協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第60巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.60,No.1. 平成21年8月 August,2009. 協同問題解決に焦点を当てた 広汎性発達障害児への作文指導の試み. 大久保賢一・深川 麻衣*・安達 潤 北海道教育大学旭川枚教育発達専攻特別支援教育分野 *増毛町立舎熊小学枚. AStudyonTeachingCompositionforChildrenwithPDD FocusonCollaborativeProblemSolving OHKUBOKenichi,FUKAGAWAMai*andADACHIJun DepartmentofEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *shagumaElementarySchool. 概 要 本研究では広汎性発達障害児2名を対象に協同問題解決を用いた作文指導を実施した。その結果,対象児 間の相互交渉における「無視」が減少し,「提案」などの問題解決に必要なやり取りが増加した。また,作 文の内容に関しても,直接指導を行った「絵カードを題材とした協同で取り組む作文」においては,接続語 と心的状態語の使用回数や種類数に増加がみられた。しかしながら,直接介入を行っていないカテゴリー(文. 数,記述内容,因果的関連)や自由作文に対する般化については課題が残された。最後に,対象児間におけ る相互交渉と作文の変化に影響を及ぼした要因,そして今後の課題について考察を行った。. Ⅰ はじめに. AgranandWehmeyer(1999)は,障害のある. することが含まれる(Park&Gaylord−Ross, 1989)。 このような問題解決のプロセスを学習すること. 子どもの自己決定を育てるために,1)社会面・. により,獲得したスキルの般化を促すという指摘. 対人面に関する問題解決,2)地域社会や職場に. がある(D’zurillia&Gold−fried,1971)。学習し. おける問題解決,3)学業面の問題解決を指導す. た事柄を状況に応じて柔軟に応用させることに困. ることが重要であり,可能であることを述べてい. 難性を示す傾向のある広汎性発達障害児・者に. る。問題解決のプロセスには,状況を分析するこ. とって,ParkandGaylord−Ross(1989)が述べ. と,可能性のある複数の方法を立案すること,そ. る問題解決のプロセスを系統的に学習することは. の中から最もうまくいきそうなことを選択するこ. 特に重要であるといえるだろう。. と,そして,実際に行動した後にその結果を評価. 冒頭に示したAgranandWehmeyer(1999)は,. 179.
(3) 大久保賢一・深川 麻衣・安達 潤. 複数の領域に渡る問題解決を学習することの重要 性を述べていた。その中でも,本研究においては,. れる。. 作文指導を行った研究の1つとして,榎本・随. 学業面の問題解決,特に「作文」に焦点を当てた. 田(2002)がある。榎本・随田(2002)は,知的. い。安西・内田(1981)は,作文を書く過程も,. 障害生徒2名に協同問題解決を用いた作文指導を. 目標に向かっての問題解決行動であり,目標に至. 行った。その結果,2名とも一方的な働きかけか. るまでの方略が重要であるとしている。. ら,相手の意向を問うた上で自己の考えを述べる. ところで,広汎性発達障害児の学業面における つまずきについて,学習障害児と同様の読み書き. ようになり,作文の改善とともに,対人交渉の円 滑化が示されたことが報告されている。. の問題を抱える場合もあるが,むしろ,文章の意. 協同で問題解決に取り組むことにより,他者と. 味が理解できなかったり,設問(出題者の意図). のやり取りを通して解決方法の相違に気付き,自. を読み取ることに関する問題が大きいという指摘. 己の解決方法を修正したり,他者の考えを取り入. がある(杉山・辻井,1999)。この背景の1つに,. れて,新たな解決方法の学習を促進することが期. 自閉症児・者の抱える「心の理論」(Baron−. 待できる(高橋・倉盛・吉田・六車,1996)。特に,. Cohen,Leslie,&Frith,1985)の問題が関連して. 子ども同士の協同問題解決は,考えを主張するこ. いることが考えられる。「心の理論」とは,他者. とにより自己肯定感を味わったり,他者の考えと. が思考や知識を持つ存在であり,それがその人た. の相違から自己の考えを見つめなおすモニタリン. ちの行動に影響を及ぼすことを理解する機能であ. グがなされやすいということが指摘されている. る(Attwood,1998)。 作文においても,広汎性発達障害児のつまずき. (丸野,1994)。. このように,協同問題解決を通して学習を進め. の特性として,いくつかの傾向が指摘されている。. ることにより,単に,教え教えられる関係ができ. 例えば,大橋・平沢(1981)は,自閉症児の書く. るだけでなく,子どもたち双方の学業スキルやコ. 作文に関して,1)行動や出来事の内容を伴わな. ミュニケーションスキルを促進する効果が期待で. い断片的・羅列的記述が多く,抽象的内容には乏. きる。子ども同士の相互交渉が,課題への取り組. しい,2)題材を直観的・視覚的イメージによっ. みを促進させ,課題へ共に取り組むことを通して. て捉えることが多く,事物・自称に内在する諸関. 相互交渉が促進されるならば,社会性や対人面に. 係の把握が困難である,3)定型的表現形式にか. おける困難性を抱える広汎性発達障害児の協同問. たよりがちである,4)文章全体にまとまりを欠. 題解決に関する研究には,大きな意義があるとい. き,一つのセンテンスに多くの題材を盛ったり,. えるだろう。. 主体と客体の混同が著しかったりすることなどを 報告している。. 以上のような指摘は,広汎性発達障害児の抱え. そこで,本研究は,協同問題解決を用いた作文 指導を行い,対象児間の相互交渉の推移や,作文. の変化について分析し,指導の及ぼす効果とその. る対人関係の問題,コミュニケーションの問題,. 要因,そして今後の課題について検討することを. 常同性や固執性の問題が,例えば,「文脈をうま. 目的とした。. く読み取れない」,「出題意図を読み取れない」,. または,「ステレオタイプな表出パターンに固執 してしまう」などといった学業面の問題にまで派 生する可能性を示唆しているといえる。今後さら に,広汎性発達障害児の学業面における困難性の 実態や,その要因について明らかにするとともに,. 指導プログラムの開発と実践研究の蓄積が求めら. 180. Ⅱ 方 法 1.対象児 (1)対象児1(以下,Sl). Slは情緒障害特別支援学級に在籍する小学6 年生の男子であった。保護者からは,「/トさい頃.
(4) 協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み. から多動であり,集団の中での指示が通りにく. 菓を使う,4)接続詞や指示語を使う,5)動作・. かったり,友達とうまくかかわれないことが多. 気持ち・様子を表す言葉やその過程を表す言葉を. かった」と報告されていた。6歳時に,医療機関. 使うことを挙げている。その中でも,対象児に対. において広汎性発達障害の診断を受けた。/ト学5. して実施した事前テスト(詳細は後述する)にお. 年生の時に実施したWTSC−Ⅲの結果は,FTQが. いて,特に接続語と心的状態語の使用に困難性が. 92(ⅤIQ=79,PIQ=108)であった。研究開始. 示されたことから,本研究では,接続語と心的状. 時に実施したLearningDisabilitiesInventory(上. 態語を適切に使用することを作文指導における標. 野・豊・海津,2005)(以下,LDIとする)では,. 的とした。. 「聞く」,「話す」,「読む」,「書く」,「計算する」, 「推論する」の6領域において,「聞く」,「推論 する」の2領域で「つまずきあり」,「話す」,「書 く」,「計算する」の3領域で「つまずきの疑い」 という判定結果であった。「書く」の領域における, 「作文は限られた量であったり,決まったパター. 3.手続き (1)全体の構成. 本研究は11月14日から12月26日の間の計6日間 に渡り,原則的に週1回のペースで実施した。1 日あたりに要した時間はおよそ90分であり,その. ンであったり,筋道が通らなかったり,内容的に. 間に2∼3つの課題を行った。本研究には,対象. も乏しかったりする」という質問項目に対しては,. 児,第1著者と第2著者,そして補助者として特. 「ときどきある」と回答されていた。. 別支援教育を専攻する大学生1∼2名が参加し た。. (2)対象児2(以下,S2). S2は小学3年生男子である。/ト学校では,週 に2日(1日あたり3時間)情緒障害特別支援学. (2)指導内容と具体的な手続き. 指導期間中においては,ストーリーのある複数. 級に通級し,算数や作文,図工などの個別学習を. 枚の絵カードを題材として,2名の対象児が協同. 行っていた。2歳時に,医療機関において自閉性. で取り組む作文(以下,「協同の絵カード補助作文」. 障害の診断を受けた。/ト学校2年生の時に実施し. とする)の指導を行った。絵カード補助作文とは,. たWISC−Ⅲの結果は,FIQが90(VIQ=97,. 4枚1セットの絵カードによって構成された絵. PIQ=83)であった。研究開始時に実施したLDI. カード(1枚は白紙)を並べ,白紙の内容を考え. では,「聞く」,「話す」,「読む」,「書く」,「計算. たり,絵カードに合った話を考え,それを作文に. する」,「推論する」の6領域において,「聞く」,「話. する課題である(Fig.1参照)。絵カードには,. す」,「書く」,「計算する」,「推論する」の5領域. DLM・配列絵カードを使用した。本研究を実施. で「つまずきあり」,「読む」の1領域で「つまず. した日程と各課題において使用した絵カードの内. きの疑い」という判定結果であった。「書く」の. 容をTablelに示す。絵カード補助作文は,榎本・. 領域における,「作文は限られた量であったり,. 随田(2002)を参考にし,「はじめ」,「なか1」,「な. 決まったパターンであったり,筋道が通らなかっ. か2」,「おしまい」と展開する絵カードをホワイ. たり,内容的にも乏しかったりする」という質問. トボードに4枚並べ,最後の1枚を白紙とした。. 項目に対しては,「よくある」と回答されていた。. また,対象児間の相互交渉を促進させることを狙 いとして,1∼2つの課題を終えるごとに,白紙. 2.作文における指導目標の選定. 西浦(1990)は,作文を書く際に重要な観点と して,1)内容を1つに絞る,2)はじめ・なか・ おわりの三段落に分けて書く,3)順序を表す言. の枚数を段階的に増やし,最終的には絵カードが 1枚,白紙が3枚になるようにした。. 各課題の冒頭では,対象児2名に対して相談し ながら課題に取り組むように教示し,Table2に. 181.
(5) 大久保賢一・深川 麻衣・安達 潤. なか2. おしまい. なか1. はじめ. 「rⅥ Fig.1絵カード補助作文における教材の例(女性が買い物をしている絵). Tablel指導の日程とテーマの一覧 フェイズ. 日にち. 絵カードの内容. 11月14日 ・自己紹介・ゲーム ・事前テスト(個別の自由作文). 11月19日 ・事前テスト(個別の線画補助作文) ・事前テスト(協同の線画補助作文). 12月3日 ・指導1. 赤ちゃんとおじいさんの絵 女性が買い物をしている絵 女の子がおもちゃを落として壊してしまう絵 男の子がフェンスを乗り越えて,ズボンが破れてしまう絵. ・指導2. 12月10日 ・指導3. 女の子がジュースをこぼしてしまう絵. ・指導4. 女の子が本を落としてしまう絵. ・指導5. 自転車に乗っている男の子が転んでしまう絵. 12月17日 ・指導6. 男の子が金づちで釘を打って,何かを作っている絵. ・指導7. 男性が手紙を書いている絵. ・指導8. 雪だるまが溶けかけている絵. 12月26日 ・事後テスト(個別の自由作文) ・事後テスト(個別の線画補助作文). 男の子の服が汚れてしまう絵. ・事後テスト(協同の線画補助作文). 実がなっている木の絵 ※自由作文では「昨日の出来事」がテーマであった. Table2 協同の絵カード補助作文の流れと教示の内容 教示の内容. ステップ 1.題名決定. 「このお話の題名を考えてください」. 2.白紙部分の内容決定. 「『はじめ』と『おしまい』がつながるように,白いところの話を考えてください」. 3.口頭作文. 「『はじめ』と『おしまい』がつながるように,最初から交替で話を作ってください」. 4.文字作文. 「今,話したことを交替で書いてください」. 5.評価・推敵. 「二人で作った文はどうですか?このままでよいですか?それともどこか直したいところはありますか?」. 示した手順で指導した。2名の対象児は,絵カー ド1枚ごとについて交替で作文し,最終的に全体 のストーリーを構成することが求められた。例え. をS2が担当した。各々が作文している時には, 互いに相談することができた。 援助は,対象児が作った文章の中に,接続語や. ば,「はじめ」の箇所をSlが担当した場合は,「な. 心的状態語が1つもみられなかった場合に限って. か1」をS2が,「なか2」をSlが,「おしまい」. 行われた。援助はTable3のように,援助の度合. 182.
(6) 協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み Table3 援助の内容例 援助の段階 接続語に対して. 心的状態語に対して. 援助の内容例. 1段階目. 「この間にどんな言葉を使うとうまく文章がつながりますか?」. 2段階目. 「『そして』という言葉を使ったらどうでしょう」. 1段階目. 「00(登場人物)はこのときどんな気持ちだったでしょうか?」. 2段階日. 「『うれしかった』という言葉を使ったらどうでしょう」. いの軽い方から重い方へ2段階で行った。また,. ける相互交渉について,北澤(1997)と田坂・随. 接続語や心的状態語が1つでも含まれていた場合. 田(2002)を参考に,Table4のように,相手へ. は,セッションの終わりに,「特に良かったところ」. の働きかけと働きかけに対する反応のカテゴリー. として接続語や心的状態語に丸をつけ,言語称賛. を定義し,頻度と各カテゴリーの比率を求めた。. を行うことによってフィードバックをした。. 最初の指導では,文字作文においてもホワイト. 作文については,榎本・随田(2002)に基づき, 口頭作文と文字作文それぞれにおいて,文数,記. ボードを使用したが,対象児に書きにくそうな様. 述内容,因果的関連,接続語,心的状態語の数に. 子が見られたため,2日目からは,口頭作文の段. ついて測定を行った(Table5を参照)。. 階まではホワイトボードを使用し,文字作文では,. 400字詰め凰稿用紙を使用した。また,交替で文. 5.研究デザイン. 字作文をする際に,ふざけ合う様子が見られたた. 指導効果を検証するために,指導の開始前と終. め,3日目からは,文字作文の段階で,原則的に. 結後にそれぞれ事前テストと事後テストを行い,. 一人が作文を書いている間,もう一人は,指導室. 結果を比較することを計画した。事前テストと事. 内にある少し離れたスペース(互いの姿は見えな. 後テストでは,直接指導を行う協同の絵カード補. い)に待機するよう指示を行った。. 助作文を実施し,さらに指導効果の般化について 検討をするために,協同ではなく,個別で行う絵. 4.結果の分析. カード補助作文,そして,個別で行う自由作文を. 研究期間中のテスト場面と指導場面は全てビデ オに録画し,分析を行った。まず,問題解決にお. 実施した。自由作文では,「昨日の出来事」をテー マとして400字詰め原稿用紙を用いた。時間・枚. Table4 相互交渉における各カテゴリーの定義 カテゴリー 働きかけ. 働きかけへの反応. 操作的定義. 質 問. 自分がわからないことや,相手の考えや思いを相手に尋ねる発言や動作。. 意 見. 相手へ自分の考えを示したり,既出内容に新たな考えを加えて働きかける発言や動作。但し, 提案や教示は含まない。. 提 案. 相手へ案を出すこと。但し,意見は含まない。. 教 示. 相手を教える発言や動作。. 意 向. 相手の考えや思いを確かめる発言や動作。. 無 視. 相手の働きかけに反応しなかったり,相手の質問に対して応答をしない。. 反 論. 相手の働きかけ内容に,同意せず,別の考えを示したりして応じる発言や動作。. 受 容. 相手の働きかけ内容を受け入れたり,それを繰り返したりして応じる発言や動作。. 付 加. 相手の質問に説明で応じたり,相手の働きかけ内容に既出内容を加えて応じる発言や動作。. 発 展. 相手の働きかけ内容を認めて,さらに新しい考えを加えて応じる発言や動作。. 183.
(7) 大久保賢一・深川 麻衣・安達 潤 Table5 作文における各カテゴリーの定義 カテゴリー. 定. 文数. 義. 例. 主語一述語からなるもの. ・大雨が降った。. ※主語述語関係がみられず,単語のみの表記の場合む文数に含める. ・大雨。. ・大雨が降ったため,川が増水した。. 主語一述語関係に着目し,重複内容は測定しない. 記述内容(記述数). ※この場合,主語を川,述語を増水とし,記述内容は1. 因果的関係にある二つの記述内容. 因果的関連(記述数). ・大雨が降ったため,川が増水した。(明示的) ・大雨が降り,川が増水した。(非明示的) ・大雨で川が増水した。(出来事が名詞句) ・大雨が降った。川が増水した。(文をまたぐ) ・したがって,だから,このように(理由と結果) ・ようするに,こうして(まとめ) ・ついに,最後に(結果) ・00するとき(条件) ・そうすると,それでは(展開). 接続語(使用回数と種類数) 接続詞・接続助詞等,接続を表現する語. ・しかし(逆接). ・その上,そして,また,しかも(付け加え) ・なお,すなわち(補足) ・なぜならば(解説). ・たり,とか,でも(並列転換) ・はじめに,まず,その後(順序) 心的状態語(使用数と種類数) 感覚・欲求・感情・意志・思考状態を表現する語・痛い,寒い ・欲しい,00したい ・嬉しい,悲しい. ・00しよう ・困る,悩む,00と思う. 数の制限はなかった。また,協同の絵カード補助. 作文ではホワイトボードを使用し,個別の絵カー ド補助作文ではA4サイズの白紙を使用した。事 前テストと事後テストにおいては,援助やフィー. Ⅱ 結 果 1.問題解決における相互交渉の推移 指導期間中における対象児の働きかけの頻度を. Fig.2に示す。指導期間中を通して一定の変化は. ドバックは行わなかった。. ′b54. 咄曝e土′や哩革. 指導1 指導2 指導3 指導4 指導5 指導6 指導7 指導8 Fig.2 指導期間巾における対象児の働きかけの頻度. 184.
(8) 協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み Table6 協同の絵カード補助作文における相互交渉の結果 間. 1Tノ. ー刀. 働. l S. 事前テスト 指導1 指導2. 案 示 向 質 意 掟. 対する反応 反論. 教. 受容. 指導4. 指導5. 指導6. 指導7. 指導8 事後テスト. 0. 0. 0. 20. 0. 100. 0. 0. 0. 25. 100. 68. 0. 80. 14. 0. 60. 33. 25. 50. 0. 16. 0. 0. 14. 0. 20. 50. 43. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 17. 16. 25. 0. 16. 0. 0. 72. 0. 20. 0. 16. 0. 23. 17. 0. 0. 33. 50. 0. 0. 0. 0. 54. 66. 50. 0. 33. 0. 0. 100. 40. 0. 50. 0. 33. 0. 17. 0. 40. 20. 0. 50. 66. 0. 10. 40. 0. 0. 17. 0. 10. 40 25. 見. き. 働きかけに 無視. 指導3. 23. (. 意 0. 17. 0. 発展. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 50. 33. 0. 20. 0. 50. 0. 17. 0. 40. 50. 0. 0. 17. 0. 0. 0. 40. 25. 0. 0. 0. 0. 50. 0. 0. 0. 33. 50. 0. 100. 0. 0. 0. 0. 14. 12.5. 14. 43. 14. 37.5. 43. 43. 58. 25. S2 働きかけ 質問. 14. 0. 意見. 25. 14. 提案. 25. 43. 教示 意向. 100. 0. 0. 50. 100. 29. 100. 0. 0. 5. 4. 2. 0 2. 0. 0. 0. 0. 付加. 0. 7. 0. 0. 3. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 3. 1. 0. 0. 0. 0. 1. 2. 7. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. よU. 1. 0. 0. 1. 3. 1. 2. 0. 29. 0. 0. 25. 14. 14. 14. 0. ※数値はパーセンテージ. みられなかったものの,課題ごとの変動が大きい. 2.作文内容の変化. という傾向,そして,両対象児の働きかけの頻度. (1)標的とした接続語と心的状態語の使用回数と. がほぼ連動して推移するという傾向が認められ. 種類数の推移. た。. 協同の絵カード補助作文において標的とした,. 次に,相互交渉のカテゴリー比率の結果を. 接続語と心的状態語の使用回数と種類数の推移を. Table6に示す。Slでは,最初は「意見」が多く. Fig.3に示す。指導開始前には全く使用されてい. みられたものの指導の後半になるにつれて減少傾. なかった接続語,心的状態語ともに使用回数に増. 向を示し,一方で「提案」は増加傾向を示した。. 加傾向がみられ,同じ語が繰り返して用いられる. 働きかけに対する反応については,指導の後半に. ことはあるものの,種類数も同様に増加傾向を示. なるにつれて「無視」が減少傾向を示し,「発展」. した。. がみられるようになった。. S2は,Slと比較して全体的に「意向」が多い という特徴,指導日によって働きかけのパターン が変動しやすいなどの特徴がみられた。働きかけ. (2)その他のカテゴリーに関する結果 1)協同の絵カード補助作文. 協同の絵カード補助作文の結果をTable7に示. に対する反応については,Slと同様に,指導の. す。文字数,記述内容に大きな変化はみられなかっ. 後半になるにつれて「無視」が減少する傾向がみ. たものの,事前テストではみられなかった因果的. られた。. 関連がわずかにみられるようになり,前述したよ うに,接続語,心的状態語の使用回数と種類数が 増加した。. 185.
(9) 大久保賢一・深川 麻衣・安達 潤. 癖回旺世. テスト. 事前 精義1 指導2 指導i 指暮4 指導5 楕凛k 指導7 指暮8 書換. テスト. 播れ テスト. 事前. 指■2 指可b 播蠣4 指導5. 指導6 指導7 指導8. 事■. テスト. Fig.3 協同の絵カード補助作文における接続語と心的状態語の使用回数(左)と種類数(右)の推移. Table7 協同の絵カード補助作文の結果 事前テスト. カテゴリー. 口頭作文. 事後テスト. 文字作文. 口頭作文. 文字作文. 文数. 5. 5. 6. 記述内容. 5. 5. 6. 因果的関連. 0. 0. 1. 接続語. 0. 0. 1(1). 2(2). 心的状態語. 0. 0. 1(1). 3(3). ※括弧内の数値は種類数. 2)個別の絵カード補助作文. 全てのカテゴリーにおいて減少がみられたもの. 個別の絵カード補助作文の結果をTable8に示. の,文字作文では,文数,記述内容,接続語(種. す。Slは,全てのカテゴリーにおいて増加がみ. 類数は変化なし)に増加がみられた。. られた。S2は,口頭作文では心的状態語以外の. Table8 個別の絵カード補助作文の結果 SI. S2. 事前テスト. カテゴリー. 事後テスト. 口頭. 文字. 文数. 4. 記述内容. 事前テスト 口頭. 事後テスト 文字. 口頭. 文字. 5. 5. 13. 7. 5. 10. 4. 4. 5. 5. 11. 6. 5. 8. 因果的関連. 0. 0. 1. 0. 1. 接続語. 0. 0. 2(2). 0. 4(2). 心的状態語. 0. 0. 1(1). 0. 1(1). 3. 4. 2. 文字. 0. 口頭. 1. 3. 1. 1. 0. 2. 1. 1. 0. 1. ※括弧内の数値は種類数. 186.
(10) 協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み Table9 個別の自由作文の結果 SI. カテゴリー. S2. 事前テスト 事後テスト 事前テスト 事後テスト 文数. 12. 記述内容. 3 4 3. 5. 4. 5. 仁U 5. 心的状態語. 3. 接続語. 塁じ. 因果的関連. 7. 1(1). 0. 5(5). 1(1). ※括弧内の数値は種類数. 3)個別の自由作文における変化. 的な変容がみられたといえ,問題解決のための相. 個別の自由作文の結果をTable9に示す。Sl. 互交渉として,建設的な方向へ改善したと考えら. の自由作文では,心的状態語には変化がなく(種. 類数は減少),記述内容に増加がみられたが,他. れる。無視が減ったという点など,榎本・隠田 (2002)とほぼ同様の成果が得られたといえるだ. のカテゴリーでは減少がみられた。S2は,因果. ろう。しかし,接続語と心的状態語の使用に関し. 的関連を除く全てのカテゴリーで減少がみられ. ては,指導者からの援助やフィードバックを与え. た。. たものの,相互交渉に関しては,原則的に直接的 な介入を行っていない。それにもかかわらず,対. Ⅳ 考 察 1.問題解決における相互交渉の推移について. 2名の対象児ともに,働きかけの頻度には一定. 象児間の相互交渉には質的な変容がみられた。. 本研究の場合,2名の対象児において,事前テ ストや指導開始直後のデータなどから,適切な相 互交渉に必要なスキルが全く獲得されていなかっ. の変化はみられなかったが,課題ごとの変動性が. たわけではなかったことが推測される。つまり,. 大きいという傾向,そして,2名の対象児の働き. スキルの未学習の問題ではなく,むしろ,相互交. かけの頻度が,ほぼ連動して推移するという傾向. 渉という文脈において,自らのレパートリーの中. が認められた。変動の理由としては,課題によっ. から適切なスキルを選択し,遂行することによっ. て,作文を完成させるために必要な相互交渉の度. て成功を得る体験が少なかったという問題,言い. 合いが異なっていたためであると考えられる。つ. 換えれば,強化履歴の問題が影響していたと考え. まり,ある課題では,比較的容易に2名の対象児. られる。協同で行う作文課題を遂行する中で,作. のアイデアがまとまったのに対して,別の課題で. 文を完成させるという事態が強化として機能する. は,アイデアがまとまらずに相談を繰り返したり,. ようになるにつれ,相互交渉を含む,作文の完成. 互いの考えを受け入れられなかったりした。後者. に必要な一連の行動も分化強化されるようにな. のような場合は,必然的に相互交渉の頻度は増加. り,機能的なコミュニケーション行動が,自発的. すると考えられる。また,2名の対象児の働きか. に取捨選択されていったのだと考えられる。. けの頻度が連動していたことについても,同様の 理由が考えられるが,この連動性は,2名の対象 児が互いに反応し合い,相互交渉を行っていたこ との裏付けとなるものであるといえるだろう。. 2.作文内容の変化について. 指導者が援助やフィードバックを行った接続語 や心的状態語については,その使用回数や種類数. 働きかけのカテゴリーや働きかけに対する反応. に増加傾向がみられた。これらの増加の要因とし. のカテゴリーにおいては,その比率の変化から質. ては,もちろん指導者の介入が作用したことが考. 187.
(11) 大久保賢一・深川 麻衣・安達 潤. えられるが,その他に,対象児間における相互交. 由作文の事前テストの段階で適切に用いることが. 渉が有効に作用した可能性も考えられた。例えば,. 可能であった。しかし,絵カード補助作文におい. 接続語と心的状態語の「種類数」に関しては,指. ては,事実を羅列するだけで,心的状態語を用い. 導者からのフィードバックは特に与えられていな. ることはほとんどなかった。その要因として,自. かったが,指導6において,対象児同士で「『そ. 由作文では,自分の心的状態を記述すればいいの. して』を何度も使いすぎているね」,「別の『そう. に対して,絵カード補助作文では,絵カードに登. して』にかえよう」といったやり取りが行われ,. 場する人物の心的状態を推測し,記述しなければ. 自発的に修正する様子が観察された。. ならないという違いがあったことが考えられる。. 本研究では,絵カード補助作文における心的状. また,個別の絵カード補助作文においても,文. 字作文の接続語と心的状態語に増加がみられた (S2の心的状態語には増加がみられなかった)。. 態語の使用について一定の改善傾向は認められ た。だが,それが登場人物の心的状態を推測でき. 特にSlは,Fig.4のように事前テストにおいて,. るようになったからなのかどうかは,指導の前後. 絵カードの内容をただ羅列するだけというパター. で心的状態の理解に関するデータを比較していな. ンを示していたが,事後テストにおいて改善がみ. いため明らかにすることができない。しかし,対. られた。このように,協同の絵カード補助作文で. 象児が自発的に産出した心的状態語は,指導者が. 指導効果が得られたカテゴリーについては,個別. プロンプトした内容以外のものも多く含まれてい. の絵カード補助作文に対する般化が認められたと. た。そのため,心的状態語の増加が,単に指導者. 考えられる。. のプロンプトを模倣し,パターン化させたことに よるものであるとは考えにくい。. しかしながら,介入の対象ではなかった文数, 記述内容,因果的関連のカテゴリーにおいては,. また,自由作文では,「昨日の出来事」がテー. 協同の絵カード補助作文,個別の絵カード補助作. マだったため,実際の出来事の内容が作文に大き. 文ともに一定の改善傾向はみられなかった。一方. く影響してしまうということがあった。例えば,. で,本研究とほぼ同様の手続きが実施されている. S2の心的状態語は,事後テストで大きく減少し. 榎本・随田(2002)では,これらの直接介入され. てしまった。このことについて保護者からは,「事. ていないカテゴリーにおいても改善がみられてい. 前テストを行った前日は,対象児にとって印象的. る。しかし,榎本・鴨田(2002)では,これらの. な楽しい出来事があったが,事後テストの前日は. 改善の要因について考察されていないため,本研. そうではなかった」ということが指導後に報告さ. 究の結果との相違が,何に起因するものであるの. れた。自由作文については,そのような剰余変数. か検討することは困難であった。. の統制について検討することも課題であると考え. 心的状態語については,2名の対象児とも,自. られた。. 188. あるひ、よごしてしまいました. Fig.4 Slにおける個別の絵カード補助作文. 事後テスト. そして手を嵐いました. 事前テスト. そしてかおを洗いました. 善人署誓 い £ ん. きれいに︷︸りました. お 大J、あ. つぎに服を乱いました. ④ ⑧ ②①.
(12) 協同問題解決に焦点を当てた広汎性発達障害児への作文指導の試み 大橋佳子・平沢富美子(1982)自閉症児童における作文. Ⅴ 終わりに. 能力の発達一日記文および詩を中心に−.金沢大学教. 広汎性発達障害児を対象とした本研究では,子. 育学部紀要(教育学科編),31,147−164. 高橋登・倉盛美穂子・吉田康成・六車陽一(1996)共同. ども同士の相互交渉において,ある程度の困難性. での問題解決の発達について一文献展望−.大阪教育. が示されることが予測できた。しかし,本研究の. 大学紀要第Ⅳ部門(教育科学),44(2),317−330.. 結果は,子どもが他者からの影響を受けるだけで はなく,互いに影響を与え合うことが可能であり,. 杉山登志郎・辻井正次(1999)高機能広汎性発達障害− アスペルガー症候群と高機能自閉症−.ブレーン出版.. 上野一彦・豊倫子・海津亜希子(2005)LDI(Learning. その結果として,独力では達成が困難であった成. DisabilitiesInventory)−LD判断のための調査票−.. 果を生み出すことも可能になることを示した。本. 日本文化科学社.. 研究で扱った子ども同士の相互交渉について検討 を深めることを,そして,学業面の支援について. 付 記. 知見を重ねることを今後の課題としたい。. 本論文は,第1著者と第3著者の指導のもとに,. 第2著者が執筆した学位論文を加筆・修正したも 文 献. Agran,M.&Wehmeyer,M.(1999)Teachingproblem ∫「加わJどれ∫/JJ(ん・JJ/、=〈・〟/∼ナナJr〃/(J/ハ・/(げ(山/′「りJけノ川「け(ト. tions).TheAmericanAssociationonMentalRetarda− rion.三田地真実(監訳)・大久保賢一(訳)(2005), シリーズ・. のである。. 研究にご協力いただいたお子さんとそのご家 族,そして原谷倖那美さんと本間光さんに感謝申 し上げます。. リサーチから現場へ(6)問題解決ストラテ. ジーの指導.学苑社. 安西祐一郎・内田伸子(1981)子どもはいかに作文を書 くか?.教育心理学研究,29(4),323−332.. Attwood,T.(1998)A坤e7ger’ssyndrome:Aguidejbr. (大久保賢一 旭川校准教授) (深川 麻衣 増毛町立舎熊小学校教諭) (安達 潤 旭川校教授). Pa7VntSandprq7i,SSionaLs.JessicaKingsleyPublishers. 冨田真紀・内山登紀夫・鈴木正子(訳)(1999)ガイド ブック アスペルガー症候群一親と専門家のために−. 東京書籍.. Baron−Cohen,S.,Leslie,A.M.,&Frith,U.(1985)Does theautisticchildrenhavea‘theoryofmind’?.Cogni一 旅川,21,37−46.. D’Zurilla,T.J.,&Goldfried,M.R.(1971)Problemsolv− ingandbehaviormodification.Journalq/Abnorma1 月汐Cゐ0わg)′,78,107−126. 榎本克己・随田征子(2002)協同問題解決という視点か らの知的障害児生徒への作文指導の試み.特殊教育学 研究,40(3),323−331.. Park,H.S.&Gaylord−Ross,R.(1989)Aproblem−SOlving approachtosocialskillstraininginemploymentset−. tingswithmentallyretardedyouth.JournalofAp一 郎加ほ崗肌血り紘め砿,22,373−380. 丸野俊一(1994)子ども同士の相互作用による知識獲得 に関する最近の動向.九州大学教育学部紀要(教育心 理学部門),39,25−37. 西浦富美子(1991)低学年の作文指導.奈良教育大学園文, 13,55−61.. 189.
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