている 上記の課題に対処すべく マニラ首都圏における運輸交通セクターのイ"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

フィリピンの投資環境

物流・インフラ

フィリピンの人口の大部分が集中しているマニラ首都圏は、フィリピン全土の発展に大きく寄 与している。他方、この地域は、慢性的な交通渋滞や自然災害によって引き起こされる頻繁な洪 水などのリスクを抱えている。上記の課題に対処すべく、マニラ首都圏における運輸交通セクター のインフラ整備の加速化が急務となっている。 2014 年 6 月、フィリピン政府は、日本の国際協力機構(JICA)が策定を支援した「マニラ首都 圏の持続的発展に向けた運輸交通ロードマップ」を正式に承認した。2018 年 2 月現在において、 本ロードマップは更新調査の最終段階にある。ロードマップ公表後は、日本の技術と政府開発援 助(ODA)を積極的に活用しつつ、2030 年までにマニラ首都圏における近代的で効率的な交通ネッ トワークの構築に向けたロードマップについて協力を行っていくことが想定されている。

主要な国際空港と港湾の位置

図表 20-1 はフィリピンにおける主要な国際空港と港湾の位置である。 図表 20-1 フィリピンの主要な国際空港と港湾 ● 国際空港 ① ニノイ・アキノ(マニラ) ② マクタン・セブ ③ ダバオ ④ スービック・ベイ ⑤ クラーク ■ 港湾 A マニラ港 B セブ港 C ダバオ港 D カガヤン・デ・オロ港 E スービック港 ④ スービック・ベイ E スービック港 ⑤ クラーク ① ニノイ・アキノ A マニラ港 B セブ港 ② マクタン・セブ D カガヤン・デ・オロ港 ③ ダバオ C ダバオ港

(2)

第 20 章 物流・インフラ

港湾

島嶼国であるフィリピンは港湾を多く有しており、その数は 2016 年時点で 2,452 港である。 このうち、約 1,600 港が公営である。その内、フィリピン漁業開発公社(Philippine Fisheries Development Authority: PFDA)が 425 の漁港を管理し、残りは運輸通信省傘下のフィリピン港湾庁 (Philippine Ports Authority: PPA)が管理している。例外的に、セブ港湾とスービック港湾はそれぞ れセブ港湾庁(Cebu Ports Authority: CPA)、スービック湾都市庁(Subic Bay Metropolitan Authority: SBMA)が管理している。 2016 年に PPA の管理下の港湾で輸送された貨物量は約 249 百万トンであり、2015 年の約 223 百万トンから 12%の増加であった。 図表 20-2 貨物量の推移(積み上げ) (出所)フィリピン港湾庁より作成 0 50 100 150 200 250 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (百万トン) (年) 国内・到着 国内・発送 国際・輸入 国際・輸出

(3)

フィリピンの投資環境

図表 20-3 コンテナ数の推移

(出所)フィリピン港湾庁

以下は主要なターミナル、港湾である。 ① マニラ国際コンテナターミナル

マニラ国際コンテナターミナル(Manila International Container Terminal: MICT)はマニラ港を 構成する港の一つであり、マニラ北港(North Harbor)とマニラ南港(South Harbor)の間に位置 する。フィリピン最大の取り扱い数量を誇るコンテナターミナルである。

その保守運営は国際コンテナターミナル・サービス社(International Container Terminal Services, Inc.: ICTSI)に委託されており、約 94 ヘクタールの敷地で年間の貨物取扱い可能量は 2.75 百万 TEU である。 ② セブ港 セブ港は CPA により運営されている。ターミナルは国際貨物と国内貨物に分かれており、国 際貨物ターミナルは 14 ヘクタールで 512m の停泊水域を有し、年間の最大取扱キャパシティは 30 万 TEU である。 ③ スービック港 スービック港はマニラ都市圏から約 110km 北西、ザンバレス州に位置する。スービック米軍 基地はフィリピンに 1992 年に返還され、同年に制定された基地転換法に基づきフリーポートに 指定された。運営は SBMA が行っている。15 の埠頭と 2 つのコンテナターミナル(約 14 ヘク タール)からなり、年間の最大取扱い可能量は 30 万 TEU である。 449.7634 493.2492 521.2579 523.8419 552.5121 586.18296 652.026425 0 100 200 300 400 500 600 700 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (万TEU) (年)

(4)

第 20 章 物流・インフラ

空港

フィリピンには 2018 年 5 月末現在、国際空港が 10 空港、国内空港が 115 空港存在している。 南ルソン国際空港が現在建設中であり、2019 年の完成を見込む。クラーク国際空港は年間 800 万 人の利用に向けて再開発が予定されている。 中でも主要な空港はニノイ・アキノ国際空港、マクタン・セブ国際空港、クラーク国際空港、 スービック国際空港、ラオアグ国際空港、プエルトプリンセサ国際空港、ダバオ国際空港、サン トス国際空港、ザンボアンガ国際空港である。 交通省によると下記の当局が空港を管理しており、各当局の概要は下記の通り。

1. Civil Aviation Authority of the Philippines (CAAP):フィリピンの航空業界の制度・規制の設計 を担う。

2. Manila International Airport Authority (MIAA):ニノイ・アキノ国際空港の施設の管理を行う。 3. Clark International Airport Corporation (CIAC):クラーク国際空港の施設の管理を行う。 4. Civil Aeronautics Board (CAB):フィリピンにおける航空業界の経済面について規制・促進・

開発を行う。

5. Mactan-Cebu International Airport Authority (MCIAA):マクタン・セブ空港の運営を行う。 6. Philippine Aerospace Development Corporation (PADC):フィリピンにおける航空宇宙産業の

開発を行う。

2016 年には 2,000 万人以上の乗客が国際線を利用し、331 千トンの貨物が空輸された。フィリ ピンの主な航空会社はフィリピンエアラインとセブパシフィックの 2 社であり、いずれも国内線 及び国際線を運行している。

(5)

フィリピンの投資環境 図表 20-4 フィリピンの国際空港の国際線利用者数推移 (出所)CAAP より作成 図表 20-5 国際便の運航数 (出所)CAAP より作成 1,297 1,414 1,513 1,600 1,649 1,894 202 228 144 94 116 152 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 2011 2012 2013 2014 2015 2016 乗客数(万人) (年) ニノイ・アキノ その他 217 239 175 164 97 103 35 39 17 8 10 13 0 50 100 150 200 250 300 2011 2012 2013 2014 2015 2016 便数(千便) (年) ニノイ・アキノ その他

(6)

第 20 章 物流・インフラ 図表 20-6 国際便の貨物空輸量 (出所)CAAP より作成 ①ニノイ・アキノ国際空港 ニノイ・アキノ国際空港は 1948 年に、米国の空軍基地としての運用が開始された。1961 年に管 制塔やターミナルビルが建設され、正式にマニラ国際空港と認知された。その後 1983 年に名称が 現在のニノイ・アキノ国際空港に変更された。ベニグノ・ニノイ・アキノ Jr が当該空港にて暗殺 された 4 年後の事であった。2017 年現在、ターミナルは以下の通りである。 1. 第一ターミナル:1981 年オープン、年間 6 百万人のキャパシティがある。 2. 第二ターミナル:1999 年オープン、年間 9 百万人のキャパシティがある。 3. 第三ターミナル:2008 年オープン、年間 13 百万人のキャパシティがある。 4. 第四ターミナル:最も古く、エアアジアゼスト、タイガーエアーフィリピン、スカイ ジェットエアラインなどのローカル航空会社のみ発着している。 ※第一~第三ターミナルは全て国際線が主だが、一部国内線としても利用されている。 空港から市内へは約 7km あり、交通手段としてはエアポートメータータクシー(黄色い車体) やクーポンタクシー(行き先に応じた定額制)等がある。 ②マクタン・セブ国際空港 マクタン・セブ国際空港はマクタン島のラプラプ市に位置しセブ島の横に隣接している。2016 年においては利用客数が 8.8 百万人に到達した。ターミナルは国際線と国内線の 2 つに分かれて いる。空港からセブ島中心地までは約 9km であり、主な交通手段はタクシーである。 269,456 311,055 293,116 355,141 319,145 331,483 15,402 13,595 5,274 100 281 307 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 2011 2012 2013 2014 2015 2016 貨物量(トン) (年) ニノイ・アキノ その他

(7)

フィリピンの投資環境 ③クラーク国際空港 クラーク国際空港はパンパンガ州のクラークフリーポート内に位置する。2015 年の利用客数は、 国内線及び国際線合計で 87 万人である。当該空港を拡張する計画が承認され、2017 年 12 月に建 築が開始された。2020 年の第一四半期に拡張が完成する予定である。 ④スービック・ベイ国際空港 スービック港はフィリピンで最初のフリーポートであり、スービック港メトロポリタン当局が 当該空港の運営と管理を行っている。

道路

フィリピンにおける道路の総延長は、約 22 万 km であり、その内 32,770km(約 15%)は国道 である。舗装された道路の割合は約 83%で、残る 17%は未舗装である。国道の 90%は舗装されて おり、マニラ首都圏の国道は 100%舗装されている。路面の状況は年々改善されているが、依然と して 24%の舗装路は改修を必要としている。有料高速道路はマニラ首都圏の南ルソン高速道路 (SLEX)と北ルソン高速道路(NLEX)が存在しており、総延長距離約 300km である。この両高 速道路を 14.8km 延長した上で接続するプロジェクトが 2014 年に承認された。フィリピンの国道 は公共工事・高速道路省の管理下にある。 首都圏では慢性的な交通渋滞を解決するために、自動車やバス、二輪等全ての車に対して「ナ ンバーコーディング規制」により、プレート番号の下一桁に応じて平日 7 時から 19 時まで車を利 用できない日を設定している。また、交通渋滞の主要な原因ともなっている大型貨物トラックに 対し主要道路の通行禁止時間を設定する規制もある。 マニラ市内の渋滞の様子 図表 20-7 はフィリピンにおける主要な高速道路である。他には中央ルソン高速道路や建設中の カビテ-ラグナ高速道路、上述の南北ルソン高速道路プロジェクトがある。計画段階のものとし ては北ルソン高速道路や、カマリンズ高速道路があり、C5 高速道路が計画の評価段階である。

(8)

第 20 章 物流・インフラ

図表 20-7 高速道路の概要

名称 区間 長さ

(km)

開業年 Daang Hari-SLEX Link Road

(Muntinlupa-Cavite Expressway) Project alternatively called Muntinlupa – Cavite Expressway

バコール、カビテ – SLEX

(南ルソン高速道路) 4 2015

NAIA Expressway (Phase II) Skyway - Manila Cavite Toll

Expressway 7.15 2017

North Luzon Expressway (NLEX) ケソン – パンパンガ 84 1977 年、2010 年延長 South Luzon Expressway (SLEX) マニラ – バタンガス 36 1977 年、2008 年改修、

2011 年延長

Manila-Cavite Expressway マニラ – カビテ 14 1999 年、2010 年延長

Subic-Clark-Tarlac Expressway

(SCTEX) スービック – タルラック 94 2007 年

NAIA Expressway NAIA Terminals– Skyway、

Cavite expressway 7.7 2017 年

Southern Tagalog Arterial Road SLEX の延長道路 42 2001 年(フェーズ I) 2008 年(フェーズ II) Tarlac-Pangasinan-La Union

Expressway (TPLEX) タルラック – ラウニオン 67.9

2013 年(フェーズ I) 2018 年(フェーズ II)

Metro Manila Skyway マニラ首都圏 20 1977 年(フェーズ I)

2009 年(フェーズ II) (出所)公共工事・高速道路省及び道路会社 HP 等から作成

鉄道

フィリピンにおける鉄道は国鉄(PNR)一本と三本の高架鉄道(LRT、MRT)が運行している。

図表 20-8 フィリピンにおける鉄道の概要

PNR LRT Line-1 LRT Line-2 MRT- Line 3 Total

延伸距離(km) 28 18.1 12.6 16.5 75.2 駅の数 16 20 11 13 60 始点・終点 Tutuban - Alabang Baclaran(南 端)- Roosevelt (北端) Recto(マニラ 市内)Manila city - Santolan (東端) Taft - North Avenue

(9)

フィリピンの投資環境

フィリピン国有鉄道

フィリピン国有鉄道(Philippine National Railways: PNR)は、スペイン植民地下の 1891 年に Manila Railway Company がマニラ首都圏近郊の路線を開業し、1961 年に国有化されルソン島北部のサン フェルナンド及び南部のレガスピ、更に支線が開設され計約 900km の路線を有するまでに至った。 しかし、その後の太平洋戦争や道路網の整備、ピナツボ山大噴火や台風等の自然災害による顧客 離れから現在では Caloocan から Alabang 間及び Sipocot から Legaspi 間の運行のみとなっている。 PNR は運輸通信省傘下にあり、現在サービス停止中の Bicol 行きの路線のリバイバルが計画され ている。

図表 20-9 PNR Route

(出所)PNR ホームページより作成

高架鉄道

マニラ首都圏における高架鉄道としては、LRT(Light Railway Train)1 号線・2 号線及び MRT (Metro Rail Transit)3 号線があり、いずれもマニラ首都圏の通勤・通学用として利用されている。 LRT の運営は軽量鉄道庁(Light Rail Transit Authority: LRTA)が担っている。MRT は BLT (Build-Lease-Transfer)方式で、首都圏鉄道輸送会社(Metro Rail Transit Corporation: MRTC)が政府の認可 の下、資金調達、建設し、DOTC が MRTC から施設を借り運営している。 LRT・MRT ともに Beep Card と呼ばれる IC カードによるキャッシュレスの料金徴収システムが 2015 年に交通省より導入され、LRT1 号線、LRT2 号線、MRT3 号線全てで利用可能となっている。 2018 年 3 月現在で、政府により計画中/実施中の鉄道に関するプロジェクトは下記の通り。 1) LRT 改修プロジェクト 現存する 1 号線、2 号線の改修計画であり、具体的には高架橋の修理、線路の更新、壁面の 更新等が計画されている。設備の老朽化に伴う改修であり、2020 年の完成が見込まれてい る。

(10)

第 20 章 物流・インフラ 2) LRT2 号線西部拡張プロジェクト 現存する 2 号線の延伸工事であり、Recto 駅から西部の Pier 4 まで 3.02km の延長を行う。 延長に伴い 3 駅が追加になる予定である。2017 年に開始され、2021 年の完成が見込まれて いる。 3) Cubao(Cubao Interchange)歩道橋建設プロジェクト Cubao 駅の LRT2 号線から MRT3 号線へ乗り換える乗客向けの直通の歩道橋の建設プロ ジェクト。2018 年の完成を見込む。 4) LRT1 号線南部延伸プロジェクト LRT1 号線の南部へ 20.7km の拡張を行うプロジェクトであり、現存する Baclaran 駅から Bacoor まで延長する。JICA のサポートにより官民合同で実施されている官民連携(Public-Private Partnership)プロジェクトである。2021 年の完成を見込んでいる。

5) LRT2 号線延伸プロジェクト

LRT2 号線の延伸プロジェクトであり、現存する Santolan 駅から 4km 延伸し 2 駅を新設す る。プロジェクトは 2017 年末時点で National Economic Development Board により承認され ており、進行中である。 6) ニノイ・アキノ国際空港接続プロジェクト LRT1 号線の Baclaran 駅からニノイ・アキノ国際空港の第 3 ターミナルまでの 6.2km の延 伸及びその間に 4 駅を新設するプロジェクトである。現在は、Feasibility Study の前段階で ある。 図表 20-10 高架鉄道概要 名称 路線距離 全線開業年 駅数 運賃(2018 年 4 月現在) 一日当たり乗客数 (2014 年集計) ラッシュアワー 時の運転間隔 LRT 1 号線 19.65km 1985 年 20 駅 15~30 ペソ 474,200 1 分に 1 本 LRT 2 号線 13.8km 2004 年 11 駅 15~25 ペソ 220,800 5 分に 1 本 MRT3 号線 16.9km 2000 年 13 駅 13~28 ペソ 466,200 3 分に 1 本 (出所)LRTA 及び MRTC 資料より作成

(11)

フィリピンの投資環境

図表 20-11 LRT・MRT 路線図

(出所)LRTA 資料より作成

LRT1 号線は Baclaran 駅と Roosevelt 駅をつなぐ。Monumento 駅が終着駅であったが、Roosevelt 駅までの延伸がなされた。LRT2 号線は Recto 駅から Santolan 駅までをつなぐ。MRT3 号線は North Avenue 駅と Taft Avenue 駅をつなぐ。

上記に加え、Light Rail Transit Authority (LRTA)は SM Prime Holdings と Grand Central Station を SM North EDSA に建設する合意書に署名した。実現すると、この駅は現存する MRT3、LRT1、建 設中の MRT-7 と計画段階(後述)のメトロマニラ地下鉄をつなぐ駅となる。 地下鉄がないマニラ都市圏において、鉄道による移動はこれら 3 つの高架鉄道で支えられてい る。LRT1 号線及び 2 号線は利用客数がキャパシティを下回っているが、MRT3 号線は一日あたり 38 万人のキャパシティに対して 56 万人が利用している。

地下鉄

2017 年現在フィリピンには地下鉄が存在しない。フィリピン初となる地下鉄道網の開発を、国 家経済開発庁(National Economic and Development Authority: NEDA)が 2018 年の実施に向けて承 認した。NEDA の投資計画委員会(Investment Coordination Committee: ICC)は約 355.6 億フィリピ ンペソの予算を承認した。ICC の承認を受け、次はドゥテルテ大統領が議長を務める NEDA で審 議・評価され、ここで承認を得た場合、実際にプロジェクトとして開始される。

(12)

第 20 章 物流・インフラ

開発が実現すれば、Quezon city にある Mindanao Avenue からニノイ・アキノ国際空港までを接 続することとなる。2015 年に前政権により認知されたプロジェクトであり、初期の調査を日本が 実施した。政権による承認が早々に確保されると見込まれるが、2018 年に着工、2025 年完成を目 指しており、マニラ市民や訪れる外国人に渋滞緩和等のメリットが感じられるのは 2025 年以降と なる見込みである。

電力

電力セクターの歴史 フィリピンでは 1980 年代後半から 1990 年代初頭にかけて深刻な電力不足が生じ、長期停電が 続いていた。そのため、当時の政府は短期間で電力供給力を上げるために電力危機法や BOT 法を 制定し、民間セクターの発電部門への参入を促進する政策を進めた。しかし、コストよりも電力 の供給を優先したため、政府と独立発電業者(IPP)間の契約は IPP に有利なものとなり、国家電 力公社(National Power Corporation: NPC)による電力買取コストが上昇した。また、NPC による 電力事業の独占により電力料金が上昇したため、アジア他国と比べて高い電気料金水準となった。 その後、深刻な電力不足は解消されたものの、継続する電力需要増(過去 10 年間における増加率 は年平均約 4%)及び高止まりする電気代への対応として、2001 年 6 月に電力産業改革法(Energy Power Industry Reform Act: EPIRA)が施行され、電力セクターの民営化が進められてきた。具体的 には NPC の資産を電力部門資産・負債管理公社(Power Sector Assets and Liabilities Management Corporaton: PSALM)による管理の元で売却を行う民営化が進められており、そのプロセスは 2017 年時点においても進行中であり、650MW のマラヤ火力発電所(Malaya Thermal Power Plant)等が 一例である。2013 年 6 月に電力の小売が自由化された事で、発電、送配電、卸と合わせて電力業 界が全て自由化されている。

自由化されていることも手伝い、フィリピンの電力業界に進出している日系企業は一定程度あ る。一例として、東京電力と丸紅の合弁会社 Team energy が IPP 事業者として発電事業を行ってい る他、三菱日立パワーシステムズが現地 IPP 事業者等に機器を納入している。 電源ミックス、需要家、電力料金 原子力発電所が稼働していないフィリピンは化石燃料に深く依存している。経済成長に伴って 増加する電力需要は主に石炭焚き火力発電によって担われている。 フィリピン国全体の設備容量は 2015 年から 2016 年において、18,765MW から 21,423MW に増 加した。この増加は新設の発電所が商用運転を開始したことによる。ルソンでは Southwest Luzon Power Generation 社による 150MW×2 基の石炭火力発電所、Siemens 社により建設された 450MW の San Gabriel 天然ガス火力発電所等が商用運転を開始した。ビサヤでは Palm Conception 社によ る 135MW 石炭火力発電、132.5MW の HELIOS ソーラーファーム等が商用運転を開始した。ミン ダナオにおいては 135MW×2 基の Filinvest Depelopment Corporation 社による石炭火力発電、San Miguel Corporation 参加の SMC Global Power Holdings Corporation 社による 150MW の石炭火力発電 所等が稼働した。

(13)

フィリピンの投資環境 図表 20-12 供給源別発電容量割合(2016 年) (出所)エネルギー省 フィリピンにおける電力消費量は 2015 年の 82,413 千 MWh から 2016 年の 90,798 千 MWh まで 増加した。この増加率(10.2%)は 2014 年から 2015 年にかけての増加率(6.7%)を大幅に超過 している。エネルギー省はこの増加の主な原因は 2016 年の上半期にフィリピン全体に影響を及ぼ したエルニーニョの影響であるとしている。 フィリピンの電力料金は全ての分野において ASEAN の中で最も高く、シンガポールと同レベ ルである。この理由として、政府からの補助金を実施していない事が挙げられる(インドネシア 等では政府の補助金が実施されている。)。このような状況の中、エネルギー省や電力業界の規制 機関である ERC(Energy Regulatory Commission)などは電力料金の低減に向けて自由化などの政 策を実施してきた。ただ、自由化が電気料金の低下につながっていないことや規制の不足を指摘 する声もある。 外国直接投資の観点からは、PEZA がミンダナオ地域において製造業の投資を呼び込むべく割 引料金を計画していることが挙げられる。実現すればミンダナオムスリム自治区、ダバオ地域、 カラガ地域が第一段階として、2.5 ペソ/kWh の電力料金が適用される可能性がある。 図表 20-13 ASEAN 各国との電力料金比較(2015 年) (ペソ/kWh) 産業用 商業用 フィリピン 5.84 7.49 タイ 5.37 5.37 インドネシア 1.66 2.15 マレーシア 4.71 4.97 シンガポール 5.84 7.27 (出所)エネルギー省より作成 石炭, 34.63% 水力, 16.89% 石油, 16.88% 天然ガス, 16.02% 地熱, 8.94% 太陽光, 3.57% 風力, 1.99% バイオマス, 1.09% 設備容量 = 21,423 MW

(14)

第 20 章 物流・インフラ 図表 20-14 MWh あたりの住宅電力価格(USD) (出所)Euromonitor Database より作成 メラルコ社(Meralco)はフィリピン最大の配電会社であり、36 都市及び 75 自治体に配電を行っ ている。配電先はマニラ都市圏を含む。

上下水道

上水道 フィリピンにおいて、国家経済開発庁(NEDA)が政策や計画の立案から上水道の整備や投資計 画、進捗のモニタリングまでを全て担っている。

マニラや近隣の州においては Metropolitan Waterworks and Sewerage System (MWSS)及び委託を受 けている運営権者が 2 社上水道サービスを実施している。一方、地方の上水は自治体や小規模な コミュニティ組織が担っている。具体的には、180 ほど存在する Cooperative と呼ばれる組織(日 本語では組合と訳される小規模組織)、Barangay Water and Sanitation Association (BWSA)や Rural Waterworks and Sanitation Association (RWSA)等である。フィリピン国民の上水へのアクセスをさら に改善するため、アジア開発銀行(ADB)は 2017 年から 2019 年にかけて 5 件の水関連プロジェ クトを 770 百万ドルの補助金で実施する予定である。 下水道 大部分のフィリピンの都市は一定の排水システムを有している。雨水と汚水システムは独立し ていない。雨水量は多く、排水システムとその内容物を河川に流出させている可能性も指摘され ており、排水システムの設置および維持は、地方政府の主要な課題の 1 つとして認識されている。 0 50 100 150 200 250 300 350 2012 2013 2014 2015 2016 MWh当たり価格 (USD) (年) 中国 インドネシア フィリピン シンガポール 韓国 台湾 タイ 日本

(15)

フィリピンの投資環境 現状では、全フィリピン人口の 10%未満のみが適切な下水道システムを利用している状況にあ るといわれている。下水道システムの利用が制限されているため、都市部と農村部の両方で排水 を処理するための主な衛生技術として、浄化槽が取り付けられている。ただし、約 1900 万人の フィリピン人は衛生施設を十分享受できていないとみられている。フィリピン国土交通省は、不 十分な下水システムにより、人体、生態系や生物多様性への悪影響が生じていると分析している。 排水と衛生の問題に取り組むために、政府は 2020 年までにフィリピンの都市部における水質の改 善と公衆衛生の保護を目的とした下水道と節水管理プログラム(NSSMP: National Sewerage and Septage Management Program)に着手している。

ガス

フィリピン国において都市ガスは整備されていない。都市部においては LPG や灯油が家庭の料 理用に使われており、地方においては燃料材木や木炭が使われている。2011 年時点では家庭で消 費された燃料の 54%が燃料材木、41%が LPG であった。 フィリピンにおけるガス業界の転換点は、2001 年に北パラワン地域のマランパヤガス田が国内 で初めて商業運転を開始したことである。各地のコンバインドサイクルガス火力発電所へガスを 供給していることから、マランパヤガス田が現在のフィリピンのガス業界を形作っていると言って 過言ではない。 図表 20-15 主要地域における LPG の価格表(2017 年 12 月時点) 地域/州 LPG 価格/11Kg あたり Batangas PHP632.5-716 Cavite PHP550-716 Laguna PHP540-750 Quezon PHP540-780 Rizal PHP520-698 Marinduque PHP700-761 Mindoro OCC PHP670-780 Mindoro Oriental PHP780-805 Romblon PHP889-1001 Palawan PHP761-762 Albay PHP730-793 Camarines Norte PHP740--785 Camarines Sur PHP685-739 Catanduanes PHP822-890 Masbate PHP797 Sorsoogon PHP750-840 (出所)エネルギー省より作成

(16)

第 20 章 物流・インフラ

通信

フィリピンにおける通信事業は 2 社の大通信会社であるフィリピン長距離電話会社(Philippine Long Distance Telephone Company: PLDT)と Globe Telecom 社の寡占状態である。2 社合計で市場 全体をほぼ独占している。通信業界の規制は運輸通信省管轄下にある国家電気通信委員会 (National Telecommunications Commission: NTC)が担っている。

モバイル

通信業界全体と同じく、PLDT 社所有の Smart Communications 社と Globe Telecom 社の寡占状態 である。2016 年時点のフィリピンにおける携帯電話の浸透率は 100 人あたり 121.5 台である。携 帯電話の契約者数は 4G や LTE 対応機器の普及により今後も増加することが見込まれている。フェ イスブックやツイッターなどのソーシャルネットワーキングサイトは人気が高く広く利用されて いる。エリクソン社は、フィリピンにおけるスマートフォンの利用者は 2021 年に 90 百万人を突 破し、都市部ではさらに高い普及率となると予測している。 図表 20-16 携帯電話契約者数の推移

(出所)The Economist Intelligence Unit Industry Report, 2017 より作成

インターネット 歴史的に見るとフィリピンは東南アジアの中でインターネットの普及率が最も低かった。これ は島嶼国という状況にあって固定回線のネットワークが不在であったこと、インターネットサー ビスが高価格であったことや PC の普及率の低さが原因であった。2009 年から 2017 年にかけては 普及率が 9%から 60.9%まで急増した。この増加の要因として 2011 年から 2015 年にかけて固定 ブロードバンド回線契約者数が増加したことや低予算の高速通信プランが充実したことが挙げら れる。モバイルブロードバンドも力強い成長が、特に物理的に分離された地方で見込まれている。 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 2012 2013 2014 2015 2016 (千件) (年)

(17)

フィリピンの投資環境

インターネットの普及率向上に対する政府の取り組みとして、情報・通信技術省は 2017 年 5 月 に National Broadband Plan の草案を公表した。約 780 億ペソの費用をかけて 2020 年までに普及率 の低いエリアに 10mbps のサービスを提供する。島嶼国であるフィリピンにおいてこのようなプ ロジェクトを実施するにあたっては大規模な工事が必要になるため(例えば、海底ケーブルの敷 設等)、情報・通信技術省は PPP などによる民間の参画に寄せる期待が大きいと表明した。FS が 2017 年の第 2 四半期に開始され、2018 年の工事着工を目指している。他にも、情報・通信技術省 は Wi-Fi プロジェクトを 2017 年 6 月に開始した。このプロジェクトは通勤者に対して Epifanio Delos Santos Avenue で無料のインターネットアクセスを提供するものである。ドゥテルテ大統領 の「国家全体に無料のインターネットを提供する」という方針の試金石となる。

郵便

郵便事業は国有のフィリピン郵便公社(Philippine Postal Corporation)が行っている。各種郵便 サービスを提供しており、国際・国内の双方がサービス対象となっている Express Post、Letter Post、 ダイレクトメール、着払いなどが一例である。近年、PHLPost はその業態を物流及び倉庫業へと 拡大した。以前に比べると郵便サービスは改善傾向にあるが、依然として紛失するケースも多く、 配送システムが脆弱で時間がかかるため、又フィリピンには郵便ポストがなく郵便局まで持参す る必要があることから、外国人にはあまり利用されていない。海外から送られてくる荷物(手紙 は除く)は通知が届くのみで自宅等宛先までは配達されず、郵便局まで取りに行く必要がある。 なお、民間の宅配業者は多数存在し、外国企業・外国人は民間業者を利用する場合が殆どである。

(18)

第 20 章 物流・インフラ ひとくちメモ 12: 現地日本人在住者からみたフィリピン医療事情 ****病院・薬局、ところかわれば*** 《意外な時期にインフルエンザが流行》 フィリピンでは 8 月~9 月にインフルエンザ患者が増加する傾向がみられる。同時期はデング熱の流 行時期と重なるため、正しい判断と治療のためにも、自覚症状が出た場合は早期の受診を勧めたい。イ ンフルエンザワクチンの接種は 4~5 月が推奨されている。 *在比邦人の間では 1 月頃にも増加するが、この時期は年末年始の日本への一時帰国の影響が一因と も考えられている。 《病院に行ってみると》 マニラ首都圏在住邦人がよく利用する総合病院。多数の「貸診察室」を個人の医師がレンタルしてい るのがフィリピンスタイルである。A 医師は(月)(水)(金)午前中、B 医師は火曜午後のみなど、契約形態 により在院時間も異なり、確実に同じ医師に診てもらうためには予約が必要になる。個人医師の集まり なので検査結果を含む情報の共有は難しいのが実情である。支払いは各診察室の受付で行われ、医師ご とに料金も異なるが、長時間の支払い待ちは無い。 《検査内容》 日本で血液等の検査を受ける場合、調べたい内容によっては多数の項目が網羅される。それに対しフィ リピンでは検査可能な疾患・項目がまだまだ少なく、その少ない結果からの診断となる。また、インフ ルエンザやマイコプラズマ感染症のような流行性疾患でも検査可能な病院が非常に限られている。 《薬局にて》 日本と同様に受診毎に病状に応じた処方箋を医師に作成してもらい、薬局で購入する。処方箋の再利 用や、処方箋無しの購入は禁止されているが、実態として行われていることは否めない。抗生物質を正 しく服用しないことによる耐性菌の増加は問題となっており、公衆衛生的にも患者側、薬局側双方の自 覚が必要とされている。 慣れない環境で不安を感じながら治療を続けストレスを貯めることは症状の悪化を招きかねない。必 要に応じ帰国しての診断・治療が可能な環境づくりを勤務先や家庭で築くことが長い目でみた健康維持 につながると思われる。 フィリピンにおいて発生している疾病 疾病の種類 % 呼吸器関連疾患(かぜ症候群、インフルエンザ、気管支炎、扁桃咽頭炎など) 50 消化器関連疾患(食中毒、アメーバ赤痢、胃腸炎、胃炎、胃潰瘍など) 15 皮膚科疾患(蕁麻疹、水疱瘡、虫刺され等) 6 泌尿器疾患(膀胱炎、尿路感染症など) 4 整形外科疾患 3 その他 22 マニラ日本人会診療所調べ(2017 年)

図表  20-3    コンテナ数の推移
図表  20-8    フィリピンにおける鉄道の概要
図表  20-9    PNR Route
図表  20-11  LRT・MRT 路線図

参照

関連したドキュメント

スキルに国境がないIT系の職種にお いては、英語力のある人材とない人 材の差が大きいので、一定レベル以

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

う東京電力自らPDCAを回して業 務を継続的に改善することは望まし

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ

父親が入会されることも多くなっています。月に 1 回の頻度で、交流会を SEED テラスに

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

子どもたちが自由に遊ぶことのでき るエリア。UNOICHIを通して、大人 だけでなく子どもにも宇野港の魅力